はてなキーワード: 狼狽とは
次女の誕生日のあと、長女の誕生日があって、その直近の祝日、二人に誕生日プレゼントと服を買ってやるために買い物に出た。トータルで三万円くらいかかった。はぁ。
服を買う時に、ついでに長女に今のうちに生理用品とかブラを買っとこうぜ、と言うと、長女は思いの外喜んだ。
長女は11歳になったのだが、最近爆速で身長が伸びると共に体型も大人に近づきつつある。彼女は小さい頃から今に至るまで安定の痩せ体型だ。身長に合わせてズボンを買うとウエストがブカブカだったのが、今は150のズボンを履いてもずり落ちなくなった。痩せているなりに身体の厚みは増しているのだ。
最近の長女は胸が急に育って来ているのが悩みらしい。そういう事をぽつぽつ言うのだが、ブラが欲しいと自ら言う事がないので、親であるこちらから提案した方がいいんだろうなあと思った。
長女を子供の下着売り場に連れて行くと、彼女は種類の多さに圧倒されていたが、ぼくが
「ステップ1とか2とか3とかタグがついてるな。まずはステップ1でいいんじゃないか?」
と言うと、それらを物色しはじめた。
「すごーい、いっぱいあるー。こんなのが欲しかったの!」
などと言うから、可愛い色のやつを買うのかな? と背後で見ていたら、スタンダードな感じの、キャミソールと一体型の白いのを二枚選んだ。黒や紫もあるし、ブラだけ独立していて、同色のショーツとセットになったものもあるよとぼくが言っても、「絶対これがいい!」と長女は譲らなかった。まあ、白無地はアウターに響かなくていいよな。もし、ぼくがユニクロの白のエアリズムばかり着てることに影響されたのだとしたら、なんかすまないなと思うけれど。
今時の小学生女子は、他の子がどんな下着を着けているのか、気になりはしないのだろうか? ぼくが子供の頃は、女子はそういう事についてはかなり煩かった。白い「初めてのブラ」なんか着けていると、露骨に馬鹿にされたものだ。
ぼくが子供の頃、ぼくの母親はどういう訳か我が子の二次性徴について捻れた考えを持っていた。だからぼくはなかなかブラを買ってもらえなくて、確か中学に上がってしばらくはノーブラで過ごしていた。部活の時以外は胸が目立たないよう猫背で下を向いて歩きがちだったように思う。
当時はぼくの母親だけでなく、世の母親達の考えは大抵いい加減かつバラバラだったので、胸が既にかなり大きいのに「子供だから」という理由でノーブラな女子というのはしばしばいた。ぼくはそれが好きじゃなくて、自分はそうはなりたくないと思ったのだが、無駄に性に対して厳格な家庭でしかも鈍感な母親にブラが欲しいなんて強請るのはあり得ないと思って我慢していた。ただ、ぼくの場合は胸が発育しかけだとしても限りなく俎板に近い胸をしていたので、ブラを着けていないことを誤魔化すのはそんなに難しいことではなかった。
だが、体育の授業や部活の授業の前後に更衣室で着替える際だけは誤魔化しなどは利かない。
体育の時の着替えはまさに針の莚に座るような心地だったが、部活の時はそうでもなかった。更衣室では先輩達が下着姿で悪ふざけをしていたし、彼女達の下着はみなカラフルでまるで見せるためのもののようだった。たった一、二学年違うだけでどうしてこんなにも文化が違うのか不思議だった。ぼく達の学年はいつまで経っても白いペラペラの下着で、誰が一番先に「色気づいて」大人のようなブラを使い始めるのか、監視し合い足を引っ張り合っているのに。
先輩の一人が日曜日に買ったばかりだというグリーンのチェックのブラを見せびらかしている時、ぼくはホワイトボードの下にレイジと二人で潜り込んでぴったりと身を寄せ合って先輩達の馬鹿騒ぎを眺めたり、今週のジャンプの話したりしていた。ブラの自慢をしていた先輩がぼくらの所にやってきて、
「今日も二人、異様に仲がいいよね」
といい、ぼくはそこに含みがある事に素で気づかず、
と答えた。
レイジとは中学に上がってすぐの部活見学期間のある日に出会った。レイジは武道館の片隅に一人で体育座りをして、先輩達の稽古の様子を眺めるでもなく膝の上に顔を伏せていた。最初にレイジがぼくを見たが、話しかけたのはぼくの方からだ。当時のぼくは既にはみ出者気質を全開にしていたが、今よりは社交性があったのかもしれない。
レイジの第一印象は、大人しそうな男子、といった感じだった。目が合って、一言二言交わしただけですぐに気が合いそうだと思ったのと、ぼくと同性である事に気づいたのとは、どっちが先だったろうか。立ち上がれば性別を間違いようはない。レイジはぼくよりずっと背が高く、正面から相対すると迫力のある胸が視界を圧倒してくる。まるでモデルのように手足が長く、メリハリのある体型をしていた。
そんなレイジだが、ほとんど大人同然の背格好をしていたにも拘わらず、ぼくと同じくまだ「子供」というカテゴリーに押し込められていた。つまり中学に上がってもしばらくはノーブラで過ごした。その点でぼくにとっては類友でもあった。
いつだったか、先輩の一人がそんなぼくらを見かねて声をかけてきた。ブラをしないと恥ずかしいとか乳が垂れるぞとか、そんなことを言われ、ぼくらは「はーい」と返事をしたが、すぐに他愛ない雑談に戻った。レイジは先輩に言われたことなど全く意に介していないようだったけれど、ぼくは内心かなり気にしていて、やはり母親にブラが欲しいとお願いしなくてはならないのだろうか? と考え、まだ何も行動しないうちから屈辱に打ち負かされたような気になっていた。
記憶に間違いがなければ、ぼくらは少なくとも一年の夏休みまでは「子供」カテゴリーのままでい続け、それぞれ親の方針通りに子供の肌着を制服の下に着続けていたと思う。そのことによってレイジがどんなデメリットを被ったかはぼくは知らないが、ぼくの方には人には言えないようなデメリットがあった。
ある日、竹刀を振った瞬間に身体の内側から「ぶちっ」と音がした。腕のつけ根辺りがヒリヒリと痛くなった。家に帰ってから服を脱いで見てみると、鎖骨のすぐ下辺りに赤い皹が入っていた。まるで鋭利な刃物でひと突きしたような傷は薄い表皮で繋がっていて、出血はない。どうやら急に大きくなった胸の重さに皮下の肉が負けて裂けてしまったようだった。奇妙な傷はその後いくつも増えていき、白い痕になって残った。
肌にいくつもの傷が残るほどに、ぼくの胸はお荷物になりかけていたのだが、だからといって目立って大きいのかというと全くそんな事はなく、服を着ている限りは相変わらずの俎板に見えるほどだった。なのに、ただ普通に生活していくだけで服の下に隠れた部分が傷だらけになっていく。その原因がさして膨らんでいるようには見えない胸であるなど、親に相談出来る訳もなく、ぼくはひた隠しにした。
その件はレイジにも話した事はない。そもそもぼくとレイジは「親友」だと言い合っていたのにも拘わらず、お互いに相手の内面には踏み込もうとしなかった。ぼくらは校舎の内外を、ひとの目も気にせず手を繋いで歩き、座る時にはスズメのきょうだいのように身体をくっつけた。部活の合間の休憩時間には互いの背中を背もたれにしたり、膝枕をしあったりした。
