はてなキーワード: アイランダーとは
昨日はニュージーランドの重要な祝日の一つワイタンギ・デーだった。
これはニュージーランドに入植してきたイギリス人と原住民であるマオリ族との間で取り交わされた条約であり、イギリスのインチキ外交の一つとして語られるべきものでもある。
なぜこれがインチキなのか、といえば、条約である以上英語版とマオリ語版が作られるのだが、お互いに特に重要なポイントが違っている。
マオリ語版はニュージーランドを共同統治すると書いていたが英語版は英国王室が主権者となっている、マオリ語におけるとある単語がマオリ語ではかなり広い意味の単語なのにも関わらず英語版では限定的な意味合いになっている、マオリ族は小規模な部族があちこちにあるのだが、締切に間に合わずに条約に調印していない部族がいる、などだ。
そもそもなぜこの条約を締結しようとしたかというと、入植者がマオリから土地をだまし取ることが横行したからだと記憶しているのだが、結局両者ともに内容の異なる条約に調印したことによって新たな問題を作り上げるだけとなった。
とはいえそんな問題だらけのワイタンギ条約といえども、マオリ族の権益、漁業や林業、は確保されており、マオリ族は単に自分たちの土地を奪われただけではないようになっているが、やはり不平等条約を締結させられてしまい、そのことに対して文句を言ったら戦争を仕掛けられて一方的にやられてしまった(当時のマオリ族はやりを使って戦争をしていたが英国はマスケット銃などの装備があったので一方的な結果になった)ことに対するくすぶりは今も続いている。
しかしながらマオリ族はワイタンギ条約があるがゆえに反感を持ちつつもどうにか共存していたという経緯がある。
その証拠にニュージーランドの貧困層にはマオリ族が多いという問題がある。これには一部のマオリ族が白人文化を拒絶しているという点もあるのだが、こういった貧富の差がワイタンギ条約とそれに続く不満に寄って起きている、ということは否定できないものとなっていると言っていいかもしれない。
特にコロナワクチン接種についてはマオリの比率が高い地域ほど接種率が低くなるという傾向があった。
さて、そんなワイタンギ条約だが、現連立政権を構成するACT政党の党首デビッド・シーモアが改正するべきだ、と言い出しており、民主主義的に風前の灯となっている。
このニュースが日本に伝わっているのかといえば伝わっていないと思うが、以下のニュースからワイタンギ条約に手を付けることはニュージーランドにおいては一種のタブーであることはわかると思う。
Māori 'will go to war' over ACT's Treaty referendum, Labour MPs warn
労働党の政治家はワイタンギ条約に手を付けるならマオリ族は戦争を起こす可能性があると警告しているし、ウィンストン・ピータースというこの国をいたずらに引っ掻き回し続けているがおそらくこの国のどの政治家よりも有能な男ですらこの政策には一歩引いた態度を取っている。
そのような法案など議論せずにもみ消せば良いと思うかもしれないが、ACT政党の連立政権に関する条件がこの法案について審議する、というものだったため、少なくとも国会で審議されることは間違いない。
ワイタンギ条約がある限りマオリ族以外が漁業をすることはできないため、魚屋のラインナップは常に同じものになっている。林業を彼らが専有すれば木材の供給などもマオリ次第になってしまううえに、競争が成立しなくなるため資本主義的な状況がなくなってしまうという問題はあるだろう。
昨年の12月にはマオリが大規模な抗議行動を行い、高速道路が使い物にならなくなってしまい、多くの人々の出勤を妨害することになった。
Te Pāti Māori mass protests: Two arrests on Auckland’s motorway, convoy converged on Parliament
マオリ族はこのワイタンギ条約を取り巻く状況からマオリの王が部族を招集して会議を行った。
そんな中、ワイタンギデーでウィンストン・ピータースがワイタンギでスピーチを行い大炎上となった。
誰がワイタンギ条約を破棄しようとしているのか、我々はより良いワイタンギ条約を作ろうとしているに過ぎない、ということを盛んに訴えたようだがダメだった。
ニュージーランドにおけるポピュリズムが死んだ日なのかもしれない。それはそれでめでたいと思うが、マオリ族が今の政権の言うことを冷静に聞ける状況ではないことはわかる。
ワイタンギ条約を仮にデビッド・シーモアの思惑通りに改革するとしたらどうなるか、彼は第一原則として以下のように言っている。
All citizens of New Zealand have the same political rights and duties
ニュージーランドに住まうあらゆる人々は同じ権利と義務を持つべきだ、ということだ。
当然のように聞こえるが、マオリが一体何を手に入れて何を失うのかを考えればマオリ族は損しかしないことがわかる。
果たして彼らの文化は尊重されるのか、彼らの思想や信条、神話などは尊重されるのか、マオリ語はどうなるのか(これについてはどうなろうとも自然消滅する可能性が高い)、そして彼らの権益はどうなるのか、おそらくすべての権利を平等にすれば、マオリ族の持つあらゆるものは資本主義と民主主義にさらされるため、減っていくことは疑うまでもない。
ちなみにこれらは現時点でワイタンギ条約に寄って保護対象となっているが、保護対象から外されればマオリは自分たちで稼いで保守し続けなくてはならないかもしれない(助成金くらいは出るだろうが)。
すでに貧富の差や学力の差などでマオリ族は他に比べると遥かに劣った状態になっているため、この状態でいきなりスタートラインを揃えられてしまえば彼らは敗北するしかない。
だからこそマオリ族は現在実力行使に出ようとしており、すでにアクティビストたちが行動を起こし始めている。
Twelve arrests after protesters abseil inside Te Papa, deface Treaty of Waitangi exhibition
ワイタンギ条約のモニュメントをいきなり黒く塗りつぶしてしまうなどの破壊行為が始まっている。
マオリ族はすでに団結を始めている可能性も高いうえに、かつてのマオリ戦争のときのような装備の差などは当時ほどないと言ってもいいだろう。
国内にどれだけの銃が流通しており、誰が何を何丁持っているかも管理されていない。かつでは銃器の買取プログラムを政府が行ったが対して成功していない。
ニュージーランド国外のジャシンダシンパは今でも彼女の行った銃器買取プログラムを「実現した」と拍手喝采かもしれないが、大した成果は出ないままに終わってしまったので国内ではよほどのシンパでない限りは誰一人評価していない。
