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はてなキーワード: 道草とは

2024-10-30

anond:20241030184308

すまん俺はどっちかというと道草屋派なんだ

2024-08-30

台風どこで道草食ってんの?

戸板打ち付けちゃったから早く行ってくれないと窓開けられないんだけど

2024-08-26

今年も妻の実家帰省した。

車で3時間ほどかかる妻の実家に今年のお盆も行ってきた。

まだ小学生の娘は妻の実家が好きで、おじいちゃんとおばあちゃんに(それと猫に)会えるのを毎年楽しみにしているんだ。

お義父さんとお義母さんも娘のことが好きだから歓迎してくれて、娘はいつにも増してはしゃいでた。

それで疲れたのか、夜には晩御飯を食べるとすぐに寝ちゃったんだ。

晩御飯の後、大人だけで少し晩酌しようかって話になって、でもお酒が足りなくなった。

もうちょっと飲みたいよねって話になって、お義母さんが「私が買ってこようか」って言ってくれたんだけど、近くにコンビニがあるし俺が行ってきますって名乗り出た。

それでお願いされて、コンビニまでお酒を買いに行ったんだ。

外に出ると夏の熱気がまだ残っていて、それでも知らない夜の住宅街を歩くというのは不思議と悪い気分じゃなかった。

酔いを醒ますのにもちょうど良かったのかもしれない。

コンビニは空いてて、アイスお酒を買って、アイスを食べながら来た道を戻る。

見上げれば夜空に星空が輝いていて、こっちに来ないとこうも綺麗に見れないよなぁ…なんて思ってアイスを食べて、たまに足を止めて夜空をじっと見つめたりもした。

道草食って戻るとお義母さんが玄関で出迎えてくれて、買ってきたお酒を渡すとお礼を言われた。

コップに移して持ってくね、と笑顔で言ってくれて、お願いしますと答える俺も思わず微笑んだ。

リビングの方に戻ろうと思って廊下を進むとリビングへのドアが少し開いててさ、そこから中の様子を伺えた。

こっそり覗き込むと妻とお義父さんがなにやら話してて、楽しそうにしてた。

妻はちょっと畏まるような、でも笑ってて、その笑顔は見たことのない類のものだった。

そのとき思ったんだよ。

ああ、そっか。妻は娘のお母さんだけど、でもお義父さんの娘でもあるんだなって。

から今の妻は母であり、そして娘でもあるんだなって。

そう思うと何か妙にじんわりときちゃって、ちょっと泣きそうになった。

妻とお義父さんの姿を、将来の娘と自分に重ね合わせて見ていたのかもしれない。

どうかした?って、いつの間にか後ろに来ていたお義母さんに声をかけられて、恥ずかしくなって何でもないですって答えて、二人でリビングに入っていった。

それから俺が買ってきたお酒と、お義母さんが用意してくれた肴で、楽しい夜を過ごした。

お開きになって、寝ている娘の横に布団を二つ敷いて、横になったとき

さっき泣きそうになってなかった?って妻に聞かれて、ちょっと驚いた。

俺は「〇〇も昔は子供だったんだなって思って」と素直に言うと妻は笑って「なにそれ」といった。

それから目を瞑って将来のことを漠然と考えていると、気付けば眠っていた。

体を揺すられ、ゆっくり目を開けると娘が「おとうさん、もう朝だよ!」といって俺の体をぽんぽん叩く。

妻が、それを見て傍で笑ってた。

飲み過ぎたみたいで頭が痛かった。それでも、思わず笑ってしまうような、快い二日酔いだった。

2024-05-16

anond:20240516222932

ルックスでばっか勝負する奴に多分なりたくないんだ

曲がり角で道草してたらツキは逃げていった

2024-03-15

発泡酒普通ビールパッケージにすぎだろ

PRつけるつけない問題みてーだわ

発泡酒って表記さえすりゃ普通ビールと同じ柄でもいいだろ適菜

くそうぜーわ

猫娘道草日記

2024-02-05

anond:20240205052624

大阪道草あんまり食えなさそうだったなぁ。

そもそも大阪市内は緑が少ないって印象だった。

地域にもよるだろうし、今は違うのかもしれないけどね。

2024-01-14

イヤイヤ期に対応できてて嬉しいなメモ

2歳の息子がイヤイヤ期で、何かと時間がかかる。ご飯食べる?→イヤ! なんでもかんでもイヤで、なんでもやりたくて、大人だけだと5分で済むことが数倍以上の時間がかかる。

イオンモールで50メートル先のトイレに行くのに寄り道しすぎて30分かかったのでびっくりした。ひたすらにピカチュウアンパンマンに目を奪われてた。

仕方ないから、気が済むまでずっと待ってるんだけど、気長な夫婦と言われて、嬉しかった。

よく怒らずに見守っていられるなあと自画自賛していたので、その通りの評価が得られて安心した。

今日も回り道しすぎて1時間くらい道草食ってた。本当に寒かったけど、苛立たずに、見守ることができたので、よくやったなあと思う。

あと子供のことを怒鳴ったこともないし、叩いたこともない。当然かもしれないけど、本当によくやっている。

2024-01-06

なんでもありのバイキングでみんなが取らなかったのってなーに?の回答

歳か道草の二択しか無いよねと思う

でも条件が

来た人はみんな違法ドライバーです

になると回答は車間距離一択になるんだろうか

ん?でもさらに条件が

来た人はみんなインターネットが大好きで

まっさきに取りにきたもの

だったら

1番最初コメント(1コメしか無いのか?

