「覗き見る、って一体どういうメカニズムなの?」
俺たちは顔を見合わせる。
ミミセン以外は真顔。
つまり関心のないことを示していた。
ミミセンには気の毒だが、俺たちはチームなので多数決にさせてもらう。
ということで、顔を横に振ってみせた。
「本題だけでいい」
「やっぱりね。実のところ、未来に大きな影響を及ぼすから教えられないんだ」
だったら、なんで聞いたんだ。
兄貴はガイドのことが嫌いらしいが、何となくその理由が分かってきた。
「じゃあ、本題だけ説明するね。このアイテムを、将来子供を産むかもしれない人に向ける。そしてボタンを押すと、その子の人生をシミュレートした映像が流れるってわけ」
「私、質問だけど、『将来子供を産むかもしれない人』ってのは妊娠している人ってこと?」
「妊娠していない状態のことだね。ボクの時代では妊娠したら絶対に産まなきゃいけないから、その段階で調べても手遅れだし。もし調べないで妊娠してしまった場合は犯罪なんだ」
俺たちの時代にも似たような決まりはあるが、ガイドの言うそれはより徹底しているようだ。
それにしても、事前に将来を調べないと犯罪になってしまうって、すごいな。
「その子がより幸せになれる環境で、しっかりと教育されるさ。かくいうボクも実の親には育てられていないしね」
さらりと説明されたガイドの生い立ちに、俺たちは驚きを隠せない。
「実の親から引き離されたってこと!?」
「気にする必要はないよ。さっきも言った通り、ボクの時代では血の繋がりは重要視されていない。人口の半分以上がボクのような存在さ」
「人口の半分!?」
「そんなにおかしいことじゃないだろ。産まれてくる子自身は、生殺与奪の権利を行使できない。だから大人が責任を持たなくちゃいけない。子供の将来がかかっているんだから厳正でなくちゃ」
ガイドの言うことにも一理あるように思える。
けど、どこかで俺たちはそれを納得できないでいた。
肯定するにしろ、否定するにしろ、俺たちには知見が足りなかったんだ。
「ねえ、そのアイテムを使ってみてもいい?」
決して興味本位だとかじゃない。
「え?......うーん......」
アイテムを乱用して、未来に影響を及ぼすことを危惧しているのだろう。
だが、このままでは引き下がれない。
ちょっと吹っかけてやろう。
「あれ~? そんなに渋るのは、ひょっとしてそのアイテムは偽物ってことなの?」
「え? 違うよ、本物だって!」
仲間たちも俺の思惑を読み取って、同調する。
「本当かな~?」
「証明できないなら、ガイドが未来から来たっていう信憑性も薄れちゃうよねー」
「分かった、分かったよ。ただし、ボクの監督のもとアイテムを使用すること。出来る限り未来に悪影響を及ぼさないようにしないといけないからね」
俺の住む町には変人が多い。 身近なところでは、使い勝手の悪い超能力を持っているタオナケ。 いつも耳栓をつけているミミセン。 変装が得意なドッペル。 特にヤバいのは、荒唐無...
≪ 前 「で、どういうのが調べる相手として向いているの?」 「そう遠くないうちに妊娠する可能性のある人がいいね。その方が正確にシミュレートできるし、未来にもあまり影響はな...
≪ 前 「こんなに大所帯で、一体どんな用なんだい?」 「学級新聞で夫婦の生活について書こうと思っていまして、その取材をと......」 「へー、そうなんだ。じゃあ、ここで話すのもナ...
≪ 前 そうして映し出された子供の人生のハイライトは......なんというか、“ビミョー”だった。 どん底というほど不幸でもないが、かといって成功や華やかさとは無縁に近い。 上手...