はてなキーワード: シェアードワールドとは
……というと、「結局はそういうジャンルにいるから多く見えるだけで絶対値としてはそうでもない」という答えが返って来そうだが、そのあたりは一旦置いておいて。長文のため先に要約を置いておく。
【要約】
交流企画に腐女子が大集合すると、男同士の恋愛ネタが蔓延りすぎてそれ以外の話題を扱うと除け者気味になる傾向があるので、楽しみ方が限定されてしまい、本来の自由度が損なわれているような気がして居心地が悪い。嗜好による選択の結果であると認識しているため、仕方がないと思いつつモヤモヤしているという話。
はじめに自己紹介だが、一次創作を趣味にしている筆者は、自身も小説を書いたり、絵を描いたりする。主な活動拠点はTwitterである。BL・GLともに嫌いというほどではないが、進んで手に取ることはない。
Twitter上には様々な「交流企画」なるものが存在しているが、どこを覗いても思うことがある。
腐女子が多すぎるのだ。
ここでいう交流企画というのは、ある設定が共有されたシェアードワールドの枠組み内でキャラクターを創作し、時には企画制作者が提供するイベントに沿って世界観に没入しながら、キャラクター同士の交流や作品群を楽しむ、というものを指す。学園モノであれば我々は教師や生徒を作り、異世界モノであれば魔法使いや剣士を作り……といった具合にそのシステムは様々であり、言うなれば一種のTRPGのようなものである。Tabletalkではないので、TはTwitterのTだ。
「交流」と名を冠するからには参加者が互いの趣味嗜好を尊重する必要があり、相性のよい相手と関係を深める(キャラクターも作者も)という在り方が推奨されるが、そのために自己紹介シートのようなものが設けられていることがある。その中にしばしば「GL・NL・BL」と書かれた項目があり、地雷にバツ印を付ける、あるいは平気なものにマルを付けることで、自身の嗜好を示せるようになっている。(こうしたシートが無い企画も当然ある)
企画の世界観に興味を持った筆者は、前述の通りBL・GL・NLともに平気であること、全部にマル(なんなら花丸)つけてる人が大多数を占めていることなどを理由として、そういった「腐女子」達と交流を持つことになるわけである。
ここで問題になるのが、「マル」というのが何を指しているか、という点。企画主が明示していない限り、「平気ですよ」のマルもあれば、恐らく「それはもうメチャメチャ大好きです寝る間も惜しんでPi〇ivを渉猟し三度の飯よりバクバクムシャムシャペロリズム」みたいなマルもあるだろう。筆者は前者の消極的なマルなので、当然後者の積極的な参加者たちとは熱量に差が出てくる。
そして後者の場合、往々にして彼ら彼女らが求めるものを提供できない人間に人権はない。
極端な言い方をしたが、見ても忌避感を覚えず恋愛モノの一様態として楽しめるというだけでそうしたコンテンツを提供しない筆者は、どうも「つまらないヤツ」と判断されてしまうようなのだ。セロリ嫌いじゃないけど好きでもないから進んで食卓に並べはしない人間が、セロリ大好き主食集団の中に紛れ込んだとき異端になるのは自明であるが、つまり、セロリ食え!セロリ出せ!セロリを愛さぬ者に用はない!というわけだ。それならばセロリを愛する者同士、色がどうの食感がどうの味がどうのと推しポイントを共有できる相手と関わった方が精神的にコスパが良い。その道理はよくわかる。
ところがこちらとしては男同士(GLのパターンもあるだろうがBL遭遇率が体感異様に高いのでBLということにする)がイチャコラしているのが見たいわけでも、そこに割って入りたいわけでもなく、あくまで企画の世界観に惹かれているのである。交流を成り立たせるための関係は必ずしも恋人に限らず、先輩後輩、同級生、親友、そこまで親しくはないけども同じ部署にいる顔見知り、敵対……etc.、様々な在り方があってしかるべきだ。が、その実態といえば、先輩後輩(ホモカプ)、同級生(ホモカプ)、親友(だがホモカプ)、ただの顔見知り(だが寝たことがある)、敵対(しているがやはりちょっと気になる///)といった具合で、ファミレスでメニューを見たら全部にセロリ入ってたような状況なのだ。ライスにも刻みセロリが入っている。
与えられたシステムの中で仲良くワイワイしたいだけなのだが、「平気ですよ」のマルを付けたばかりに、友達だと思っていた相手から突然「酔っぱらってそういう雰囲気になるかもねw」「受け攻めどっちぽい?」というコメントが飛んでくる。拍子抜けする。勢力図がどうとか、この世界ではどんな生き物がいるのかとか、能力の応用とか、そういうものは基本的に話題に上がらず、TLを流れていくのは専らうちよそのデート描写、お互いをどう思っているか、お互いの好きなところは、という風に恋愛色が強い。その企画でなくてもできたのではないかという、企画の世界観や設定が全くといっていいほど絡まない恋愛ネタ。そして見渡す限りの同性カップル。戦闘や駆け引き、探索をしながら絆を深めるとか、そういうものを想定していたら合コン会場に迷い込んでしまった。
