もっと大掛かりかと思っていたけど、パソコンとほぼ同じやり方なんだな。
「これが“M”とやらの文書か……ではセキュリティを突破する」
「早いね」
「ここまでは序の口。第二関門は脇道から攻めていかなくては……」
今の状況を俺なりに解釈するなら、転校生だと偽って別の学校に入り込んでいる感じだ。
で、今度は裏口を探して、職員用の部屋に潜り込もうとしている。
実際はもっと複雑なことをやっているとは思うけど、傍から見たら絵面が地味なのは同じだ。
「ふんっ……ぬっぐ!」
手強いセキュリティに阻まれたのか、ムカイさんが凄まじい唸り声を上げている。
よく分からないけど、かなりの荒技で突破しようしているっぽい。
こういうのって、もっとクールに、スマートにやるもんだと思ってた。
「……よし、“M”の居場所が分かったぞ」
ムカイさんの唸り声が家の中に響き続けて十数分。
いつまでかかるのか不安になっていた頃だったので丁度よかった。
「すごい! 本当に出来たんだ!」
「待ってろ。今、地図に印をつけてやる」
そう言って、近くにあった引き出しから、ペンと地図を取り出した。
そこはアナログなんだな。
「ほら、ここだ」
「意外と近いんだね」
“M”の居場所が地球の裏側とかだったら、どう連絡しようかなんて考えていたけれど、その手間は省けそうだ。
「ん? というか、ここって……」
そこは俺の知っている場所だった。
「……よし、早速ここへ向かうよ」
「ワレも同行すべきなのだが、充電せねばならん。太陽光だけでは賄うえん。」
ムカイさんはエネルギーをかなり消耗してしまったようで、今にも止まりそうなくらい動きがぎこちない。
正直、“M”の正体が分かった今となっては、むしろ俺一人のほうが都合が良かった。
俺は報告のため、タイナイの家をまた訪ねた。
「あれ、また来たんだ。忘れ物?」
「“M”の正体が分かった」
「えー、本当に?」
随分と無駄な遠回りをした。
もうこれ以上、面倒なプロセスはごめんだ。
走り疲れていた俺は、勿体つけずにその名を告げた。
「……タイナイが“M”なんだろ」
「それに現代のテクノロジーだったら、未来のボクじゃなくても解決できるだろう。そういうことに精通していて、かつキミの要求を快く受けてくれる人に心当たりはないのかい?」 そ...
そうして俺が目的地へ走っている時、兄貴は乗り物で優雅に移動していた。 「それで弟は、“M”の話を鵜呑みにする人間が多いのは『奴がインフルエンザだから』って言ったんですよ...
「ネットにある怪文書の9割は内実そんなもんだよ。結果、真実に近かったとしても、それは賽の目を当てただけ」 それを知った途端、目に映る『Mの告白』の文章が上滑りしていくよう...
俺は兄貴の言っていたことが気になって、翌日タイナイのところを訪ねた。 兄貴の友達だし、ネットに別荘もってる人らしいから、今回の件についても詳しそうだと思ったからだ。 「...
そうして放課後。 俺は足早に家に帰ると、すぐさま自分の部屋に向かった。 パソコンで“M”について調べるためだ。 「……ギリシャ文字?」 だけど目的の情報が見つからない。 ひ...
ところかわって兄貴の学校でも、“M”についての話がクラスで繰り広げられていた。 中でも、兄貴たちの熱量はすごい。 「『ラボハテ』のゴタゴタ知ってるっすか? いやー、結構シ...
俺は教材の入ったカバンを机に置いたまま、その輪に勢いよく跳び込んだ。 「そんなに気になるニュースがあったのか?」 「『ラボハテ』の新プロジェクトでトラブルが起きたんだよ...
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」なんて、マリー・アントワネットは言っていなかったらしい。 なんで彼女のセリフとして広まったかというと、“あいつなら言いかね...
もう終わったら
≪ 前 「僕が?」 「あの文章が書かれた場所は、この家だってのが分かった。つまり、書いたのもタイナイだろ」 まったく、とんだ愉快犯ピエロじゃないか。 まるで自分が書いてい...