はてなキーワード: 煙草とは
「あのね、私、結婚することになるかもしれないの」
どこにでもあるようなチェーンの居酒屋で僕の正面に座っている彼女は珍しく静かな口調でそう言った。
後ろのおっさんの声がうるさいなとか、煙草の煙が邪魔だとか、東京で食う刺身って何でこんなに不味いんだろうとか。
数瞬の間に色々なことが頭の中でぐるぐる浮かんで、最終的にどうして彼女はそれを他人事のように話すんだろうという疑問に着陸した。
しばしの思索。浮かんだ解答は”試されている”。
おそらく彼女には期待する答えがあって、それを求めて僕を試しているのだと。
「そうなんだ」
「うん」
「良かったね。おめでとう」
困惑を悟られないよう無理に作った笑顔、の失敗作。そんな感じの表情。
もしかしたら笑顔の下に隠したものは落胆だったのかもしれないが、彼女が求めている本当の答えが分からない以上僕にはどうもしようがない。
目の前のたいして美味しくもなさそうな焼き鳥の串に手を伸ばしつつそんなことを思った。
片手で足りる程度の友達しかいない僕の、たった一人の異性の友人。
知り合って10年ぐらいになるが、見た目も性格もほとんど変わらないように見える。
大人げなくてわがままで無駄に明るく、話をするのも聞くのも上手い普通の女性だ。
彼女には付き合って数年になる恋人がいることも知っていた。なのにこうやって二人だけで食事に来ている。
不自然と言えば不自然だし、彼女の恋人に対する罪悪感も少々ある。
だが、自分の方が古い付き合いだし、彼女はちゃんと恋人に断ってきていると言う。
先に言っておくが、彼女とは何も無い。今までも、そしてこれからも。
それなりに長い付き合いだが、1年に数度こうして食事をするだけの関係だ。
互いの家も知らないし、一緒に夜を過ごしたこともない。そもそも触れたことがない。
それ以前に僕は女性が少々苦手だ。多分、これは母親の影響だと思うけど。
アルコール分解酵素を持っていないくせに彼女は酒好きだ。ほとんど飲めないのでいつも半分以上残してしまう。
いつもより飲むペースが速いと感じたのは気のせいだろうか。
「君さぁ、私が結婚したらこうやってご飯食べに行ってくれる?」
明らかに酔っぱらっている。すぐ顔が赤くなるから分かりやすいのだ。
店員が厨房に向かったのを確認して彼女に向き直ると、露骨な不機嫌顔。
でも僕の答えを待つかのごとく黙ったまま。いつもの彼女らしくない。普段は立て板に水のように喋る人なのに。
内心ため息をつきながら、常識的な回答を口にする。
「それはダメだろ」
「何で?」
「何でって、例え食事だとしても既婚の異性と二人きりで会うのは良くない」
僕にも一応分別はあるし、そのルールに則ると未婚か既婚かというのはかなり大きな違いで、所謂超えてはいけない一線というものになる。
「君は私のことを何とも思ってないじゃない。不倫にならないよ。」
「周りはそう思ってくれない」
「彼に許可取っても?」
「そういう問題じゃない。他に誰かいるならいいよ。3人以上なら」
「君、友達いないのに?私が誰か連れてきたら猫かぶるし。そしたら面白くない。会う意味が無い」
まるで僕のレスポンスをあらかじめ知っていたかのようだ。何を言ってもコンマ一秒も経たずに返答が返ってくる。
「とにかく、社会通念上良くない。僕もそう思う。だから無理。以上終わり」
これ以上の話は不毛だ。それに楽しくない。
僕らは楽しい時間を過ごすためにこうやってわざわざ会ってるはずだ。
「それでいいの?君は」
正直に言おう。イラついた。基本的に男だからとか女だからとかそういうことは言いたくない性質だが、この時ばかりは”これだから女はウザいんだ”という言葉に心から賛同してしまった。