ぼくがレイジの太ももを枕にしている時、ぼくの鼻先にはレイジの胸があるのに、そのぼくの胸の何倍も大きな肉の塊はレイジにどんなダメージを与えたのか与えなかったのかなんて知らなかったし、レイジはレイジで、ふざけて指でつついたぼくの貧相な胸がぼくにとってはけっこうな凶器だった事など知らないままだった。
レイジに対してのぼくの隠し事なんて大した数はないが、ぼくにとってレイジは謎の多い奴であり続けた。真面目そうに見えてちゃらんぽらんで、部活だって、ぼくとレイジとはたった二人だけの新入部員なのに、レイジはよくサボり、ぼくを一人にした。夏休みの部活に、レイジは半分も顔を出さなかった。なのに試合に出ればそれなりに勝つのが不思議だ。何故レイジはそんなに休むのか、ぼくはしばしば先輩達から聞かれたが、わかりませんと首を振るしかない。
親友の癖にぼくはレイジの個人的な事をほとんど知らない。そのことが気にならない訳ではなかったのだが、いざレイジと顔を合わせると、数々の謎の解明などどうでもよくなってしまう。レイジとする話は好きな漫画やアニメの話ばかりで、端からみればそれは終始うわべだけの話をしつづけているだけで、それのどこが親友なのか不思議だったかもしれない。
ぼくとレイジは心が遠くにあるのを補うかのようにスキンシップだけは過剰に行った。一日の中で最初に会ったときは、相手の存在を視認したらどんなに遠く離れたところからも全力で駆け寄り、
「カーラミーア!」
「モンシェ!」
と叫ぶとひっしと抱擁し合う。隙あらば、学校内のどのカップルよりも密着して過ごした。
夏の間、ぼくはろくに飲食をせずに部活でしごかれていた。これ以上身体に無駄な肉がつくのを止めたかったし、生理の出血をなんとか止めたいと思って行った無謀なダイエットだったが、消耗したわりに効果はいまいちだった。ひと夏で顔だけげっそりしたぼくだったが、片やレイジは夏休み前と少しも変わらず飄々としており、健康そのものに見えた。実際、心ない男子がぼくらに対して目障りだ死ねと罵倒を浴びせるやそいつを蹴り倒しプロレス技をかけて泣かせるなどワイルドに暴れることもあった。
ぼくは安心した。実はぼくの母親がぼくとレイジが仲良くなったのを知り、ぼくの同級生の母親達の情報網を使ってレイジの個人情報を仕入れており、聞いてもいないのにぼくにそれを話したのだ。ママ友ネットワークをもってしてもレイジの事で確かな情報は得られず、噂程度のことしか仕入れられなかったようだ。それによれば、レイジは何らかの病気で定期的に通院しているという。だがその病気が何であるのかは誰も知らないらしい。
ぼくが知っているレイジの個人的なことといえば、レイジには兄が一人いて両親も健在で、四人家族で仲良く暮らしているということくらいだった。
「レイジのジは二番目のジってこと?」
「そそ」
「納得した」
きょうだいの二番目だから「レイジ」と名乗るレイジとぼくとは部活つながりの親友。クラスと出身小学校が違うせいでお互い相手の事で知らないことが多いかもしれないが、そんな事は関係なく、ぼくらはとても仲がいい。
秋になった。ある日、学校から帰るとぼくの部屋に大きな買い物袋が置かれていた。母親が開けてみろというので中身を見たら、「はじめてのブラ」と書かれた厚紙つきの白いブラが三着ほどと、その他下着類が入っていた。母親によれば、「ぼくに必要だから買った」というより「みんなが必要だと言うから買った」ようだ。母親は他人の言う事になにかと流される。
しかし、断られる可能性が高いと思いつつこちらから羞恥心を堪えつつ頭を下げてお願いすることもなしに、必要なものが手に入ったのは良いことだ。ぼくは「はじめてのブラ」を着けてみた。ところがサイズが全然合っていなかった。それはAカップだがアンダーが85cmもあって、上半身だけは骨の浮くほどガリガリだったぼくにはユルかった。
翌日から「はじめてのブラ」を着けて登校したが、いざ日常生活を送ってみると、ユルすぎるブラはぼくの助けになるどころか邪魔で邪魔で仕方のないものだとわかった。ちょっと身体を動かしただけで背中のホックが外れる。これまでの習慣通りに猫背にしていると外れるし、かといって背筋を伸ばしてもまた外れる。走るとどんどんブラが浮いてきて胸の上までずり上がってくる。それを狼狽しながらも誰にも気づかないよう適正な位置に引き下ろさなければならない。
なんなんだこれ……。母親に苦情を言うべきではないかと思わなくもなかったが、母親がぼくにブラを買い与えた時、牽制するように「デブで胸のないお前にはサイズがそれしかない」と言ったから、解決策は何もないとぼくは思い込んだ。デブは言いがかりだ。ぼくはチビの癖に肩幅と腰幅があり、脚も太かったから、セーラー服を着るとずんぐりむっくりに見えたが、上半身はガリガリに痩せていたのだ。
何でぼくだけこんな事に……と思いつつ、部活の際に先輩達がふざけながら着替えている間は、いつもの様にぼくは部室の隅っこにレイジとぴったりくっついて体育座りで待っていた。先輩達は相変わらず可愛いブラを着けていて、それらはぼくの「はじめてのブラ」のようにズレたりホックが外れたりはしない。どうしてぼくの「はじめてのブラ」はこんなにも役に立たないのか、すぐそこに何事にもあけすけな先輩達がいるにも拘わらず、ぼくは誰にも打ち明けられない気がして、勝手に孤独に浸っていた。隣のレイジは、元からそういう話をすべき相手ではない。
その時、ツンツンと脇腹をつつかれた。隣を見れば、レイジが膝の上に半分顔を埋めたまま、いやーな顔で笑っていた。
「お前、これなんなの?」
レイジはニヤニヤしながら、ぼくのTシャツの上からブラのバックベルトを引っ張った。
「何でもいいだろ!」
ぼくは小声で身をよじりながら言った。その反応がレイジには面白かったらしく、レイジは「なんなの、なんなの」と言いながらぼくのブラのあちこちを引っ張り、脇を擽ってきた。そんなぼくらの攻防戦を先輩達はいつものじゃれ合いだと思ったらしく、「今日も二人は仲良いよねー」と言った。
その日以来、レイジはぼくがブラを着けているのを面白がり、やがて服の上からブラのホックを外すという技を会得した。レイジが通りすがりにぼくの背中を叩くと、ホックが外れる。とんでもない悪戯だが、ぼくのホックは悪戯をされなくてもしばしば外れるし、ぼくとレイジはクラスが違うので、被害を受けたところで大した事にはならない。それでぼくとレイジの仲が決裂するという事もなかった。
ただ、レイジがぼくをブラのことでイジッてくるのは意外だと思った。同級生女子の中には、他の女子が「色気づく」のを嫌って意地悪をしたり他人の足を引っ張るような事をする奴が何人もいたが、レイジはそんな陰湿な女子どもとは最も遠い存在のような気がしていた。でも、その頃レイジはまだ「子供」カテゴリーの内にいて、それをぼくなんかみたいな貧乳の方がイチ抜けしたのだから、変に執着されるのはおかしい事ではないような気もした。
