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2024-04-09

anond:20240408190059

それであってるよ。

いくつかの電池劣化モデルがあって、それを更に電池それぞれに合わせた補正を掛けるんだけど、

Li-ion系では(モデルが)単純なLFPでも複雑なNMCでも概ね変わらない点があって、

50%以上での急速(4C)は明らかにCycleごとの容量低下が加速する。

(これはLiPo含む高容量LiBでほぼ共通して見られる)

そして数十Cycleを超えたあたりから温度依存性が急速に立ち上がる。

なので大体のセル寿命に影響が少ない急速充電は、50%まで温度制御しながらいれて、80%まで温度にあわせて低速にしていくって感じになる。それ以降は温度が高いなら止めるほうがいい。

とにかくLiB化学反応電気化学反応含む)は副反応経路がたくさんありすぎて未だに網羅できていないので、モデル精度も自ずと限界があるんだよ。

どこかで突然現れる稀な事象(いくつかの履歴があるセルだけに突然ある温度帯で負極にウィスカー形成されるみたいなのが、別々のパターンでたくさん起きていることだけは分かっている)だらけで、予測される複雑さに対してデータが圧倒的に少ない。これぐらいのスケール化学的反応の個別追跡の難しさなんだけどね。

ここら辺は化学的な制約なので技術で何とかとか言われても困るんだよな。その技術って魔法のこと?って感じ。

あと100%にするしないは、そもそも100%はEoC(充電終了電圧)の設定で決まるんで、これを引き上げると公称容量が増えて充電回数が減って(セル不良での)安全性が下がる。逆にするとセル寿命は延びるし安全性は多少向上する。でもこれモバイルバッテリーなんかでやると重くて公称容量すくないってなるから、下げて寿命延ばしてた製品はみんな無くなっちゃった

2022-06-20

Li-ion電池の値段が下がることに文句を言ってた増田追記です

anond:20220620011640

(6/21 1:15 追記

なんか元増田とかこの増田で「リン酸鉄系電池のせいでリンが枯渇する・枯渇が近づく」って言う内容を読み取ってる人がいるみたいだけど、そんなこと書いてないよ。元増田では追記で「枯渇が見えてる資源を使ってたら価格が下がっていくとは考えづらい」って書いたし、ここでは「問題消費量じゃない」って書いてるよ。書いてないことを読み取られても反論のしようがないからね。

追記終わり)

書き方が悪くてEVアンチだと思われている節があるんですが(ただこれは完全に私が悪いです。すみません)、あくまで現状の電池技術ではコモディティ化は難しいだろうということを資源という面から書いたつもりでした。いい加減なことを書いているとまで言われてしまったのは心外だったけどね。

以下は気になったブコメへのコメントです。

korilog 埋蔵量はその時点で経済的メリットの出る採掘量なので、採掘技術進歩価格の高騰で増える。自分子供の頃にはお前らが大人になる頃には石油が尽きるからなって言われてたけど、寧ろ尽きるまでの年数が伸びてる

そうだね。でも価格が上がってしまうとますますコモディティ化からは遠ざかるよね。

muchonov 電池技術開発の弾込めは日本含め世界中で高密度化とレアメタルフリー(=廉価化)を目指して突き進んでるので自分は楽観的。次世代Li系は概ねコバルトフリーだし、本命はほぼ無尽蔵のNa・K系。リンは→https://bit.ly/3b1rPGk

そうだね。でもね、リチウムイオン電池って30年前には実用化されてた(1991年ソニー)んですが、EVとして普及し始めたのはこの10年ほど。あくまタイムスケールを感じてもらうためにこの例を出したので、そのまま当てはめることはできないけど新しい電池を車用に実用化するとなったらそれなりに時間がかかるのは覚悟しておくべきだろうね。多分今のEVブームが盛り上がっている間(今のインフレ退治の後の景気後退が来るまで)には間に合わないだろうな。でも、多分EV一般的に普及させるのは全固体電池なり金属空気電池だろうなとも思うから投資は惜しまないでほしいなとも思うね。