僕が良いとか悪いとかの問題じゃない。これはどうしようもないことなのに、一体彼女は僕に何を期待しているんだ。
確かに彼女じゃないと盛り上がれない話がある。彼女と二人じゃないと過ごせない楽しさがある。それは事実だ。
でも、僕は彼女がいなくったって生きていける。ただ人生の楽しみが一つ減るだけで。
瞬間的に湧きあがった不快感をぐっと押し殺して、僕は努めて平静を装った。
ぬるくなったビールを喉に流し込む。答えは沈黙、彼女にはちゃんとそれが伝わったようだった。
小さい溜息の後、彼女は諦めの混じった、ちょっとからかうような表情で呟いた。
「君に彼女が出来ればいいのにね。その3人だったら楽しめそう」
「それはないな」
10年以上前に漫画家の矢吹健太郎氏の妻であり元アシスタントであった女性と不倫した男である
当時彼は未成年だったらしく、なら不倫は年長だった矢吹嫁の方が悪いのではないか?という考え方をする人が居るのも分かる
ニコニコ動画で音楽関係の動画をアップロードする活動をしていたらしいが、そんな事はどうでも良い
この中村イネは前述の矢吹嫁との不倫以外にも素行不良だったらしく未成年で飲酒やら喫煙やらしていたらしい
ちょっとワルを気取った奴なら学生で煙草を吸ったり酒を飲む事もあるだろう、個人的には嫌いなタイプの人種だけれど赤の他人だしそれは良い
だが不倫は駄目だ。いや不倫以外も駄目だな。この不倫が明るみになった結果矢吹健太郎はこの嫁と離婚する事になり、子供の親権を得るために多額の慰謝料をこの嫁に支払う事になった。
そんな嫁ならイネが居なくても適当な男と不倫してたんじゃないかとも考えられるが、現実でこの糞嫁と不倫したのは中村イネだ。矢吹健太郎の人生を滅茶苦茶にした糞野郎だ。
こんな糞野郎でも活動休止してもう表に出なくなればどうでも良いと思う。実際この10年間「中村イネ」が何かをしたという話は耳に挟んだ事が無い。
ところがこのクソ野郎は現在名前を変えて大活躍している。PENGUIN RESEARCHというロックバンドのベースと作曲を担当する堀江晶太という男が居る。
この男が中村イネだ。別に隠している訳でも無く、調べればすぐに出てくる。知らなければ良かった、と今でも後悔している。
PENGUIN RESEARCHというロックバンドそれ自体もそうだが、この堀江晶太こと中村イネは現在音楽業界で大活躍している。様々なミュージシャンに楽曲を提供する才能は本物と言って間違いない。
ある個人の才能が優れている事とその人間性が秀でているかには何の関係性も無い。むしろ、人間性が良い人間など殆ど居ないのだから、才能が優れているだけでも大した物であると思う。
だが、今でも調べればすぐに出てくるような不祥事を犯した人間が、何の制裁も無く活躍出来る業界にはどうしようもない生理的嫌悪感を覚えてしまう。
人間性など関係なく才能がある人間を使うのは合理的であるしきっと正しい。だけれど、才能のある人間なら罪を犯しても何不自由なく生きられるという現実を見てしまうのは、決して気持ちの良い物では無い。
今後、堀江晶太がどんなに優れた曲を作っても、どんなに偉大な功績を挙げても、こいつが「中村イネ」だった事は決して忘れないようにしたい。
別れて一年経ちますが、なんだかんだ2日にいっぺんもしくはそれ以上の頻度であなたのことを未だに思い出します。遠距離だったり同棲だったりでトータル8年ですもんね、長かったから。初恋は特別ということで、たぶん一生引きずっていくのだと思います。私から別れを告げたのに、ずるいよね。
大切な存在には変わりなかったのに、無理やりに近い別れた方をして傷つけてしまって、本当にごめんね。今も罪悪感で、夜目を覚ましてしまうことがあります。他に方法があったのかなぁと思うこともしょっちゅうです。
