はてなキーワード: ノムさんとは
注:Vtuberに対して「中の人」という言葉を使うのは、何か間違っている気はしますが、適切な言葉を知らないので、「中の人」という言葉を使います。
「バーチャルさんはみている」見ました。きつかったです。
もう見ることはないので、内容については置いておいて、そもそもVtuberとアニメって相性悪くないですか、という話を。
自分はVtuberの動画全然見ていないので、想像でしかないんですが、
Vtuberの良さって、「中の人」が演じているというのはなく、「中の人」のスタンド?別人格?アバター?的な存在であることだと思っています。
台本なんて全く存在せず、あくまで、ある人格を持った生命体が自由に振る舞っているように見えるというか。
(視聴者に意識されているかが重要で、実態として存在するかは重要でない)
そして、そこがキャラクターを声優が演じるのと異なる魅力を生み出していると思うんですよ。
で、そこへきてアニメですよ。アニメに台本があり、声優がキャラクターを演じていることなんてみんな知っています。
そして、その意識は「バーチャルさんはみている」に対しても同様に働くわけです。同じアニメなのですから。
つまり視聴者から見ると、誰かがあるキャラクターを台本通りに演じているように観測されてしまうわけです。
そして、Vtuberと「中の人」の関係は一気にキャラクターと声優の関係に変わってしまいます。
これはVtuberのアイデンティティの喪失にもつながってきます。
「バーチャルさんはみている」に対しての蔑称として、「高級クッキー☆」というのを見かけました。
つまり、金のかかっているが同人レベルのアニメだって罵倒されているわけです。
そして、これは面白いくらい的を射ています。(そして実際めちゃくちゃ笑いました。)
そりゃそうですよ。活躍している声優は発声・演技の練習をし、厳しい競争に勝ち残ったプロばかりです。
そしてそれは、別に中の人の演技力の低さが悪いという話ではなく、むしろ中の人は演技をしてはいけないということです。
正確には、演技であることが外に漏れ出てはいけないといった感じでしょうか。
そして、素が求められる普段の動画と、演技が求められるアニメ、相容れないのは当然です。
なぜなら、視聴者からはVtuberがある別の人物を演じているように見えるだけで、Vtuberと「中の人」の乖離を生じさせないからです。
ただ、これには大きな穴があって、Vtuberの見た目がアニメアニメし過ぎているという点です。
「バーチャルさんはみている」のように全員Vtuberのドラマが万一月9に放送されようと、アニメにしか見えないでしょう。
もしかしたら、背景を現実にするだけでそれっぽく見えるのかもしれませんが。
個人的に年始なのでチャンネル登録して追っているVtuberのメモをしておく。
富士葵
歌うま。モデルが新しくなったことで見た目の表現力が高くて凄い。MVの出来がいいのでつい見てしまう。
結構ほかのVtuberと別路線取ってることが多いので活動の場が結構意外な所なことがあるので今後も見守っていきたい。
アズリム
トラッキングがすごすご勢。本人のSOSを見た時はどうなるかと思ったが、無事帰ってこれてよかった。本当に運営会社さんありがとう。帰ってきてからは独自企画結構あるのでこれからも独自企画を練っていって欲しい。個人的には銀河アリスちゃん辺りと絡んでみて欲しい。
根羽清ココロ
ロート製薬公式Vtuber。企業PR系で自社製品の宣伝を主にやっているが、意外に大阪の情報なども多いので勉強になる。弟とのコラボが面白い。もっと弟との絡みを増やして欲しい。弟とのコラボなら間違いなく見に行く。
DeepWebUnderground
浅瀬ちゃぷちゃぷさん。ネットの闇の部分を公開するヤベー奴だったはずなのに、最近は浅瀬でちゃぷちゃぷしてる。浅瀬でちゃぷちゃぷしててキャラぶれがひどいがそれがギャップになってるのが魅力。ただしゲストで呼んでくる人はまじでヤベー奴しか来ないのでコネが凄い。