リン酸鉄系について色々ブコメ増田があったんだけど anond:20220620101253   に答えるのが手っ取り早そうだから答えるね。

あのさあ、LFP電池が使うリンの量なんて、農業利用される莫大なリン量に比べたらタカが知れてるというか、はっきり言って誤差のレベルでしょ

そうだね。でもね、問題消費量じゃないんだ。リン酸塩の値段は今後も続くリン採掘によって上がっていく。「肥料じゃなくて電池にするから安くしてくれ」なんてできないんだよ。現にウクライナ侵攻後にFertilizer prices indexの値段は2倍になってるからこの影響は半年もしたら出始めると思うな。あとね、個人的心配してるのがこのあと天変地異なりでリンの値段がさらに急騰した場合安全保障名目中国政府梯子を外してくるんじゃないかということ(四川大地震の時に似たようなことが一回あったみたい)。リンレアメタルよりも大事な、人間にとって生きていくのに絶対必要元素なのでそれを電池に使い続けるのは政治的にも難しいと思うな。

そもそもLFP電池自体がNMC系のLiBに比べて長寿なうえに、最後までバッテリセル内に滞留してて100%リサイクルできるから

これは違うよ。調べてもらったらわかるけど二次電池の正極活物質リサイクルって実は難しくて、今やってる電池リサイクルって実は負極に使う銅箔など肝心の正極以外のものが多いんだ(実は三元系でもまだそんなにできてないんだ)。リサイクルビジネスになるかどうかを無視したとしてもリン酸鉄のリサイクルなんて今出回り始めたEVリサイクルをするわけだから10年後に軌道に乗るビジネスだよね。もうすでにリン鉱石の値段が上がり始めている現状で10年後のリサイクルの話をされても、、、って思うね。それこそ次世代電池が普及し始めてるかもしれなくない?

元増田みたいな主張に対して「EVオワタ論者が寄ってきてセンセーショナルになりがちな風潮はマジで吐き気がする」って思う人はむしろ増えると思うよ

これはその通りで、書き方がよろしくなかったと思っていますすみません。あと書き方が悪かったのは承知の上で言ってるけど自分EVアンチでもテスラアンチでもCATLアンチでもないです。CATLは本当に世界一電池メーカーだと思ってるしめちゃくちゃ期待してます

以下はその下の部分に対してのコメントです。




市場原理の話はまあ定性的理解できるんだけど、さっきのタイムスケールの例からもわかると思うけど電池進歩って半導体みたいに速くないんよ。レアメタル使わないのは結構なんだけど、それが使えなかったとしてもみんなEVなり蓄電池が欲しかったらレアメタルを使ってる電池を使わざるを得ない(後、電池の新技術って声高に宣伝される割に実際実用に耐えるのが出てくるのってそんなに多くないんだよね)。個人的なところを言うと新自由主義的な市場原理技術革新を説明するのは開発者ちゃんと儲かる仕組みを作ってからにしてほしいとおもうね。




自動車の電動化についてはおそらく業界の人はみんな避けられないと思ってるよ。でもね、100年ほどの自動車歴史を振り返ったらわかるんだけど先進技術がほぼ100%で不可逆的に普及するタイミングってほんとわかんないんだよね。100年前のアメリカの例で考えてみよう。

1900年代ー1920年代アメリカって蒸気、ガソリン電気自動車が鼎立していて、蒸気はPWRの面で、電気は航続距離の面で難があった。だから当時の人もこれからの主流はガソリンになるんだろうなって思ってて、実際ガソリン自動車会社創業ブームになって1900年代はアメリカ全土でおよそ300もの自動車会社存在したんだ。ガソリン車っていうのは既存自動車に比べて