2023-06-27

anond:20230626204826

遠回りさせて、道草させて、もっと沢山お金を落とさせるように迷い道に落とし込むという、お店にとっては優秀なシステムです。

2023-06-23

努力が一番向上心を忘れず辛いことも忍耐

諦めず

清く正しく道草もせずまっすぐ進んで壁にぶつかって

とにかく負けないで

礼を尽くして弱気ものを助け自分を殺し人を恨まず

からない 全然分かってない でもやってる

2023-03-16

ChatGTP作/パラレル走れメロスロールプレイング(なんか変)

太宰治走れメロスを、ロールプレイングゲーム形式で、書き直してほしい。条件としては、大まかなシーンごとに、主人公メロス本来選択するべき行動と、選択しない2~3の他の行動を選択肢として表示し、次のシーンへとつなぎ、最後ラストシーンへ繋いでいってください。各シーン400文字以内で描写をしてください。

【シーン1】

メロス王都に向かう道中で、道草を食っていた。そのとき、ある町人が声をかけてきた。「おい、そこの若い衆!この町はタイラント王の支配下にある。このままでは、お前も捕まるぞ」。このシーンでは、メロスはどうする?

選択肢】

1.「そうか、ありがとう。でも、自分は王の命令を守るために、王都へ行くつもりだ。」

2.「わかった、逃げよう。ありがとう、お前のおかげで命が助かったよ。」

3.「そうか、でも、この町はどうなるんだ?助けてくれ。」

【シーン2】

メロスは、王都に着いたが、既に日は暮れていた。宿屋に泊まり、翌日、王に謁見するための服装を買おうと思って、町を歩いていた。そのとき宿屋の主人が言った。「お前さん、気をつけろ。この町には泥棒がはびこっている。」このシーンでは、メロスはどうする?

選択肢】

1.「ありがとう、気をつけてみるよ。それじゃ、行ってくる。」

2.「心配ない、自分は強い。泥棒が来たら、やっつけてみせる。」

3.「それは困ったな。どうしたらいい?」

【シーン3】

メロスは、服装を買い、王城に向かった。しかし、王城の前で、王党派に捕まってしまった。メロスは、王を助けるために、自分が死んでも構わないと言う条件で、友人を助けるように頼まれた。このシーンでは、メロスはどうする?

選択肢】

1.「友人を助けるために、自分死ぬなんて、冗談じゃない。王党派のやり方は、許せない。」

2.「悩んだけど、自分は友人を助けることにする。」

3.「友人を助けるために、自分が死んでも構わないと言って、助けると約束した以上、自分はそれを守る。」

【シーン4】

メロスは友人を助けるために、自らの命を捧げた。しかし、友人が助かったことを知った王は、メロスが友人を救うために自らの命を犠牲したことに感動し、彼を許した。その後、メロスは王の信頼を得て、王国のために働くこととなった。彼は、王の指示の下、国民のために努力し、やがて国の平和繁栄を実現することに成功した。

選択肢】

このシーンには選択肢はありません。

ラストシーン

メロスは、自分が死んでも構わないと言って、友人を助けることを約束した。それは、ただ単に友人を助けるためだけではなく、王国のためでもあった。メロスの行動は、王の心を動かし、王国を救うことにつながった。彼の犠牲は、多くの人々に勇気を与え、彼らが自らの力で、自分たちの命と未来を守ることを決意させた。この物語は、メロスの行動によって、人々の心に希望を与えた物語である

2022-04-20

増田♂51歳の日常

帰りの電車内で、ふと非成型ポテトチップスコーラが欲しくなったので家の最寄駅の最寄ドラッグストア(最寄スーパーなら惣菜も買えるがこのドラッグストアよりもぜんぜん最寄じゃないので…)に道草して、レジ待ちしてる時にボンヤリと店内のPOPを観てた、

(o´・ω・`o)「…ウチダアキの顔はだんだんオカエクミコに似てくるなぁ。Σ( ゚д゚)ハッ!ということはつまり若い頃のオカエクミコはウチダアキみたいに、美」

2022-04-10

増田♂51歳の日常

トーストしたパンに何を付けようか考えてこないだの休日夜の会社帰りに酔って道草したコンビニ衝動買いした買い置きのポテサラがあるのを思い出してのっけたんだが、朝イチで喰うには(;゚Д゚)エエッってくらいのスパイシー大蒜フレーヴァーに戸惑い、スライスチーズスライスチーズ連呼連想したがもう無かった、代わりに見つけたシュレッドチーズ最後の一振りくらいに減った細く絞られた袋が発見されたのだが、










傷んだチーズって、酢酸臭とアンモニア臭ブレンド香気がするんだな…かけて焼いたら収まるかとおもったが部屋中に充満したところで口に入れるのを撤回してダストシュートイン!したけどどーにも臭いが収まらんかったので、ゴミ袋を引っ張り出して一旦まとめて縛って二重にし直し、トースターレンジの中もセスキ含有シートで拭いてなおかつ10分間カラ焼きしてやって、ようやく落ち着いた…






