2017-09-14

[] #36-4「幸せな将来」

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「こんなに大所帯で、一体どんな用なんだい?」

「学級新聞夫婦生活について書こうと思っていまして、その取材をと......」

「へー、そうなんだ。じゃあ、ここで話すのもナンだし中で話そうか」

ノムさんと俺たちは知り合いとすら言っていいのか微妙関係だったが、訪問すると快く招き入れてくれた。

結婚式エキストラを雇うくらいだから人見知りかと思ったが、コネがないだけで人と接すること自体は嫌いじゃないらしい。


「突然、押し掛けて、ごめんなさい」

「遠慮しなくていい。来客用の茶菓子無駄にならなくてよかった」

夫婦どちらもにこやかに対応してくれて、『本来目的』のために利用するのが申し訳なくなってくる。

だが、ここまで来た以上は遂行しなければ。

「それじゃあ、何が聞きたい? とは言っても、プライベートすぎる話は勘弁してほしいけど」

はい、では......」

ひとまず当たり障りのない質問をしていく。

取材という名目からというのもあるが、シミュレートするのに不都合がないか判断するというのも理由としてある。

そうして質疑応答を繰り返していき、打ち解けてきたと感じたところで、俺たちは満を持して本題を投げかけた。

「ではズバリお聞きしますが、近々ご家族が増える予定などは......」

これでも大分ぼかしたつもりで言ったが、それでも気まずく感じるのは俺たちに後ろめたさがあるからだろうか。

「ああ......そうだなあ」

旦那さんは歯切れが悪そうに呟く。

奥さんの反応を窺っているらしい。

奥さんが小さく頷くのを見ると、今までの調子で話を再開した。

「今の生活も落ち着いてきたし、そろそろかなあと考えているよ」

期待していた答えだ。

まさに、シミュレートに打ってつけ。

「そうですか......あ、写真撮ってもよろしいですか。顔は隠しますので」

「ええ、どうぞ」

ガイドがおもむろに、あのアイテムを取り出す。

カメラシャッターに見せかけて、ボタンを押した。

すると、たちまち画面部分が鈍く光りだす。

俺たちはノムさんたちに見えないよう、画面部分を覆い隠すように覗きこんだ。

ガイドによると、産まれてくる子供人生ハイライトがいくつか映し出されるらしい。

さあ、鬼が出るか蛇が出るか。

出来れば幸せ未来であってくれ......!

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記事への反応 -
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      • 俺の住む町には変人が多い。 身近なところでは、使い勝手の悪い超能力を持っているタオナケ。 いつも耳栓をつけているミミセン。 変装が得意なドッペル。 特にヤバいのは、荒唐無...

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