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2024-10-26

月刊漫画ガロ史上最も重要漫画10

anond:20241012181121

 ガロは書く人も居なさそうなので、元読者の義務感に駆られて書いてみた。リアタイで読んでいたのは80~90年代の一部なのでいろいろ偏っているとは思う。選択基準としては、漫画史的な重要性や、後世に与えた影響を優先した。バックナンバー単行本アンソロジー、関連書籍(が多いのもガロの特徴ではある)などの知識も動員したが、記憶に頼って書いているので誤謬などはご容赦。むしろ先達から突っ込みが欲しいです。なお、ガロ分裂後のアックス誌の作品にはここでは触れない。

カムイ伝白土三平

 まずはなにを差し置いてもこれ。そもそもガロという雑誌の創刊自体長井勝一による「カムイ伝」を掲載する媒体を作りたいという並外れた理由によるもので、「ガロ」という奇妙な誌名も作中人物の「大摩のガロから取ったものだった。どちらかと言えば現在では「読まれない」作品になりつつある印象なので当時の熱狂を図るのは難しいが、漫画史的には「どうやら漫画という媒体歴史的社会的な諸問題を描き得る(と読者に思わせた)」点がエポックだったのではないかと思う。今であればそんなもん当然だろうと思われるかもしれないが、所詮我々はこのような巨人の肩の上にいる。

ねじ式つげ義春

 つげ義春ガロ誌に発表した短編は悉くが傑作なのでとても一本に絞りきれるものではなく、作品の完成度からすればむしろゲンセンカン主人」や「赤い花」ではないかとも思うのだが、後世に与えた影響の大きさを考えればこれを選ばざるを得ない。「見た夢をそのまま描いた」という誤解を受けることも多い本作だが、実のところは多種多様コラージュや巧みな漫画技法に満ちていて、きちんとした作為の下に統制して作り上げられた「シュール」の傑作であることがわかる。

赤色エレジー林静一

 若い男女の同棲破綻物語と描けば無数の類例が思い浮かぶが、1970年の発表当時には極めて新しかったはずである。なにしろ婚前交渉などという言葉が現役だった時代だ。主人公職業アニメーターというのも新しく、しゃれていたのではあるまいか。この作品の画期は、漫画に「俺たちの等身大青春(あるいはそのように夢想したいもの)」を持ち込んだ点だったのではないかと思う。林静一洒脱な絵は上村一夫などによる後続作に比べても洗練されていて、今見ても色あせない。

ピクルス街異聞(佐々木マキ

 漫画(に限らず表現)とはなにものかを描かなければならないのだというドグマがまだ有効だった60年代漫画から意味というものを完全に取り去ってしまった佐々木マキの一連の作品センセーショナルであったらしい。画風はおそらく杉浦茂系譜にあるのだが、もはやナンセンスという言葉も不適当だと思われるぐらいに徹底して意味物語排除されている。その衝撃は若き日の村上春樹にもはっきりと影響を与えたらしく、のちに佐々木村上著作の挿画を担当することになる。

寺島町綺譚(滝田ゆう

 簡素な絵でナンセンス漫画を濫作していた滝田ゆうが、心機一転、自らが少年時代を過ごした戦前私娼街・玉ノ井の風景をおそろしく緻密な絵柄で描き出した。「三丁目の夕日」的なノスタルジアものの先駆ではあるが、最終回戦火は玉ノ井の街を焼き尽くして終わる。ここに描かれているものは、卓抜した記憶力と画力により再構築された、失われて二度とよみがえることのなかった風景なのである

マッチ一本の話(鈴木翁二

 ここまでは疑いなく殿堂入り作品が並ぶが、ここから判断に迷う。70年代ガロから永島慎二宮谷一彦を外してはいけないかもしれないのだが、活躍のメインはガロ誌ではなかった作家だし、やはり当時の熱狂現在から嗅ぎ取るのは少々難しい。安部慎一花輪和一古川益三(のちのまんだらけ社長)の諸作品も思い浮かぶけれど、ここでは作品の強度と詩情、卓抜した画力を取って敢えて鈴木翁二で。

ペンギンごはん湯村輝彦糸井重里

 これも当時の衝撃をいま追体験するのは難しいのかもしれないが、ヘタウマ不条理がどっさり詰め込まれた本作が半世紀近く前のものと考えるとやはり衝撃的だし、こういうギラついた脳天気さは、結局は80年代「軽チャー」の苗床になったのではないかと思わされる。