起きたのでケージから出してやった(以前に男の娘とわかった直後にチンチンタマタマ取られちゃった)ネコが餌に口つけず超高速で部屋の端から端を往復走行してたの、そのせいもあったんだろうか…?(o´・ω・`o)

2022-04-04

anond:20220404025913

そもそもガチャゲーはキャバホストに金入れてんのと変わらんから

あとは自己肯定感かな。仕事頑張ってるんでこのくらい課金しても余裕だぞみたいな

 

でもどう考えても別のことに投資した方がリターンは大きいんだよな

 

渡辺直美もこの間、Pay to Winソシャゲ廃課金→凹み引退報告してたw

とんでもなく廃課金してたのでサーバーの統廃合があってもずっとサーバー1位だったとか

運営VIPチャットに招待もされたそうなので1千万以上は使っていたのでしょうね

それだけのお金ソシャゲ課金できるなんてパワフルだなーとか

あれだけ多忙なのにソシャゲにぶっ込む時間があるとか元気すぎるなーとか

そういう感情にはならなかったなw

そんな暇あったら英語頑張れよwと思ってしまった

 

でもまぁああい世界多忙でも寄り道・道草食えるのが人生という考え方も出来る

2022-03-01

タヌキックマスターはまだか

返事がなかったらタヌキックマスターをけしかけると言われて返事をしないまま、もう一月以上経った

言動不一致でまだけしかけてないのか、けしかけられたタヌキックマスターがそこらへんで道草食ってんのか、どっちなんだろう

2021-12-24

ミキ漫才見てる時が一番無駄

運気あがらねえかな 新しい風吹かないか

人間は隣の芝が青く見える生き物 人間省エネをする生き物、金を与え続ければ怠惰になる 人間慣性の生き物、毎日外に出た人がある日外に出るなと言われるとストレスたまる

効率鼓舞くそくらえ 道草を楽しめ大いにな 道中を楽しめ 大いにな  才能げーだろ くそげーだわ つまんねー 種族値の殴り合いじゃん コラッタじゃ勝てねーよ つまんねーなー

カードコマンダーだったら雑魚でも低コストから使い道あるけど ポケモンってほんとよくできてないくそげーだな あ り た ま つ く ぼ ま え だ さ か い

風吹いてたんだよなあ あたしい風吹かねえかな 風吹いてたんだけどものにできなかった めぐり合わせだから 新しい風めぐりあわせ

なんで嫌な気持ちになるんだろう

そこから紐解いていきましょう

何で生きてるんだっけ

人生がつまらない

アトピーですべて壊れた 死にたい

才能げー過ぎてすべて無気力 死にたい

微力ながら生きてるからしたいことが微力しかない 死にたい

微力ながらいきてる 5ちゃんやめたのは気まぐれ 大義名分はないよ

はあくそげーだわ この世界 誰がやるねん やるきでねー

2021-11-16

anond:20211116151738

そういうところに反ワクチンが潜むんだよ

疑問に思うのは良いが、結局鵜呑みにするしかない。なぜなら誰にも正解がわからいからだ。走りながら考えてるんだよ。君は考えるふりして道草食って足を引っ張ってるだけ

2021-04-06

anond:20210405191848

おまえ人生の横道しかみてないだけじゃん

増田だのツイッターなんかにきて道草くってるからそうやってイヤなものをめにするんであって

お互いいやならみるな精神やぞ

2021-03-24

バナナなのかイチゴなのか増田なのかの灘酢魔化の名護値以下のナナナ葉(回文

おはようございます

あのさ知ってた?

東京ばな奈のさ

あれを薄っぺらに潰して焼いたのが、

東京ばな奈パイのやつなんだってー。

ふーん、って感じよね。

世の中にそれを知ったか知らなかったかでは、

東京駅新幹線改札に入っちゃったら買えるお土産数が一気に少なくなってしまって、

しまった!新幹線改札入る前に、

もうちょっとお土産屋さん見ておけば良かった!

ってなるし、

なしのつぶて

改札内ではもう東京ばな奈しかなくって、

こいつ改札入ってからお土産買ってんだろ!って見破られちゃうので、

パイという変化球東京ばな奈を買って

最後最後までお土産買う買わないでもがくことあるわよね。

まあ私はどちらでもいいけど

東京ばな奈を潰して焼いたパイの方が好きかも。

イチゴ味のもあるじゃない。

もはやバナナなのかイチゴなのか字面だけじゃ分からないわよね。

私はさすがに新幹線の中で崎陽軒シウマイ弁当を食べる勇気は無いけど、

寿司パックなら買って食べられるわ。

さすがに寿司飯の匂いがくせー!ってクレームは今まで聞いたこと喰らったことないからセーフだと思うわ。

本当は一度は新幹線内の崎陽軒って憧れるわよね。

そのぐらいのメンタルの強さを持つようになったら食べられるから

食べられるようになったら

メンタルが強くなったと言っても過言ではないわね。

ビールもさ、

プシュってプルタブを開けるときに、

こいつオレは今から仕事で行くのにおまえは暢気なもんだな!