ここまで書いて、同性カップルに理解の無い差別主義者と疑われていそうなので、弁明しておく。筆者にとって、恋愛は性別がどうだろうと恋愛なので、閲覧に際してはNLもGLもBLも特別区別はしていない。この文で「同性」を強調しているのは、それ以外の恋愛形態が尊重されないほど腐女子たちによるBL推しが激しいためである。そしてBLネタを求める彼女らは自動的に男性キャラクターを作成するため、片割れを探す作者同士が意気投合すればカップル、もしくはちょっとつつけば即座にカップル成立しそうな距離感の過沸騰ペアが増えていく。女性キャラクターとして受け入れられていた独身キャラクターが、実は男でしたとネタ晴らしされた瞬間伴侶を得るこの世界で、女性キャラクターの婚活は氷河期にある。
腐女子であることが豊かな交流の前提になっている空間は、本来許されていたはずの自由な創作・自由な交流に制限をかける。男女、女女、男男、3種類あるはずの恋人関係が1種類しか快く受け入れられないとあってはそこで楽しむのも難しくなってくる。それが分かれば最初から参加していないのだが、企画ができたてであればあるほど、なまじゾーニングを重視する彼女らの生態を初対面で汲み取るのは難しい。数段前に自己紹介シートの話をしたが、シートがあれどもすれ違うのに、無ければなおさら困難極まってくる。筆者が極まりたいのは困難ではなく感なのに、だ。
平気ならお前もBLカップル作ればいいじゃん。その通り。だが環境に強制されて作る関係を心地よいものとは思えず、結局幾度も身を引くことにした。したくてするのと、そうしないと弊害があるからと妥協してするのでは大違いだろう。
「腐女子が多すぎる」というのはこういうことだ。ある空間に占める腐女子が多ければ多いほど、彼女らの常識がその場の常識にすり替わっていく。これは筆者の体験から腐女子を取り上げているだけで、同じことはそれ以外にも言える。自然愛好グループの中に野生動物に餌を与えることを生きがいとする集団が増えて、動物たちが事故に遭うリスクを懸念する人々が押し負けてしまうであるとか、例を挙げればキリがない。感情・思想を共有する集団は強固ゆえに存在自体がある程度の強制力を持ち得るというわけである。
腐女子は日陰者であるべきとは言わない。しかし意識的にせよ無意識にせよ、ホモカプが描写できないならお役御免とばかりの傲慢さを感じざるをえず、それゆえ不信の念を抱かずにはいられない。なぜこうも交流企画には内輪を形成する腐女子が集うのだろう。
時間 | 記事数 | 文字数 | 文字数平均 | 文字数中央値 |
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00 | 120 | 19459 | 162.2 | 51.5 |
01 | 37 | 7378 | 199.4 | 83 |
02 | 26 | 4662 | 179.3 | 63 |
03 | 17 | 2640 | 155.3 | 54 |
04 | 18 | 4868 | 270.4 | 324 |
05 | 34 | 3448 | 101.4 | 57.5 |
06 | 54 | 6062 | 112.3 | 50 |
07 | 42 | 10525 | 250.6 | 55.5 |
08 | 70 | 7131 | 101.9 | 52 |
09 | 116 | 10682 | 92.1 | 31.5 |
10 | 86 | 10920 | 127.0 | 49.5 |
11 | 113 | 11156 | 98.7 | 50 |
12 | 113 | 10590 | 93.7 | 37 |
13 | 126 | 12267 | 97.4 | 32 |
14 | 96 | 7265 | 75.7 | 35.5 |
15 | 128 | 8425 | 65.8 | 42.5 |
16 | 140 | 14002 | 100.0 | 45 |
17 | 152 | 17181 | 113.0 | 39 |
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19 | 84 | 9312 | 110.9 | 42 |
20 | 98 | 7953 | 81.2 | 39 |
21 | 133 | 16509 | 124.1 | 31 |
22 | 129 | 14698 | 113.9 | 38 |
23 | 106 | 11104 | 104.8 | 44 |
1日 | 2206 | 242370 | 109.9 | 42 |
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なに?
