はてなキーワード: ジャムとは
いつも通りジャムかけて食べるよ
「何でこんなことをしたんだ! 盗みが犯罪だなんて分かっているはずだ。それともバレなきゃいいとでも思っていたのか?」
この事件で危うく犯人にされかけたこともあって、表情からは怒りが滲み出ていた。
しかし従業員の怒りは収まらず、余計に火に油を注いだようにみえる。
従業員はかなり感情的になっており、今にも掴みかかりそうな勢いだ。
「しかもこんなにたくさん盗んで、持って帰る気マンマンじゃないか」
「えーと、家族にも食べさせようと……」
「盗んだパンを家族に食べさせるって? そんなので腹を満たせて家族は喜ぶか?」
従業員の詰問は高圧的であったが、言っていること自体は正論だったので間に入りにくい。
おかげでコッペパンを食べ損ねたのだから、文句の一つくらい言ってやりたくもなる。
ただ、怒りに割くエネルギーすら惜しい状態だったので静観していた。
「ごめんなさい、許してください!」
「ちょっと待ちな!」
従業員の怒りがいよいよピークに達そうとしたとき、それを静止する言葉が食堂内に轟く。
その声の主はオバチャンだった。
「事情はよーく分かった。今回は勘弁してやろう」
「ええ!? どんな事情があれ、盗みは盗みだろ。それを許すってのか?」
「そうするしかない理由があったんだから、大目に見てやろうじゃないか。『盗みは盗み』だからと冷たくあしらう、“罪即罰”なんて世の中は寂しいだろう」
犯人探しを血気盛んに始めた張本人にも関わらず、この場においてオバチャンは慈愛の心に溢れていた。
「ちっ……分かったよ」
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
なんだか酷い茶番を見せられている気がするが、とりあえずこれで一件落着ってところか。
この場にいる人間が許すというのなら、水を差すようなことを言うつもりはなかった。
その様子を静観していた俺に、カジマが話しかけてくる。
「ほら、マスダ。待望のコッペパンっすよ」
そう言って犯人のバッグに入っていたパンを手渡してくるが、もはやそれは俺の望むものではない。
無造作に詰められていたものだから拉げていて、ジャムのせいで全体的にベトベトしている。
とてもじゃないが俺のコッペパン欲を満たせるものではなく、すぐに突き返した。
「いや……いらない。ジャムでグチャグチャになってるし、食う気しねえよ」
「ジャム……?」
そんな俺たちの何気ないやり取りを聞き、オバチャンが妙な反応を示す。
「まさか、アンタ……このコッペパンにジャムをつけたのかい?」
さっきまでの態度が嘘のようなドスのきいた声色で犯人に尋ねた。
「え……は、はい」
そして犯人の返答を聞いた瞬間、オバチャンの仏のような表情がみるみる内に鬼のように変貌していく。
「どうやら、アンタを許すべきじゃないようだね」
「ええ?」
オバチャンの心境の変化に、俺たちまで戸惑った。
一体、何が逆鱗に触れたんだ。
「え、さっきパンを盗んだの許してくれるって……」
「アタシが許せないのはね、“パンを盗んだこと”じゃないんだよ。その“盗んだパンにジャムをつけた”ことだ!」
そう言ってオバチャンは犯人の首根っこを引っ捕まえ、食堂の奥へ消えていってしまった。
取り残された俺たちは、その場に呆然と立ち尽くす。
「ね、ねえマスダ。オバチャンはパンを盗んだことは許したのに、何でジャムをつけた途端に怒り出したの?」
そんなの、こっちが聞きたい。
「多分だけど……“盗んだパンにジャムをつける”のは、“味を楽しむ程度の余裕がある”ってことになるから……じゃないか?」
なるほど、そういうことか。
飢えて心身共に余裕がないとか、或いは誰かのためにやったとかならオバチャンは許すつもりだった。
