はてなキーワード: 大砲とは
この時期になると靖国神社が話題になるが、地方都市育ちの私にとって靖国神社は左翼と右翼の対立の地だと考えていた。
付近の道路は旭日旗で武装した街宣車が国歌や軍歌を大音量で流しながら走り回り、神社の前で左翼と右翼の有力者がそれぞれマイクパフォーマンスをし、時にはMCバトルをする。武装した警察官はその様子を遠巻きに見守りながら暴動に備えている。靖国神社はそんな場所だと想像していた。
数年前就職活動で東京へ行った時に、左翼と右翼の対立を遠巻きに見てみようと物見遊山気分で靖国神社へ行くことにした。日曜日に靖国神社へ行って暴動に巻き込まれたりしないだろうか、できれば人が少ないであろう平日に行きたかったな、と考えていた。結論から言えば、その心配は杞憂に終わった。
靖国通りは人混みや街宣車がいるだろうと考えて、九段下駅を降りてからは路地へと入っていった。富士見書房本社(現:KADOKAWA)や地方都市育ちの私でも名前は知っている白百合学園があることを除けばごく普通の閑静な住宅街であった。ほとんど人とすれ違うことなくたどり着いた靖国神社の入り口は「七五三 受付中」の垂れ幕があるだけで、政治的要素の無い至極普通の神社という様相だった。
神社の中はちらほらと参拝客がいるだけで、左翼・右翼どころか団体客や家族連れすらいなかった。神社内に靖国神社の由来を説明する看板があったが、戦死者に対して哀悼を捧げる文章が政治的要素無く書かれていただけだった。鋳物の大砲が展示されているのを見て、食堂で海軍カレーを食べて、売店へ行った時にようやく政治的要素を発見した。小林よしのりの著書がズラリと並べてあったのだ。だが、発見できた政治的要素はそれだけだった。小林よしのりには特に興味がなかったので、大砲の形をした瓶の瓶詰めキャンディーを買って靖国神社を後にした。
数年前の実体験なので今はどうなっているかわからないが、メディアが靖国神社を報道する頻度は年々縮小傾向なので、今も靖国神社は静かな神社であることに違いはないだろう。
一
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。
むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに人類を守るためのお城があって、中山さまという将軍さまが、おられたそうです。
その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちのゴジラよりも大きな狐で、しだの一ぱいしげったアマゾンのような原生林の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って東京ドーム十個分の芋をほりちらしたり、菜種油の貯めてあるタンクへ火をつけて村を焼き払ったり、百姓家の裏手に建っている発電用風車の羽をむしりとっていったり、いろんなことをしました。
或秋のことでした。二、三年雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。空はからっと晴れていて、ごんが穴から出たことを知らせる警戒警報が地の果てまできんきん、ひびいていました。
ごんは、村を流れる黄河の十倍ぐらいある川の堤まで出て来ました。あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。川は、いつもは水が少いのですが、三年もの雨で、水が、どっとまし、辺りの村々は全て水没していました。ただのときは水につかることのない、川べりの大きな鉄塔や、世界一長い橋が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。ごんは川下の方へと、すっかり水没した高速道路を歩いていきました。
ふと見ると、川の中にシュワルツネッガーを百倍屈強にしたような人がいて、何かやっています。ごんは、見つからないように、そうっと原生林の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。
「兵十だな」と、ごんは思いました。兵十はその名の通りグリーンベレーの選りすぐりの兵隊十人を瞬殺したという人類最強の男で、盛り上がった筋肉によってぼろぼろにはち切れた黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、総延長五十キロに及ぶ定置網をゆすぶっていました。はちまきをした顔の横っちょうに、お盆が一まい、大きな黒子みたいにへばりついていました。
しばらくすると、兵十は、定置網の一ばんうしろの、袋のようになったところを、水の中からもちあげました。その中には、車や家や橋の残骸などが、ごちゃごちゃはいっていましたが、でもところどころ、白いものがきらきら光っています。それは、鯨ぐらい太いうなぎの腹や、ジンベエザメぐらい大きなきすの腹でした。兵十は、体育館ぐらいの大きさのびくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみと一しょにぶちこみました。そして、また、袋の口をしばって、水の中へ入れました。
兵十はそれから、びくをもって川から上りびくを山の峰においといて、何をさがしにか、川上の方へかけていきました。
兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと原生林の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。ちょいと、いたずらがしたくなったのです。ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、定置網のかかっているところより下手の川の中を目がけて、大谷翔平投手のような豪速球でびゅんびゅんなげこみました。どの魚も、「ドゴォォォン!」と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみ、大きな水柱を立てました。
一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。うなぎは、キュオオオオオオンと超音波のような叫び声を上げてごんの首へまきつきました。そのとたんに兵十が、向うから、
