はてなキーワード: セックスワーカーとは
1 仕事として成立する、と言える範囲を越える危険があるという理由で、そもそも仕事として認めるべきではないという意見
2 合法化によって従業員の安全維持を徹底しようとすれば(利用者から見て魅力が薄れて)多くの利用者が個人による非管理売春に流れるという意見
1と2はそれぞれ別の話ですが、どこか底の方でつながっているようにも感じました。つまり、管理化されると魅力が薄れるというその「魅力」は、逆から言えば、1のようなリスクをセックスワーカーが負っているからこそなのではないかと。つまり、単に性欲を満たすサービスとしての需要の底に、本質的にもっと暗い何かを潜ませているのではないかということです。
少し前に増田で読んだ記事ですが、小金をもった人が、若い女の子のYoutuberに法外な投げ銭をすることで、少しずつ相手の感覚を狂わせて、いわば合法的に一人の人間の人生を壊すことを楽しむ、という話がありました。売買春にもいくらかはそういう側面があるからこそ、そこにはぬぐってもぬぐい切れないリスクがあると言えるのかもしれません。そうなると、結局倫理の問題に行きつき、その先に想定されるのはつまるところ売春というモノの撲滅、しかないのでしょう。けれども、あなたがおっしゃるように、それが決して成功しえないところにこの方向の議論の限界もまたあると思います。サルでも思いついて実行することを、この地上から消し去ることができようはずがありません。
つまり、「どんなに正論をかざしても、売春が消えることは無いですよね?」というのがやはり議論の大前提であって、だからこそ「どうすれば不幸の総量を減らすことができるだろうか?」というプラクティカルな立場しか、この問題に対する対し方はないのではないかというのが、つまり最初に書いた(1)の主張ということになります。(1)によって上の2の事態が発生する、というのは、データをもちえないので肯定も否定もできないのですが、起こり得ないとまでは言えない気もします。ただ、明らかに組織的に業として行われることと、個人間で行われることの、規模や性質の違いを踏まえるならば、そこやはり別々に考えた方がよいのではないかという気もします。ソープランドはじめ、店を構えて業として性風俗を行うものは全国でおよそ1万軒。1軒あたり平均して20人ほどが勤務するとして、その20万人の安全を高めることは(仮にそのことで非管理売春に従事する人の数が1万人増えたとしても)優先されるべきことだと、プラクティカルには言えるのではないでしょうか。
いやいや。いきなり本音ベースの話にしちゃアカンでしょ。売春は違法。OK。だから「『男が女を金で買うこと』の正当性や倫理性」は、ここでは論点でない。男性であろうが女性であろうが、性をお金で買うことは不当で非倫理的です。オーケー当たり前の話。そこには私もあなたも争いがない。たとえば賭博は不当で非倫理的で、ついでい違法です。だから、たとえば地下賭博場を開いてる人、捕まる。働いている人、保護されない。仕方ない。オーケー。誰もそれ問題だと言わない。
でも、今問題になってるセックスワーカーは、たとえて言えばパチンコ屋の店員。店に来てる人全員、そこで行われていることが実質は賭博であることを知ってる。警察も知ってる。賭博は不当で非倫理的です。でもね、三店方式という言い訳によって、あくまであれは遊戯という建前で警察も目をつぶってるわけ。でもって、パチンコ屋は法に基づいて営業してて売り上げ申告もして課税もされて、公的に合法的に営業しちゃってるわけ。なのにあなたは、いきなり本音ベースの話を持ち込んで「賭博は不当で非倫理的」という見解の下に、パチンコ屋の従業員が労働者として扱われなくてもオーケーだと言おうとする? それはさすがにヤバくないですか? ということ。いきなりそこだけ本音ベースで「賭博はダメだから彼らは労働者じゃない」なんて言い出したら、全国のパチンコ屋店員困りますよ。おねーさん。
風俗サービスを受けるのは気持ちいいから好きなんだけど、「貧困につけこんでいる」「若い女性を消費している」みたいなこと言われるのは嫌なので、ちゃんとした仕事になってほしい。ちゃんの対価を払ってサービスを受けてるだけなのに、なんでそんなこと言われないといけないんだ。
「新人なのでよくかりません」とか「女の子の機嫌を取らないと受けれないサービスがあります」みたいなのも面倒。ちゃんとしたプロフェッショナルになってほしい。そういうやりたりをするのが面倒だから店にいってるのに勘弁してほしい。
あと、公に認められてないせいか不便なとこも多い。現金払いが基本なのも面倒で、クレジットカードもしくはiDで支払いしたい。Webサービスも全然進んでなくて、電話しないと予約とれないのが信じられない。1クリックでデリヘルを呼びたい。
そりゃそうかもしれんけどその「望んで」がどのラインの話なのかってことなんだよな。
例えば知り合いのAV嬢は「短期でまとまった金が欲しかった」から単体でAVに出演して1か月で10本撮って1000万くらい稼いだんだけど、これに対して「他に金を稼ぐ方法があったらAVにはでなかったんじゃないの?」って言うことは簡単だけど、じゃあ彼女に「1か月で1000万稼げる方法」があんの?って話なんよね。
1か月で1000万稼ぐということを望んだから仕方なくAVに出演したって言うのは「本人が望んだこと」なの?「望んでない」ことなの?
