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2019-10-11

anond:20191011222548

災害予測AI候補にならない…「ノーベル賞」は時代遅れか(佐藤 健太郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57399

「唯一の大きな変化は、1968年ノーベル経済学賞が新設されたことだが、ノーベル賞ウェブサイトでは「経済学賞はノーベル賞ではない」とされており、」

「「ノーベル賞の100年」(馬場錬成著、中公新書)によれば、財団ノーベル遺言を厳密に守ろうとする意志が非常に強く、今後も新部門増設可能性はないだろうという。」

2018-07-19

涌井貞美『図解・ベイズ統計「超」入門 (サイエンス・アイ新書)』

 評判よし。

一石賢『まずはこの一冊から 意味がわかるベイズ統計学』

涌井良幸『道具としてのベイズ統計学』

 手動かして学ぼうみたいな本らしい。

松原望『入門ベイズ統計意思決定理論と発展』

宮川公男著「基本統計学」でベイズに関する記述(数ページ)を頭にいれてから本書を読むと良い。

・最低でも、大学積分知識必要になり、ベータ分布正規分布積分表現計算くらいは当たり前のようにできないと読むのが難しい

ttps://www.udemy.com/pythonstan/

 よさそう

奥村晴彦『Rで楽しむベイズ統計入門』

 つなぎに。

豊田秀樹『基礎からベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門』

 StanとRが何となく分かってる必要があるらしい。

松浦健太郎StanとRでベイズ統計モデリング

 Stanまったく知らなくてもいけるらしい。

久保拓弥『データ解析のための統計モデリング入門――一般線形モデル階層ベイズモデルMCMC

 直感理解を大切にしてるらしい。通称緑本」。たけぇよ。行列積分知識が要るみたい。

C.M. ビショップ『入門ベイズ統計意思決定理論と発展』

 これがひとつのゴールみたいね

2018-04-25

任期がなければ俺は輝けるのに

東大院卒。博士号持ちのポスドク。もちろん任期付き。

久しぶりに怒り心頭記事を読んだ。

育児がなければ俺は輝けるのに」という勘違いイクメン研究者が語る、育児仕事を両立させる秘訣

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52811

明治大学総合理学部五十嵐悠紀准教授明治大学総合理学部福地健太郎教授と、京都産業大学情報理工学部平井重行准教授。みんな「任期なし」じゃないか

仕事セーブしてもクビにはならない安定ポストにつきながら、自分は「イクメン研究者」であって、「育児がなければ自分は輝ける」と思っている男性研究者勘違いしているという上から目線

そりゃ、任期がなければ自分イクメンになる努力しますよ。

任期ありだと、任期が切れれば次の職はないわけなので、育児クオリティを下げても仕事時間を割き、少しでも次の職を得られるようにして家計改善努力することが「合理的」になるんですよ。

任期なしと任期ありで全く条件が違うのに、記事中に「任期」という言葉が一回も出てこない。

で、自分たちイクメン研究者と同じようにできない他の男性研究者は「勘違い」しているというのですか。そうですか。

僕ら男性ポスドク研究者なんですが、みんな勘違いしているというのですか。そうですか。

五十嵐悠紀先生は在学中から有名でした。東大五十嵐健夫先生准教授でいらっしゃったころに修士学生として入り、素晴らしい研究業績をだして、五十嵐健夫先生と在学中にご結婚されて。

素晴らしいご研究をされていると思いますし、正直、ご本人はしがないポスドクの私より優秀だと思いますけどね、頭いいなら、独身男性准教授結婚することが誰にでもできることではないことぐらいわかるでしょう。