でもそうでもしないと別れられなかった、私はあなたに甘いし、悲しそうな顔を見るといつも自分を曲げてしまうし、あなたのことがまだ好きだったから。
別れを告げた時あなたにとっては寝耳に水で、楽しく暮らしてた毎日は嘘だったんと言ったよね。泣き顔見るの辛かった。嘘なはず無いじゃん。あなたの色んな部分を好きになって一緒にいると楽しくて、かけがえのない存在だったんだよ。色々あったけど、嫌いになれるわけがないよ。自由で地頭が良くて物知りで穏やかで、マイペースなのに周りの人に好かれているあなた。人の顔色を伺いがちで愚鈍くせにいつも心の中がざわついている私。
社交的なあなたの周りの女性の影にいちいち怯えたり怒ったりすることを、休みが合わずに寂しい休日を過ごすことを、あなたが一人楽しそうにゲームをやってる傍で家事をこなすことを、あなたが私のカードローンで勝手に借金してたことを仕方ないって自分に言い聞かせることを、隠れてギャンブルしてるのを知らんぷりするのを、あなたのために色んなことを我慢することを。
こう書いてみると、なんで付き合ってたんだ?って自分でも思うけど、でもそれでもいいところもたくさんあって好きだった。まぁ私だってあなたを沢山疲れさせたり振り回してるから、おあいこの筈なんだけどね。
あなたはいつもあなたのペースで堂々としてるから、何だか私の方がおかしい気がしてきて、もう少し自分のキャパが広かったらなぁ、私心が狭いなぁて何度も何度も思って、いつのまにか自分を抑えてあなたと暮らすようになってしまって。
あなたといて癒されたり爆笑したり幸せな気持ちになるんだけど、いつもなぜか不安で何で何だろうてずっと不思議だったんだけど、どんどん、その不安は大きくなった。
今日早いからごはん俺が作るよの言葉に軽い足取りで仕事から帰ってきたら、先に帰ってる筈のあなたが散らかった部屋で寝てて、流しにはお茶碗がたまってて、机の上も色んなゴミが乗っていて、私は「あーあ、またかぁ」ってなって、のろのろとご飯の準備をする。
ねぇ私のこと好きって言うけど、本当に大切に思ってる?じゃあもっと、私が喜ぶことしようって思ったりはしないの?と思って、でも彼も仕事で疲れたんだよねと何故か頭の中でフォローして、馬鹿みたいだった。
でもね、何の関係もない時に唐突にうちのこと好き?て聞くと好きだよって返してくれる。
ずっと一緒か?と聞くとずっと一緒やでといつもの返事が返ってくる。ぎゅってしてって言ったらゲームを中断して答えてくれる。それだけで毎回安心できた。
だった筈なんだけど、いつからかなぁ。
あなたの言葉があまり響かなくなってきて自分が不安定になることが前よりも増えた。この先結婚したら、数十年ずっと同じことの繰り返しなのかなとか、子供が生まれたらどうなってしまうんだろうとか考えはじめると漠然と不安になった。出会った頃は煙草吸う姿もかっこいいなぁと思ってたのに、いつからか吸ってる姿を見ると腹が立ってる自分に気づいた。
隣で寝ているあなたの寝顔を見ながら、ああ、やっぱりこれからもずっとは無理かもしれないと優しくできないと思うようになった。
あなたといる時の自分が、あんまり好きじゃなくなってた。あなたは何も変わってないのに自分の変化が悲しかった。
だから一念発起して、無理やりに、頑張って別れたんだ。自己中だけど、あんまり後悔はしてないんだ。あの時別れたおかげで、いい思い出をきれいなまま思い出すことができるから。あなたのことを嫌いにならないまま、あれ以上あなたを傷つけないまま、離れることができたから。