Gun amnesty: Buyback cost more to run than paid out to owners
銃火器を購入するよりもたくさんお金をつぎ込んで行ったこのプログラムは、当初2200〜2800丁は買い取ることになると見積もられていたが、結果は1078丁であり、目標を達成したと言うにはあまりにも少ないし、結局ニュージーランド人は重火器を政府に売って金にするよりも時保持し続けることを選んだということでもある。
そしてこの銃火器が今どこにあるかは誰にもわからないが、万が一マオリがニュージーランド国内で内戦を開始するのであれば、こういった銃火器がふんだんに使用されることは想像に難くない。
いずれにせよ、政府がワイタンギ条約の改正を行うのかどうか、行うとしてワイタンギ条約がどのように変わるのか、によってこの国の治安は地に落ちる可能性が高い。
その時この国にいるワイタンギ条約との関わりの薄い移民はどうなるのか、かつてドーンレイドという凄まじい差別を受けたアイランダーたちはどういう行動を取るのか(彼らもまた貧困にあえいでいる)、ジャシンダはドーンレイドについて謝罪をしたがそういう問題でもないだろうし平和条約を締結したわけでもない。なんならマオリと組んで暴れるかもしれない。
そしてニュージーランドで暗躍している中国政府、いや、暗躍ではなく、堂々と政府が依存を表明している中国政府がこの国に何かの影響を及ぼすのか、そうなればオーストラリアはどうするのか(ANZACという軍事同盟を締結している)、オーストラリアがトラブルに巻き込まれるならばコモンウェルスの国々はどうするのか、コモンウェルスには当然イギリスがいるため、NATOやEUにも何らかの影響が出る。そうなればアメリカも出てこざるを得ないが、今のアメリカにさらなる戦争を追加することはできないだろうし、イギリスは国王のチャールズ三世にがんが見つかったので戦争どころではないかもしれない。
King diagnosed with cancer, Buckingham Palace says
https://www.bbc.com/news/uk-68208157
しかしこのような世界一周ボートレースのような経路で戦火が広がるのであればニュージーランドのヨットレースにもかかってくるので洒落が聞いていると思う。面白くないが。
などと妄想を振りまいてみたが、ニュージーランドの内戦とせいぜいアイランダーが暴れるくらいならば、ANZACの枠外に飛び火することはないだろうが、ニュージーランドにいる外国人たちはこのニュースに目を光らせておいたほうがいいだろう。
9月9日の開幕戦から、20チームの激闘を見守り続けてきたウェブ・エリスカップ。
50日間の戦いの末に、今日、その所有者が決まる。
4年に1度のラグビーの祭典ワールドカップ、2023年フランス大会も、ついに決勝を迎えた。
47試合の末、ファイナルに駒を進めたのは、南半球、いや世界のラグビーの象徴・ニュージーランドと、ディフェンディングチャンピオン・南アフリカ。
開催国フランスの好調や、ランキング1位で乗り込んだアイルランド、フィジー・サモアなどのアイランダーチームやアルゼンチンの成長などで、勢力図の変化が噂される中で開幕した今大会だが、蓋を開けてみると、決勝はおなじみの最強同士の対戦となった。
ニュージーランドは開幕戦でフランス相手に1試合を落として以降は、圧倒的な得点力で対戦相手を沈黙させてプールステージを突破した上、準々決勝ではアイルランド相手に守備の硬さも見せつけて準決勝に進出。チーム初の優勝を狙うアルゼンチンに完勝して決勝まで勝ち上がってきた。
大会前までは仕上がりを不安視されていた黒衣の軍団だが、オールブラックスに関しては「史上最強」「完全な優勝候補」とみなされていたような大会の方が勝てないことが多く、今回のように「ぱっとしない」と言われる時の方が優勝を攫ったりする。
チームをみると、LOサム・ホワイトロックやSHアーロン・スミスなど、レジェンダリーなベテラン選手が活躍する一方、PRイーサン・デクラーク、ティレル・ロマックス、CTBリーコ・イオアネ、WTBマーク・テレア、ウィル・ジョーダンなど20代のプレーヤーも多く、ベテラン、中堅の経験値と、若手のエネルギーがバランス良くミックスされたチームになっている。
前大会で最強と呼ばれた世代の多くが引退した後、世代交代の最中で完成形が見えづらいままW杯に臨んだが、まさにこのW杯で成長したのかもしれない。
7週間にも及ぶ戦いの中で調子を上げ、持ち前の得点力だけではない守備の硬さ、意外とも言えるスクラムの強さも見せつけてきた。
HCのイアン・フォスターは大会後の勇退が決定しており、スーパーラグビーの常勝軍団クルセイダーズHCのスコット・ロバートソンにその場を引き継ぐことが決定している。
つなぎの世代と言わせず、このチームこそが最強のオールブラックスであることを証明できるだろうか。
対する南アフリカはというと、フィジカルバトルを得意とするチームが集まったプールBをアイルランド戦の1敗以外に圧倒的な強さを見せつけて決勝トーナメントに進出。
フランス戦、イングランド戦の2試合を連続の1点差で制して決勝に進出した。
優勝した前大会の時点で主力メンバーが若かったため、本大会でも優勝メンバーが残り、FWの安定感がチームを支えてきた南ア代表だが、なぜかこのチームに起こりがちな「完全な1本目のSOがいない」という問題に今回も悩まされ、重要な得点源のキックの精度などはイマイチとみなされていた。
そこに、負傷で代表メンバーから外れていたハンドレ・ポラードが、大会中に負傷したメンバーと交代して第4戦目から復帰。
ポラードはあまり華麗なパスを見せる司令塔ではなく、南アらしいキックとFW戦のタクトを振るのを得意としているが、この試合に望むリザーブのメンバーを見ても、南アがどういう試合にしたいのかが垣間見える。というかクッキリ見える。
SOはおろか、SHの替えすらなく、デクラークが負傷した際にはWTBチェスリン・コルビが務めるとアナウンスされるほど。
80分間、FWを惜しみなく使って身体を当て、キックで得点する気満々で、スプリングボクスらしい戦いでオールブラックスを迎え撃つ構えだ。
オールブラックスとスプリングボクスが戦えば、激しいフィジカルバトルに耐えてちょっとの差を掴み取るゲームになるしかない。
決勝のスタット・ド・フランスは雨。
身体をぶつけあうには絶好のコンディションだ。
どちらが「ちょっと」をモノにしてウェブエリスカップを掲げることができるのだろうか。
両国の国歌斉唱につづいて、オールブラックスが今大会最後のハカ、カパ・オ・パンゴを披露し、オールブラックス、ボーデン・バレットのキックオフで試合が始まった。