ヒメヒナ
田中ヒメと鈴木ヒナの歌うまコンビ。歌うまなのに、結構謎の企画を延々とやっている二人組のイメージが強い。二人の普段の様子からすごすごMVの温度差が凄くて印象に常に残る。運営がスノボで骨折って出遅れたが、それを取り替えすように急成長中。しばらくは成長路線継続だと思う。
虹河ラキ
パチンコメーカーの企業系Vtuber。でも、企業系なのに最初は全然自社案件回してもらえなくてちょっとかわいそうだったけど、最近は回してもらえてるみたいで何より。
相棒のタンバリンのパンディといろいろ企画やってる。歌うまイエロー。とにかくアルトボイスの歌声が素敵でMVもすごすご。その他の企画は時々見てるけど、MVほどは見てない。今年はもうちょっとバズるといいなーとは思ってる。
MonsteZ Mate
吸血鬼のコーサカと狼男のアンジョーのコンビ。マジカルドールの大型コラボで発見。MVと歌が過ごすぎてまさかこんな逸材がいたとはって電流が走った。ほかのグダグダ企画もいろいろ面白いのが多いが、とにかくMVの完成度が凄すぎる。ただちょっとメタ要素がきつい時があるので実はコラボ相手を選ぶ二人ではある。年末にバズったのでもっと大きくバズって欲しい。
夏海萌恵
エイレーンファミリー1。全て英語で日本語字幕が出ているので意外に英語の勉強になる。エイレーン特有の編集のお陰で結構ゲーム実況が見やすい。つたない日本語が意外に好き。
アイドル部オタの名探偵。考察が鋭いことがあって勉強になることが多い。業界動向を見るのに使える。
ときのそら
結構普通であんまり印象に残らないタイプなのに、歌がめちゃうまでMVもスゴスゴでそこのギャップが堪らない。個人的には成長をとても感じるのでどこまで成長するかも注目していきたい。
YUA
すごすごモデル、有名声優とバズる要素を組み合わせたのにいまいちバズらなくていつ打ち切られるかひやひやの存在。正直相方を入れてテコ入れすべき。
YuNi
virtualシンガーの名にふさわしい。歌うま歌手。オリジナル曲のMVがとにかくこっているし、曲も聞いていて心地よい。にも関わらず本人がちょっとぽわぽわしているギャップ。乙女丸の存在も案外バカにできなくて相方の重要性を感じる今の注目株。
おめがシスターズ
個人勢なのに下手な企業よりずっと企画、知名度に優れていてしかもvirtualをエンタメに消化しているすごすごコンビ。謎のウンチ押しがきつい時もあるが大体企画力で押しきってくる強さを感じる。
猫宮ひなた
ゲームの腕がすごすご猫又。あの容姿でゲームが凄いというバーチャルの利点を最大に活かしたキャラが魅力。
ぼっちぼちまる
オリジナル曲をとてつもない頻度で出してくるすごすご歌手。しかも音楽がすごくいい。Vtuberやってないで歌提供したほうがいいんじゃないかレベル
まじかるドール
5人ユニットで二人組でコンビを組んでいろいろな企画をやっていく。組み合わせ次第でいろいろなやり取りが出来るのでなかなかの動画が面白い。大型コラボ企画が多いので新人発掘能力が高いのでコネが凄い
もちひよこ
衣装のバリエーションが多すぎるモデラーさん。とにかく衣装量が凄すぎるので圧巻の一貫。ただしバーチャルでないと出来ないことにこだわりすぎていてエンタメ方向が足りないことが多いのでもうちょっとエンタメ企画を寝れるともっと大きく伸びると思う。
お天気についていろいろ教えてくれて勉強になる。魂がいなくても本人が永続できるという結構最強の存在の一人。疑似魂が生成できたらマネージャーとのガチ対談が実現出来るかもしれないので技術の進歩バラメータとして見守っていきたい。
ケリン
ドット絵のゲームに自分が遊びにいくっていう映像作品としてものすごい凄い存在。更新頻度が低いのがたまに傷。