だけどジャムをつけるという、余計な欲やエゴを認めるほど寛容ではなかったようだ。
「はえ~、ジャムをつけただけで、そこまで話がややこしくなるなんて変な話っすねえ……そうだ、これを『パンジャム理論』って呼ぶのはどうっすか?」
「何言ってんだ、お前」
この出来事が俺の期末レポートにどのような影響を及ぼしたかというと、結論からいえば何も関係ない。
腹を満たしたわけでも、代わりに何かを得たわけでもなく、結局はBのマイナスだったので全くもって無駄な時間を過ごした。
だがカジマは学び取れるものがあったらしく、『パンジャム理論』を考案。
レポートにまとめて提出し、見事D評価を貰って補習が決定したらしい。
俺はそう言いながら、彼に鋭い視線を向ける。
「……なにか不自然なことが? 僕は正解のタイムに一番近いのに」
「俺は『最も誤差のある人間が犯人』だと言っただけだ。その誤差が『正解タイム』だとは言ってないぞ」
「……え?」
「まだ気づかないのか。他の三人は正解タイムから30秒近くも離れている。なのに“お前だけ正解に近い”んだ」
「……ああっ!」
俺の罠にやっと気づいたらしいが、もはや手遅れだ。
勘付かれてもおかしくなかったし、見当外れの可能性も大いにあったが、目論見は上手くいった。
「オバチャン、もう一度聞くぞ。俺が注文する数分前、まだコッペパンの残りはあったんだよな。今もそう言い切れる自信があるかい?」
「うーん……でも、ここまで数え間違えるなんて、自分でも信じられないよ」
この事件のポイントは犯行推定時刻、アリバイをどう崩すかに尽きる。
オバチャンは「超能力を使えばアリバイなんぞ関係ない」として、アポートが使える従業員を犯人と推理したが、超能力の制約もあって難しいと結論付けられた。
実はこの推理、かなり核心に迫っていたんだ。
だけど、それは他の超能力者によってだ。
そしてその超能力は直接パンを盗める類ではなく、犯行推定時刻を誤魔化せるものだと俺は予想した。
だから時間当てゲームを提案し、その結果から手がかりを得ようとしたわけだ。
「超能力は、そんな大層なことはできない。恐らく限定的な暗示能力とかで、俺たちの体内時計をズラしたんだろう」
意識して数えてもここまでズレるのだから、そうじゃなかった場合は尚更だろう。
こうなると、オバチャンの言っていた犯行推定時刻はアテにならなくなり、必然的にアリバイも崩れる。
俺は、彼にそう言って詰め寄った。
他三人も、どう答えるのかと注目している。
超能力を使ったことは暴けたが、こいつが言い逃れできる余地はなくもない。
さて、どう取り繕ってくる?
「……証拠は?」
俺は溜め息を吐きつつ、従業員に目配せをした。
「ん?……ああ、そうか」
その視界内には彼の学生バッグもあった。
「……あっ、ちょ、ちょっとやめて!」
彼も何をするか分かったようだが、問答無用。
二つのバッグは一瞬だけ消え、すぐさま姿を現す。
「今、俺が持っているのはお前のバッグだ。さて、中に入っているのは教材だけか?」
みんなにも見えるよう、バッグを大きく開いてみせる。
「というか、最初から持ち物検査すれば解決していた気がするっす」
カジマの言う通りで、俺はもっと早くそのことに気づくべきだった。
数個のパンを短時間で食べきるのは難しいのだから、いくつかは隠し持っていると考えるべきなんだ。
仮に食べきったとしても、口の中を確認すれば痕跡が見つかるはず。
そんな簡単なことに気づかず、随分と迂遠な真似をしてしまった。
空腹で冷静ではないという自覚はあったが、俺の脳は思っていた以上に栄養が不足していたらしい。
この中に犯人がいるはずなのだが、全員にアリバイがあるという矛盾。
何かを見落としているのだろうけれど、その見当がつかない。
「はあ……もうどれくらい経ったんだ」
あまりのもどかしさに、地球の自転速度が狂っていくのを感じる。
