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2023-12-29

anond:20231229024721

追記

日の名残り」の該当部分を抜き出したブログを見つけた。

https://blog.goo.ne.jp/gon_chan_old/e/729be69a41578be15217b17ddebd65ac

この記事では原作映画におけるその評価の違いが比較されているが、どちらにせよ、貴族政治名誉理想を重んじて鈍重なものアメリカ民主的政治=実利重視結果重視の現金ものという見方は変わらない。

銀英伝における同盟帝国の描かれ方とは真逆と言って良いくらい違う。

銀英伝の『帝国主義』は当時の言葉で言う『米帝』のようなイメージを感じるし、それに対する同盟民主主義と言うより社会主義クーデター政権の色が強い。

これを根拠民主主義帝国主義なんて語るべきではない。その手のオタク政治観は実に歪んでいる。

銀英伝

ある意味で、作中で一番民主主義的なヒーローの描かれ方をしてるのが、ラインハルト皇帝なんだよな。

ラインハルト能力主義って、アメリカなんかの大統領イメージに近い。

ヤン・ウェンリーみたいなオタク技術屋が安穏とやりたいことができるのは、昔の日本とかみたいな官僚主義イノベーションのない国。

まあ、作者の時代左翼は「アメリカ米帝帝国主義」なんてイメージから、むしろ本当の民主主義的な汚い政治専制君主世界に馴染むと本気で思って書いてたのかも知れない。

 

タイトルは忘れたが、第二次世界大戦を描いた映画で、イギリス貴族議員が、アメリカ実業家政治家に「貴族政治アマチュア政治アメリカは『プロ』の政治なんだ」と叱咤されるシーンがあったが、ああいう本当の西欧の「政治感覚は、こんな漫画で学んだつもりになってたらわからいね

 

※うっすら思い出したけど、多分カズオ・イシグロの「日の名残り」だったような気がする。最初は気の良い人だった貴族が、世間空気に流されて段々ユダヤ人召使い差別しだす話。

2023-11-02

翻訳文ってどうしても読者からそっぽを向いた冷たい文章になってしまいがち

読みはじめた瞬間あ、これは自分に語りかけている文章ではないな、とわかってしま

から読もうと思ったら自分から意識的に没入していく必要があって、しんどい

その辺を意識させない翻訳者こそがプロなんだろうなと、日の名残り日本語訳とか

2023-10-02

Amazonジェフベゾスがリーマン時代背中を押されて独立する一助になったと言われるカズオイシグロの『日の名残り

これは主人公が己の生涯を後悔している様を受けて、自分は後悔のない人生を歩みたいと思ったから、という理由らしいが、“人生を変えた一冊”的なリストに『砂の女』を挙げる人のその理由もまたこうはなるまいという動機がちだよね。反面教師的な

2023-01-04

カズオ・イシグロ大体読んだけど好きかわからなくなった

わたしを離さないで」(2005)

臓器移植のために育てられた人間の子どもから大人になるまでの記憶を綴る。

かに美しい小説だ。子供から大人になるにつれて、見える世界は広がっていく。たとえそれがどれほど酷なものであろうとも、子供たちはそれを受け入れねばならない。語り手は振り返り、ひとつ出来事を大切に手の中で壊れやすい卵を計るように並べている。

読者も少しずつ、まるで語り手と一緒に育っていったかのように、事の真相を知らされていく。細やかな、性格を端的に示すエピソードミルフィーユのように繊細に重ね、誰もが持つ幼いころの記憶登場人物シンクロさせる手際は見事と言っていい。主役三人の性格の違いとそれによっておこる対立の見事さは、この小説SFというよりも性格劇に分類したくなるほどだ。夢中になってはまる本とは違うけれど、読む価値はとてもある。

しかしながら、感情描写文章リズムがうますぎるあまり、根幹のSF的設定が、ふと荒っぽい夾雑物にまで見えてきてしまう瞬間がないでもない。細密な建造物を支える、太すぎる柱にたとえればいいのだろうか。

そもそも臓器移植のためだったら、人間を育てるんじゃなくて臓器だけ培養すればいい。

どうも舞台となっている世界技術水準や、テクノロジー社会に与えるインパクトの細部の詰め方が幾分甘い。

日の名残り」(1989)

かつて仕えた主人が第二次世界大戦中に対独協力者で、それを理由戦後に没落したため、その屋敷を買った米国人に仕えることになった執事の話だ。カズオ・イシグロ本領である、決定的な本音事実意図的にあるいは無意識に隠したまま語り続ける居心地の悪さ、気持ちの悪さがいかんなく発揮されている。

熟読すると面白いが、何があったかは作中では基本的には明確に語られているのもいい。

かつてはほのかな思いを寄せていた同僚であった女中からも、今となっては過去の人とみなされており、最後自分人生って何だったんだという悔恨にさいなまれるシーンは最高だ。

