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2024-07-18

進行した認知症患者誤嚥肺炎とは延期可能老衰である

誤嚥肺炎という病気がある。

ガイドラインでは、誤嚥リスクのある宿主に生じる肺炎、と定義される。

そのうち最も多くを占めるのは高齢かつ進行した認知症患者発症する誤嚥肺炎である

内科救急で最も多く経験する疾患で、入院で受け持つ頻度もかなり高い。

特異なことに、最も多く接する疾患の一つでありながら、専門家存在しない。

肺炎から呼吸器なのかといえば、呼吸器内科医は認知症への対応は専門ではない。

精神科認知症診療業務範囲に含まれるが、身体疾患が不得手である

神経内科医は嚥下認知症を専門領域の一つとするが、絶対数が少なく、専門領域が細分化されている。

そんなわけで多くの場合内科医が手分けして診療することになる。

そういうわけだから誤嚥肺炎に対する統一的な見解はない。ガイドライン2013年から更新されていない。また誤嚥肺炎に関する文献や書籍はあるし、質の良いもの出版されているが、多くは診断、治療、予防に重きを置く。価値観に深く踏み込んだもの殆どみない。患者自身が何を体験しているか推定している文章殆ど読んだことがない。

病状説明も僕が研修医でほかの様々な医師説明を聞いても、肺炎です、誤嚥が原因です、抗菌薬で治療します。改善しないこともありますし、急変することもあります、といった通り一遍説明以上のことを聞いたことは殆どなかった。

当然ながら国家試験の出題範囲にも入っていなかった。

もっともよく経験する疾患でありながら、どうするべきかの具体的な方針大学教育でも研修医教育でも提供されないのだ。

にもかかわらず、認知症患者誤嚥肺炎は最も多い入院かつ、その患者入院期間が長い傾向にある。入手可能データだとおおよそ一か月の入院となる。死亡退院率はおよそ15-20%で、肺炎としては非常に高い。疫学については良いデータがないが、専門病院などに勤務していなければ、受け持ち患者のうち5人から10人に1人くらいは誤嚥肺炎が関連している印象がある。

誤嚥肺炎は、進行した認知症患者ほど起こしやすい。そして、誤嚥肺炎を起こすことでさら認知機能が低下する。しばしば経口摂取が難しくなる。そして自宅や施設退院することが難しくなり、転院を試みることになる。

転院待ちのためにさら入院期間が延びる。

典型的には進行した認知症を背景に発症するので、意思決定を本人が行うことができない。患者施設入居者であることも多く、施設職員がまず来院する。その後家族が来院して、話をする。肺炎であるから治療可能な疾患の前提で話が進む。進行した認知症治療不可能な疾患があることは意識されない。

ここでは、進行した認知症、つまり意思決定能力があるとは考えられない患者、今自分がどこにいて、周りの人がだれであって、自分の状況がどうであるかを理解できないほどに進行した認知症患者、と前提する。

退院してもらうための手段、という意味では治療は洗練されてきている。口腔ケアを行い、抗菌薬を点滴する。嚥下訓練を含めたリハビリテーションを行い、食事を早期から開始し、食形態誤嚥しづらいものに変える。点滴を早期に切り上げて、せん妄リスクを減らす、適切な栄養療法を併用して低栄養を防ぐ…。

そういったことを組み合わせると、退院できる可能性は高まる身体機能食事を再開できないレベルまで低下することはあまりない。

しかしそこまでして退院した患者は、以前の身体機能認知機能を取り戻すわけではなく、少し誤嚥肺炎を起こしやすくなり、活動制限がかかり、介護をより多く要するようになり、認知機能さらに低下して退院していく。

から人によっては一か月とか半年後に誤嚥肺炎を再び発症する。

家族医師は以前と似たようなものだと考えている。同じような治療が行われる。

そこに本人の意思はない。本人の体験がどうなのかを、知ることはできない。

というか、進行した認知症で、ぼくらと同じような時間感覚があるのだろうか。

本人にとって長生きすることの体験価値があるのか、ないのかも知ることは難しい。

 というのは逃げなんじゃないか

状況認識ができなければ、そこにあるのは時間感覚のない快・不快感覚だけではないか。だとすればその時間を引き延ばし、多くの場合苦痛のほうが多い時間を過ごすことにどれほどの意味があるんだろうか。