もはや俺の体内時計は、まるで参考にすらならない時刻になっていることだろう。
そんなことを考えていた時、俺は何か“引っかかり”を感じた。
「……ん、待てよ」
それが消えてしまわないよう思考を巡らせ、辻褄を合わせていく。
それはか細くて、確信とは程遠い。
それでも、その可能性を確かなものにできれば、事件解決に大きく繋がる。
試す価値はあるだろう。
こちらに視線を向けさせると、俺はおもむろに携帯端末の画面を見せた。
「それは……ストップウォッチ?」
「今から俺がこれで時間を計る。そしてテキトーなタイミングでそれを止めるから、何秒かを当ててくれ」
「なんで、今そんなことをする必要が?」
「それで犯人が分かるんだよ」
俺の言葉に、皆が戸惑いの色を隠せないようだった。
まあ、そりゃそうだ。
突然、時間当てゲームを提案され、しかもそれで犯人が見つけられるなんて言われても理解できるはずがない。
だからこそ、俺にとっては好都合といえる。
「理由は後で説明する。今いえることは、最も誤差のある人間が犯人だってことだけだ」
あえて断片的に、そう語った。
こう言えば、みんな真面目に数えてくれるだろう。
「じゃあ、押すぞ」
俺がいつタイマーを止めるのか、気が気でないのだろう。
「ストップ!」
頃合を見計らって、俺はタイマーを止めた。
そして、何秒で止めたのかをそれぞれ紙に書いてもらう。
「ようし、じゃあ一斉に見せてくれ」
そこに書かれた数字を見て、俺は驚きを隠せなかった。
予想はしていたつもりだが、まさかこれほどとは……。
「正解は……30秒だ」
そう反応するのも無理はない。
なにせカジマは60秒、オバチャンは65秒、従業員は59秒という回答だったからだ。
あまりにも誤差が大きすぎる。
だが、ただ一人だけ、「27秒」と誤差が少ない男がいた。
「もしかしたらと思ったが、やっぱり“お前”か」
「ちょ、ちょっと待って!? 自分も従業員ですよ。パンを盗める時間なんて無い!」
「でもアンタには、“アレ”があるだろう? ちょくちょく使ってるのを見たから知ってるんだよ」
オバチャン曰く、犯行推定時刻中は皆が目に見える場所にいたらしい。
犯人がこの中にいるにも関わらず、全員にアリバイがあるという状況。
大掛かりなトリックでも使えばアリバイは崩せるかもしれないが、パンを盗むためにそこまでやるとも思えない。
となると、もっと“手軽かつ特殊な方法”が使われたと考えるべきだろう。
そして、この従業員は『アポート』という、物体を瞬間移動させる力があった。
俺もこの従業員とは別件で関わったことがあるので、それが事実であることは知っている。
アポートをつかえば、アリバイを成立させつつパンを盗むことは可能かもしれない。
だが、この推理には一つ誤解がある。
俺は少し横槍を入れることにした。
「オバチャン、その従業員が犯人と決め付けるのは気が早いと思うよ」
「え、何でだい?」
「超能力は万能じゃないんだ……そうだろ?」
俺がそう言いながら目配せすると、従業員はバツが悪そうに説明を始めた。
「信じてもらえるかは分かりませんが……自分のアポートは『二つの非生物の位置を入れ替える』ことしかできないんです。そして、入れ替える対象は同じ大きさじゃなきゃダメだし、視界に両方収める必要もある」
そう、この従業員のアポートは、無条件に何でも移動させられるようにはなっていない。
アリバイを成立させつつ、パンを盗めるような超能力ではないんだ。
「もちろん、この従業員が全て本当のことを言っている保証はない。だけど、超能力にリミッターがあるのは確かなんだ」
「え、何それ?」
何となくそんな気はしたが、オバチャンは超能力のことは知っていても“リミッター”の概念は知らなかったようだ。
