はてなキーワード: 拡張現実とは
ますます市場競争が過酷さを増す中、少しでも有望な人材を獲得したいというのは企業の本音であろう。しかしながらいかにして将来有望な人物を見極めるのかについては、依然として難しい課題である。
企業側は採用試験としてユニークな課題を与えてみるなど工夫をこらしてはいるが、それでもわずかな時間でその内面までを見通すには限界があるいうのが実感ではないだろうか。
しかし、実は「有望でない人物」を高い精度で見抜くことができる非常に簡単な方法が存在するのである。今回紹介するこの方法はある実験から統計的に得られたものだが、内容が内容なだけに表立って公開することができず、このような場を借りて紹介することとなった。
それでは早速だが、 今回明らかになった「絶対に採用してはならない人物の見分け方」を紹介していきたい。
Ingress(イングレス)は、Googleの社内スタートアップ「ナイアンティックラボ」(Niantic Labs)が開発・運営する、スマートフォン向けの拡張現実技術を利用したオンラインゲーム・位置情報ゲームである(Wikipediaより)。
このゲームのプレイヤーは、EnlightenedとResistanceという2つのチームに分かれて競い合うことになる。2つのチームにはあるストーリーのもと性格付けがなされており、それぞれを一言で表すとすればEnlightenedは積極派であり、Resistanceは慎重派である。自分がどちらのチームに属するかはゲーム開始時に選択することができるのだが、ここでどちらを選択するかというのが実に良い心理テストになっているのである。
ますます変化が激しさを増す世の中では、常に先手を打って立ち回る戦略がより有利となる。本能的にそのような戦略を取りたがる人物は、反射的にEnlightenedを選択する。
一方で変化を恐れるあまり、他者より判断が遅れてしまいがちなユーザほどResistanceを選択しがちである。このような人物を採用していては、社内で慎重派の意見が大勢を占めるようになり、チャレンジできない社風に傾くばかりであろう。
IngressでResistanceを選んでいるものを採用してはならない。
自分に自信のある人物と、自信がない人物。仕事を頼む相手として選びたいのはどちらだろうか。もちろん前者である。
Enlightenedを選ぶ人物というのは、基本的に自信家である。何故ならば、積極的な攻めの心理は、自分は大丈夫であるという安心感、つまり自信があって初めて生まれるものだからである。
一方Resistanceを選ぶ人物は、比較的自信のない者が多い。未来に不安を感じ、現状より悪くなるように感じられる。だから現状を守らなければならない。そのためには正解することよりも間違わないことが大事である。そういった心理が無意識に慎重派であるResistanceを選択させるのである。こういった人物を採用すればするほど、会社はネガティブムードに支配されていくだろう。
IngressでResistanceを選んでいるものを採用してはならない。
世の中の人間は2種類に分けることができる。与える人間と、与えられる人間である。与える人間が増えれば世の中はより豊かになるし、与えられる人間が増えれば停滞、衰退へと向かう。
実は与える人間ほど、Enlightenedを選ぶ傾向がある。これは自分は満たされていると感じているものが、さらには他者を満たすことを喜びとするような人物ほど積極的な行動を起こすからであると考えられる。
Enlightenedを選択した者は献身的に社会や会社に尽くし、それによって社会はより豊かになるだろう。会社としてもこういった人物を採用するほど、真に世の中に必要とされる事業を産む文化が形成することができるだろう。世間から愛される企業となり、さらに成長は加速するだろう。
一方慎重派であるResistanceは、与えられる側である。自分のことに精一杯で、人に与えるまでの余裕はない。下手をすると奪われる、だからそうなる前に奪わなくてはならない。守りつつ、奪わなければ。どうすればいい?そんな心理が、慎重派であるResistanceを選択させる。
Resistance選択する社員は、とにかく自分の権利を主張し、少ない貢献で多くの給料を貰うことだけを考えるだろう。利益を最優先した仕事を行い、それが他者や社会にとってどんな役割を果たすかなど二の次である。こういった人物に支配された会社はやがて社会の癌と化し、数々の不幸を生み出し続けることになるだろう。
IngressでResistanceを選んでいるものを採用してはならない。
実際に皆さんの身の回りでEnlightenedを選択している人物と、Resistanceを選択している人物を比較してみよう。恐らく皆さんその結果に驚かれるのではないだろうか。社会的に成功しており、幸せそうな人物ほどEnlightenedを選択しており、卑屈でぱっとしない人物ほど、見事にResistanceを選択しているのである。
この傾向は、全国のポータル(ゲーム内で両チーム奪い合う、実在の場所にひもづいた目印のようなもの)の状況を見ても明らかである。
例えば都内の高級住宅街や幹線道路沿い、有料施設ではEnlightened優勢なことが多いが、都心から離れたベッドタウン、古びたアパートの隣にあるような公園や、名前も聞いたこともないような駅やその周辺はResistance優勢なことが多い。Enlightenedを選ぶ人物は十分な収入があり車で移動する機会も多いのに対し、Resistance選ぶ人物は低収入で常に長距離電車通勤、徒歩生活なのである。
有名大学周辺はEnlightened優勢だが、三流大学はどこも見事にResistance優勢である。大小問わず活気のある企業のビルはEnlightened優勢で、ぱっとしなかったり、ブラックと言われるような企業はこれまたResistance一色である。
積極戦略は勝ち組の選ぶ戦略であり、慎重戦略は負け組の戦略である。そして勝ち組の戦略を選ぶものが勝ち組となり、負け組の戦略を選ぶものが負け組となる。どちらのチーム選ぶか、たったそれだけのことがその人物の現在、そして未来を残酷なまでに正確に示しているのである。
皆さんの企業に今、そして将来必要なのは勝ち組だろうか、負け組だろうか。
IngressでResistanceを選んでいるものを採用してはならない。
グーグルグラスやスマートフォンによって現実世界での暮らしをより豊かにする流れがある。
ミンスキーがタブレットによる世界の拡張を予想したように、僕はVRによる世界の拡張を予想する。
現在はオキュラスリフトなどのデバイスによって没入できる世界が実現されている。
今はまだゲームで使われたり、映像を見たりすることに用途が限られているが、そう遠くない未来では、自己とアバターの区別がつかないようなVR空間が実現されると思う。
その世界では衣食住のみならず現実の世界では実現することができないの世界が実現できる。誰でもスーパーマンになれる。空間的、時間的な制限がなくなり、地球では実現できない新たな法則やアイディアが溢れる世界だ。
現在はVR空間で様々なことを実現しようとすると複数のデバイスを組み合わせる必要があるが、ムーアの法則的にもっと合理的に実現できるようになると考える。
倫理的な問題もあるが、『嫌なら見なければいい』というように、拡張現実で生活することを望まない人は現実世界で生きれば良い。拡張現実で生きる人が増えることにより、実質現実世界の人口が減るので資源問題も解消するだろう。新たな人口問題が生まれるかもしれないが。
トランセンデンス的な世界(肉体を持たず意識のみで生きる、人間をデジタル化する)が実現できればいいなぁ。
インターネットが拡張した概念と電子によって構成されたバーチャルと
ネットだって人間によって構成されたリアルだと言う人はいるかもしれない。
でも、あの時は違った。
バーチャルのケーブルの先に繋がった人間もまたバーチャルだった。
この感じを説明するのは難しい。
今のようにストリームが思考を運ばなかった時代。僕らのやりとする情報は、いつも痕跡だった。
物語の登場人物達が現実にいないことが当たり前なように、リアルとバーチャルは分断されてることが当たり前だった。
リアルな人間もいた。彼らは既成概念に縛れることを望みダサかった。
一部のダサい人間の愚行だと思っていたが、インターネットはそれを許さなかった。
ある時なんてあったのだろうか、気が付けばネットはリアルの拡張現実でしか無かった。
僕が幻滅した既成概念にとらわれたダサいリアル達に、インターネットの世界は埋め尽くされた。
それどころか、バーチャルの幻想で醜く拡張された醜悪な臭いをまき散らすリアルだらけになった。
そんな醜悪になったインターネットでも、常に対流しないと吐き気がするストリームの中にでも、バーチャル時代の名残はあった。
それを辿ると、あの時の幻想の残滓がみつかる。そして懐かしくなる。幻想はまだあるだと信じたくなる。
でも、そこれこそ幻想だった。別にアナルセックスだからじゃない。
かつて電子の妖精と呼ばれたそれは、タンブラーで尻画像を収集するマシンとなりながらも、幻想のアーカイブになると信じていた。
だが、違っていた。それは尻画像じゃなかった。画像にはうつらないケツの穴だった。
そのケツの穴はブラックホールのように僕らの幻想を飲み込んでいた。
それでもブラックホールは座標となるだろう。
東京都千代田区。
都心の一画。
ここに一軒のマンションがある。
ガチエージェント遠藤(仮名)の住宅である。
世界でも有数のガチエージェント。
彼らの仕事は決して世間に知らされるものではない。
早朝の丸の内を駆け抜ける遠藤の姿を発見した。
時折立ち止まってしてスマートフォンを操作する遠藤の姿に目を向ける人はいない。
Q、おはようございます。朝、早いですね?