人の心理としてレイジの反応は特におかしいものではない。が、ぼくらの関係性の絶妙なバランスをレイジの方から崩して来ようとするのは……逆にぼくの方から壊しにかかるなら自業自得なのでまだしも……どうしていいのかわからない。わからなさすぎたので、ぼくは何事もなかったかのように過ごす事を選んだ。
二年からはぼくとレイジは同じクラスになった。一緒に過ごす時間は益々増えた。レイジが休み時間の教室ですれ違いざまにぼくのブラを外して遊ぶ事もあったが、ぼくは責任を取ってホックを元に戻せとレイジに要求し、レイジは「はいはい」と言ってぼくの制服の背中に手を突っ込んでホックを掛け直した。
その頃にはレイジは既に「子供」カテゴリーを脱していたのだと思うが、ぼくにはその件については全然記憶がない。少なくとも、ぼくはレイジからされたようにレイジがブラを着け始めた事をからかうことはなかった。
教室が一緒だと、友達同士なら休み時間ごとにお互いの机のところを行来するものだ。ぼくは授業が終わってもすぐに教科書をしまって離席することがないから、レイジの方からぼくの席にやって来がちだった。ふとぼくが顔を上げると、視界の全面をレイジの胸が塞いでいる。よく、胸の大きな女性が「(男は)私じゃなくて私の胸に挨拶をする」と言うが、レイジの場合はぼくに胸から挨拶して来るようなものだ。ぼくはレイジに知られないよう視線を外した。だからレイジの胸がしょっちゅうぼくの目と鼻の先にあったのに、ぼくはレイジのブラ事情など全く知らない。一方レイジはといえば、ぼくをからかえるだけからかって恥ずかしい思いをさせたのに。
レイジは狡いと思ったが、他の女子といがみ合うようにレイジと争うのは嫌だった。レイジと喧嘩する事があるとしたら、それとは全く関係のない、取るに足らない事が原因だ。そしてベッタリと仲がいい分喧嘩するのもわりとしょっちゅうだった。大体はぼくの方から吹っ掛ける。そこにレイジは狡いという思いがなかったとは言えないと、当時を振り返って思う。
レイジは胸が大きくて手足が長くてモデルのような体型をしていたが、女としてはある意味で無敵だった。ぼくはといえば、自分の身体がなにかとコンプレックスで、わざと身体に合わないダボダボな格好ばかりしているから、本当はガリガリに痩せていたのにすんぐりむっくりのデブだと思われがちだったうえに、貧相な体つきのわりにはきっちりと女であることのデメリットを受けた。すなわち生理が異常に重くて一月のうち絶好調なのは三日ほどしかなく、あとは瀕死。
レイジは不調知らずで常に元気いっぱい走り回っていた。何かの病気で通院しているという噂はデマに過ぎないのではないかとぼくには思われた。だがレイジはよく部活をサボった。同じクラスで親友のぼくにも何も言わず、放課後になるといつの間にか姿を消している。ぼくは既にレイジはそんなものだと思っていた。部活の顧問から、来年の女子部部長は消去法でぼくに決まりだと聞いて軽く絶望した。レイジの方がぼくよりもずっと強いのに、部長は実力よりも真面目さが大事だと顧問は言う。だがぼくは顧問が思うほど真面目ではない。絶不調ながら毎日律儀に部活に出ているのはほとんど、稽古でカロリーを消費しつくせば生理にかけるエネルギーが少なくなり、来月こそは体調がましになるのでは? と期待していただけに過ぎない。
そんな馬鹿な事をしていたせいで、ぼくはある日、体育の授業中に具合が悪くなった。その日のメニューは1000メートル走だったが、ぼくは運動神経がない癖に中距離を走るのが大好きで得意だったので、生理中だというのに無理をした。酷い目眩がして手足が冷たくなり、震えが止まらなくなった。爪が真っ青になり、顔色も青を通り越して真っ白だと、ぼくを見た体育教師が言った。体育教師は厳しい人で滅多な事では生徒を休ませないのだが、ぼくが芝生に座っても一向に回復しないので、保健室に行って休めと言った。ぼくは保健委員に付き添われて保健室へ行った。ベッドに寝かされた途端に意識が落ちた。
気がついたらベッドの側にレイジがいた。
「おはよー。今どんな気分?」
「どんなって、最悪だけど。でもさっきよりはましな気がする」
「ははっ、体育の時はヤバかったな。こいつマジで死ぬんじゃね? って感じの顔してて、先生がさすがに焦ってた」
そう言うとレイジはぼくのほっぺたをつまんで引っ張った。
「ほっぺぷにぷにー。すべすべで真っ白ー。でもさっきよりはましー」
レイジはぼくの肌をすべすべで真っ白だとよく言う。小学校時代は徒歩通学で、中学に上がってからは自転車通学で、それなりに日に焼けていたから、ぼくの肌も黒くて荒れているはずだと自分では思い込んでいたが、レイジに指摘されてはじめて、ぼくは色白で肌質がいいのだと知った。少なくともレイジのほっぺたよりはぼくのほっぺたの方がすべすべで白い。
「今どんな気分?」
「君が血色が戻ったというなら、思ったよりもいいんじゃないだろうか。確かに吐き気はしないし、頭痛もしない」
「ふーん。俺にはそういうのが無いからわからないけど、まあ無理すんなよ」
レイジはいいな。ぼくと性別が同じでもぼくのような思いはしないんだ。でもぼくみたいにひ弱なのはレイジには似合わないから、それでよいのだと思った。
トラバに続く。
キエフ、ウクライナ(AP) - ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでの戦争が7カ月近くに達し、モスクワが戦場で地盤を失う中、ロシアでの部分的な動員を発表した。
プーチン氏はまた、ロシアが自国の領土を守るためにあらゆる手段を用いることは「ハッタリではない」と西側諸国を警告した。
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ウクライナ東部と南部のロシア支配地域が、ロシアの一部となるための投票を行う計画を発表した翌日、ロシア指導者が国民に向けて行ったテレビ演説が水曜日に発表された。
プーチンの発言は、ニューヨークで開催された国連総会で、モスクワが住民投票計画について警告を受けたことも背景にある。
クレムリンが支援する4つの地域を飲み込もうとする動きは、ウクライナの成功に続いてモスクワが戦争をエスカレートさせる舞台となりかねない。
戦争の最初の数ヶ月から行われると予想されていた住民投票は、ルハンスク、ケルソン、そして一部ロシアが支配するザポリツィアとドネツク地域で金曜日に開始される予定である。
プーチンは、西側諸国が「核の恐喝」に関与していると非難し、「NATOの主要国の高位代表の中には、ロシアに対して大量破壊兵器を使用する可能性について発言している者もいる」と指摘した。
「ロシアに関するそのような発言を自ら許している人々に、私は、我が国も様々な破壊手段を持っており、NATO諸国のものとは別の構成要素のために、より近代的であり、我が国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと我が国民を守るために、我々は確かに我々の処分ですべての手段を使用するだろうことを思い出してもらいたい」とプーチン氏は述べた。