なぜ苦痛のほうが多いかといえば、状況を理解できない中で食形態がとろみ食になり(これは美味とは言えない)薬を定期的に内服させられ(薬はにがい上、内服薬をへらすという配慮がとられることはめったにない)、点滴を刺され、リハビリをさせられ(見当識障害されている場合、知らない人に体を触られ、勝手に動かされる)、褥瘡予防のための体位変換をさせられ、せん妄を起こせば身体拘束をされ、悪くすると経鼻胃管を挿入される(鼻に管を入れられるのは、快適な経験ではない)

どちらかといえば不快であるこれらの医療行為は、治療という名目で行われる。

この治療は、肺炎治療するという名目の元に正当化される。

多くの医師は疑問を抱かずに治療する。治療される側も、特にそれに異をとなえることはしない。異を唱えるだけの語彙は失われている。

仮に唱えたとしても、それはせん妄認知症悪化としてとらえられてしまう。

老衰過程が長引く苦しみがあり、その大半が医療によって提供されているとは考えない。

 ここで認知症というのは単なる物忘れではないことを説明しておく。それはゆっくりと進行する神経変性疾患で、当初は認知機能、つまり物忘れが問題になることが多いが、長期的には歩く能力、座る能力食事する能力が失われ、昏睡状態となり最終的には死に至る疾患である

 多くの内科医はこの最後の段階を理解していない。肺炎入院したとき認知機能について評価されることは稀だ。

実際には、その人の生活にどれだけの介護必要で、どのくらいの言葉を喋るか、笑顔を見せることがあるか、そうしたことを聞けばよいだけなのだけど。

進行した認知症入院するのがどのような体験か、考慮されることはめったにない。

 訴えられるかもしれないという恐れの中で、誤嚥リスクを減らし、肺炎治療するべく、様々な医療行為が行われる。身体が衰弱していくプロセスが、治療によって延長される。

 医療において、患者権利尊重されるようになってきた。僕らは癌の治療を中断することができる。良い外科医を探すべく紹介状を書いてもらうこともできる。いくつかの治療法を考慮し、最も良いであろうと考える治療選択することもできる。

 しか患者自身認知機能を高度に障害されてしまった場合はそうではない。医師が何を希望するかを聞いても、答えてくれることはないし、答えてくれたとしても、状況を理解できないほどに認知機能が損なわれている場合は、状況を踏まえた回答はできない。

 そこで「もし患者さん本人が元気だった時に、このような状況をどうだったと考えると思いますか」と聞くこともある。(これは滅多に行われることはない。単に、どんな治療希望しますか、と聞くだけだ。悪くすると、人工呼吸器を希望しますか、心臓マッサージ希望しますか、と聞かれるだけだ。それが何を引き起こすかは説明されずに)

しか問題があって、認知症が進行するほどに高齢患者家族もまた、高齢であって、状況を適切に理解できないことも多い。また、記憶力に問題があることもしばしばあって、その場合は話し合いのたびに最初から話をしなければならない。このような状況は、人生会議の条件を満たしていない。もしタイムマシンがあれば、5年前に遡れば人生会議ができたかもしれない。

 親類がいればよいが、これからの世の中では親類が見つかりづらかったり、その親類も疎遠であったり、高齢であったりすることも多いだろう。

 そうした中では、理解が難しい場合も、状況を理解して改善しようという熱意に乏しい場合も、(本人の姉の息子がどのように熱意を持てるだろうか)、そして何より、医師が状況を正確に理解し彼の体験想像しながら話す場合も、めったにない。

 意思決定において、話し合いは重要視されるが、その話し合いの条件が少子高齢化によって崩されつつあるのだ。

 無益治療、という概念がある。

「同じ治療をしても100回に1回も成功しないであると推定されること」

「その治療を行っても、急性期病院から退院できないこと」

この二つを満たすことが無益治療定義である。この概念提唱した、ローレンス・J・シュナイダーマンと、ナンシー・S・ジェッカーは、脳が不可逆的に障害された患者対象としている。

彼らはいかなる経験をすることもないから、治療による利益を得ることもない、だから無益治療倫理的に行うべきではなく、施設ごとにその基準を明示するべきだ、というのが彼らの主張である