誕生日くらい、連絡してみようかと思ったけどそれはあんまりにも自分勝手だからやらないよ。私とのことは早く忘れて、前を向いて別の誰かと関係性を築いていくれることを本当に心から願ってます。私も勿論そうするよ。
あなたの笑った顔が、声が、厚めの唇が、人に優しいところが、他にも色んなところが(散々伝えてきたからわかるよね)好きだった。
私と同じように、あなたのことを好きになる人はきっといるんだろうね。
でも、これからも毎年、おめでとうって呟くくらいはゆるしてね。
暇だったけど地味に嫌な客の来る日だった。
いつものストーカー客は、いつも通りAさんが休憩に入って私が一人でレジ番をしている時間帯を狙って来店。今日はストーカー客から何かしら話しかけられそうだなと内心身構えていた。なぜそう思ったのかというと、私がこの連休中に髪型を変えたからだ。そしたら本当にストーカー客は話しかけてきた。ストーカー客はいつも買ってるアイスコーヒーの氷を買わずにカフェマシンの所に行って、
「あれ!? あれ!! あれーーーっ!」
「あひゃー! 買い忘れちゃったかなぁー、もしかして、コーヒー、買い忘れちゃったかなぁー!?」
と、あひゃあひゃ言っていた。私は知らんがな、と思いながらノーリアクションで俯いていた。
フロアが騒がしく、監視カメラを見れば私がストーカー客に絡まれているようだった、と、Aさんが心配して事務所から出てきた。「何か言われてるっぽいとは思いましたが、そんな変なことが起きていたとは」
と感心していたAさん。最近、他の女性従業員がもっと本格的にヤバい感じの客に目をつけられているのを、Aさんは目の当たりにしたらしく、私のストーカー客なんかまだ可愛いもんだとAさんは思い始めた模様。そんなこと比べられてもね……!
Aさんがドリンクの品出しに行ってしまうと、今度は先週私に無意味に話しかけてきた感じの悪い客がレジに来て、やっぱりこの人すごい嫌な奴なんだなあーと再確認するような横柄さを大いに発揮してきた。
先週、この横柄客が私に話しかけてきたとき、私はカフェマシンの掃除をしていた。横柄客は、
と唐突に話しかけてきた。私はお褒めいただきどうもありがとうございますと頭を下げたのだが、横柄客の話はそれで終わらず、近隣他店のカフェマシンがいかにきったねーかと口汚く罵り散らかして帰っていった。
横柄客は前からよく来る人で、Aさんもちゃんとその客を覚えていたのだが、Aさんには凄く良い人に見えていたらしく、ショックを受けていた。どこもおかしい所のない人がそんなに横柄な態度を取ることがあるなんて、と。私は、
「たぶんあの人、次回のシフトではAさんに私の悪口を吹き込むと思いますよ」
と言ったのだけど、本当にそうなるだろうか。私は十中八九そうなると思うけど、Aさんはさすがにそれはないのでは? という。
Aさんから、横柄客の最近の様子を聞いたところによれば、横柄客はいつも同じ数のレジ袋・お箸・ストロー・煙草を欲しがるので、Aさんはそれを全部記憶して、言われる前に全て揃えていたということ。それで横柄客は自分をVIP客だと勘違いしたようだ。
私が横柄客とトラブルになった原因はレジ袋だった。客の買った品々の大きさがアンバランスで、一袋に納めづらいと思ったので、私が
「レジ袋は二枚に分けた方がいいと思いますが、いかがなさいますか?」
と聞いたら、横柄客は
「うん、そうして」
と言った。だから私は、25号の袋一枚と弁当袋Mサイズ一枚を出した。すると横柄客は何も言わずに会計をした後でいきなり、
「何で二枚とも特大サイズじゃないんだ!」
と激怒した。私が謝罪し返金して特大サイズ二枚で会計をし直すと言っても拒否して特大サイズ二枚に交換しろと言うので、特大サイズはこれらと値段が違うと説明すると更に怒り、最終的には