「ええ。始発が動く前にファームを廻る必要がありますからね。
一日分のXMPバースターをどう集めるか。これが大切なんです」
日が昇る前、人々が行動する前から遠藤は動き始める。
手に持つペットボトルが、途中、3回変わった。
「俺なんかがエージェントやれてるのは、Enlightenedの皆さんの支えがあるからなんです。
支えられてばかりじゃなく、こうやって早朝のリチャージをやらないとね」
そう語る遠藤の目は何よりも真剣だ。
ガチエージェントに一切の妥協はない。
遠藤の誇りはそこにあるという。
Q、いつも、この道なんですか?
「いや、巡回の道はいつも変えています。
夜中に攻撃を受けているポータルもありますからね。
ほら、そこの郵便局のポータルはレゾネータがいくつか壊されていますよね」
ただ、ハックするだけではない。
ポータルの修復を忘れない遠藤の姿勢に、ガチ勢の気概を感じた。
「ファームを維持しないと始まりませんからね。大切なんですよ、これ」
遠藤は巡回を終え、カフェに向かう。
勝手知ったる動きで座席を確保する。
Q、朝食ですか?
「いやあ、やっぱりエージェントは体が資本ですからね。
でも、この窓際の席は3つのポータルがスキャナーに入るんですよ」
そう言って遠藤はスマートフォンを操作する。
ハックしながらサンドウィッチを食べる手付きは手慣れたものだ。
「この3つのポータルは入店前に2回ハックしていますからね。
バーンアウトしたので次のポータルに向かわないと」
素早く会計をし、店を出る遠藤。
その足で東京駅に向かう。
時刻はまだ6時22分だ。
「すみません、静かに」
「あちらを見てください。
あのサラリーマンが急に立ち止まってスマートフォンを取り出しました」
「彼はResistanceのエージェントなんですよ」
「こうやって実際にエージェントと遭遇できるのは拡張現実ゲームの醍醐味ですよね」
遠藤は以前はオンラインゲームに没頭していたが、
Ingressがリリースされてからはこれ一本だと言う。
Q、話しかけないのですか?
「そうですね。話しかけることもありますが……。
今日は彼が維持しているファームを攻撃する予定なのでやめておきます」
午前中にポータルを巡回した汗を流すために、遠藤は銭湯に向かう。
「この銭湯はポータルになっているんですよね。ここもリチャージしないと」
ただ、汗を流すだけではない。
熟練の技が、光る。
ファーム巡回も一区切りつき、遠藤の攻撃に同行することになった。
今日はJRで浜松町に移動し、増上寺まで敵ポータルを破壊をするそうだ。
「このあたりはResistanceのファームになっていますからね。
そう、朝に出会った彼の職場もこのあたりなんですよ」
昼休みも終わったこの時間帯に攻撃をしかけることが効率的だという。
「会議中のエージェントが多いですからね。リチャージもあまりこないんです」
「仕事は火曜日が休みなんですよ。平日の日中に動けるのは有利ですから」
浜松町から増上寺まで、水没していた地域に草原が広がっていた。
「iOSを使っているエージェントのために残していてもよかったのですが、
このあたりはResistanceのエージェントも多いので仕方無いんですよね」
遠藤のハングアウトに連絡が入ったようだ。
あと1本のレゾネータを刺すとレベル8になるポータルが静岡に2つあるという。
我々はさすがに静岡までは移動できないので、本日の取材は終えることにした。
Oculus Riftっていつから「拡張現実」になったんだ?
というのが近年来の結論なのだよね。ハイデッガーの世界・内・存在を引き合いに出すまでもなく、近年のAR技術の進歩はそのことをかくも見事に裏付けている。
君たちはこうビデオゲームを世界の中で、言い換えればファッションとして楽しんだりするであろう。だがしかし、人生というクソゲーを一皮剥こうとあがく代わりに、オブラートに被せるというかフィルターをかけるというか枠にハメこむ。
それがAR(拡張現実)の思想である。ほら人生も生活もゲーム感覚で楽しくできたらいいなみたいな?でも問題はそのゲームの質なんだよ。
うまく出来てないとすぐ飽きる。人生は長い。さてどうしたものか。これはね、世渡りのできるバカにしかできない芸当な訳w換言すればあいつらは世界を定義するのがうまい。
たとえば自分以外みんな敵って考え方は社会に非適応である、と論じ立てたところで当人の中ではきちんと折り目ただしくロジックが組み上がっているのね?
言うなれば、社会に参加してはいるけれども、よくよくみるとソイツは全く違うゲームをやっている。なんてこったい、まったく違う人生を生きてたのかお前。
それを我々は「強いゲーム」と呼び習わしている。強い完全性、弱い完全性。強い仮説、弱い仮説、強順序、弱順序、もごもご。
鏡の後ろ側に回ってみると何が見えるんだい?それを是非ともしりたいものだ。滑らかに現実社会と接合しているのにもかかわらず、その裏側では全く別のドラマが起きている。
講演一発目。
ソフトバンクモバイルの中山五輪男(いわお)さん。iPhoneの販推をやっている「シニアエヴァンジェリスト」だ。
現在、割合の25%超を占めているのが卸・小売業、次いで20%のメーカーである。
メーカーとしては製造現場にて指示書がペーパーレス化したり、営業のプレゼン媒体になったりしているとのこと。
一方、金融機関としては試験導入中の期間が複数あり、今年以降に爆発的に増える見込み。
スマートデバイスの契約数はますます右肩上がりに増えていく見込みである。
紙、デジタルサイネージ、薬の包装、音楽、映像からアプリを通じてwebに接続できる。
セカイカメラがARのひとつ。ドラゴンボールのスカウターみたいに、現実世界に外部から呼び出した情報を付加する。
http://tm.softbank.jp/business/white_cloud/videos/smartcatalog/
CA用の研修マニュアルは3冊2.1kgしていたものをiPadにすることで0.7kg(おそらくバッテリーは除く)にした。
この研修マニュアルは搭乗するたびに持ち込む性質のものらしく、軽量化はありがたい話。
また、電池の持ちがよく、ウイルスもゼロ件(ご存知Androidは質の悪いアプリにウイルスが潜んでいる)
浄水施設の点検をペーパーレス化、点検項目の漏れのチェック機能をつけている。
テクノツリー社という小さな会社が製造・流通のマニュアル作成に長けているとのこと。
(6)HOYA (SUNTECH)
感光式のサングラスで色の変化スピードを説明するときにビジュアライズすることで、営業説明と使用感のギャップが減ったらしい。
(口頭説明ではわかりにくく、事後的なクレームが多かった)
(7)AIU保険
東日本大震災の損害調査として米本社からiPadが送られ、SmartAttackというシステムを活用。
割愛
(9)BMW
iPad(280台)によって営業4-5日から1.5日減でクローズ
顧客とのコミュニケーションとして、車の外装・内装のシミュレーション、仮想の工場見学などを行える。
割愛
thinkpadを全部iPadにリプレース。営業のツールとしてアプリや映像を活用。(個人に営業トークに頼らず、営業フローを標準化したと言える。)
Microsoft ExchangeやOutlookは全部Google App (26000 ID)にする予定。BCPとして日本にサーバを置いてられない。
http://tm.softbank.jp/business/concierge/dm/
(14)iPhone 4S
「Siri」が特徴。業務システムに応用されるというのが講演者の予想。
twitter:@iwaonakayama
二発目。ヤマサのマーケティングの話。「(自称)超成熟マーケット」の醤油。
