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はてなキーワード: どじょうとは

2024-11-15

ヤンマガ

怪獣のやつは エヴァンゲリオン

今週の読み切りは何のひねりもなく完全に美味しんぼ

「昔流行ったフォーマット現代要素を取り入れて柳の下のどじょうを狙おう」感が見え見えで編集冒険心が感じられない

2024-10-24

急に出てきて少年に遊ぼうと呼びかけるどじょう

何者だ

2024-10-01

五  門をはいると、このあいだの萩が、人の丈より高く茂って、株の根に黒い影ができている。この黒い影が地の上をはって、奥の方へゆくと、見えなくなる。葉と葉の重なる裏まで上ってくるようにも思われる。それほど表には濃い日があたっている。手洗水のそば南天がある。これも普通よりは背が高い。三本寄ってひょろひょろしている。葉は便所の窓の上にある。  萩と南天の間に椽側が少し見える。椽側は南天を基点としてはすに向こうへ走っている。萩の影になった所は、いちばん遠いはずれになる。それで萩はいちばん手前にある。よし子はこの萩の影にいた。椽側に腰をかけて。  三四郎は萩とすれすれに立った。よし子は椽から腰を上げた。足は平たい石の上にある。三四郎はいさらその背の高いのに驚いた。 「おはいりなさい」  依然として三四郎を待ち設けたような言葉かいである三四郎病院の当時を思い出した。萩を通り越して椽鼻まで来た。 「お掛けなさい」  三四郎は靴をはいている。命のごとく腰をかけた。よし子は座蒲団を取って来た。 「お敷きなさい」  三四郎蒲団を敷いた。門をはいってから三四郎はまだ一言も口を開かない。この単純な少女はただ自分の思うとおりを三四郎に言うが、三四郎からは毫も返事を求めていないように思われる。三四郎は無邪気なる女王の前に出た心持ちがした。命を聞くだけである。お世辞を使う必要がない。一言でも先方の意を迎えるような事をいえば、急に卑しくなる、唖の奴隷のごとく、さきのいうがままにふるまっていれば愉快である三四郎子供のようなよし子から子供扱いにされながら、少しもわが自尊心を傷つけたとは感じえなかった。 「兄ですか」とよし子はその次に聞いた。  野々宮を尋ねて来たわけでもない。尋ねないわけでもない。なんで来たか三四郎にもじつはわからないのである。 「野々宮さんはまだ学校ですか」 「ええ、いつでも夜おそくでなくっちゃ帰りません」  これは三四郎も知ってる事である三四郎挨拶に窮した。見ると椽側に絵の具箱がある。かきかけた水彩がある。 「絵をお習いですか」 「ええ、好きだからかきます」 「先生はだれですか」 「先生に習うほどじょうずじゃないの」 「ちょっと拝見」 「これ? これまだできていないの」とかきかけを三四郎の方へ出す。なるほど自分のうちの庭がかきかけてある。空と、前の家の柿の木と、はいり口の萩だけができている。なかにも柿の木ははなはだ赤くできている。 「なかなかうまい」と三四郎が絵をながめながら言う。 「これが?」とよし子は少し驚いた。本当に驚いたのである三四郎のようなわざとらしい調子は少しもなかった。  三四郎はいさら自分言葉冗談にすることもできず、またまじめにすることもできなくなった。どっちにしても、よし子から軽蔑されそうである三四郎は絵をながめながら、腹の中で赤面した。  椽側から座敷を見回すと、しんと静かである茶の間はむろん、台所にも人はいないようである。 「おっかさんはもうお国へお帰りになったんですか」 「まだ帰りません。近いうちに立つはずですけれど」 「今、いらっしゃるんですか」 「今ちょっと買物に出ました」 「あなた里見さんの所へお移りになるというのは本当ですか」 「どうして」 「どうしてって――このあい広田先生の所でそんな話がありましたから」 「まだきまりません。ことによると、そうなるかもしれませんけれど」  三四郎は少しく要領を得た。 「野々宮さんはもとから里見さんと御懇意なんですか」 「ええ。お友だちなの」  男と女の友だちという意味かしらと思ったが、なんだかおかしい。けれども三四郎はそれ以上を聞きえなかった。 「広田先生は野々宮さんのもとの先生だそうですね」 「ええ」  話は「ええ」でつかえた。 「あなた里見さんの所へいらっしゃるほうがいいんですか」 「私? そうね。でも美禰子さんのお兄いさんにお気の毒ですから」 「美禰子さんのにいさんがあるんですか」 「ええ。うちの兄と同年の卒業なんです」 「やっぱり理学士ですか」 「いいえ、科は違います法学士です。そのまた上の兄さんが広田先生のお友だちだったのですけれども、早くおなくなりになって、今では恭助さんだけなんです」 「おとっさんやおっかさんは」  よし子は少し笑いながら、 「ないわ」と言った。美禰子の父母の存在想像するのは滑稽であるといわぬばかりである。よほど早く死んだものみえる。よし子の記憶にはまるでないのだろう。 「そういう関係で美禰子さんは広田先生の家へ出入をなさるんですね」 「ええ。死んだにいさんが広田先生とはたいへん仲良しだったそうです。それに美禰子さんは英語が好きだから、時々英語を習いにいらっしゃるんでしょう」 「こちらへも来ますか」  よし子はいつのまにか、水彩画の続きをかき始めた。三四郎そばにいるのがまるで苦になっていない。それでいて、よく返事をする。 「美禰子さん?」と聞きながら、柿の木の下にある藁葺屋根に影をつけたが、 「少し黒すぎますね」と絵を三四郎の前へ出した。三四郎は今度は正直に、 「ええ、少し黒すぎます」と答えた。すると、よし子は画筆に水を含ませて、黒い所を洗いながら、 「いらっしゃいますわ」とようやく三四郎に返事をした。 「たびたび?」 「ええたびたび」とよし子は依然として画紙に向かっている。