超能力は人によって性質こそ様々だが、いずれも何らかの制限がついている。
例えば弟のクラスメートにタオナケっていう超能力者がいて、そいつは裸眼で捉えた物質を破壊することができる。
ただし、そのためには数秒間、対象を睨み続ける必要があるんだ。
更には体調によって成功確率が変動し、普段はせいぜい5回に1回といったところ。
これはタオナケが超能力者としてポンコツだからではなく、身体的メカニズムとしてリミッターがかかっているからだ。
超能力はそのままだと強すぎるので、リミッターがないと人という器は耐えられないのである。
時を止めて自分だけ動くとか、人を生き返らせるといった規格外な超能力は存在し得ないのさ。
「……というわけでアポートには制約が多いので、誰にも気づかれないようパンを盗むのは常識的に考えて難しいかと」
「ええ~、ほんとにぃ~?」
「義務教育で覚える話ですよ」
「それ言われると、弱っちゃうなあ……」
「オバチャンの気のせいってことは? パンは本当に残っていなかったの?」
その後も、皆であーだこーだ言い合うが、話は平行線のまま進まない。
みんな疲弊するばかりであり、俺もこの状況にはかなり参っていた。
もちろん、俺は犯人じゃないことが確定しているから、このまま帰ってしまってもよかった。
帰りに適当な店でコッペパンを買ってもいいし、違うパンでも構わないとも思っている。
このまま何食わぬ顔で何かを食べても、表面上は腹を満たせるだろう。
だが、『食べようと思っていたものが食べられなかったという体験』が問題なんだ。
そんな心理的負荷を抱えたままレポートに取り組める図太さは俺にはない。
この事件を明らかにしない限り、俺の心にはポッカリと穴が空いたままになる。
……まあ、とどのつまりは意固地になってるだけなんだが。
待ち続けること数分―――
「遅いな……」
いや、実際は1分と経っていなかったかもしれない。
なにせ、その時の俺は期末レポートを抱え、空腹とコッペパン欲も併発していた。
焦燥感によって地球の自転速度は狂いまくり、うるう秒による調整は困難を極める。
そんな無限にも思えた時間の中、ようやくオバチャンが戻ってきた。
だけど、何も携えていない。
「ねえ、ちょっと……」
会話の内容は聞き取れないが、表情の険しさからタダ事ではないのが伝わってくる。
そして突然、オバチャンは食堂全体にダミ声を響き渡らせた。
「どういうことだ、オバチャン」
「持っていかれてる」
「え、まさか……盗み?」
「そう」
「何が盗まれたんだ?」
状況から考えて、返ってくる答えは明白だったろうに。
「コッペパンだよ。残りが全部なくなってる」
言葉として理解できても、あまりにも予想外な展開に心が追いつかなかった。
こうして俺はレポートも空腹も宙ぶらりんのまま、事件に巻き込まれることになった。
まったく、何でこんな目に合わなくちゃいけないんだ。
「盗みが起きたのは分かったけど、何でオイラたちは食堂から出ちゃいけないんすか?」
その中にはクラスメートのカジマもおり、ぶつくさと文句をたれている。
「ええ!? どういうこと?」
オバチャンによると、コッペパンの残りは数分前まであったらしく、盗みはその時間内に起きたことになる。
そして、食堂は人が少ない時間帯で、20分ほどの間に出入りをしたのは俺だけ。
「本当にこの中に犯人が? そこまで言い切れる?」
「出入り口はカウンターから一望できるし、今の時間帯は出入りが少ないから、数え間違いは絶対ないよ」
人の出入りがあれば記憶に残るだろう。
「この中にいるのは分かったけど、どうやって犯人を見つけるつもりっすか?」
「ふふん、実は既に見当がついているんだよ」
オバチャンの自信満々な物言いに、皆がザワつく。
俺も多少は絞れているが確信には至っていないので、これには驚いた。