Facebookやtwitterなどあらゆる媒体を使って、消費者を包括的に網羅して360度にアプローチしようと試みていた。
消費者は中身を知りたがっているのであり、メーカーの中身を見せて、コミュニケーションをとれば、味方につけられるようだ。
三発目、DNPのC&I事業部(Communication & Information)メディア・コンテンツ本部の講演。
後段はB2Cにソーシャル・メディアを用いてアプローチするノウハウをDNPが持っているという話。
たしかにソーシャル・メディアによる販促は効果測定が難しい。そのノウハウを仮にDNPが持っているのならば素晴らしいことだ。
果たしてソーシャル・メディアはB2Bに使えるのか。会場から質問が出た。
回答はB2BでもB2Cと本質は同じであるという。しかし、それは本当であろうか。
たとえば、車のボンネットが新日鉄製であろうがJFE製であろうが消費者にとってはどっちでもいいんではないだろうか。
わからん。
最後に、宇野は「〈いま・ここ〉だけが無限に広がるこのリトル・ピープルの時代の新しい世界においては、私たちは〈いま・ここ〉に「潜る」こと、徹底して内在的であることが逆説的に超越に接近してしまう」と語るけど、このレトリックって、大澤真幸が麻原彰晃に対して指摘した、
徹底した俗物性、過剰なまでの〈内在性〉が、逆に、麻原の〈超越性〉の根拠になっているのではないか。(大澤真幸『虚構時代の果て』)
とまったく同じなのだけど、これは本人的には大丈夫なのかしら。
ttp://blog.livedoor.jp/toshihirock_n_roll/archives/51653048.html
たとえば『完全自殺マニュアル』の鶴見済氏やオウム真理教の麻原彰晃は、「革命」を失った今、世界を変えるのではなく自分を変えようとしたわけですよね。ドラッグや「修行」によって。麻原は鶴見さんほど徹底できなかったヘタレだから革命のでき損ないに走っちゃったわけです。しかし、彼らのやったことはまさに「内在」的なアプローチだったと思う。だって、世界変革を「諦めて」自分をチューニングするんだから。
でも、ぼくがこの本で書いた「拡張現実の時代」においては、先ほどのゲームの例が代表するようにネットワーク的なものに支援されて超越―内在といった図式自体が崩壊していて、徹底的に内在することが超越に近づくというモチーフが頻出する。「ここではない、どこか」ではなく「いま、ここ」に留まったままゲームのルールを書き換えるための想像力の行使に焦点を合わせているわけ。それはそのまま「虚構の時代」(鶴見・麻原)と「拡張現実の時代」の違いでもある。ここもポイントで、「外部」を断念するというとすぐに鶴見・麻原的なものを年長世代自体は想像しちゃうけれど、それは90年代で時間が止まっている思考ですね。21世紀的な現実は「徹底して内在することによる超越」が、自意識のチューニングではなく現実のコミュニケーションとして創作物の生成や社会変革の可能性の方向に向かっている。これがまさに「仮想現実から拡張現実へ」ということ。
いやいやいや。。。ちょっとウノさん、何言ってるんですか・・・・。「内在」っていうこれまで批評用語としては、「超越-内在」っていう二項対立の一項として使われてきた用語を、かなり強引に自分タームの「内在」(これってむしろ「組織のインサイダー=内在者」っていう意味に近いと思うんだけど)に引きつけて使ってて、不要に名前空間のコンフリクトを起こしてる気がする。まさに、
人文系の評論はすぐに一般名詞を専門用語化する傾向がある。しかも、その本だけでしか通用しない専門用語をすぐにつくっちゃうのだ。”壁_temp”とか、”想像力_temp”とかいう名前にしてくれればわかりやすいのだが、我慢して慣れてみよう。
っていう奴。今まで現代思想界にはCritique.naizaiっていう広く使われてる変数なり関数なりがあったのに、そこにまた紛らわしいUno.naizaiっていう変数なり関数なりを持ってきてて、そこでCritique.naizaiをUno.naizaiと間違えてコンパイルした人に、「お前はUnoパッケージをインポートしてないから俺の本が読めてない」って文句言うのはちょっと無理筋過ぎないか。
まあ、用語の問題を脇に置けば宇野常寛の言いたいことも分からなくはない。現代思想や社会理論がこれまで、超越(トップダウンの理想主義的な社会モデル)か、内在(個々人の内面=インナースペースからの改革)か、という二項対立に拘泥したきたのに対して、組織の内在者=インサイダーが、組織へのハッキング的なコミュニケーションによるアプローチをかけることによって、ゆるやかに社会を変えていきましょう、ってのが彼の言いたいことなんだろうなあ、と思う。だけどそこで、現代思想のこれまで数十年の歴史のある用語体系に土足で踏み込んで、「内在」なんていう一般名詞を無理やり自分タームで使うのは無理筋だし、これまでその用語体系を使ってきた人の名前空間を不必要に混乱させる振る舞いだと思う。せめて「内在者(インサイダー)的アプローチ」くらいの用語にしておいてくれれば分かりやすいのにねえ・・・
今日、ゼルダとパルテナ以外のプレイアブルソフトを一通り遊んで来た。
本体付属のARゲームとジャイロを使った顔シューティングゲームが面白かった。
拡張現実モノはいままでもPCやiphone等で色々触れてきたが、携帯機のコンパクトなサイズに一つのゲームとしてまとまると、結構な新鮮味を感じる事ができた。
IMAX3Dの映画を観るのなんかとは、比べものにならないくらい疲れる。
並行法とか交差法とか使う系の「浮き出る本」
アレを延々見ているような感覚だった。
結構疲れる割りに、3Dに慣れてしまうともうソレが当たり前な感じに思えて新鮮味はすぐに薄れた。
初めて2画面タッチペンゲームで遊んだ時の方が新鮮味は長続きしたような気がする。
まとめ
「メイドいんジャパン」からぶっこ抜いた構造(http://anond.hatelabo.jp/20100328131122#tb)に、この前映画館で見た、『誰かが私にキスをした』から連想したものをぶち込んだらこうなった。男一人で恋愛映画を見に行くのは正直キツかった。不自然なところをこれから直していっている途中なんだけど、無理がでてきた。出てきた無理を直していく作業に苦労している。「どんな言葉をぶちこむのが適当か」を判断するもの(思考ツール?)を用意しないまま思いつくままに言葉をぶち込んだのが敗因か。ぶち込まれる空欄(=以前に増田に貼り付けたもの(http://anond.hatelabo.jp/20100328131122#tb)のアルファベット)間の関連性をもっと意識すべきだった。というか、それさえ意識すれば何とかなるんじゃないだろうか。というか、それを意識して、いま思いついているものをぶち込みなおしたら、すんなり物語の形になるのではないだろうか? アルファベット間の関連性について今週の土曜日までに考えてみる。ぶちこみ直しの作業は土曜日に始めて土曜日に終わらせる。
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神酒薫(ミキ カオリ)が視点浮動者として存在する。高校二年生の女子。視点浮動者は、自分がどの視点から物事を見るか、どの記憶から物事をデコードするかを決められないでいる。
視点を決定すると、通常ならば、その視点向けのコマーシャル(=企業が配給する良質のドラマ)を見ることができるのだが、県から支給されたモバイルを使っている神酒薫は、コマーシャルを見ることができない。だから、視点を決定するインセンティブがない。
モバイルによる拡張現実は、学校での授業に必要になる。モバイルから発せられる電界が、それを身につけている者のコンタクトレンズや眼鏡に像を映す。神酒薫の父親は特別に教育に厳しい人なので、薫に個人向けのモバイルを買ってくれない。