自分は分野が違うのでこの方々のポスドクになることはないですが、はっきり言って、この方々のところでは、ポスドクとして働きたくないですね。

かにあなたたち任期なし研究者より頭悪いのかもしれませんが、私らポスドク研究者で、この国の研究を支えているんですよ。

自分たち安定ポストにいる人間けが研究者で、自分たちのようにできないやつは勘違いしてるからダメなんだ」とか言ってる人たちの下で働きたくないですよ。

そこまでいうなら、あなたたちだけで、ポスドクなしでこの国の研究を動かしてみてくださいよ。

2017-06-23

日本ミステリ略史

日本ミステリ史をまとめようとしている人を見たので自分でもやってみようと思った。

箇条書きでも大体分かるだろう。あと本格中心なのは許してくれ。

探偵小説輸入の開始

http://fuboku.o.oo7.jp/e_text/nipponbungakukouza_19270530.html

神田孝平訳「楊牙児奇獄」1877

黒岩涙香翻案『法庭の美人』1888

須藤南翠『殺人犯』1888(『無惨』に先立つ創作) "まづ未成品で、単に先駆的なものしか見られない"(柳田泉


黒岩涙香『無惨』1889 "日本探偵小説嚆矢とは此無惨を云うなり"

・"日本最初創作探偵小説" (乱歩)

・「探偵叢話」連載開始(都新聞) 1893 ……探偵実話の流行

ドイル「唇の曲がった男」翻訳 1894

映画「ジゴマ」公開 1911

谷崎潤一郎「秘密」1911「白昼鬼語」1918 「途上」1920 日本探偵小説 "中興の祖"(中島河太郎

・『中央公論』「芸術的探偵小説企画(谷崎・芥川佐藤春夫里見弴)1918


雑誌新青年』創刊 1920 "第一の山"(乱歩

・当初は翻訳を重視

横溝正史(1921)、水谷準(1922)、甲賀三郎(1924)、小酒井不木(1925)、大下宇陀児(1925)、夢野久作(1926)、海野十三(1928)など登場

乱歩二銭銅貨」1923 "これが日本人の創作だろうか。日本にもこんな作家がいるであろうか"(森下雨村

http://www.aozora.gr.jp/cards/001826/files/57173_58183.html


戦前探偵小説最盛期 "第二の山"(乱歩)"第一の波"(笠井

浜尾四郎殺人鬼』 1931

大阪圭吉デビュー 1932

・『ぷろふいる』創刊 1933

木々高太郎デビュー 1934

小栗虫太郎黒死館殺人事件』1934

夢野久作ドグラ・マグラ』 1935

・蒼井雄『船富家の惨劇』 1935

横溝正史真珠郎』1936

久生十蘭魔都』1937

◇「本格探偵小説

http://d.hatena.ne.jp/mystery_YM/20081205/1228485253

甲賀三郎「印象に残る作家作品」1925 が初出 http://kohga-world.com/insyouninokorusakukasakuhin.htm

小酒井不木当選作所管」1926 (「本格」「変格」使用

・当時の「探偵小説」という語の広さ……「本来の」探偵小説detective storyとそれ以外を区別

・"理知的作品"と"恐怖的作品"、"健全派"と"不健全派" 1926(平林初之輔

・本格・変格論争 1931(甲賀、大下)

探偵小説芸術論争 1934-36(甲賀木々



戦時下の中断

乱歩 少年探偵団(二十面相)シリーズ中断 1938

乱歩芋虫発禁 1939

・"探偵小説全滅ス"(乱歩) 1941


戦後ミステリ復興 "第三の山"(乱歩)"第二の波"(笠井

・横溝『本陣殺人事件』1946

・横溝『蝶々殺人事件』1947

・横溝『獄門島』1948

安吾不連続殺人事件』1948

高木刺青殺人事件』1948

雑誌宝石』創刊 1946

・『宝石第一公募 1946(香山滋飛鳥高山田風太郎島田一男

大坪砂男天狗」 1948

・『宝石』第四回公募 1949(鮎川哲也土屋隆夫日影丈吉

中井英夫虚無への供物』1964(構想1955-)

◇「探偵小説」→「推理小説

当用漢字表制定 1946.11

日本探偵作家クラブ設立 1947

講談社「書下し探偵小説全集」1955-1956

・清張『点と線』1958 (表紙に「推理小説https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAVVEU

講談社「書下ろし長編推理小説シリーズ」1959-1960?