かつての美しいイギリス風土と、失われた執事美徳悪徳について。感情に蓋をしがちで、行動原理自分の「したいこと」ではなく「なさなければならないこと」になっているひとにおすすめしたい。面白かったので英国メイド執事の本を何冊か読んだ。

遠い山なみの光」(1982)

長崎出身現在イギリスの片田舎に住む悦子(語り手)の所へ娘のニキがロンドンから訪ねてくるところから始まる。ニキが言及する悦子の生涯を、ニキからのまた聞きや、写真の印象だけから詩にしようとする詩人が出てくるのだけれども、なんだか作者自身創作する自分のことを批判的に見ている姿が透けてみえる。全体として、シングルマザーとしての苦しみが複数語られている。

これは褒め言葉としていうのだけれど、読んでいてずっと不穏な感覚をぬぐうことができず、いいようのない気持ちの悪さがある。たぶんその正体は登場人物の会話が互いの自己主張に終わっていて、基本的相手の話を全然聞いていないところにあるのだろう。会話の形をしているのに、対話になっていない。むしろ並行する独白だ。映画脚本のお手本的でもある。

最初のうちは、この違和感終戦直後日本人ならこんなあからさまな会話なんてしないだろうからにも思われた。しかし、明治文豪の名作だって、会話が人工的であることも少なくはない。ただ、この作品ほどのひどい噛み合わなさはまれな気がする。少なくともあちらでは噛み合わせようという努力はしている。

台詞説明したり議論したりする手法は、大抵は粗削りというか不器用な印象を与えるので好まないのだが、この場合コミュニケーション不全というか、相互理解の失敗の雰囲気をよく伝えていて、効果的だった。

浮世の画家」(1986)

情けないかつての画家の話。老い第一線を退いた後も、自分はまだ影響力があると思いこんではいたが、世間自分存在などすっかり忘れている。自分のしてきたことなど、大したことではなかったのではないか、それどころか完全な誤りだったのでは。歴史によってそう裁かれることに怯えている。老人にとって、今までのお前の人生は何だったのか、と問うことほど残酷なことはあるまい。

そのくせ、隠しようのない自己満足防衛がどこまでも続いており、かつては地位のあった老人はどこまでのその虚飾から自由になれない。計算したうえでのことかどうかわからないが、この翻訳日本経済新聞の「私の履歴書」の文体そっくりだと思ってしまうのは、私のやっかみであろうか。

やはりカズオ・イシグロ真骨頂は情けのない自己弁護にある。

充たされざる者」(1995)

よく、入り組んだ官僚機構カフカ的というけれども、どっちかといえばこの作品みたいなのがカフカ的な気がする。過去というか記憶曖昧で、自分そもそも何をしたいのかわからず、その場の判断だけで物語全体が動いており、映画なんかでは必須の究極の目的・ゴールも曖昧だ。「夜想曲集」所収の旅する芸術家あるある話がベースになった作品と同じにおいがする(この短篇集は切り口の優れた良き英国短編集といった趣だ)。

すべての事件が宙ぶらりんのままにされて進み、星新一ショートショートでその場限りの対応しかしない軽薄な男を主役としたこんな作品があった覚えがあったことを思い出したが、読んだときにはどうしてもタイトルが思い出せなかった。それは結局「未来そっぷ」に収録された「熱中」であるとわかるんだが、一番満たされていないのはきっと読者だ。

カズオ・イシグロテーマひとつコミュニケーション不全が前面に出ているだけでなく、筒井康隆虚人たち」を思わせるような、自分が何者であるかわかっていないのにさほど気にしていない空疎さがあり、何かを風刺しただけではないのだろうが、それはまだ読み取れず。

奇妙だ。自分他人記憶の壁が溶けて無くなってしまったみたいな語りであり、語り手は身内だと感じるとちょっとしたことですぐに激昂したりすすり泣いたりして、いったいどういう人物なのかとらえどころがない。すべてが宙づりで半端なまま物語が終わる。語り手はどの街を訪れても、延々と同じことを繰り返すのだろうか。

わたしたちが孤児だったころ」(2000)

両親に置いていかれたのはなぜか、そして母はどこに行ったのか。著者の中では一番残酷な話かもしれない。物理的な暴力よりもその結末が。地獄の寝取らせ小説であり、真理に近づこうとして全員が不幸になる。それでも、なお、愛そうと試みたし、愛されてはいたのだ。

息子が親父と同じ道ならぬ愛という過ちを犯しかけるのは残酷ユーモアがあふれているようでいて、ある種の試練であったのだろう。試練に打ち勝ったからと言って直接幸福になるわけではないのが皮肉でいい。