さらに、"ハッタリではない"と付け加えた。
プーチンは、水曜日に開始される予定の部分的な動員に関する法令に署名したと述べた。
"我々は部分動員について話している。つまり、現在予備役である市民のみが徴兵の対象となり、とりわけ軍隊に従軍した者は、一定の軍事的専門性と関連する経験を持っている。"とプーチンは言った。
ロシア国防相のセルゲイ・ショイグは、水曜日のテレビインタビューで、関連する戦闘と勤務の経験を持つ者だけが動員されると述べた。
また、ウクライナ紛争で死亡したロシア兵は5937人で、ロシアが数万人を失ったとする西側の推定値よりはるかに少ないと述べた。
プーチン大統領は、部分的な出動の決定は「直面する脅威、すなわち祖国とその主権と領土の保全、国民と解放地域の人々の安全を確保するために十分適切である」と述べた。
水曜日未明、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、国民投票の計画を「雑音」と断じ、金曜日から予定されている投票を非難したウクライナの同盟国に感謝した。
ゼレンスキー大統領は毎晩の演説で、今回の発表には多くの疑問があるとしながらも、ロシア軍に占領された地域を奪還するというウクライナの決意に変わりはないことを強調した。
「前線の状況は、主導権がウクライナにあることを明確に示している」と述べた。
「私たちの立場は、騒音やどこかの発表で変わることはない。そして、我々はこのことでパートナーの完全な支持を享受している。」
部分的な動員であっても、ロシア人の間では戦争に対する狼狽を増大させる可能性がある。
反対運動団体ヴェスナは、水曜日に全国的な抗議を呼びかけ、「何千人ものロシア人男性、つまり我々の父親、兄弟、夫が、戦争という肉挽き機に放り込まれることになるのだ。彼らは何のために死ぬのだろうか?母親や子供たちは何のために泣くのだろうか?」
ロシアが反対派を徹底的に弾圧し、兵士や軍事作戦の信用を落とすことを禁じる厳しい法律がある中で、どれだけの人が抗議する勇気があるのかは不明だった。
今度の国民投票は、モスクワの意向に沿う形で行われることがほぼ確実だ。キエフの軍隊が東部と南部の戦場で勢いを得るのを助けた軍事的およびその他の支援でキエフを支援している西側指導者たちは、この投票をすぐに非合法と見なした。
「ロシアが新たな偽りの住民投票を行おうとしていることに対して、ウクライナのすべての友人とパートナーが今日、原則的に断固として非難したことに感謝する」とゼレンスキーは言った。
ロシアが紛争を長引かせ、激化させる可能性があるというもう一つのシグナルとして、クレムリン支配下の下院は火曜日に、ロシア軍による脱走、降伏、略奪に対する法律を強化することを決議した。議員はまた、戦闘を拒否する兵士に対して10年の禁固刑を導入することに票を投じた。
もし予想通り上院で承認され、プーチンが署名すれば、この法律は兵士の士気低下に対する指揮官の手腕を強化することになる。
ロシア占領下のエネルホダールでは、欧州最大の原子力発電所周辺での砲撃が続いた。ウクライナのエネルギー事業者エネルゴアトムは、ロシアの砲撃によりザポリジャー原子力発電所のインフラが再び損傷し、原子炉の1つの冷却ポンプへの緊急電源として2台のディーゼル発電機を起動させることを作業員に一時的に強いることになったと述べた。
このようなポンプは、原発の原子炉6基すべてが停止しているにもかかわらず、原発のメルトダウンを回避するために不可欠である。エネルゴアトムは、主電源が回復したため、発電機のスイッチを切ったとしている。
ザポリジャー原子力発電所は、砲撃による放射能漏れが懸念されるため、数ヶ月間、懸念の的となっていた。ロシアとウクライナは、砲撃について互いに非難し合っている。
source:
https://apnews.com/article/russia-ukraine-putin-donetsk-f64f9c91f24fc81bc8cc65e8bc7748f4
キャッシュレス決済アプリの残高が心もとない程度の金額だったため、仕事前にコンビニへ立ち寄った
こういう時に銀行口座やクレジットカードとの連携操作を面倒くさがって疎かにした自分に腹が立つものだ
コンビニに着くと2台設置されたATMに4名の先客が列を作っていた
いつもならここで店を出て別のコンビニへと向かうのだが、時間に若干の余裕があったため雑誌を立ち読みながらATMが空くのを待った
そういえば紙の雑誌は久しぶりに触ったような気がするなと思いながらATMの方向を見ると、並びは2名まで減っていた
耳をそば立てながら目は再び誌面に落とす
紙幣をカウントする動作音のあと、現金が出てくる際の軽快な電子音が聞こえた
そろそろ列に並ぼうかと雑誌を棚に戻し、スマホのATMチャージ画面を開きながら残り1名まで減った待機の列に並んだ
その時、「コンコン、コンコンコン」とノックのような音が聞こえた
音のした方向に目を向けると、先ほどまで自分が本を立ち読んでいた場所のガラスを隔てた外に、少しつばが大きい帽子を被った女性がガラスを叩いていた
ダラダラと過ごしていた学生時代、やる気のない日々を埋めるように酒を飲み笑い合い肌を重ねる生活を半年ほどともにした
ある日、「新しい夢ができた。迷惑をかけるかもしれないから、これでおしまい」とかなり意味深な別れ言葉を残して消えた
目標もなくなんとなくその日を暮らしていた自分にはない将来のビジョンを見つけたのか、それともほかにいい男を見つけたのか、突然の別れに3週間は悲しんだ記憶がある
ガラス越しに目が会うとあの頃と同じ屈託のない笑顔でニパッと笑った
釣られてこちらもニコッと応じたつもりがニヤッと気持ち悪い顔をしてしまった
その時、ATMの順番が来た
ガラス越しの彼女に「ちょっと待ってね」というジェスチャーをすると、彼女も何か察したように指でOKマークを作ってくれた
財布から紙幣を取り出し投入、明細を受け取り財布にねじ込みチャージされた残高を確認しながら店の外に出た
店を出てすぐ左を向くがすでに彼女の姿はなかった
ちょっと待ってねに対してOKしてくれたと思っていたが、彼女がいたあたりで周囲を見回してみても影もない
あの日、彼女が急に消えた時のことがフラッシュバックして涙がじんわりと浮かんできた
「やっぱり!」
懐かしい声と当時に背後から尻を鷲掴みにされた
「お店の前を通った時に立ち読みしてるの見えてさー」
「すぐ気づいてくれた?わかった?」
試すかのように顔を下から覗いてくる仕草も好きだったなと思い出した
あの日のことや新しい夢のことは結局聞けなかったが、左手を右手で覆いいっせーのーでと薬指を見せ合い、お互い指輪がないことを笑い合った
食事が済み食後のコーヒーもカップの底に少し残るほどになった頃、「じゃあそろそろ行こっか」と二人並んで席を立った