という利点があった。だからたくさん参入してきたんだ。でもね、結局ガソリンエンジン車の普及とBig threeの隆盛が決定的になったのは自動車技術問題じゃなくて、世界恐慌とその頃にテキサスで大油田発見されてガソリンが安くなったからなんだ。その頃にはもうアメリカ全土にあったガソリン車に群がった中小企業世界恐慌でもう潰れてる。だからその後のアメリカ自動車市場は生き残ってたクライスラーGMFordの寡占になったんだよ。

 この例から見てもわかるんだけどね、みんなわかってるんだよ。次に来る技術は。でもそれが決定的に普及するのは外部的要因に依存することが多くて時期は本当に読めない。だからそこまで体力を温存するという戦略もできるし、むしろ自分でその変化を起こしてやろうという戦略もとれる。どちらが正解なのかは正直分からない。でもね、技術的な側面だけじゃなくて社会的な側面から見ても現状の技術でのリチウムイオン二次電池電池コモディティ化させるゲームチェンジャー足り得ないだろうというのが正直な感想になる(将来的にもないとは言ってないよ!あくまで今の技術ではという話)。ただしその答え合わせは10年後かもしれないし、もしかしたら30年後かもしれない。もしかしたら水素なりアンモニアゲームチェンジャーになるかもしれない。だから日本人としてはトヨタ戦略が正しいと思いたいけど、そうではないかもしれないとは思っています。でもちょっとでも日本自動車産業応援してくれると嬉しいな。

2021-05-16

突然、紹介されるAndroidアプリ集を書いた増田ガジェット

こういうオープンソースとか詳しい人ってどんなスマホパソコン使ってんだろ?

気になるし資金的余裕があれば真似したい

anond:20210516133911

とのことなので暇だし書いてみる

パソコン

自作デスクトップパソコン
OSArch Linux
CPURyzen 9 5900X
ワーキングメモリ32GB DDR4 SDRAM
ストレージ(システム)1TB NVMe SSD
ストレージ(データ1)6TB SATA HDD(RAID0+1)
ストレージ(データ2)6TB SATA HDD(RAID0+1)
ストレージ(データ3)6TB SATA HDD(RAID0+1)
ストレージ(データ4)6TB SATA HDD(RAID0+1)
GPURadeon RX 6900 XT 16GB
ディスプレイモニタ(プライマリ)LG 35WN75C-B
ディスプレイモニタ(セカンダリ)中華ノーブランド14インチ16:9タッチスクリーンディスプレイ
キーボードLily58 Pro(黒軸)
トラックボールExpert Mouse K72359JP

AMD理由OpenGLを重視したか
データには主に子供写真動画が一杯入ってるので速度と冗長性を取ってHDD無駄使いしてる
タッチスクリーンディスプレイタッチスクリーン使うアプリ開発用でAliExpressから拾ってきたガワがない詳細不明品、3Dプリンタで作ったガワで無理矢理マウントアームに付けてる

ノートパソコン
ASUS Chromebook Flip C436FA
OSChrome OS
CPUCore i7-10510U
ワーキングメモリ16GB DDR4 SDRAM
ストレージ(システム+データ)512GB NVMe SSD
ディスプレイモニタ14インチFullHD

ノートパソコンではメインとなってるChromebook
実質的Android Appsが動くLinuxディストリビューションなので非常に便利
Chrome OS有用さを友人へ伝えるたび鼻で笑われていたが、コロナ禍でまさかの注目株に
Chrome OSを使ってる理由が、UNIX使いたい人が安定しているUNIXとしてmacOSを選ぶみたいなノリで、安定しているLinuxディストリビューションとしてChrome OSを使っていると理解してもらえれば良い
ちょっと突っ込んだ使い方しようとすると途端に意味不明挙動をするところまでmacOSと同じである

OneMix3 S+
OSChrome OS
CPUCore i3-10110Y
ワーキングメモリ8GB DDR4 SDRAM
ストレージ(システム+データ)512GB NVMe SSD
ディスプレイモニタ7インチFullHD+