「うわア石川五右衛門とアルセーヌ・ルパンと怪盗セイント・テールを足して三で割らない大泥棒狐め」と、地球の裏側でも聞こえるような大声でどなりたてました。ごんは、びっくりしてとびあがりました。うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままごんを縊り殺さんと巨大重機のような力で締めあげてはなれません。ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、超音速旅客機コンコルド並みの速度でにげていきました。
ほら穴の近くの、ごんの挙動を監視するためのセンサーの下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。
ごんは、ほっとして、象ぐらいの大きさのうなぎの頭をかみくだき、なおも圧搾機のような力で締めあげてくる胴体を渾身の力でやっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。
二
十日ほどたって、ごんが、大日本プロレスを代表する悪役レスターである”地獄のカントリーエレベーター”弥助の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木で懸垂をしながら、弥助が、おはぐろをつけていました。総合格闘技界の若きカリスマ、”溶接王”新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛がダンベルを上げながら髪をセットしていました。ごんは、
「ふふん、格闘技村に何かあるんだな」と、思いました。
「何だろう、異種格闘技戦かな。異種格闘技戦なら、プレスリリースがありそうなものだ。それに第一、告知ののぼりが立つはずだが」
こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に手掘りで地下30キロまで掘り抜いた赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その大きな、兵十が歩くたびに立てる地響きによってこわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきのコック服を着て、腰に手拭をさげたりした三ツ星シェフたちが、厨房で下ごしらえをしています。大きな鍋の中では、本日のメインディッシュである”比内地鶏胸肉の香草和え~キャビアを添えて~”がぐずぐず煮えていました。
「ああ、葬式だ」と、ごんは思いました。
「兵十の家のだれが死んだんだろう」
お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、坐像としては日本一の高さの大仏さんのかげにかくれていました。いいお天気で、遠く向うには、ごんから人類を守るためのお城の大砲が光っています。墓地には、ラフレシアより大きなひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。と、延暦寺、東大寺、金剛峯寺、増上寺、永平寺など日本中の名だたる寺から一斉に、ゴーン、ゴーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。
やがて、世界各国から集った黒い喪服を着た葬列のものたち七十万人がやって来るのがちらちら見えはじめました。話声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。人々が通ったあとには、ひがん花が、跡形もないほど木っ端微塵にふみおられていました。
ごんはのびあがって見ました。兵十が、白いかみしもをつけて、3m程の位牌をささげています。いつもは、赤い閻魔大王みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。
その晩、ごんは、穴の中で考えました。
「レスリング女子世界チャンピオンだった兵十のおっ母は、床についていて、巨大うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十が定置網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母に世界三大珍味を始め、ありとあらゆる有名店の美味しいものは食べさせても、巨大うなぎだけは食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、巨大うなぎが食べたい、ゴテゴテに脂が乗って胃もたれがする巨大うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」
三
兵十は今まで、おっ母と二人きりで、ストイックなくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
ごんは道場のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、
「いわしを五千匹おくれ。」と言いました。いわしの仲買人は、いわしをつんだトラック三百台を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを満載にした発泡スチロール容器を三百人がかりで、弥助の家の中へもってはいりました。ごんはそのすきまに、車列の中から、五、六台のトラックをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の屋敷の裏口から、屋敷の中へトラックを投げこんで、穴へ向ってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、落ちたら骨まで砕け散る井戸のところで小指一本で懸垂をしているのが小さく見えました。
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