おまえは!おまえは!って

クレーム喰らったら嫌なので、

缶の上からハンカチかぶせて器用に

プシュっと缶の中の気圧を下げて音がしないように缶を開けるの。

忍者学園でそれ習ったか

早速新幹線で試してみたら大成功だったので

無音ビール缶開けの技は

ちゃん習得できた証よね!

今のところ、

ポケットに小銭が入ってても

無音でジャンプできる小銭ポケット入れ無音ジャンプの技とあわせて2つの技をもてあそんでるぐらいね

あと一つ技があったわよ!

新幹線のシートを倒すとき

1つだけ倒すと隣との段差でシート倒したって気付かれちゃうから

2つもしくは3つ同時にシートを倒して後ろの人に

段差が見えないようにする

シート倒してるけど倒してるように見えない技とがあったわ。

私の習得した技はこの3つね。

あ!

あと1つ技あったわ。

袋麺のインスタント拉麺を作るとき

麺を茹でたお湯でスープを作るより、

スープ用で新しいお湯でスープ作って、

茹でるお湯とスープのお湯を別々にして作ると

めちゃ美味しい袋ラーメンができるって技もあったわ。

本当にもう、

日々鍛錬の日々よ!

あなたのこのような忍者技もしくはライフハックを私にも教えて欲しいわ!

忍者技帳に載っていない私の知らない忍者技がまだたくさんあるはずよ!

うふふ。


今日朝ご飯

ハムタマゴもタマサンドもなかったので、

選択肢ミックスサンドしかなくて、

ツナが苦手なんだけど、

ツナりました。

たまに食べるとツナサンドも美味しいわね!

トゥナイトトゥナイト!ってのをとても早く言うとツナツナ!って聞こえるから

試してみてね!

デトックスウォーター

今日は苺とベリーベリーウォーラーしました。

道草に生えてなっているヘビイチゴみたいなイチゴってなんていう名前だったかしら?

イチゴ?そんな感じのベリー普通の赤い苺のベリーよ。

今日から薄手の上着に替えてみても良いかもしれないわね!


すいすいすいようび~

今日も頑張りましょう!

2021-03-22

菰田

以上のお話によって、郷田三郎と、明智小五郎との交渉、又は三郎の犯罪嗜好癖などについて、読者に呑み込んで頂いた上、さて、本題に戻って、東栄館という新築下宿屋で、郷田三郎がどんな楽しみを発見たかという点に、お話を進めることに致しましょう。

 三郎が東栄館の建築が出来上るのを待ち兼ねて、いの一番にそこへ引移ったのは、彼が明智交際を結んだ時分から一年以上もたっていました。随したがってあの「犯罪」の真似事にも、もう一向興味がなくなり、といって、外ほかにそれに代る様な事柄もなく、彼は毎日毎日の退屈な長々しい時間を、過し兼ねていました。東栄館に移った当座は、それでも、新しい友達が出来たりして、いくらか気がまぎれていましたけれど、人間というものは何と退屈極きわまる生物なのでしょう。どこへ行って見ても、同じ様な思想を同じ様な表情で、同じ様な言葉で、繰り返し繰り返し、発表し合っているに過ぎないのです。折角せっかく下宿屋を替えて、新しい人達に接して見ても、一週間たつかたたない内に、彼は又しても底知れぬ倦怠けんたいの中に沈み込んで了うのでした。

 そうして、東栄館に移って十日ばかりたったある日のことです。退屈の余り、彼はふと妙な事を考えつきました。

 彼の部屋には、――それは二階にあったのですが――安っぽい床とこの間まの傍に、一間の押入がついていて、その内部は、鴨居かもいと敷居との丁度中程に、押入れ一杯の巌丈がんじょうな棚があって、上下二段に分れているのです。彼はその下段の方に数個の行李こうりを納め、上段には蒲団をのせることにしていましたが、一々そこから蒲団を取出して、部屋の真中へ敷く代りに、始終棚の上に寝台ベッドの様に蒲団を重ねて置いて、眠くなったらそこへ上って寝ることにしたらどうだろう。彼はそんなことを考えたのです。これが今迄いままでの下宿屋であったら、仮令たとえ押入れの中に同じような棚があっても、壁がひどく汚れていたり、天井蜘蛛もの巣が張っていたりして、一寸その中へ寝る気にはならなかったのでしょうが、ここの押入れは、新築早々のことですから、非常に綺麗きれいで、天井も真白なれば、黄色く塗った滑かな壁にも、しみ一つ出来てはいませんし、そして全体の感じが、棚の作り方にもよるのでしょうが何となく船の中の寝台に似ていて、妙に、一度そこへ寝て見たい様な誘惑を感じさえするのです。