少女椿丸尾末広

 80年前後ガロにはニューウェーブカテゴライズされる作家も少なからずいて、例えば川崎ゆきお蛭子能収ひさうちみちお、奥平イラなどが挙げられるのだが、個々の作品への愛着はさておいて結局のところ今に至るまで強い影響を与え続けているのはむしろニューウェーブ埒外にいた丸尾末広ではないかと思う。圧倒的な画力漫画のみならず演劇音楽にも影響を与えたし、世代を超えたファンも多い。なお本作の初出はガロ誌ではないのだが、代表作として外せないのと単行本青林堂だったのでご容赦を。

タケオの世界根本敬

 80年代ガロではこの人の名前も外せない。「過激な」作風と言われ「特殊漫画」を自称他称もしている人ではあるけれど、実のところは非常に息の長い物語を紡ぎ出せるストーリーテラーでもあり、日本近代史や土俗性を容赦なくぶち込んでやるから覚悟しろよというぎらついた野心も垣間見える。その試みがもっとも巧くいった作品の一つが本作。水爆投下とともに発射された精子自我を持つ話です……と書くと面白そうでしょ?

道楽者の海(逆柱いみり

 ガロ最末期の90年代から一人と考えて、古屋兎丸山野一ねこぢるなども思い浮かんだけれど、漫画表現の圧倒的な強度に鑑みて本作を選んだ。この地上には存在しないはずなのによく知っている風景がどこまでもどこまでも展開される。いつかうなされながら見た夢が、ここに具現化されているという驚き。「ガロがなければ世に出ることのなかった」作品の一つの頂点であると思う。逆柱作品はどれをとっても傑作なのに単行本の多くは絶版で、とんでもないプレミアが付いてたりする……。

追記

個人的にはつげ忠男の大ファンで、実際「無頼の街」「河童の居る川」など傑作も数多いのだが、漫画史的重要性を優先して涙を呑んだ。

赤瀬川原平言及に迷ったけど、ガロ誌での漫画作品(『お座敷』など)よりも、その外での活躍が多かった人という印象なので選外に。ガロ系の作家ではこういう人も多いのですが。

・「ガロにおける有名作家」という問題もある。水木しげる矢口高雄池上遼一といったビッグネームもあれば、のちのどおくまんも一度作品掲載しており、末期ガロにも吉田戦車のような意外な面々が顔を覗かせる。珍しいところでは、SPA!誌で掲載を断られたゴーマニズム宣言の回を小林よしのりガロに持ち込んで掲載された例がある。

ガロ出身で他誌で活躍することになる人も多い。上記の他、新しい世代では花くまゆうさく福満しげゆき東陽片岡古泉智浩あたりか。

80年代ガロでかなり迷ったのは、トラバでも言及のある久住兄弟泉晴紀泉昌之渡辺和博などの面々。このあたりのナンセンス作品群はわりと影響も大きかったようなんだけど、作品単体でどうこう言えるものが思い当たらなかったので除外。

つりたくにこやまだ紫杉浦日向子近藤ようこといった女性作家たちの極めて良質な作品についても言及しておきたい。特に津野裕子は最末期のガロに、寡作ながら優れた作品を残した作家で、機会があればぜひ一読をお勧めします。

・その他、この10選に選ぶには及ばないけれど間違いなくその人にしか描き得ない作品を残し、ガロという媒体がなければ目にすることもなかったであろう作家たちについても、その名をリスペクトしておきたい。淀川さんぽ、とま雅和、谷弘兒、三橋乙耶、菅野修、等々……。

さら追記(含ブコメ反応)

 思いのほかガロ漫画への反応が良くて嬉しい!

90年代ガロ文章ページが(文章ページのほうが……)充実してた感があり、呉智英四方田犬彦など結構な面々が連載していた。

投稿ページの「4コマガロ」も相当(雑誌カラー的な意味で)レベルが高く、ここ出身の有名作家福満しげゆき

・同時期にやっていた「ガロ名作劇場」という好企画があって、90年代半時点では入手困難だった作家を含め、ガロ出身の名作家を回顧的に紹介してくれた。林静一「まっかっかロック」なんてものすごい衝撃受けたし、楠正平や勝又進なんてこんなことでもなければまず読むことができなかった作家だったと思う。

ねこぢるはやはり入れるべきだったかなーという迷いは今でもあり、代わりに削るとすればペンギンごはん鈴木翁二か。リアタイ勢だったんだけど初読の際の衝撃は今でも覚えていて、90年代サブカル的にはわりとよくあった「無邪気な残酷さ」が普遍性を持ち得た希有な例だったんじゃないかと思う。(その点では山田花子には自分は少々点が辛い)

