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はてなキーワード: ponanzaとは

2023-02-22

anond:20230222101041

どうせ泡沫イキリベンチャーだろって調べたらponanzaを作った人らしくてぐぬぬってなった

2019-11-13



ポインタ再帰、それらを使うアルゴリズム(最短経路問題など)

最近使わないだろっていう、老害っぽい意見な気もするが、向いてないやつは振り落としたほうがいい

2017-11-24

しか将棋星人の相手Ponanzaにお願いしたい

たぬきはなんかヤだ

2017-06-22

AIが広げる世界に、私たちは住めるのか。

Twitterである方が「人工知能人間を愚かだと反乱を起こす未来」について、あまりにも人間に都合のよすぎる考えで、人工物らしくないと言っていた。

初めてみたときはあまりくそ意味が解らなかったのだけれど、最近AIについて考えてみると、そうなのかもしれないと思い始めている。というのは、AI感情や疑問をもとに考えるものではなく、あるコマンドに応じて解決策を報じるものからだ。

人間機械との違いは、人間は「複雑に思考を行うことができる」ということだと思っている。これは関連性や取り留めのない思考を頭の片隅に置くことができるという意味であるのだが、AIがやることは「要求されたことに対して、答えを出す」ことだ。この要求されたこととは、将棋勝利パターンを作る、特定の生体メカニズム解決する有機物の合成方法既存データから導き出される病気可能性、だったりする。もちろん無制限に考えられるならば、いろいろな方向へ突き進むこともあるだろうが、あまりにも思考を働かせすぎたら、データサイズの圧迫だったりとか、あまりにもコストが上がってしまうので、そこまでいくのは現実的でない気がする。その点でいえば、AI人間に害を及ぼすとしたら、それは人間手綱を弾きそびれた時で、人間が原因となるのではないだろうか。


イメージとしては、自分の部屋を作るとして、人間が作る部屋は机や床にA4のプリント類が煩雑し、本は積み上げられたテトリス連想させる部屋だ。だが、AIがその身を置く部屋は棚にジャンル時代ごとに順々に並べた部屋に近い。そして、機械は、変雑な部屋に耐えられない。人間は目覚めて寝るまでに、毎日同じことを繰り返すわけではないが、機械規定された時間にパワーオンし、必要なかったらシャットダウンする。これは既存プログラム問題である

もしもAIが人に害を及ぼすようになるのなら、やはりそれはプログラムコマンドを誤った人の問題な気がしてならない。


そしてそもそも人工知能人間を愚かだと反乱を起こす未来」が人間的という考え方も、さもありなんという感じだ。現在の人が行っているシステムの一つ一つがあまりにも泥臭いので、それを改善しようとなると、人にとっては反乱でしかない。ぱっと思いつく限りでいえば就活だったり、教育だったり、学術研究だったり、いろいろあるけれど、人間が見てもあまりにも合理的でないシステムなんて山のようにある。それを改善する行為は人が行えば「革新的」でも、機械が行えばそれは人にとって「反乱」でしかないのではないのだろうか。


将棋AIであるPonanzaが、最近何かと話題になっている。人よりも「強い将棋が指せる」ことはもう自明事実ではあるが、棋譜をみた人々はあまりにも既存のものと違いすぎていて、大きく戸惑っているらしい。膨大なデータをもとに「効率的手段」を提示するAIは、いつか人の考えのはるかに先を行き、人が積み上げてきたものに反乱を起こす未来もそう遠くないのかもしれない。

2017-05-22

情熱大陸を見てたんだけど

コンピュータ将棋ソフトponanza開発者である山本一成氏の回だった。

電王戦がつい最近行われていたし、私自身もIT業界にいるので氏の名前Ponanzaも聞いた事だけはあったし、漠然自分とは違うレイヤーで戦っている天上の人のようなイメージを持っていた。

で、見ていた感想として抱いた事は

「この人気持ち悪いな」

だった。

常に薄笑いを浮かべて話しておりとても30歳を過ぎた男性とは思えなかったし、コンピュータ将棋対決の試合で負けたシーンがあったのだがその時も幼稚園児がゲームに負けたような不貞腐れた顔をしており、対戦相手への敬意のようなものは一切見せずにいたように感じた。

ついでに言うと、勝った側の人やそれを取り囲んでいる人たちもファッション物言いがとても気持ち悪かった。

情熱大陸ってスポーツ選手がよく出演していて、大抵若くても発言や考え方がしっかりとしていて大人を感じる事さえ多いのだけど、この回に出ていた人たちは皆気持ち悪かった。