「まず消去法で候補を外していくよ。アタシはもちろん違う。基本的にみんなの目に見える場所で働いているから、パンを盗んだり処理したりするのは無理だからね」
「え~? でもオバチャンは従業員で、しかも第一発見者じゃん。パンがなくなった時間を誤魔化せば、いくらでもアリバイは作れるっすよ」
「やだねえ。もしアタシが盗んだのなら、ここまで大ごとにせず黙ってればいいだけじゃないか」
そんな感じでオバチャンは雄弁に語りながら、推理を披露し始めた。
その様子は少し楽しげにすら見える。
場を仕切りたがるのといい、刑事ドラマでも観て感化されたのだろうか。
「コッペパンを注文した兄ちゃんは、食堂に入ってきた時刻と事件発覚にほとんど間がない。犯行は物理的に不可能だ」
とはいえ、オバチャンの推理はそこまでデタラメというわけではない。
一応の筋は通っているし、憶測の動機から犯人を決め付けたりもしない。
無意味な深読みをして俺を犯人だとか言い出さないだけマトモな方である。
そうしてオバチャンは回りくどい説明を挟みながら、満を持して犯人を指差した。
何を持って普通と言うべきかなんて知らないが、ともかく普通なんだ。
不衛生というわけではないが、綺麗と評するのには無理がある内観。
カウンターに貼り出されるメニューは、ちょっと離れた場所から見るだけで全部読める。
そして料理の見た目は精彩さを欠き、味に至っては繊細さの欠片もない。
そんなの“自己責任”さ。
食堂を利用する生徒の半分はそう答えるだろう。
1位は唐揚げ
2位はハムカツ
3位は細切りフライドポテト
4位は素ラーメン
5位がカレー
例えば4位の素ラーメンに放り込めば、若者の飽食に応える「揚げ物が入ったラーメン」が完成する。
衣から滲み出た油はスープに溶け込み、そのスープを衣が吸うという循環システム。
コショウをかけて麺と一緒にすすれば、別々に食べるより何倍も美味いという幻覚をもたらす。
或いは、5位のカレーに乗せてもいい。
具があるのかないのか良く分からないカレーは、「明らかに具のあるカレー」に生まれ変わる。
飯とルゥの配分に苦戦しながら頬張れば、「1+1=2」という真理に辿り付けることだろう。
生徒の間ではあまり評価されていないが、このコッペパンは割とちゃんとしている。
甘さも塩気もないが、ほのかに感じる小麦の香りは食欲をかき立て、素朴な味は期待を裏切らない。
バターが塗られていないため艶はないが、しっかりと保たれた楕円形によってパンは輝いているように見える。
トッピングは多くないものの、マーガリンや生クリーム、チョコに粒あん、いくつかの惣菜があったりと要所は抑えていた。
更にはサイドメニューで応用が利くので、その可能性は数倍に膨れ上がる。
そんなわけでコッペパンは人気こそ上位ではないが、安定した需要のある公務員だ。
時々、無性に食べたくなってしまう人もおり、かくいう俺もその一人だった。
特に、その日は月に一度あるかないかというコッペパンモードに突入しており、加えて空腹にも襲われている。
頭への栄養が不足しているせいもあり、わずかな理性で押さえつけているのが現状だ。
俺は焦りを表に出さないよう意識しつつ、平均速度で歩行しながらカウンターに向かう。
とりあえず、たんぱく質が欲しいからハムカツとタマゴは外せない。
それに糖分も欲しいから、シンプルに砂糖だけまぶしたやつを……小豆マーガリンもいっておくか。
それを口当たりのよい牛乳で流し込めば申し分ない。
近々訪れる未来をシミュレートし、自分の口内に唾液が分泌されていく。
「はい、ご注文どうぞ~」
唾液が溢れないよう気をつけながら、俺は注文を口にした。
「オバチャン、コッペパンください」
「それで、二人はもう主題を決めたのか?」
俺は探りを入れてみた。
この期末レポートで最も避けたい事は、テーマや内容が似てしまうことだからだ。