三四郎は、よし子が絵のつづきをかきだしてから、問答がたいへん楽になった。  しばらく無言のまま、絵のなかをのぞいていると、よし子はたんねんに藁葺屋根の黒い影を洗っていたが、あまり水が多すぎたのと、筆の使い方がなかなか不慣れなので、黒いものがかってに四方へ浮き出して、せっかく赤くできた柿が、陰干の渋柿のような色になった。よし子は画筆の手を休めて、両手を伸ばして、首をあとへ引いて、ワットマンをなるべく遠くからながめていたが、しまいに、小さな声で、 「もう駄目ね」と言う。じっさいだめなのだからしかたがない。三四郎は気の毒になった。 「もうおよしなさい。そうして、また新しくおかきなさい」  よし子は顔を絵に向けたまま、しりめに三四郎を見た。大きな潤いのある目である三四郎ますます気の毒になった。すると女が急に笑いだした。 「ばかね。二時間ばかり損をして」と言いながら、せっかくかいた水彩の上へ、横縦に二、三本太い棒を引いて、絵の具箱の蓋をぱたりと伏せた。 「もうよしましょう。座敷へおはいりなさい。お茶をあげますから」と言いながら、自分は上へ上がった。三四郎は靴を脱ぐのが面倒なので、やはり椽側に腰をかけていた。腹の中では、今になって、茶をやるという女を非常におもしろいと思っていた。三四郎に度はずれの女をおもしろがるつもりは少しもないのだが、突然お茶をあげますといわれた時には、一種の愉快を感ぜぬわけにゆかなかったのである。その感じは、どうしても異性に近づいて得られる感じではなかった。  茶の間で話し声がする。下女はいたに違いない。やがて襖を開いて、茶器を持って、よし子があらわれた。その顔を正面から見た時に、三四郎はまた、女性中のもっと女性的な顔であると思った。  よし子は茶をくんで椽側へ出して、自分は座敷の畳の上へすわった。三四郎はもう帰ろうと思っていたが、この女のそばにいると、帰らないでもかまわないような気がする。病院ではかつてこの女の顔をながめすぎて、少し赤面させたために、さっそく引き取ったが、きょうはなんともない。茶を出したのをさいわいに椽側と座敷でまた談話を始めた。いろいろ話しているうちに、よし子は三四郎に妙な事を聞きだした。それは、自分の兄の野々宮が好きかいやかという質問であった。ちょっと聞くとまるでがんぜない子供の言いそうな事であるが、よし子の意味はもう少し深いところにあった。研究心の強い学問好きの人は、万事を研究する気で見るから、情愛が薄くなるわけである人情で物をみると、すべてが好ききらいの二つになる。研究する気なぞが起こるものではない。自分の兄は理学者だものから自分研究していけない。自分研究すればするほど、自分を可愛がる度は減るのだから、妹に対して不親切になる。けれども、あのくらい研究好きの兄が、このくらい自分を可愛がってくれるのだから、それを思うと、兄は日本じゅうでいちばんいい人に違いないという結論であった。  三四郎はこの説を聞いて、大いにもっともなような、またどこか抜けているような気がしたが、さてどこが抜けているんだか、頭がぼんやりして、ちょっとからなかった。それでおもてむきこの説に対してはべつだんの批評を加えなかった。ただ腹の中で、これしきの女の言う事を、明瞭に批評しえないのは、男児としてふがいないことだと、いたく赤面した。同時に、東京女学生はけっしてばかにできないものだということを悟った。  三四郎はよし子に対する敬愛の念をいだいて下宿へ帰った。はがきが来ている。「明日午後一時ごろから人形を見にまいりますから広田先生の家までいらっしゃい。美禰子」  その字が、野々宮さんのポッケットから半分はみ出していた封筒の上書に似ているので、三四郎は何べんも読み直してみた。  翌日は日曜である三四郎は昼飯を済ましてすぐ西片町へ来た。新調の制服を着て、光った靴をはいている。静かな横町広田先生の前まで来ると、人声がする。  先生の家は門をはいると、左手がすぐ庭で、木戸をあければ玄関へかからずに、座敷の椽へ出られる。三四郎は要目垣のあいだに見える桟をはずそうとして、ふと、庭の中の話し声を耳にした。話は野々宮と美禰子のあいだに起こりつつある。 「そんな事をすれば、地面の上へ落ちて死ぬばかりだ」これは男の声である。 「死んでも、そのほうがいいと思います」これは女の答である。 「もっともそんな無謀な人間は、高い所から落ちて死ぬだけの価値は十分ある」 「残酷な事をおっしゃる」  三四郎はここで木戸をあけた。庭のまん中に立っていた会話の主は二人ともこっちを見た。野々宮はただ「やあ」と平凡に言って、頭をうなずかせただけである。頭に新しい茶の中折帽をかぶっている。美禰子は、すぐ、 「はがきはいつごろ着きましたか」と聞いた。二人の今までやっていた会話はこれで中絶した。  椽側には主人が洋服を着て腰をかけて、相変らず哲学を吹いている。これは西洋雑誌を手にしていた。そばによし子がいる。両手をうしろに突いて、からだを空に持たせながら、伸ばした足にはいた厚い草履をながめていた。――三四郎はみんなから待ち受けられていたとみえる。  主人は雑誌をなげ出した。 「では行くかな。とうとう引っぱり出された」 「御苦労さま」と野々宮さんが言った。女は二人で顔を見合わせて、ひとに知れないような笑をもらした。庭を出る時、女が二人つづいた。 「背が高いのね」と美禰子があとから言った。 「のっぽ」とよし子が一言答えた。門の側で並んだ時、「だからなりたけ草履をはくの」と弁解をした。三四郎もつづいて庭を出ようとすると、二階の障子ががらりと開いた。与次郎が手欄の所まで出てきた。 「行くのか」と聞く。 「うん、君は」 「行かない。菊細工なんぞ見てなんになるものか。ばかだな」 「いっしょに行こう。家にいたってしようがないじゃないか」 「今論文を書いている。大論文を書いている。なかなかそれどころじゃない」