もし私が小学生であの放送を見ていても

プログラマーってかっこいいな」

とはならなかったと思う。

山本氏東大出身で奥さんもめちゃめちゃ美人だったので、きっとこの映像に映っていない知性や格好良さがたくさんあるのかもしれない。

電王戦オタクイベント位置づけるための編集方針なのか、映っていたあの映像取材内容の中で最も格好良い箇所だったのかはわからないが、何故あん映像を放映したのだろう。

自分の周りの気持ち悪い人が底辺から気持ち悪いのかと思っていたが、トップの方も気持ち悪い業界ってなんだろうこれ。もうやっていける気がしない。

っていう理由明日会社休みたい。

2016-10-16

三浦弘行という棋士渡辺明という棋士

三浦弘行九段はどんな棋士か。

タイトル獲得経験者(通算1期)。羽生善治七冠王を崩した棋士である

顔つきは朴訥とした雰囲気が有るかもしれない。野武士という異名をとったこともある。なぜかニコ生で人気(だった?)。

棋風は攻め将棋。また研究家である

ソフト指しが疑われているA級順位戦三浦渡辺戦は角換わりの序盤早々にポンと▲4五桂を跳ねる将棋であった。前例はあって無いようなもの話題になったお陰で棋譜検索すれば簡単に見つかる。ちなみに将棋棋譜著作権は無い。素人目にはこの桂馬は、後手が△4四歩と伸ばせば簡単に取れそうであるプロから見てもそうであったらしく、順位戦渡辺はそう指した。その後は後手は期待通りに桂馬を取り、引き換えに先手は馬を作り2歩を得た。以降は10手ほど穏やかに進み、先手が戦端を開き一気に後手陣を攻め潰した。馬と歩得の時点で形勢は先手が良かったようだ。実際、今日竜王戦第一局(対丸山九段)で渡辺はほぼ同局面から△4四歩を見送りponanzaはこの選択をそんなに悪くないと評価した。

三浦の▲4五桂にはソフトによる研究が伺える。駒損して歩得と馬を主張するところがソフトっぽいと言われる。同時に三浦の棋風も伺える。端的に言えば研究将棋とはハメ手であり、毒饅頭を目の前にチラつかせる将棋なのだ渡辺はまんまと引っかかり、自然と思われる桂取りの△4四歩からほぼ一直線の流れで、気づけば形勢を損なった。

行方尚史八段は三浦を表して「局地戦になると異常に力を発揮する人」「狭いところでの三浦君の計算力はすごい」と評した*1。一見して選択肢の狭い局面誘導し、そこで相手を罠に嵌め、自身計算力を頼りに仕留めるのが得意である、というわけだ。そして三浦はこの棋風を維持するために、自身研究に加えて他の棋士研究をも吸い出してきた。圧倒的な研究量が三浦のウリなのだ

第68期名人戦(2010年)において三浦羽生善治名人(当時)に挑戦した。梅田望夫羽生善治現代」ではこのシリーズの第二局を通じて、三浦の棋風すなわち研究将棋極北について論じている。三浦はここでも羽生相手に罠を仕掛けた。当時流行横歩取り8五飛戦法の、その最新型に一撃必殺の罠を仕掛けた、のだが、この罠は関西有力若手棋士行方豊島将之現七段か糸谷哲郎現八段か、誰かは知らないが、と言う)を二晩ホテルに缶詰にして聞き出した研究の成果であると言われる。

ぶっちゃけ引く。プロから見ても引く行為であるようだ。

自分が出席しない研究会の成果をその日の夜に電話で聞き出したりもする。後日有力棋士に公に批判された。

三浦将棋脳の特性と、それを活かせる狭く罠を仕掛けやすい展開を収集する研究力・人脈、これによって三浦トップ棋士たりえた。

近年ではソフトが鬼強いので、誰でも棋力に関係なく高度な研究ができるハズだ。では三浦の強みが無くなったかというとさにあらず。現に順位戦渡辺三浦研究手▲4五桂に対応できず、自然な手に乗って形勢を損ねた。プロより強いソフトが行き渡った現代でも、三浦研究力は存分に発揮されている。

まりカンニングしなくても、三浦は十分強い。序盤は優秀な研究があるので仮にカンニングするとしたら中終盤だが、この将棋は優勢な局面から一方的な攻め将棋で終わった。カンニング必要とは、個人的には思えない。

ちなみに羽生との第68期名人戦三浦は4タコで無残に敗退した。形勢良しの将棋を勝ちきれず、善悪不明将棋手品のように負けた。

第二局で羽生三浦の罠を看破し、三浦研究の隙の隙を掻い潜り、見事勝利した。

渡辺明竜王はどんな棋士か。

中学生プロになった。20歳で棋界最高峰竜王を取った。タイトル通算17期、史上初の永世竜王資格保持者。名人挑戦者に未だなれない。

生え際は若くして後退した。歯に衣着せぬ実直な物言いも人気。

自玉を固めて細い攻めを繋げて一方的に殴るのが一般渡辺っぽいとされるが、最近はどんな将棋でも単純に強い。

研究家ソフト使用しているがソフト評価値はあんまり重用していないとも語る*2。

渡辺は単純に強い棋士である2000年以降、渡辺将棋界のトップ3以上の実力者でありつづけた。研究家であっても、三浦のような極端さは無い。

人望の厚さが伺われるエピソードも多い。佐藤天彦名人にも慕われている。

渡辺正義と公正の棋士である。ゆえに、三浦の若手搾取が許せないらしい。村山慈明現七段から三浦電話研究会の成果を根掘り葉掘り何時間も訊かれたと愚痴られた渡辺は、NHK将棋講座誌上で三浦を名指しで、質問三羽烏として痛烈に批判した。

