確認したいのだけど、「セックスワーク(ここではフィジカルかつ直接的に自らの”性”を売る業を指す)を仕事として認めよ」という主張のうち、
(1) セックスワークも「仕事」として、労働者としての権利や安全の要求が適正に認められるべき。
(2) セックスワークも「仕事」として、自由な職業選択の結果の一つでありプロフェッショナルとして堂々と称えられる世の中になるべき。
この二つの主張には大分距離がある気がするのだけど、往々にしてごっちゃになってないか? だって(2)がなくても(1)は実現できるよね。(プロフェッショナルとしてはなかなか称えられることのない仕事であることと、その従事者を労働者として認めることとは全く別の話。たとえばパートタイムの3K労働者など。)
で、前者に反対する人はそれこそ頭の固いお役所とか某会議と矯風会の人らくらいで、ほとんどの人は反対しないと思うけど(たとえば昨年の国のコロナ支援金から風俗業が外されたニュースを不自然に感じる人は多かっただろう)、後者についてはなかなか理解を得るのが難しい状況で、そして、両者が混ざり合うと、(2)に足を引かれて結局(1)が実現していかない気がするのだけどどうだろう。正直なところ(1)を実現したいなら(2)の話は置いておいてひたすら(1)を訴える方向で進める方が適切だと思うし、意図してそこを混ぜられると、(1)の話で反対しにくくさせて一緒に(2)を実現させてやろうという政治的な思惑でやってるんでしょと感じる。だが、そのやり方は結局、(1)の実現が遅れることで発生し続ける犠牲を伴うので、やはり悪手だと思う。
メモ書きは以上。以下は暇な人向けの余談。
(1)に反対する人ってどんな人だろうか? 「頭の固い役所」って書いたけど、おそらく法関係の方からは「売春がそもそも違法なので、薬の売人が業として保護されないのと同じに決まってんだろバーカバーカ」的な批判があるのだろうと想像はつく。けど、それはおかしくて、風俗業自体は業の形態から何から法でガチガチに縛られているし、きちんと課税もされてるわけで、従業員も当然「合法」な存在なわけよ。ただ、彼らが密室で客と何してるかは、店もお上も預かり知らぬ、というテイで。そうやってきちんと法の下に置かれている存在なのに、給付金を支給するような場面で急に「アンタら法の外の存在。給付金とかありえんしw」みたいな分け方するのは、ちょっと理屈が立たないんだよね。いや法の外にある実態知ってるなら取り締まれ、と。そうじゃないなら素直に給付金出せよ、と。
あるいは、”性”に関わる部分は雇用者が管理できない所で自己判断でやってるのだから、雇用者がそこに対して責任や義務を負う必要はない、という見解もあるかも知らないけど、肉体労働の現場でも、普通より危険性の高い職務や現場(まさに雇用者の管理ができない領域のある所)については手当を出したりすることがあるし、コロナの感染の危険がある現場にいかせるなら雇用者の義務としてPCRが受けられるようにするなんて当然行われてしかるべきものなんだから、その仕事にある程度の「危険」(非管理領域)が予測されるときに雇用者が使用者の安全や衛生に対して責任・義務を負うというのは別におかしい考え方ではないよね。つまり、あくまで合法的な言い訳だけをタテにするとしても、「"自由恋愛"という危険が極めて多く発生することが予測される密室的な営業形態において、従業員の精神的・肉体的な安全を維持するためのしかるべき処置」を雇用者の義務とするのは適切であると言える。
それから、「セックスワークは誰もがイヤイヤやってんだ、何が仕事だヴォケが!」って方向からの批判(岡村発言への藤田批判的な)もあるのだけど、これに関しては、まさに(1)と(2)を混同した議論の典型であって、この主張に立つ限り、少なくともこの世から風俗業を滅ぼさない限りは「じゃあ(1)もできませんね」ってなって誰も救われない結果にしかならないだけであって、よろしくないと思うんだよ。いや、そういう人はたぶん誰も救われなくなって風俗業自体がこの地上から消えてくれればいいと思ってるのだろうけど、たとえばボスに性を提供して対価として餌の分け前貰うような行動ってサルの群れでも見られるという説もあるのだけど、そうなるともう我々が一体何を滅ぼしたがっているのかよく分からない(人間か?人間が憎くて滅ぼしたいの?)ことになるので、それはそれで極論と思う。
セックスワーカーの労働や権利問題について、誰も触れていないことがある。 それは「男が女を金で買うこと」の正当性や倫理性についてだよ。 セックスワーカーのしていることを「労...
いやいや。いきなり本音ベースの話にしちゃアカンでしょ。売春は違法。OK。だから「『男が女を金で買うこと』の正当性や倫理性」は、ここでは論点でない。男性であろうが女性で...
その仕事にある程度の「危険」(非管理領域)が予測されるときに雇用者が使用者の安全や衛生に対して責任・義務を負うというのは別におかしい考え方ではないよね。つまり、あくま...
なるほど、具体的論理的な意見で参考になります。 1 仕事として成立する、と言える範囲を越える危険があるという理由で、そもそも仕事として認めるべきではないという意見 2...