もちろん、騙されてとか脅されてとかそういうガチで「金も要らないのにセックスワークをさせられている人」は救うべきだと思うよ。そもそも犯罪だし。
セックスワーカーの労働や権利問題について、誰も触れていないことがある。
それは「男が女を金で買うこと」の正当性や倫理性についてだよ。
セックスワーカーのしていることを「労働」として認めてしまうと、男女平等の理念に反していることを認めてしまうことについてはどう思っているの?
なので1は認められない。
もしセックスワーカーが存在しない世界だったら、俺はどうやって性行為できるのかわからなかっただろう。
尊敬しているからこちらもマナーを守る。セックスワーカーも人間なのだから人間として嫌がる事をしない、思いやりを持つ事を大切にする。
セックスワーカー達がちゃんと仕事として認められるよう、世の中の偏見や差別から解放されるべきだと本気で思う。
セックスワーカーが69(シックスナイン)をする気配がなかったら、こちらから「69(シックスナイン)しよう」と切り出してでも69(シックスナイン)させてもらう。
そこは拘りだからだ。
こっちが一方的にクンニしたり、フェラしてもらったりするのでは駄目だ。
お互い同時にやったりやってもらったりつまり69(シックスナイン)じゃないと絶対に絶対に駄目なのだ。
拘りだからだ。
はてなーのセックス感はとても屈折してる。セックスそのものの描写はゾーニングが出来てないと嫌うくせに、
セックスべき論とかセックスワーカーの地位みたいなメタセックスの話はとても好物だ。
最近、フェミニスト原則の翻訳に対して、Twitterでセックスワークを認めないで!ってフェミニスト達が言ってるけど、私からセックスワークの自由を奪わないでほしい。
セックスワークで大金をもらえるのって女として生まれもって得られる権利だと思うんだけど、尊重してもらえないの?
28歳。
本業の昼職は年収700万円強で、同年代の男の人よりもかなり稼いでる自信がある。
だけど副業のセックスワークでは、本業の1/3くらいの労働時間で、年収は1.5倍くらい貰ってる。
去年は昼職くらいしか貰えなかったけど、それを含めても、5年平均でそれくらい。
今だけしかこんなに貰えないのは分かるけど、お金を抜きにしてもこの仕事は好き。
日本におけるセックスワークが話題になってるが、個人的にセックスワーク自体は労働の一つであり、需要もそう簡単になくなるものではないだろうと思ってる。
気になることがあるとすれば、日本のセックスワークに対する視点があまりにもマイナスであることが一般的であることだろうか。逆に海外のセックスワーカーと彼らを取り巻くカルチャーはセックスやポルノを割とポジティブなものと捉え、働く女優も役者として出演した動画などに誇りを持っている人間が多いように感じる。プロダクションもハイクオリティなところが増え、支払われる報酬も日本のそれとは比べ物にはならないのかもしれないとは思うが、日本のセックスワークも海外を見習って恥じる文化からなんとか抜け出せないものだろうか。
なぜかセックスワーカーが強制されてるって前提で論じてるアホが多すぎるよね
生活費のために働かないといけないレベルの強制感っていうならほとんど全員そうだから、セックスワーカーの特色でもないから関係ないし
あんた嘘つきだな。それだけの仕事観があるなら、セックスワーカーが労働者(事業主に雇用されている労働者、つまりは被雇用者)として認められていないことは当然理解しているはずだ。
元増田は労働者だって話してるのに、勝手に被雇用者に摩り替えてるだけじゃん。
強いられてないよね。
セックスワーク差別があるからセックスワーク従事者は高級取りになれる
セックスワーク差別が無くなり、セックスワークに従事することが当たり前になったら自然と市場価値は下がっていき儲けは減る
現セックスワーカー的にはどっちが良いんだろうね
70年経過しようが、「男が女を買うのは倫理的に許されません、反論の余地はありません」という原理原則は今も変わらないんだよ。
自分は「同情しろ」とは言ってないけど、あなたの指摘にはなるほどと思う点もある。確かにセックスワーカーの仕事は、若くしてピークを迎えてしまい、セカンドキャリアが難しくなる点で、建設業従事者よりアスリートに近いかもしれない。