とばっちりを受けた残り二羽の烏は深浦康市九段丸山忠久九段である深浦は「羽生善治現代」にて三浦研究将棋擁護し、丸山は今回の将棋連盟の決定に不服ととれるコメントを出した。前述の通り、丸山渡辺で開幕した今期竜王戦第一局の序盤は、件のA級順位戦三浦渡辺戦とほぼ同じ将棋であった。丸山意趣返しであるが、渡辺対策が良く封じ手時点では丸山苦戦の模様。

三浦カンニング疑惑聞き取りに、渡辺理事に混じって同席した。

5人前後三浦に負かされたと推察される棋士三浦告発したという。根拠はつまりプロ直感である正義棋士渡辺告発者の一人であり、卑劣カンニングを許せず、またタイトル戦の直接の対決者であるから聞き取りに同席したのだろう。

聞き取り聞き取りだけで終わり、証拠は一切示されないが、あるともないとも知れない。

三浦からしたら、タイトル戦の直前にタイトルホルダーが連盟を味方につけて、盤外戦術を仕掛けてきたようなものである

三浦カンニングしていたのなら、怖くて大舞台には出れないだろう。

三浦カンニングしていなくても、怖くて大舞台には出れないだろう。

まり三浦相手に連敗中の渡辺三浦竜王戦欠場に追いやったとも言える。

まさしく陣屋事件に勝るとも劣らぬ怪奇事件。なんと命名したらよいだろうか。

*1 2010年、第68期名人戦シリーズ後のインタビュー, 梅田望夫羽生善治現代」より

*2 2015年後半-2016年ごろのインタビュー大川慎太郎「不屈の棋士

2016-10-13

三浦弘行九段竜王戦出場停止について

どうも、id:BigHopeClasicです。

本当はこんな内容、自分はてなブログ投稿したほうが見た目もきれいになるしいいんでしょうが、持続できないブログを作るのも気後れするので、増田を使います

さて、掲題の件、はびこりそうな誤解がいくつかありそうなのが将棋ファンとして気になったので書こうと思ったものです。

カンニングはあったの?

本稿投稿時段階での報道を元にする限りでは、

日本将棋連盟三浦九段に対して、カンニングをしていないという悪魔の証明を求めた」

しか解釈できません。つまり将棋連盟三浦九段に対して、決定的な物証などを何一つ押さえないまま

「疑われているので潔白を証明しろ

というに等しい要求を投げかけたことになります

この点については続報を待つ必要がありますが、あくまでも現段階での私個人の感想としては

「下策中の下策、愚の骨頂」

というコメントに尽きます

なるほど確かに、三浦九段が疑わしいとする複数棋士から申し立てはあったのでしょう。

連盟がそれを黙殺すれば、その疑惑文春砲などで火を噴いた可能性も否定できません。

しかしながら、決定的な物証がなければ、いくら週刊誌が書きたてようが大きなダメージにはならないのは日本相撲協会週刊ポスト週刊現代顛末を見れば明らかです。

大相撲八百長問題警察から情報提供で明らかになる前、週刊ポストは30年にわたって角界八百長告発する記事を書き続けてきましたが、その内容は元力士らの極めて具体的かつ迫真性のある証言に基づくものはいえ、決定的な物証をおさえたものではなく、大相撲はそれによってはなんら決定的ダメージを負うことはありませんでした。

週刊ポストに対しては、日本相撲協会は徹底的に無視をし続けることで対応したのです。

また、週刊現代八百長報道に関しては相撲協会と各力士は、週刊ポストとの対応とは一転して大量の名誉毀損訴訟を起こしそのことごとくに勝訴しています週刊現代八百長報道週刊ポスト比較してもあまりにお粗末だった)。

日本将棋連盟は、こうした大相撲八百長問題におけるリスク評価対策から何も学ぶことなく、あくまでも現段階の報道に基づくところからは、およそ愚劣な対応をしたと言わざるを得ません。

スマホ将棋カンニングに使えるわけないでしょ?

さて、上記とは別にこの問題が深刻なのは、自宅にあるパソコン遠隔操作するまでもなく、2016年7月におけるスマホ将棋アプリの棋力は、渡辺明竜王佐藤天彦名人羽生善治三冠といったトップ棋士の棋力をすでに上回っているという有力な推測があるからにほかなりません。

そのような推測があるからこそ、将棋連盟12月中旬から

「対局室へのスマホを含む電子機器の持ち込み禁止、昼食休憩時における将棋会館外への外出禁止

を定め、これに違反したものは除名を含む厳しい処分を課すことを決め、さらに今週末から開幕する竜王戦では、対局者に対し対局前に金属探知機で持ち物チェックをするという対応を決めていたわけです。

新聞報道ではこの金属探知機での調査については渡辺竜王三浦挑戦者双方の同意の下とされています

(なお、上記のルール12月中旬から適用とある通り、仮にこの時点で将棋連盟不正に関する動かぬ物証をつかんでいたとしても、それを三浦九段に対して遡及適用できないことは当然です)