連絡先は変わってないかな、今どこあたりに住んでるのかな、夢は叶ったのかな、もう会えないのかな
聞きたいことや言いたいことが渦巻いて、それでもあと一歩踏み出せずに声にすることができなかった
会計へ向かいでスマホを差し出すと、横では彼女も同じようにスマホを準備していたが、店員に「一緒でいいです」と告げ、朝にチャージした残高で支払った
「えへ、ありがと」とあの頃と変わらない仕草でお礼をいう彼女へ向けた笑顔はきっとぎこちなかっただろう
前のものは容量が小さく乾燥機能がなかったから、雨が続くとコインランドリーへ行ったり部屋干しで臭いがついたりと大変だった
もちろんそのつもりだと紙の雑誌を机に置き、洗濯機の蓋を開ける
彼女のブラはそのままで、私のブラだけはいつも洗濯ネットに入れてくれる
そういえば未だにキャッシュレス決済アプリに銀行口座を連携していなかった
あとで彼女に聞きながら設定しよう
先日、万引き常習犯っぽい客が来た事をオーナーに置き手紙で報告したのだが、オーナーがその時の防犯カメラの映像を確認してくれた。やっぱり、パクってるのを店員に指摘された時に狼狽もしなけりゃ逆上もしないというのがだいぶ怪しいということで、全店員に注意喚起するとのことだった。
しかし、オーナーから「その人本当に日本人なの?」としつこく訊かれて辟易した。この土地特有の方言・アクセントで話し、顔立ちもここら辺の人っぽいので日本人だと思う、と答えたが、信じてくれないオーナーだった。以前、外国人の万引きグループが当店に来て、一人が店員の注意を逸らして後の数人で大量の商品を盗むという事件が何度か起きたので、オーナーは外国人と見ればとりあえず疑ってかかる。でも、その時の連中は中東系って言ってたじゃん。今来る外国人のお客様でそれっぽい濃ゆい顔立ちの人達は、すっかり地域に根差している自営業のパキスタン人達なので、さすがにそんなことはしないと思うのだが。ていうか、巧妙な手口で人を騙す窃盗犯=外国人 という訳ではない。そんな偏った見方しかしないから騙されんじゃねーの? と思ったけど言わないでおく。とりあえず、店の皆に話してくれるんならいいや。
10日ほど前に近くに同系列の他店舗が出来てからというもの、来客数が減ってしまい売上も悪いらしく、大量の廃棄が出てしまう。だが、本部がなんか悪いなと思ったのか、それとも系列全体の方針なのか、オーナーが駄々をこねたのか、廃棄間際の商品の値引きが認められた。
ところが値引き商品のレジ登録がとても面倒臭い。スーパーみたいに値引き用のバーコードが発行される訳じゃないから、各種値引きシールを見てレジに値引き額を手打ちで登録しなければいけない。しかも、何故か値引きシールの形状と色が値引き額ごとに異なるので、うっかりすると見落としそうで怖い。
値引きセールは今の所は試験運用だというけど、どうなる事やら。オーナーはシールのついた商品が捌けていくのを見て「いい感じじゃない?」とご機嫌だったが、そもそも発注数を押さえていて残り数少ない商品に全部値引きシールが貼ってあったら、それを買うしかないんじゃないのか。以前、廃棄間際の商品はポイントn倍とかいうキャンペーンのようなものもやっていたけど、そしたらポイントn倍のシールが貼ってある商品だけが売れ残って損だったと言ってたのは?
19時までオーナーとのシフトだった。本当はコンビニ専門派遣の人がシフトに入る予定だったが、その人の子供がコロナに罹患した。その人本人はPCR陰性で仕事に来る気満々だったそうだが、オーナーは「子供から感染症をうつされない親はいない」といって、その人のシフトを全てキャンセルしたらしい。
19時からは、新人の高専5年生とのシフト。先週はまだ不慣れな高専5年生のサポートのために私は30分の残業を言い付けられたが、今回は「何時まで残るかは彼と話し合って決めて」とオーナーが言うので、じゃあ私がすべき仕事が全部終わった時点で、何の問題も不安要素もなければ上がるってことで、と決めた。
私がカフェマシンの掃除をしている最中、高専5年生が客と揉め始めた。原因はすごく些細なことで、カフェマシンで淹れるアイスコーヒーを買ったお客様に「プラのストローある?」と訊かれて、「プラのストローがこれしかないです」と言って500mlのパックドリンクとかに添える細くて短いストローを出したことだった。
「プラのストローがこれしかないなんてあり得ないだろ! カフェ用の紙の袋に入ったやつはどうしたんだよ!」
と言い、わざわざ私の所まで来て、
と言うので、私は高専5年生のぶんまで平謝りをしてカフェ用のストローをお渡しした。お客様達は50代くらいの男女数人の団体客で、女性の方達が気さくな質のようで、「まぁまぁ」と、怒った男性客を宥めて逆に私に謝ってきた。
どうしてこうなったのか、高専5年生に説明した。最近、カフェ用のストローが変更になっていて、今まで通り植物由来原料ではあるのだが、あからさまに紙製だったのが、プラスチックのような見た目と触感のストローになったのだ。いつ切り替わったのか私も知らないのだが、8月の末には新しいものに変わっていたはずだ。もしかすると、店舗によっては在庫の関係で紙ストローをまだ出しているのかもしれない。ともかくそんな訳で、お客様が、カフェ用のストローが紙とプラの二種類があってどっちか選べると勘違いしているか、または当店は既にプラ(っぽい)ストローに切り替わっているかどうかq聞きたかったのか……そういう事だと思う。
お客様には、コンビニの事(特によく使う系列の)を店員よりもよく知っている人がざらにいる。だから、お客様が何か訊いて来た際に、こっちは店員だからってまるで有識者みたいなノリであしらうとお客様を怒らせてしまうことがある。
そんな話をしたけれど、高専5年生はなんだか腑に落ちなさげだった。
高専5年生は大体の仕事は覚えたのだが、まだ細かい事では知らない事も色々あるらしい。返本作業の事で質問をされたが、当店の夕勤は返本作業の担当ではないので知識がほとんどない。そのため、私は答えられなかった。マニュアルも見える所には置いてないから、Aさんかオーナーに聞かないとどうにもならない。
コンビニの仕事は勤務時間帯によって割り振られているので、従業員全員が全ての仕事を知っている訳じゃない。そう私が言うと、高専5年生は驚いていた。なので、いざ夜勤の人が忙しくて手の回らない作業が出て来ちゃったという時、どの作業なら夕勤に頼んでやってもらえるかというのを教えた。忙しい時は無理して作業を全部一人ですることはないから。
19時から20時までは暇だったのに、その後納品と品出しの時間に限って来客が多かったので雑用が捗らず、私は35分残業をした。
なぜだか最近、廃棄商品リストと実際棚に残っている商品の数が合わない事が多い。リストのデータが集計される時間と廃棄の時間にタイムラグがあるので、その間に商品が買われていることはよくあるのだが、その時間帯に誰も来ないのにリストと残数が合わない事がよくある。……というのは、万引きをされている可能性が考えられる。しかもかなり大量に?