「もう返金しなくていい! 追加で特大一枚ぶん金払うから代わりに特大二枚よこせ!」
と言って5円払った。
何でこんな少量の買い物に特大袋5円を二枚も欲しがるのか意味不……と思いながらもへいこら頭を下げ謝罪しまくって商品を袋詰めした。
そうAさんに話したところ、たぶんその客は、Aさんが毎回言われなくとも25号サイズの袋二枚に商品を分けて詰めるので、それが当たり前だと思っていて、しかも25号袋を「特大サイズ(45号)」だと勘違いしているのだろう、とのこと。
つまり横柄客は、私が黙って25号袋を二枚出さなかったことに腹を立て、更にいつもよりも大きい金額を請求された(25号二枚なら6円のところ、45号サイズ二枚ぶんで10円となった)ことに腹を立てたのではないか? と。なるほどー。
他に、何度「列に並んでください」と頼んでも並ばず横入りをしようとするお年寄り客、カフェマシンの洗浄を始めようとしたところへ、「マシン清掃中につき販売出来ません」の札を無視してカフェの氷を取って「休止中」のレジに押し掛ける客などがきた。
最近、レジ袋が元で客からクレームというか、理不尽にキレられることが多い。ジュース2本くらいしか買わないのに、25号(缶ビール8本くらい入る)の袋を要求するとか。しかも、
「大きいサイズの袋にしてくてる?」
とか注文してくるのではなく、6号Lサイズの袋(500mlペットボトル2本がぴったり入る)を出したとたんに、
「何でそんな小さい袋を出すんだよ! 同じ金額払うんだから大きいのをくれればいいだろ! そんな小せぇ袋じゃゴミ袋にもなんねーんだよっ!」
と怒鳴るようなやつである。
あーあ。仕事しんどくて辞めたい。
でもお金はたくさん欲しい。
本当ならフリーターやりたい。いや、youtuberになりたい。サラリーマンなんてやりたくない。
でも都心のタワーマンション買っていい暮らしがしたい。毎食Uber EATSしてもいいくらいお金に余裕が欲しい。
それって一体月収いくらなら叶えられるのよ。
フリーターじゃ無理だろうな。youtuberならワンチャンかな。でも顔がいいわけじゃないし、特技もないからダメだろうな。
起業したいな。フリーランスでもいいけど、とにかく独立していっぱい稼ぎたい。
でも独立準備するだけの資金がないから、まだ会社は辞められない。
本気で億万長者になりたくて、毎週宝くじ買ってる。
普段は酒もたばこも嗜まないけど、いっぱいいっぱいになった時はなにかに頼りたくなる。
同棲している彼氏が嫌煙家だからか、煙草に対するある種の憧れみたいな物がある。
1年に一回くらい、彼氏がいない隙にコンビニでメビウスとライターを買って、こっそり吸ってる。
明日はなるべく早めに仕事を終わらせて、彼氏が帰ってくる前にこっそり煙草を吸いたい。そしてお風呂に入って証拠隠滅して、ゆっくり寝たい。
「呪われたことがあるか?」そう問われたら、まぁ殆どの人は首を横に振るだろう。
けれども、誰もが既に呪われたなかにいて、そうした状況で毎日生きている。人が呪われるのは、他人の恨みを買ったからではない。
むしろ、呪いをかけたそいつは、何にも思っちゃいない。そいつにとっては、呪いではなくて、単なる言動に過ぎない。
世の中にはあらゆるところに呪いが仕掛けられている。それは言葉や社会運動といった身体を纏っている。その中には、えらく巧妙な論理構造をもったものもあるし、身も蓋もない感情的なものもある。
呪いが僕らに接触しても、すぐには取りつかない。それは、じわじわと僕らを弱らせる。たいていの場合は他の呪いと共に弱らせた僕らの意識を犯している。
呪いの内容を言語化するのは難しい。呪いは、僕らの意識そのものよりも無意識の構成を歪ませるからだ。