この件を報じた朝日新聞記事についていたブコメからいくつか代表的な反応を取り上げます

b:id:temtex 仮に事実としてもだ、たかスマホアプリでどうにかなるものなのか…と思ったら、別のとこで走らせたソフトの結果さえ判れば良いのか(但し"スマホ搭載"と記事にはある)。プロに勝てる有力なソフトってどんなの?

b:id:namnchichi スマホアプリタイトル取れるのか?

b:id:symbioticworm 現時点でスマホで走らせられる将棋ソフトなんてたかが知れてるから不正があったとすれば外部との通信必要なはずだけど。現段階では情報が少なすぎる……。

b:id:buu さすがにスマホ搭載のアプリじゃ参考にならないだろうが、協力者と連携すればカンニング可能だろう。人間よりもソフトが強くなるとどういう将棋界になるのかと興味深かったのだが、こうきたか

b:id:l0x0l スマホ将棋ソフトレベルで、プロ棋士の対局の参考になるかは疑問

b:id:kaitoster 『対局中、スマートフォンなどに搭載された将棋ソフトを使って不正をした疑い』←スマホ将棋ゲームすでにプロタイトルホルダーより強いソフトあるのかな?

なるほど、確かにプロ棋士とコンピュータ将棋が戦う電王戦ではコンピュータ将棋が大きく勝ち越しているとは言え、最新の事情を詳しくご存知でなければ上記のような反応は出てくるのが自然かもしれません。また、今回の当事者である三浦九段電王戦に出場した際の対戦相手が、東大駒場情報基盤センター学生用iMac680台をクラスタリングしたGPS将棋であったことも、上記のような反応につながるかもしれません。そこで、これらの誤解を解消するため、コンピュータ将棋の現況について説明したいと思います

ここ3年のコンピュータ将棋の強さの推移

まず、上記の三浦vsGPS将棋が行われて以降、ドワンゴ主催電王戦では使用されるCPUが制限されています。この制限に基づき電王戦で使われたCPUは、2014年がcorei7 4960X(6コア12スレッド)、2015年がcorei7 5960X(8コア16スレッド)とここまではその時点で調達可能なcorei7シリーズエクストリームエディションを使用していますが、今年2016年世代こそ最新のskylakeとなったものの4コア8スレッドcore i7 6700K、そして来年2017年使用CPUは同じく4コア8スレッドのcorei7 6700と、使用するハードウェアの性能は年ごとに抑制されるフェーズに入りました。

ではそれによってコンピュータ将棋パフォーマンスの伸びに制約がかかっているかというと、全くそんなことはありません。将棋ソフトponanza開発者山本一成さんは、2016年電王戦開幕前に「corei7 6700K1台で動くponanzaは、iMac680台をクラスタリングしたGPS将棋より遥かに強くなった」と宣言しています。これは根拠のないことではありません。

現在フリーで入手できる将棋ソフトについては、有志が統計的有意手法を用いてその相互間の強さをeloレーティングを用いて計測しています。その一例として、こちらのウェブサイトがあります。eloレーティングの仕組みについては[wikipedia:イロレーティング]を参考にしていただくとして、目安としてはレート上位から見て下位に100差あれば期待勝率64%、以下同じく200差で75%、300差で85%、400差で91%、500差で95%、600差で97%、となります

ponanzaフリーで公開されていないため、上記のウェブサイトにはレートは計算されていません。しかし、2016年電王戦に出場したponanzaは、このウェブサイトで「Apery twig」として掲載されているソフトに対し勝率97%を上げていることが、電王戦に出場した山崎隆之八段をサポートした千田翔太五段の調査によりわかっています。つまりこのponanzaのレートは「Apery twig」の3250に600を足した3850前後であろうと推定できます(なお、上記のサイト検証に用いているハードウェアIvybridgeおよびskylake世代の4コア8スレッドメモリ16GBであり、これは2016年電王戦における使用ハードと大きな差はありません)。

一方、2013年電王戦に出場して三浦九段と対戦したGPS将棋は、この表に掲載されているGPSFish(レート2879)をスレーヴとしてこれを680台クラスタリングしたものでした(厳密に言えば電王戦に出場したGPSfishはこれより一つ前のエディションですが大きな棋力向上はないもの仮定します)。この680台クラスタリングした際の棋力向上幅については、GPS将棋開発チームの田中哲朗東大准教授が、根拠は全く無く経験に基づく推測にすぎないとしながらもレートにして400程度と語っており、これを採用します。

そうすると2013年電王戦GPS将棋推定レートは3279となり、2016年電王戦ponanzaとのレート差はおよそ570、ponanzaから見た期待勝率は96%となりますわずか3年の間に、コンピュータ将棋は1台のデスクトップPCで、680台のパソコンクラスタリングした将棋システムに96%勝利する成長を遂げたのです。

(なお、コンピュータ将棋がかくも異常な速度で成長したのは、ドワンゴ電王戦において「使用ハードウェア制限」と「提出後対局まで6ヶ月間一切のアップデート不可その間棋士研究し放題」という条件をつけてしまたからだと考えています。こんな条件をつけなければ開発者はここまでしゃかりきに強化はしなかったはずです。ドワンゴがコンピュータ将棋大会に出してる優勝賞金の300万円なんて開発費の元手にもなりゃしないし、強いコンピュータ将棋を作ったって売り物にはならないので、モティベーションはこんな厳しい条件のもとで恥をかかないためにはひたすら強くするしかない、ってとこだけなんですから