追記】目の前に日本軍軍艦が停泊してるのにのんきにパーティーしている租界の人々って嫌なリアリティがあった。

忘れられた巨人」(2015)

忘却テーマだが、P・K・ディックのようにアイデンティティ曖昧になっていく離人感よりも倫理的な面を問うているようだ。つまり戦争責任とか政治的意図的隠蔽とか。

国家組織的に目を背ける行為と、個人がつらい過去を忘れることによって救われることの両方が描かれている。ファンタジーもある程度は書けるのがすごい一方で、見たくないものを見ようとしない描写や、自分のことばかりで会話が成り立たない場面は健在。

ファンタジーにしては「危険度」とか「スタミナ」の訳文がちょっといかなとも思ったけれども(別に嫌だと感じるレベルではない)、これは現代日本語としては普通に受け入れられてるのかな。

あと、サクソン人の穴を掘った(ホビットみたいな)家の描写があるんだけれど、これって実際にそうだったのかな? サクソン人の家とググっても出てこなかった。

ちなみにル・グインはこの作品を好まないらしく、ウィキペディアには両者の対話引用されている。

のしようとしたことには敬意を払いますが、私には効き目がありませんでした。うまくいくはずがありません。どの作家文学ジャンルの表層だけをうまく使えません。その深みはなおさらです。そのジャンルと同一化することを恐れるほど軽蔑している限りは。読んでいて痛ましく感じられました。まるで、高いロープから落下しながら聴衆にこんな風に叫んでいるみたいでした。「私は綱渡り芸人と呼んでもらえるのかな?」と。

ル・グインには私の本が好きか嫌いかを決める資格がありますが、私に関する限りは誤ったほうの肩を持っているようです。私は(註:作中では不可解で不気味な存在として現れた)妖精や竜の側に立っています

シグロ氏のご意見をうかがえてうれしく思います。同氏の「私の作品ファンタジーだと人々は思うでしょうか?」という質問に対する、私の明らかな早急な返答に傷つけるような内容があったことをお詫びします。

クララとお日さま」(2021)

人工知能太陽光病気回復させる効果があると思い込むことで起きる珍妙な話だ。

どう考えても不合理で奇妙な信念に従い、偶然によって祈りが叶えられる話で、しか最後はただゴミ捨て場で朽ちていく。これは無神論者による宗教パロディではないか? と勘ぐってしまう。無神論者からすれば、いかなるかたちであれ神を信じる人々は、誤った信念にすがり、存在しない相手効果のない祈りをささげる哀れな人々だ。

カズオ・イシグロSFは、SF主食人間からすると、不合理か古い知識に基づくように感じられる設定が多く感動すべきシーンもそこが気になってしまう。

たとえば、明らかに危険能力向上処置子どもにするような社会は、現代から相当な価値観の変遷があったはずだし、かなりの時間を経ていないと起こりえないだろうが、長い時間経過に伴うテクノロジーの発達については述べられていない。スマホさえ出てこない。

カズオ・イシグロSF設定がときどきザルなのはリアリティレベル小説よりSF風の映画テレビドラマくらいにまで下げていて(下手をすれば寓話絵本レベルまで)、それは脚本家でもあったからなんじゃないかって考えたんだけど、そこまでたくさん脚本を書いていたかまではわからなかった。

かに技術的細部に立ち入らないので古くなりにくい一方で、そこが物足りなく感じられる。新しい技術だけをポンと現代に放り込んだ感じで、今と地続きな感じがして生活感があるのはいいけれど、技術によって完全に変容してしまった人類の心性がもっと欲しいと感じる。未来を描く意味はそこにあるんじゃないだろうか。

だいたい、フレーム問題解決というか一般常識インストールされてないスタンドアローン親友ロボットなんて危険すぎるだろう。誰もアップデートされないスマホなんて使っていない。SFはどこまでリアリティのある技術を出すべきかという問題もないではないが、短編ならともかく長編でこのネタをこれをやるのは、平均的理系知識を持つ読者にとってはかなりしんどい

結論

以上。読んだ順。

私が好きなのはカズオ・イシグロではなく「日の名残り」だった。

追記

わたしを離さないで」だけ既読、似た感想。この小説SFというより寓話に近いと思う(増田も書いてた)。ドナー人権周りの描写も臓器を貰う側の葛藤も削ぎ落とし、搾取される者の命の輝きのみに焦点を絞ってる感じ