三四郎はあきれ返ったような笑い方をして、四人のあとを追いかけた。四人は細い横町を三分の二ほど広い通りの方へ遠ざかったところである。この一団の影を高い空気の下に認めた時、三四郎自分の今の生活熊本当時のそれよりも、ずっと意味の深いものになりつつあると感じた。かつて考えた三個の世界のうちで、第二第三の世界はまさにこの一団の影で代表されている。影の半分は薄黒い。半分は花野のごとく明らかである。そうして三四郎の頭のなかではこの両方が渾然として調和されている。のみならず、自分もいつのまにか、しぜんとこの経緯のなかに織りこまれている。ただそのうちのどこかにおちつかないところがある。それが不安である。歩きながら考えると、いまさき庭のうちで、野々宮と美禰子が話していた談柄が近因である三四郎はこの不安の念を駆るために、二人の談柄をふたたびほじくり出してみたい気がした。

 四人はすでに曲がり角へ来た。四人とも足をとめて、振り返った。美禰子は額に手をかざしている。

 三四郎は一分かからぬうちに追いついた。追いついてもだれもなんとも言わない。ただ歩きだしただけである。しばらくすると、美禰子が、

「野々宮さんは、理学者だから、なおそんな事をおっしゃるんでしょう」と言いだした。話の続きらしい。

「なに理学をやらなくっても同じ事です。高く飛ぼうというには、飛べるだけの装置を考えたうえでなければできないにきまっている。頭のほうがさきに要るに違いないじゃありませんか」

「そんなに高く飛びたくない人は、それで我慢するかもしれません」

我慢しなければ、死ぬばかりですもの

「そうすると安全で地面の上に立っているのがいちばんいい事になりますね。なんだかつまらないようだ」

 野々宮さんは返事をやめて、広田先生の方を向いたが、

「女には詩人が多いですね」と笑いながら言った。すると広田先生が、

男子の弊はかえって純粋詩人になりきれないところにあるだろう」と妙な挨拶をした。野々宮さんはそれで黙った。よし子と美禰子は何かお互いの話を始める。三四郎はようやく質問の機会を得た。