Windows 10からChrome OSへ置き換えた我が家では実質的タブレットとして運用されているノートパソコン
ほぼ子供玩具で一緒にゲームしたりYoutubeみたり電子書籍を読むのに使われている
Chrome OSへ置き換えたのでAndroid Appsも動く

STB
NVIDIA SHIELD TV PRO
OSAndroid 10
CPUTegra X1+
ワーキングメモリ3GB DDR4 SDRAM
ストレージ1(システム+データ)16GB NVMe SSD
ストレージ2(システム+データ)1TB SATA HDD

日本ではほとんど注目されないスマートセットトップボックス
リビングTVYoutubeNetflixを観るのにこれ以上の選択肢はないのだが一般家庭にはあまり普及してないようだ
ちなみにゲームプレイできたりNAS接続できたりもする

スマートフォン

F(x)tec Pro1
OSAndroid 10
CPUSnapdragon 835
ワーキングメモリ6GB
ストレージ1(システム+データ)128GB
ディスプレイモニタ5.99インチFHD+
カメラ(フロント)8MP
カメラ(リア)16MP
バッテリー3,200mAh Li-ion
防水IPX67
生体認証指紋・顔
ICNFC A/B
充電USB-C・ワイヤレス
重量243g

メインで使ってるスマートフォン
ハードウェアQWERTYキーボードを搭載していてTermuxでsshするときに役立つ
スライド機構を搭載しておりQWERTYキーボードをシャコンとスライドさせて出せ、普段普通スマートフォンのように使える

Unihertz Titan
OSAndroid 10
CPUMediaTek Helio P60
ワーキングメモリ6GB
ストレージ1(システム+データ)128GB
ディスプレイモニタ4.6インチHD+
カメラ(フロント)8MP
カメラ(リア)16MP
バッテリー6,000mAh Li-ion
防水IPX67
生体認証指紋・顔
ICNFC A/B
充電USB-C・ワイヤレス
重量303g

サブで使ってるスマートフォン
ガジェット界隈では有名な鈍器で、iPad mini 2019が約300gだったことを考えれば鈍器と呼ばれる所以がわかる
バカバカしいスマホに思えるけど本来タフネススマホなので頑丈さに特化したからこその重さ
バッテリーが大容量なためモバイル無線LANルーター代わりで持ち歩いている
小型版のUnihertz Titan Pocketが予定されているけれどもちろん買う

Xperia 10
OSSailfishOS
CPUSnapdragon 690
ワーキングメモリ6GB
ストレージ1(システム+データ)128GB
ディスプレイモニタ6インチFHD+
カメラ(フロント)8MP
カメラ(リア1)12MP
カメラ(リア2)8MP
カメラ(リア3)8MP
バッテリー4,500mAh Li-ion
防水IPX67
生体認証指紋・顔
ICNFC A/B
充電USB-C
重量169g

お遊び、検証研究用のスマートフォン
最近スマホ一般的に普及しているものと異なるアスペクト比採用していることが増えてきてるのでTitanと合わせてアスペクト比確認用としても使う(アスペクト比が異なってても正しくレンダリングさせるの今後マジで必須だよ。アスペクト比の決め打ちイクナイ)
現在は一部界隈で注目されていたSailfishOSインストールされているが、ぶっちゃけオープンソースコミュニティ関連で人と会うときに見せるためだけに用意している

スマートウォッチ

THE CARLYLE HR SMARTWATCH(Gen 5) 44mm
OSWear OS
CPUSnapdragon Wear 3100
ワーキングメモリ1GB
ストレージ(システム+データ)8GB
ディスプレイモニタ1.28インチ
バッテリー310mAh Li-ion(1Day+)
防水IPX67(3気圧)
ICNFC A/B
充電独自
重量約50g(モデルにより異なる)