「他人に正しいと思われるように常に正しくあれ」
最近流行りの呪いはこうだ。この呪いは例えば、煙草のパッケージに書かれた注意書きやポリコレを媒介して襲ってくる。
しかしながら、この呪いに反抗する術は少ない。たんに反動的に反抗することは、呪いの裏返しでしかない。それは呪いに囚われた人間のもう一つの在り方に過ぎない。
呪いに反抗する術は、呪いから脱する術であり、その他には何もない。僕らは呪いから脱さなければ、自由ではありえない。
僕らは呪いを背負って生きている、常に脱する機会を伺いながら。
(共通の持ち点)
・今までお付き合いした人がいない -2
・土日働いている -2(不定休は-1)
・離婚歴がある -3
・子供がいる -3
・親との同居が条件だ -5
(男性の持ち点)
・身長が170cm以上ある +1(175cm以上の場合は+2)
・年収が500万円以上ある +1(以降100万円ごとに+1)
・薄毛 -1(ハゲは-2)
・顔面に自信がない -1
・正社員ではない -4
・煙草を吸う -1
・ペットを飼っている -1
・35歳以上である -1(以降2歳ごとに-1)
・4歳以上年下と結婚したい -1(以降1歳ごとに-1)
・月に1万円以上ギャンブルをする -2
(女性の持ち点)
・平均より可愛いと思う +4
・スタイルには自信がある +2
・年齢
~25歳 +4
~27歳 +2
~29歳 0
~31歳 -3
~34歳 -5
~37歳 -8
それ以上 -10
ただし30歳以上において「5歳以上年上でも構わない」場合は+3
・正社員ではない -3
・煙草を吸う -3
・ペットを飼っている -2
・身長が170㎝以上ある -1
5点以上でノーマルモード
私が24歳の頃、池袋西口のキャバクラに面接に行った事がある。
大学卒業後、アルバイトを転々とするが何一つ長続きせず、消費者金融からも20万円ぽっち借りただけですぐに借りられなくなった。
親には何度も泣きついて、ついに「もうあげられるお金はないから、地元に帰って来なさい」と最後通告されてしまった。
私はどうしても田舎に帰りたくなかった。
アルバイトも長続きしない人間が、キャバクラで接客なんてまず出来ないのは明白だが、人間窮地に追い込まれれば出来ない事はないと当時の私は思った。
ならしっかり定職に就けば良いものを、地道に働くより短い時間で沢山稼ぎたいと欲だけは深かった。
昼のアルバイトが続かないなら、夜のアルバイトなら続くかも?というよく分からない希望もあった。
インターネットのキャバクラ求人サイトで歩いて行ける池袋西口の店に早速面接の予約をした。
何故そこにしたかと言うと、歩いて行けるけどバスか電車を使ったと申告すれば交通費をチョロまかせると思ったからだ。(当時キャバクラに送迎がある事を知らなかった。浅はかでみみっちい考えである。)
面接日はすぐに決まった。
面接当日、お店のドアを叩くといかにもという感じのスーツの男性が迎えてくれた。
オープン前の店内は薄暗く、並べられたボトルとシャンデリアだけがボヤッと青白く照らされている。
大きな黒い皮張りのソファに、何だか汚ならしい女が座っていた。
顔はどう見ても50過ぎのおばさんだが、赤いペラペラのドレスを着て、白髪まじりの髪を無理矢理ブリーチした金髪は綺麗に巻いてある。
時折カウンターで作業している若いボーイに怒鳴るように話し掛けているが、ボーイは何も返さなかった。
この店のお局だろうか。私はきっとあの人にいじめられるだろう。とまだ面接もしていないのに不安だけは募る。
おばさん嬢から少し離れたソファに案内され座ると、先程カウンターで作業していた若いボーイがスッとドリンクを出してきた。