開始早々、大会を通して南アのスクラムを引っ張ってきたンボナンビが脚を痛めてグラウンドに倒れて負傷後退。
その直後の交錯でオールブラックスのシャノン・フリゼルがイエローカード。
自ボールをキープしてパスとランからゲインをねらうオールブラックスに対して、ディフェンスからキックを蹴らせ、受けたボールを蹴り上げて、キックで前進する南ア。
もとからお互いやりたいことをするとこうなるわけだが、南アがジリジリ前進できている。
フリゼルの反則で獲得したものにつづいて、オールブラックスを押し込んで序盤に2つ連続でペナルティを獲得した南ア。
ロースコアゲームで蹴り勝ちたい南アにしたら上首尾なゲームの入りだ。
オールブラックスがボールを回しながら前進してPGを返すが、南アはFW戦で圧力をかけてペナルティを狙い、PGを重ねて差を詰めさせない。
スコアで突き放されながらも、ゲームが進行するにつれボールをまわす攻撃で徐々に先進し始めたオールブラックスだが、雨の影響でボールが手元で滑り、掴みかけた攻撃のチャンスでボールを失っている。
そしてゲームの流れを大きく変える瞬間が訪れた。
28分にFLサム・ケインがハイ・タックルでレッドカードの退場。
前評判の低かったチームを獅子奮迅の活躍で牽引してきたキャプテンがまさかの決勝の舞台で一足先に試合を去ることになった。
荒れ模様前半はその後、双方がPGを重ね、南ア 12 - 6 NZ でゲームを折り返した。
試合としては前半の25分過ぎからオールブラックスがボールを保持した攻めで南アディフェンスを切り裂き始めており、圧倒されているわけではない。
しかし、ラインアウトの不首尾や、滑る手元、高く入ってしまうタックルなどで得点のチャンスを失うオールブラックスに対して、南アが手に入った機会に過大な結果を狙わず即座のPGで得点を重ねて6点差。
攻めがつながっているので、後半での逆転もあり得る点差だが、相手がそもそもロースコアを狙ってきている南アだなると話が違う。
それに、フィジカルバトルを狙ったオーダーを組んできた南ア相手に人数の不利を被ったのは大打撃だ。
南アにしてみれば、相手のミスに救われているところもあるが、それは要所でうまくプレッシャーをかけて、危機を切り抜け続けているという事になる。
この決勝でも当然のように発揮される南アの勝負強さは驚くべきものだ。
オールブラックスは不利を跳ね返して逆転のトライを決められるのか、それとも南アが得点以外でも前半につけた差を活かして突き放すのか。
得点の匂いがする猛攻だったが、この攻撃のなかで、今度はシア・コリシの頭が当たってイエローカードで退出し、人数のアドバンテージを失う。
後半頭で試合を決めるチャンスを逃した南アに対して、オールブラックスは人数の不利がないうちに攻め込んでいく。
ボール展開すればゴールライン間際まで迫ることができるが、オールブラックスとしては歯がゆいことにスコアまでに至らず、トライラインまで到達したプレーも、ノックオンでチャンスを失ってしまう。
全てがうまくハマる日もあれば、そのピースをはめる時に手がパズルの傍にあるグラスに当たったり、膝がテーブルの下を叩いたりする日もある。
それが起きているのが、4年間の努力の末のW杯の決勝の場で、相手が最後まで勝負を投げない南アだというのが最悪だ。
ズルズルと時間と勝機を失ういかけていたオールブラックスだが、58分、ついにゴールラインを破るトライを獲得。
ここで7点を取れば、ロースコアの試合で果てしなく大きい1点のアドバンテージを得ることができたところだが、決定力の高いモウンガのCVは外れて、リードを奪うまでに至らない。
W杯も残りは20分となり、ゲームの内容としてはボールを敵陣に運べているオールブラックスに傾きかけているのだが、勢いにのってひっくり返したいところで、雨の影響もあってかボールが手に付かない。
ゲームが動かないまま10分がすぎ、1本のPGが勝利に直結する時間になってきた。
オールブラックスはPG1本でも欲しい、南アは逆にこれをとって試合を決めたい。
試合を分ける攻防の中で、南ア・コルビの故意と見做されるノックオンでオールブラックスのPKとなり、またも試合をひっくり返すチャンスが訪れるが、ジョーディ・バレットの重要な1本が外れて1点差のまま。
1プレーで逆転できる1点差が果てしなく遠い。
のこりは5分を切り、最後の攻めのチャンスが巡ってきたオールブラックスだが、ここでも敵陣深くまで迫りながらノックオンでボールを失う。
残り10秒のスクラムに最後の希望をかけるも、必死で守る南アにボールをラインに押し出されて、試合終了を告げるホイッスル。
最終スコア
降りしきる雨、試合開始直後の負傷退場やイエローカード、両キャプテンの反則退出、度重なるハンドリングエラーなど、双方にとってゲームは思惑通りに進まなかった。
しかし、オールブラックスが何度も訪れた逆転のチャンスを悉く掴み損ねたのに対して、ひっくり返されそうになった南アは、諦めずに自分達のするべきことに徹して耐え抜き、ゲームを決める「ちょっと」をものにした。
大会前はアイルランド、フランスなどが見事な戦績を積み上げ、南アもNZも今回は圧倒的な存在ではないと見做されていたが、両チームは大会の中で成長しながら決勝まで辿り着いた。
そして、歯を食いしばりながら薄氷の勝利を積み上げた南アは、なんとこのW杯の決勝トーナメントの試合全てを1点差の勝利で勝ち抜いて、ついに連覇のウェブエリスカップを掲げる最後の勝者になった。
この大会は前回大会から8年間、時代の主役だったプレヤーたちの多くが代表を去る。
ウェールスのダン・ビガー、アイルランドのジョニー・セクストン、ニュージーランドのアーロン・スミス。
日本代表でも年齢的に堀江などは次の大会で見られないかもしれない。
選手が入れ替わるだけでなく、大会のレギュレーションも見直され、次のオーストラリア大会からは出場チームが24に拡大される。
時代の終わりに少しの寂しさがある。
でも、次の時代の準備はもう始まっている。
自分の話をさせてもらうと、今回は大会が始まる前までレビューを書くか迷っていた。
前大会は日本開催で多くの人が試合を見ることが予想されていたのに対して、今回はフランス開催で試合もリアルタイムでは観戦しづらく、日本代表の苦戦も大会前から予測されていた。
また、自分自身この夏から本業が急に忙しくなったので、1ヶ月半以上毎週レビューを書くだけの気力が続くかという心配もあった。
ただ、やはり4年に一度しかないからと、初戦のチリ戦からレビューを書き始めると、まだ待っていてくれていた人からの応援のコメントや、他の試合をみたトラバなどが寄せられて、ともにラグビーの祭典を楽しみたいという人がいたことにとても支えられた。