AndroidベースWear OSを搭載したApple Watch対抗のスマートウォッチ
美点はスタイリングデザイン豊富さと微妙Apple Watchよりもバッテリーの保ちが良いこと(使い方によって逆転できるレベルの違い、誤差レベルと言って良い)
AndroidChrome OSとの連携はさすがで、スマホを取り出さなくても使えるGoogle Assistantはスマート電球スマートSTB操作に便利
ただやはりApple Watchも抱えている問題でフル機能活用するとバッテリの保ちが1日+数時間というのは時計としてどうなんだろう
スマートウォッチが好きじゃないと毎日充電する気にはならないとは思う

Mi Smart Band 5
OS独自ファームウェア
CPUDialog DA14697 SoC
ワーキングメモリ512KB
ストレージ(システム+データ)16MB
ディスプレイモニタ1.1インチ
バッテリー125mAh Li-ion(14Day+)
防水IPX67(3気圧)
ICNFC A/B
充電独自
重量約12g

スマートウォッチの大本
安価でありながらスマートウォッチに求められることの大半が可能
大半の人にはMi Smart Band 5で十分、Apple WatchWear OSスマートウォッチは必要ないこと間違いなし
そろそろ新型のMi Smart Band 6が大陸以外でもリリースされる予定なので楽しみだ
万が一、億が一、Mi Smart Bandに機能不足を感じたらApple WatchWear OSスマートウォッチを検討しよう
Apple WatchWear OSスマートウォッチは自分のようなマニアポチポチして遊ぶような代物であって全くもってマニア以外にはオススメしない
ちなみに自分マニアなので左手首にTHE CARLYLE HR SMARTWATCH、右手首にMi Smart Band 5だ

という感じかな
増田投稿容量上限もあるのでこの辺にしとく

2020-02-10

anond:20200209170643

ICE効率の点ではEVに遥かに及ばないよ。印象だけでは語るとデマになるので、少し計算した方が良い。

エンジン (ICE: internal combustion engine) 効率

追記: 過小評価していたので熱効率を上げました)

原油⇒精製(90%)⇒輸送(98%)⇒エンジン(30-40%)⇒変速機(80-90%)

=20%-35%程度

効率向上の限界

一番の問題は、熱機関は最良でもカルノーサイクルの壁を超えられないこと。つまり入力と出力の温度差による限界が来るわけ。

エンジンの素材は金属なので、良くても数百度かにしかできないわけで、予算度外視でどんなに効率をよくしても量産車で60%に至ることはありえない。

エンジンアルミか鉄なわけで、そこまで高温にできない。それで30-40%止まりと言うわけ。最近50%近いエンジンができたーとか言うニュースもあるが、もう熱力学上、天井は見え始めている。これは物理学なので、どうしようもならない。

(ちなみに、燃焼温度を上げると今度はNOxなどの問題顕在化してくる。そのため、むしろEGRなどにより温度を下げるのがトレンドエンジン開発はいろいろなトレードオフなのだ。)

ディーゼルエンジン効率比較的高く、CO2排出ガソリンエンジンよりも少ないとされるが、NOx/PMなどの排出が多い問題がある。NOxについてはマツダが頑張って尿素SCRなしのエンジン作ったけど、結局、PMについては、DPFを用いて微粒子を捕獲している。そのDPFの煤焼き運転必要だったりするので、その分の燃料は無駄になるわけだよね。

で、エンジン車の問題として、トルクバンドが上のほうにあるので、クラッチトルクコンバーター等と変速機が必ず必要となる。その際にロスが出てしまう。AT/MT/DCTは段数が少ないとパワーバンドを生かしきれない。段数が多いと重い。CVT滑るし、CVTルードは温まるまで粘度が高くてロスになる(ダイハツCVTサーモコントローラーとかで頑張ってるけど)。