夕方の六時半よりも少し前に、50代くらいの女性客……ひょっとすると、髪を真っ黒に染めているせいで若く見える60代以上の人かもしれない……が籠いっぱいの商品を会計に来た。
「温められるものを全部温めちゃってください」
といきなり言われた事にちょっと違和感があった。温められるものはお弁当とラーメンと数個のおにぎりなのだが、おにぎりは温めるかどうか好みが別れるものなので、勝手に温められないよう、これとこれだけ温めてとか、おにぎりは温めなくていいという人が多いのだ。
なんか変な人……と思いつつ、
と言ってからスキャンして後ろを向き電子レンジにそれらを入れた……その時、背後からガサガサと音がしたので、振り返ったら女性客はスキャン前の籠に入った商品を鷲掴みにしてマイバッグに投げ込んでいる最中だったのだ。
「ああ、これ未会計のやつですか? こっちは会計済みで大丈夫ですよね!?」
「いいえ、籠の中の商品は全てスキャンしておりません。戻していただけますか?」
と、女性客はマイバッグの中から商品を籠に戻したのだが、何しろ数が多いので、全部の商品が戻されたのかはわからない。大体は戻っているように見えるが、二、三個パチられているかもわからないってところだ。
たまに、ぼんやりしていて籠からスキャン前の商品を出してマイバッグに入れようとするお客様はいるものだけど、そういう人は大抵ふと我に返って狼狽するので、本当にただボーッとしていただけなんだなとわかる。ほとんどのお客様は万引き犯と間違われれるのを畏れているものだ。
だが、その女性客はなんか慣れた印象なのだ。卒なく商品をマイバッグに入れようとし、指摘されたら卒なく軽く謝って商品を籠に戻した。同じ事を何度もやっているのでは? 希に常にぼんやりしていて、同じ間違いをするのが癖になっている人というのがいないこともないのかもしれないけど、何か変だな。
そんな事が今さっきあったとAさんに話したところ、Aさんが高専五年生のトレーニングの時にレジフォローに着いた時にも同じ事があって、Aさんが
「お客様。今盗りましたよね? 出してください」
と言って商品をマイバッグから出させた事があったのだという。普通、盗ったとストレートに言われると、お客様は慌てて謝るか逆上するものだが、普通に「あらすいませーん」と言って出したのが印象的だったとか。
でも、Aさんはその客が女性だった事は覚えているのだが、どんな人相だったかは覚えていなかった。年齢はそこまでいってない……40代くらいかな? というのだが、Aさんが言う40代は大抵軽く50を超えているので、あてにならない。
Aさんが見た万引き未遂客と私が応対した女性客が同一人物なのかは不明だが、廃棄リストの件もあるし、オーナーあてに書き置きをしておいた。オーナーがちゃんと読んで監視カメラで確認してくれるといいのだが。
よく来るとある女性の常連のお客様の姿を最近見ないなあと思ったら、Aさんがそのお客様とトラブって以来、そのお客様は来なくなってしまったのだという。
どんなトラブルだったのかというと、お客様がカフェマシンで淹れるアイスカフェラテを購入したのだが、しばらくするとレジのところまで戻って来て、カップに規定量のコーヒーが入っていない! マシンがおかしい! と大騒ぎしたのだという。
「これ、大袈裟に言ってるんじゃなくて本当に文字通り大騒ぎなんですよ。完全に取り乱しちゃってて、おかしいおかしいって大声で言うだけで何をして欲しいんだか分からないんです。返金しろとも交換しろとも言わずに、何で何でおかしいおかしい言われたってね。いや規定量ちゃんと入っているようにしか見えませんが? と言うしかないです」
あー……。
そのお客様は普段は人当たりがよいというか、過剰に腰が低くて、しかも見た目も小柄で少し太っているがこざっぱりとしていて優しそうに見える。だから些細なことでキレるとは思えないのかもしれないが。
しかし、見た目小さくて優しそうに見える人というのは、基本的に他人からは「優しくされない人」であり、身近な人たちから雑に扱われていることが多い。やたら腰が低いのは、更なる対人トラブルを畏れているが故でもあり、また、他人に優しくしてもらう事を期待しているからでもある。返報性の法則の発動狙いというか。
優しそうに見えるせいで理不尽な目に遭いがちなため常に不満で一杯な訳で、心が破裂寸前の風船みたいなもの。キレる時はほんの小さなダメージで大爆発しがちだ。そしてキレた時はきっかけを作った物や人に対する怒りというより、これまでの人生で自分を酷い目に遭わせた全てに対する怒りをぶちまける。
一方で、自分が「弱い」とも自覚しているので、唐突に怒り狂い出したように見えて、ちゃんとどこか隙のある相手を選んでキレている。
あの常連のお客様がAさんを相手にキレたのは完璧に人選ミスだと思うけど、当店に来てキレたという事自体には私的にはわかりみがある。普段はもっと共感性が高くてお客様のテンションに合わせてくれる店員が一人はいるからだ。私や女子フリーターアルバイトさんやシフトリーダーやもう辞めてしまったDさんだったら、きっとあの常連のお客様がわーわー騒ぎ出したら、
「えー!? それは大変大変!! マシンの不具合かもしれないからちょっと見てみますね!!」
とお客様と同じくらいにテンションを上げてわたわたとカフェマシンを点検してみせて、それから謝り倒しつつカフェラテを淹れてみるだろう。それでも満足いただけなかったら、へいこら謝りつつ返金をして、お客様の話に耳を傾けもする。
要はお客様は何をして欲しいというよりは構ってもらえてそれなりケアしてもらえればそれでいいくらいなもんで、
Aさんがその常連のお客様とトラブった日にはAさん以外には店員は派遣バイトしかいなかったということなので、常連のお客様は見慣れぬ店員よりもいつも居るAさんのレジにやって来たのだ。普段はその常連のお客様はAさんのレジにはわざわざ来ない。来店するときはわざわざ店が空いている時間帯にやって来て、女性店員のレジにわざわざやって来るのだ。
要はその常連のお客様は来店した時点で既に店員から丁重にケアされるのを期待しているのであり、素っ気ない対応しかしないAさんにあたった時点でアテが外れてご不満だったのである。たぶん。
コンビニに来るお客様達は単に何か欲しい物があって買い物に来る人ばかりでなく、何か嫌な事があって気晴らしに来る人も少なくない。だから親切な人を装ってお客様の不満を受け止めるふりをするというのも、店員にとっては一つの処世術なんじゃないかなと思うんだけど、Aさんは、こんな低賃金で狂人の相手などしていられるか! とぷんぷんだった。
転職して今の会社に入り、数年で結婚して産休とって育休とって少し前に復帰した。
私が今の会社に入って3ヶ月くらい後に同じく中途で入ったAさんがいる。
Aさんは年齢も一つしか違わないし部署は違うが入社時期も近いし業務上関わることもままあってそれなりに仲良くしていた。
私が復帰したときに久しぶりで大変でしょう、とお菓子を差し入れてくれた。
