タイトル獲得経験者(通算1期)。羽生善治七冠王を崩した棋士である。
顔つきは朴訥とした雰囲気が有るかもしれない。野武士という異名をとったこともある。なぜかニコ生で人気(だった?)。
ソフト指しが疑われているA級順位戦の三浦ー渡辺戦は角換わりの序盤早々にポンと▲4五桂を跳ねる将棋であった。前例はあって無いようなもの。話題になったお陰で棋譜は検索すれば簡単に見つかる。ちなみに将棋の棋譜に著作権は無い。素人目にはこの桂馬は、後手が△4四歩と伸ばせば簡単に取れそうである。プロから見てもそうであったらしく、順位戦の渡辺はそう指した。その後は後手は期待通りに桂馬を取り、引き換えに先手は馬を作り2歩を得た。以降は10手ほど穏やかに進み、先手が戦端を開き一気に後手陣を攻め潰した。馬と歩得の時点で形勢は先手が良かったようだ。実際、今日の竜王戦第一局(対丸山九段)で渡辺はほぼ同局面から△4四歩を見送り、ponanzaはこの選択をそんなに悪くないと評価した。
三浦の▲4五桂にはソフトによる研究が伺える。駒損して歩得と馬を主張するところがソフトっぽいと言われる。同時に三浦の棋風も伺える。端的に言えば研究将棋とはハメ手であり、毒饅頭を目の前にチラつかせる将棋なのだ。渡辺はまんまと引っかかり、自然と思われる桂取りの△4四歩からほぼ一直線の流れで、気づけば形勢を損なった。
行方尚史八段は三浦を表して「局地戦になると異常に力を発揮する人」「狭いところでの三浦君の計算力はすごい」と評した*1。一見して選択肢の狭い局面に誘導し、そこで相手を罠に嵌め、自身の計算力を頼りに仕留めるのが得意である、というわけだ。そして三浦はこの棋風を維持するために、自身の研究に加えて他の棋士の研究をも吸い出してきた。圧倒的な研究量が三浦のウリなのだ。
第68期名人戦(2010年)において三浦は羽生善治名人(当時)に挑戦した。梅田望夫「羽生善治と現代」ではこのシリーズの第二局を通じて、三浦の棋風すなわち研究将棋の極北について論じている。三浦はここでも羽生相手に罠を仕掛けた。当時流行の横歩取り8五飛戦法の、その最新型に一撃必殺の罠を仕掛けた、のだが、この罠は関西有力若手棋士(行方は豊島将之現七段か糸谷哲郎現八段か、誰かは知らないが、と言う)を二晩ホテルに缶詰にして聞き出した研究の成果であると言われる。
自分が出席しない研究会の成果をその日の夜に電話で聞き出したりもする。後日有力棋士に公に批判された。
三浦の将棋脳の特性と、それを活かせる狭く罠を仕掛けやすい展開を収集する研究力・人脈、これによって三浦はトップ棋士たりえた。
近年ではソフトが鬼強いので、誰でも棋力に関係なく高度な研究ができるハズだ。では三浦の強みが無くなったかというとさにあらず。現に順位戦で渡辺は三浦の研究手▲4五桂に対応できず、自然な手に乗って形勢を損ねた。プロより強いソフトが行き渡った現代でも、三浦の研究力は存分に発揮されている。
つまりカンニングしなくても、三浦は十分強い。序盤は優秀な研究があるので仮にカンニングするとしたら中終盤だが、この将棋は優勢な局面から一方的な攻め将棋で終わった。カンニングが必要とは、個人的には思えない。
ちなみに羽生との第68期名人戦、三浦は4タコで無残に敗退した。形勢良しの将棋を勝ちきれず、善悪不明の将棋を手品のように負けた。
第二局で羽生は三浦の罠を看破し、三浦の研究の隙の隙を掻い潜り、見事勝利した。
中学生でプロになった。20歳で棋界最高峰の竜王を取った。タイトル通算17期、史上初の永世竜王資格保持者。名人挑戦者に未だなれない。
生え際は若くして後退した。歯に衣着せぬ実直な物言いも人気。
自玉を固めて細い攻めを繋げて一方的に殴るのが一般に渡辺っぽいとされるが、最近はどんな将棋でも単純に強い。
研究家。ソフトを使用しているがソフトの評価値はあんまり重用していないとも語る*2。
渡辺は単純に強い棋士である。2000年以降、渡辺は将棋界のトップ3以上の実力者でありつづけた。研究家であっても、三浦のような極端さは無い。
人望の厚さが伺われるエピソードも多い。佐藤天彦新名人にも慕われている。
渡辺は正義と公正の棋士である。ゆえに、三浦の若手搾取が許せないらしい。村山慈明現七段から三浦に電話で研究会の成果を根掘り葉掘り何時間も訊かれたと愚痴られた渡辺は、NHK将棋講座誌上で三浦を名指しで、質問三羽烏として痛烈に批判した。
とばっちりを受けた残り二羽の烏は深浦康市九段と丸山忠久九段である。深浦は「羽生善治と現代」にて三浦の研究将棋を擁護し、丸山は今回の将棋連盟の決定に不服ととれるコメントを出した。前述の通り、丸山ー渡辺で開幕した今期竜王戦第一局の序盤は、件のA級順位戦三浦ー渡辺戦とほぼ同じ将棋であった。丸山の意趣返しであるが、渡辺の対策が良く封じ手時点では丸山苦戦の模様。
三浦のカンニング疑惑の聞き取りに、渡辺は理事に混じって同席した。
5人前後の三浦に負かされたと推察される棋士が三浦を告発したという。根拠はつまりプロの直感である。正義の棋士渡辺は告発者の一人であり、卑劣なカンニングを許せず、またタイトル戦の直接の対決者であるから、聞き取りに同席したのだろう。
聞き取りは聞き取りだけで終わり、証拠は一切示されないが、あるともないとも知れない。
三浦からしたら、タイトル戦の直前にタイトルホルダーが連盟を味方につけて、盤外戦術を仕掛けてきたようなものである。
三浦がカンニングしていたのなら、怖くて大舞台には出れないだろう。
三浦がカンニングしていなくても、怖くて大舞台には出れないだろう。
つまり三浦相手に連敗中の渡辺が三浦を竜王戦欠場に追いやったとも言える。
まさしく陣屋事件に勝るとも劣らぬ怪奇事件。なんと命名したらよいだろうか。
今回の件は棋士の存在価値を揺るがす大問題。 それだけにグレー決着だけはあり得ない。 現にはっきり発表しないがために憶測が憶測を呼び、あることないこと報道され、ネットで書...
そのエピソードからは 「必ずしも自力で研究することに価値を見出さず他人の研究を奪ってでも勝ちにこだわる」という人間像しか見えてこないし そういう人間なら、いかにもカンニン...