高度に進行した認知症患者誤嚥肺炎治療は、厳密な意味での無益治療ではない。彼らは何かを体験する能力があるし、半分以上は自宅や施設に帰るだろう。自宅や施設では何らかの体験ができる。体験を感じる能力も恐らく完全には損なわれていないだろう。

この完全ではない点が、倫理的な空白を作り出す。

痴呆から認知症/物忘れと名前が変化したことは一因だろう。

そこで死に至る疾患である印象が失われた。

専門家の不在は、価値の普及を妨げた。病状説明の型がある程度固まっていれば、それがどのような形であれ、専門家集団によって修正され得ただろう。ガイドラインは不十分である医療ガイドラインエビデンスのまとめと指針である。つまり誤嚥肺炎の診断・治療・予防であり、その価値に関する判断はしばしば言及されない。ガイドラインはないにしても、診断・治療・予防に関して役立つ本はある。ただ、価値踏み込む場合も、基本的にはできる限り治療するにはどうすればよいか、という観点である

人生の最終段階における医療ケアの決定プロセスに関するガイドライン人生の最終段階における医療ケアに関するガイドライン存在するが、そもそも高度な認知症合併した誤嚥肺炎が、人生の最終段階と解釈されることはめったにない。だからこのガイドラインを用いた話し合いができることは少ない。また、多くの医師は、押し付けられた仕事認識していることから、じっくりと時間をとって家族と話をすることはなかなか期待できそうにない。多忙であればなおさらである

さらに状況が不利なのは、個々の病院Key performance indexは、病床利用率であることだ。

認知症患者誤嚥肺炎は、しばしば酸素必要とし、時に昇圧剤やモニター管理を要するなど重症であることが多く、入院期間が長くなる。そのため、看護必要度を取りやすい。多くの病院は、その地域病院が不可欠であることを示す必要がある。不可欠であることの証明に病床利用率と、看護必要度使用される。そのため、誤嚥肺炎患者を引き受けない理由はない。救急車の使用率も高く、数値上は確かに重症であるので、病院経営上は受け入れておきたい。

 介護施設に入所した場合は、誤嚥肺炎の死亡で敗訴し、2-3000万円の支払いを命じられる訴訟複数あることもあって、搬送しないという選択肢は難しいだろう。

 介護施設から搬送された患者誤嚥肺炎であることは多い。その一方で、こういった場合家族が十分な話し合いの時間を割けないことが多い。片手間でやっている医師も、長い時間をかけて説明したくはないので、お互いの利益が一致して肺炎治療が行われる。

 一方、最近増えている訪問診療は、誤嚥肺炎治療を内服で行うとか、そもそも治療を行わないという選択肢を提案できる場である。そこには期待が持てる部分もある。定期的な訪問診療でそうした話がしっかりできるかといえば難しいが、可能性はある。ただ、訪問診療医になるまでに、誤嚥肺炎に関する専門的なトレーニングを受けるわけではない点が問題になる。しかし家での看取り、という手段を持てるのは大きいだろう。

 

訪問診療を除けば、医療の側からこの状況を改善することは殆ど不可能なように思える。

 病院経営構造施設訴訟回避医師不勉強説明不足、そしてEBM患者中心の医療を上っ面で理解したが故の価値という基準の不在、めんどうごとを避けたい気持ち多忙さ、患者自身自己権利利益を主張できないこと、家族意思決定能力の乏しさや意欲の乏しさ、こうした問題が重なりあって、解決は難しいように思える。

現在誤嚥肺炎入院担当する主な職種である内科医は、糖尿病外来診療を主たる業務とする内分泌代謝内科という例外を除いて、減少しつつある。

専門医制度煩雑になったからというのもあるが、ぼくは少なから認知症高齢者の誤嚥肺炎診療したくないから、希望者が減っているのだと思っている。確かに診療をしていると、俺は何をやっているのだろうか。この治療に何か意味があるのだろうか、と考えることがあった。同じようなことを考えている医師は少なからずいる。露悪的なツイートをしている。しか構造上の問題点について踏み込むことはそこまでない。