こちらのブコメがとても素敵だったので引用させていただきました。不都合がありましたらお知らせください。

2022-12-17

『あの時好きだった子の結婚式』のダメージ、でか過ぎて息ができん

時間は止まらない。ハレルヤ・チャンスは来なかった。一度だけスポットライトを眩しく感じて、もしかして、と、一縷の希望を抱いてみたりしたけれど、キザなシルクハットの初老妖精が私の前に現れることも、テーブル芽キャベツを摘んで飲み込み、私の過ちを揶揄することも、「後悔しているか」、と問われてどうしようもなく狼狽える瞬間も、ついに空想のままで終わった。当たり前だ。

彼女は数少ない私の貴重な友達の内の一人だった。そしてそんな私とは反対に、彼女にはたくさんの友達がいた。学生時代というのはこの世で最も尊く煌めいて、同時に最も残酷な数年である特に女の人生にとって。

女の子は可愛ければ自然友達ができる。綺麗な女は同性の好意さえ簡単に集める。綺麗でなくては、女の子特別にはなれないのだ。というのは、私が散々惨めな高校生活を経て脳裏に刻み込んだ偏屈極まる私見である。器量が悪くても幸せな女など無限存在していることに薄々いや割合はっきり勘付きながら、私はなんとブスであることに諦めがつかないとんと哀れなブスだった。要するに学校で一番痛ましい存在である悲劇はブスに生まれた所からではなく私だって美人になりたいと望み始めたところから始まる。一軍になりたい二軍、美人になりたいブス、男にモテたい喪女、目立ちたい陰キャ…………。

そんな救いようのない私の目前に彼女はまるで天使のごとく現れた。今で言う「たぬき顔」みたいな甘たれた顔立ちで、柔らかく日焼けしたセミロングの髪を緩やかに編んで両耳の下から下げ、私より背が高かった。本当にかわいい子だと思った。入学と同時にバスケ部に入部し、放課後はいつも臙脂色ハーフパンツを履いていた。

私の何を気に入ったのか知らないが、彼女は私に本当に良くしてくれた。二人で写真を撮ってくれたし、連絡もマメに取り合った。ビタミンカラーペンケースは色違いでお揃いだった。勉強で多数の上に立つことにしか一生懸命になれない私だったが、彼女に誘われればテスト前だろうと遊びに出かけた。

当時の私は所謂一軍グループに属することしか考えていなかった。そしてその野望は結論から言えば5割方は達成されていた。要するに、キラキラグループには入れたが当然自分自身キラキラにはなれず、なぜか一軍にいるぱっとしない子、という塩梅にそれでも自分立ち位置にそれこそしがみつくようにして生きていた。自分自身の最も忌むべき点は、身の程知らずに一軍になりたいと望んだことより、そこにいる友人たちをステータスしか捉えていなかったことにある。

7人グループは8年の時を経て解体し、彼女の式に呼ばれたのは私を入れて3人だった。

彼女と遊ぶとき、私はいつも憂鬱だった。

何人かで約束した日は良かった。でも二人きりの日は不安だった。なんのために私と二人で会い、何を求められているのかまったく不明だったからだ。私にとって、彼女かわいいというだけで彼女を好く理由は有り余るほどにあった。だからその逆が本当にわからなかった。けれど、顔を見れば不安は消えた。彼女はいつも本当に楽しそうに笑う。

好きな人がいるの、と、仲良くなってすぐ彼女は私に打ち明けた。あいつに可愛いって思ってもらえたら、他の誰に思われなくても構わない。校外学習に行くバスの中でひっそりと告げられた声の温度も、一緒に口ずさんだ阿部真央の曲も、午後3時半頃のあつい夕日も全部はっきり憶えている。

私も気になる人がいる、と、口から出まかせのように呟いた。そうしないと彼女がどこかに行ってしまう気がした。彼女好きな人がいたから、私にも男の子必要だった。彼女と恋話をするために必要だった。クラスメイト脳内で全員スキャンして一人の名字を口にした。彼女のくりくりしたタレ目がおおきく見開いて、絶対いいよ、とひどく嬉しそうに笑った。

咄嗟名前を上げた男の子ホームベースのような顔の形がバスの前の方に見えていた。彼女の「絶対いいよ」、を聞いて、私もなんか、そんな気になった。

同じ教室で過ごしたのはたった一年のことだったが、その後の文理選択教室棟ごとクラスが離れたあとも、彼女と私の友人関係は変わらず続いた。休みの日には二人でカラオケに行ったし、相変わらず毎日のようにラインも続けた。何でも話せるふたりだった。けれども、いつまでたっても彼氏ができない私に気を遣ってか、いつしか恋愛の話だけはしなくなった。

高校3年生の頃、私が隣町から通っていたその市で一番のお祭りに一緒に行こうと誘われた。テレビ取材もくる大きなお祭りで、5月連休という時期的条件もあり、受験の年を迎えた同級生たちが最後の楽しみにと、こぞって一番の関心を寄せるお祭りだった。その高校生にとって特別な1日に、彼女はどうしてか私を選んだ。彼氏でも気になる人でも他の多くの華やかな友人たちでもなく、私を。やはり意味がわからなかった。