スーパーで売ってるようなお菓子ではなくきれいな包みのもので、その日復帰する私のために用意してくれたのだろうというのが分かり、Aさんの気遣いに嬉しくなったしAさんはそういう気が利く人だった。
私の休業中にDXだと社長が張り切ったようで色々システムなど変わっていたりしたものの、わかりやすい作業手順が用意されていたりして勘を取り戻しながら仕事には慣れていった。
復帰後もAさんとはお昼が一緒になったときには子どもの話や旦那の愚痴を聞いてもらったりしていた。まぁ我が子可愛いけど疲れれば愚痴は出る。よそは知らんがうちの旦那は割と主体的に家事もやる方だと思うけど。
少し前に上司との面談時に育休明けで困っていることはないかと聞かれ、社長張り切りDXのおかげでシステムが変わって狼狽えたものの今のところ大きなトラブルはないし、
他の部分でも慣れればワークフローもわかりやすくなってて便利になりましたよね~なんていう話をしたら
私が休業中にDX的なことに社長が張り切ったが当然ながら導入や実務を社長はやらないのでそのあたりをAさんが整理してパソコンに疎い現場のおじさまたち含めいろんな人が使えるようにしていたらしい。
そこまで大きな会社ではないので割と本社の人間は何でも屋になりがちなのだがAさんは社内の軽易なシステム周りから福利厚生や規程の見直し、広報誌の見直しも色々していて
どれも端的に言って「色んな人が見やすい、使いやすい」を心がけているのが感じられた。
育休制度も法定通りだったものが私が休業中に法定以上の内容になったのだが、それもAさんの発案で進めてくれていたらしい。
しかもAさんは私が休業中に癌の手術をして抗がん剤治療中も在宅で仕事をし、そこから復帰してまた出社して仕事をしているという状況だった。
知らないところでAさんが大活躍していた。
Aさんは未婚で子どももいない。目鼻立ちも良く細身なきれいな人で入社すぐに他部署のパートの女性たちからも話しかけられていて美人は社交の輪がすぐ広がるんだな、と改めて感じたものだった。
恋愛や彼氏の話もあまり聞いたことがない。推してるアイドルの話を聞いたりはしていたが推しがいるから結婚はいらないというタイプでもなさそうだった。
そのAさんと先日お昼が一緒になったとき、ふと見ると指輪をしていた。ピアスはいつもしていたが指輪は珍しかったのでもしや、と思い「Aさんその指輪、彼氏とか?」と聞いたら「彼氏じゃないですよ」と言った後
こっそりと「増田さんにならいいかな、彼女なんです。女の子なんです、パートナーは。」と言われた。「あまり周囲に言ってないので内緒にしてくださいね。」と言われた。
驚いてしまったがそうだったのかと思いつつ、打ち明けてくれる程度にAさんから信頼を得ていたことの嬉しさもあった。
しかしその嬉しさのあとにじわじわと今まで彼女が異性愛者であるものとして接していたこと、
結婚出産育休取得と彼女が利用することが難しい制度に乗っかりながらその愚痴を言っていたことが途端に恥ずかしくて申し訳なくなってしまった。
謝ったところで彼女も本音はどうあれ「気にしてないですよ」しか言えないだろうし、自己満足にすぎないので何も言えない。
思えば産休や育休の制度の拡充をしてくれて、社内報や社内文書のフォントをユニバーサルデザインのフォントに統一したり、ハラスメント防止の指針やポスターの作成も、
私以上に多様性に理解がないであろう現場のおっさんたちにも分かるように手順書をつくったり、他にもいろいろ・・・そういう仕事の一つひとつに
彼女がマイノリティだからこそ見て見ぬふりできなかった部分があったんだろうと思えて、彼女が取り組むまでそうしたものの存在にも気づけなかった自分の図太く無神経な思考に打ちひしがれた。
Aさんは抗がん剤をした後、まだ薬も飲んでいるから生理がないと言っていた。はっきり言えば子どもが産めない体ということだと思う。
正直少し前まで子どもを産んでない人は子持ち(=未来の納税者)にフリーライドしていると少し思っていたくらいだ。
育休取りやすくしてくれてるのも、休業から復帰しやすくしてくれてたのも、その他諸々働きやすくしてくれていたのはAさんだった。
気持ちよく会話してお昼ごはん食べれたのもAさんが黙ってニコニコと私の話を聞いてくれていたからだった。
ちなみに私が休業中に私の仕事を回してくれていたのは子どものいない男性上司だった。
私のようなマジョリティのための既存の制度と、子どものいない人やマイノリティの我慢と努力にマジョリティである自分がフリーライドしている事実を、社内でAさんの活躍を聞くたびに突きつけられる。
自分はAさんのために何ができるんだろうと考えている。
「後でやり返されるかもしれない」とか、露ほどにも思わないんだろうか。
そこまで考えが至らない短絡的な人間だから、そんなことやってんだろうけどさ。
「自分より位の低い奴がやり返してくるはずがない」っていう、その揺るぎない自信はどっから来るのか。
自分なら相手からの報復が怖くて、そんな類の事は到底出来ない。いや、最初からする気も無いけどさ。
自分自身子供の頃から理不尽が嫌いだったので、体罰・パワハラ・いじめの類は目上とか関係なく徹頭徹尾やり返してきたんだけど、
大抵の加害者は思わぬ反撃喰らうと、まさに「鳩が豆鉄砲を食った」ような顔をして、笑っちゃうくらい狼狽するんだよな。
そしてそれを境に加害者側が変によそよそしくなって、体罰・パワハラ・いじめの類はピタッと止むんだ。こちとら何回も経験がある。
さらに悪化したパターンもわずかばかりあったけど、加害者側の体罰・パワハラ・いじめのヒートアップに比例して、必然的にこちら側の
報復行為も周囲に伝わるレベルで段々酷くなっていくので、流石に見るに見かねた第三者が放っとけずに介入してきて最終的には丸く収まった。
結局さ、加害者側って付け上がってんだよな。被害者側に甘えてんだよ。
どうにも腹に据えかねたら、ウィル・スミスみたいに加害者の横っ面でも急に張り倒してみろ。大体解決するぞ。
「暴行罪じゃないの?」アホか。情状酌量されるように体罰とかパワハラの証拠集めしてから、満を辞して張り倒すんだよ。
加害者側だって相当面の皮が厚くなければ、自分の過去に積み上げてきた悪事が露見することを恐れて、易々と暴行被害を訴えることもできまい。
「諸外国(非儒教影響下圏)では日本のようなパワハラ・セクハラはありません!」っていう出羽守言説も、ある意味正しいと思うよ。
だって向こうで恨みを買えば、日本とは比べ物にならないくらいカジュアルに鉄拳・ナイフ・拳銃が出てくるからな。そらやらないよ。怖いもん。
日本人も目上とか関係なくもっとブチ切れてやり返すべきなんだよ。そうすりゃもうちょっと世の中の風通しが良くなる。自殺者も多分減る。
上司や先輩には典型的な昭和のオジサンが多くて、飲み会の席で新婚の先輩についてイジったり、キャバクラや愛人、性体験の有無など、下品な話が出ることもあった。
私も別にそういう話が好きなわけではないし、なんなら気まずいからやめて欲しいと思っていたが、今となっては「正しくはないが少なくとも不自然ではなかった」と思う。