ゴリラなのに歌がうまい。最近だした曲が地味に脳内ループする電波曲で困る。
おさないめい
漫画家やってる園児。最近BLオタの姉が増えた。結構ラップがえもい。
大型案件、大型コラボが多すぎる兄妹。気がついたら業界随一のコネ持ち。本人たちの動画も面白いことが多いが、ドッキリは明らかにやり過ぎなことがあるので気を付けて欲しい。
ヤッターマンからアイちゃんとボヤッキーっていう謎コンビ。まだデビューして間もないが既存IPを利用したVtuberでは一番うまいことやっている気がするのでこのまま躍進できたらいいなーと思っている。
ヨメミ&エイレーン
気がついたらエイレーンの出番がどんどん増えているヨメミ。独自路線すぎてバーチャルとは?ってなる企画も多いが、編集テンポは業界随一。
月夜ソラ
企画内容がヤバイし、芸達者な男性。ただし男性Vtuberの性で知名度がとにかくない。とてもあのミライアカリの後輩とは思えない。アカリファン層とずれていて受ける場所に行っていないと思うので、是非ポコポー辺りの企画にでて知名度を増やすことが必要だと思う。
海夜叉神
スマブラの解説動画が分かりやすいので参考にしてます。お笑い系の大型コラボとかもやってる
燦鳥ノム
サントリー公式Vtuber。大企業のVtuberなのに企画内容めちゃめちゃ凝っていてビックリする。コンビニ行ったらついクラフトボス買ってしまうのはノムさんのせい。
織田信姫
勢いだけでつまらないことのほうが多いが時々とんでもなく面白い動画を出してくるという謎のギャップのせいで登録を切れないモンスター。最近バージョンアップしてしまって正直無難にかわいくなってしまったのは残念。
すごすごモデル、トラッキング、あほあほ宇宙人、個性的な猫との絡み。それでいてMVがかっこいいし、歌もつい耳に残るサウンドとギャップの固まりの個性。更に編集技術、カメラアングルの切り替えとあらゆるバズ要因を詰め込んだ最強のVtuberだと思っているが、全然流行ってなくて悲しい。地味にtwitter上でSF設定の企画も進行しているので考察畑の人も楽しめる。本当に何がダメなのか分からなくて辛い。お金のかかりかたもとんでも無さそうなので早くバズって打ちきりを回避して欲しい。
演劇部の間違えでは?ってぐらいネタ動画延々と出している。もうショートアニメ見てる感じで基本頭おかしいのに、時々うるっとくるような展開で困る。最初は夢落ちだったのに最近は夢オチすらしてこない。最近のマジ成長株。来年以降もショートアニメたくさんだして欲しい。
そうして映し出された子供の人生のハイライトは......なんというか、“ビミョー”だった。
どん底というほど不幸でもないが、かといって成功や華やかさとは無縁に近い。
「ねえ、ガイド......このアイテムのシミュレートって、どれくらいの的中率?」
「そうだなあ、今回だと75%ってところかな」
100%だと言ってこないだけ良かったと思うべきなのか、それでも高い確率だと落胆すべきなのか。
「ん、どうしたんだい?」
シミュレートのことを知らないノムさん夫妻は、俺たちの沈んだ表情を見て首をかしげる。
結果が何であれ、ノムさんたちにシミュレーションのことは言わないとガイドと約束している。
「もしも、もしもですよ。産まれて来た子供が不幸な人生を歩むとしても、それでも子供が欲しいですか」
「おい、マスダ!」
「未来のことは分からないけど、それでも子供は欲しいかな。幸せになってくれるよう善処するよ」
シミュレートのことを知らないからそう言えたのかもしれないけど、俺たちはその言葉に何だか安心感を覚えた。
「深く詮索はするなって言ったじゃないか。キミはかなり危険な行動をしたんだぞ! あの夫婦の選択が変わらなかったから未来に大きく影響は及ぼさなかったものの......」
帰りの道中、ガイドはご立腹だった。
「しかし彼らの選択も不可解だ。子供が将来幸せになれるか分からないのに、なぜあんな選択ができるんだ。自分達の都合だけで子供を産むなんて、エゴもいいところだ」