僕は構造的な問題だと思っていて、だからこういう文章を書いているわけだ。

進行した認知症患者誤嚥肺炎とは延期可能老衰である、という共通認識が広がれば、状況は変化してくるかもしれない。事実認知機能が低下していない高齢者で、延命希望しない方は多い。その延命意味は具体的に聞けば、かなりしっかりと教えて頂ける。

誤嚥肺炎診療は、所謂延命解釈することが可能範疇に入ると僕は考えている。

後期高齢者医療自己負担額一割と、高額療養費の高齢優遇の組み合わせを廃止することや、診療報酬改定によって、誤嚥肺炎入院加療の色々なインセンティブを調整することで、否応なしに価値が変化するかもしれない。そういうやり方をした場合、かなりの亀裂が生まれる気もするけど。

2021-10-20

医療費削減してくれるような政党はないんか

日本人貧乏な原因は社会保険料が高すぎること。

年金はいい。

医療費に納得がいかない。

75才以上は平均年間100万以上かかってる。

これを50万にして欲しい。

高度医療年齢制限を入れるとか、ジェネリック限定とか。

多分50万もあれば、通常の外来診療には問題ない。

削った50万を子供に分けて欲しい。

15歳未満は75才以上より少ない。

子ども一人年間50万配れる。

2020-04-12

手術が延期になった

持病の手術のため、今日から入院する予定だったが、延期になった。コロナの影響だ。

延期といっても今度いつ入院できるのかはまだわからない。入院予定の1時間前に病院から電話が入り、近隣のコロナ患者の受入拡大のため急遽入院は延期したい、今後の予定はおって連絡すると伝えられたのみだ。入院が伸びたので手術も未定だ。

直前の直前になっての延期に困惑したが、すぐに理解した。当該病院のすぐ近くにある別の病院で、コロナ集団感染したというニュースを目にしたからだ。噂が事実なら、病院スタッフ感染が判明してから外来診療を続けていたという。当該病院としては、新規受け入れを一旦止めるのも仕方ないことだろう。

持病は基本的に、すぐに死に直結するものではない。ただし視力が徐々に失われていく特徴がある。手術さえすれば回復するが、放っておけば失われたままだ。手術が遅れればそれだけ失明するリスク高まる

嫌な予感が的中してしまった。手術が決まったのは一ヶ月前だったが、それからずっと、自身主治医コロナ感染したり、院内感染が発生したりして、手術ができなくなるのでは、と考えていた。あと一日、いやあと一時間ちがっていたら入院できていたのに。入院してしまえば、手術もできたかもしれないのに。

コロナが憎い。集団感染を発生させた病院が憎い。

なによりも、失明してしまうことが怖くて怖くてたまらない。

2020-02-19

anond:20200219171927

じゃあ増田はそれでいいんじゃない

ワイはそうは認識しないが

東京で新たに3人感染、2人重症 新型コロナウイルス陽性医師息子も

東京杉並区佼成病院は18日、入院していた患者新型コロナウイルス感染していたとして、安全確認されるまで外来診療を休診にすると発表した。入院患者への面会も中止する。

https://www.google.co.jp/amp/s/www.sanspo.com/geino/amp/20200218/sot20021821080019-a.html

2018-08-04

東京医科大学女性受験者一律減点に思う

おお、医師書き込みがちらほらと。

さすがに今回はいろいろ考えずにはいられないですよね。

あ、私も女医独身)ですが。

医師の働き方と医療の在り方について、ネット上のいろいろな意見を読んで考えましたが、結局はシンプル解決法はなくて、ひとつひとつ、少しでも業務を減らしたり、当直明けは原則休みにするという仕組みを作ったり(それでも24時間勤務だけど)、細かい部分から見直していくしかないんじゃないでしょうか。

東京医科大学女性受験者の一律減点の決断をしたときの状況がどんなだったかは知りません。すでに現場疲弊していて、これ以上女医を増やすなという声が上がっていたのかもしれない。

それでも、やはり一律減点は最悪の対応でしょう。聞いただけでぞっとする。自分のとった点数が女だからという理由で知らない間に減らされて、それで落とされるかもしれないとか…。

しかに、医師のなり手を労働力(その人の人生で勤務させられる時間の総量)として数字だけでカウントするのならば合理的判断なのかもしれないけど、その視点だけで物事を決めるのはどうかと思う。人を労働力しかみなさずに、人権人生も軽んじている。

