はてなキーワード: 煙草とは
東京の中でもなぜ北側はコロナウイルスの感染者が少ないのか話題になってたが、行ってみたらそれはあたりまえのことだとわかる。わりと店が多い田端新町の大通りを夜に歩くと、週末でも人がほとんどいない。隅田川を挟んで足立区との境にある尾久(おく)まで行くと、さらに静かで薄気味が悪いくらいだ。
西尾久にいる女の所へ通っていた頃、なんでわざわざここに住んでるんだと聞いたことがある。
突き放したようなものの言い方をする女だった。こちらから迫っていくと拒むことはなかったが、いつもどこか醒めている感じがした。身体を繋いだ後にも余韻というものがなくて、すぐにテレビをつけたり、ベッドを降りて煙草を吸ったりした。そのわりには定期的に連絡をしてきてこちらの予定を尋ねるのは向こうの方からだった。
そういうこともあるんだろう、と思って漫然と関係を続けるくらいには自分は打算的だったし、未熟でもあったわけだ。
私たちはよく歩いた。夜、西日暮里で降りて東北本線沿いに尾久まで歩くこともあった。石垣のような高架沿いにぽつぽつと話をしながら進むと、幾重にも重なった線路と電車しか見えない、ひらけた場所に出る。
歩き続けて、身体がランナーズハイみたいな軽さを感じはじめた頃に彼女の部屋に着く。部屋に入ると電気をつけ、テレビをつけ、どちらからともなく先にシャワーを浴びてから寝た。
ずっとこういう生活をルーチンワークのように繰り返していて飽きないのかと思って、もう少しデートらしい外出を持ちかけてみたこともある。浅草の三社祭を見たことがないというから、今度行ってみようかときいてみた。
「そういうのはいいよ」
「どうして」
何がいけないのか。こうやって、部屋でビールを飲んでることだって、あとで思い出したらそれは思い出じゃないのか、と私は詰めてしまった。自分は一緒に思い出を作るに値しない人間だと暗に言われているような気もして、少しカチンときたからだ。
彼女は黙ってから、「思い出なんて、贅沢だよ」と小声でいった。
「ごめん、今日は帰ってくれる」
部屋を追い出されて尾久の駅まで歩く間、通り過ぎる店はことごとくシャッターを下ろしていた。酒屋の前には白い猫が座っていて、すれ違いざまに首をかく音が聞こえた。
それから間もなく、柏のデイケアセンターに介護の仕事を見つけたとかで、女は千葉に引越していった。互いの近況を知らせる連絡も、どちらからともなく途絶えた。尾久に行くこともなくなってしまったけど、夜の静けさと暗さ、しらじらと蛍光灯が灯っていた彼女の部屋をいまだに思い出すことがある。
時間 | 記事数 | 文字数 | 文字数平均 | 文字数中央値 |
---|---|---|---|---|
00 | 174 | 14136 | 81.2 | 36.5 |
01 | 139 | 10936 | 78.7 | 25 |
02 | 61 | 5251 | 86.1 | 27 |
03 | 26 | 7679 | 295.3 | 62 |
04 | 18 | 2426 | 134.8 | 74 |
05 | 12 | 1483 | 123.6 | 65 |
06 | 30 | 3584 | 119.5 | 35.5 |
07 | 38 | 4395 | 115.7 | 44 |
08 | 107 | 9798 | 91.6 | 40 |
09 | 126 | 9448 | 75.0 | 40.5 |
10 | 222 | 13984 | 63.0 | 34.5 |
11 | 151 | 10386 | 68.8 | 32 |
12 | 130 | 9812 | 75.5 | 38.5 |
13 | 143 | 11479 | 80.3 | 33 |
14 | 158 | 13706 | 86.7 | 41 |
15 | 147 | 12237 | 83.2 | 37 |
16 | 145 | 10705 | 73.8 | 37 |
17 | 131 | 18107 | 138.2 | 37 |
18 | 173 | 15229 | 88.0 | 33 |
19 | 218 | 14908 | 68.4 | 36 |
20 | 132 | 10996 | 83.3 | 33 |
21 | 172 | 18874 | 109.7 | 47 |
22 | 152 | 10283 | 67.7 | 34.5 |
23 | 118 | 9518 | 80.7 | 29.5 |