相対評価なんてされたら困るし、コピーを疑われて減点なんてのは最悪である。
「僕はオオザワの『不可逆性の時代』についてレポートを書こうかな~と」
タイナイの持っていた本に目を向けると、表紙に『不可逆性の時代』と書かれているのが分かった。
主題だけは決まったものの、何から取り組めばいいかなんて見当もついていないとみえる。
以前もそんなノリでレポートを書いて、シマウマ先生に「意識高い系の読書感想文」だと揶揄されたばかりだろうに。
「ウサクの主題は?」
「我は『未だ残り続ける、前世代の負債』だ。ここ50年の間に起こった大きな出来事をまとめ、現代にどのような負債を残しているか調べる。そして、その是非や責任を考察し、次世代に残さないためにはどうすべきか等を書くつもりだ」
翻ってウサクはさすがといった感じだ。
シマウマ先生が喜びそうなテーマに狙いを定め、更には方針まで既に固めてきている。
ウサクがそうしてやっと掴めるレベルだから、俺には逆立ちしても無理だろう。
そもそも逆立ちなんて出来ないし、出来たところで頭に血が上るだけに違いない。
二足歩行でBあたりをせいぜい目指そう。
俺は図書室内をのそのそと歩きながら、並ばれた本を眺めていく。
タイナイみたいに漠然と選ぼうかとも思ったが、それが複雑で面倒なテーマだったりすれば後が厄介だ。
変なところで油断をしたせいで春休みの予定が台無し……という事態などあってはならない。
「んー、これとこれを合わせて、ちょっとヒネってみるか」
そうして気になった本をいくつかチョイスし、うんうん唸ること十数分。
……まあ、自分で言うのもなんだが、センセーショナルさには欠けるな。
しかし、身の丈には合っている。
焦点を絞ったので、調べる範囲も狭くて楽だ。
後は目ぼしい資料を見つけ、あの馬面の欲求を満たす事実を抜き出していけばいい。
その事実から分析できるものを並べ、大まかな見解としてまとめれば完成である。
「はー、やれやれ」
ようやっとテーマと大まかな方針が決まり、俺は安堵のため息を漏らした。
グギュルルルル―――
だが、その吐息の音は、腹の唸りによってかき消される。
そういえば、俺は空腹だった。
課題のため後回しにしていたが、こいつに喚かれちゃ仕方ない。
1日の長さは地球の自転速度によって決まっているらしい。
地球が1回転するのが平均24時間で、それが1日の長さになってるんだとか。
しかし毎日同じというわけでもないようで、その時々によって分や秒の長さも変わる。
天体物理学だとかはサッパリ分からないが、その違いを感じ取ることは俺にでも出来る。
地球の自転速度は異常をきたし、人間の体内時計は大きく狂わされる。
縞柄のシャツをいつも着ていたので、俺たちは尊敬の意を込めて「シマウマ先生」と呼んでいた。
彼の課題に対する評価は非常にシビアであり、他の先生ならば通用する手抜きも減点対象にしてくるほどだ。
「あらかじめ言っておこう。この課題の評価は、成績のおよそ5割を占める。落書きを出した者の末路は悲惨ということだ」
恐ろしいのは、それが脅しでも何でもなく事実であるということだ。
もしもこの忠告を甘く見たとき、その人間に待っているのは「補習」という名の拷問である。
「お前たちの中には、この課題を恨めしく思う者もいるだろう。だが分かって欲しい。私は生徒を正しく評価したいだけなのだ。優秀ないし勤勉でいてほしい。その手ほどきを惜しむつもりはない」
とどのつまり「補習になった生徒に対しては、春休み中だろうと容赦しない」という宣誓である。
その言葉からは、むしろ補習組を作りたいという情念すら感じた。
そんなことをしても教師の仕事は増えるし、生徒の休日は減るしで誰も得しないというのに。
或いは生徒の苦しむ姿を見て喜ぶサディストなのか。