日本推理作家協会成立 1963

参考…

甲賀三郎『音と幻想』1942 http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007753808-00

雄鶏社推理小説叢書」1946.7-

安吾推理小説について」1947

安吾探偵小説を截る」1948

安吾探偵小説とは」1948

安吾推理小説論」1950


松本清張点と線』1958

・「社会派推理小説」、清張ブーム

心理的要素・動機の重視、小説としての充実重視

・"探偵小説を「お化屋敷」の掛小屋からリアリズムの外に出したかった"(清張)

◇「本格冬の時代」?

・謎解きの興味の強い作品は絶えていない……『本格ミステリ・フラッシュバック

・清張は謎解きを排斥していない。「新本格推理小説全集」1966 "ネオ・本格"

・「現実離れ」の作品が世に出にくかった……らしい https://togetter.com/li/300116

風俗を描いただけの謎解きの要素の薄い作品が氾濫していた……らしい?

"社会派ということで、風俗小説推理小説かわからないようなものが多い。推理小説的な意味で言えば水増しだよ"(清張、1976)

複数対立軸? http://d.hatena.ne.jp/noririn414/20070314

リアリズム――非リアリズム

・「おじさん」――「稚気」

・都会・洗練――土着

海外ミステリ――国内ミステリ

サブジャンル・隣接ジャンル

歴史ミステリハードボイルドエスピオナージュ、「冒険小説」、伝奇小説SF、……

・ここ掘ると全体が何倍かに膨れ上がるから触らないよ


◆「新本格」以前の非・サラリーマンリアリズム系譜 "2.5波"(笠井

桃源社「大ロマンの復活」1968- (国枝史郎小栗虫太郎海野十三久生十蘭香山滋……etc

・『八つ墓村』(漫画)1968-

中井英夫虚無への供物文庫入り 1974

・『犬神家の一族』(角川映画)1976

雑誌幻影城』1975-1979(泡坂妻夫連城三紀彦栗本薫竹本健治……etc)"探偵小説復権"

笠井潔『バイバイエンジェル』1979

島田荘司占星術殺人事件』1981

江戸川乱歩賞青春ミステリ……小峰元アルキメデスは手を汚さない』1973、梶龍雄『透明な季節』1977、栗本薫ぼくらの時代』1978、小森健太郎『ローウェル城の密室』(最終候補)1982、東野圭吾放課後』1985


◆「新本格ミステリ」 "第三の波"(笠井

綾辻行人十角館の殺人』1987.9

・「新本格」の公称は『水車館の殺人から……講談社文三によるブランディングの側面

◇「新本格」に顕著な要素(佳多山大地)……

・〈青春ミステリであること

・本格推理形式の先鋭化・前衛化が著しいこと

古典的天才探偵復権

大学ミス研のコネクションを軸とした作家の発掘

講談社――島田荘司――宇山日出臣――京大など

東京創元社――鮎川哲也――戸川安宣――早稲田立教など

公募による「新本格作家の発掘

鮎川哲也と13の謎 13番目の椅子 1989

鮎川哲也賞 1990-

・『競作 五十円玉二十枚の謎』1993

・『本格推理』1993-2008

・創元推理短篇賞 1994-

メフィスト賞 1996-(『姑獲鳥の夏』1994)