数年後、都内の企業に転職すると、同僚は全く別世界の人たちに見えた。
みんなオフィスカジュアルを着こなしているし、缶コーヒーなんか飲んでる人はいないし、雑談の内容もアートやカフェの話ばかり。
たとえばお笑いの話をするにしても、昨日観たバラエティの雑な感想なんかじゃなくて、芸人のラジオの話とか、ライブに行った話、みたいな。
それなりに話を合わせてはいたけれど、正直いけ好かないというか、意識高すぎというか、同僚たちの会話がドラマのワンシーンみたいな血の通っていないものに思えてしまう。
モラル的に人前で性的な話題を出さないのは間違っていないと思う。むしろ前職の上司の方がデリカシーがない。
ただ、あまりにも性的な話題が出なさすぎて、「ここはそういうものが存在しない世界線なんじゃないか?」と錯覚してしまう。
ある同僚は、古着とコーヒーが好きで、丸メガネの似合うお洒落なイケメン。仕事にもストイックで、誰に対しても嫌な顔をしない。常に俳優のインタビューくらい隙を見せない人だった。
そんな同僚が突然結婚した。まず、恋愛をしていた(プライベートが存在した)ことに驚いた。驚くのもおかしいんだけど。
それから一年たたないうちに子どもができたという。つまり、(これも当たり前だけど)奥さんと肉体関係があったわけだ。もっと嫌らしい言い方をすると、生セックスをしたわけである。
周りの同僚たちは「おめでとう〜」と言っていたけれど、ちょっと待って、みんな性的なものなんて存在しない世界に生きてたんじゃなかったの?と思った。
前職と今の職場では、青年誌と少年誌ぐらい、明らかに世界線が違ったはずなのに。
わけが分からなさすぎて妻に相談したら、「たぶん他の人はそんなにセックスを特別なものだと思っていないんじゃないかな?」と言われた。
一瞬納得しかけたが、そうだとしたら、逆に普段全く性的な話題が出ないことがおかしくないだろうか。多少なり特別なものと思っているからこそ、普段はその話題を口にしないわけで。
ちなみに妻も飲み会の席で同性の同僚とは普通に性的な悩みを話したりするらしい。ちょっと安心した。
仕事中は真っ当な仕事人であることを求められるにせよ、休憩時間や飲み会の場ですら常に素の部分を見せず俳優然としていた私の同僚が、サラリと結婚や妊娠の報告をするギャップに違和感があるのだ。養子をもらっていたり、『よつばと!』みたいな親子の形だったら、彼が演じるドラマの続きとして納得できるけど。
そこで気になるのは、普段性的な話題に一切触れない人が職場で結婚や妊娠の報告をするとき、たとえば「自分がセックスをしている事実を認めていることになるなあ」とか、一瞬でも想像したりして、内心ではどぎまぎしているのかということ。
あるいは本当に心から喜びの気持ちで溢れていて、なんの躊躇いもなく公言できているのか。
少なくとも私はちょっと照れ臭かったし、照れ臭そうにしながら報告したけどなあ。
それとも妻の言うように他の人はセックスが衣食住の一部みたいに当たり前すぎて、「昨日お風呂入った」と同じくらいの感覚だからわざわざ言わないだけなのか。
なお、結婚や妊娠=性的なことという結びつけが安直だという指摘もあると思うが、私も決して同義だとは思っていない。
ただ、それが100%清らかな気持ちだと言い切るのもカッコつけすぎてないかということ。
誰もが物語の主人公のような一生を過ごしているわけではないだろうし、清らかな部分もあれば、人間臭い生々しい部分もあるのが当然で。それなのに、あまりに清潔な部分しか見せない人が周りに多いので、自分がおかしいのかなーと不安になってきた。今となっては、前職の上司の方が、よっぽど人間らしかったなあと。
独り言のような内容でしたが、思った以上に反応があってびっくりしました。
思考がまとまっていない文章にも関わらず読んでくださった方、ありがとうございます。
コメントを読みながら自分の考えを整理してみたので、もし良かったらもう少しだけお付き合いください。
まず、こんなタイトルをつけておきながら、自分のモヤモヤの本質はそこではなかったと気づきました。
コメントで多くの方から指摘された「職場でそんな話しないのは当たり前」という意見については、私もその通りだと思ってます。
そもそも冒頭に書いたように、前職の飲み会のノリはついていけなかったし、今の職場の距離感は仕事をする上で凄く快適です。
私も自分から聞かれてもないプライベートをベラベラ話すこともなければ、他人のプライベートに踏み込むこともしていません。
同僚の出産報告についても、「生セックス」という強い言葉の部分だけ抽出してしまいましたが、もちろん私も周りの同僚と同じように「おめでとう〜」のノリで接してます。
当然、からかうような気持ちもなければ、セックス自体が悪いことだと思っているわけでもありません。
諸々の社会人として求められる振る舞いをほとんどの人ができている前提で、「でも、本当はみんな上手に大人のフリをしてるだけなんだよね?」という確認がしたかったんだと思います。
仕事はもちろん、飲酒やお金の扱い、マナーや身だしなみなど、子どもの頃にはできていなかったことが大人になるにつれてできるようになってきました。
今では仕事終わりにお酒を飲んだり、空き時間に株価をチェックしたりと、子どもの頃の自分からすれば大人に見える行動を取っていると思います。
でも、子どもの視点からは当たり前に行っているように見える行動も、実は大人だって一人でバーに入るのは内心ドキドキしてるし、株価を眺めるのは植物の成長を見守るみたいにちょっと楽しかったりするし、大事な打ち合わせの日の朝に髪型が決まらなくて鏡の前で狼狽してたりするんです。
その中でもセックスは特別で、結婚して5年経ちますが、未だに毎回ドキドキします。
私たちの夫婦にとっては、いわば外食以上旅行未満みたいなちょっとしたイベントで、とてもじゃないけど排泄や歯磨きと同じようには考えられないんですよね。
だから「セックスなんて既婚者にとって日常。そんなことを考えるのは中学生」のような意見だけは、どうしても共感できなかったです。
そういう人にとって、学生時代の初めてのセックスは重要な出来事だったけど、現在のセックスは排泄と同じくらい無意識の行為になったのでしょうか?
確かに、他人の妊娠報告に性的な揶揄をする人がいたら私も軽蔑しますし、極力関わりたくないと思います。
でも、特別な行為だと思っているからこそ、そういう想像を一瞬でもしてしまうことすら糾弾されるのだとしたら、みんな大人のフリが上手いんじゃなくて、本当に心まで大人なんだなぁって感心します。
相手を祝福する気持ちも嘘じゃないし、その一方で良からぬ想像や、黒い感情を少しだけ抱いてしまう人もいる。でも、それを飲みこんで笑顔で接するのが大人であり、人間ってそういう割り切れないものだと思っていたのですが。
基本的に結婚・出産報告に対する「おめでとう」は本当に「おめでとう」の気持ちです。
高い場所で絶景を見て感動したあとに、「でも、落ちたら死ぬんだよな」とか一瞬考えちゃうのと同じで、そんな自分が不安になったんだと思います。