一律減点って関係者からすれば楽な方法にとびついて、それがどんなにひどいことか、まったく考えられなかったんだろうか。

昔と比べて女医割合が増えたら、産休、育休がでたときの穴埋めの頻度も増えるわけで、たしか現場は大変。カバーする人の負担はとても大きい。

(現状では、男性医師で育休とれる人はほとんどいないので「女医割合が増えたら」という話になってしまうわけですが)

(あと、出産後数カ月で復職したばかりの女医さんに無理をいって通常の当直させているところもあると聞いたことある出産子育て中の女医負担かかるパターン

それでも、それをきっかけに医師業務の在り方そのものについてもっと負担を軽減する方法模索するしかないと思う。理想論だし、それだけでは解決しないと反論されそうだけど。

地道な業務改善の模索をめんどくさいと放棄して女医の数を制限するという選択肢だけは否定したい。

とりあえず私が思いつくのはさっきもちらっと書いたとおり2つ。当直明けの原則休みと、業務を減らす(というかレセプト病名業務なくしてほしいというただの願望)。

・当直明けの原則休み

当直の割り振りって、昼間の勤務内容とか外来曜日とか考えずに、とりあえず振り分けてる場合ほとんどでしょう?あとは医師どうしで交渉してくださいって感じで。

当直明けがそのまま外来日のときのしんどさよ(外科場合は手術もあるわけで…最近はそうならないようにしているところもあるみたいだけど)。

「当直明けは原則休みにする」というのが何とか定着しないかな…。そのためには外来日前日を当直にしないとかの調整が必要でめんどくさいだろうけど。

それを医師自身で調整しろって言われたら調整担当になった医師死ぬんで、当直決めてる事務方に面倒をお願いすることになるのが心苦しいけど。

休みと言われても病棟患者もってたら主治医はひととおりチェックすることが多いので休むつもりが気づいたらお昼…とかはあるあるだろうけど。

あと、結局回診やカンファの曜日とか決まってたり、人によっては会議とかあったりするので休めなかったりするかもしれないけど。

それでも原則が定着して、とりあえず昼間いったんは家に帰るなりして数時間休んでいいというのが当たり前になるとだいぶちがう気がする。

業務減らしてほしい(特に書類関係

なんだかんだで患者さん目の前にしての診療はがんばれるのだけど、レセプト病名業務だけはやってられない気持ちになる。

どさっとレセプトの束がくるたび、私の場合は1時間半くらいはとられているかな(もっと多い人もいると思う)。だいたい月2~3回?くらいにわけてレセプトの束がくるんだけど。

診療の終わった夜とか、当直の合間とかにみんなカルテ開いてぽちぽちやってる。

レセプト病名、要は保険診療にのっとってやっていますよということを証明するために、すべての処方や検査に対して根拠となる病名が必要

処方も検査主治医が出しているので、原則主治医がつける。医師しかできないことになっている業務患者何百人分たまると、けっこうな業務量になるわけです。

いや、通常のカルテ内容にはもちろん病名記載してるんですよ?それとは別に病名登録専用の画面に入れとかないといけないんです。

外来診療中にやってしまう人もいるのかもしれないけど、それはよほど手際がいいか余裕がある外来か。

外来ってただでさえ患者さんの話を聞いて検査結果もみて説明して何か異常あればいろいろ考えて検査と次の予約入れて処方入れて、造影剤使う場合は毎回同意書とって、ってやること多いので、別の画面開いて病名つける時間とかないもんな。

パソコンって反応にタイムラグあるので、それだけで時間とられる)

レセプト業務制度必要業務であることはわかるけど、こんな、医師負担をかける形でやらないといけない?ってもう10年以上ずっと毎回毎回思ってる。

なんかまあ、仮にこの業務がなくなったところで(なくならんだろうけど)、実際の診療業務労働問題解決していないけど…でもこういうところから少しずつ見直していってほしいなと思うのでした。