実際どうなのかは知らないが、何にしろ俺たちは課題をこなさなければならない。
春休みにもなって、擦り切れたラジカセのような講釈を聞くのは御免こうむる。
期限は2週間ってところだ。
地球の自転速度が狂っている今、猶予はそこまでないと考えるべきだろう。
「あ、マスダも来ていたんだ」
どうやら俺と同じ目的のようだ。
「カジマは?」
「彼奴は期限ギリギリになるまでやる気がないらしい」
「おいおい、カジマのやつ。またネット記事からパクってくるつもりじゃないだろうな」
「それを気にかける筋合いも、そんな余裕も我々にはない」
冷たいようだが、ウサクの言うとおりではある。
この課題は孤独な戦いであり、俺たちは互いに協力するわけにはいかないんだ。
お味噌汁・焼き魚or煮魚・玉子焼き・ほうれんそうor小松菜or菜の花のおひたし・トマトのスライス・豆腐・のり
BLTサンド・玉子サンド・ポテサラサンド・きゅうりサンド・ピーナッツバターとジャムのサンド
コールスローサラダ・ポテトサラダ・レタスなどの葉物サラダ・マカロニサラダ
目玉焼き・スクランブルエッグ・ポーチドエッグ・煮卵・温泉卵・ココット
サラダチキン・焼き鳥・つくね風ハンバーグ・鳥そぼろ・かしわ飯・照り焼き・チキンライス
すき焼き・ハンバーグ・焼肉・しゃぶしゃぶ・炒め物・ビーフシチュー・ストロガノフ・ステーキ・ローストビーフ・野菜に薄切り肉巻き
焼き魚・煮魚・🍣
などなどいっぱいあるじゃん
言うなれば三色ふりかけにごま塩が含まれるのと同じくらい謎だ。
もちろん、あんこは歴史ある伝統的甘味で、根強いファンも多い。
でも、さすがにチョコやカスタードと並べるとハズレ感が半端ない。
あるいは、チョコとカスタードがお子様でも大丈夫的な安心感があるのに対し、あんこだけ大人の味みたいな立ち位置になっている。
それとも、兄弟姉妹の子供2人がチョコとカスタードを食べて、お母さんがあんこ食べろってこと?
そうだとしても、食べるまで中身がわからないガチャ仕様なんだよなあ…だから多分違う。
てか、子供心にあんこ掴まされたときのガッカリ感は、食い物の恨みに含んでいいと思う。
これ、汁粉とかもそうなんだけど、粉甘いものなんてお子様の舌に合わないって何度言えば(ry
ちなみに粉甘いで済むのはこしあんだけであり、これがつぶあんになると更に食感が大人向けになってしまう。
お前らだって、今でこそ美味しい美味しい言って食べているたい焼きもどら焼きも、子供の頃はそんな好きじゃなかったろ?
というわけで、文句を言いっぱなしで終わるのも微妙なんで、対案があるとすればいちごジャム。
でなければ、チョコとカスタードをずんだかウグイスか栗あんのどれかにして、完全に大人仕様で行け。
これまた潔くて次点としておく。
○朝食:一本満足バー的なやつ
○間食:柿の種
○調子
はややー。
スマブラ発売したり、ピカブイも発売してるし、他にも色々したいゲームはあるけど、貯金を優先してる。
いやさすがにゲーム一本買うぐらい大丈夫なんだろうけど、積みゲーもたくさんあるしね。
○ポケダン時
主人公はニャース(メス)、パートナーはチコリータ(メス)でプレイ開始。
今日は、出会いのエピソードと、はじめての依頼、それとルリリを助けるお話を途中までプレイ。
昨日も書いた通り、空ダンは何年も前にクリア済みな上に、ストーリーをはっきり覚えているので、
まだ出会ったばかりなのに、この先にあるあの別れを思い出して、なんか悲しくなってきた。
●iOS
チームマッチ中って、レート無視してマッチングされることが多いのだけど、随分したのレートの方と当たってぼろ負けして、がくっと下がってやる気が失せました。
OK1.グラブル:討滅戦マニアック二週、共闘デイリー、イベントデイリーをこなす
OK3.ポケダン時か闇を始める