1日 | 2923 | 249360 | 85.3 | 36 |
コロナ感染(4), 10万円(7), 小作農(4), 電子証明書(3), 小作(4), あつ森(3), リモートワーク(10), かのか(3), コロナ禍(8), オリザ(19), 布マスク(7), 演劇(22), 役割(66), リスペクト(12), 負け犬(12), 売春(17), 給付金(10), 果たし(10), マウス(9), 比喩(7), PCR検査(10), 岡村(32), 申請(19), 密(11), 合法(13), 風俗(61), 嬢(11), フリーランス(11), 株価(7), 在宅(16), 貧困(20), 風俗嬢(13), 自粛(46), 違法(14), 巨乳(19), 降り(14)
■ブクマよりトラバを大事にしろ /20200509190558(34), ■日本人はいつから詩を読まなくなっちゃったの /20200425144157(19), ■マスク信者多すぎない? /20200509135953(18), ■女性店員に「おっぱい大きいですね」と言ってみた /20200509185529(12), ■みんなで飲みに行った /20200508193018(11), ■三大一人なのに二人以上っぽい人 /20200509123319(10), ■ちんちんにもブラジャーみたいのがあっていいと思う /20200509151107(9), ■負け犬学が欲しい /20200509180728(8), ■風俗しか働き先がないって本当ですか /20200509205428(8), ■Zoomで「在宅だから髭伸ばしちゃってます〜」言いたる人 /20200508194806(7), ■煙草を辞めた /20200509105755(7), ■エロ漫画・イラストレーターをやってるんだが… /20200509180607(7), ■気がついたことがある /20200509142933(6), ■安楽死は何故ダメなのかわからない /20200509005800(6), (タイトル不明) /20200509082952(6), ■なんで日本ってこうなんだろうな /20200509161111(5), ■暗証番号なんて忘れんだろ? /20200509132740(5), ■オンライン授業を受けたくない /20200509111114(5), ■https://anond.hatelabo.jp/20200507171805 /20200508112349(5), ■男性の役割から降りても救いはない /20200507171805(5), ■風俗も原発作業員も立派な労働者では /20200509100225(5)
意外と、生活にはこれが無くてはと思っていたものが必要ないことに気づくときって、あるよね。
女性と口もきいたことがない私が、社会人としてやっていくためにはそういう経験も必要だと思ったから。
初めてお相手いただいた女性が、「私みたいなお姉さんでいいの?」と言ってくれたことは一生忘れない。一生ね。
オンナの味を知ってしまった僕は、それから年に数度風俗に行ってしまう。
だた、始めのうちはどんなプレイにも新鮮味を覚えて楽しかったけれど、最近はやりたいことは一通りやってしまった感がある。
なんとなく、風俗に行って発散していたのはタダの性欲発散とも違うんだよね。
偽りで歪んでいるとわかっていても、ほんの一瞬だけ自尊心が満たされる気がするんだよね。
だが、期せずして、コロナが私の習慣を断ち切ってくれた。
性行為してしばらくたつと、また快楽を求めてしまうのだけど、しばらく行かないと性欲が少し収まってくる。
ああ、この調子でいけば、もう風俗には行かなくていいかなって感じがしてきた。
使った金を数えてみると、中古車が買えた、家電も変買えた、海外旅行に行けた、うまい料理が食えたと思う。
そう考えると、辞めたい、絶対にやめたい。
辞められるか不安なので、方法を考えてみる。煙草辞めたんだよねと言った数か月後に、飲み会で喫煙する友人の姿が思い出される。
薬中の芸人が捕まるたびに、依存症は一生の戦いと言われるので、風俗への欲求も一緒だよね。あるとき突然、風俗の思い出がフラッシュバックする。
それで、どうやったら辞められるのか悩んでる。
まず、風俗の情報を見ないこと。見たら行きたくなる。少しくらいなら、いいかなというものはない。
性欲は一人で解決できるけど、温かい身体に触れたいという欲求は満たされないんだよね。