 そこで、彼は早速さっそくその晩から押入れの中へ寝ることを始めました。この下宿は、部屋毎に内部から戸締りの出来る様になっていて、女中などが無断で這入はいって来る様なこともなく、彼は安心してこの奇行を続けることが出来るのでした。さてそこへ寝て見ますと、予期以上に感じがいいのです。四枚の蒲団を積み重ね、その上にフワリと寝転んで、目の上二尺ばかりの所に迫っている天井を眺める心持は、一寸異様な味あじわいのあるものです。襖ふすまをピッシャリ締め切って、その隙間から洩れて来る糸の様な電気の光を見ていますと、何だかこう自分探偵小説中の人物にでもなった様な気がして、愉快ですし、又それを細目に開けて、そこから自分自身の部屋を、泥棒他人の部屋をでも覗く様な気持で、色々の激情的な場面を想像しながら、眺めるのも、興味がありました。時によると、彼は昼間から押入に這入り込んで、一間と三尺の長方形の箱の様な中で、大好物煙草をプカリカリとふかしながら、取りとめもない妄想に耽ることもありました。そんな時には、締切った襖の隙間から、押入れの中で火事でも始ったのではないかと思われる程、夥しい白煙が洩れているのでした。

 ところが、この奇行を二三日続ける間に、彼は又しても、妙なことに気がついたのです。飽きっぽい彼は、三日目あたりになると、もう押入れの寝台ベッドには興味がなくなって、所在なさに、そこの壁や、寝ながら手の届く天井板に、落書きなどしていましたが、ふと気がつくと、丁度頭の上の一枚の天井板が、釘を打ち忘れたのか、なんだかフカフカと動く様なのです。どうしたのだろうと思って、手で突っぱって持上げて見ますと、なんなく上の方へ外はずれることは外れるのですが、妙なことには、その手を離すと、釘づけにした箇所は一つもないのに、まるでバネ仕掛けの様に、元々通りになって了います。どうやら、何者かが上から圧おさえつけている様な手ごたえなのです。

 はてな、ひょっとしたら、丁度この天井板の上に、何か生物が、例えば大きな青大将あおだいしょうか何かがいるのではあるまいかと、三郎は俄にわかに気味が悪くなって来ましたが、そのまま逃げ出すのも残念なものですから、なおも手で押し試みて見ますと、ズッシリと、重い手ごたえを感じるばかりでなく、天井板を動かす度に、その上で何だかゴロゴロと鈍い音がするではありませんか。愈々いよいよ変です。そこで彼は思切って、力まかせにその天井板をはね除のけて見ますと、すると、その途端、ガラガラという音がして、上から何かが落ちて来ました。彼は咄嗟とっさの場合ハッと片傍かたわきへ飛びのいたからよかったものの、若もしそうでなかったら、その物体に打たれて大怪我おおけがをしている所でした。

「ナアンダ、つまらない」

 ところが、その落ちて来た品物を見ますと、何か変ったものでもあればよいがと、少からず期待していた彼は、余りのことに呆あきれて了いました。それは、漬物石つけものいしを小さくした様な、ただの石塊いしころに過ぎないのでした。よく考えて見れば、別に不思議でも何でもありません。電燈工夫が天井裏へもぐる通路にと、天井板を一枚丈け態わざと外して、そこからねずみなどが押入れに這入はいらぬ様に石塊で重しがしてあったのです。

 それは如何いかにも飛んだ喜劇でした。でも、その喜劇が機縁となって、郷田三郎は、あるすばらしい楽みを発見することになったのです。

 彼は暫しばらくの間、自分の頭の上に開いている、洞穴ほらあなの入口とでも云った感じのする、その天井の穴を眺めていましたが、ふと、持前もちまえの好奇心から、一体天井裏というものはどんな風になっているのだろうと、恐る恐る、その穴に首を入れて、四方あたりを見廻しました。それは丁度朝の事で、屋根の上にはもう陽が照りつけていると見え、方々の隙間から沢山の細い光線が、まるで大小無数の探照燈を照してでもいる様に、屋根裏の空洞へさし込んでいて、そこは存外明るいのです。

 先まず目につくのは、縦に、長々と横よこたえられた、太い、曲りくねった、大蛇の様な棟木むなぎです。明るいといっても屋根裏のことで、そう遠くまでは見通しが利かないのと、それに、細長い下宿屋の建物ですから、実際長い棟木でもあったのですが、それが向うの方は霞んで見える程、遠く遠く連つらなっている様に思われます。そして、その棟木と直角に、これは大蛇肋骨あばらに当る沢山の梁はりが両側へ、屋根の傾斜に沿ってニョキニョキと突き出ています。それ丈けでも随分雄大景色ですが、その上、天井を支える為に、梁から無数の細い棒が下っていて、それが、まるで鐘乳洞しょうにゅうどうの内部を見る様な感じを起させます

「これは素敵だ」

 一応屋根裏を見廻してから、三郎は思わずそう呟つぶやくのでした。病的な彼は、世間普通の興味にはひきつけられないで、常人には下らなく見える様な、こうした事物に、却かえって、云い知れぬ魅力を覚えるのです。

 その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まりました。夜となく昼となく、暇さえあれば、彼は泥坊猫の様に跫音あしおとを盗んで、棟木や梁の上を伝い歩くのです。幸さいわいなことには、建てたばかりの家ですから屋根裏につき物の蜘蛛の巣もなければ、煤すすや埃ほこりもまだ少しも溜っていず、鼠の汚したあとさえありません。それ故ゆえ着物や手足の汚くなる心配はないのです。彼はシャツ一枚になって、思うがままに屋根裏を跳梁ちょうりょうしました。時候も丁度春のことで、屋根裏だからといって、さして暑くも寒くもないのです。