5年前に存在してたコンテンツで、二次創作推奨のシェアードワールドコンテンツ群より今でもユーザーが多いの挙げてくれよな。指標も同時に。
少なくともコミケジャンル数ではないな。東方が覇権を握った後、東方はちょっと落ちたが二次創作推奨シェアードワールドコンテンツ群より上に来たコンテンツは見たことない。
太く長く>細く長く>>>>>>>>>>単発で短く
でしょ。
で、細く長くには
が必須。
太く長くも、細く長くも手掛けられんのにいうなよ。
君臨というか、コミケジャンル数トップはシェアードワールド化したコンテンツばかりだし、ほとんどの単発で短くは君臨どころか認知すらもされねぇ。
シェアードワールドは細く長く続けるなら有効だろうと思うけどね。
結局、コンテンツ業界に君臨してるのは「太く長く続いてる」作品なんだから、
おまえが期待するような状況にはならないんだよ。
9割がたのコンテンツといったはずだが?
でもコンテンツを長寿命化させたものの収益は大きくなるということはわかってくれたね。そして一度成功したシェアードワールドはそう簡単につぶれないということも。
君が手掛けてるようなコンテンツよりははるかにもうかってると思うよ。根本的に君が手掛けてるようなものは寿命が短いだろうからね。
二次創作ということは多種多様な二次創作者が集まるし、中にはめんどくさいのもいるし、制御も必要だろうよ。そこら辺を乗り越えたコンテンツはべらぼうに強くて、コンテンツ寿命までの収益で言えば高い。
そのようなシェアードワールド化して、非常に寿命が長くなったコンテンツも複数ある。なので成功したものについては。
ああ、そうか、たぶんコンテンツ屋だったね。だから君の企画として失敗して目も当てられないシェアードワールドコンテンツは作りたくないだろう。
うん。希少だね。だけどシェアードワールドにまで至り、二次創作作るのと、それをうまく制御推奨する流れができた界隈はべらぼうに強いね。
だからこそ
他は、ちょっといいのがあって、金をかけて、一時的瞬間風速だけ強くて、儲かるし、コンテンツ屋は狙うが、すぐにブームが去る、ざーこ♡ざーこ♡
だから「シェアードワールドを成功させる」ってのが相当に難しくてレアなんだって。
いま長く同人人気のある作品は9割9分「企業が頑張って作り続けてるからファンがついてきて二次創作してる」コンテンツであって、
一度成功したシェアードワールドは公式がめちゃくちゃな喧嘩をする(けもフレ)でもない限りつぶれないよ。クトゥルフですら生き残ってるじゃないの。
しかし企業は一気に打ち上げて、一気に儲けて、一気に廃れさせるのが原則でありつぶれること前提。99%のコンテンツがこの流れ。
むろん、二次創作ガイドラインだけではないし、シェアードワールドを維持する努力は必要だ。
けど、君の言う企業が金をかけるというのは99%めぼしいものにかけて一気に打ち上げて、一気に儲けて、一気に廃れるという代物。
儲かるかもしれんがもう一般人に届くかすらも怪しい劇弱使い捨てコンテンツ。
そんなのに比べれば長期的に二次創作をはぐくんだコンテンツは非常に強いし寿命が長い。
だから
そのあたりの超超有名コンテンツはともかく、ほとんどは一発挙げて、一気に稼いで、一気に廃れて使いつぶし、せいぜいパチンコに使われるぐらいで余生を過ごすだけですな。
偏見もいいところでしょ。
「売れれば続けるし売れなければ続けない」という論理はあるとはいえ、
それはシェアードワールドが「人気があれば続き人気がなければ続かない」というのと同じ。
に対してくらいついてきて、きみが企業の時代だ―云々とがなり立ててるだけでしょうに。
実際には企業は金を使ってるよ。
そのあたりの超超有名コンテンツはともかく、ほとんどは一発挙げて、一気に稼いで、一気に廃れて使いつぶし、せいぜいパチンコに使われるぐらいで余生を過ごすだけですな。
どのみち権利者がシェアードワールドを維持するための微妙な調整ができんと無理ってのはそうだ。しかし、大企業にゆだねたところでほとんどが使い捨て。
あとfgoはもろに二次創作ガイドライン作って周囲の二次創作をどうはぐくむか意識しているがな。
これからもほぼ99%のコンテンツははぐくむことなんか考えてもらえず使い捨てというのは変わらない。一発挙げて、一気に稼いで、一気に廃れて使いつぶす。
おまえが突っ込まれるたびにゴールポストを動かしてるだけだろ?