2015-12-23

ポップス名盤Blue Avenue / 花澤香菜」について(長々と)語りたい

このアルバムはすごい名盤だってものすごく語りたいです。音楽にうるさい方々にも積極的に聴いていただきたいなと思う次第です。

でも、こういうのをあまりべた褒めするのって結構怖いですね。音楽の好みは人それぞれですし。

自分が最高!って思ってても世間的には全くそんなことないなんてことは本当によくあります。妙に褒めると反発をくらいかねないです。

実際、音楽雑誌とかの「2015年ベストアルバム特集」をぱらぱら読んでみても全然話題に出てなかったので。まあそんなもんです。自分視野が狭いだけです。

はいえ、それなりに注目されて評価されてるのかなってのはなんとなく勝手に思っていたので、年間ベストに入ってなくてちょっとがっかりしました。

から自分で語ろうかな、と思い至るわけですが、やっぱり、ハマってしまったあまりに冷静さを失った文章になる気がするので、書いて叩かれるのが少し怖いところはあります

からここに書きます

声優花澤香菜

アルバムについて語る前に花澤香菜という人について少し。

花澤香菜とは、声優です。人気若手女性声優です。名前くらいは聞いたことがある人が多いと思いますし、検索したほうが理解は早いです。

声優の中ではアニメの出演数がトップクラスに多いです。1年間に何十本も出ていたりします。最近は少し落ち着いてきましたけどね。

特徴は、ウィスパーボイスというか、天使のようにかわいらしい声ですね。ヒロインボイスです。個人的には少し荒げた演技も好きですが。

声に含まれ倍音成分がものすごく豊富らしいです。科学的に実証されてるらしいです。

声優なので、当然ソロ歌手デビューする前からキャラソンとか歌っていました。化物語の「恋愛サーキュレーション」という曲がレジェンド級に有名です。

あと、セキレイという作品ライブで歌った時の歌い方がネタにされてて、わりと音痴っぽい扱いを受けてました。

ソロ歌手デビュー

そして、2012年に満を持してソロ歌手デビューをするわけですが、みんな歌の方は割と心配してました。

私も深夜アニメはよく見ていて花澤香菜さんのことは当然知っていましたが、当時は特別好きというわけでもありませんでした。

しかし、プロデュースするのがROUND TABLE北川勝利だというニュースを聞いてにわかに興味が湧いたのを覚えています

ROUND TABLE、及びfeaturing Ninoは好きで聴いていましたし、声質との相性も良さそうだということで、けっこう期待していました。

その後2013年に1stアルバムclaire」がリリースされたのですが、確かに名盤でした。

北川さんをはじめ、中塚武神前暁カジヒデキ宮川弾矢野博康沖井礼二などなど、渋谷系の流れを汲むポップス好きにとってはたまらない作家陣で、花澤さんにぴったりの歌を作ってくれました。

花澤さんも声優らしく表現力豊かに歌いこなしていて素晴らしかった。「マダダーレモー」とはなんだったのか。たぶん自分の歌い方ってのを少しずつわかっていったんでしょうね。

1年後の2014年には25歳の誕生日を迎えることにちなんで25曲入りのアルバム「25」をリリースしました。ものすごいハイペースです。

この2ndアルバムでは岩里祐穂さんを作詞に迎え、花澤さんと意見を交わしつつパーソナルな部分を反映させた曲作りをしています

そのうえで、25曲という多さを生かして幅広いジャンルの曲に挑戦していきました。

そんなこんなで、アニメやらレコーディングやらライブやらで多忙を極めた後に迎えたソロ活動3rdシーズン集大成が「Blue avenue」になるわけです。

ここでようやっとBlue Avenueの話

Blue Avenueリリースされるまでに、3つの先行シングルが発売されました。

『ほほ笑みモード』

『こきゅうとす』

『君がいなくちゃだめなんだ』

しかし、この3曲を聴いて「このアルバムってこんな感じか」と思ってはいけません。

しろ、この3曲がアルバムの中で最もコンセプトから外れている曲といっても過言ではないでしょう。

Blue Avenueってこんなアルバム

では、このアルバムはどんなコンセプトで制作されたのでしょうか?

Blue Avenue」のコンセプトは一言でいえば「ニューヨーク」です。

テーマニューヨークになった経緯はインタビューで話されています

──今作のテーマは「ニューヨーク」とのことですが、なぜこのテーマを?