神酒薫は他人からの視点を気にせずに生きることを求める。タイムラインに、他人が発言した自分の振るまいが蓄積されるので、自分の振るまいが正しいかどうかがひどく気になる。視点を決定している人たちは、自分の視界内の発言しか見る余裕がないので、他人の視点というものを気にしない。というか、視点を決定すると、カーソルの初期位置から一番近いのが返信欄になり、それから遠く離れたところに検索欄が移動するので、他人を検索すると言うことが少なくなる
神酒には、勉強ばかりしているというイメージが、他者のタイムラインの中では固定化されている。高校一年の学校祭の準備のとき、神酒はキキに励まされながら土砂降りの雨の中を自転車で木材を運んだ。それをきっかけに、ポジティブでアクティブな自分に変われそうな気がした。しかし、学校に戻ると、
「このときの神酒さんとイメージが変わった」
と、クラスメートに過去のタイムラインを見せられる。クラスメートは肯定的な意味合いでそれを言ったのだが、神酒はとても恥ずかしくなる。もう、自分のイメージからはずれた行動はしないようにしようと決めた。
視点を決定しなければならないという切迫感が存在する。
神酒薫は視点を決定しなければならないという切迫感を取り除くことを求める。
電子アシスタントが存在する。電子アシスタントはキキを含む。キキは、白いウォンバット。常に神酒の近くを付いてまわり、神酒を常に必要としてくれる。
電子アシスタントは、その所有者が設定したように、その所有者を誉めたり注意したりしてくれる。モバイルに勝手にソフトをインストールすることを父は怒るのではないかと神酒は思ったが、キキの機能を見て、彼はキキを気に入る。
キキを持っていることで、神酒薫は視点浮動者であることを隠す。電子デバイスに興味があるんだというフリができる。
津島修一は、神酒と同じ中学校・同じクラスだった男子。神酒薫にキキをくれたのは、津島修一だった。
津島は、男子からはハナコと呼ばれていた。というか、誰かに対して陰口で使っているハナコという呼び名を、津島に当てはめると、無矛盾なのだった。だから、津島=ハナコは憶測。
ハナコの良いところは顔だけ。ハナコは男なのに生理がある(精神が安定していない)。ハナコは……。
ハナコがハナコと呼ばれるようになったのは、ハナコが男子トイレの個室で泣きながら、ボールペンの先端を彼の腕にぶつぶつと刺していたから。
卒業式に、津島修一に呼び出される。呼び出されたその瞬間まで、会話をしたことは一度としてなかった。卒業式の日に、神酒薫を好きだと言って、その贈り物だとしてキキをくれた。津島修一が勝手に、神酒薫のモバイルにインストールしてしまったので、神酒薫はキキをアンインストールする方法を知らない。それに、日本語を喋る存在をアンインストールすることは、殺しと同じことに思えてしまい、できない。
「ヒメ! ヒメ!」と、キキは神酒の足にすり寄る。
「うざかったら、ワンス・ア・ウィークって言えば、彼はしばらく動きを止める。週に一回くらい、電子アシスタントですらうざくなるときがあるでしょう?」と、津島は言う。「今日の夜八時に、キキが指定する場所に来て」とも。
そのとき神酒は、「うん、行く」と答えてしまう。
神酒は、クラスの中核をなす声の大きい集団からはジミーズと呼ばれていた。仕返しに、神酒は心の中で、声の大きい集団を、彼らの化粧のけばけばしさを由来にケバブと呼んでいた。ジミーズはジミーズなりに地味な人同士で集まっていたので、ケバブが思っているように友達がいないわけではない。卒業式の帰り、仲の良かった友達とカラオケに行く。神酒の視界の中には、まだその存在になれられないキキがいた。キキは、友達に見えないようにしてあった。
カラオケからの帰り道、道の関係で一人になった。信号待ちをしていると、ラブホテルが横断歩道を隔てた向かいに建っている。
ラブホテルの裏道から、高校生のカップルが、自転車の二人乗りをしてでてくる。
ラブホテルの電光掲示が目に入る。
『まだまだ寒い夜 あつあつのラーメンを! プレミア価格5○○円(会員様)』
「ラーメンって、おいしい?」キキが訊いてくる。
「ワンス・ア・ウィーク」キキを黙らせる。
給食で食べたソフト麺のベチャベチャした味が、舌の上で思い出された。その味をかき消すために、津島からもらった連絡先のメモを、小さく、小さく畳んで、制服のスカートのポケットに入れた。ポケットに紙を入れたまま、洗濯機にスカートを入れ、スイッチを押した。
キキがしゃべり始めるたびに、「ワンス・ア・ウィーク」をした。そして約束の八時が過ぎ去るのを待った。
津島のタイムラインの卒業式前後のものを見ないようにしようと決めた。見ないために、神酒は視点浮動者になることを選んだのだ。
自分に自信を持てていない神酒薫は、彼からの告白を何かの悪いいたずらだと思い、津島修一とは連絡を取っていない。しかし、津島修一と神酒薫は同じ高校に通っているのだ。ときどき廊下ですれ違うと、気まずい。
ほかの人は、タイムライン上に友人との約束を記憶させる。神酒はキキに約束を覚えさせる。どちらも、モバイルを使って約束を管理しているので、他者は神酒がすでに視点を決定しているのだと勘違いしている。
神酒薫は、他人のタイムラインに自分がどう記録されているかを気にすることを取り除きたい。
電子アシスタントは他人のTL上の自分を気にすることを取り除く手段になるように見受けられる。神酒はキキに、神酒が他人のTLを気にしたらキキが神酒を注意するようにコマンドする。
神酒薫が他人のTL上の自分を気にすることを取り除くことは失敗する。キキの注意が煩わしくて、神酒はイヤフォンと眼鏡を外してしまう。ワンス・ワ・ウィークしなかったのは、キキに自分を注意するようにコマンドしたのに、注意を理由にキキを黙らせるのはかわいそうだと思ったから。
友人との会話:「モバイルを忘れたら、記憶が不確かになって約束の1日前に待ち合わせの場所にいることになって、困った」
イヤフォンも眼鏡もつけずに図書室に行く。
そこには、一人の女性がいる。上靴のいろは赤なので、一つ学年が上の三年生の先輩。神酒が一年生のころ、彼女は貸し出しカウンターの内側にいたことを神酒は覚えている。彼女のノートには、たくさんの三角形が書かれている。また、たくさんの三角形が書かれているページの反対のページには、三角関数表がセロハンテープで貼り付けられている。
図書室の端に行くと、先輩が突然、「私のアシスタントを動かさないで」と言う。神酒はあわてて、拡張現実を身につける。
キキがしきりに神酒の足下で、「ヒメあぶない! ヒメあぶない!」と言っていた。先輩のアシスタントは、天使の羽。神酒がぶつかった勢いで、空中を漂っていた。
五時間目の授業から、モバイルをオープンにしたままだったことを思い出す。(授業中はオーソリティが先生に移るため、電子アシスタントはオフになる。)
「痛い男が、彼女を呼ぶみたい」と先輩は言う。「彼氏からプレゼントされたの?」
神酒は、終わった、と思った。誰か男にキキをプレゼントされたとタイムライン上に記憶されたら、全てが終わってしまう、と神酒は思う。
神酒は先輩のタイムラインを展開しようとする。彼女が、伊庭瑠璃という名前の三年生であることが表示される。偶数組だから、文系クラスだとわかる。ローディングを示す輪がくるくるまわり続けるだけで、タイムラインが表示されない。
「私の知ってる男も、彼女をヒメって呼んでいて、痛々しい」と伊庭は言う。
「彼氏からもらったわけじゃなく!」と神酒。
「ヒメ! ヒメ!」とキキ。
「キキ! ワンス・ア・ウィーク(黙れ)!」
キキはぴたっと止まる。
「え」
「だって、ワンス・ア・ウィークって、シュウイチってことでしょ?」
「そうだったのか!」
キキをもらってから二年間、ずっと気づかなかった!