「今のは何のお話なんですか」

「なに空中飛行機の事です」と野々宮さんが無造作に言った。三四郎落語のおちを聞くような気がした。

 それからはべつだんの会話も出なかった。また長い会話ができかねるほど、人がぞろぞろ歩く所へ来た。大観音の前に乞食がいる。額を地にすりつけて、大きな声をのべつに出して、哀願をたくましゅうしている。時々顔を上げると、額のところだけが砂で白くなっている。だれも顧みるものがない。五人も平気で行き過ぎた。五、六間も来た時に、広田先生が急に振り向いて三四郎に聞いた。

「君あの乞食に銭をやりましたか

「いいえ」と三四郎があとを見ると、例の乞食は、白い額の下で両手を合わせて、相変らず大きな声を出している。

「やる気にならないわね」とよし子がすぐに言った。

「なぜ」とよし子の兄は妹を見た。たしなめるほどに強い言葉でもなかった。野々宮の顔つきはむしろ冷静である

「ああしじゅうせっついていちゃ、せっつきばえがしないからだめですよ」と美禰子が評した。

「いえ場所が悪いからだ」と今度は広田先生が言った。「あまり人通りが多すぎるからいけない。山の上の寂しい所で、ああいう男に会ったら、だれでもやる気になるんだよ」

「その代り一日待っていても、だれも通らないかもしれない」と野々宮はくすくす笑い出した。

 三四郎は四人の乞食に対する批評を聞いて、自分今日まで養成した徳義上の観念を幾分か傷つけられるような気がした。けれども自分乞食の前を通る時、一銭も投げてやる了見が起こらなかったのみならず、実をいえば、むしろ不愉快な感じが募った事実反省してみると、自分よりもこれら四人のほうがかえって己に誠であると思いついた。また彼らは己に誠でありうるほどな広い天地の下に呼吸する都会人種であるということを悟った。

 行くに従って人が多くなる。しばらくすると一人の迷子出会った。七つばかりの女の子である。泣きながら、人の袖の下を右へ行ったり、左へ行ったりうろうろしている。おばあさん、おばあさんとむやみに言う。これには往来の人もみんな心を動かしているようにみえる。立ちどまる者もある。かあいそうだという者もある。しかしだれも手をつけない。子供はすべての人の注意と同情をひきつつ、しきりに泣きさけんでおばあさんを捜している。不可思議現象である

「これも場所が悪いせいじゃないか」と野々宮君が子供の影を見送りながら言った。

「いまに巡査が始末をつけるにきまっているから、みんな責任をのがれるんだね」と広田先生説明した。

わたしそばまで来れば交番まで送ってやるわ」とよし子が言う。

「じゃ、追っかけて行って、連れて行くがいい」と兄が注意した。

「追っかけるのはいや」

「なぜ」

「なぜって――こんなにおおぜいの人がいるんですもの。私にかぎったことはないわ」

「やっぱり責任をのがれるんだ」と広田が言う。

「やっぱり場所が悪いんだ」と野々宮が言う。男は二人で笑った。団子坂の上まで来ると、交番の前へ人が黒山のようにたかっている。迷子はとうとう巡査の手に渡ったのである

「もう安心大丈夫です」と美禰子が、よし子を顧みて言った。よし子は「まあよかった」という。

 坂の上から見ると、坂は曲がっている。刀の切っ先のようである。幅はむろん狭い。右側の二階建が左側の高い小屋の前を半分さえぎっている。そのうしろにはまた高い幟が何本となく立ててある。人は急に谷底へ落ち込むように思われる。その落ち込むものが、はい上がるものと入り乱れて、道いっぱいにふさがっているから、谷の底にあたる所は幅をつくして異様に動く。見ていると目が疲れるほど不規則うごめいている。広田先生はこの坂の上に立って、

「これはたいへんだ」と、さも帰りたそうである。四人はあとから先生を押すようにして、谷へはいった。その谷が途中からだらだらと向こうへ回り込む所に、右にも左にも、大きな葭簀掛けの小屋を、狭い両側から高く構えたので、空さえ存外窮屈にみえる。往来は暗くなるまで込み合っている。そのなかで木戸番ができるだけ大きな声を出す。「人間から出る声じゃない。菊人形から出る声だ」と広田先生が評した。それほど彼らの声は尋常を離れている。

 一行は左の小屋はいった。曾我の討入がある。五郎も十郎も頼朝もみな平等に菊の着物を着ている。ただし顔や手足はことごとく木彫りである。その次は雪が降っている。若い女が癪を起こしている。これも人形の心に、菊をいちめんにはわせて、花と葉が平に隙間なく衣装恰好となるように作ったものである