彼女がお揃いにしようと言ったから、一緒に服を買いにいった。その頃の私は醜形コンプのまさにピークにいて、服屋の商品に触れるときすら手が震えた。それでも、明るい彼女に悟られたくなくて我慢してひょうきんに振る舞った。

当日のことはよく覚えていない。彼女が知り合いとすれ違って挨拶するたび居た堪れない気持ちになっていた気がする。その日もやはり最後まで、彼女がどうして私なんかといたかったのか、ほんの少しもわからなかった。ただ、群衆を避け、駅前の寂れかけのイオン屋上で見た小さな花火だけはなんとなく覚えている。幼い日の名残りか、彼女はいつまでもその建物ダイエーと呼んでいた。いつ行っても盛れないプリクラ機のある小さなショッピングモールだった。

いいのか、と問うと、いいのだと答えた。疲れたからいいよと。彼女にとっては、十数年住んだ街での最後祭りだった。それなのに、小さな花火でいいと言った。暗がりの中の少し眺めの顎先まで好きだった。

長く続いた私達の友情がぷつりと途切れたのは大学入学してすぐのことだった。互いに遠く地元を離れたあとも私達はまめに連絡を取り合っていたと思う。夏休みに私が彼女の家まで行き、二人で遊園地に行った。例のごとくおそろいのワンピースを着て、髪を染めてまた綺麗になった彼女はとても目立っていて、キャストによく声をかけられた。それっきりだった。

その後私は整形をし、地元に顔を出さなくなった。加えて、正しくいなくても済む大学での人間関係に夢中だった。何より、また性懲りもなくその内の一人のことをしごく特別に感じていた。その子もまた、私には釣り合わないくら可愛い子だった。

たまにインスタで見る彼女はやはりあの本当に楽しそうな顔で笑っていた。気がつけば同じ高校の別の友人とおそろいの服を着て旅行していることもあった。もしかしたらそこにいたのは私だったかもしれない。そういう写真を見るとき、私はいつもそういうことを未練がましく考えた。自分から手を離しておいて全く自分本意な話である。けれども横に写っているのは私達の高校で一番かわいかった女の子で、その方がずっと彼女釣り合っている気がした。

彼女から招待状が届いたのは、それから数年後、すっかり社会に出て2年が経つ頃だった。

式は、まったく素晴らしいものだった。

私のイメージにあるステレオタイプな挙式とは全く違って、カジュアルで、愛に溢れ、来てくれるすべての人に楽しんでもらおうという新郎新婦の人柄がこれでもかというくらい詰め込まれた温かな数時間だった。遊び心とホスピタリティに溢れ、ほんのひと時も漏らさず楽しめる、本当にいい式だった、と、思う。円卓に集められた同じ高校の友人たちは皆美しく、ドレスの中で綺麗だった。

数名の友人代表が立ち上がり、彼女のために手紙を読んだ。どの子もとても綺麗で、どの子も同じように泣いていた。泣いていたのだ。チャペルのドアが開いた瞬間、披露宴に現れた瞬間、新郎が亡き父親手紙を読む瞬間に、その場にいる大勢が泣いていた。

ついに私は親友にもなれず、それでもなぜかここに呼ばれて、のこのこ顔を出しては無理に笑って突っ立っていた。

ありえないほど似合わないドレスに妙な頭に、他の友人達とはとてもじゃないが釣り合わない不器量な面構えで、たった一度も笑顔で手を振る花嫁の目を見れないまま。

久しぶりに会いたくて、と、彼女電子招待状と一緒に添えてきた。思い切って招待状を送ったのだと、だから、こ断ってくれても構わないのだよ、と。

そういうところが好きだった、私の臆病も偏屈も一息に飛び越えてなんでもないような顔で笑うあなたの、正しいところが好きだった。数年言葉をかわさない友人を、同窓会キャンセルするような私を、逢いたいと言う一言で誘ってくれるような貴方のその身軽さが、屈託のなさが、あなたのことが好きだった。

"嬉しいときは私より喜んで、悲しいとき自分の事のように泣いてくれる"

名前も知らない友人代表は立ち上がってそう読んだ。

知っている、と思った。

知っている、そんなこと。だから好きになったのだ。そういうあなたから、私はあなたを好きになった。

もしも私が男だったら、と、百万回近く考えた。もしも私が男なら、私はあなたと付き合いたい。

本当は違った。本当は、女のままでも、私のままで、私はあなたと添い遂げたかった。真っ白なドレスを着たあなたの、あなたの立っているのは私が良かった。スポットライトの当たるソファに私と一緒に腰掛けて、私の物語に泣いて欲しかった。