2018-06-17

外来が遅いといわれお悩みの先生方、また、病院での待ち時間イライラされている患者さん方へ

 当方キャリア12年の内科医なのですが、久々に大学に戻され非常勤含めさまざまな外来風景を拝見する機会に恵まれました。

そこで、外来診療についていろいろ考えることがありまして、思いつくままに書きなぐらせていただきます

 外来といえば先生方には何が起こるかわからない地雷原ですし、患者さん方から言えばよくわからない理由で延々と待たされストレスをためる要因なのではと思います

外来のすすむスピード先生によって異なりますし、早いからといって患者さん一人に対する時間が少ないか満足度が低いわけでもなく、

逆に遅いからといってじっくり診てもらえて満足度が高いのかというとそうでもありません。

まり

#1 外来スピードも早く、満足度も高い外来

#2 外来スピードは早いが、満足度は低い外来

#3 外来スピードは遅いが、満足度は高い外来

#4 外来スピードは遅いし、満足度も低い外来

分別されると思うのですがこれは明らかに外来担当する先生能力依存するものです。

診療には様々な待ち時間が発生します。患者さん方は経験したことがあると思いますのでお分かりでしょうが

病院受診したところで、まずどの科にいけばいいのか、決まったとしてそこに受診できるかどうか(時間制限など)