 よし子は余念なくながめている。広田先生と野々宮はしきりに話を始めた。菊の培養法が違うとかなんとかいうところで、三四郎は、ほかの見物に隔てられて、一間ばかり離れた。美禰子はもう三四郎より先にいる。見物は、がいして町家の者である教育のありそうな者はきわめて少ない。美禰子はその間に立って振り返った。首を延ばして、野々宮のいる方を見た。野々宮は右の手を竹の手欄から出して、菊の根をさしながら、何か熱心に説明している。美禰子はまた向こうをむいた。見物に押されて、さっさと出口の方へ行く。三四郎は群集を押し分けながら、三人を棄てて、美禰子のあとを追って行った。

 ようやくのことで、美禰子のそばまで来て、

里見さん」と呼んだ時に、美禰子は青竹の手欄に手を突いて、心持ち首をもどして、三四郎を見た。なんとも言わない。手欄のなかは養老の滝である。丸い顔の、腰に斧をさした男が、瓢箪を持って、滝壺のそばにかがんでいる。三四郎が美禰子の顔を見た時には、青竹のなかに何があるかほとんど気がつかなかった。

「どうかしましたか」と思わず言った。美禰子はまだなんとも答えない。黒い目をさももうそうに三四郎の額の上にすえた。その時三四郎は美禰子の二重瞼に不可思議ある意味を認めた。その意味のうちには、霊の疲れがある。肉のゆるみがある。苦痛に近き訴えがある。三四郎は、美禰子の答を予期しつつある今の場合を忘れて、この眸とこの瞼の間にすべてを遺却した。すると、美禰子は言った。

「もう出ましょう」

 眸と瞼の距離が次第に近づくようにみえた。近づくに従って三四郎の心には女のために出なければすまない気がきざしてきた。それが頂点に達したころ、女は首を投げるように向こうをむいた。手を青竹の手欄から離して、出口の方へ歩いて行く。三四郎はすぐあとからついて出た。

 二人が表で並んだ時、美禰子はうつむいて右の手を額に当てた。周囲は人が渦を巻いている。三四郎は女の耳へ口を寄せた。

「どうかしましたか

 女は人込みの中を谷中の方へ歩きだした。三四郎もむろんいっしょに歩きだした。半町ばかり来た時、女は人の中で留まった。

「ここはどこでしょう」

「こっちへ行くと谷中天王寺の方へ出てしまます。帰り道とはまるで反対です」

「そう。私心持ちが悪くって……」

 三四郎は往来のまん中で助けなき苦痛を感じた。立って考えていた。

「どこか静かな所はないでしょうか」と女が聞いた。

 谷中千駄木が谷で出会うと、いちばん低い所に小川が流れている。この小川を沿うて、町を左へ切れるとすぐ野に出る。川はまっすぐに北へ通っている。三四郎東京へ来てから何べんもこの小川の向こう側を歩いて、何べんこっち側を歩いたかよく覚えている。美禰子の立っている所は、この小川が、ちょうど谷中の町を横切って根津へ抜ける石橋そばである

「もう一町ばかり歩けますか」と美禰子に聞いてみた。

「歩きます

 二人はすぐ石橋を渡って、左へ折れた。人の家の路地のような所を十間ほど行き尽して、門の手前から板橋こちら側へ渡り返して、しばらく川の縁を上ると、もう人は通らない。広い野である

 三四郎はこの静かな秋のなかへ出たら、急にしゃべり出した。

「どうです、ぐあいは。頭痛でもしますか。あんまり人がおおぜい、いたせいでしょう。あの人形を見ている連中のうちにはずいぶん下等なのがいたようだから――なにか失礼でもしまたか

 女は黙っている。やがて川の流れから目を上げて、三四郎を見た。二重瞼にはっきりと張りがあった。三四郎はその目つきでなかば安心した。

ありがとう。だいぶよくなりました」と言う。

休みましょうか」

「ええ」

「もう少し歩けますか」

「ええ」

「歩ければ、もう少しお歩きなさい。ここはきたない。あすこまで行くと、ちょうど休むにいい場所があるから

「ええ」

 一丁ばかり来た。また橋がある。一尺に足らない古板を造作なく渡した上を、三四郎は大またに歩いた。女もつづいて通った。待ち合わせた三四郎の目には、女の足が常の大地を踏むと同じように軽くみえた。この女はすなおな足をまっすぐに前へ運ぶ。わざと女らしく甘えた歩き方をしない。したがってむやみにこっちから手を貸すわけにはいかない。

 向こうに藁屋根がある。屋根の下が一面に赤い。近寄って見ると、唐辛子を干したのであった。女はこの赤いものが、唐辛子であると見分けのつくところまで来て留まった。

「美しいこと」と言いながら、草の上に腰をおろした。草は小川の縁にわずかな幅をはえているのみである。それすら夏の半ばのように青くはない。美禰子は派手な着物のよごれるのをまるで苦にしていない。