・>ビレヴァンいけば売ってる? >なんか漫画系のサブスクはこういうのの乗っかってどんどんセット売りとかして欲しいよな。

 これは本当にそう思うところで、ガロの名作群はとにかく作品へのリーチが困難。古川益三作品なんてマジで読めないし古書には衝撃的な値が付いてたりする。電書にするにしたってタダじゃないのは分かってるけど、なんとかならんかな。

・>「ガロ」はフォロワー・影響度では計れない作家作品が多すぎて。簡単に真似されるような作品ガロ的ではないとも言えるし

 これも本当に同感で、孤立峰みたいな作家が多すぎるんだよなー。熱を込めて語られるけれど模倣はされない、って、表現としてはすごいことなんだけど。

・>ちびまる子ちゃんクラスメイト名前ガロ作家名前から取ってると聞いたときは「へー」となった

 これモデルになった某作家さんはスゲエ嫌がってるみたいですね(伝聞)

2024-10-20

漫画アクション史上、最も重要漫画10


 誰かが今まさに書いてるであろう他の雑誌と被らなそうな所


 漫画アクションは、週刊→休刊→隔週で復刊して発行中、というちょっと特殊な経緯を持った雑誌

 双葉社ピンチになると神風が吹く、とも言われて、その神風でほぼ埋まるんだよね

 一作者一作品しばりではあるが、このしばりが必要ないんだよなあ



  1. ルパン三世(モンキー・パンチ)
  2. 嗚呼!!花の応援団(どおくまん)
  3. がんばれ!!タブチくん!!(いしいひさいち)
  4. 子連れ狼(原作小池一夫漫画小島剛夕)
  5. じゃりン子チエ(はるき悦巳)
  6. かりあげクン(植田まさし)
  7. BARレモン・ハート(古谷三敏)
  8. クレヨンしんちゃん(臼井儀人)
  9. 坊ちゃん」の時代(原作関川夏央漫画谷口ジロー)
  10. この世界の片隅に(こうの史代)



2024-01-20

anond:20240120205750

おんねこの人のエッセイはバズったし福満しげゆきとか売れっ子じゃん

需要はあるけど供給が少ないジャンルだと思うよ男エッセイって

実際にあってさわれるわけでもないのになにがついてるというのか

内面こそが求められる世界だろ

2024-01-15

anond:20240115171833

3年間いい感じにならなかったとかモロ福満しげゆき生活やん

anond:20240115161109

全然違うと思うが…初期から福満しげゆき読んでたから尚更違うと感じる

ジャンプ+で連載が始まったふつう軽音部は福満しげゆきっぽい

[第1話~第4話]ふつう軽音部 - クワハリ/出内テツオ | 少年ジャンプ+ [ https://shonenjumpplus.com/episode/16457717013869519536 ]

まあこれなんやけど、ナレーションとか主人公独白とかインキャが主人公なところとかモロに福満しげゆきっぽい。明らかに影響受けてるよな、Xでもフォローしてるし。

2023-07-26

おじさんが主人公エッセイ漫画が少なすぎる

エッセイ漫画って大抵が女性で、自分家族のこととか書いてるのが多い。

でも男性特におじさんが主人公エッセイ漫画となると、ほとんどない。

思い浮かぶのが桜玉吉と、福満しげゆきくらい。

おじさんってエッセイ漫画書かないし、エッセイ漫画を読まない気がする。

主人公自分)を女にするとかしないと、刺激がなくて読めないんだろうな。

2023-04-21

おっさんとおばさん同士のラブコメ漫画が読みたい【追記あり

いかな?

できれば不倫なしで

どうしても片方が若い漫画が多くて、リアリティに欠けるんだよなぁ

黄昏流星群シニアだしラブコメじゃないし…

やっぱり難しいか


追記

みんなの紹介してくれた漫画リストアップします。みんなありがとう。抜けがあったらごめんなさい

ローズ ローズローズフル バッド

・1日2回

うさぎドロップちょっと違う?)

ハクバノ王子サマ(両方20代で片方不倫?)

ムサシ輪舞曲

娚の一生女性若いので違うかも?)

・ミワさんなりすます

恋人以上友達未満(互いに30歳前後くらい?)

スーパーの裏でヤニ吸うふたり女性若いので違うかも?)

・じゃりん子チエ

・Age35, 恋しくて不倫で片方若い女性?)