名前の知らないたくさんの参列者が、かつて同じ制服を着ていた友人達が、あなた幸せを願って涙する中でたった一人わたしが、私だけが、私のためだけに泣いていた。あなたのことが好きだった。たった一つ、その気持ちだけで泣いていた。ピンクグレーのカクテルドレスに身を包んで笑う、彼女世界一綺麗だった。

性格の悪い私は、あわよくばこれを読んでくれないだろうかとさえ思っている。ほんの小さな爪痕でも残せたら。

それでも、正しい彼女ははてぶなんて見ない。だからこのまま私の恋はここでゆっくり死んでいく。

祝儀袋に手紙を入れた。マナー違反かもしれないが、知るかと思ってぶち込んだ。「あなたのことが大好きだった」「今も、そしてこれからも」

大好きだよ、愛してるよ。

高校時代彼女はよくハグをしながらそう言った。大好きだよ、愛してるよ。

何でもないことのように付け加えた、大好きの意味はきっと伝わらない。それでも、私はあなたが好きだった。今も変わらず、好きだった。

2022-07-02

カズオイシグロ作品全部読んだ

最初に呼んだのが去年の秋ごろだから、3/4年位で単行本になってるの一通り読んだ事になるのかな。

個人的に、一番難解なのは「充たされざる者」で(多分これにはほぼ異論ないはず)、大きく開けて時点が「わたしたちが孤児だったころ」。

簡単作品(というと語弊がありそうだが)は、短編集の「夜想曲集」と、「わたしを離さないで」「日の名残り」あたりかなぁ。情報科学系の知識がそれなりにあるなら「クララとお日さま」も。


個人的お勧め順は「クララとお日さま」「忘れられた巨人」「遠い山なみの光(女たちの遠い夏)」。


ノーベル賞受賞時は日本出身なだけで名誉日本人みたいな報道の仕方すんなと思ってたけど、思ってたより日本的な所があるように感じた。日本的なんじゃなくてただ普遍的なだけなんだろうか?日本舞台の「遠い山なみの光」「浮世の画家」だけじゃなくて、イギリス舞台の「日の名残り」も結構日本臭がしたんだよなぁ。

でも、その後の作品はそうでもないかも。最初に読んだのが「日の名残り」だったので、思ってたより日本臭さを感じた印象が強かったのかな。


まり本を読むという事をしなくなって久しかったんだけど、カズオイシグロ作品読んで見ようと思ったのがきっかけで他にもあれこれ読み始めた。記録を見れば月3冊くらいのペースで読んでる人から見たらゴミみたいなもんなんだろうけど、いい習慣がついた気がする。

2021-03-01

必読書コピペマジレスしてみる・自分オススメ41冊編(1)

日本文学編(anond:20210222080124)があまり注目されなかったけれども、記憶を頼りに続きを書く。

芥川龍之介河童

どの作品を入れるべきか迷った。古典翻案に見られる知性とユーモア晩年作品にみられる迫害的な不安、どちらの傾向を持つ作品であっても、元文学少年の心をひきつけてやまない。特に歯車」などの持つ、すべてのものが関連付けられて迫ってくる凄味は、学生時代に再読したとき、行き詰まりかけていた学生生活不安と重なり、ただただ恐ろしく、読み終わってからしばらくは寝床で横にならされた。

河童」を選んだのは中高生の頃で、河童の国を旅する要素に心を惹かれたことを思い出したからだ。それは、大学生の頃よりも不安が弱かったからなのか、この作品に潜む女性への憧れと恐れが自分に響いたのか、あるいは架空世界架空言語に魅せられたのか、その理由はわからない。

ハンス・クリスチャン・アンデルセン雪の女王

アンデルセン小説を読んでいると、きっとこの人モテなかったんだろうなあ、ってのがひしひしと伝わってきて、何だったら今晩一杯つきあうよ、的な気分にさせられる。一人寂しいときへの痛みと、女性への復讐心が入り混じっていて、読んでいて心がきりきりとする。

で、この作品の中でひたすら「いいなあ」と思うのは、悪魔の鏡のかけらが心の中に入ると、どんな良いものもその欠点ばかりが大きく見えてしまうという設定だ。

ところで、ディズニー作品価値貶めるつもりはないけれど、原作とは全然違う話に似たタイトルをつけて世界中に広げるのってどうなんだろう。デンマーク人は怒らないんだろうか(「人魚姫だって原作改変をやってるし……。いや、ディズニー普通に好きなんですけど、最近こうした異文化の扱いって難しいですし……)