(あと、本業の厳しい局面でも「リーチ・マイケルや堀江もあんなに頑張ったしな」なんて思って自分を奮い立たせたりもした)
「ラグビーを見る人の楽しみに少しの助けになりたい」と始めたことが、皆の支えでやり切れて、自分自身がこの4年の集大成を、そして時代の変わり目をしっかり目に焼きつけられたのは感謝の気持ちでいっぱいだ。
ラグビーは身体のぶつかり合いが特徴のスポーツで、試合の感想を語ろうとすると「フィジカルに圧倒された」という話になりがちで、それ以外だと「反則が多かった」「あの選手のあのプレーが」という結果の一部だけを取り上げた議論になってしまう。
このレビューを書く上で意識していたのは、結果の現象だけでなく、双方のチームがどういう強みとプランをもって試合に臨んだのか、キックオフなどのゲームの状況が基本的にどちらに優位に働くのかなどに注目して、「なんとなく身体能力で負けた」「多分ミスで自滅した」「全力を尽くして感動した」よりもう少し理解度をあげて、とはいえ1つのサインプレーなどの細かい話に入りすぎて全体像が見えづらくならないようにと思って書いていた。
自分はいちファンにすぎないので、長年のオールドファンを唸らせるようなレビューは書けないと思っていたけど、日本代表の試合だから見てみようと思った人に、今回少しでも役に立てたなら嬉しい。
もう一度、みなさんありがとう。
最後まで書き切れたのはみんなのおかげです。
またどこかで、会いましょう。
元増田ではないがラグビーワールドカップ予選プールC、フィジーvsジョージアを見た。
どこにぶら下げるか迷ったがここで。
試合の感想ももちろんだけど、この試合はプールCの状況を知っておけばより楽しめる。
事前の評価の高かった順から、オーストラリア、ウェールズ、フィジー、ジョージア、ポルトガルだ。
ちなみにとあるブックメーカーの、プールCの一位通過予想オッズはオーストラリア(1.4倍)、ウェールズ(3.75倍)、フィジー(8.5倍)、ジョージア(67倍)、ポルトガル(501倍)となっていた。
だがフタを開けてみると、ウェールズが3連勝で決勝当確。オーストラリアがウェールズ、フィジーに連敗で予選敗退の危機と混沌とした情勢だ。
フィジーが勝てば2位通過濃厚でジョージアは予選落ち確定。ジョージアが勝てばオーストラリアが息を吹き替えし、この3ヵ国で最後の椅子を争うことになる。
元々世代交代に失敗した(と見なされて)火中の栗を拾いにいく形となった、元日本代表ヘッドコーチであるエディ(現オーストラリアヘッドコーチ)の心境はいかほどであろうか。
もともと日本と同格と目されていた両チームだが試合前は圧倒的にフィジー優勢と見られていたようだ。とあるブックメーカーのオッズはフィジー(1.06倍)、ジョージア(14.85)倍となっていた。ジョージアの勝率は1割に満たない、と評価されていたのだろう。
トンガ・サモアと並ぶアイランダー(南太平洋の島国)の一角だが、チームカラーは全く違う。
トンガ・サモアが圧倒的なフィジカルを前面に押し出したラグビーをするのに対し、フィジーの特徴は自由奔放な走りにある。
前に横に時には後ろにも走り、相手をかわし、倒れても柔らかいオフロードパスをどんどん繋いでいく。
スペースを自在に走り回るラグビーで7人制では世界に君臨しており、予測不能で単純に見ていて楽しいラグビーをするので大好きなチームだ。
弱点は規律・統率。海外でプレイする選手が多く、ワールドカップの時くらいしかベストメンバーが組めない都合上どうしても連携が疎かになっていた。ただ、近年はフィジー代表のクローンチーム「フィジアン・ドゥルア」をスーパーラグビーに送り込み、効果もでているようだ。
今大会でもウェールズと接戦を繰り広げ、オーストラリアには圧勝し、評価を上げ続けている。
しばらく前まではグルジアと呼ばれていた旧ソ連圏の国。レスリング、重量上げ、柔道なども盛んで日本に力士を送り込む(栃ノ心など)など力勝負なら負けない国だ。
ラグビーでもそのスタイルはパワーで押す、とにかく押す。スクラムで押し、モールで押し、個人でも押す。ボールを動かし走られて負けるのは仕方ないにしてもパワーだけでは負けないラグビーをするチームだった。
しかし、2019ワールドカップのときの増田の解説にもあるように、そこから脚も使う、パスも使うチームへの脱皮を図っているのがジョージアだ。
昨年ウェールズを破るなど一定の評価を得ていたが、大会では、オーストラリア敗れたのはさておき、プール最弱と目されていたポルトガルに引き分けるなどやや評価を落としている。
さて本題の試合内容に入る。
NHKの解説者も驚いていたが、ジョージアがパワー勝負を控えめに、パスを繋ぎ、走ってフィジーの穴を突いていく。
解説や我々ファンも驚いたがそれ以上に驚いたのがおそらくフィジーの選手たち。
事前にそういった想定をしていなかったのであろう、重量級の前進を止めるために構えていたフィジーは細かくパスを回すジョージアに全く対応できていなかった。
守備の隙間をつかれて前進される、フィジーの選手は当然背走しなければならない、だがジョージアの弾出しが早くそれを遅らせようとしてオフサイドポジションからプレーをしてしまう、と悪循環に陥ってしまっていた(ジョージアにすれば計画通り)。
結果、ジョージアはトライを取ることは出来なかった(※)ものの、ペナルティを犯したフィジーに対して着実にペナルティーゴールを決めて加点する。
ジョージアは守備も素晴らしかった。ウェールズを苦しめオーストラリアを引き裂いたフィジーのランやパスを完全に封じ込めた。
特に、リスクを取って高めにタックルし、腕とボールを抑え込むことでフィジー得意とするオフロードパスを出すことさえ許さなかったのは圧巻で、ジョージア選手たちの集中力と一歩目の出足の速さを物語っていた。
動揺のせいかフィジーはラインアウトも冴えない。まぁ圧勝したオーストラリア戦でも四苦八苦していたので単純に苦手なのかもしれない。
(※)前半、ジョージアがトライを決めたかに思われたがスローフォワード(パスを前に投げる反則)との判定であった。
NHKの解説者はスローフォワードではないと考えたようで「この判定は波紋を呼びそうです」とまで言った。
真横からの映像でなかったので私にはこれがスローフォワードだったのかどうかはわからないが、トライに直結するシーンなのでTMO(ビデオ判定)くらいはした方がよかったと思う。
ちなみにこの後、解説者は「ラグビーは前に走っているので、真横に投げても走って慣性で前に流れる分はスローフォワードではない(だから今回はスローフォワードではない)」と解説していたが、これは誤りではないだろうか。
私の感覚だと次のような感じだ。
・確かに多少前に流れる程度では流れを重視して細かく反則をとらないことが多い