エンジン効率への批判について

エンジンの熱効率50%に達したという記事JSTの「革新的燃焼技術」)で反論する方がいらっしゃるが、そのエンジン実験室の563cc単気筒エンジンだ。もちろん単気筒なんて自動車では振動などで使い物にならないから、最低でも3気筒からとなる。そうしたときに、気筒が増えて動弁系などのフリクションの発生によって効率は下がるはずなので、そのまま量産車に適用することは難しい。実用車では気筒数増加による動弁系の負荷、オルタネーターなど補機系の負荷などもかかってくることも頭に入れておきたい。

日産が45%のエンジンを開発しているとの記事もあるが、これはe-Powerの「発電専用」エンジンだ。ハイブリッドなので、こういう芸当が可能だ。

45%からは数%上げるだけでも相当血のにじみ出るような開発の労力がいるだろう。

燃焼温度についての批判

燃焼温度アルミや鋳鉄の融点よりも遥かに高いと言う指摘があった。その通りです。

しかし、熱力学説明たかっただけで、例えば入口・出口の温度差を数万度にしたならば、熱効率はかなりのものとなるが、そんなものは物性的不可能ということを示したかった。

なので、燃焼温度は限られるという意味

BEV (Battery EV) 効率

原油火力発電(超臨界発電) 50-60%⇒送電 (95%) ⇒バッテリへ充電(90%)⇒変換(96%)⇒モーター(95%)

=39-45%

効率アップの方法

PHEV, BEV場合、上に示したうちで一番効率の悪い「火力発電」の部分を再生エネルギーや水力に転嫁することで、CO2削減を目指せる。もちろん、原発にしてもCO2は減らせる。

なお日本火力発電所のSOx/NOx排出海外に比べてもとても少なく、優秀である

発電所の部分では、現状でも50-60%の効率は稼げる。なぜ熱機関なのにここまで効率が出せるかと言うと、巨大なプラントで高温に耐えるコストの高いタービンを回してるから

それによって熱機関効率が高められるから。車のエンジンは小さくてスケールメリットが働かないよね。でも発電所レベルなら巨大で、コストも充分かけられるのでこう言う芸当ができる。

で、電気輸送に関しては送電線なので一度つなげたらしばらくはCO2を出さない。送電効率も超高圧送電(100万ボルト以上)によって高まっている。

また、インバーターとかモーターに電気を流す部分はパワーデバイス(GaN等)の発展によってどんどん効率が上がっている。

なお、モーターのトルク特性としてエンジン車のように変速不要のため、クラッチトルコン変速機などによるロスはない。将来、インホイールモーターが実用化されれば、モーター→タイヤへの伝達効率さらに上昇する。

回生

ちなみに、xEV回生充電もできるために、ブレーキ時に運動エネルギーICEほど熱に変わらない。

(一方ICEエンジンブレーキを使ったとしてもエネルギーに変えているわけではないので(多少オルタネータの充電制御は入るが)、ブレーキ時には運動エネルギーを熱にしてしまう。せっかく石油を燃やして運動エネルギーを得たのに、そのエネルギーを回収しないで熱に変えるわけ。)

まあxEV回生できるとはいえ回生時にパワーデバイスとかの充電ロスがあるから、実はコースティング回生も何もしない)で空走した方が距離を稼げる。なので、前の信号が赤にかわったときEVに関していえば、ブレーキも何も踏まないで空走状態を維持し、空気抵抗だけで0kmにするのが一番効率が高い。まあ、そんなことしていたらノロノロすぎてウザがられるので、妥協点として回生ブレーキを使ってちょっとはロスするけど、エネルギーを回収しながら止まるってことだね。

ICEだと、エンジンブレーキ積極的に使って、ブレーキを踏まない運転を心がければ良い。やってはいけないのは、Nに入れて空走すること。Nに入れるとエンジンアイドリングを維持するために燃料を消費する。ギアを入れたままエンジンブレーキをかけると、その間は燃料噴射をやめても回転が維持できるので、エンジンは燃料噴射をやめて、実質消費はゼロとなる。)

BEV製造時の負荷は?