 東栄館の建物は、下宿屋などにはよくある、中央まんなかに庭を囲んで、そのまわりに、桝型ますがたに、部屋が並んでいる様な作り方でしたから、随って屋根裏も、ずっとその形に続いていて、行止ゆきまりというものがありません。彼の部屋の天井から出発して、グルッと一廻りしますと、又元の彼の部屋の上まで帰って来る様になっています

 下の部屋部屋には、さも厳重に壁で仕切りが出来ていて、その出入口には締りをする為の金具まで取りつけているのに、一度天井裏に上って見ますと、これは又何という開放的な有様でしょう。誰の部屋の上を歩き廻ろうと、自由自在なのです。若し、その気があれば、三郎の部屋のと同じ様な、石塊の重しのしてある箇所が所々にあるのですから、そこから他人の部屋へ忍込んで、窃盗を働くことも出来ます廊下を通って、それをするのは、今も云う様に、桝型の建物の各方面に人目があるばかりでなく、いつ何時なんどき他の止宿人ししゅくにんや女中などが通り合わさないとも限りませんから、非常に危険ですけれど、天井裏の通路からでは、絶対にその危険がありません。

 それから又、ここでは、他人秘密を隙見することも、勝手次第なのです。新築と云っても、下宿屋の安普請やすぶしんのことですから天井には到る所に隙間があります。――部屋の中にいては気が附きませんけれど、暗い屋根からますと、その隙間が意外に大きいのに一驚いっきょうを喫きっします――稀には、節穴さえもあるのです。

 この、屋根裏という屈指の舞台発見しますと、郷田三郎の頭には、いつのまにか忘れて了っていた、あの犯罪嗜好癖が又ムラムラと湧き上って来るのでした。この舞台でならば、あの当時試みたそれよりも、もっともっと刺戟の強い、「犯罪の真似事」が出来るに相違ない。そう思うと、彼はもう嬉しくて耐たまらないのです。どうしてまあ、こんな手近な所に、こんな面白い興味があるのを、今日まで気附かないでいたのでしょう。魔物の様に暗闇の世界を歩き廻って、二十人に近い東栄館の二階中の止宿人の秘密を、次から次へと隙見して行く、そのこと丈けでも、三郎はもう十分愉快なのです。そして、久方振りで、生き甲斐を感じさえするのです。

 彼は又、この「屋根裏の散歩」を、いやが上にも興深くするために、先ず、身支度からして、さも本物の犯罪人らしく装うことを忘れませんでした。ピッタリ身についた、濃い茶色の毛織のシャツ、同じズボン下――なろうことなら、昔活動写真で見た、女賊プロテアの様に、真黒なシャツを着たかったのですけれど、生憎あいくそんなものは持合せていないので、まあ我慢することにして――足袋たびを穿はき、手袋をはめ――天井裏は、皆荒削あらけずりの木材ばかりで、指紋の残る心配などは殆どないのですが――そして手にはピストルが……欲しくても、それもないので、懐中電燈を持つことにしました。

 夜更けなど、昼とは違って、洩れて来る光線の量が極く僅かなので、一寸先も見分けられぬ闇の中を、少しも物音を立てない様に注意しながら、その姿で、ソロソロリと、棟木の上を伝っていますと、何かこう、自分が蛇にでもなって、太い木の幹を這い廻っている様な気持がして、我ながら妙に凄くなって来ます。でも、その凄さが、何の因果か、彼にはゾクゾクする程嬉しいのです。

 こうして、数日、彼は有頂天になって、「屋根裏の散歩」を続けました。その間には、予期にたがわず、色々と彼を喜ばせる様な出来事があって、それを記しるす丈けでも、十分一篇の小説が出来上る程ですが、この物語の本題には直接関係のない事柄ですから、残念ながら、端折はしょって、ごく簡単に二三の例をお話するに止とどめましょう。

 天井からの隙見というものが、どれ程異様な興味のあるものだかは、実際やって見た人でなければ、恐らく想像も出来ますまい。仮令、その下に別段事件が起っていなくても、誰も見ているものがないと信じて、その本性をさらけ出した人間というものを観察すること丈けで、十分面白いのです。よく注意して見ますと、ある人々は、その側に他人のいるときと、ひとりきりの時とでは、立居ふるまいは勿論もちろん、その顔の相好そうごうまでが、まるで変るものだということを発見して、彼は少なからず驚きました。それに、平常ふだん、横から同じ水平線で見るのと違って、真上から見下すのですから、この、目の角度の相違によって、あたり前の座敷が、随分異様な景色に感じられます人間は頭のてっぺんや両肩が、本箱、机、箪笥たんす、火鉢などは、その上方の面丈けが、主として目に映ります。そして、壁というものは、殆ど見えないで、その代りに、凡ての品物のバックには、畳が一杯に拡っているのです。