俺のせいとはいえ、こうもまくし立てられるとウンザリしてくる。
「子供を産むというのは、その選択をした人間側のエゴが存在する。そのエゴはどう取り繕っても逃れられるぬ。だからこそ、人はより良い未来に子を導く努力をするのではないか。エゴが子を産み、エゴが子を育むのだ」
いつもの調子とは違った、精悍な顔つきに落ち着いた佇まい、まるで別人だ。
そんなシロクロの様子に俺たちは戸惑いを隠せなかった。
「し、シロクロ......?」
不安になったミミセンが、シロクロを軽く小突く。
「ふがっ......アイ! ワズ! ボーン! アイ! ワズ! ボーン!」
すると変な声を出して、あっという間にいつものシロクロに戻ってしまった。
いや、それともさっきのシロクロこそ元の状態だったりするのだろうか。
「エゴこそが原動力......か。なるほど。ボクの時代でも形は変われど、本質は変わらないってことか」
そんなシロクロの突発的な言葉に、ガイドは勝手に納得してしまった。
俺たちはまるでついていけない。
こうして俺たちの“取材”は幕を閉じた。
けど、それでも幸せになれると信じて、前向きに決断することが求められる時もあるのかもしれない。
「こんなに大所帯で、一体どんな用なんだい?」
「学級新聞で夫婦の生活について書こうと思っていまして、その取材をと......」
「へー、そうなんだ。じゃあ、ここで話すのもナンだし中で話そうか」
ノムさんと俺たちは知り合いとすら言っていいのか微妙な関係だったが、訪問すると快く招き入れてくれた。
結婚式でエキストラを雇うくらいだから人見知りかと思ったが、コネがないだけで人と接すること自体は嫌いじゃないらしい。
「突然、押し掛けて、ごめんなさい」
「遠慮しなくていい。来客用の茶菓子が無駄にならなくてよかった」
夫婦どちらもにこやかに対応してくれて、『本来の目的』のために利用するのが申し訳なくなってくる。
だが、ここまで来た以上は遂行しなければ。
「それじゃあ、何が聞きたい? とは言っても、プライベートすぎる話は勘弁してほしいけど」
「はい、では......」
ひとまず当たり障りのない質問をしていく。
取材という名目だからというのもあるが、シミュレートするのに不都合がないか判断するというのも理由としてある。
そうして質疑応答を繰り返していき、打ち解けてきたと感じたところで、俺たちは満を持して本題を投げかけた。
「ではズバリお聞きしますが、近々ご家族が増える予定などは......」
これでも大分ぼかしたつもりで言ったが、それでも気まずく感じるのは俺たちに後ろめたさがあるからだろうか。
「ああ......そうだなあ」
旦那さんは歯切れが悪そうに呟く。
奥さんの反応を窺っているらしい。
「今の生活も落ち着いてきたし、そろそろかなあと考えているよ」
期待していた答えだ。
まさに、シミュレートに打ってつけ。
「そうですか......あ、写真撮ってもよろしいですか。顔は隠しますので」
「ええ、どうぞ」
すると、たちまち画面部分が鈍く光りだす。
俺たちはノムさんたちに見えないよう、画面部分を覆い隠すように覗きこんだ。
ガイドによると、産まれてくる子供の人生のハイライトがいくつか映し出されるらしい。
さあ、鬼が出るか蛇が出るか。
「で、どういうのが調べる相手として向いているの?」
「そう遠くないうちに妊娠する可能性のある人がいいね。その方が正確にシミュレートできるし、未来にもあまり影響はないはず」
サンプルが見つからなかった最終手段に仲間を調べようと思っていたが、そうなると事情は変わってくる。
「じゃあ、俺たちの両親が身近かなあ」
自然な流れから来る判断だったが、仲間たちの反応は芳しくない。
「私もそれは考えてたけど......なんか嫌」
「僕も。上手く言語化できないけど......」