受診が決まったとして、そこにいたるまでのカルテ作成も含めての手続き、やっとその科にたどり着いたところで

予約の合間を縫って診療となると、診察室にたどり着くまでで莫大な時間を費やします。

やっと診察室にはいったところで、この科ではないということで一気に振り出しに戻るなんていうパターンもあります

いざ診療に取り掛かるといっても、検査必要だったとしたら、検査室にいって血液をとったりレントゲンをとったりその結果待ちだったり

そのつど待ち時間がかかってしまます

 そんな現状ですが#1に分類される先生方はこの待ち時間をうまく利用していると思います

どういうことかといいます外来をみるときには、まず予診票というものを書くと思うのですが

それらが診察室に上がってきた時点で、ある程度大まかに鑑別をして検査から帰宅(もしくは入院)までのいくつかのパターンを想定してしまっているのですね。

そこから逆算して、必須検査はこれこれ、なのでその待ち時間はこれぐらいなので先に採血をするとしてその前に簡単な診察だけしてしまおうとか

優先順位をつけてマルチタスク仕事を流していきます。そしてコメディカルを遊ばせることなく適切にリソースを使っていきます

もちろん限界はあるのですが、それをすることによってたとえばカルテ記入にしてもメモ手書きで残してあとでお診察が終わった後に入力するなど

患者さん方に見えない形で、タスク時間的に分散しています

これをするためには、最初の鑑別が適切でないといけないというので大変だし、結局患者さん方の見えない時間タスクを移動しているだけというところでは

あるのですが、結果として外来が早く、患者満足度も高いということになるのだと思います

 一方で#3ですがこのパターン先生もたくさんいらっしゃいます

とてもやさしく、親身に話を聞いたりされているのですが、このパターン先生ありがちなのが、一つの時間しか動いていないというケースです。

どんなに外来が混もうが、患者さんが待とうが、自分の決めた工程で、一つ一つに全力を傾け、ちゃんと診察して問診して、検査をオーダーし、その結果を

そのつど詳細にカルテ記載して次の患者を呼ぶときには前の患者カルテも完成しているという状態になります

目の前の患者さんには全力を傾けているので、患者満足度は高く、信頼されるのですが、結果コメディカルの待ち時間と実働時間が減り、イライラ残業代

産み出すことになりがちです。

#2、#4は単なる力量不足です。#2は必要なことまでしてないのでいつかは医療事故を生むもとになりますし、#4は頻度の低い鑑別まで拾い上げて、自己満足のために

いろいろ検査までして結局結論が出せないという結果になりがちです。とはいえ#1は#2へ、#3は#4にクラスチェンジしてしまうことがありますので注意が必要です。

患者さん方として気になるのはいかに#1を探すかということですが、これはコメディカルが一番よく知ってますので、知り合いに看護師さんとか技師さんがいたら

是非、お勧め先生を聞いてみてください。

自分はどれだといわれれば#1をめざしていますが#3になってるのかなぁと自省しながらこれから勉強していくつもりです。

2018-04-08

初期研修を終えてのもやもや

医学部卒業して初期研修(いろんな専門科を数ヶ月単位でぐるぐる回る)を終えた。

不勉強学生だったし、研修先は無名病院だったか一般化できる話じゃないけど、もやもやしたこと

1.医者能力に差がありす

簡単のため、一般外来診療に話を絞ってみる。直感だけで、何も考えずに診断をくだしている医者は本当に多い。田舎開業医が出してるわけわからない薬とか本当にたくさんある。でも慢性期疾患とか適当に薬を出してもすぐに結果が変わるわけじゃないから、漫然と経験を積んでも自分診療内容を洗練させていくのは難しい。外来診療ちゃんフィードバックをもらいながら教えてもらえることはあまりないし、適当にやっても結果が大きく変わるようには見えないし、診療内容よりも態度や人柄で患者コメディカル評価は決まってくる。だから、高い信念を持ち続けていないと、診療技術を向上していくモチベーションがなくなっていってしまう。

外科医なら下手くそだとメスを置かざるを得ないような圧力がある程度働くかもしれないけど、内科医はそういう圧が働きにくいから、ヤブ医者自分がヤブであるということに気づくことも排除されることもされないままになっているのかなと思う。

2.医学部での教育もっと教えることあったのでは?

重箱の隅をつつくような基礎医学試験問題で、留年させていくことに一体何の意味があったんだろう?精神修行

そもそも論だけど、実臨床で重要なのは病態生理より疫学データじゃないのかなと思ってしまう。

病態生理から色々考えて独自かつ複雑な治療をやっている医者もいるけど、本当にアウトカム改善しているのかなと思ってしまう。

まだエビデンスが無いような専門性の高い領域では考える必要あると思うけど、大抵の患者はそんな複雑な病態じゃないんじゃないかな。

UpToDate通りにやっていけばそれで十分なのではないかなと、むしろ専門家以外がUpToDateから逸脱したことをやるのは悪い方に傾くことの方が多いんじゃないかなと思う。

であれば、基本的な症候へのアプローチを反復させて学習させて、徐々にpit fallを教えていくみたな教育プログラムをやったほうがいいと思う。あったらいいと思う。

不確実性が高い領域なので、結果で評価するのではなくて、決まった診断治療アルゴリズムに沿っているか評価されるべきだと思う。それって楽しくは無いけどね。機械にやらしとけって気持ちになる。

3.ジェネラリスト厳しいです

基本的アプローチ定型化していく中で、人間に残されている領域直感と広範な背景知識かなと思ってしまう。

専門領域を絞らないとどっちも得るのは厳しい。

マルチプロブレムに対処するには専門家じゃ厳しいというのには同意するけど、プロブレムリストたくさんある人はもはや寿命なのではと思ってしまう。冷酷ですかね?

エビデンス大好きで論文オタクみたいな先生はすごいなあと思うけど、論文って嘘ばっかりなわけで。自分が会った基礎系の研究者は、論文を出した研究者ラボが信頼できるかどうか、データ自分経験から逸脱しているものではないかどうかなど、メタ情報を駆使して読んでた。本当に批判的に読むには近い領域論文を書いている必要があるのでは無いかと思う。RCTがいくら出ようと結局信頼できるのはエキスパートオピニオンなのではないかな。

4.電子カルテダメすぎ

ひどい。Windows98みたいなUIしている。電子カルテがまともになったら無駄時間エラーをどれだけ減らせるかを考えると恐ろしい。

5.医療って人を幸せにできてるのかな?

生活習慣病ほとんど寿命超高齢者への医療見てると、今の医療ってマクロに見て人を幸せにしているのかなって思ってしまう。野菜食べて運動して自分がやりたいことやって満足な時間の使い方をする、ってことにお金を使ったほうがみんな健康幸せに生きられるんじゃないかな?そもそも皆さんそんな長生きしたいですか?ぼーっとテレビ見たりゲームやってる時間って生きてる時間ですか?その時間を充実させられたら、その分寿命が縮んでも構わんくないですか?とかね。いってそんな充実した人生を送れていないですが。