納得したことで、もう隠しようがないことに気づき、神酒は硬直する。
「いや、でも、気のせいかもしれない。津島修一なんて人が私の知り合いにいたかは、タイムラインを確認してみないとわからないな……」と、苦しいとりつくろいをする。
伊庭は、ふっと笑いを漏らす。
「そういえば、私の知り合いに津島なんていないかもしれない。私はタイムラインを持ってないから、確かめようがないや。名前なんて忘れちゃった」
「伊庭先輩は、視点浮動者なんですか?」
伊庭はうなずく。「私とあなたの間には、一年の学年の違いが横たわっている。だから、私は視点浮動者というよりも、視点を持たないものと言った方が正しいかもしれない。県が私に貸し出したモバイルは、タイムラインを見る機能を持たない」
「伊庭先輩の親も、個人用のモバイルを持つことに反対なんですか?」
「ううん。中学受験のために塾に通わされたときに、安全のためのモバイルは持たされた。私は親に反発して、モバイルを川に投げ捨て、塾にも行かなかった。それ以来、親は私にモバイルを与えようとしない。そして中学受験をしなかったから、私はいま、公立高校であるこの学校にいる」
図書館で話していても大丈夫か、すごく気になる。遠くで、溶けた雪がどさっと落ちる音が聞こえたから。それに、伊庭のアシスタントがあまりに寡黙だから。しかし、三月の土曜登校日の放課後なので、二人のほかに誰もいない。
「私は前の図書局局長だから、私がルールみたいなものだ。大丈夫」と伊庭は言う。「私と貴方の関係は、少し長いものになると思う。私が名前を忘れた誰かのせいで。貴方の呼び方を決めていい?」
先輩は手を振る。視界上に、私の情報を展開したのだと思う。
「神酒さんって呼ぶのは、距離が遠くて好かないな」
「呼び捨てで、いいですよ」
「呼び捨てと、さん付けの間をとって、ミキクンっていうのはどうかな」言った伊庭先輩が、ひとりで笑う。「変だな」
「慣れれば、慣れますよ」
伊庭先輩は、ミキクン、と十回繰り返した。「やっぱり、変だよ」自分が言い出したのに、くすくすと笑っていた。
「土曜登校日の放課後に図書館でなにをしてたんですか?」と神酒。
「私の彼氏ーー名前は忘れちゃったーーは、一つ下の学年にいるんだけどーーつまりミキクンとおなじ学年なんだけどーーその、名前を忘れちゃった彼氏は、精神的に不安定なところがある。だから図書館にいる」
「彼氏さんとの関係に、疲れてしまったの?」と神酒。
「ううん。疲れていないから、ここにいる。臨戦待機中」
「それと、その三角形とどういう関係が?」
「ただ待っているだけだと、頭が暇になる。かといって、彼から連絡があったときに何かに没頭していると、すぐには動けない。だから、私と私のアシスタントと彼のアシスタントを三角形の頂点に見立てて、彼のアシスタントと私との間の距離を求めていた。彼のアシスタントは、彼の近くにいるから。彼を意識しながら、頭に作業をさせることができるから。そして彼が「死にたい」って言ったら、すぐにでも私は駆け出す。死にたい気分を、逸らしに行く」
「死にたい気分って、そんなに簡単にそらせられるものなんですか」
「なんたって私は、彼より一年年上のお姉さんだから」
「どうやって?」
「その」伊庭は、一瞬迷う。「一緒にラーメン食べに行こう、とか」
「へ!?」
「え……」
「……」
「……」
給食のソフト麺のべちゃべちゃした味を神酒は舌の上で思い出す。二人の間にすごく微妙な空気が流れる。訊いたことを、神酒はすごく後悔する。
伊庭先輩は、タイムラインを持たないので、神酒は、自分がタイムライン上でどういうキャラクターであるかを気にせずに、勇気を持った行動をできる。津島と伊庭先輩を引き離そうと決める。伊庭先輩のために。
「伊庭先輩が津島くんを支えようとすることは、よいことだとは思わない。きっと、彼の負の力に引きずられてしまう。彼の行動をタイムラインに記憶してる友達を、何人か紹介するよ。それを見たら、伊庭先輩はきっと津島くんから離れようと決心してくれる」
「私はタイムラインを持たないから、複数の他者の発言を根拠に、いますでに読みとっている彼からの愛の意味を変更することはできない。それに、彼の愛から読みとった意味は、私の内部にある。タイムライン上の外部化された記憶のように、消しされるものではない。そして私は、私がもう津島を助けられないという言葉を私のタイムライン上に蓄積することができないので、津島を助け続けなければならない」
デスクトップから書き込んだタイムラインはないかと、伊庭瑠璃の名前で検索する。伊庭瑠璃から見える津島を知りたかった。しかし、伊庭瑠璃はデスクトップ上のタイムラインも所有していない。
検索ワード「図書局局長」でサーチをかける。彼女についての噂を書いているタイムラインが、いくつかある。図書室だより、生徒会だより、男性からの、そして女性からの、あこがれのまなざし。「どうしてハナコが、図書局局長と付き合っているんだ」という、いらだちの声。図書局局長は、自分の身を削って他者に尽くす、素晴らしい人間だということになっている。「八方美人だ」と言って、彼女を攻撃する人間にすらも。
視点浮動者である神酒薫は、津島修一のタイムラインを見ることができる。見ないと決めたものを見ていることに、罪悪感がある。しかし、彼女が見ないと決めたものは卒業式前後の記憶だったので、決めたことをやぶっていることにはならないのだ(と、神酒は自分をだます)。
津島修一は精神が不安定なので、膨大な数の書き込みがタイムライン上に堆積している。津島修一は過度に記憶を外部化している。それを読む限りでは、津島修一は伊庭瑠璃からの自立を求めているらしい。伊庭に依存してばかりいる自分の弱々しさを嫌っているらしい。
津島はタイムライン上で、他人の反応を待ち続ける。しかし、他人がこない。反応がくるまで、じっとうずくまる。しかし、どれだけ待ってもこない。死にたい気分になる。その気持ちを消したいがために、他人の反応を待ち続ける……。他人の気持ちを引くために、自虐を繰り返す。そして、自傷をする。アップロードされた自傷画像には、ハナコがそうしていたのと同じ、ボールペンを腕に突き刺したものもあった。傷が治癒していく経時変化もアップロードされている。「そういうことをやめろ」という声が、彼には心地よい。しかし、心地よいのだが、しかられたダメージはしっかりと受けている。スパイラルは、次第に破滅的な方向へと落ちていく……。
津島の頭の中では、津島のタイムライン上に書き込まれた、伊庭瑠璃からの「愛してる」がリフレインしている。だから、伊庭瑠璃から離れることができずにいる。「愛してるから、なんでもできる」と伊庭瑠璃が過去において言ったことを口実に、津島は伊庭に依存している。いや、その言葉を自分に言い聞かせることで、伊庭が自分をいやしてくれるという現実から、抜け出さなくてもいいのだと自分をだましている……。
伊庭の都合の良さは、まるで電子アシスタントみたいだ。そして電子アシスタント的な伊庭に依存している津島の生き方は、独りよがりで弱々しくて、気持ち悪い、と神酒は思う。
「伊庭が記憶を外部化していないことを理由に、津島の記憶の外部化をやめさせられるのでは。ペアルック的な感覚で」と神酒は思う。
津島の神酒との思い出が存在する。神酒は津島のタイムラインを遡行していると、自分のことについては外部化されていないことに気づく。
廊下の端。普段なら、カップルがそこにいるような場所。そこで神酒と伊庭は待ち合わせる。
伊庭は、天使の羽を背中につけて待っている。それは、伊庭の茶目っ気でもある。伊庭のねらい通り、それをしている伊庭を神酒はかわいいと思う。伊庭のアシスタントが天使ではなく天使の羽なのは、伊庭は天使ではなく天使になることを求めているから。
人が少ない場所。伊庭はタイムラインを、モバイルではなくデスクトップ上でしか見られない。伊庭と神酒の二人で津島について話をするため、電界通信をオープンにして、伊庭と神酒は手をつなぐ。二人の拡張現実が共有される。
「伊庭の都合の良さは、まるで電子アシスタントみたいだ。そして電子アシスタント的な伊庭に依存している津島の生き方は、独りよがりで弱々しくて、気持ち悪い」と神酒は言う。伊庭は表情変えずに、「そうね」と言った。
「伊庭が記憶を外部化していないことは津島修一が津島の記憶の外部化を取り除く手段に、きっとなるよ」と、神酒は伊庭に言う。「だって、たとえば、私に告白したことを津島くんはタイムラインに載せていない。全ての記憶をタイムラインにゆだねているわけではない」
津島が、二人のいる廊下の端に現れる。三角測量で、伊庭の位置を知っていたのだ。文系の伊庭が三角測量で津島の居場所を求めていたのは津島の影響をうけていたからだったのだ。
津島が現れたとき、伊庭はびくりとして、手を引く。
「大丈夫だよ」
神酒は伊庭の手を押さえる。
知らない、大人の女性の声が聞こえる。
「他者のために尽くす貴方は素晴らしいわ……」
声のするほうを見ると、伊庭のアシスタントがいた。
伊庭は、彼女の電子アシスタントの声を聞かせたくなかった。だから、彼女の電界をクローズドにしたかった。しかし、神酒が手を押さえたために、それができなかったのだ。
津島の三角測量は、伊庭のとは比べものにならないほど優れている。伊庭が緊張のためにかすかに肩を膨らませると、津島の三角測量の、小数点以下の数字の変動としてインディケートされる。
