はてなキーワード: 式年遷宮とは
式年遷宮、コストは500億だけど経済効果2400億以上なんだよね。
もちろん儲け出すためだけで遷宮やってるわけではないけれども、
文化を継承し、育てていくことが価値になっているわかりやすい例だ。
ロボット工学の偉い先生の講演を聴いてきた。あの311から、原発事故の現場に関わってきた先生の話だ。
先生の発表はとても熱かった。みんな資源エネ庁の公募に応じてくれと、国内の学者、技術者、国公立の機関、民間企業、あらゆる所から英知と技術を集めて、あのぶっ壊れた原子炉を何とかしようとしていた。なんか発表中ずっと、BGMに逆シャアのメインテーマが聞こえる気がしたよ。私はもう平常の研究開発、普段の企業の業務に戻った気でいたけど、その先生はまだ非常時モードで、まだまだ戦っていたんだ。
先生曰く、あのぶっ壊れた原子炉の中身、溶けてしまった燃料棒を全てきちんと片付けてしまうには、30年から40年かかるという計画がすでにたっている、のだそうだ。
建屋の最上階に人類が到達できるまで数年。もう一度格納容器を水で満たすまで10年。それからすこしずつ核燃料を取り出し、しかるべき所に処理を始め、終わるまで30年はかかるんだと。
先生はロボットが撮影した様々な動画を見せてくれた。水のシャワーが滝のように流れ落ちる中をあっぷあっぷしながら進むかのような、原子炉の中をファイバースコープで撮影したノイズだらけの動画もあった。多分その動画はないけど、東京電力はサイトでも結構、動画を公開しているのだとか。
原子炉で事故が起こった時に、最初に入ったロボットはルンバの会社の軍用ロボットPackBotだった。あれに、なんでロボット大国の日本なのに日本のロボットじゃないのか不思議に思った人、結構いたんじゃないだろうか。そのあと原子炉建屋に入った日本のロボットはQuinceという。千葉工業大学の先生が作ったプロトタイプだ。恐るべき走破性の高さで建屋の最上階まで行けたが、1号機は帰り道で自分でケーブル切っちゃって帰れなくなった。
重要なのは、PackBotは量産機で米軍がいっぱい持ってて普段からいつでも使えるように用意してあるのに比べ、Quinceは先生と学生さんが手作りで作った一点物であるということだ。これは想像だが、一点物のこのスーパーロボット、使おうとしたら先生の研究が遅れちゃったり学生さんがうっかりすると留年しちゃったりモーター焼けたら代わりのモーター買うのに先生がやたら書類書かなきゃいけなかったり下手すると論文に間に合わせるために学生が居酒屋で稼いだ私財を投入しちゃったりするようなものなんじゃないだろうか。私の理解では、大学の研究室のロボットというのは大体そんな感じの物だ。でも、ルンバはいつでも買えるようになっているよね。リアルロボットであるというのはそういうことだ。PackBotもお金出したら米軍はいつでも売ってもらえるんだ。
2001年には、原子炉やその周辺で動けるロボットというのは、プロトタイプではあったが、相当数あったらしい。バケツでウランかき回した奴がいたせいで開発予算が付いたんだね。でも、ついたのは開発予算だけ。2011年には、動く状態で残っていた当時のロボットというのはなかったんだと。10年というのは、そういう歳月なのだ。
原子炉建屋の外で遠隔操作の建機ががれき除去を始めた時、何で中のロボットはないのに外のロボットはあるんだよ、と思った人はいないかな?あれな、雲仙普賢岳の火砕流から街を守る建設をする時に開発が盛んになったものが、今でも技術が受け継がれていつでもお金出せば買える状態になってるんだって。屋内の作業ロボットは滅びたのに、なんで遠隔施工建機は生き残っていたんだと思う?
これはな、国交省の役人が意図的に生き延びさせたんだそうな。私が思うに多分、まるで伊勢神宮の式年遷宮のように、工事費の多少の無駄は承知で、「この工事は無人でやらないと入札できません」ってやったんだと思う。そのおかげで、今、建屋の外はかなり片付いている。原子炉敷地内の線量マップもスライドに出てきたけど、ほとんどが2ミリシーベルト毎時以下まで下がってた。高いけど、即死はもうできないレベル。
日本の技術ってのは、プロトタイプを作るところまではアメリカにそんなに顕著に劣ったりしないんだと。ただ、無駄かもしれないものを軍が買い支えて育てるシステムがあるアメリカと違い、日本はプロトタイプが良くてもすぐ死滅しちゃう。商用に持ち込まないと、生き残っていけないから、なんとか技術を維持するために無理してでも需要を創出していかないといけない。ロボット工学の偉い先生は、そう語っていた。
これさあ、原子力技術にも言えるんじゃないかと、私は思う。原発事故の本当の終わりまで40年かかるのであれば、今まだ生まれていない子供が育ってたずさわらないと、終わらない。じゃあ、それまで原子力業界にちゃんと人が流れ込むようにきっちりと産業として生きていないと、こわれたあの原子炉は片付かないんだ。
まあこの辺でわかってもらえると思うけど、私は今の夏までに原子炉を動かすだの動かさないだの、そういうのは馬鹿馬鹿しくなっちゃった。とっとと動かして、その間に万が一への安全策増設を淡々と設計して、次の点検の時に追加すれば良いじゃない。即座の脱原発なんて無理よ無理。だっていちばん危ないのが片付くのが40年後、そこに40年後までまともな技術を供給し続けないといけないのだから、40年後まで他の原発もある程度動いていないと、技術の継承的に無理がある。40年後片付いたら、完全な脱原発の作業がやっと始められるんじゃないかな。
追記:6月10日正午
技術がおのずからお金を稼いでこないと、その技術を維持継承発展するのには意外なほど膨大なコストがかかるよ。
いわゆる伝統芸能、伝統工芸で残ったもの残っていないもの、投入されている公的な予算を考えると良いよ。
日本の場合軍需にお金がちょっぴりしか出ないから、それ以外の公共や民間がよろこんでお金を出すような需要を創出しないと技術は簡単には残っていかないよ。