2014-07-18

ナレーターガチエージェントの朝は早い

東京都千代田区
都心の一画。
ここに一軒のマンションがある。
ガチエージェント遠藤仮名)の住宅である

世界でも有数のガチエージェント
彼らの仕事は決して世間に知らされるものではない。

我々は、ガチエージェントの一日を追った。

朝、4時10

早朝の丸の内を駆け抜ける遠藤の姿を発見した。
時折立ち止まってしてスマートフォン操作する遠藤の姿に目を向ける人はいない。

Q、おはようございます。朝、早いですね?

「ええ。始発が動く前にファームを廻る必要がありますからね。
一日分のXMPバースターをどう集めるか。これが大切なんです」

日が昇る前、人々が行動する前から遠藤は動き始める。
手に持つペットボトルが、途中、3回変わった。

「俺なんかがエージェントやれてるのは、Enlightenedの皆さんの支えがあるからなんです。
支えられてばかりじゃなく、こうやって早朝のリチャージをやらないとね」

そう語る遠藤の目は何よりも真剣だ。
ガチエージェントに一切の妥協はない。
遠藤の誇りはそこにあるという。

「まあ、好きで始めたゲームですから

最近は良い睡眠が取れないとも口をすべらせていた。

Q、いつも、この道なんですか?

「いや、巡回の道はいつも変えています
夜中に攻撃を受けているポータルもありますからね。
ほら、そこの郵便局ポータルはレゾネータがいくつか壊されていますよね」

ただ、ハックするだけではない。
ポータルの修復を忘れない遠藤姿勢に、ガチ勢気概を感じた。

ファームを維持しないと始まりませんからね。大切なんですよ、これ」

結局、この日は6時まで丸の内付近ポータルを巡った。

6時10

遠藤は巡回を終え、カフェに向かう。
勝手知ったる動きで座席を確保する。

Q、朝食ですか?

「いやあ、やっぱりエージェントは体が資本ですからね。
でも、この窓際の席は3つのポータルスキャナーに入るんですよ」

そう言って遠藤スマートフォン操作する。
ハックしながらサンドウィッチを食べる手付きは手慣れたものだ。

しばらくして遠藤座席を立った。朝食を終えたようだ。

「この3つのポータルは入店前に2回ハックしていますからね。
バーンアウトしたので次のポータルに向かわないと」

素早く会計をし、店を出る遠藤
その足で東京駅に向かう。
時刻はまだ6時22分だ。

Q、これからお仕事ですか?

すみません、静かに」

我々クルー諌める遠藤

「あちらを見てください。
あのサラリーマンが急に立ち止まってスマートフォンを取り出しました」

確かに駅前スマートフォン操作する男性がいる。

「彼はResistanceのエージェントなんですよ」

彼とは駅前ポータルでよく遭遇するという。

「こうやって実際にエージェントと遭遇できるのは拡張現実ゲーム醍醐味ですよね」

遠藤は以前はオンラインゲームに没頭していたが、
Ingressリリースされてからはこれ一本だと言う。

Q、話しかけないのですか?

「そうですね。話しかけることもありますが……。
今日は彼が維持しているファーム攻撃する予定なのでやめておきます

そう笑う遠藤笑顔の中にも、真剣な表情を感じた。

12時。

午前中にポータルを巡回した汗を流すために、遠藤銭湯に向かう。

「この銭湯ポータルになっているんですよね。ここもリチャージしないと」

ただ、汗を流すだけではない。
熟練の技が、光る。

14時

ファーム巡回も一区切りつき、遠藤攻撃に同行することになった。
今日JR浜松町に移動し、増上寺まで敵ポータル破壊をするそうだ。

「このあたりはResistanceのファームになっていますからね。
そう、朝に出会った彼の職場もこのあたりなんですよ」

休みも終わったこの時間帯に攻撃しかけることが効率的だという。

会議中のエージェントが多いですからね。リチャージもあまりこないんです」

Q、遠藤さんはお仕事大丈夫なのですか?

仕事火曜日休みなんですよ。平日の日中に動けるのは有利ですから

Ingressのために転職したのだという。

16時

浜松町から増上寺まで、水没していた地域草原が広がっていた。

iOSを使っているエージェントのために残していてもよかったのですが、
このあたりはResistanceのエージェントも多いので仕方無いんですよね」

ガチ勢辞書妥協の2文字は無い。

16時10

遠藤のハングアウトに連絡が入ったようだ。

すみません。これから静岡に行かないとダメなんです」

あと1本のレゾネータを刺すとレベル8になるポータル静岡に2つあるという。
我々はさすがに静岡までは移動できないので、本日の取材は終えることにした。

静岡まで来ていただいたら、レベル8ポータルになる瞬間が見れるのですけど」

そう言って遠藤は、新幹線の中に消えていった。

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