「君たちは、僕について語っているのだろう?」と津島。「君たちは、悪である僕について語る。そうして、善であることを偽装したいんだ。そうだろう? 二人で語るだけで、実際には善の振る舞いをしないにも関わらず。僕は来てやったよ。善をなし得ない、君たちふたりの為に。どうだ、潔いだろう」
(ここから)
津島が、タイムラインに載せていない記憶を持っていることは、津島がタイムラインに依存していることを取り除き得ない。高校時代における津島の精神の脆弱さのきっかけは、ほかならぬ、神酒による津島の拒絶だったのだ。津島がタイムラインに依存しているのは、タイムラインに載せることのできない記憶が存在しているからこそなのだった。神酒が津島を振ったトラウマは伊庭瑠璃が津島修一からの自由を得ることを阻む。
時間の一回性(=神酒が津島との約束をやぶったこと)は、神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除くことを阻む。
神酒は、津島を振ったことを謝ろうとする。
津島は、神酒がどれだけひどいことをしたかを伊庭に語る。タイムラインを持たない伊庭は、津島視点の神酒の行為を、疑わずに信じてしまう。
「貴方は、津島にそんなひどいことをしたの? 見損なう」と、伊庭は神酒に言う。
「まって。津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」と神酒は言う。
「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言は神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除くことを助ける。
神酒薫は時間の一回性を取り除くことを求める。
「愛してる」ではどうにもならないことが存在する。
「愛してる」ではどうにもならないことは神酒薫が時間の一回性を取り除くことの手段となる。
「おまえの視点は確定的じゃなかったのか」と、津島は神酒に対して言う。
天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除くことを求める。
「おまえの視点は確定的じゃなかったのか」は天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除く手段となる
天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除くことは成功する。
「私のアシスタントの声を聞かれて恥ずかしい」と伊庭は言う。
「アシスタントに誉めてもらうなんて、みんなやってること。恥ずかしくないよ」と神酒。
「恥ずかしいよ! 恥ずかしくて、弱々しくて、気持ち悪い! アシスタントに頼っていないと自分を保てないなんて、一人の独立した人間として恥ずかしい! しかも、そんな恥ずかしい生き方は、私のアシスタントが求める生き方じゃない!」
電子アシスタントは、神酒薫が時間の一回性を取り除く手段になる。
電子アシスタントに含まれるキキは、天使の翼が電子アシスタントを取り除く手段になる。
伊庭瑠璃は、「神酒薫が他人からの視点を気にせずに生きることを得たこと」を求める。(どこかで神酒が、他人からの視点をとても気にして生きている描写が必要になる。そしてそれを伊庭が見たという描写も。)
「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言は、伊庭瑠璃が「神酒薫が他人からの視点を気にせずに生きることを得たこと」を得ることを阻む。
元ネタ : http://sl.magsl.net/notice/9254
3月 31st, 2015 | Author: Inu Link
日頃より MagSC のセカイカメラサービスをご利用いただきましてまことにありがとうございます。
本日は大切なお知らせがございます。
株式会社マグスクは、平成27年4月1日より、セカイカメラ事業を大幅に縮小いたします。弊社に期待して応援してくださった多くのお客様、セカイカメラユーザーの皆様のご期待に添えない結果になりましたことをここに深くお詫びし、今後についてご説明させていただきます。
(中略)
株式会社マグスクは、企業存続に関して問題があるわけではございません。その点におきましてはご安心ください。今後もセカイカメラにこだわることなくARコンサルティング事業を継続し、またいずれ取り組むべき拡張現実プラットフォームと出会うことがあれば挑戦したいと考えております。
この度はご利用いただいているみなさまに大変ご迷惑をおかけいたしますことを重ねてお詫びいたします。
株式会社マグスク 代表取締役社長 瀬海果美 (Inu Link)
以下は、私個人の思いをつづったものであり、蛇足ですが、ご興味がありましたらご一読いただければ幸いです。
マグスクは平成22年11月より株式会社エアサービスの事業部として始まりました。当時、セカイカメラに大きな将来性を感じ、来るAR時代への橋渡しとなるであろうと考えて取り組みました。その年の年末、セカイカメラが日経新聞の1面に大きく取り上げられたことにより、コスタリカに続き日本でもセカイカメラブームとなりました。その後、株式会社エアサービスより事業を移管することで平成22年6月に株式会社マグスクは誕生いたしました。
当時はまだ、一般の方々が拡張現実(AR)を処理できるモバイル端末をもっているケースは非常に少なく、セカイカメラを利用しようと考えてもなかなか難しい状況でした。にもかかわらず多くのマスメディアがセカイカメラを特集し、見たことのないセカイカメラを想像することによって記事が企画され、先入観を元に取材され、それを元にお金が儲かる次世代プラットフォームとして歪められた情報となって世に広まりました。
私も多くの取材を受けましたが、こちらが一通りの正しい情報を伝えても、それが番組や記事になるときには、取材の内容からお金が儲かる部分だけが抜粋されていました。たしかにセカイカメラの中にはいろいろなビジネスのチャンスがありました。同時にビジネスとは無関係のもっと楽しい部分もたくさんありました。
テレビや雑誌の記事を見られた多くの方々が、しかも100万人をゆうに超える人々が、セカイカメラにビジネスチャンスを求めて参加されました。しかし、おそらく9割の方のケータイがARに対応していなかったために、まともに起動する事すら出来なかったと思います。それほどセカイカメラブームは当時には早すぎるものでした。
私たち、ブーム以前のセカイカメラ企業は5年先の時代を見据えていました。販売されるすべてのケータイがARに対応し、ゲームや広告、ナビゲーションがARになる時代です。そのときセカイカメラのようなサービスは当たり前のものとして利用されるであろうと考えていました。また、多くの同様のサービスのなかで、セカイカメラは恐ろしく秀でていました。
単なるARサービスとは異なり、非常に自由度が高く、ARオブジェクト(エアオブジェクト)の作成ツールを備え、UGC(ユーザジェネレイテッドコンテンツ)のプラットフォームであり、巨大なクラウドサービスであり、全世界のユーザ同士で利用できる手数料なしのマイクロ決済機能をもち、誰もがコンテンツビジネスに参加することができました。有料のをエアサーバを契約することで、独自ARサービスを作ったときと同様にサービスを提供したり、ゲームを公開したり、エア広告を提示することができました。そしてそれをカメラを通してリアルタイムにARを体験しながら共有することができました。
セカイカメラにログインできた10万人ほどの日本人は、上記のような本当のセカイカメラを楽しむことが出来たと思います。そしてこれからも楽しむことが出来ると思います。多くの友達と毎晩エアシャウトやエアポケットを楽しみ、共同でいろいろなエアタグを投稿したり、エアショットでそれと一緒に撮影したり、ARイベントを楽しんだり、エアカンバンでから新しいお店を開拓したり、家で家事をしながらエアペットと戯れたり。普段の生活の中ではまったくできない、新しい体験がセカイカメラの中にはあり、誰もが自分のアイデア次第で新しいことを発明することができ、世界中の人と楽しみを共有できます。
しかしながら、多くの日本人はそれを知りません。忙しい人は、セカイカメラをそこまで知るほど利用しません。セカイカメラの奥の深さは他社を突き放すすばらしい点でもあり、同時に理解しがたいという弱点でもあります。その結果、残念ながら世の中は理解せぬまま批判的な見方をする人が多数となってしまいました。インターネットにはセカイカメラはもう終わったという記事があふれています。それを書いた人はろくにセカイカメラを見てもいないのに。
今後のセカイカメラは、世界レベルではコスタリカの好景気に押され、個人ユーザはまだまだ増えていくことと思われます。また、日本でも徐々にその楽しさが知られ、ユーザーを獲得してゆくと思います。エアタグ市場はセカイカメラに限らず、世界的に盛り上がっていくことは疑いなく、今後も発展するでしょう。セカイカメラを運営する頓智ドットはすでに黒字化しており、多くのARサービスのように存亡の危機にあるわけでもなく、皆様が利用する限り続くと思われます。