ニューヨークはわりと後付けなんです。アコースティックライブの「かなまつり」みたいな少人数でのライブを何度か経験して、少ない音と声で作り上げる空気感っていいなと思っていて。

3rdアルバム方向性を考えているときに、「あの自由音楽を楽しむ感じを生かすなら、ジャズをやってみるのもいいんじゃない?」って意見が上がったんです。

その中でニューヨークというキーワードが浮かび上がって。ジャズの街でもあるし、ほかの新しい音楽に挑戦するのにも「ニューヨーク」をテーマにすれば統一感のある作品になるんじゃない?って。

花澤香菜「Blue Avenue」インタビュー (1/3) - 音楽ナタリー Power Push

ジャズAORフュージョンレゲエなど、これまでのアルバムと比べると「大人」な雰囲気を持った曲が多めのアルバムになっています

そして、ニューヨークといっても70~80年代くらいのニューヨークイメージという感じがします。

それはSwing Out Sisterが参加してるのもあるかもしれませんね。

詳しい方ならば、楽曲クレジットを見ればこのアルバムがどういったアルバムなのかがわかるかもしれませんね。

ということで曲目・スタッフリストを載せたいのですが、長いので記事の末尾に載せました。

曲目リストへジャンプ

Blue Avenueのすごいなと思うところ

こういうのをあまり主張するのもどうかと思うんですが、参加しているミュージシャンが豪華です。

クレジットを見ていただければわかるように、今までのアルバムでおなじみの作家陣に加え、シングル曲ではSTUDIO APARTMENTやくしまるえつこがサウンドプロデュースをしたり、2つのニューヨークレコーディング曲においてウィルリーやスティーヴ・ジョーダンなどの海外スタジオミュージシャンの参加、80年代から活躍するイギリスユニットスウィングアウトシスター提供曲など、一流の人たちがたくさん参加しています

まあ、極端な話、名前は知らなくてもいいと思うんですけどね。聴けばわかりますから。「I ♥ NEY DAY!」「Nobody Knows」での軽快なドラム気持ち良いなあとか、「Dream A Dream」の洋楽っぽい感じがすごい良いとか。ここでいう洋楽っぽいってのは英語圏の歌っぽいなあっていう意味ですね。洋楽日本語カバーみたいな雰囲気がありますね。それもまた味。そして、セリフパートがあって、もしかして本業声優であることを意識して作ってくれたのかなとか想像してみたり。

おなじみの作家陣もすごい良い仕事をしてくれています。というかキレキレです。特に矢野博康作曲「We Are So in Love」が光ってますね。4つ打ちフュージョンで、イントロからもうたまらないです。シンバルズの頃から思っていたんですが、矢野さんは王道のポップソングもいいんですけど少し趣味に走った感じの曲を書くと時々とんでもない名曲を生み出しますね。

一つだけ主張しておきたいのは、みんな決して無駄遣いではないということですね。すべてが良い方向に結びついています

ニューヨーク」というコンセプトがあって非常に統一感があるのが素晴らしいです。

最初に「シングル曲がコンセプトから外れている=ニューヨークっぽくない」と言っておいてなんなんだ、と思われるかもしれませんが、このアルバム面白いところは3つのシングル曲が違和感なく自然に収まっているところなんですね。

バラードの「君がいなくちゃだめなんだ」が終盤に入ることでアルバムがよりドラマチックになっています。そこから最後の曲「Blue Avenueを探して」に続くのがもう最高ですね。西寺郷太さんの歌詞がいいんですよ。

クラブミュージックの「ほほ笑みモード」ややくしまるえつこさんの個性が色濃く出ている「こきゅうとす」も、意外なくらい自然に入ってるんですよね。それは曲順が考えられているのもあるんですが、「ほほ笑みモード」がアルバムミックスになっていたりなど、音づくりにこだわっているからというのもあるのでしょう。後述しますが、このアルバムは音が良いです。

アルバムとして非常によくまとまっていて、通して聴いた後の余韻が良い感じです。

  • 音質の良さ

NYで録音した2曲は際立って音が良いんですけど、それに劣らず全体的に非常に高いクオリティの音づくりがされています。花澤さんのアルバムは1stの頃から一貫してソニーの茅根裕司氏がマスタリングエンジニアを務めていて、常にクオリティが高かったんですが、今回は最高の出来栄えなのではないでしょうか。オーディオに詳しいわけではないので断言はできないですけど。