カクテルグラスにオレンジ色の液体、カットされたオレンジが刺さっている。
アルバイトを20件以上転々とした私でも、面接にこんな飲み物を出されたのは初めてだった。
口にしなかったので今となってはあれがオレンジジュースだったのか、お酒なのか、それともまた別の何かだったのかは分からない。
私は段々怖くなっていた。
1秒も働いてない私にこんな飲み物まで出して、この人達は私を一体どうするつもりなのか。
飲み物を凝視している間に玄関で迎えてくれた男性が向かいのソファに座った。この人が店長らしい。
「身分証見せてくれる?」と言われ免許証を差し出すと店長は「これコピー」と先程のボーイに渡した。
「何でキャバクラで働こうと思ったの?」と誰もが疑問に思うであろう事を聞いてきた。
「あっ、お金がなくて.......はい」と何の捻りもない返事をした。ここでスキルアップだなんだと嘘をついても仕方がないと思った。
ここから先は記憶がぼんやりしているのだが、質問は上記の一点のみで、後はどういう風にお金が貰えるか、どんな事をすると罰金か、などの説明を店長は淡々と話し始めた。
緊張した頭にシステムを叩き込む余地はなく、ただぼんやりと(もうここで働くんだな.......)という実感だけがふつふつと沸いていた。
奥の席で煙草をふかすおばさん嬢、テーブルに置かれた謎のカクテル、シャンデリア、ボーイ、目の前でキャバクラの説明をする店長.......
昨日までの自分からは想像もつかない夜の雰囲気に、私は怖じ気づいてしまった。
働きたくない。怖い。でももう後戻り出来ないところまで来たんじゃないか。
ここでやっぱりやめますなんて言ったら、東京湾に沈められるのではないか。
さっき免許証のコピーも撮られたから悪用されるのでは。もう私の人生は終わった。
お母さんには迷惑ばかりかけた。金をせびるばかりで、何もしてあげられないまま私は夜の街に消費されるんだ。
そこまで考えて、私は泣き出した。
「すみません、私やっぱり無理です.......ごめんなさい.......」
言ったら殺されると思いながらも、もう言わずにはいられないくらい恐怖と不安に押し潰されていた。
店長は顔色ひとつ変えず「そうですか、駅まで送るね」とスッと立って出口に向かった。
外に出ると一気に安心した。
「すみませんでした.......失礼します」と頭を下げて帰ろうとしたら、店長もついてくる。
えっ?!ほんとに駅までくるの?!と内心焦った。
私はまだ解放されていないのだろうか。
夜の池袋の街を並んで歩きながら店長は「世の中には悪いお店も沢山あるから、もうこういう事はしちゃいけないよ」と言った。
怒るでも諭すでもない、フラットな口調だった。
「はい.......すみません.......」それしか言えない。時間と労力と謎のカクテルを無駄にしてしまった私はどんな償いをすればいいのか、何か要求されるのだろうか、お金はない.......どうすれば.......と私の頭はいっぱいだった。
店長はそれ以上の事は言わず、お互い無言で池袋西口の駅に着いた。
「では気をつけて」「はい、ありがとうございました」お辞儀をして数歩歩いて振り向くとまだ店長はこちらを向いて立っていた。
何もなかった。
本当に駅まで送ってくれただけだった。
駅前に用事があったのだろうか、そのついでに私を送ってくれたのだろうか。
でも振り向いた時にまだ店長は立っていた。
優しい人だったのだろうか。
私は東京湾に沈められる事も、免許証が悪用される事も(多分)なく過ごしている。
この10年性懲りもなく何度も金がなく、出来もしない職業にヤケクソに飛び込もうとした時はあったが、あの時の店長の事を思い出しては踏み留まった。