私がセカイカメラからの撤退を決心したのは、セカイカメラの発展を疑うからではありません。私とセカイカメラの方針の齟齬が埋められなくなったためです。当初、セカイカメラはオープンソースを標榜し、我々ユーザーの権利を守り、コミュニティとのエコシステムを構築してゆくことを方針としていました。そして私たちビジネスユーザーはその方針のもとでセカイカメラの支援を始めました。しかし、今はすでに頓智ドットに創設者たちは居らず、方針は大きく変わりつつあります。マグスクのビジネスはいまや日本の同業他社ではなく、運営元である頓智ドット自体と競合しており、日に日に協力しあうことが難しくなっています。
これはマグスクにとっては残念なことですが、セカイカメラ全体にとっては、より安全で管理された世界をつくる上で必要な変化なのかもしれません。答えは今すぐにはでませんが、現在の状況から考えるとマグスクのような事業形態では長期的に取り組むプラットフォームではないと判断した次第です。
今回、MagSC はゆるやかながらも撤退という道を選びますが、引き続きセカイカメラの行く末をみながら Inu Link個人はセカイカメラを1ユーザとして楽しむつもりです。
「メイドいんジャパン」からぶっこ抜いた構造に、この前映画館で見た、「誰かが私にキスをした」から連想したものをぶち込んだらこうなった。不自然なところをこれから直していっている途中なんだけど、無理がでてきた。
神酒薫(ミキ カオリ)が視点浮動者として存在する。高校二年生の女子。視点浮動者は、自分がどの視点から物事を見るか、どの記憶から物事をデコードするかを決められないでいる。
視点を決定すると、通常ならば、その視点向けのコマーシャル(=企業が配給する良質のドラマ)を見ることができるのだが、県から支給されたモバイルを使っている神酒薫は、コマーシャルを見ることができない。だから、視点を決定するインセンティブがない。
モバイルによる拡張現実は、学校での授業に必要になる。モバイルから発せられる電界が、それを身につけている者のコンタクトレンズや眼鏡に像を映す。神酒薫の父親は特別に教育に厳しい人なので、薫に個人向けのモバイルを買ってくれない。
神酒薫は他人からの視点を気にせずに生きることを求める。タイムラインに、他人が発言した自分の振るまいが蓄積されるので、自分の振るまいが正しいかどうかがひどく気になる。視点を決定している人たちは、自分の視界内の発言しか見る余裕がないので、他人の視点というものを気にしない。というか、視点を決定すると、カーソルの初期位置から一番近いのが返信欄になり、それから遠く離れたところに検索欄が移動するので、他人を検索すると言うことが少なくなる
神酒には、勉強ばかりしているというイメージが、他者のタイムラインの中では固定化されている。高校一年の学校祭の準備のとき、神酒はキキに励まされながら土砂降りの雨の中を自転車で木材を運んだ。それをきっかけに、ポジティブでアクティブな自分に変われそうな気がした。しかし、学校に戻ると、
「このときの神酒さんとイメージが変わった」
と、クラスメートに過去のタイムラインを見せられる。クラスメートは肯定的な意味合いでそれを言ったのだが、神酒はとても恥ずかしくなる。もう、自分のイメージからはずれた行動はしないようにしようと決めた。
視点を決定しなければならないという切迫感が存在する。
神酒薫は視点を決定しなければならないという切迫感を取り除くことを求める。
電子アシスタントが存在する。電子アシスタントはキキを含む。キキは、白いウォンバット。常に神酒の近くを付いてまわり、神酒を常に必要としてくれる。
電子アシスタントは、その所有者が設定したように、その所有者を誉めたり注意したりしてくれる。モバイルに勝手にソフトをインストールすることを父は怒るのではないかと神酒は思ったが、キキの機能を見て、彼はキキを気に入る。
キキを持っていることで、神酒薫は視点浮動者であることを隠す。電子デバイスに興味があるんだというフリができる。
津島修一は、神酒と同じ中学校・同じクラスだった男子。神酒薫にキキをくれたのは、津島修一だった。
津島は、男子からはハナコと呼ばれていた。というか、誰かに対して陰口で使っているハナコという呼び名を、津島に当てはめると、無矛盾なのだった。だから、津島=ハナコは憶測。
ハナコの良いところは顔だけ。ハナコは男なのに生理がある(精神が安定していない)。ハナコは……。
ハナコがハナコと呼ばれるようになったのは、ハナコが男子トイレの個室で泣きながら、ボールペンの先端を彼の腕にぶつぶつと刺していたから。
卒業式に、津島修一に呼び出される。呼び出されたその瞬間まで、会話をしたことは一度としてなかった。卒業式の日に、神酒薫を好きだと言って、その贈り物だとしてキキをくれた。津島修一が勝手に、神酒薫のモバイルにインストールしてしまったので、神酒薫はキキをアンインストールする方法を知らない。それに、日本語を喋る存在をアンインストールすることは、殺しと同じことに思えてしまい、できない。
「ヒメ! ヒメ!」と、キキは神酒の足にすり寄る。
「うざかったら、ワンス・ア・ウィークって言えば、彼はしばらく動きを止める。週に一回くらい、電子アシスタントですらうざくなるときがあるでしょう?」と、津島は言う。
神酒は、クラスの中核をなす声の大きい集団からはジミーズと呼ばれていた。仕返しに、神酒は心の中で、声の大きい集団を、彼らの化粧のけばけばしさを由来にケバブと呼んでいた。ジミーズはジミーズなりに地味な人同士で集まっていたので、ケバブが思っているように友達がいないわけではない。卒業式の帰り、仲の良かった友達とカラオケに行く。神酒の視界の中には、まだその存在になれられないキキがいた。キキは、友達に見えないようにしてあった。
カラオケからの帰り道、道の関係で一人になった。信号待ちをしていると、ラブホテルが横断歩道を隔てた向かいに建っている。
ラブホテルの裏道から、高校生のカップルが、自転車の二人乗りをしてでてくる。
ラブホテルの電光掲示が目に入る。
『まだまだ寒い夜 あつあつのラーメンを! プレミア価格5○○円(会員様)』
「ラーメンって、おいしい?」キキが訊いてくる。
「ワンス・ア・ウィーク」キキを黙らせる。
給食で食べたソフト麺のベチャベチャした味が、舌の上で思い出された。その味をかき消すために、津島からもらった連絡先のメモを、小さく、小さく畳んで、制服のスカートのポケットに入れた。ポケットに紙を入れたまま、洗濯機にスカートを入れ、スイッチを押した。
津島のタイムラインの卒業式前後のものを見ないようにしようと決めた。見ないために、神酒は視点浮動者になることを選んだのだ。
自分に自信を持てていない神酒薫は、彼からの告白を何かの悪いいたずらだと思い、津島修一とは連絡を取っていない。しかし、津島修一と神酒薫は同じ高校に通っているのだ。ときどき廊下ですれ違うと、気まずい。
ほかの人は、タイムライン上に友人との約束を記憶させる。神酒はキキに約束を覚えさせる。どちらも、モバイルを使って約束を管理しているので、他者は神酒がすでに視点を決定しているのだと勘違いしている。
神酒薫は、他人のタイムラインに自分がどう記録されているかを気にすることを取り除きたい。
電子アシスタントは他人のTL上の自分を気にすることを取り除く手段になるように見受けられる。神酒はキキに、神酒が他人のTLを気にしたらキキが神酒を注意するようにコマンドする。
神酒薫が他人のTL上の自分を気にすることを取り除くことは失敗する。キキの注意が煩わしくて、神酒はイヤフォンと眼鏡を外してしまう。ワンス・ワ・ウィークしなかったのは、キキに自分を注意するようにコマンドしたのに、注意を理由にキキを黙らせるのはかわいそうだと思ったから。
友人との会話:「モバイルを忘れたら、記憶が不確かになって約束の1日前に待ち合わせの場所にいることになって、困った」
イヤフォンも眼鏡もつけずに図書室に行く。
そこには、一人の女性がいる。上靴のいろは赤なので、一つ学年が上の三年生の先輩。神酒が一年生のころ、彼女は貸し出しカウンターの内側にいたことを神酒は覚えている。彼女のノートには、たくさんの三角形が書かれている。また、たくさんの三角形が書かれているページの反対のページには、三角関数表がセロハンテープで貼り付けられている。
図書室の端に行くと、先輩が突然、「私のアシスタントを動かさないで」と言う。神酒はあわてて、拡張現実を身につける。
キキがしきりに神酒の足下で、「ヒメあぶない! ヒメあぶない!」と言っていた。先輩のアシスタントは、天使の羽。神酒がぶつかった勢いで、空中を漂っていた。
五時間目の授業から、モバイルをオープンにしたままだったことを思い出す。(授業中はオーソリティが先生に移るため、電子アシスタントはオフになる。)
「痛い男が、彼女を呼ぶみたい」と先輩は言う。「彼氏からプレゼントされたの?」
神酒は、終わった、と思った。誰か男にキキをプレゼントされたとタイムライン上に記憶されたら、全てが終わってしまう、と神酒は思う。
神酒は先輩のタイムラインを展開しようとする。彼女が、伊庭瑠璃という名前の三年生であることが表示される。偶数組だから、文系クラスだとわかる。ローディングを示す輪がくるくるまわり続けるだけで、タイムラインが表示されない。
「私の知ってる男も、彼女をヒメって呼んでいて、痛々しい」と伊庭は言う。
「彼氏からもらったわけじゃなく!」と神酒。
「ヒメ! ヒメ!」とキキ。
「キキ! ワンス・ア・ウィーク(黙れ)!」
キキはぴたっと止まる。
「え」
「だって、ワンス・ア・ウィークって、シュウイチってことでしょ?」
「そうだったのか!」
キキをもらってから二年間、ずっと気づかなかった!