「もう少し歩けませんか」と三四郎は立ちながら、促すように言ってみた。

ありがとう。これでたくさん」

「やっぱり心持ちが悪いですか」

あんまり疲れたから

 三四郎もとうとうきたない草の上にすわった。美禰子と三四郎の間は四尺ばかり離れている。二人の足の下には小さな川が流れている。秋になって水が落ちたから浅い。角の出た石の上に鶺鴒が一羽とまったくらいである。三四郎は水の中をながめていた。水が次第に濁ってくる。見ると川上百姓大根を洗っていた。美禰子の視線は遠くの向こうにある。向こうは広い畑で、畑の先が森で森の上が空になる。空の色がだんだん変ってくる。

 ただ単調に澄んでいたもののうちに、色が幾通りもできてきた。透き通る藍の地が消えるように次第に薄くなる。その上に白い雲が鈍く重なりかかる。重なったものが溶けて流れ出す。どこで地が尽きて、どこで雲が始まるかわからないほどにものうい上を、心持ち黄な色がふうと一面にかかっている。

「空の色が濁りました」と美禰子が言った。

anond:20241001033922

2024-08-19

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きょう台所で小さな"くも"を〆たので、そのタヒ体をいえのどじょうさんにあげた

メダカは興味を示していましたが、どんなに小さな虫であっても、それは大きすぎて無理な話です。それはどじょう用の餌です!

2024-06-02

anond:20240602032644

増田バレエジャズダンスとその延長でテーマパークダンスやってたがヒップホップとかは軸をずらすと言うのが難しくて苦手 どじょうすくいみたいになる

コンテンポラリーは近いジャンルでたまに踊ることもあったが理解が難しい

今は社交ダンスポールダンス習いたい

全てのジャンルを踊れるようになりたい

2024-04-30

1匹目のどじょうを捕れそうな人を監視する職業なんてあるだろ

どじょうを取られる前に後発が先行研究にのっとり勢いにのり先にどじょうを捕るだけでよい

理解をいただいて大企業寄進という形で日本の活路となる

2023-12-22

anond:20231222090053

ほんこれ 

「暇アノンあてにちくちくしながら観光自慢されて腹が立って必死で揚げ足とった」…つもりらしいけど全然見当違いのどじょうすくいみせてもろて失笑したわ

旅行記で「川にふねが[いた]」って擬人化して書こうがそりゃ普通~の簡略表現にすぎないんやで 必死であげつらうなよみっともねえな

マイクロフトの件もそう

この程度、普通に3万人くらいはやってるで

知性と関係ない

もうちょっと読解力からがんばれとしかですわ

 

ん?へんなツリー官製婚活)がつながっとるけど書き換えでもされたんか?とおもってブクマに書き換え前の記事のヒントがないかみにいったけど

これ普通に書き換えずにバカだ…w

ステーキかにもつっこみはいっててすげーハチの巣になってるだけだw

もしかして元増田は在北朝鮮宗教2世かな、日本社会常識がなさすぎ

 

だがブクマみないと賛同トラバばかり目に入る(まあ自演できるもんね)

マジで劣化すげーな

2023-10-08

anond:20231005213636

昔の人はちゃんと「二匹目のどじょう」「柳の下のどじょう(三匹目以降含む)」と端的に表現されておられたやで

今のおこさんはことわざ辞典よまないのだねえ

2023-09-16

Kindle漫画をたくさん買った結果

「チ-地球運動について-」とか、「星を継ぐものたち」という作品を読んで、超越的な存在概念にワクワクする。

カルロゼンの「売国機関」や「明日の敵と今日握手する」を読んで、政治外交にワクワクする。

カイジスピンオフ班長を読んで、いろんな食事を楽しんだ。どじょう鍋も食べてみた。

漫画最高という話でした。

2023-05-22

東日本大震災不謹慎ネタ、なにがいけないの?

2023年3月埼玉県高校生東日本大震災ネタにした動画インスタグラム投稿して問題となった。

東日本大震災のこれを見てる方、生きていてとても嬉しいです。

また死んでしまった人は、お墓で聞こえないと思うが(笑い声)ほんとに悔しいです。

ザーメン

ここでは、その投稿の何がいけなかったのか考えてみたい。

被災者侮辱しているのか?