将棋ソフトプロ棋士の強さの関係予測

もうひとつ、これらの将棋ソフトプロ棋士の強さの関係はどうなのだということも前提として必要になります。まず、プロ棋士レーティングについては、こちらのウェブサイト現在最も信頼され参考にされています。eloレーティングは、基準となる値を何点に設定するかで絶対値はいくらにでも設定できますが、上記の点差と期待勝率関係基準値を何点にしようが変わらないので、異なる基準値をとる異なるレート表間での比較可能になります

さて、コンピュータ将棋の公開対局場として、GPS将棋の開発チームが開設しているfloodgateというサイトがあります。ここでも参加者の対戦成績に基づいてレーティングが計測されています。また、この対局場は、コンピュータ将棋だけでなく人間も参加することができます。このfloodgateに、一時期上記の千田五段が参戦されていました。その際に記録されたレートは2800ほどでした。千田五段が参戦されていた時期のプロ棋士レーティングにおける数値と、その当時の羽生三冠との数値の比較から羽生三冠がfloodgateに参戦した場合予測されるレートは3000から3100程度だろうと見込まれています。また、先に紹介したコンピュータ将棋レーティングサイトのレートは、floodgateのレートの数値と大きく変わらないようにする工夫がされています。なお、羽生三冠のここ数年のプロ棋士レーティングは時期による前後はあれど概ね1900プラスマイナス50程度であり、佐藤天彦名人渡辺竜王の棋力もほぼこの幅に安定していて、現時点ではこの3人が名実ともにほぼ拮抗した最高レベルの棋力といえます

ここから考えた際に、2016年電王戦ponanza羽生天彦渡辺といったトップ棋士の棋力差はおよそレート差800、ponanzaの期待勝率は99%超、という推測になります第2期叡王戦本戦PV千田五段が、羽生ponanzaに対する勝率を0.5%と仮定しているのは、まずこの推測に基づくものと考えて相違ないでしょう。もちろんすべての基準となるfloodgateでの千田五段の数値は、普通プロ棋士公式戦ではありえない短い持ち時間の下で行われたものであるため、実際の羽生ponanzaの実力差はこの通りではない、という反論は容易ですが、そもそも持ち時間が9時間に増えたからと言ってレート800の差は埋まるものではなく、コンピュータ将棋も持ち時間を長くすればそれだけ強くなることを考慮すれば本質的議論とは言い難いでしょう。

やっと本題、スマホにおける将棋アプリの強さ

ここまで長い前置きを置かないと、なかなかこの本題に説得力が出ないと思いましたが、いよいよここから現在スマホ将棋アプリ話題です。

これだけ強くなったコンピュータ将棋ではありますが、これまでは基本的パソコン上で動かすものでした。スマホ用の将棋アプリも多数出てはいましたが、プロ棋士最上位に匹敵すると見られているものはありませんでした。

ところが今年の7月、android用の将棋アプリとしてshogidroidがリリースされます。これ自体将棋ソフトのGUIであって思考エンジンはないのですが、このshogidroidの売りは、今年の6月に一般公開された当時の最強フリー将棋ソフト「技巧」をandroidスマホの上で動かせるようにしたことでした。技巧の強さは先のコンピュータ将棋レーティングサイトで4コア8スレッドで動かした際に3578。ponanzaの3850には及ばないとは言え、今年6月当時ではponanzaに次ぐ2番めに強いソフトで、人間から見れば驚異的な棋力です。

もちろん、この技巧といえど、その棋力がCPUの能力に依存することは言うまでもありません。しかし、スマホ今日日クァッドコアは当たり前、Huawei P9のようにオクタコアを搭載してGeekbenchを用いたベンチマークテストで高い数値を出すスマホもある時代です。第4回将棋電王トーナメントで3位になったやねうら王の開発者で、皆様もよくご存知のやねうらおさんは、2016年9月時点のハイスペックスマホに、一切のスマホ用のチューニングを行わず思考エンジンを搭載しても、レートの落ち幅は400程度推定しています。この推定を当てはめて技巧をshogidroidで動かした時のレートを推定すると3178。やはり羽生天彦渡辺を上回っていることになります。実際にはもちろんやってみないとわかりませんが、あくまでも推測上では、すでに電王戦プロ棋士スマホで十分に成立し、それでもプロ棋士の分が悪いことが予測される段階に突入しているのです。

※ちなみに、先の電王トーナメントで優勝し来年の電王戦に出場する最新のponanzaは、今年の電王戦に出場するponanzaに9割勝つとの開発者山本さんの発言がありました。これを信じるならponanzaのレートは4200となり、スマホに積んでも3800で、やはり羽生三冠の期待勝率は1%に満たないことになります

これが2016年10月における、スマホで動かすコンピュータ将棋の現状になります恐ろしいことには、shogidroidは無料アプリであり、その思考エンジンの技巧もフリーウェア。それを最高スペックで動かすHuawei P9は54000円で買える、というところにあります。この状況をどう考えるかは皆様のご想像におまかせします。

カンニングたか検証できる?

