2017-08-14

[] #33-2「結婚はゴールじゃない!?

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俺は胸に温かみを感じながら、結婚式の様子を眺めていた。

そんな幸福空間の中で、俺の近くにいた“とある出席者”はどこか虫の居所が悪いようだった。

兄貴学校OBである、ジョウという人だ。

どうやら有休をとってまで他人結婚式時間を使うことに意義を感じないタイプらしい。

かに俺にとってもゲームのように楽しい時間ではなかったけど、あそこまで露骨に顔に出るってのもスゴいな。

「うーん、幸せそうだね」

俺のこの何気のない感想が、どうもジョウの癪にさわったらしい。

「そうですわね。でも、これからもそれを維持し続けることが大事ですのよ。結婚はゴールじゃありませんからね」

無粋な横槍だ。

「え? でもゴールインとかって言うけど」

結婚した後の生活もあるんですのよ。ならゴールって表現不適切ではございませんこと?」

「う~ん、俺にはイマイチよく分からないんだけど…兄貴、この人の言っていることってどうなの?」

「まあ……理屈は合っているんじゃないか

兄貴の態度はそっけなかった。

まあ兄貴OB相手にあまり角の立つようなことは言いたくなかった、というのもあるのだろう。

「なるほど~……」

俺はそれで納得しようとしたが、ふと気づいてしまった。

とってつけたような理屈からこそ容易に浮き彫りになる、プリミティブな問題だ。

「ん?……じゃあゴールってどこ?」

「え?」

ジョウにとっては予想外の問題提訴だったらしい。

持っていた扇子を開いたり閉じたり繰り返す動作から、苦悩が見て取れるようだ。

そうして数秒後、ジョウはカっと目を見開き、大仰な動作を交えながら俺に言い放った。

「ご自分で探してみるとよろしいですわ!

拍子抜けな答えだった。

けど、便利な返しではある。

便利なものは便利と認識されるに足る理由がある。

知識は人に聞くだけでも身につきはするでしょう。ですが、それでは付け焼刃ですわ。自ら探さなくては」

大した理屈だ。

ジョウの言葉は煙に巻くためだけのものだと邪推したくなる。

しかし、それなりに適当でテキトーな答えだったので、俺は邪推言葉を飲み込んだ。

当然、それで俺が納得するかどうかはまた別の話なんだけど。

「なんだよ、それ~」

「さあな」

兄貴そもそも関心がなく、考えるそぶりすら見せなかった。

俺の「なぜなに攻撃」にエネルギーを割くことを渋ったのだろう。

「……どこにあるんだろう」

結局、ジョウがどういうつもりでそんなことを言ったのかは分からなかった。

だが俺の疑問はすでに、「ゴールはどこか」という方に体全体が向いていたのだ。

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