シングル曲が違和感なく収まっているのもマスタリングによるところが大きいのでしょうか。詳しくはわかりませんが、ぜひ良いヘッドホンでじっくり聴いてほしいと思えるくらい良い音です。

ニューヨークっぽいということでAORとかフュージョンを取り入れた、と聞いても正直ピンとこない人が多いんじゃないかと思いますAORってどんな音楽かを説明できる人って実はそんなに多くないのではないかと。結構マニアックなところを突いてきてると思います(そんなことないよ、常識だよとお思いの方もいるでしょうが)。

でも、そういうジャンルとか全く分からなくても「良いな」と思えるようなアルバムになっているのではないかと思うのです。それは曲自体がそう作られているというのもあるかもしれないんですけど、やはり花澤香菜が歌うということでポップスとして完成されるというか、そこに花澤さんの歌のすごさがあるのではないかと思っています

3rdアルバムを出すまでの3年間で60曲以上のオリジナル楽曲を歌い、ライブも精力的にこなしてきたからこそその次元に達しているというか、こういう曲を楽しみながらポップスとして歌える筋力がついたのではないかなと思うのです。それこそ「25」あたりの頃の怒涛のスケジュール千本ノックのように効いてるのかもしれないですね。

1stの頃は作家の作る曲を最大限に活かすために歌うという感じ、それこそ声優としてディレクションに応えるような感じで歌っていたように思うのですが、「Blue Avenue」ではコンセプトの発端が花澤さんの意見であることからも、ちゃん歌手になってきてるのだなと感じます

当然ですが、豪華なメンツに霞むこともなく、曲に負けているだとか歌わされてるだとかいう印象を全く受けません。むしろ北川さんも他の作家さんも花澤さんをプロデュースすることで新しい扉を開けているような感じさえします。インスピレーションを与える「ミューズ」なのかもしれませんね。

私が花澤さんのアルバムの中で際立ってこれを好きなのは、花澤さんと作家陣が一緒になって制作している感じを受けるからなのかもしれません。化学反応が起きているのをひしひしと感じます

また、花澤さんは1stの頃から自作詞曲を歌っているのですが、今回も2曲作詞していて、ちょっともこなれてきたというか、アーティストとしての一面が出てきたような感じがします。

タップダンスの音が聴こえてきたら」では音楽に身を委ねることの喜びをシンプルに書いていて、歌を楽しめている感じが伝わってきます

タップダンスの音が 聴こえてきたら

軽やかなそのリズムに 身をまかせて踊るの


寄りかかる小説も どんな優しい言葉

はいらない ふみならそう 夢中になるだけさ

一方、「プール」では暗い部分を歌っている感じで、こういうのがあるとなんというか、深みが増しますよね。

花澤さんは詞を書くと少し重たい感じになってしまうみたいで、それもまた個性というか、人気声優としてバリバリ活躍している彼女の影の部分が垣間見れるようで、イイですよね。

どうやって喋ってたか

ねえ どうやって眠ってたか

どうやって歩いてたか

ねえ どうやって 笑ってたのかな

からない 思い出せないの


空っぽプール 泳ぎ続けるの

空っぽプール 泳ぎ続けてる

ライブがすごい

しかたらここまで惚れ込んでいる理由ライブを見たからなのかもしれません。花澤香菜の歌の魅力の真骨頂ライブにあるのかもしれません。

武道館公演の映像を収録した「Live Avenue Kana Hanazawa in Budokan」というBDが発売されているのですが、アコースティックライブ映像も収録されていまして、他にも素晴らしい映像特典もありまして、とても素晴らしい商品です。

花澤さんの歌って生演奏にすごく合うんですよね。地上波で「こきゅうとす」を披露したこともあるんですけど、それとは全然違いますね。ライブの「こきゅうとす」すごく良いです。

武道館ライブではバックバンド通称「ディスティネーションズ」にホーンも加わって、とても豪華なものになっています

一番の見どころはジェームス・ブラウンの「Get Up (Sex Machine)」(ゲロッパ)に合わせて花澤さんが好きなパン名前を叫ぶというパフォーマンスメロンパンメロメロ!)。冷静に考えるとすごくくだらないシャレなんですが、演奏ガチであることと、みんなすごく楽しげな様子が印象的で、とても幸せ空間が出来上がってるなあと感じました。