・特にスピードと得点を重視するスーパーラグビーではトライシーンを含めて反則を取っていない
・ただし、原則としては反則で、特にワールドカップのトライシーンではかなり厳格に運用されている
まぁ経験者ではなく、テレビで見、たまにスタジアムにいく程度のファンの目線でしかないので有識者の解説を求む。
ジョージアの戦術ははっきりした。だが後半もこれを続けるのか、それとも往年のジョージアに戻るのか。そもそも前半から全力と思われるが体力は続くのか。
予想外の展開に動揺したと思われるフィジーはこれまでであればクールダウンは難しい。果たして落ち着けるのか。後半がスタートした。
ジョージアの戦術は変わらない。もちろんFWも使う、スクラムでも押すがしっかりパスも回し走りもする。この辺で気づいたがジョージアは極めてオーソドックスなラグビーを高レベルで実現しているようだ。
フィジーも戦術は変えない。だがハーフタイムを挟み落ち着けたのか一つ一つのプレーの精度が上がってきた。
ジョージアが走ってくることを前提に守備をするのでなかなかジョージアは前進ができない。
フィジー攻撃の際は、タックルを受けるときに芯を外し腕を自由にすることでオフロードパスが決まり始める。
こうなると自力で上回るチームに追われるチームは怖い。
後半ずっと攻められ続け結局2トライ2ゴール1ペナルティゴールを許し
このまま押し切られるかと思ったがまだまだ試合は終わらない。
ジョージアの体力が落ちる前にフィジーの出足が若干鈍くなってきた。
負ければ予選敗退がするジョージア、まだまだワールドカップは終わらないと気合の入り方が尋常ではない。
ペナルティゴールで3点を返し、5点差としてラストプレイとなった。
こうなると観客も逆転を期待する。元々前評判が低い方に味方することが多いラグビーの観客たち、ここぞとばかりに大声援でジョージアの後押しをする。
やはりパワー勝負ではなく走るジョージア。この直前にイエローカードで14人となったフィジーディフェンスの穴を突き前にでる。かなり前進したところでフィジーに捕まりそうになる。普通なら一度倒れて仕切り直しにするところ、ジョージアはなんと前方へキックでボールを転がした。フィジーの後方には誰もおらず、フィジー、ジョージア双方の競争で勝った方が勝利となる。
あと一歩、二歩程度の差でフィジーが追い付きボールを蹴り出してノーサイド、結果は
終わったあと、双方の選手たちがグラウンドに座り込んでしまった。激闘を物語るシーンだ。
素晴らしい試合を見たので吐き出したくて長文を書いてしまった。
結果はフィジーが予選通過をほぼ確定させ、ジョージアとその余波でオーストラリアが予選落ちする結果となった。
この試合はジョージアの可能性も、フィジーの成長も十分に感じることができた。伝統国以外の活躍は今後のラグビーの未来の光明ともなる。今後の両国に期待したい。
5チームの総当たりを行うラグビーワールドカップのグループリーグは長い。
すでに9月末、日本の空にはすっかり秋の涼しい空気が流れてきた。
季節を跨いで行われるラグビーW杯、みんな楽しんでいるだろうか。
プールDの第3戦、遠いフランス・トゥルーズで日本代表はサモア代表と戦う。
サモアとは前大会でも予選リーグで相対し、その時はキックで効率的に攻めた日本が勝利したが、今大会のサモアは今までとは違う。
自国に国際レベルのリーグがないために、W杯ごとに欧州やスーパーラグビー選手で急に代表が結成される彼らは、チームとしてのまとまりに欠き、規律の乱れで反則をしがちという長年の弱点があったのだが、前大会後に国際プロリーグ、スーパーラグビーに自国メンバーで構成されるモアナ・パシフィカを送り込んで、一つのチームとして組織的にプレーできる選手たちを育ててきた。
また、祖父母までがその国の出身で、かつ他国の代表で過去3年間試合に出場していなければ、1度だけ代表の所属国を変更できるという規定の変更により、元オーストラリア代表のクリスチャン・リアリーファノ、元ニュージーランド代表のチャーリー・ファウアウイナなどの経験豊富なメンバーがサモア代表に加わった。
リアリーファノは白血病を克服したあと、ジャパンラグビー・トップリーグでもプレーしており、日本でも知られた存在だ。
W杯入ってからのスタッツを見ると、サモアはランでキャリーする距離よりキックで前進した距離の方が長い。
同じアイランダーのチームでも自陣からも持って走るフィジーとは随分違う。
キックで前進してセットプレーからのパワフルなランと衝突で押し切るという攻撃の形が見えてくる。
タッチキックで大きく前進するシーンがたくさん見られるなら、それはサモアの形になっている。
遂行面で、大会に入ってからのサモアは、リアリーファノのゲームメイクとキックで、きちんとラックを作った落ち着いた攻撃をしている印象で、試合を左右するような重大な反則も過去に比べてとても少ない。
反面、カウンターや攻撃のオプションとしてはイングランドやアルゼンチンより少ない。
キチンとしたゲームの入りにまだ慣れていないのか、ノリどころを見逃しがちで、スイッチが入るのに時間がかかる印象もある。
守備面でも規律が改善されてよく守ってるが、タックルの成功率自体は高くなく、自陣深くまでの侵入を度々許している。
日本は反則に気をつけてセットプレーを渡さず、相手陣にボールを運び続ければ封じる目もありそうだ。
スクラムやラインアウトが重要になるのだが、大会前の不安視されたパフォーマンスとは打って変わって、W杯に入ってからの日本のセットプレーは目を覚ましたように安定していて、封じ込めは現実的にも見える。
ただ、万一シンビンなどで人数を欠くと、強力なフィジカルの圧力をモロに受けてしまう。
分析が封じるのか、経験でアップグレードされたパワーが押し切るのか。
トゥールーズの観客の大歓声を背に、ウォークライ、シバタウを披露したサモアのキックオフでゲームは始まった
キックオフ直後の1分、日本はキックで攻め入りたいサモアに反則をしてしまい、機会を与えてしまう。
ショットで先制点をとりにきたサモアは外したものの、蹴り返した日本のキックで結局セットプレーに。
しかしこれを耐え切り、今度は今度は日本がサモアの反則からキックで敵陣に入り込む。
相手の形になりかけたのに凌いだのは幸先が良い。
ラインアウトはスティールされたが、その後も相手の後方にキックを蹴る。
日本はキックで相手を常に後方に下げて、消耗を避けつつ侵入を防ぐ戦術だ。
ハイパントがどちらに入るかはその後のセットプレーの結果に直結する。
ここもサモアの狙い所で、圧力に負けるとサモアの前進を許してしまうが、反則をせず止めた。
日本代表はゲームを左右するポイントが締まっていて幸先がよい。
すると12分にレメキのビッグゲインから、ピーター“ラピース”ラブスカフニが先制のトライ!