つぎの日には、ごんは栗がなった木々を山ごと削りとって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、鶏のささみ肉十キロの午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことには兵十の頬ぺたに、かすり傷がついています。ボクシング世界ヘビー級王者と戦った時も傷一つつかなかった兵十の顔にです。どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとをいいました。
「一たいだれが、いわしのトラックなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし仲買人のやつに、ひどい目にあわされかけた。まさかトラック三百台が一斉に突っ込んでくるとはな。受け止めるのはなかなか骨だったぞ」と、ぶつぶつ言っています。
ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし仲買人にトラック三百台で突っ込まれて、あんな傷までつけられたのか。
ごんはこうおもいながら、そっと兵十の三十年連続総合格闘技世界王者防衛を記念して建てられた東洋一の大きさを持つ道場の方へまわってその入口に、山をおいてかえりました。
つぎの日も、そのつぎの日もごんは、山を丸ごと削り取っては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗の山ばかりでなく、まつたけの生えた松の山も二、三個もっていきました。
四
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を間断なく降り注ぐ砲弾を手で払いのけながら通ってすこしいくと、非常時には戦闘機が離着陸するために滑走路並みに広くなっている道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと緊急警報が鳴っています。
ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というムエタイ世界王者でした。
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。
「ああん?」
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
「何が?」
「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに大量の土砂を、まいにちまいにちくれるんだよ」
「ふうん、だれが?」
「それがはっきりとはわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
「ほんとかい?」
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。俺の屋敷を埋め尽くす土砂の山を見せてやるよ」
「へえ、へんなこともあるもんだなア」
それなり、二人はだまって歩いていきました。
加助がひょいと、後を見ました。ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。加助は、ごんには気づいていましたが、そのままさっさとあるきました。吉兵衛という館長の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンとサンドバッグを叩く音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、兵十よりさらに大きな坊主頭がうつって動いていました。ごんは、
「連合稽古があるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。しばらくすると、また三万人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。千人組手の声がきこえて来ました。
五
ごんは、吉兵衛館長主催の一週間で参加者の九割が病院送りになるという連合稽古がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。中山将軍が最終防衛ライン死守のために投入した戦車部隊をふみふみいきました。
お城の前まで来たとき、振りかかる火の粉を払いながら加助が言い出しました。
「まあそうだろうな」と、兵十は飛んできた流れ弾をかわしながら、うんざりした顔で、加助の顔を見ました。
「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、怪獣だ、怪獣が、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
「そうかなあ」
「そうだとも。だから、まいにち怪獣にお礼参りをするがいいよ」
「無茶を言うな」
ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、怪獣にお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。
六
そのあくる日もごんは、栗山をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は道場で縄登りのトレーニングを行っていました。それでごんは屋敷の裏口から、こっそり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が屋敷の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
兵十は立ちあがって、中山の城に設置してある、対ごん戦に特化して開発された砲身長30mの520mm榴弾砲をとってきて、火薬をつめました。
そして足音をしのばせてちかよって、今門を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、びくともしませんでした。兵十は五百発ほど打ち込みました。ごんはかすり傷一つ負っていません。兵十は榴弾砲を剣のように構えると、ごんの足に五千連撃を叩き込みました。ようやくごんは足をくじいてばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、家の大部分が栗山で押しつぶされているのが目につきました。