ちょうど先日、アスリートのセカンドキャリア支援をしている人から、大阪での生活保護受給者に野球部出身者が多く含まれていたという話を聞いた。高卒に見合った学力を身に付けないままスポーツの道で成功を目指し、その大半が夢をかなえられずに社会に出る、そのときに潰しが効かず就労困難者になってしまうパターンが多いと言っていた。セックスワーカーの境遇とは違うけれど、何らかの社会的支援が必要な存在なのは間違いない。
パパ活は皆やってるから怖くないよみたいな感じのこと言って普通の子に援助交際させようとするのと一緒じゃん。
自分はセックスワーク擁護派だけど、「セックスワーク差別は無知からやってくる」(https://anond.hatelabo.jp/20210714185723)を書いた元増田のロジックはだいぶマズいというか突っ込まれどころが多いので、もう少し理論武装してください。通常の賃労働とは違うセックスワーク固有の困難というのは確かにあって、セックスワーク当事者たちも、そのことはきちんと問題化しているので。
そもそもセックスワークというのはワーカーの安全確保がとても難しい。行為の性質的に、どうしても個別性・私秘性が求められ、たいていは誰からも見られない場所、多くの場合は密室で、1対1で行うということになる。特に非店舗型風俗では完全にアウェイな相手の自室に1人で入っていくことになるので非常にリスクが高い。男性相手の女性セックスワーカーの場合、フィジカルに圧倒的な差がある。事前のルールで決められた以上の行為を強要する顧客もいる。自室にカメラを仕込んで盗撮を仕掛ける顧客もいる。そういった「意図的な悪意のリスク」に一定確率でさらされるというのは、建設現場など通常の肉体労働では起こらないセックスワーク特有のリスクだ。
健康問題についても、「内臓を売ってるってことなら、サラリーマンは眼球を売ってるでしょ」みたいな悪質な比喩は問題を誤魔化してしまう。臓器を売り渡しているわけではないが、臓器(内性器や口腔)を使わせる自由は売っていて、このことには普通の「ワーク」にはないリスクが伴う。特に女性器への挿入を伴うセックスワークは、眼球で何かを見ることとは比較にならない健康上のリスクがある。慢性的侵襲、性感染症、意図せぬ妊娠など、就労を一時中断したり、離職を決断しなければならなくなったり、将来的な妊孕性を損ねてしまうといったケースも普通にある。またワークを通して何かあったときの労災的環境も全く確保されていない。その点、何度も比喩に使われている建設業は、労災や労働環境保全は過去の事故の反省もあって、非常にしっかりしている(たぶん平均的なサラリーマンの職場よりちゃんとしてる)。そういうところも大きな差がある。
セックスワークが売るものは、性行為とその行為に伴うさまざまなファンタジーだ。このファンタジーには「その行為が単なる金銭目当てのサービスであってほしくない、金銭の対価として自分に提供される商行為であってほしくない」という利用者の幻想も含まれることが多い。お金のためにやっているのに、「お金のためだけにやっているわけではない」ようなフリをすることが求められたり好まれたりするという倒錯的な構造がある。たとえば、実際は気持ちよくないのに気持ちよがって見せる、相手に好意を持っているように見せる、セックスが好きだから自分の天職だと演じる、など。別のペルソナを身に付け、本当はそうではないのにそうであるように振る舞うのは感情労働の一種で、このことはワーク当事者にとってストレスになることが多い。多くのサービス業には感情労働的な性質があるが、その「程度」は全然違う。身体への性的アクセスを許して、そのことに快感を感じているように演じて、相手にはビジネス以上の繋がりを感じているように振る舞うということを1日に何回も繰り返すのが、本人の精神的健康にどう影響するか想像してみてほしい。
セックスワークは長く生業とするのが難しい。特に日本の男性向けセックスワーク業界では「プロ」へのニーズが低い。これはさっきの「その行為が単なる金銭目当てのサービスであってほしくない、金銭の対価として自分に提供される商行為であってほしくない」という幻想とも密接につながっている。セックスワーク業界は、セックスワークに関する技術を徹底的に磨いたベテランのプロフェッショナルほどサービスの付加価値が高まる、という構造になっていない。むしろ技術が拙いことが「素人っぽさ」「初々しさ」として評価されることもある。風俗店でもAVでも「新人」には高い価値がつけられる。普通の賃労働では技術の拙さが評価につながることはないが、セックスワークではプロでありすぎないことが求められる。経験を積むことはさほどプラス評価にならない(時にマイナス評価になる)のに、年齢が上がることはマイナス評価に直結していく。技術より容姿・年齢がワーカーの付加価値を左右するから、素人の女子高生・女子大生がセックスワークの分野で高い付加価値を持ってしまうし、加齢を経てセックスワークに携わり続けることが難しくなっている。メディアの発達によって、その気になればいつでも誰でも性行為を売れるようになったことで(援助交際からパパ活SNSまで)、ますますプロの付加価値は下がっている。