さて、お気づきの方もいるかもしれませんが、疑われた三浦九段の棋譜をソフト検証してみれば白黒はっきりするのでは?と思われるかもしれません。しかしそれは極めて困難であると申し上げましょう。

まず、Shogidroidの上で動かせるソフトは技巧に限りません。その他のソフトも動かすことが可能です。次に、同じ将棋ソフトであっても、ある局面検討させたときに導く最善手は、CPUの性能や検討させる時間によって異なります。そもそも将棋ソフトにはある特定局面において常に同じ結果とならないよう検討においては乱数使用されており、一局の将棋の棋譜からではその人がカンニングたかを導くのは容易ではありません。

さらに、将棋は二人零和有限確定完全情報ゲームである以上、ある局面における最善解というのが必ず存在します。ということは、その最善解を自力で導いたかカンニングたか区別は、着手から「だけ」では判定できないことになります

以上の理由からカンニングたか否かの実験第三者が行っても、その結果についてはいくらでも疑義をつけることができ、有効ではないと言えましょう。

取り急ぎ、私からは以上となります

2016-04-02

2016 将棋 第1期電王戦 勝敗予想


第1期叡王戦を勝ち抜いた山崎隆之叡王と、第3回電王トーナメント優勝ソフトPONANZA」による2番勝負、「第1期電王戦」の第1局が一週間後の4月9日10日に行われるので、勝敗予想を書いてみた。


事前貸出・改良修正不可ルールの下での勝率は?


2014年の第3回電王戦からソフトの事前貸出・改良修正不可・マシン統一などが義務化された。このルールは今回の電王戦までずっと変わらない。
ではこのハンディ有りルールでのプロ棋士将棋ソフトとのレーティング差はどのくらいか?
プロ棋士発言をもとに結構てきとーに計算してみた。


年月日ソフト推定レート前年との差
2013.4.61650-
2013.11.111735+85
2014.12.71800~1850+65~115
2015.12.23 ? ?


年月日ソフト推定レート前年との差
2013.11.112020以上-
2014.12.72100以上+80
2015.12.23 ? ?


だいたい1年につき、プロ棋士から見てソフトR80~100程度上昇している、と言えそう。


また、先手番と後手番では事前に研究しなければならないゲームツリーの量が大幅に違うことから勝率がかなり変わるようである

永瀬六段の発言を真に受けるとすると、本来勝率約52%の先手番と後手番の差が約80%(R300)もの差になっている。



山崎叡王の勝算は?


昨年(2014.12.7)の時点でAperyとSeleneプロ棋士先手でR1825くらいとして、昨年の時点でPonanza半年リードしていて+40~50、この一年で+80~100と考えると、
今年のPONANZA(2015.12.23ver)は先手番でR1945~1975程度、後手番は+300としてR2245~2275ぐらいなのではないだろうか。

使用されるPCが去年より弱体化(5960x→6700k,メモリ64GB→32GB)しているが、それでもせいぜいR30くらい下がる程度だろう。


プロ棋士側の現在レーティング山崎叡王R1766。(ちなみに羽生四冠R1923

数字の上では山崎叡王の先手番期待勝率23~26%後手番約5~6%。なので山崎叡王が後手番である第1局については、どうも勝てる確率絶望的に低いと思われる。

一方で先手番の第2局については一発入る可能性も否定出来ない。
しかし、二日制になり局面誘導の練習がやりずらくなったこと、PONANZASelene等他ソフトに比べて事前研究対策が上手であること、
今回のPONANZAが相当強いという情報があることなどを考えると、すんなりと勝たせてはもらえないだろう。

もちろんソフト側にバグや、かなり有効なハメ手が存在すればもっと差は縮まると思われるが、山崎叡王の発言から推察するに、今回のPONANZAにはそれもなさそう。


以上を踏まえて

本命 山崎叡王 0-2 PONANZA
 対抗 山崎叡王 1-1 PONANZA

と予想する。


個人的には、事前貸出有りで、かつ先手で勝利したとしても、それは駒落ちしてさらに下手側が先手になるようなものだと思っているので、別に感動したりはしなさそうだなぁ。

まあそれでも山崎叡王が1勝でもすれば、あまり深く考えない将棋ファンは喜ぶだろうし、興行としてはありかもね。



もうプロ棋士将棋ソフトに勝てないのか?