納得したことで、もう隠しようがないことに気づき、神酒は硬直する。
「いや、でも、気のせいかもしれない。津島修一なんて人が私の知り合いにいたかは、タイムラインを確認してみないとわからないな……」と、苦しいとりつくろいをする。
伊庭は、ふっと笑いを漏らす。
「そういえば、私の知り合いに津島なんていないかもしれない。私はタイムラインを持ってないから、確かめようがないや。名前なんて忘れちゃった」
「伊庭先輩は、視点浮動者なんですか?」
伊庭はうなずく。「私とあなたの間には、一年の学年の違いが横たわっている。だから、私は視点浮動者というよりも、視点を持たないものと言った方が正しいかもしれない。県が私に貸し出したモバイルは、タイムラインを見る機能を持たない」
「伊庭先輩の親も、個人用のモバイルを持つことに反対なんですか?」
「ううん。中学受験のために塾に通わされたときに、安全のためのモバイルは持たされた。私は親に反発して、モバイルを川に投げ捨て、塾にも行かなかった。それ以来、親は私にモバイルを与えようとしない。そして中学受験をしなかったから、私はいま、公立高校であるこの学校にいる」
図書館で話していても大丈夫か、すごく気になる。しかし、三月の土曜登校日の放課後なので、二人のほかに誰もいない。
「私は前の図書局局長だから、私がルールみたいなものだ。大丈夫」と伊庭は言う。「私と貴方の関係は、少し長いものになると思う。私が名前を忘れた誰かのせいで。貴方の呼び方を決めていい?」
先輩は手を振る。視界上に、私の情報を展開したのだと思う。
「神酒さんって呼ぶのは、距離が遠くて好かないな」
「呼び捨てで、いいですよ」
「呼び捨てと、さん付けの間をとって、ミキクンっていうのはどうかな」言った伊庭先輩が、ひとりで笑う。「変だな」
「慣れれば、慣れますよ」
伊庭先輩は、ミキクン、と十回繰り返した。「やっぱり、変だよ」自分が言い出したのに、くすくすと笑っていた。
「土曜登校日の放課後に図書館でなにをしてたんですか?」と神酒。
「私の彼氏ーー名前は忘れちゃったーーは、一つ下の学年にいるんだけどーーつまりミキクンとおなじ学年なんだけどーーその、名前を忘れちゃった彼氏は、精神的に不安定なところがある。だから図書館にいる」
「彼氏さんとの関係に、疲れてしまったの?」と神酒。
「ううん。疲れていないから、ここにいる。臨戦待機中」
「それと、その三角形とどういう関係が?」
「ただ待っているだけだと、頭が暇になる。かといって、彼から連絡があったときに何かに没頭していると、すぐには動けない。だから、私と私のアシスタントと彼のアシスタントを三角形の頂点に見立てて、彼のアシスタントと私との間の距離を求めていた。彼のアシスタントは、彼の近くにいるから。彼を意識しながら、頭に作業をさせることができるから。そして彼が「死にたい」って言ったら、すぐにでも私は駆け出す。死にたい気分を、逸らしに行く」
「死にたい気分って、そんなに簡単にそらせられるものなんですか」
「なんたって私は、彼より一年年上のお姉さんだから」
「どうやって?」
「その」伊庭は、一瞬迷う。「一緒にラーメン食べに行こう、とか」
「へ!?」
「え……」
「……」
「……」
給食のソフト麺のべちゃべちゃした味を神酒は舌の上で思い出す。二人の間にすごく微妙な空気が流れる。訊いたことを、神酒はすごく後悔する。
伊庭先輩は、タイムラインを持たないので、神酒は、自分がタイムライン上でどういうキャラクターであるかを気にせずに、勇気を持った行動をできる。津島と伊庭先輩を引き離そうと決める。伊庭先輩のために。
「伊庭先輩が津島くんを支えようとすることは、よいことだとは思わない。きっと、彼の負の力に引きずられてしまう。彼の行動をタイムラインに記憶してる友達を、何人か紹介するよ。それを見たら、伊庭先輩はきっと津島くんから離れようと決心してくれる」
「私はタイムラインを持たないから、複数の他者の発言を根拠に、いますでに読みとっている彼からの愛の意味を変更することはできない。それに、彼の愛から読みとった意味は、私の内部にある。タイムライン上の外部化された記憶のように、消しされるものではない。そして私は、私がもう津島を助けられないという言葉を私のタイムライン上に蓄積することができないので、津島を助け続けなければならない」
視点浮動者である神酒薫は、津島修一のタイムラインを見ることができる。見ないと決めたものを見ていることに、罪悪感がある。しかし、彼女が見ないと決めたものは卒業式前後の記憶だったので、決めたことをやぶっていることにはならないのだ(と、神酒は自分をだます)。
津島修一は精神が不安定なので、膨大な数の書き込みがタイムライン上に堆積している。津島修一は過度に記憶を外部化している。それを読む限りでは、津島修一は伊庭瑠璃からの自立を求めているらしい。伊庭に依存してばかりいる自分の弱々しさを嫌っているらしい。
津島の頭の中では、津島のタイムライン上に書き込まれた、伊庭瑠璃からの「愛してる」がリフレインしている。だから、伊庭瑠璃から離れることができずにいる。「愛してるから、なんでもできる」と伊庭瑠璃が過去において言ったことを口実に、津島は伊庭に依存している。
「伊庭が記憶を外部化していないことを理由に、津島の記憶の外部化をやめさせられるのでは。ペアルック的な感覚で」と神酒は思う。
津島の神酒との思い出が存在する。神酒は津島のタイムラインを遡行していると、自分のことについては外部化されていないことに気づく。
廊下の端。普段なら、カップルがそこにいるような場所。人が少ない場所。伊庭はタイムラインを、モバイルではなくデスクトップ上でしか見られない。伊庭と神酒の二人で津島について話をするため、電界通信をオープンにして、伊庭と神酒は手をつなぐ。二人の拡張現実が共有される。
「伊庭が記憶を外部化していないことは津島修一が津島の記憶の外部化を取り除く手段に、きっとなるよ」と、神酒は伊庭に言う。「だって、たとえば、私に告白したことを津島くんはタイムラインに載せていない。全ての記憶をタイムラインにゆだねているわけではない」
津島の神酒との思い出が存在することがきっかけとなり、津島が忘れられない「弱点」が存在する。
津島が忘れられない「弱点」が存在することがきっかけとなり、読解の文脈を変えられないことが存在する。
津島が、二人のいる廊下の端に現れる。三角測量で、伊庭の位置を知っていたのだ。文系の伊庭が三角測量で津島の居場所を求めていたのは津島の影響をうけていたからだったのだ。
読解の文脈を変えられないことは伊庭瑠璃が津島修一からの自由を得ることを阻む。高校時代における津島の精神の脆弱さのきっかけは、ほかならぬ、神酒による津島の拒絶だったのだ。神酒が津島を振ったトラウマは伊庭瑠璃が津島修一からの自由を得ることを阻む。
時間の一回性は、神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除くことを阻む。
神酒は、津島を振ったことを謝ろうとする。
津島は、神酒がどれだけひどいことをしたかを伊庭に語る。タイムラインを持たない伊庭は、津島視点の神酒の行為を、疑わずに信じてしまう。
「貴方は、津島にそんなひどいことをしたの? 見損なう」と、伊庭は神酒に言う。
「まって。津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」と神酒は言う。
「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言は神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除くことを助ける。
神酒薫は時間の一回性を取り除くことを求める。
「愛してる」ではどうにもならないことが存在する。
「愛してる」ではどうにもならないことは神酒薫が時間の一回性を取り除くことの手段となる。
「おまえの視点は確定的じゃなかったのか」と、津島は神酒に対して言う。
天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除くことを求める。
「おまえの視点は確定的じゃなかったのか」は天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除く手段となる
天使の翼が「愛してる」ではどうにもならないことを取り除くことは成功する。
電子アシスタントは、神酒薫が時間の一回性を取り除く手段になる。
電子アシスタントに含まれるキキは、天使の翼が電子アシスタントを取り除く手段になる。
伊庭瑠璃は、「神酒薫が他人からの視点を気にせずに生きることを得たこと」を求める。
「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言は、伊庭瑠璃が「神酒薫が他人からの視点を気にせずに生きることを得たこと」を得ることを阻む。
伊庭瑠璃は「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言を取り除くことを求める。
神酒薫が視点浮動者として存在することは、伊庭瑠璃が「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言を取り除くことを阻む。
天使の翼は「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言を取り除くことを求める。
「津島修一が伊庭瑠璃からの自立を求めることは、天使の翼が「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言を取り除く手段になる」らしい。
津島修一が伊庭瑠璃からの自立を求めることは、天使の翼が「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言を取り除く手段になるように見受けられる。
「俺を忘れろ」という津島の発言は、神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除く手段になるように見受けられる。
「俺を忘れろ」という津島の発言と伊庭が記憶を外部化していないことがともに存在していることが原因となり、神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除くことは失敗する。「俺を忘れろ」という津島の発言は神酒薫が神酒が津島を振ったトラウマを取り除く手段とはならなかった。
「津島くんは、私を好きだったんじゃなかったの?」という神酒薫の発言が存在することがきっかけとなり、モバイルがなくても覚えていることと神酒がすでに過去を振り切っていることが存在する。
モバイルがなくても覚えていることは、神酒薫が視点を決定しなければならないという切迫感を取り除く手段となる。
神酒がすでに過去を振り切っていることは、神酒薫が他人からの視点を気にせずに生きることを得る手段となる。