そのあとに出たコンテンツはほとんどが生き残れない。君は継続的に良質なコンテンツを作れば生き残れる!というがその金も出さないから。長期的にやるというのが根本的にできない構造になってるんだよ。
実際には企業は金を使ってるよ。
まさかONE PIECEにしろ進撃の巨人にしろ過去の遺産を食いつぶしてるだけなんて言わんよな?
いまでも出版社はスピンオフやコラボやメディアミックスに死ぬほど金をかけてるし
「一発当てたらあとは惰性にまかせて…」みたいな舐めた商売してる奴はいない。
おまえの目が企業への不信感で曇ってるだけでしょ。
じゃあ、「シェアードワールド化」した強いコンテンツってたとえば何?
まずは東方。
あとボカロ。
他は?
企業の手から離れて二次創作コミュニティが主導権を握るってのは
最近の流行りはヒット作のスピンオフを大量に立ち上げるかたちで、
あくまでプロのクリエイターがそれぞれガンダムの世界観で表現してるだけ。
Fateもガンダムに近くて、奈須きのこが作った設定をプロの書き手に委ねている。
FGOにかぎらずスマホゲームは複数のライター・イラストレーターを起用して、
ひとつの世界観のもと、継続的にイベントを開催し、新キャラを投入するようになってる。
だぞ。
あとコンテンツが少ない、アニメを一般人が見る時間帯にやってた時代に立ち位置を確保できたコンテンツがそのまま生きながらえてるだけ。
そのあとに出たコンテンツはほとんどが生き残れない。君は継続的に良質なコンテンツを作れば生き残れる!というがその金も出さないから。長期的にやるというのが根本的にできない構造になってるんだよ。
おまえの理屈は「長期間続いてる作品」を「これは昔の作品だから」と除外して
「最近の作品」も「まだ長期間続いてないから」と除外する無敵論法だぞ。
どんなに売れても二次創作人気がなければ打ち切られるんだ!
と言うならONE PIECEもガンダムもとっくに打ち切られてるだろ。
シェアードワールドに上手く移行できればいいが
ガチャで金ある奴だけだろ?