製造CO2

バッテリーの製造時の負荷は確かに高い。しかし、製造には電気を使っているので、電力構成によりCO2排出は変わる。つまりグリーンエネルギーを使えば問題なくCO2を減らせると言うこと。

なお id:poko_penマツダのWell-to-Wheel理論を持ち出しているが、あれば古い時代バッテリ製造時のCO2データを使っていて、CO2排出過大評価している。最近テスラLi-ion電池工場では、再エネを利用して製造しているのでCO2は少なくできる。こうした、製造時のCO2排出問題工場や電源構成アップデートしていけば減らせる問題だ。

マツダはBEVよりもICE派で、SPCCI(圧縮着火)とかで頑張ってるからバイアスがかかってるのは仕方ないと思うね。私は内燃機関デザイン周りで頑張るマツダは大好きだけど、SKYACTIV-Xが思ったよりも微妙だったから株売っちゃったわ。)

リチウム採掘

Li-ion電池10%含まれリチウムは、採掘時に水を大量に使ったりする問題はある。ただ、これは「製造時」に限った話であり、内燃機関を使うたび、原油のために油田をあちこち掘り返したり、オイルタンカー座礁して原油を撒き散らしたりするのに比べれば遥かにマシというものだろう。

あと、専門外だけど、海水から抽出する技術研究中とか。

コバルト貴金属

xEVには必要となる貴金属類には依然として供給リスクとか採掘時の「児童労働」とかの問題を孕んでいる。ここら辺は全世界的に解決するしかなさそう。需要が増えれば、世界の目がこう言う問題に向くはずなので、我々技術者はそれを期待するしかない。

地域によるCO2排出量の差

例えば沖縄石炭火力の比率が高いため、EV効率を持ってしてもCO2排出HVとかより高くなる。しかし、それ以外の都道府県ではICEよりBEVの方がCO2が低い。原発が動いていない現時点でもね。

その他xEVとBEVとの比較

HV, PHEV

PHEVはもちろんICEより遥かにCO2を出さないが、BEVには勝てない。ただ、電力構成によっては逆転もありうるが、ほとんどの都道府県ではBEVの方がCO2を出さない。

燃料電池車 (FCEV)

(追記: anond:20200211034316 に FCEV vs BEV効率比較を書いた)

燃料電池車に関していえば、無用の長物と言える。水素製造する場合にも電力が必要だが、まあこれを再エネで行ったとしても、水素輸送タンクに注入する際の水素圧縮時のロスは非常に大きい。その圧縮の際に再エネを使ったとしても、結局そのエネルギーでBEVを充電した方が効率がいいのだ。

そもそもBEVならば、送電線さえあればいいわけで、わざわざ水素のように輸送する必要がない。

また燃料電池化学反応なので、アクセルレスポンスが遅いと言う欠点があり、反応のラグを補うために燃料電池車には結局バッテリーが積まれている。

ただ、航続距離は長いために、俺は現代におけるタクシーとかのLPG車みたいに細々と残るとは思う。航続距離重要トラックバスタクシーなどには燃料電池が使われるかもしれない。

効率以外にも、めんどくさい高圧タンクの法定点検とか、割と問題は多い。水素ステーションは可燃性の水素を貯蔵するわけだからEV充電スタンドよりも法的なめんどくささがあるのも確か。

水素ロータリー

これは燃料電池車より論外。カルノーサイクルに縛られてしまうので、電気分解よりも効率が悪くなる。水素の使い方としては燃料電池よりも悪い。

PHEV, BEVと再エネ

再エネは不安定と言われる。確かに自然相手なので、予測も難しい。しかし将来的にEVが普及すれば、EVバッファとして利用することで、不安定さを吸収しグリッドを安定させられる。