日本将棋連盟ドワンゴは、一般人平等でないと気付いてしまいそうなルール駒落ち森下ルール、持ち時間に差をつけるetc…)を避ける傾向にあるようなので、
これ以上プロ棋士側に有利なルールを制定するとなると、使用するPCスペックさらに下げるしかないだろう。

しかし、例えばCPUをXeon4個から6700k1個に変えても、一般人にはスペックダウンしたことがよくわからないが、
デスクトップPCからノートPCタブレットに変わるとさすがにハンディがあるという印象を拭えない。

また、スポンサーであり対局PC提供しているガレリアは一応ハイスペックPCが売りのブランドなので、
これ以上スペックを落とすことはブランドイメージに傷がつきかねないだろう。



よって、「プロ棋士将棋ソフトにもう勝てないのか」という問いについては
「『多くの一般人から見て公平に見えるルール』で七番勝負を行う場合名人でさえもバグやかなり有効なハメ手等を見つけないかぎり)勝ち越すことはかなり難しい」
と言えそう。


ちなみに、事前貸出なし(レート+400以上、角落ちくらい?)、PCスペック制限をしない(クラスタ化でレート+400)と仮定すると、1945+800=R2745となる。
2013年の第2回電王戦ルールでは、もはや1勝も出来ないだろう。


2015-04-12

半端モンほど世界が狭いのは

とあるリアルかかない漫画家ブログは「モデルを見て書く人間所詮二流」と断じ、かたやアイシールド21の作者は絵描きタブーはないと言った

からプロになれなかった巨瀬クンは今回の電王戦の後「アマチュアの手をプロがさすなんて」とインタビューに答えた

その前のPVにて「コンピュータ将棋を見ていると何でも指す。定跡に捉われる必要もない」と世界が広がったようなこと言ってたのにね

半端モンほどナニナニは斯くあるべしと自分から世界を狭めるのはなんでだろう

電王戦後のインタビューで「事前貸し出しについてどう思うか」という質問に対して開発者が色々言っているなかid : ponanzaこと山本サンは「ponanzaは強いのでなんでもいいです」と笑いながら言っていた

ふむ、世界が広いから強いのではなく、強いから余裕があり世界が広がるのかな

2015-03-27

第4回電王戦に感じる違和感

第1回、第2回の電王戦は、始まる前からとてもワクワクして待ちきれなかった。

第3回の電王戦お祭りみたいで面白かった。

しかし、今年の第4回電王戦は以前ほど興味が湧いてこない。

こう感じるのは、僕だけだろうか?


第1回、第2回はコンピュータプロに対する強さが未知数だった。

時間ネット将棋では人類を圧倒していても、プロが本気になれば違うとか、長時間になれば人間が有利だとかい意見が多かった。

対するソフト開発者側も、何とか癖を読まれないように貸し出しを拒否したり、定跡を本番で指定したりして勝負に徹していた。

第4局で塚田九段根性の粘りで引き分けに持ち込んだ後の、三浦八段対GPS将棋戦が、今から思うと電王戦のピークだった。

GPS将棋は600台程のPCクラスタを組み、全力で棋士に挑戦したのは、相手の強さを認めていたからだろう。

三浦八段は現役A級棋士タイトル獲得経験もあり、トップ棋士としての誇りとプライドがかかっているのが十分に伝わってきた。

三浦八段は破れはしたが、刀折れ矢尽きるまで戦ったその姿には感動し、1秒間に数億手読むクラスタと互角に渡り合える人間頭脳凄さを感じた。

昔の弱かったコンピュータ将棋からすれば、技術進歩も存分に感じられた。


第3回は、ハード統一、事前の貸し出し、ソフト修正禁止が義務付けられた。

前年までのガチンコ勝負感は無くなったが、棋士側は期待の若手、往年のベテラン将棋界の人気者、そして元タイトルホルダーのA級棋士と、前年以上に個性豊かで強いメンバーだった。

両国国技館小田原城を対局場にするという試みにも注目が集まった。

電王手くん機械らしく駒を持つ姿は、未来を感じさせつつも微笑ましかった。

後味の悪い番外戦は起きてしまったが、勝負に拘っていた事の裏返しだとも思えたし、両者の文化の違いが背景にあったとも思った。

残念ながら、結果はプロ棋士から見て1勝4敗。

唯一の勝利者の豊島七段の練習量に驚き、ponanzaの筋が悪くも巧みな中盤に感心した電王戦だった。


第4回は、ハード統一、事前の貸し出し、ソフト修正禁止のルールは引き継がれ、出場棋士公式戦で勝率の若手で固められた。

ここまで、棋士が頑張りを見せて2連勝。

斎藤五段、永瀬六段の努力と強さは伝わるが、どうも阿部四段や豊島七段が勝った時の様な気持ちは湧いてこない。

以前の電王戦スポーツだとすれば、今回は原作を知っている映画を見ているような、棋士が勝つ姿を応援しましょうという主催者が用意した舞台を見ているように感じる。


あれだけ驚きと興奮を与えてくれた電王戦は、きっともう見れないのだろう。

2013-04-19

電王戦最終局は明日

ということで、これまでの4局を振り返ってみた。

第1局 3月23日(土) 阿部光瑠 四段VS習甦

阿部光瑠(こーる)は訛りがかわいらしい18歳。プロ棋士チームでは三浦、船江に次ぐ三番手の実力の持ち主で、船江に次いで勝つ可能性が高いと目されていたが(三浦は相手が強いので……)、それでも率直に言って彼が勝つと本気で予想していた将棋ファンは多くはないだろう。