今更だけれど思ったこと書くね。
エンタメに飽きたら、世界史の勉強をするのがいいんじゃないかな。
この元増田の言っていることの全部が正しいとは思わないんだけれど(たとえば「海外ドラマはお子様向けを卒業した十二歳向け」みたいな表現ね)、娯楽をある程度摂取するとパターンが見えてきちゃうのは本当だと思うし、たくさんの作品を鑑賞していると、脚本術について詳しくなくても、「この場面で伏線を張っているな」とか、「今このキャラクターの物語をたたみに向かってるな」とか、何とはなしに見えてきちゃうよね。
それに、月9ドラマなんかだと作業しながらでもそれなりに理解できるようにストーリーを作っているので、まどろっこしく感じちゃうのもよくわかる。自分も全然見ない。映画なんかも、友達と付き合いで行く以外は、こじらせ芸術映画をたまに見る程度。なんでかっていうと、アート系映画は脚本術に従っていない、従っていたとしてもあからさまじゃなくて、どういうストーリーになるかほとんど予測がつかない。そこが楽しいから。
で、この増田は勉強することにしたみたいだけれど、なんだかんだ言って、教養を得ることに向かうってのは、いい考えなんじゃないかな。
自分なんかは、世界史をざっくりと勉強してみると楽しかった。ちょっと古い本だけれど、中央公論社から出ている「世界の歴史」シリーズ全三十巻を、数年前に読んでみた。正確には、学生時代に流し読みをしたものの再読だ。
世界史を知っておくメリットはいくつかある。ニュースを流し読みしても大体のことが頭に入ることだ。でも、それとは別に、そもそもすごく楽しいってのがある。いろんなファンタジーとかゲームとかの元ネタを見つけるとわくわくするし、遠い国の人たちの暮らしを知って空想するだけでも、毎朝の通勤時間が豊かになる。
それと、このシリーズは、歴史と地域ごとに分かれて書かれているので、ある出来事が複数の巻で重複して触れられることがある。たとえば、モンゴルによるバグダッドの破壊なんかはイスラームの勃興期と遊牧民を扱った巻にそれぞれ出てくるし、トルキスタンで起こったムスリムの反乱は、近代イスラームの巻と清朝末期を扱った巻の両方に出てくる。
それの何が面白いかっていうと、同じ出来事が見方によって評価が全然違うってこと。当たり前なんだけれど、ある国では救国の英雄だけれど、別の国では冷酷な侵略者になっていることなんてざらだし、時代が変化することで評価が逆転したり、忘れられていた人に急に光が当たったりする。チンギス・カンはモンゴルではヒーローだけれどほかの国では災厄以外の何物でもないし、バッハやフェルメールといった人物も、忘れられていた時代があった。この世界史のシリーズも著者によってバイアスがかかっていて、そこがかえって読みごたえがあるんだけれど、モンゴルを担当した人が個性が強くて、「遊牧民文化は定住民のせいで低く評価されすぎ!」みたいな本を出していて、おかげでモンゴルの残酷な行為が若干省かれちゃっているのが難点。
これってまさに芥川龍之介の「藪の中」みたいな感じで、互いの証言が矛盾しているから頭を使わないといけなくて、下手な娯楽よりもずっと面白い。いや、自分も現在起こっている日本と中国・韓国との証言の食い違いは、あまりいい気持がしないんだけれど、それがたとえば何百年も昔のことだと、それがとてもロマンチックに感じられる。聖地奪還の情熱に燃えていた十字軍も、アラブから見れば「なんか辺鄙なところから蛮族が来たぞ」みたいな印象しかない、みたいな話だ。
話がそれてしまったけれど、自分が言いたかったのは、頭の中に複数の物語を併存させておくことで、自然と物事に対して客観的になれるメリットがある、ってこと。しょっちゅう増田で表現の自由だとかセクハラだとかいろいろと炎上したりしているけれど、ある人の意見を絶対視しなくて済むようになる。Aという視点ではこうだけれど、Bという観点からだとこういう意見が当然出てくるだろうな、ってのが読めてくる。読めてくると、「この人ならこういう反応をするだろうな、この専門家ならこういう発言をするに違いない」ってのがわかってきて、こっちも必要以上に感情的にならなくて済む。元増田は「悪化する大衆のメンタリティ」という表現で、そういう荒れがちな場をちょっと下に見ている感じもないではないけれど、議論にすらなっていない議論から距離を取ることができるようになると、余計なストレスを感じなくて済むのは確かだ。
それに、複数の見方ができるようになると、例えばムスリムから世界史を見たらどう見えるだろう? 女性史の観点からならどうだろう? って、多くの人に受けいれられている歴史の見方を疑ってかかれるようになるので、やっぱり楽しい。