猫でも飼うか、と思ったが動物の世話ができる自信がないのでダメ。うーん何がいいんだろう。
少し前まで、自分はなんで普通の人のように普通のことを出来ないのだろうと悩んでいた
しかし最近になって幼児期からの過去の記憶がフラッシュバックするようになって、その記憶を反芻していて気付いた
そういえば幼稚園にも通わされず小学校は不登校で、両親が離婚してから父のもとへ移るまで数年間まともにご飯を作ってもらった記憶がない
何日も母と顔を合わせずごま塩をかけたレトルト米だけを食べて、煙草や酒や母が自殺未遂に使うカミソリを歩いて買いに行かされ、癇癪のたびに包丁を振り回されたり髪を掴んで引き摺られストーブに投げられたりしていた
5年生の時、わずかな服とランドセルだけ持って父のところに逃げ込んだ
家に残してきた服はすべて燃やされたり切り刻まれていた
逃げ込んだ父のもとでは人間らしい生活が出来たが、父も宗教にはまってすっかり精神を病んでいたし、姉は半狂乱になってはリストカットして酒に溺れて風呂場で嘔吐しているようなさまだった
当たり前だがまともに勉強が出来なかったので定時制高校に入学してアルバイトをはじめた
コミュ障で社会性なんてゼロだったけど、どうにか働いて一人暮らしをするようになって、正社員として働いて仲のいい同僚も出来て、すっかり忘れてしまっていた
なんで普通のことが出来ないなんて悩んでいたんだろう
そもそもまともじゃなかったのだ私は
それに気付いてからスッと心が楽になって、出来ない自分を許せるようになった
まともな場所で育たなかったから、まともな家庭のやり方を知らなくても当たり前なんだ
むしろ、今まで死ななかっただけで御の字だろう
好きに生きよう、好きに死のう、皆あんなに好き勝手していたのだから私だって楽にやろう
ああ、生きてるのが楽しい
コロナウィルスのおかげで様々な場所・施設で自粛自粛と世の中がなっているが危機感なんてまるで無いのでとにかくめんどくさい
マスクも息苦しい・耳が痛い・メガネがずり落ちてくる・煙草吸うのに邪魔なのでしないし今後もするつもりもない
特に体調は悪くないし悪くなったとしてもマスクだけはしない そもそも売ってないし
そんなおっさんの平日
7:30
近所の喫茶店で新聞読みながらモーニングセット+煙草(個人店なのでまだ吸える)
8:30
会社に到着 リモートワークとかいうサボり社員たちがしっかり始業しているか監視
12:00
昼飯 ランチタイムでも問答無用で煙草吸えてた中華屋まで禁煙になったがご飯おかわり自由のために我慢
20:00
取引先も休業状態が増えてきているので普段のこの時期よりだいぶ早く退社
20:30
自宅周辺は自粛自粛のせいで飲食店がまともに空いていないので一駅ずらして都外へ
東京都は違ってまだ居酒屋は空いているところが多く座ってタバコが吸えるところもあるので最近開拓中である
昼食が遅かったりして腹がそこまで減っていない場合は近所のキャバクラやガールズバーへ、当然タ煙草が吸える
0:00
再度電車に乗るのが煩わしくはある
0:30
帰宅 シャワーを浴びて煙草吸ってビールを飲みながらYoutubeを見たりゲームをしたり
2:00過ぎ
歯を磨いて就寝
娯楽への制限や出社してこない社員たちが明らかに生産性を下げていてストレスがすごい
リモートワーク導入を指導した部署の説明では逆に生産性が上がるということだったのに逆効果過ぎて呆れている
LINEの背景は自由に変えられる。白や黒みたいなシンプルなカスタムなら無料でダウンロードできるし、150円出せばサンリオだのディズニーだのキャラクターものの背景を手に入れられる。目移りするけど、パステルカラーのキキララなんてどうだろうか。思わず、大切な人にプレゼントしたくなるようなピンクのハート柄。LINE側もそういうニーズを把握しているのか、「背景の着せ替えをプレゼント」という機能がある。だれかのアカウントを選択、「この人にプレゼントしますか?」、はい、「この人はすでにこの着せ替えを持っています」すでに持っています?、戻る、「この人にプレゼントしますか?」、はい、「この人はすでに…」
真冬だったと思う。平日の18時過ぎ、待ち合わせた喫茶店はそれなりに混んでいた。彼の第一印象は、「やぼったい人」だった。ぶかっこうに厚手のコートと毛玉のついた黒のマフラーは、その印象を強めていた。
「君の服、あったかそうだね」