この動画セリフには被災者侮辱するようなフレーズは含まれていない。

東日本大震災被災者侮辱、というと私ならこのくらいのものを考える。

行方不明者捜索という中身のない仕事。また警察パフォーマンスだけしてる

津波で流されたおっぱいがいっぱい。だけど人口ピラミッドからして魅力的なおっぱいはあまりなさそう

東北地方祭り住民たちが大地と一緒に大自然プール満喫

(当時の2ちゃんねるスレタイ不謹慎ネタが好きな私ですらドン引きした。さすがにあれは規制してもいいと思う)

しかし、彼らは侮辱表現差別表現などを一切含めていない。

だとすると、どこが侮辱なのだろうか。

笑点の死ネタはいいのか?

六代目三遊亭圓楽氏(あ、こっちも死んでた)はよく人の死をネタにしていた。例えば

・(どじょう踊りのマネをして)誰だよここに歌丸散骨をしたのは

・「土に還る」と書いて「歌丸」と読みます

・毎度、昇天時間がやってきました。死骸の歌丸です

これだけでも特定個人侮辱する内容だ。それ以外にも、IKKOマネ

・入りますか?「棺桶~」

火葬場。「半焼け~」

人の死をネタにしている。やはり不謹慎だ。

なぜこいつらだけ笑って許されるのか。

笑ったことか?

被災者侮辱するフレーズはなかったとしても、笑っていたことが自称正義マン癇に障ったのかもしれない。

だとすると、終始神妙な顔持ちで上記を言えばいいのか。

いや、やはり最後フレーズ台無しだ。

ザーメンか?ザーメンなのか?

最後フレーズザーメン」、要するに「アーメン」をもじったものがいけなかったのだろうか。

だとしたら、せめて「ラーメン」か、その部分をカットすればよかったのだろうか。

終わりに

色々原因を考えてみたが、なにがいけないのかがわからなかった。

聡明な皆さんにはぜひなにがいけないのかご教示いただきたい。


つーか、非難している人に何人東日本大震災被災者がいるんだよ。

被災者気持ちかいうけど、どれだけ正確に気持ちを読み取っているんでしょうかね。読み取ったふりをしていい気になっているだけではないのか?

日頃のストレスがあるから正義の味方になったふりをして叩きやす対象を叩いてるだけでしょ?

もしそれが侮辱だと思うなら、裁判所に開示請求及び損害賠償請求すべきです。裁判を受ける権利は誰にでも保障されています

法律規制すべきと考える場合も同様、早くアクションを起こすべきです。

ちなみに、いくら正義のつもりでも個人を叩きすぎると、逆にあなた侮辱罪や名誉毀損罪にあたり、刑事罰民事上の責任が発生します。

2023-03-23

anond:20230323152407

日本にはたくさんのB級グルメや変わった食べ物があります。すべての都道府県について2つずつ、簡潔に名称のみを挙げよ!

GPT4:

北海道: ジンギスカンスープカレー

青森県: りんご飴、せんべい汁

岩手県: わんこそば、もち餅

宮城県: ぎょうざ、牛タン

秋田県: きりたんぽ稲庭うどん

山形県: さくらんぼ、だしわらび

福島県: ねぎそば、桃

茨城県: あんこう鍋、納豆

栃木県: 宇都宮餃子とちおとめ

群馬県: 焼きまんじゅうこんにゃく

埼玉県: 五平餅川越菓子

千葉県: ピーナッツ、房総うどん

東京都: もんじゃ焼き寿司

神奈川県: しらす丼鎌倉野菜

新潟県: 越後もち、塩引鮭

富山県: ホタルイカます寿司

石川県: 金沢カレーかぶら寿司

福井県: ソースカツ丼越前がに

山梨県: ほうとう甲州ワイン

長野県: そば信州りんご

岐阜県: ひつまぶし、けんちんうどん

静岡県: うなぎ静岡おでん

愛知県: 味噌カツ手羽先

三重県: 伊勢うどん伊勢えび

滋賀県: フナ寿司近江牛

京都府: 稲荷寿司八つ橋

大阪府: たこ焼きお好み焼き

兵庫県: 神戸ビーフ播磨うどん

奈良県: 奈良漬け柿の葉寿司

和歌山県: めはり寿司梅干し

鳥取県: ゲソカレー白壁土鍋

島根県: どじょう汁、出雲そば

岡山県: きびだんごももちゃん

広島県: 広島風お好み焼きかき氷

山口県: ふぐ料理川棚うどん

徳島県:network error

anond:20230323152407

GPT4:

日本にはたくさんのB級グルメや変わった食べ物があります。それぞれの地方に独特のものがあるので、旅行を楽しむ上で良いアイデアだと思います。以下にいくつかの例を挙げます