 何事がなくても、こうした興味がある上に、そこには、往々おうおうにして、滑稽こっけいな、悲惨な、或は物凄い光景が、展開されています。平常過激反資本主義議論を吐いている会社員が、誰も見ていない所では、貰もらったばかりの昇給辞令を、折鞄おりかばから出したり、しまったり、幾度も幾度も、飽かず打眺うちながめて喜んでいる光景ゾロリとしたお召めし着物不断着ふだんぎにして、果敢はかない豪奢振ごうしゃぶりを示している、ある相場師が、いざ床とこにつく時には、その、昼間はさも無雑作むぞうさに着こなしていた着物を、女の様に、丁寧に畳んで、床の下へ敷くばかりか、しみでもついたのと見えて、それを丹念に口で嘗なめて――お召などの小さな汚れは、口で嘗めとるのが一番いいのだといいます――一種クリーニングをやっている光景、何々大学野球選手だというニキビ面の青年が、運動家にも似合わない臆病さを以て、女中への附文つけぶみを、食べて了った夕飯のお膳の上へ、のせて見たり、思い返して、引込めて見たり、又のせて見たり、モジモジと同じことを繰返している光景、中には、大胆にも、淫売婦(?)を引入れて、茲ここに書くことを憚はばかる様な、すさまじい狂態を演じている光景さえも、誰憚らず、見たい丈け見ることが出来るのです。

 三郎は又、止宿人と止宿人との、感情葛藤かっとうを研究することに、興味を持ちました。同じ人間が、相手によって、様々に態度を換えて行く有様、今の先まで、笑顔で話し合っていた相手を、隣の部屋へ来ては、まるで不倶戴天ふぐたいてんの仇あだででもある様に罵ののしっている者もあれば、蝙蝠こうもりの様に、どちらへ行っても、都合のいいお座なりを云って、蔭でペロリと舌を出している者もあります。そして、それが女の止宿人――東栄館の二階には一人の女画学生がいたのです――になると一層興味があります。「恋の三角関係」どころではありません。五角六角と、複雑した関係が、手に取る様に見えるばかりか、競争者達の誰れも知らない、本人の真意が、局外者の「屋根裏の散歩者」に丈け、ハッキリと分るではありませんか。お伽噺とぎばなしに隠かくれ蓑みのというものがありますが、天井裏の三郎は、云わばその隠れ蓑を着ているも同然なのです。

 若しその上、他人の部屋の天井板をはがして、そこへ忍び込み、色々ないたずらをやることが出来たら、一層面白かったでしょうが、三郎には、その勇気がありませんでした。そこには、三間に一箇所位の割合で、三郎の部屋のと同様に、石塊いしころで重しをした抜け道があるのですから、忍び込むのは造作もありませんけれど、いつ部屋の主が帰って来るか知れませんし、そうでなくとも、窓は皆、透明なガラス障子しょうじになっていますから、外から見つけられる危険もあり、それに、天井板をめくって押入れの中へ下り、襖をあけて部屋に這入り、又押入れの棚へよじ上って、元の屋根裏へ帰る、その間には、どうかして物音を立てないとは限りません。それを廊下や隣室から気附かれたら、もうおしまいなのです。

 さて、ある夜更けのことでした。三郎は、一巡ひとまわり「散歩」を済ませて、自分の部屋へ帰る為に、梁から梁を伝っていましたが、彼の部屋とは、庭を隔てて、丁度向い側になっている棟の、一方の隅の天井に、ふと、これまで気のつかなかった、幽かすかな隙間を発見しました。径二寸ばかりの雲形をして、糸よりも細い光線が洩れているのです。なんだろうと思って、彼はソッと懐中電燈を点ともして、検しらべて見ますと、それは可也かなり大きな木の節で、半分以上まわりの板から離れているのですが、あとの半分で、やっとつながり、危く節穴になるのを免れたものでした。一寸爪の先でこじさえすれば、何なく離れて了い相なのです。そこで、三郎は外ほかの隙間から下を見て、部屋の主が已すでに寝ていることを確めた上、音のしない様に注意しながら、長い間かかって、とうとうそれをはがして了いました。都合のいいことには、はがした後の節穴が、杯さかずき形に下側が狭くなっていますので、その木の節を元々通りつめてさえ置けば、下へ落ちる様なことはなく、そこにこんな大きな覗き穴があるのを、誰にも気附かれずに済むのです。

 これはうまい工合ぐあいだと思いながら、その節穴から下を覗いて見ますと、外の隙間の様に、縦には長くても、幅はせいぜい一分ぶ内外の不自由なのと違って、下側の狭い方でも直径一寸以上はあるのですから、部屋の全景が、楽々と見渡せます。そこで三郎は思わず道草を食って、その部屋を眺めたことですが、それは偶然にも、東栄館の止宿人の内で、三郎の一番虫の好かぬ、遠藤えんどうという歯科医学校卒業生で、目下はどっかの歯医者助手を勤めている男の部屋でした。その遠藤が、いやにのっぺりした虫唾むしずの走る様な顔を、一層のっぺりさせて、すぐ目の下に寝ているのでした。馬鹿几帳面きちょうめんな男と見えて、部屋の中は、他のどの止宿人のそれにもまして、キチンと整頓せいとんしています。机の上の文房具位置、本箱の中の書物の並べ方、蒲団の敷き方、枕許まくらもとに置き並べた、舶来物でもあるのか、見なれぬ形の目醒めざまし時計漆器しっきの巻煙草まきたばこ入れ、色硝子いろがらすの灰皿、何いずれを見ても、それらの品物の主人公が、世にも綺麗きれい好きな、重箱の隅を楊子ようじでほじくる様な神経家であることを証拠立てています。又遠藤自身の寝姿も、実に行儀がいいのです。ただ、それらの光景にそぐわぬのは、彼が大きな口を開あいて、雷の様に鼾いびきかいていることでした。