彼は、私のことをときどき「君」と呼んだ。若者らしくない古風な話し方で、それもまた彼のやぼったさを加速させていた。彼の性格が好きだった、とはっきり言えると思う。彼と話しているときにふと感じる、昔から知っていたかのようななつかしさが好きだった。彼のやぼったいルックスも、モクモク煙るセブンスターも、大きすぎるいびきも、全然好きになれなかった。だけど、私は確かに彼が好きだったのだ。彼はときどきうちにやってきて私をぞんざいに抱いたあと、「君とは身体の相性がいいような気がするな」などと抜かした。私は適当に相槌を打ったのだが、いつも酔っていたので正直なところよくわからなかった。口づけの煙草臭さだけを覚えている。うちのアパートは禁煙だから、というのにどうしても煙草を吸いたがるので、ベランダに出して吸わせた。真冬だったと思うので、相当寒かっただろう。もしかしたら、そのせいかもしれない。
映画に行こう、と切り出したのは私からだった。観たい映画があったのだ。彼はふたつ返事でOKし、映画の前にお茶しに行こう、という約束を取り付けた。お世辞にもデート向きとは言えず、とうていヒットするとは思えない作品だった。ストーリーが暗いことが目に見えて明らかだったし、主演の俳優も有名ではなかった。今思えば、私がその映画を観たくなったのは、彼と会う口実が欲しかったからだったのだ。
待ち合わせはスカラ座だった。真冬だったと思うが私は髪をアップにし、首をすくめながら日比谷線に乗り込んだ。スカラ座の近くにどんな喫茶店があるか調べようと思ったが、私の携帯電話は通信速度制限の真っ最中で、調査は難航した。彼に午前中送ったLINEの既読がまだ付かないことが心配だったが、それも通信速度制限のせいかもしれなかった。
スカラ座に着いてしばらく待ったが、彼は現れなかった。電話を入れたが、18コール目でもついに取らなかった。先にチケットを買っておこうとしたが、彼の座席の好みが分からなかったからかけたのだ。仕方がないから、とりあえず真ん中のほうの席を2つ押さえた。
真冬だったと思う。土曜の19時すぎ、待ち合わせから1時間経ったが彼は現れなかった。LINEの既読は未だに付かなかったし、電話が取られることもなかったが、これはおそらく通信速度制限のせいだろう。彼との関係を前々から相談していた先輩にこのことを報告すると、それってLINEブロックされてるんじゃない?と返された。先輩からLINEが返ってくるということは、通信速度制限はLINEの送受信に影響がなかったということだ。ふと思い立ってFacebookのメッセンジャーを開いてみたが、彼の名前は友達一覧になかった。私はひじょうに混乱したが、昨日したLINEのやりとりは確かに今日を約束していた。
「もちろん!!」
映画のチケットは2枚あったが、1枚はナチュラルローソンのゴミ箱に捨てた。わんわん泣けたらよかったのだが、なんとなく泣けなかった。そのままナチュラルローソンに寄って、いつもは買わないちょっと高いコーヒーと、いつもは買わないちょっと高いお菓子を買って、その足でスカラ座に向かった。驚くほど落ち着いた素振りで上映室に入り、買ったばかりのお菓子は予告編のあいだに食べ切った。映画のストーリーは暗かったし、出演者の俳優もあまりよく知らない人ばかりだった。正直、つまらない映画だったと思う。驚くほど落ち着いた素振りで家まで帰ろうと思った。乗り込んだ地下鉄が自宅と逆方向だと気がついたときには、すでに15分以上電車に乗ったあとだった。日比谷線のアナウンスを聞きながら、ああ自分は捨てられたのだ、という自覚がようやく出てきて、ちょっと笑ってしまった。捨てられたくらいで傷ついたわけじゃない。ただどうせなら、思い切り引っぱたいてから捨ててほしかったのだ。
私は大人になって、彼のことをすっかり忘れていた。彼と何の関係もない知人と、数日前から連絡が途絶えている。コロナウイルスが巷で騒がれている時期なので、一人暮らしをしているその人の安否がとても気にかかった。連絡をとりたい人がいるんだけど、LINEブロックされてるわけじゃないんだよね。なのにいつまで経っても既読もつかないし、電話もつながらなくて。その不安を友人に吐露すると、彼女に「LINEがブロックされてるかどうかなんて、どうやってわかるの?」と返された。わかるんだよ、なんて返事をしながら、私は息が苦しかった。この人は、今までつながっていた誰かから一方的に拒絶された経験がないのかもしれない。この人は、グーグルで「LINE ブロック 確認」なんて検索ワードを打ち込んだことがないのかもしれない。この人は、私が今抱えている種類の不安を想像することができないかもしれない。誰かとつながっていたい気持ちばかりが肥大して、コミュニケーションを遮断されることを必要以上に恐れている自分の自意識に心底嫌気がさした。なにも知らないで「そっち側」にいる彼女が本当にうらやましかった。相手が自分を拒絶しているかどうか、知ろうとしたことすらない彼女のほうが、私なんかよりよっぽど自然に誰かとつながっている。