キックオフから反撃したいサモアはランでボールを持ち込んでPKを獲得。
深い位置から、立て続けのラインアウト、スクラムで攻め立てる。
サモアは自分達の形でトライを取りたいし、日本は相手の長い攻めを徒労に終わらせたい。
結果はサモアのショットで3点を許したが、日本は相手が意図したプレーで結果をださせなかったことで流れを押しとどめた。
リスタートからのPGで日本はすぐさま3点を返すと、ライリー、レメキの鋭いランからでリーチが追加のトライ!
3点を取るのに15分を要したサモアに対し、日本が10点を取るのに要した時間は3分。
この効率の差はなにか。
サモアの攻撃オプションの少なさが時間の無駄遣いにつながっているように見える。
前半の残り時間でなんとしてもトライが欲しいサモアと、リードを守りたい日本。
サモアはこのW杯でよく攻めをコントローしてきたタウマテイネを、日本はスクラムの要の堀江を互いにイエローで欠く形となる。
フィジカルに勝るサモア相手に人数を欠くのは避けたかった試合のポイントだ。
サモアにとっては嬉しく、日本にとっては避けたかったトライだった。
数字だけだと、サモアが圧倒したようにも見えるが、ピッチ上の実際の出来事を突き合わせてみると、攻め手がないまま長時間ボールを持ったサモアと短時間でスコアする日本という形となった。
ちなみに前半の残り時間がほとんどない中、退出した堀江に変わってリーチがラインアウトを投げ入れるという珍しいシーンがあり、この件についてラグビープレーヤーの同僚に解説を求めたところ「ああいった場面で対処がわからずチームに迷いが広がるのを嫌ったのかもしれない」ということだった。
本物は自分がすべきことがわかっている時、いちいち人の指示を待ったりしたい。
目の前に為すべきことがあれば、リーチは余計なことは言わず、ただそれを為す。
ブライトンではリスクを恐れずスクラムを選んで勝利を呼び込んだ。
ニュージーランドの自宅では最高のコンディションを維持するためリビングにサウナを作った。
そして、トゥルーズで黙ってラインアウトを投げ入れたリーチは、ハーフタイムにジェイミーに怒られた。
怒られることを恐れて為すべきことを引っ込めたりしたい。
リーチはそんな漢だ。
日本とサモア、互いに14人で始まった後半にどう言った修正をしてくるか注目だが、日本は前半に引き続いてサモアのラインの後方にキックを蹴る。
前半に長時間の攻めで体力を使いすぎたサモアに対してさらに無駄なランを強いる作戦のようだ。
ここで今大会をよく我慢しているサモアは、ついにゲームを大きく動かす反則をしてしまう。
ラブスカフニに対するベン・ラムの肩から入ったタックルが頭に当たってしまい、レッドカードの可能性もある一時退出。
そしてシンビン開けの堀江が戻った日本が、1人分のアドバンテージを活かしてモールでトライ!
国際映像に写りこんだラグビー芸人しんやのガッツポーズがトライに華を添える。
ベン・ラムが審査でレッドカードになったことによって、サモアは残り30分、14人で2トライ2ゴールを追うこととなった。
ラグビーを見る時に、前後半をさらに半分に分けて、20分、40分、60分、80分に四分割すると、20分と60分で試合の様相が変わることがよくある。
60分からの日本は今まで蹴ってきたキックを蹴らずにボールを持って走る戦術に切り替えた。
対するサモアにもうできることは少ないが、少ない選択肢が迷いを消して流れが変わることがある。
サモアはラックの近場を縦にこじ開けて、オフロードをつなぐ、往時の戦術に勝利をかけた。
これが実って65分にリアフィーファノが飛び込んでトライ!
残り10分を残して、日本もサモアも、互いに最後の切り札を出す展開となる。
素早い展開とランで侵入してキックで3点を持ち帰る日本に、フィジカルで縦に押し込みトライで追い縋るサモア。
最終盤スタジアムが両観客からの大歓声に包まれる中、日本がボールをピッチから蹴出してノーサイド。
最後に押し込まれたものの、後半は日本がテリトリーも支配率も返した形で、これはベン・ラムの退場もあるけど、60分からキックではなくランで攻める日本のプランがこういう結果になったのだろう。
ゲーム全体をみると、サモアはやはり攻撃のオプションが少なかった。
フィジカルの強さは最大の強みだが、正面からドーン、ドーンとくる感じ。
圧力はあったものの「予想外の何が出るかという怖さ」がなく、日本が全力を出せるかどうかというゲームだったように思う。
「やるべきことができなかった。そのおかげで日本が陣地を広げることができたと思う。もっとボールに向かっていけばもっとスコアを取れるポジションに行けたと思う。過去3試合でもそういう傾向だった。だから、この展開は自分もチームも責任を取るべきだ。しかし、努力をしてきたことには誇りに思う」
とマプスワHC。
試合前に感じていた「きちんとしたゲームメイクだが、以前より大人しくなりすぎ」という印象はある程度サモア自身も感じているようだった。
フィジカルの強さに、もしハイパンの優位性や、スラロームのようなランなどの攻撃オプションがあったのなら対処が難しいチームだった。
「まだ1試合残っている。やるべきことがある。次に進めないかもしれないけど、2027年の豪州大会に向けても頑張っていきたい。とにかくイングランド戦に全力を尽くし、明るい気持ちで終えられるようにしたいが、まだ試合は終わっていないんだ」
明暗は別れ、これで予選突破が厳しくなったサモアに対して、日本はあと1勝で予選突破が決まる状況になった。
ベスト4を目標に掲げる日本、しかし決勝トーナメントの前に立ちはだかるのが、先週、日本に先立ってサモアを退けたアルゼンチンだ。
南米最強のチーム相手に突破をかける大一番は、3連休の中日、10月8日の20:00にキックオフだ。
火事が起きて途中中止になったけど花火は最期まで上がっていたといういたばし花火大会だが、実は戸田市との共同開催になっていて、荒川を挟んで板橋側だけが中止になったのだ。荒川を挟んで両岸で打ち上げまくるのね。
でも板橋区の方では「いたばし花火大会」としてしかアナウンスされないし、戸田市側の方は「戸田橋花火大会」としてしか案内されないから、東京都民or板橋区民の中には戸田市の方でも打ち上げてるのを知らない人が結構いるし、反対側の埼玉県民、戸田市民の方も然りで、「中止になったのに最後まで打ちあがってたのは何故???」というなぞなぞみたいな事になってしまった。