ドッペルは何も言わないが、こちらから目を逸らしたので同じだろう。
シロクロは両親がいるのかすら分からないし。
俺の母さんはいうとサイボーグ化が進んで、今はもう子供は産めないし。
「できれば、まだ子供が一人もいない夫婦のほうが未来への影響も少なくていいと思うよ」
それをもう少し早く言ってくれればよかったのに。
といっても、そんな丁度よくいたかなあ。
記憶の中を探索する。
過去をたどっていく。
そして、意外にもそれは早く見つかった。
「そんなこと言わずにさあ」
だが、兄貴の答えは芳しくなかった。
俺は兄貴の側に近寄ると、耳打ちする。
兄貴の表情が途端に険しくなる。
以前、兄貴はバイトでノムさんの結婚式にエキストラとして参加した。
「おい、お前には口止め料をやっただろう」
「あの時、兄貴は言ったよね。『なあに、安いもんだ』って。つまり、俺はもう少し貰ってもいいってことだ」
俺はわざとらしく笑って見せるが、兄貴の表情はより険しくなる。
妙な緊張感が漂うのを感じた。
兄貴は大きく深呼吸をすると、住所の書かれた紙切れを俺に渡す。
どうやら、気づかないうちにメモしてくれていたようだ。
「いいか。この話は今回で終わりだ。次に口にしたら......具体的な案は後で考えておく」
俺は二つ返事でその場を後にする。
あの様子だと、次にまた話題にしたら本当に容赦してくれなさそうだな。
「いや、俺もよく知らない」
となると、母さんか父さんの知り合いか。
「ねえねえ、誰が結婚するの」
「ノムさんだと聞いたが、よくは知らないなあ」
「私も知らない」
どういうことだ。
「じゃあ、一体どういう経緯で俺たちは招待されたんだ」
おかしいな、さっき俺が聞いたときは「知らない」って言っていたのに。
兄貴はなんだかバツが悪そうで、最初から目があっていなかったかのようにそっぽを向いた。
「結婚披露宴ってな、すごく金がかかるんだぜ。そんなことしなくても結婚は出来るにも関わらずだ」
「その話が、俺の疑問とどう関係あるの?」
「まあ聞け。で、なんで結婚式なんてするかっていう理由についてだ」
「うーん……『私たちは結婚しまーす』っていうのを知り合いの人たちに見てもらうため、とか?」
「まあ一口には言えないが、有り体にいえば見栄を張るためのものってところだろうな。そして見栄を張るのには金がいるってことさ」
そこまでして見栄って張りたいものなのか。
……けど、依然話は見えてこない。
「その見栄のために俺たちまで招待されたってこと?」
「そういうことになるな」
「違う違う。俺たちは、あくまで当事者が見栄を張るためのエキ……おっと」
突拍子もなく、全く関係のないことを囁いてくる。
いつも通りの仏頂面なのに、声だけは不自然に優しいトーンでキモい。
「となるとゲームソフトも必要だ。やりたいのがたくさんあることだろう。今は多くなくても、これからドンドン増えてくる。時は待ってくれない。お前の小遣いだけで賄うのは大変だ」
兄貴はそう言いながら、おもむろに財布を取り出す。
「ましてや近年は娯楽も多様化している。ゲームだけでは子供の飽くなき欲求は満たされないだろう?」
財布から抜き出した一枚の紙。
そのデザインに俺の目は釘付けだ。
「この世には金で買えない物も勿論ある。だが金で買えるものの方が圧倒的に多いのも事実だ」
「余剰な金ってのは必要なものじゃないかもしれない。だが便利なものではある。そして便利なものに依存するのは人間の本質だ」
つまり、これ以上は詮索するなって言いたいようだ。
俺は喜んで騙されることにした。
無言で、小さく頷いて見せる。
「釣りはいらない。たまには兄の貫禄を弟に見せつけてやらないとな」
「オッケー! 兄貴は見栄を張ったってことだね。俺はそう解釈することにするよ」
「お前のような賢い弟をもって誇り高い」
兄貴の表情は変わらないが、その声の調子からホッとしているのが分かった。
「それにしても太っ腹だね。兄貴は財布の紐が固い人だと思ってたけど」