私は負け組だ、と思った。
夜中にふと目がさめて、あの時映画に誘った人の名前をLINEで検索してみた。プレゼントする背景は、トイ・ストーリーにしてみよう。「この人にプレゼントしますか?」、はい、「この人はすでにこの着せ替えを持っています」、笑っちゃうな、あなたみたいなやぼったい人がLINEの背景を着せ替えなんてしているわけないでしょう、ディズニーの映画なんて見たこともないくせに、私を嫌いになったなら嫌いになったと一言いえばいいでしょう、なんの会話もなく捨てられるのは引っぱたかれるよりよっぽどつらい、人間関係をシームレスに終わらせようとしてんじゃねえ、ナメられたもんだな一方的に拒絶するなんて、何のつもりなんだ、ふざけるな、クソ、
彼はディズニーだけじゃなく、スヌーピーとBT21とスポンジボブとハローキティとムーミンとあらいぐまラスカルの着せ替えをすでに持っているようだった。あのやぼったい彼が本当にそのすべての着せ替えを持っているとしたら滑稽だ。あのやぼったい彼が本当はいずれの着せ替えも持っていないとしたら、それもまた滑稽だ。なんにも知らないで、私のプレゼントまみれだ。なんだかすごく笑えて、また息が苦しくなった。あと何回こんな思いをしなきゃいけないんだろう、と想像すると、明日世界が終わっても全然かまわないと思える。
平日なのに休みになってしまった。カミサンは仕事だ。なので晩飯の準備ということで近所のスーパーに買い物に行った。
レジで、前のオッサンがスマホを見ていてろくに詰めもしない。少々いらいら。煙草を買おうとして銘柄だけ言い、「番号でお願いできますか」と返され「えーっと……」。ああ、イラっとくるなあ。煙草なんか喫う奴ぁさっさと息でも詰まらせりゃあいいのに、などと酷いことを考えてしまう。
レジを抜ける。30代と思しき女性が、買ったあとの品を袋に詰めているのだが、「バン!バン!」と音をたてながら、叩き込むように袋に入れている。顔を見ると何も表情らしい表情を浮かべていないのが余計に不気味だ。こちらも急いで買ったものを袋に詰めて去ろうとすると、小学生位の女の子を連れた、やはり30代と思しき女性が歩いてくる。
「みんな学校ないの?」
と、娘が頑是無く聞くのに、明らかに不機嫌な口調で、
という娘の言葉に、苛立ちを丸出しにして、
「今日から公立休みって言ってるでしょ!だから皆休みなの!どうして何度も言ってるのに、そんなことも分かんないの!」
2つの点で魅力的な案だった。誘われたのが僕で、誘ってくれたのが彼女だったからだ。それ以外は最悪だった。説教などしたくはないが、真面目に答えることにする。
「あのさ、みんなそういうの止めようって自粛してるんだよ。控えようとは思わないの」
「むしろ逆でしょう。明日までは"要請"で、それ以降は"命令"なんだから」
自由に遊べる最後の日ですもの、と言うので、僕は上司に休みをもらうと連絡した。
会うのは久しぶりだった。駅の東口、喫煙所で煙草を吸って時間を潰していると、向こうから彼女がやってきた。都合15分ほど待たされたが、特に申し訳なさそうな様子もない。自分を地軸か、グリニッジ天文台だと思っているのだろう。
我々はとりあえず全く人気のない元繁華街を歩き回り、そのゴーストタウンぶりを満喫した。スクランブル交差点で無意味にぐるぐる大手を振って回ってみたり、いつも行列の店に5分で入ったりした。
そういえばタピオカ流行には乗り遅れた、というので、有名店を探してしばらく歩いた。紡錘形のカップにカラフルな色のドリンク、そして黒ぐろと浮かぶタピオカ。実を言うと僕も初めて飲むことになった。一応人気店ではあるらしいが、人っ子一人おらず、普通に買えてしまった。
「こんな風にドッと流行って、すっと収まってくれたらいいのにね」
お前は誰の目線で怒っているのだ、と思わなくもなかった。
カップの中で滲んでいる黒い影は、ニュースで見るウイルスにそっくりだった。
貸し切れるなら何がいい?と相談した結果、次に映画館へ赴いた。
営業時間は短縮されていて、本数も少ない。係員は皆、マスクを付けていて表情が分からない。