あと、花澤さんのパフォーマンスがいちいちかわいらしいんですよね。「Merry Go Round」の振り付けとか。

そして、アコースティックライブが素晴らしいんです。花澤さんの生歌ってこんなに良いものなのか、とため息が出ますよ。本当に、歌がヘタであるような扱いをされていたのが嘘みたいです。声量は確かにそんなにないのですが、歌の細かい表情付けがまらなく上手いです。ピアノギターだけの少ない音だと余計に際立ちますね。

こんな人に薦めたい

誰にと言われれば万人に、と言いたくもなるんですけども。

最近星野源やらceroやらで、ブラックミュージックとかシティポップとかそういう言葉がよく聞かれるようになったんですけど、このアルバムもそれと同じ文脈で語ることができるのではと思います

シティポップ」ってもはや言葉が独り歩きしだしてよく分からない感じなんですけど、街のことを歌うのがシティポップだとするなら「Blue Avenue」も十分当てはまりますよね。

また、北川勝利さんをはじめとした作家陣は、最近評価の流れがある気がする「渋谷系」や、最近流行り気味の新しい「シティポップ」の世代狭間にいる人たちなんですよね。どちらも独り歩きしてあやふや状態にある言葉ですけど。

良質な音楽を作ってきながらも長らく日の目を見なかった人たちがこうやって素晴らしいものを作り上げてくれている、というのも感慨深いものはありますね。

そして、70~80年代ニューヨークイメージってことで、けっこうオッサン向けなのかもしれません。……年間ベストに入らなかったのは革新性がないと思われたからなのかも。私は花澤香菜さんが歌うだけで十分新しいと思うんですけど。


というわけで、以上、Blue Avenueについてでした。

参考

花澤香菜Blue Avenueインタビュー - 音楽ナタリー Power Push

http://natalie.mu/music/news/111594

花澤香菜×北川勝利が明かす、“極上のポップソング”の作り方「人生音楽がより密接になってきた」|Real Sound|リアルサウンド

http://realsound.jp/2015/04/post-3000.html

曲目、スタッフリスト

01.I ♥ NEY DAY!

作詞岩里祐穂 作曲編曲北川勝利 ホーンアレンジ村田陽一
BassWill Lee
Drums : Steve Jordan
Electric GuitarDavid Spinozza
Piano, Organ : Rob Mounsey
Trumpet : Jeff Kievit
Trombone : Mike Davis
Saxophone : Andy Snitzer
Conga, Tambourine : 三沢またろう
Electric Guitar : 山之内俊夫(流線形
Wind Chime, Chorus北川勝利ROUND TABLE
Chorus : acane_madder

02.ほほ笑みモードアルバムミックス

作詞岩里祐穂 作曲編曲STUDIO APARTMENT
Guitar堀越雄輔
Vocal Direction : 北川勝利ROUND TABLE
Sound produced by STUDIO APARTMENT

03.Nobody Knows

作詞岩里祐穂 作曲北川勝利 編曲北園みなみ北川勝利
BassWill Lee
Drums : Steve Jordan
Electric GuitarDavid Spinozza
Piano, Organ : Rob Mounsey
Trumpet : Jeff Kievit
Trombone : Mike Davis
Saxophone : Andy Snitzer
Conga, Tambourine : 三沢またろう
Wuritzer, Claviniet, Analog Synthesizer北園みなみ
appears courtesy of Polystar Co.,Ltd.)
Wind Chime, Shaker : 北川勝利ROUND TABLE
Chorus : acane_madder

04.ブルーベリーナイト

作詞作曲編曲宮川弾
Programming, Clarinet, Saxophone, Chorus宮川弾
Guitar後藤秀人
Chorus : acane_madder

05.Trace

作詞岩里祐穂 作曲編曲 : mito
Drums千住宗臣
GuitarSaigenji Permalink | 記事への反応(0) | 15:20

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