嫌な部分ばっかり見てしまっているのかもしれないけど、医療希望がまだ見いだせてない。見つけていきたいな。

2017-08-23

医師長時間労働問題の根源

医師の働き方がしんどそうすぎて見ていてつらい

https://anond.hatelabo.jp/20170822153603

300床ほどのしょぼい市中病院で働いている医師として意見してみたいと思う。

有給どころか盆休み・土日すらまともに休めず30連勤だよと自嘲気味に語る医師ゴロゴロいる。

ただ、そんな中でも年間100日も働かずに平均的なサラリーマン以上の生活をしている医師もいる。

医師の偏在

問題医師の偏在にある。都心医師が集中して、地方医師がいないとか言うことではなく(それもあるけど)、楽な勤務(バイト)に医師が集中して、きつく責任の重い常勤にはなりたがらない。

正月の日直とか9時〜17時の勤務(実際は前後時間ほどオーバーするが)1日で20万のバイトとかもザラにある。常勤で働くよりも旨味のあるバイトを週に半分ぐらいしたほうが収入休日も手に入るという異常な状態が続いている。そんな状態からこそ、初期研修2年+後期研修3,4年を必死で働いて、専門医を取ればバイト三昧で楽な仕事を選ぶ医師が増えているんだと思う。

なぜ責任がなくて楽なバイトのほうが収入がいいのか?

それは市中病院悲惨経営実態にある。市中病院診療報酬改定でかなり経営が苦しくなっている。24時間365日の救急指定をうけないと成り立たないところも多い。ただ、常勤医だけですべてを回すのは無理なので外来業務バイト医を雇う必要がある。昔は大学病院上納金を納め、医師派遣をしてもらうこと多かったが、今は初期研修医制度が導入されて大学の残る医師が少なくなり、医師派遣が期待できなくなった。なので市中病院は自前でバイト医を用意しないといけない。

医師派遣業者というハイエナ

そんなバイト医をどこから連れてくるか?医師派遣会社からである。この会社が本当にクソ。法外に医師バイト料金を釣り上げている。1日のバイト20万円とか常識ハズレな値段を平気でつけてくる。市中病院はなんとしても休診することができないので(1日でも休診すると救急加算がつななくなり下手すると数千万の損になる)、どんなに値段を釣り上げられても要求を飲むしかない。また、医師派遣会社ピンハネ具合もすごい。常勤医師を紹介してもらうだけで数百万円を仲介料としてとっていく。

そんな医師派遣会社はどうやってこんな強大な力を持つようになったか

医師は初期研修医が終わるとバイト自由にできるようになる。その頃を狙ってダイレクトメール医師向けのWEBサイト(○3,○経メディカル、○are netなど)からバイト募集広告を乱れ打ちしてくる。「楽なバイトですぐに稼げます」みたいなどうみても地雷のような広告文句を使って取り込んでいく。広告の通り実際に楽な業務大金が稼げることがわかり、ハマってしまった医師は抜け出せなくなる。

バイト医が全員が悪いわけではないが、バイト医の診察能力は恐ろしく低いことが多い。責任のない仕事をしているので、誰から診療内容がおかしくても指摘されず、自分では正しいと思いこんでいる。自分のやった診療結果を知ることなく消えていくので、とんでもない医療をしていることが多い。いざというとき医療賠償保険も充実しているので裁判沙汰になっても困ることはない(バイト元の病院は大変困るが)。

とりあえず、日本から医師派遣業者が消えれば、医療業界は格段に良くなると思う。

とは言え、市中病院外来単位バイト料がいいのは大学病院給料が低いことも関係している。昔は大学から派遣されてきた医師の稼ぎどころとなっていたのだ。市中病院バイト料が安くなると、大学勤務している医師家計には大打撃となるだろう。

今日外来診療していて慌ただしく患者さんを診ていたが、隣の診察室のバイト医はスマホばかりいじって患者ほとんど見ていない…。(バイト医の診察能力が低いことがわかっているので看護師簡単に処理できる患者しかさない)

色々事情はあるが、今の医療制度は狂ってるとしか思えない。

2014-11-08

http://anond.hatelabo.jp/20141108092356

高額医療費制度っていう制度があるよ。ざっくりにいうと健康保険証を持っているひとで70歳未満、年間所得が約600万円以下でかつ、更に住民税を払っている人は一月あたりの自己負担額が最大約80000円になる。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

外来診療でいっぱい取られるなら、限度額適用認定証を申請して作っていおくといいかも。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/kougaku_gairai/index.html

日本年金機構サイト保険料免除猶予制度の条件がのってるよ。

http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3770

 
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