君の天井は僕の床

おかめびより

・あした死ぬには

・五十、六十よろこんで。

・44歳の彼女

ハーイあっこです

そもそもウチには芝生がない

・後ハッピーマニア(カヨコが別れて45歳になっている)

・違国日記

茄子

入江喜和さんの作品

有間しのぶさんの作品

・私の息子が異世界転生したっぽい(メインテーマは違うらしいが)

ルームメイツ一般中年の地味な日常が描かれている。時代設定は数十年前)

シジュウカラ

西炯子さんの作品

・九後45は一周回って追いかける

姉の結婚

セクシー田中さん

オノナツメさんの作品

入江紀子さんの作品

・海街ダイアリー(前振りとして不倫あり)

・瓜を破る(ちょっと違うかも?との情報あり)

・妻観察日記福満しげゆき

・踊れ獅子堂賢

東京ラブストーリー After 25 years

谷川史子さんの「はじめてのひと」「おひとり様物語」(はじめてのひとは不倫あり)

・冬野梅子さんの作品

雁須磨子「あした死ぬには、」(短編連作で、軸のひとつ40代なりのボーイミーツガールあり)

サライネス誰も寝てはならぬ」(恋愛要素は薄いそう)

センセイの鞄

2022-12-28

anond:20221228051102

妻は別に母親ではないが、親とは違った自己肯定感を与える存在ではあると思うんだな。

あるいは、実の親が与えてくれなかった自己肯定感を与えてくれる存在かもしれない。

福満しげゆき氏の漫画とか読んだことある

俺も長らく彼女いない歴と年齢が一致していたけれど、それだけで自己肯定感が下がってたな。

いくら他人がうらやむような学校に行っていても、俺は誰にも選ばれない男みたいな自分卑下するような気持ちでいっぱいだった。

人によっては配偶者が別の悩みの種になる人もいるかもしれないが、いろんな自信を失っても「結婚しているんだぞ!」というのはそれなりの心の支えになる。

編集者と会うとき不安から妻に来てもらっていたらしいが、その気持ちわからんでもない。

居てくれるだけで安心感を与えてくれる存在ってあるじゃん

...と書きながら、鈴木大介氏も思い出した。

お妻様と一緒にいるとつらい取材も一人でやるよりずっと楽になったみたいな話を読んだ気がする。

2022-09-28

福満しげゆき新刊子供中学受験の話か。

この人のエッセイ漫画子供聡明だったり可愛かったりしないから好きなんだけど、西原の子供の件とかあったか大丈夫かよって感じになる。

2022-09-15

福満しげゆき

ふと思ったけど、福が満ちるってすげー縁起いい苗字だな

と思ったらもともとは福じゃなかったらしいへー

https://myoji-yurai.net/searchResult.htm?myojiKanji=%E7%A6%8F%E6%BA%80

富山県である越中国砺波郡福光村が起源ルーツである中臣鎌足天智天皇より賜ったことに始まる氏(藤原氏)利仁流井口氏族。ほか滋野氏(現長野県である信濃)などにもみられる。 「福」は深・吹などが転化したもの

2021-08-20

anond:20210820131926

あーもうめっちゃ読んじゃった

情けないけどこういうのが一番面白い

福満しげゆきとか……

2021-07-27

福満しげゆきクミンにはまってた

ツマの料理がなんかすげー店の味がする!っていってたら全部クミンはいってたっていう

2021-06-06

福満しげゆきの「僕の小規模な経済学」って本がすごいぞ

中流の没落とその怒り。

そして怒りが向かう先。

インテリへの不信感。

2013年に出た本らしいが現代を先取りしている。

よかったら読んでみてね。

福満先生洞察力に感服。

2021-02-17

anond:20210216153926

なぜかブコメ理解のある彼くんの反例として福満しげゆき夫妻が上がってるけど、あの二人はサブカル範囲内に収まる中でのマチズモ男とメンヘラ女という組み合わせなので全然違うだろ。年を取ってお互いそれなりに落ち着いたみたいだが。

理解のある彼女ちゃんって福満しげゆきの妻では

あのパターン

出会った時はスーパーサラリーマン病気

などの状態変化でもないし、

エッセイ漫画

だし

どうなんだろう

2021-01-10

福満しげゆきエッセイ漫画

自分の子供をブサイクに書いてるから好感持てるわ。

やらたと可愛かったり聡明エピソードを入れてくるエッセイ漫画イラっとする。

2020-12-27

anond:20201227201248

福満しげゆきはなんか反応してないか

てか、まだ付き合いあるんだろうか

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