グレッグ・イーガン祈りの海」

「白熱光」にしようかと思ったのだが、これはエイリアンニュートンアインシュタイン物理学自力発見していく過程が延々述べられるだけの話で、燃えるけれども物理学の基礎をかじっていないとちっとも面白くないのでやめた。ついでに、彼の欠点として「科学者エンジニア最高、政治家宗教家文学者は役立たずのクズ」という態度を隠そうともしないところがある。要するに理系の俺TUEEE小説なのだ。それに、しょっちゅうヒロインから説教されるし、作者はいったいどういう恋愛経験をしてきたか非常に心配になる。

そうしたえぐみ比較的少ないのがこの短篇集で、最初に読んだ本だから愛着がある。それに、上の隠しきれない欠点にも関わらずイーガンが嫌いになれないのは、科学的な真理に向き合う姿勢と果てしのない好奇心がかっこよく、さらに己に課した厳しい倫理に身が引き締まるからだ。

カズオ・イシグロ日の名残り

友人と富士山に登るときに持っていったこともあり、これも自分にとって思い出深い小説だ。これは、大戦後の新しい時代適応できない英国執事物語である

彼の小説の語り手は基本的には何かを隠していることが多いので、いつも歯に物の挟まった言い方をする。そのうえ、誰もが自分の信念にしがみついているものから登場人物同士の会話は勝手な主張のぶつけ合いになり、実のところ会話になっていない。

カズオ・イシグロはそうした気持ちの悪さを楽しむ作家だ。そして、「日の名残り」は自分の本当の気持ちに蓋をして生きている人、やりたいことよりもやるべきことを優先してしまう人に、刺さる作品であるに違いない。

ミシェル・ウエルベック素粒子

彼の作品不快だ。主人公のボヤキは原則として次の通り。俺は非モテから思春期の頃には思いっきセックスできなかった(2023年10月3日追記。「処女と金銭のやり取りなしでイチャラブできなかった」が近いか?)。中年になって女を金で買えるようになったが、ちっとも楽しくない。子供も老人もみんな大っ嫌いだ、バーカ! これはひどい

作中に出てくる西欧文明の衰退だのなんだの宗教への逃避だの一見知的に見える議論も、すべて上記の嘆きを補強するためのダシに過ぎない。それでもなお、なぜオススメに入れたのかというと、人をエゴ抜きで愛することの難しさを逆説的に語っているからだ。そして、自分が愛されておらず、必要ともされていないと感じたとき人間がどれほど孤独とみじめさを感じるかを緻密に描いている。皮肉なことに、これは性と愛について真摯思考した書物である

ただ、どの作品も言っていることが大体同じなので何冊も読んではいない。

ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人

僕がウルフのことが好きなのは、単純に文章が美しいというだけじゃなくて、迷っている人間の頭の中で浮かぶ複雑な段階が細かいところまでよく見えているからだ。例えば親しい人への憎悪が浮かび、言葉ではそれを否定して見せるが、態度にふとこぼれ出てしまう。そうした過程子供が貝殻を見つけたときのように、ひとつひとつ並べている。

そして、意識の流れとでもいうのか、ある人物意識から別の人物意識へと、外界の描写連想を経てシームレスに移行していく感じが、本当に巧みな脚本映画みたいで、やっぱり映画って文学から相当影響を受けてるんじゃないかって勘ぐったりするのだけれど、本当のところどうなのかは知らない。眠る前の自分意識もふと過去に飛び、すぐに現代に戻り、夢想し、眠りに落ちていく。

灯台へ」とどっちにするかこれも迷った。

ミヒャエル・エンデはてしない物語

さえない少年万引きした小説を読んでいると、いつしかその物語の中に取り込まれしまう。これは主人公異世界に行き、そこでなりたい自分になるが(まさに公式チートだ)、その報いとして自分自身が本当は何者であったかをどんどん忘れてしまう。何よりも面白小説なのに、その小説現実に向きあう力からではなく現実逃避の手段となることの危険性を訴えている。主人公が万能チート野郎になってになってどんどん嫌な奴になっていく様子は必見。また、後半で主人公を優しく包み込む人物が、私の与えたものは愛でなく、単に私が与えたかったものに過ぎない、という趣旨台詞を言うシーンがあり、これが作品の中で一番自分の心に残っている台詞だ。

ちなみに子どものころ映画版を見て、原作とは真逆メッセージストーリーになっているのにショックを受け、初めて原作破壊行為に対する怒りを覚えた。僕が大人商業主義を信用しなくなったのはこれ以来かもしれない。

円城塔文字渦」

基本的自分は何かを知ることが好きで、だから知識の物量で殴ってくるタイプの彼の作品も好きである。それでいてユーモアも忘れないところが憎い。フィクションとは何だろう、言葉文字物語を語るってそもそもどういうことだろう、そうしたことをちらりと考えたことがあるのなら楽しく読めるはず。「Self reference Engine」で抽象的に触れられていたアイディアが、漢字という具体的な文字によって、具体的な形を与えられている。