1. 長野県そばめし

そば粉を使った蕎麦の実と、ご飯を混ぜて炊いたもので、地元ソウルフードです。

2. 山梨県ほうとう

太い麺状のもちもちした小麦粉の麺と野菜が入った鍋料理です。地元カボチャこんにゃくなど、山梨県独特の食材を使っています

3. 広島県カキ氷

広島県では、かき氷広島名物もみじ饅頭を添えたり、宮島名物もみじ饅頭かき氷の上に乗せて食べることがあります

4. 大分県:とり天

鳥の天ぷらで、大分県では鳥のから揚げと並んでポピュラー料理です。

5. 秋田県きりたんぽ

秋田県郷土料理で、ご飯を潰して柱状にし、串に刺して焼いた「きりたんぽ」を鍋に入れたものです。鶏肉野菜と一緒に煮込みます

6. 山形県:だし巻きたまごの中にイモが入ったもの

山形県では、だし巻きたまごの中にイモを入れて、一緒に食べることがあります。イモと卵の組み合わせがユニークです。

7. 鹿児島県:かんぱちの刺身炭火で炙る

鹿児島では、カンパチ刺身炭火で炙って食べることがあります。表面が香ばしく焼けたカンパチは、一度食べると病みつきになる美味しさです。

8. 北海道ジンギスカン

羊肉を特製の鉄板で焼いて、たれにつけて食べる料理です。北海道ならではの風味豊かな郷土料理です。

9. 宮城県牛タン

仙台市を中心に盛んな郷土料理で、牛の舌を焼いて、塩やたれで味付けして食べます

10 岩手県わんこそば

岩手県盛岡市名物で、小さな丼に盛られたそばを次々と食べることが特徴です。

11. 石川県カキオコ

石川県能登地方で食べられる郷土料理で、カキを具材にしたお好み焼きのような料理です。

12. 愛知県味噌煮込みうどん

名古屋名物で、味噌ベーススープうどん野菜豆腐、揚げ物などが入った具だくさんの料理です。

13. 香川県讃岐うどん

太くてもちもちとした食感が特徴のうどんで、香川県ではさまざまなアレンジが楽しめますかけうどんぶっかけうどん釜玉うどんなどが人気です。

14. 福岡県もつ鍋

福岡県郷土料理で、牛や豚のもつ内臓)を野菜と一緒に鍋で煮込んで食べます。辛い味噌味が特徴です。

15. 島根県どじょう

島根県出雲市郷土料理で、どじょうを用いた汁物です。どじょうのぬめりと出汁の相性が良く、風味豊かです。

16. 奈良県:かきの葉寿司

奈良県伝統的な寿司で、鮨飯と鯖や鮎の塩焼きを柿の葉で包んで作られます柿の葉香りアクセントになります

いろいろな地方を訪れることで、日本の美味しいB級グルメや変わった食べ物を楽しむことができます旅行を通して、日本食文化を堪能してください。

2023-02-04

anond:20230204145614

どじょう豆腐」なら実証されているのだが。見た目がグロいか映像化しにくいという難点があるが。

2022-12-07

夢日記

深夜まで作業をした後、親子ほど年の離れた上司実在しない)と駅前飲み屋街へ酒を飲みに行く。帰り道、数か月前に閉店してとても悲しかったラーメン屋ラーメンが袋ラーメンとして駅で犯罪されていたので、それを購入する。線路付近で鍋に水を入れて調理してラーメンを食べる。ラーメンを食べた後、偶然すれ違った母が???を食べに行こうと話した。???とはどじょう鍋を焼いたような大衆なのだが、それを食べに地元で一番見晴らしのよい高台まで行く。食べている途中で後ろの粗暴な中年男性に寄りかかられ、やめてくださいと強く声をかけたところ、私はその男からいっき張り手をされた。近くにいた方が心配して声をかけてくれたのだが、私は「大丈夫です。だってこれ夢かもしれないなって途中から思ってましたから」と答えた。

2022-11-09

クイズに間違えるとHな罰ゲームを受けるAVクイズが割とガチで答えが気になる

答えが気になってシコれない

パンチラ確定!ポロリ必至!素人限定浴衣巾着クイズ タイムショック

ミシンで糸を巻いてある、小さな筒状の部品は何という?

世界で一番大きな湖の名前は?

北米自由貿易協定アルファベット5文字で何?

どじょう掬い、で有名な出雲地方民謡。何という?

2022-10-03

anond:20221003002041

それ言い出したらなんでもそうなるよね?どじょう掬いのことをバレエだと言い張るようなものだよ

2021-10-09

私は鰻

私は鰻です…穴子ではありません…どじょうでもありません…




私は鰻です…

2021-09-15

anond:20210915120706

さすがに三匹目のどじょうは何百文字も書いても釣れなかったようで

2021-03-18

まれも育ちも浅草だけど一度もどじょう食ったことない

食ってみたくなったか明日行ってみる

2021-01-22

そんな態度で一匹目のどじょうが取れるかな?

取らなくても誰かがとっちゃう

またはそもそもいないと決定づける

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