そして両岸で共同開催という珍しい形になったのは、荒川の改修工事が元になっている。
赤羽の岩淵に岩淵水門という隅田川入口を締め切る水門があるんだが、そこから下流の荒川は大正から昭和初めに掛けて開削した放水路だ。それまでは荒川の全水量が今の墨田川に流入していて水量が増えると東京の下町の方が洪水になってその都度大損害を出していた。
そこで荒川放水路を掘るという大工事に至ったのだ。普段は岩淵水門を開けておいて水は隅田川の方に流れているが、水量が増えたら水門を閉めて全部放水路の方に流れるようにする。
同時に岩淵水門の上流も大改修する必要があった。荒川がうねる様に大蛇行していて、当時の堤防というのは河道から500m~1kmも離れた所にあり水が溢れたら堤防までの土地(堤外地)は水没、という扱いになっていた。
これを止めて直線的に流れるようにして堤防に対する攻撃力を下げる。そしてちゃんとした高い堤防で完全に水を封じ込むようにする。
ついでに合流する河川も改修する。新河岸川は彩湖の付近で合流していたが、荒川の堤防だけ高くしても洪水時は新河岸川の方に逆流するからそこから洪水になって無意味だ。
そこで新河岸川の堤防を荒川準拠に高くする代わりに、新河岸川の合流地点を延長して荒川と平行して流し、赤羽まで持って行く。そして岩淵水門の下流で隅田川に合流させるのだ。確かに荒川の水量の影響を受けなくなるがすごい工事である。
で、その河道はどうするかというと、蛇行している荒川の頂点に接線を引いて、北側接線を荒川、南側接線を新河岸川にした。
すると接線の間にはサインカーブで分断された土地というのが出来る。
そしてそれまでは荒川が埼玉県と東京府の境だった。荒川の位置を変更して北側接線にしたから、東京府側に下に凸型の埼玉県飛び地がいくつか出来たって事になる。
このサインカーブ飛び地問題、今の埼玉県川口市&東京都北区、埼玉県戸田市&東京都板橋区が影響を受けるが、川口市&北区側は早々に解決した。
今の埼京線浮間舟渡駅~北赤羽駅の浮間地区は元は埼玉県横曾根村の浮間だった。だが荒川改修直後に横曽村と川口町の合併(川口市へ)が控えており、その時に東京府に割譲すると取決めがされてその通りになった。
一方、戸田村の船渡地区は東京府との協議が難航していた。浮間の方は横曽村がほぼ丸ごと東京側に行くのに大して、戸田村の集落は埼玉側にあり、その船渡地区だけが東京側に行く。
時折線が入り組んだ複雑な県境があるが、それが出来る理由というのは同じ地主の土地が県境で分かれないようにする為というのが多い。この場合は地主の土地を引き裂く県境引き直しだから難しい訳だ。更にその土地が工場に売られたりして更にややこしくなった。
そうするうちに戦争が始まってしまう。東京府と東京市は無くなって東京都と板橋区が出来て話し合いの主体もリセット。もう解決不能である。
戦後になって流石に復興する前にあれ何とかすべきだという事になり、1950年、難航の末に戸田町と板橋区の間で県境を荒川にする事で合意。今の地図を見ても蛇行の名残は見える。
https://goo.gl/maps/uEMgZazGCHPmMV2Q6
新河岸川の角みたいなのと浮間公園の池が蛇行の跡で、戸田葬儀場があるU字型の土地が戸田町から板橋区に割譲された船渡地区だ。
そこでこりゃ目出度いって事で、戸田橋花火大会を開催することになり、板橋区もそれに協賛という形で加わる形となった。後に協賛じゃなくて戸田市側の戸田橋花火大会、板橋区側のいたばし花火大会同時開催という形に変化。
そしてこのいたばし花火大会の開催&打ち上げ地点というのはこの戸田市からぶん捕った土地の河川敷なのである。これは飛び地問題解決を祝って始めた花火なのでここじゃなきゃいけないわけだ。
荒川の河川敷は今の経緯から見ても判る通り、元は農地だった。戦後すぐまでもそのままで農民は河川敷の農地を所有し堤防を越えて農業をしに来ていた。
だが堤外地で増水時には水没する土地でもあり自治体は土地を購入して運動公園への転用、ゴルフ場や教習所など水没前提の事業者への売却を促してきた。つまりは「平地」として活用されてきた。
だがそのうち荒川旧河道は誰の土地でもないから放置されて荒れ地のままになっていた。それも昭和後期あたりから公園や払下げなどが進んできた。
だが現河道と旧河道の合流部は敢えてそのまま残される事になった。水面が切れ込んでいるので水生生物が流されにくい。そしてその周辺は敢えてそのまま荒れ地のままにしてバードサンクチュアリにする。
という事で、他の部分は運動場などで使うので綺麗に芝刈りされているのに「一か所だけ荒れ地のままにしているところでナイアガラをする」という条件が揃ってしまったのだ。
旧河道付近は荒れ地のままにして、戸田市からぶんどったこの土地でやるのが元々の花火のテーゼだから仕方がないのだが条件が悪いな。
増田の推測だと他の悪条件も重なったと思われる。
まずは2019年の台風19号。これによって荒川は増水し、昭和初期の堤防の高さを超える位置まで水位が上がった。
水が引いた後は河川敷の教習所もゴルフ場も泥まみれである。これらは2~5cm以上にも達し、人力で除去されたのだが、荒れ地の泥はそのままだったはずだ。
そして洪水の泥はナイル川デルタに文明を発生させるほどに肥沃であって、泥がそのままの荒れ地は猛烈に雑草が繁茂したはずだ。
更に2020~2022は東京五輪とコロナの為に開催中止。肥沃な泥で荒れ地の雑草たちは伸び伸びと繁茂しまくり、その中には葛も含まれていた。こいつが来たらもう手に負えない。
そんな悪条件で更に当日は風が強かった。堤防下に管理用道路があり、その脇の数mは普段から草刈りされていて、そこでナイアガラするのだが、そこを遥かに超えた所まで火が飛んでしまった。そしてそこには台風19号で肥料を大増量されて3年以上も繁茂しまくっては枯れと繰り返した雑草、特に葛が居たのである。悪条件が重なりすぎなのだ。
戸田市側の堤防の向こうには戸田のボート場があるが、これは東京五輪用に作られたものだ。
だがこの五輪は2020大会でもなけりゃ戦後の1964年大会でもない、幻となった戦前の1940年大会用に作ったものである。日中戦争激化でキャンセルされた幻の五輪に向けてこれだけ大きなボート場を作ったのだ。でも当時は埼京線は無いし交通はどうするつもりだったのか?都電が戸田橋の南詰まで走ってたがこれは戦後開通だし。