ポップコーンだけはなぜか平常時と同じくらい作られていて、あんな量誰が食べるのだろうと僕は不思議に思った。
券売機で見ると、なんと一人も客が居ない上映時間があるではないか。内容には毛ほども興味はなかったが、ホール一つを貸し切れるのならばと我々は即断しチケットを購入した。
内容はやはりイマイチだった。貸し切りのつもりだったのに、途中で大学生風の男が入ってきてしまった。
仕事を休んでまでロックダウン・モラトリアムを楽しんでいた自分も、人のことを言えた義理ではない。
僕は目が悪く、暗いところから明るいところに出ると、その差に目が慣れず、時々立ち眩みを起こしてしまう。
「まるで酔っ払ってるみたい」
「なら、映画館なんて入らなければよかったのに」
とはいえ、手を握って支えてもらえるので、決して悪い気はしなかった。しばらく散歩しながら、色々な不安を語り合った。どうしようもないことは、一度手放して時間を置くことが必要なのだ。自分の手から離すためには、誰かに話すことが一番だった。
「優しいお父さんだったのね」
そうだったのかもしれない。でも、父については分からないことが多いままだった。もっと話しておくべきことは沢山あったのに、ないがしろにしてしまったのは僕だった。
「ねえ、明日東京がロックダウンするっていうのは、実は嘘なの」
でも、その具体的な内容を僕は思い出すことができなかった。
「明日も、明後日も。大きくは変わらない。象徴的な出来事なんて起こらないし、生活は錆びた車輪みたいに金切り声を上げるけど、誰にも届かない」
「もし、次に生きて会えたら、もうちょっと面白い映画を見ましょう」
「いいね」
そのようなことを話して、僕らは帰路についた。
日曜日、そういえば二週間ほど自慰行為をしていないことに気づき、ソープランドに行くのも悪くないと思い立った。別に多忙であったわけではないが、ときおり無気力なまま時間を過ごし、気づいたら長らく抜いていないことがある。
だが、日曜日はもともとジョギングに充てるつもりだった。ここでさぼるとしばらく走れなくなる。ついでに土曜日に大量に飲み食いした分も消費してしまいたい。
そういうわけで、近所を走り回ってからまだムラムラしていたらソープに行くことにしようと決断した。走っている間はずっとソープランドのことを考えていた。基本的に走っている間は退屈なので、何か考えるべきことがあるのはありがたい。以前は音楽を聴いていたのだが飽きてしまった。最近の曲を別に知りたいわけでもないし、聞き放題サービスにも関心はない。それに、たまたま聞いた曲が気に入ったものであったときに、立ち止まって調べなければならないかと考えると、それもまた億劫だ。たぶん簡単に調べる手段はあるのだろうが、積極的にサービスに加入したいわけではない。
1時間半ほど走ってからシャワーを浴びても、まだいくばくかムラムラしていた。どうしたものかと寝床でごろごろしていると、右手の薬指に痛みがあった。不審に思い見てみれば爪が割れている。どこで割れたのかまったく見当もつかない。これでは到底風俗に行くわけにはいかない。嬢に割れた爪で痛い目をさせるわけにはいかないし、傷跡から何に感染するかもわかったものではない。しょうがないのでその晩はソープランドの動画で抜いて寝た。
わからないのは、二週間の禁欲直後よりも、一発だけ抜いた翌日のほうがムラムラすることだ。二発三発抜いた直後のほうが、禁欲中よりも性欲が旺盛になる現象と関係しているのかもしれない。陰茎が触れられる喜びを覚えているからかもしれず、一発の射精がある種の呼び水になっているからかもしれない。
ところで、今朝体重を測ってみたが、土曜日のシュラスコはそこまで後を引いていなかった。むしろ減ってさえいた。肉ばかり食べて、パンや米を食べなかったからだろうか。炭水化物ダイエットを信奉しているわけではないが、昼が多めのうどんだったので、平均すれば炭水化物は摂取している。
土曜日に友人とシュラスコを食べた後は、閉店時刻まで煙草臭い喫茶店でだらだらと過ごしたのだが、雑談で気分が晴れた。最初は友人との会食後、別れてこっそりと風俗に行くつもりだったのだが、取りやめて正解だった。ところで、自分は煙草はまったく吸わないのだが、ここ数年ニコチン臭い店の居心地がいいと感じてしまうのはどうしてか。昔はそういう場末じみた雰囲気を毛嫌いしていたものだが。別におしゃれな店が嫌いになったわけではないし、理由ははっきりしない。ただ、なんであれ、居心地がいいと感じる場所は多いに越したことはない。