これは私見だけど、この構造があるので、元増田の言う「合法化したほうが業界団体ができたり、まともな資本が入ってきたりして安全面含めたセックスワーカーの労働環境がどんどん良くなっていくと思う」については自分はあまり肯定できない。管理されていてセキュリティを確保されているプロは、管理されていないリスキーなアマチュアに売り負ける。今後セックスワークはどんどんネット経由で地下に潜っていく。それを防ぐには、管理売春の合法化と同時に、非管理売春の厳格犯罪化と取締りを行うことになる。普通の「ワーク」にはこんなことは起こらない。このこと自体がセックスワークの特殊性をよく表している。
こういうセックスワークをめぐる構造的問題、特殊性もちゃんとわかった上で、それでもセックスワーカーの権利獲得とセキュリティ向上のために活動しているアクティビストには頭が下がる。そこでしか働けない人、そこでしか働きたくない人がいる以上、そういう人達がより安全に快適に働ける環境作りをしていくという意味では労働運動の正道だし、圧倒的に女性就労者が多い現場で固有の問題を考えていくという意味ではフェミニズムの本道でもある。自分としては精一杯支援したい。
元増田がセックスワークの擁護をしたいなら、こういうセックスワーク当事者や支援者が認識している論点を無視したり、「ワーク」全般とセックスワークを脇の甘い比喩でまぜこぜにしたりして、本人達の意に沿わない正当化をしないほうがいいと思う。あの書き方だと、逆に「無知だけどセックスワーク擁護してる人」になりかねない。
みなさんコメントありがとうございます。自分的に重要な指摘だと思ったことにコメント返します。
id:allezvous 「それを防ぐには、管理売春の合法化と同時に、非管理売春の厳格犯罪化と取締りを行うことになる。普通の「ワーク」にはこんなことは起こらない」法律行為代理や医療行為を筆頭にした資格制の業務でよくあるような
医行為との対比は一度書きかけてやめたのですが、コメントいただいたので少し書いてみます。医行為や法律行為代理が免許制資格になっている理由は、提供するサービスの質を保ち、その利用者を保護するためだと思いますが、上記の理由でセックスワークを許認可制とする場合、その制度設計はワーカー側の身体と健康と安全を利用者から保護することが主眼となり(そのことは利用者を守ることにも繋がると思いますが)、目的と方向が真逆になっています。
セックスワークの特殊性のひとつに「ワーカーの身体による利用者へのサービス」ではなく「ワーカーの身体への、利用者の一時的アクセス権」自体を売るという側面と、それに伴う固有の脆弱性(vulnerability)があります。他の一般的な「ワーク」で、こうした受動的・対象的・客体的な要素を持つ賃労働、「利用者から自分が何かをされるのを受け入れること」自体をサービスとする賃労働を、私は他に知りません(あえて言うなら猫カフェの猫はそうかもしれません)。この構造は、セックスワークが普通の「ワーク」になることを難しくしている、ひとつのアポリアだと思います。
id:aquatofana さん、id:m7g6sさん、id:pekee-nuee-nueeさん、id:yetchさんが、「受動的・対象的な要素を持つ賃労働」の例として、医療・製薬業界の治験バイトを挙げてくださいました。確かに身体そのものの一時的供出、それに伴う健康的・身体的リスクの受忍という点で、似通った部分があります。一方で治験というのは、旧厚生省治験検討会の方針もあって、一貫して労働ではなく善意のボランティアという体裁になっており、支払われるお金も治験協力への直接の報酬ではなく「被験者負担軽減費」(治験参加に伴う物心両面の種々の負担を勘案した、社会的常識の範囲内における費用の支払いによる被験者の負担の軽減のための費用)という名目になっています。報酬金額が制限されていること、終了後に4ヶ月の休薬期間が設けられていることも含めて、「ワーク」にならないような工夫が凝らされています(とはいえ、実際は色々な抜け道を駆使して治験ボランティアの収入だけで暮らすことも不可能ではないようですが)。