 三郎は、何か汚いものでも見る様に、眉をしかめて、遠藤の寝顔を眺めました。彼の顔は、綺麗といえば綺麗です。成程彼自身で吹聴ふいちょうする通り、女などには好かれる顔かも知れません。併し、何という間延びな、長々とした顔の造作でしょう。濃い頭髪、顔全体が長い割には、変に狭い富士ふじびたい、短い眉、細い目、始終笑っている様な目尻の皺しわ、長い鼻、そして異様に大ぶりな口。三郎はこの口がどうにも気に入らないのでした。鼻の下の所から段を為なして、上顎うわあごと下顎とが、オンモリと前方へせり出し、その部分一杯に、青白い顔と妙な対照を示して、大きな紫色の唇が開いています。そして、肥厚性鼻炎ひこうせいびえんででもあるのか、始終鼻を詰つまらせ、その大きな口をポカンと開けて呼吸をしているのです。寝ていて、鼾をかくのも、やっぱり鼻の病気のせいなのでしょう。

 三郎は、いつでもこの遠藤の顔を見さえすれば、何だかこう背中がムズムズして来て、彼ののっぺりした頬っぺたを、いきなり殴なぐりつけてやり度たい様な気持になるのでした。

 そうして、遠藤の寝顔を見ている内に、三郎はふと妙なことを考えました。それは、その節穴から唾つばをはけば、丁度遠藤の大きく開いた口の中へ、うまく這入りはしないかということでした。なぜなら、彼の口は、まるで誂あつらえでもした様に、節穴の真下の所にあったからです。三郎は物好きにも、股引ももひきの下に穿いていた、猿股さるまたの紐を抜出して、それを節穴の上に垂直に垂らし、片目を紐にくっつけて、丁度銃の照準でも定める様に、試して見ますと、不思議な偶然です。紐と節穴と、遠藤の口とが、全く一点に見えるのです。つまり節穴から唾を吐けば、必ず彼の口へ落ちるに相違ないことが分ったのです。

 併し、まさかほんとうに唾を吐きかける訳にも行きませんので、三郎は、節穴を元の通りに埋うずめて置いて、立去ろうとしましたが、其時そのとき、不意に、チラリとある恐しい考えが、彼の頭に閃きました。彼は思わず屋根裏の暗闇の中で、真青になって、ブルブルと震えました。それは実に、何の恨うらみもない遠藤殺害するという考えだったのです。

 彼は遠藤に対して何の恨みもないばかりか、まだ知り合いになってから半月もたってはいないのでした。それも、偶然二人の引越しが同じ日だったものですから、それを縁に、二三度部屋を訪ね合ったばかりで別に深い交渉がある訳ではないのです。では、何故なにゆえその遠藤を、殺そうなどと考えたかといいますと、今も云う様に、彼の容貌言動が、殴りつけたい程虫が好かぬということも、多少は手伝っていましたけれど、三郎のこの考かんがえの主たる動機は、相手人物にあるのではなくて、ただ殺人行為のものの興味にあったのです。先からお話して来た通り、三郎の精神状態は非常に変態的で、犯罪嗜好癖ともいうべき病気を持ってい、その犯罪の中でも彼が最も魅力を感じたのは殺人罪なのですから、こうした考えの起るのも決して偶然ではないのです。ただ今までは、仮令屡々しばしば殺意を生ずることがあっても、罪の発覚を恐れて、一度も実行しようなどと思ったことがないばかりなのです。

 ところが、今遠藤場合は、全然疑うたがいを受けないで、発覚の憂うれいなしに、殺人が行われ相そうに思われます。我身に危険さえなければ、仮令相手が見ず知らずの人間であろうと、三郎はそんなことを顧慮こりょするのではありません。寧むしろ、その殺人行為が、残虐であればある程、彼の異常な慾望は、一層満足させられるのでした。それでは、何故遠藤に限って、殺人罪が発覚しない――少くとも三郎がそう信じていたか――といいますと、それには、次の様な事情があったのです。

 東栄館へ引越して四五日たった時分でした。三郎は懇意こんいになったばかりの、ある同宿者と、近所のカフェへ出掛けたことがあります。その時同じカフェ遠藤も来ていて、三人が一つテーブルへ寄って酒を――尤もっとも酒の嫌いな三郎はコーヒーでしたけれど――飲んだりして、三人とも大分いい心持になって、連立つれだって下宿へ帰ったのですが、少しの酒に酔っぱらった遠藤は、「まあ僕の部屋へ来て下さい」と無理に二人を、彼の部屋へ引ぱり込みました。遠藤は独ひとりではしゃいで、夜が更けているのも構わず女中を呼んでお茶を入れさせたりして、カフェから持越しの惚気話のろけばなしを繰返すのでした。――三郎が彼を嫌い出したのは、その晩からです――その時、遠藤は、真赤に充血した脣くちびるをペロペロと嘗め廻しながら

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