今は西側1/3をギャンブル競艇、東側の残りの水面を大学や実業団の漕艇部が使うという形になっていて、それらの艇庫がズラリと並ぶ。
飛び地問題を早々に解決した川口市の方は荒川での花火大会は無かった(最近出来た)。
だが戸田&板橋の花火大会が羨ましくなった川口市はたたら祭りという祭りを開催。その〆に花火を打ち上げている。
これは川口オートレース場で行われるが、狭いところで打ち上げるので尺玉などは無くて、数も3500発位と、スペックだけ見たらしょぼく見える。
だがオートレース場は観客席と防音壁で囲まれており(数年前までマフラー無しの直管だった)、そこで打ち上げるので音が反響してもの凄い迫力である。また打ち上げ場所が近いので灰や花火の殻がバラバラと沢山降ってきてかなりワイルドなんである。
これは高級スポーツカーよりレーシングカートの方が楽しいとかジャンボジェットよりもセスナやブリテン・ノーマン アイランダーの方が体感的というのに似ている。
先のgooglemapsの航空写真では船渡地区のU字の丸い底の方に工場群が写っているのが見える。
これは新日鉄の工場で、新河岸川は舟運が出来るので戦後すぐに出来たものだが(貨車、トラックに乗らない長物が運搬できる)、実は今は解体されて無くなっている。
都内最大の超巨大物流センターになる予定で、ドローン配達の基地にもなるそうだ。
ただ、ここは実はスーパー堤防予定地である。また、対岸側の川口市の方にはやはりスーパー堤防予定地にタワマンが数棟建っている。
いいの?と思うがスーパー堤防の整備年数は400年、タワマンや工場の耐用年数は60年で、修繕しても120年くらいだから建てちゃっていいそうなのだが、スーパー堤防の壮大さというよりも大言壮語さに驚いてしまう。
花火会場の直ぐ近くを東北新幹線と埼京線が鉄橋で渡っており、埼京線は打ち上げ中は徐行して渡る。新幹線は普通に走っているので乗客へのサービスと思われる。
韓国の雑踏事故とコロナのせいで有料席だけとして無料の人は出ていけとしている大会が増えていて今いたばし&戸田橋もそうだが、これだと市街地の道に人が溢れ、トイレやゴミ箱の設置が無いからその始末を住民がする事になって運営が無責任だ、見えなくしただけだという感じで結構ヘイトを買っている。このやり方はまずいんじゃないのか?
湯気と入れ墨と楕円球
著名な温泉町なので、賑わっていると思った別府だが、19時台はもうすっかり落ち着いている。
窓の外を見ても時折湯気が上がっている以外は何の変哲も無い地方の山村といった風情で、昨日までの賑やかさを考えると全く別世界に来た感じがする。
そう言えば、大分駅前で、来年のラグビーW杯のサイネージ広告を見た。
44日に及んで熱戦が繰り広げられるW杯は、北海道から九州まで、日本各地で開催される。
大分で行われる初戦は絶対王者ニュージーランドが登場する豪華なカードで、多くの外国人が観戦ついでにここ別府温泉を訪れる事になろうが、温泉のタトゥー対策はどうなるのだろうか。
辿り着いた鉄輪温泉は人通りも殆どなく、入湯施設と飲み屋以外は閉まっていた。
やはり大分は全体的に夜が早いらしい。
自分も少しだけ温まって、ネットでおすすめのひょうたん温泉に向かった。
ひょうたん温泉はさすがに賑わっており、日本語の他にも中国語や韓国語も聞こえてくる。
逞しい胸板に豊かな胸毛を蓄えた欧米人もいた。
脱衣所で着替えてミシュランでも紹介された湯に向かう。
関東のスーパー銭湯の様なオシャレさと無縁の無骨な作りだが、蒸し風呂、檜風呂、岩風呂、歩行風呂、高さ3mから浴びる打たせ湯、この施設の名前の由来にもなっているひょうたん風呂など、風呂の種類は多岐にわたり、豪華な野趣という様な趣が感じられた。
と、洗い場を見ると、隣のお兄さんの右肩に鮮やかな和彫が。
しばらくすると、ウェットスーツの様に全身を覆う和彫の兄さんもいる。
この状況ならやってくるのが欧米人のデザインタトゥーだろうが、マオリやパシフィックアイランダーのトライバルタトゥーだろうがどうって事はない。
要は柄の種類が増えるだけの話だ。
11月の夜の空気はひんやりしているが、さすがは音に聞こえし別府温泉、山道を下ってホテルに帰る間も、さっぱり感と温かさが持続している様に感じられる。
明日は昼前に再び訪れよう、その為にも早く寝るかなどと思い、部屋に帰って何気なくテレビをつけると、ラグビー日本代表が、母国イングランド代表と聖地トゥイッケナムスタジアムで対峙していた。
旅行中は観られないと諦めていたカードだったので、嬉しい偶然だ。
歴史も実績も歴然とした差があるイングランドだが、日本代表は3年かけて磨き抜いたテンポの速いラグビーで奮戦。
日本の仕掛ける高速ラグビーについていけず、ミスを連発するイングランドのディフェンスラインを突破してトライを重ね、日本は前半を15-10のリードで折り返した。
後半、日本はさらにゲームスピードを上げることを目論み、早い配給でもって鳴らす若手スクラムハーフ、流大を投入する。
対するサイドからは、眉に異様に近い目から鋭い眼光を送る、亜麻色の髪の角刈りが姿を現した。
前回のW杯、予選プール敗退の悔しさを乗り越え、今や欧州最高選手との呼び声も高い司令塔、オーウェン・ファレルだ。
前半に日本のスピードについて行こうとしてボールも人も前後左右に動かしたプレーと一転、一度手にしたボールに巨躯の男達が殺到し、力づくで押し込んでくる。
その動きは重鈍で、一気に振り切られるようなスピードはない。
しかし、重機のような圧力を前に日本代表はジリジリと後退させられる。
イングランド代表が一体になって前進するその姿は「これこそが我々だ」という確信を掴み取ろうとしているように見えた。
ついには快速自慢のバックスまでもが一塊りになってインゴールに雪崩れ込み、日本代表はトライを献上。
結局、自らを見つけ直したイングランドを相手にして流れが再び戻る事はなく、日本代表は15-35で屈した。
やはり己を知り、信じる者は強く、世界の頂はまだ遠い。
来年のW杯、大分では予選プールだけでなく、決勝トーナメント 準々決勝 プールCとDの1・2位突破チームのカードが組まれる。
死の組と噂されるプールCに組み込まれたイングランドだが、その実力を持ってすれば2大会ぶりの決勝トーナメント進出の可能性は濃厚だ。
後半に登場して日本代表を締め上げた鋭い目つきのファレル選手も、別府温泉にやってくるかもしれない。