国や業界がなぜ治験を純然たる「ワーク」にしなかったのか、してはいけないのか、というのは、セックスワークの「ワークとして成立することの困難」を考えるうえで、ひとつの手がかりになるかもしれません。治験については、おそらく行政にも医療従事者にも『①個人が自己の身体を一時的に相手に使用させ、②相手の〈自己身体の使用〉に伴う身体的・健康的リスクを引き受けること、それ自体を商行為にしてはいけない』という感覚が強くあるのだと思います。
このうち①は、みなさんご指摘のように、多くのセックスワークの業態に含まれている要素です。②は、本来セックスワークの現場からは排除されているべきですが、現実には看過できない頻度で発生している要素です。しかも実際にリスク事象が起こったときには、その責はワーカー自身に帰されがちです。たとえば、ワーカーが性感染症に感染したり、意図せぬ妊娠をしたとして、世の中で利用者・管理監督者・ワーカーのうち誰を責める言説が多いかといえば、圧倒的に「風俗で働いてるワーカーの自業自得」という声だと思います(そしてそのことは、仮に売春周旋行為が合法化されても変わることはないのではないかと思います)。これは、多くの人が「セックスに直接関わる行為には、どれだけ運用を工夫しても一定の身体的・健康的リスクが伴う」と理解していることの現れだとも言えます。
セックスワークには「利用者がやってよい行為」と「やってはいけない行為」の距離が極めて近いという特徴もあります。性的に興奮している利用者は、意図して、あるいは意図せずに、その「やってよい行為」と「やってはいけない行為」を隔てている薄皮を破るかもしれません。いわゆる本番行為がある性風俗店や派遣型風俗では、その〈薄皮〉は0.02mm厚のコンドームだけかもしれません。あるいは、キス禁止にもかかわらず、抱きついているワーカーの顔をつかんでキスを迫ること。本番禁止にもかかわらず、素股というサービスを受けているときにワーカーの腰を掴んで挿入を試みること。おっパブで働くワーカーの乳首を舐めるのではなく、噛むこと。「自己身体そのもののへの直接のアクセスを利用者に許可している」という脆弱な状態にあるので、利用者が予め設定したラインを欲求や興奮とともにほんの少し踏み越えただけで、ワーカーの健康リスクに直結するという構造があります。
建設業では現場の建設従事者に健康診断結果の提出を義務付け、毎朝朝礼を行い、現場パトロールを実施し、ヘルメット・安全帯・安全靴・長袖服の着用を義務づけるなどして、そのワークに伴うリスクを可能な限り抑制します。風俗業界では、店員やドライバー男性による様々な処罰(いわゆる「業界流儀」)によって、そのワークにともなうリスクを可能な限り抑制します。この両者は、似ているようで違います。建設業では、ワークの現場を監視し、ワーカー自身を防護し、事故リスクを減少させ、事故時のダメージを最小化しています。風俗業では、ワーカー自身を利用者から防護することはできません(一時的に身体へのアクセス権を利用者に提供すること=ワーカーの身体を利用者から防護しないこと自体が、サービスに含まれているからです)。管理者がワークの現場を監視し、利用者が「やってはいけない行為」に及ぶ瞬間に介入して中断させることもできません(処罰の担当者は、実際の行為が行われている空間の外にいるからです)。
中規模以上の建設現場では、しばしばゼロ災の継続日数が掲示されていますが、店舗型風俗では、しばしば出禁・罰金などの制裁行為を受けた利用者たちの顔写真が掲示されています(代表的な「業界流儀」です)。これは、後者では、たとえ事後の処罰があっても禁止行為に及んでしまう利用者が一定数いること、そしてその行為の被害を受けたワーカーも同数いることを表しています。セックスワークの現場でワーカーがさらされる健康的・身体的リスクの抑制が「事後制裁」という形式でしか行えず、それが現実に抑制力として100%機能しているわけではないことは、セックスワーカーの安全衛生の確保、そしてそれが大前提になるはずのセックスワークの「普通のワーク」化を困難にしている、重要な要因だと思っています。