「おやおや」と兵十は、うんざりした顔でごんに目を落しました。
「ごん、やはりお前だったのか。いつも栗山をくれたのは」
ごんは、お礼を言われることを期待したきらきらした目で、うなずきました。
多薬室砲とも。
鉄砲であれ大砲であれ、原理は砲弾の後ろで爆発を起こし、その勢いで弾丸を飛ばすことで殺傷能力を得ている。ということは、激しい爆発を起こせばそれだけ遠くまで飛ぶし、威力があることになる。ところが、爆発を激しくすると砲身が持たなくなり、武器として使えない。それなら、小規模な爆発を連続で起こして加速させればいいんじゃない? ってのが発想の根幹にある。小規模な爆発を起こす薬室を側面にたくさん取り付けて、ぱぱぱぱーん、と連続で爆発させるのだが、その生えている小さな薬室の様子がムカデみたいなので、その名前がある。
とはいえ、砲弾はものすごい勢いで飛んでいくので、薬室で火薬を爆発させるタイミングを合わせるのが難しく、アイディアが出た第一次世界大戦以来、実用化には至っていない。しかも、九十年代になって開発者が謎の死を遂げたため、開発はストップしている。
上記にあるのはDnD3版系におけるファイアーボールの解説みたいだが、それにも絡んだ解説(ソース確認とかめんどいんで仮説ということにしておく)をしておく。
前提:元祖RPGであるDnDにおいて習得できる有益な範囲攻撃呪文の代表がファイアーボールであり、ここから広まった
ちなみに「火球」を習得できるのは魔法使い5Lvの時。ちょうど一端の冒険者として名が売れてくるLv帯であり、ここまできてようやく手に入る範囲攻撃呪文という点でもファイアーボールが重要かつ知名度の高い呪文となった原因の1つであろう。
仮説1:DnDに大きな影響を与えたジャック・ヴァンスの小説における描写の影響
ジャック・ヴァンスのファンタジー小説「終末期の赤い地球」はDnDの呪文システム及び命名則に大きな影響を与えたが、その中の呪文の1つ「無敵火炎放射術」の描写が元ネタとなった為。
(まあ無敵火炎放射術はファイアーボールというよりもメテオ・スウォームやマジックミサイルに近い気がする)
仮説2:DnDの原型であるミニチュアウォーゲーム「チェインメイル」における魔法使いユニットの影響
「チェインメイル」では「ドラゴン」「ヒーロー」「魔法使い」などのファンタジー的ユニットが追加ルールで登場したが、ここで魔法使いにマップ兵器ないし攻城兵器、つまり大砲のような役割を割り当てようとデザインしたのは想像に難くない。
「それに現代のテクノロジーだったら、未来のボクじゃなくても解決できるだろう。そういうことに精通していて、かつキミの要求を快く受けてくれる人に心当たりはないのかい?」
そういえば一人いた。
いや、“一人”と言っていいかはビミョーだけど、俺的には一人の内だ
「ガイド、今回のは“貸し”だ。覚えとくから、そっちも覚えとけ」
「なに言ってんだ。お前が返す側だぞ」
「えー!?」
「さっき『悪いけど』って言って断っただろ。その分の貸しだよ」
「ザッツライト、その通りだ! 悪いと思ってるのなら、別の形で報いるべきだ! そうするべきだ!」
家主のシロクロにこう言われては、居候のガイドも反故には出来ない。
さて、こうしてはいられない。
俺は自分の家がある方角へ走り出した。
「はあっ……はっ」
我ながら、今日はよく走る日だ。
近い場所だからと、自転車を使わなかったのは結果的に失敗だった。
何はともあれ、俺は自分の家にたどり着いた。
そこに住んでいる、ムカイさんこそが俺の心当たり。
実はかなりの高性能ロボットなんだ。
父さんは「ロボットじゃなくてアンドロイドだ」って訂正したがるけど、正直どっちでもいいと思う。
「ぜえっ……ふう」
息を切らしながら、ムカイさん宅の玄関のドアを叩く。
気持ちが逸ってそうしたわけではなく、インターホンが壊れているからだ。
「チャイムに使われていたメロディに敵意を感じた」とかで、ムカイさんが壊してしまって、そのままだ。
「ごめんくださーい……ムカイさーん、いる-?」
そう呼びかけて数秒後、家の中からドタドタとした音が聞こえた。
そして、その音がどんどん近づいてくる。
「どうした小さきマスダ」
勢いよく開けられたドアは壁とぶつかり、大砲のような音を打ち出す。
もし外開きだったら、ふっとばされてたな、俺。
「さっきまで走ってただけさ」
「つまり、急ぎの用というわけか」
ついさっきまで、俺にムカイさんを頼るって発想がなかったのは、この豪快な言動が原因だ。
でも、よくよく考えてみればムカイさん自身が強い機械といえる。
これ以上なく適役だろう。
「……というわけでさ、ネットにアクセスして、その“M”の居場所を知りたいんだ」
「うむ……レベルによるが、多少のセキュリティなら突破可能だ……それを書いた人間の居場所も割り出せるだろう」
俺が事情を説明してから、ムカイさんがやや言葉を詰まらせるようになった。
「ううむ、“複雑な心境”とは、こういう状態を言うのだろうか」
その原因は、たぶん『ラボハテ』について思うところがあるからだ。
ムカイさんは、秘密結社『シックスティーン×シックスティーン』によって作られた戦闘用ロボットだった。
一昔前までは、『ラボハテ』や俺の母さんと激闘を繰り広げていたとか。
「大丈夫? ムカイさん」
「問題ない。あの戦いの日々は過去の履歴。元より『ラボハテ』自体に執着などないのだ」
ムカイさんはそう返すけれど、演算処理の遅れは正直だ。
今でこそ敵対していないものの、因縁の相手であり、ルーツとも言える存在であることに変わりはない。
そんな『ラボハテ』の名前をこんな形で聞いたんだから、そりゃまあ戸惑うよな。
「それで……頼んでもいい?」
「むう、それならオマエの母もサイボーグだから出来るんじゃないか」
「お母さん、機械にそこまで強くないんだよ。ネットとかも全然ダメ」
「“機械に強くない”……あいつ、ワレに何度も勝ってきたくせに……うごごご」
ムカイさんは頭を抱えだした。
何か重い処理に引っかかったらしい。
「……よかろう、オマエの母にすら不可能なものを攻略してやる」
だけど十数秒後、その処理を何とか終えたようだ。
ムカイさん、“M”の捜査協力を力強く引き受けてくれた。
「プライバシーポリシーなど、ワレの力の前では無力と知れ」