まりプロ棋士チームは5連敗か、よくて1勝4敗だろうと思われていた。そのくらいの圧倒的な実力を、コンピュータインターネット上の対局サイト将棋倶楽部24などにおいて見せつけていたのだ。

そんな下馬評を、こーるはこれ以上ないくらい鮮やかに覆した。習甦の桂跳ねからの無理攻めを誘い、圧勝

局後のインタビューによれば、こーるは提供された習甦での事前の練習将棋をかなり入念に行っており、今回の将棋も練習で発見したコンピュータの穴のようなものを突いた、という側面もあったようだ。そのため、純粋な実力でなくバグを利用しただけ、という評価もないわけではない。

しかしともあれ、(少なくとも団体戦としては)勝敗は見えていると考えていた将棋ファンの横っ面を思いっきりひっぱたくような衝撃的な圧勝であり、これによって一気に電王戦が盛り上がったことは間違いがないだろう。

第2局 3月30日(土) 佐藤慎一 四段VSPonanza

第1局の圧勝で、軽薄なる我々将棋ファンはあっさり手のひらを返し、意外とコンピュータはたいしたことないのではないか、という空気も生まれつつあった。

電王戦開幕前にはほとんど勝ち目がないだろうと考えられていた佐藤慎一(サトシン)だが、対局当日には案外あっさりサトシンが勝つのではないか、という声もそれなりにあったように記憶している。ここで実際サトシンがあっさり勝ってしまえば、それはそれで電王戦は盛り上がりに欠けるものとなっていただろう。

しかponanzaは、忘れっぽい将棋ファンにコンピュータの強さをしっかりと再認識させてくれた。少々拙い序盤ながら決して形勢に大きな差をつけられることなく追走してゆき、圧倒的な終盤力できっちり差し勝つ。ponanza将棋は、我々が見てきた「強いコンピュータ」の将棋のものであった。

この対局で、現役プロ棋士コンピュータに初の黒星を喫することとなった。歴史的な一敗。そして序盤の拙さも含めあらゆる意味コンピュータらしいponanza将棋は、この一敗をもたらすに相応しいものであった。

第3局 4月6日(土) 船江恒平 五段VSツツカナ

1勝1敗で迎えた第3局。既に述べたとおり船江恒平は三浦に次ぐ実力者で、人間コンピュータ双方ともに力を尽くした戦いとなることが期待されていたが、はたして本局はそうした期待にたがわぬ名局となった。

上位棋士の実力を発揮して優位を築く船江。傍目にはかなりの大差と見えたのだが、68手目△2二金打がコンピュータ面目躍如たる一手だった。

受け100パーセント

将棋では、こうした反撃の味を含まない手を指すようでは基本形勢が悪いとしたものであり、実際厳密には船江の方が良いのかもしれない。だが(プロ棋士も含む)観戦者の多くが楽観していたほどの大差でなかったことは明らかであり、人間盲点を突く74手目△5五香以下ツツカナが逆転した点をとってみても、コンピュータの読みの確かさが改めて裏づけられた形である

さらにこの後、いわゆる水平線効果コンピュータは特定の手数で読みを打ち切るため、打ち切り後に好手がある場合にそれを考慮に入れられず悪手を指してしまう現象)でツツカナは敗勢に陥るものの、粘り強い指し手を続けて再逆転を果たす。

コンピュータのこれでもかという程の中終盤の強さと、それに追随できるだけの船江の高い実力があってはじめて実現した、まさに名局であった。

第4局 4月13日(土) 塚田泰明 九段VSPuella α

第2局・第3局とコンピュータが連勝したことで、将棋ファンの空気は再び「コンピュータ強し」へと変わっていった(まったく調子のいいものである)。そしてその強いコンピュータに対し塚田では勝てないだろう、との見方大勢を占めていた。

対局はそんな大方の予想どおりに推移した。Puella αが攻めをうまくつなげ、塚田は74手目△1五と以下入玉をめざすもののその代償として飛車角を失う。相入玉となった場合(Puella αが入玉できることは確実な情勢であった)大駒(飛車角)各5点、小駒(それ以外)各1点として24点に達しないと負けとなるが、10点分の大駒を失った塚田が24点に達することは絶望的であり、つまり将棋としてはこのあたりで終わったと言ってよい。

ところが塚田はその「終わった」ところから約150手も指し続け、なんと最終的には引き分けに持ち込んでしまうのである。これは入玉将棋に十分対応できないコンピュータの自滅によるものであり、この約150手はバグ探しのような将棋とは別のゲームであったと評さざるを得ないだろう。

将棋としては大変微妙な部分もあったのだが、なんとしても大将につなげたいという塚田の執念が胸を打ち、特に将棋になじみのない一般人を中心に大きな話題となった一戦であった。



こうして見ると、どの対局も盤上にせよ盤外にせよ何らかの見所があってなかなか面白かったな。

で、数々のドラマを生み出してきた電王戦も、いよいよ最終第5局。

第5局 4月20日(土) 三浦弘行 八段VSGPS将棋

A級棋士三浦弘行が勝って人間の意地を見せるのか、GPS将棋が勝って新時代の到来を宣言するのか。

注目の一戦は明日午前9時30分スタート

 
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