「で、どういうのが調べる相手として向いているの?」
「そう遠くないうちに妊娠する可能性のある人がいいね。その方が正確にシミュレートできるし、未来にもあまり影響はないはず」
サンプルが見つからなかった最終手段に仲間を調べようと思っていたが、そうなると事情は変わってくる。
「じゃあ、俺たちの両親が身近かなあ」
自然な流れから来る判断だったが、仲間たちの反応は芳しくない。
「私もそれは考えてたけど......なんか嫌」
「僕も。上手く言語化できないけど......」
ドッペルは何も言わないが、こちらから目を逸らしたので同じだろう。
シロクロは両親がいるのかすら分からないし。
俺の母さんはいうとサイボーグ化が進んで、今はもう子供は産めないし。
「できれば、まだ子供が一人もいない夫婦のほうが未来への影響も少なくていいと思うよ」
それをもう少し早く言ってくれればよかったのに。
といっても、そんな丁度よくいたかなあ。
記憶の中を探索する。
過去をたどっていく。
そして、意外にもそれは早く見つかった。
「そんなこと言わずにさあ」
だが、兄貴の答えは芳しくなかった。
俺は兄貴の側に近寄ると、耳打ちする。
兄貴の表情が途端に険しくなる。
以前、兄貴はバイトでノムさんの結婚式にエキストラとして参加した。
「おい、お前には口止め料をやっただろう」
「あの時、兄貴は言ったよね。『なあに、安いもんだ』って。つまり、俺はもう少し貰ってもいいってことだ」
俺はわざとらしく笑って見せるが、兄貴の表情はより険しくなる。
妙な緊張感が漂うのを感じた。
兄貴は大きく深呼吸をすると、住所の書かれた紙切れを俺に渡す。
どうやら、気づかないうちにメモしてくれていたようだ。
「いいか。この話は今回で終わりだ。次に口にしたら......具体的な案は後で考えておく」
俺は二つ返事でその場を後にする。
あの様子だと、次にまた話題にしたら本当に容赦してくれなさそうだな。
「覗き見る、って一体どういうメカニズムなの?」 「説明してもいいけど、真面目に聞く根気があるかい」 俺たちは顔を見合わせる。 ミミセン以外は真顔。 つまり関心のないことを...
俺の住む町には変人が多い。 身近なところでは、使い勝手の悪い超能力を持っているタオナケ。 いつも耳栓をつけているミミセン。 変装が得意なドッペル。 特にヤバいのは、荒唐無...
≪ 前 「こんなに大所帯で、一体どんな用なんだい?」 「学級新聞で夫婦の生活について書こうと思っていまして、その取材をと......」 「へー、そうなんだ。じゃあ、ここで話すのもナ...
≪ 前 そうして映し出された子供の人生のハイライトは......なんというか、“ビミョー”だった。 どん底というほど不幸でもないが、かといって成功や華やかさとは無縁に近い。 上手...