他にもいろいろメリットがあって、基礎的な知識があると、ほかのことを勉強していてもすごく楽しい。古典文学を読んでいてもすごく面白いし、百年前のあの憧れの人と同じ本を手に取っているって興奮できる。文豪たちと同じ詩を読んで感動するのはいいものだ。科学や医学の歴史についてざっくりとでもいいので学ぶと、自分の生活は先人のものすごい技術的蓄積の上に成り立ってるんだなって思うし、自然科学の基礎的な素養があると、ぽっと出のインチキ治療法には引っかからなくなる。哲学史について軽く触れるだけでも、学生時代にしたような哲学的思索は、ギリシアやインドが二千年前にとっくに通過した場所だってわかってはっとする。女性の地位がどう変化したかをたどってみると、「女性は『常に』被害者だった」みたいな極端な意見には大きな疑問符をつけることができる。
それと、こうやって三十巻ざっと読んで思ったのは、自分の歴史観はバイアスがかかっていたんだなってこと。たとえば、ギリシア・ローマの歴史は一巻にまとまっていて短すぎるって思ったし、中国の歴史ももう少し細かいところに触れてほしいって思ったけれど、たとえばムハンマドの時代からアッバース朝滅亡までが一巻ってのはちょうどいいって感じられて、これってつまり自分がイスラームのことをまだまだ知らないってことだよね、って思えたりして、バランスが悪いなあって。自分の考えは、ちょっと偏っているかもしれないって、疑えるようになるってのもまた、勉強する楽しさの一つだ。
あと、いろんな知識が増えると、いろんな人が自分よりも前に書かれた本について言及しているのをたくさん見つけることになるんだけれど、この世界がまるで巨大なシェアードワールドみたいな感じがして面白い。自分が古典を読むのが好きな一番の理由がそれかもしれない。さっき述べた、互いに矛盾するような証言でさえ、この世界がどれほど「作りこまれているか」、いいかえると複雑なのかを教えてくれているみたいで、興奮する。
自分は通勤時間と昼休みにしか読書をしないエンジョイ勢だけれど、こういう勉強ってのは一生やっても飽きない気がしている。娯楽を馬鹿にするわけじゃない。でも、「娯楽の場がぎすぎすして嫌だな」ってときには、ほかにも楽しいと思える遊び場を持っておくのは、いいことなんじゃないかな。
「オブジェクトクラス」→「特別収容プロトコル」→「説明」→その他の追加情報(補遺や実験記録など)
の順で書かれている。平易に言えば、
「そいつの危険度」→「そいつを無力化して閉じ込める方法」→「そいつの姿かたちや異常性の内容」→「発見した成り行きやその後の経過、細かい異常性の発現ルール」
ということだ。
この順序こそが、SCPと他のシェアードワールド系の創作サイトを明確に分けたもので、SCPというサイトの面白さを生み出した要因にも、初心者が読みにくい要因にもなっている。
この順序になっている理由は、SCPのドキュメントが「その物体を読者に向けて紹介するためのエンターテインメント的文書」ではなく
「それを管理しなければならない職員に向けて、安全な管理運用のために記された実用的文書」であるという体裁を取っているからだ。
職員にとってはその異常性の面白さや斬新さなんかどうでもよく、まず何よりも安全に封じ込め続ける必要がある。
その上でその異常性を理解・研究し、あわよくば財団のために利用していこうという意図のもと、説明や実験記録が来る。
実に合理的だ。
だが、これを一歩メタな視点、すなわち創作サイトとしての面白さという考え方で捉えると、この順序だからこそSCPはここまで面白くなれたのだということが言える。
すなわち、このわずかなドキュメントの上から下までがまさに伏線とその回収、すなわちミステリの構造を担っているということだ。
読み始めた瞬間、読者はそのオブジェクトの呼び名しか知らない。
瞬時に入ってくるのは危険度の情報だ。なぜこの危険度か、は示されない。
その上で封じ込め方法が来る。なんでそんな奇妙な収納方法なのか。何を意図したシェルターなのか。次々と謎が増えていく。
その次の説明で、謎が解ける。この説明の順番も見事だ。見た目などの一般的な情報から、徐々に異常性が明かされていき、何が恐ろしいのか、そして何が面白さなのか知る。
だが、作り込まれたオブジェクトはこれで終わりではない。最後の補遺や実験記録の部分でどんでん返しを仕掛けていることがあるからだ。
だからSCPの面白さは人に説明しにくい。こんなオブジェクトがあって、それはどのように発見され、こんな異常性があり、こんなふうに封じ込めている。と説明してしまうと全く伝わらない。
本当の面白さは、初見の読者の中に次々に入ってくる情報の解像度の深め方にあり、その結果だけを話すことでは、聞き手と話し手が同じ体験をしたことにならない。
だから紹介動画などでも、特別収容プロトコルからそのままの順序で話していくものが多いわけだ。そうざるを得ない。そうでなければそのSCPを紹介したことにならないのだ。