これは再エネを導入する動機にもなる。職場に着いたらEVCHAdeMOを挿しておいて、電力の需給バランスに応じて充電開始、とかが普通になるかもね。

気候

寒さ

BEVは寒さに弱い。リチウムイオン電池特性上、寒くなると容量が可逆的ではあるが減る。そのためテスラにはバッテリーヒーターが搭載されている。(ちなみに、寒いノルウェーでもテスラが爆売れしているし、なんと新車の半分くらいの売り上げがBEVという。もはや寒さは問題ではないのかも?(まぁ優遇政策があるからだけどね))

FCEV寒いと反応が弱まって出力が減るので、そこらへんは考慮されている。

一方ICEも、冬になると燃費悪化するとされる。US DoEによると、理由は、オイルの粘度低下、温度上昇までの暖機、ガソリンの配合が夏と違う(日本でも同じかは謎)など。他には空気密度によるエアロダイナミクス悪化とかがあるがこれはEVでも同じだ。オイルなどが原因となって燃費悪化するのはICE特有だろう。

暑さ

BEVはまた暑さにも弱い。Li-ionは熱によって不可逆的なダメージを受けて、寿命が縮む。そのためテスラにはエアコンを利用する水冷バッテリクーラーが搭載されている。リーフは空冷で、これが問題だったのか、劣化問題でざわついていたリーフオーナーも多かった。今は改善されているらしい。

用語

ソース

URLを多く貼るとスパム認定されるから貼れないけど、US DoEとかCARB、日本だと日本自動車研究所あたりの公開資料を見ればソースに当たれる。

一つだけ、EV vs ICE効率について、13分程度で詳説してある動画URLを貼っておく。英語字幕もないが、割と平易なので、見てみてほしい。論文ソース動画の中でよく書かれている。

製造時の負荷」「化石燃料の発電でEVを使うのは利点あるのか?」「リチウム採掘の負荷」の3つで説明されている。簡単に箇条書きにすると:

https://www.youtube.com/watch?v=6RhtiPefVzM

おまけ&追記

マツダLCAについて

前述のようにマツダEVと自社のICEについて、Well-to-Wheelでライフサイクルアセスメント比較している。その比較におけるLi-ion製造時のCO2排出量のデータだが、2010年〜2013年のデータとなっており古い。しかも、Li-ion製造時のCO2排出量は研究によってばらつきが大きく、いろいろな見方があり正確性があまりないのが現状。また現状を反映していないと考えられる。例えばテスラギガファクトリー」のように太陽電池をのせた自社工場場合などについては考慮されていないのが問題だ(写真を見ると良い、広大な敷地ほとんど太陽光で埋まっている)。

また、マツダ研究バッテリ寿命を短く見積りすぎている点で、EVライフサイクルコストが大きく見える原因となっている。テスラのようにバッテリマネジメントシステムBMS)がしっかりとしたEV寿命が長く、またLi-ionの発展によって将来は寿命を伸ばすことは可能だろう。事実、今まで電極や電解質改善によってサイクル寿命は伸びてきた。

テスラは現時点で最も売れているわけだし、このことを考慮しないのは少々ズルいと言える。

なぜ水素エンジン効率が悪いか ( id:greenT )

"Why Hydrogen Engines Are A Bad Idea" でYouTube検索したらわかりやすいが、噛み砕くと

あと補足すると「エンジン」は爆発によるエネルギーを使っているが、全てを使い切れていないこと。十分に長いシリンダーを使って、大気圧まで膨張させるならエネルギーをかなり取り出せるが、そんなもの実用存在できないので、爆発の「圧力」を内包したまま、排気バルブを開けることになる。この圧力ターボチャージャーで利用することも可能ではあるが、全て使い切れるわけではない。

あーでも、水素エンジンメリットが1つあった。燃料電池(PEFC)は白金必要とするため Permalink | 記事への反応(16) | 01:34

 
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