「なあに、安いもんだ」
もう終わってだいぶたってるし、今更言うのもなんだけど、今年の日本シリーズはつまらなかったよな。あれだけ戦力そろってたら誰が監督やっても勝てるぜっての。そのあたりは清武オーナーも分かってるみたいで、優勝したのは当たり前、これから4、5年連続優勝が目標っていう話みたいよ。4,5年というのにはオイラも驚いたけど、今年の巨人はV9時代より強いんじゃないかって言われてたほどだから、それを考えるとうなずける話ではあるよな。そんなチームで1年や2年優勝したくらいで名将と言われるんだったら、巨人軍の監督ほどおいしい仕事はないんであってね。でもここ数年の巨人はめっぽう強くて、去年今年と優勝して、常勝軍団の貫禄があるのは事実なわけだよな。そういう状況だから、オーナーとしては舞い上がりたくなっちゃってもおかしくないんだけど、そんな中で冷静な価値認識のできる清武オーナーはなかなかにクールガイだよ。
そんなこと言っておいてなんだけど、オイラ、実は監督を客観的に評価することはできないんじゃないかと思うんだよな。胴上げで有終の美を飾ったノムさんは、最下位チームだった楽天をあそこまでのし上げたってんで手腕が評価されてるけど、その実、ナインから嫌われてたって話じゃねえか。ちょっと考えれば、ナインから嫌われるような監督が名監督になれるのかって話だよな。山崎がノムさんのアドバイスで息を吹き返したとかいうけど、そういうエピソードは誰が監督やってもなにかしら出てくるものなんであってね。そういう風にプラスの面ばっか集めてきて、だからノムさんの手腕でしたなんて都合がいいにもほどがあるぜっての。それから、ノムさんは細かい策をいろいろ使うっていうのもあると思うんだよな。そういう策がはまると野村イズムなんて言われて、いかにも知将みたいな扱いをされるけど実際失敗してる場合も同じくらいるんであってね。人間はなんでも理由がないと納得できないもんだから、特異な指導や作戦の成功を、ノムさんの知性の賜物ってことにしちゃうし、メディアもそういう風に宣伝する。それをみんながまんまと信じ込んじゃってるっていう側面が相当にあるぜって思うんだよ。その点、ノムさんをバッサリ斬っちゃうんだから三木谷はよく分かってるよな。一橋出身でMBAも取ったエリートだから、そういう非合理的な考え方には呑まれないんだろうね。「知将」像の再生産にはうんざりしてたんだと思うぜっての。
でもさ、清武といい三木谷といい、結局は野球経験のないしろうとが球団の舵取りをして、選手の獲得にも口を出している状況を見ると、上の人間はオイラが言ってることを当たり前のように分かってるんじゃないかと思うぜ。まぁ野球のルールなんてわりかし単純だし、実際は選手のあらゆる特性がデータ化されてるんだから、それらのデータを組み合わせれば、勝率を高める方法は自然と見えてくるんであってね。監督なんてのは、だれがやっても変わらねえよ、みたいに思ってる部分もあるんじゃないのかね。オイラなんかもっと極端でさ、それなりに野球を観たことがあってルールも熟知してるやつだったら、野球のしろうとでも監督やれるんじゃねぇのって思うぜ。
ただ実際は、そんな監督、選手のだれも慕わないからチームがまとまんねえよな。でも選手を洗脳すればどうだっての。洗脳の専門家の苫米地英人のおっちゃんを呼んでさ、ナインたちにオイラが上で書いたような持論を刷り込みまくってもらえば、未経験者が監督でも信頼するようになるだろうよ。そうすると球団は、いかに人気を取れる人間を監督にするかってことだけ考えればいいんだよな。ルールと基本的なノウハウさえ分かれば指揮とれるんだから、女の子でもいいんじゃねえのってね。そこでオイラは秋葉48のあっちゃんこと前田敦子ちゃんを薦めるぜ。注目度抜群だし、野球に興味のないオタク層を取り込めるから一石二鳥、チーム名はAKB69(シックスナイン)でどうだっての!ジャンジャン!