元々SFの人だけれども、最近日本古典にも守備範囲を広げ始めていて、SFが苦手な人も楽しいと思うし、慣れたらSFにも手を出してほしいとこっそり思っている。

遠藤周作沈黙

どうしてこれほどあなた信仰しているのに、手を差し伸べてくれないのですか。せめてささやか奇跡あなたがいらっしゃるということだけでも示してください。そういう人類が何千年、何万年も悩んできたことについて。神に関しての抽象的な疑問は、具体的な舞台設定を与えないと机上の空論になる。

以前も述べたが、ここに出てくる仲間を裏切ったりすぐに転向したりしてしまう情けないキチジローという人物がとても好きで、彼の「迫害さえなければまっとうなキリシタンとして生きられたのに」という嘆きを、情けないと切り捨てることができない。

ただただ弱くて情けない人物遠藤周作作品にはたくさん出てくる。だから好きだ。僕が文学にすがらねばならなかったのは、それなしには自分の弱さ、愚かさ、卑怯さ、臆病さ、ひがみを許せなかったからで、強く正しい主人公たちからは救われなかった。

イタロ・カルヴィーノ「冬の夜一人の旅人が」。

男性読者」という名の作中人物が本を買うが、その本には落丁があった。続きを探すために彼は同じ本を手に取った別の読者である女性読者」を探し求める。彼はいろいろな本を手に取るが、目当ての本は結局見つからない。枠物語の内部に挿入されるつながらない小説の断片は、それだけでも完成度が高く、まるで本当に落丁のある文学全集を読んでいるような楽しみがある。

世界文学パロディー化した物語のページをつないで作った「鏡の中の鏡」かと思わされたが、それ以上のものだった。語りの文と物語関係とは、新作と偽作とは、そんなテーマ物語レベルメタレベルの二つの層の間で錯綜して語られている。

ダニエルキース「アルジャーノンに花束を

知的障害者チャーリーゴードンが脳手術で天才になるが、その知性は長続きしなかったという悲劇として知られている。けれども、僕はこれをただの悲劇として読まない。障害者セックスについて正面から向き合った最も早い作品の一つだからだ。

チャーリー女性の裸を考えるだけで罪悪感からパニックになってしまう。それは母からの過度な抑圧と体罰が原因だったが、それはチャーリーの妹を彼の性的好奇心から守ろうとするが故の行動だった(チャーリーの母が、周囲からもっと支援を得られていたら、あれほどチャーリーにつらく当たらなくて済んだんではないか、とも思う)。

天才になったチャーリーは恋をし、トラウマを乗り越え、苦労の末に愛する人と結ばれ、やがて元の知的障害者に戻ってしまう。一見すると悲劇だが、彼にはセックスに対する恐怖がもはやなくなっている。彼がただの障害者に戻ってしまったという感想は、その視点が抜けているのではあるまいか

ナタリア・ギンズブルグ「モンテ・フェルモの丘の家」

素晴らしかった。中年の仲良しグループというか、ツイッターでいうクラスタの間を行き交う書簡を通して話が進む。居場所をなくすこと、愛情を失うこと、自分の子供をうまく愛せないこと。そして、友人の死。テーマは深刻だ。なのに、読後感は良い。それは視点距離を取っているからか、登場人物を公平に扱っているからか、それとも愛を失う/奪われる過程だけじゃなくて、そのあともちゃんと書いているからなのか。長い時間の中で、家族や友人が近づいたり離れたりする感じ、これこそ人生だ、みたいな気持ちになる。

アーサー・C・クラーク幼年期の終わり

子供の頃、太陽が五十億年も経てば地球を飲み込んでしまうと知って、非常に恐ろしかったのだけれど、それ以来人類運命について書かれた物語がずっと好きだ(H・G・ウェルズの「タイムマシン」も何度も読んだ)。

人類は滅んでしまうかもしれない。生き延びるかもしれない。しかし、宇宙に出て行った結果、ヒトとは似ても似つかないものになってしまうかもしれない。彼らは人類の何を受け継ぐのだろうか。そして、今しか存在しない自分は、果たしてこの宇宙意味があるのか。

人類運命が気になるのと同じくらい、僕はきっと遠くへ行きたいと思っている。だから、ヒトという形から自由になってどこまでも進化していく話に魅了され続けるのだ。


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2019-11-01

くーちゃん

くーちゃんのお世話をすると決めたときに、ひとつ自分に誓ったことがあります

それは、このねこちゃんのことは、何があっても一生傷つけない、悲しい思いをさせないということです。

ねこは、生きて20年。僕はその頃42歳で、だからまず、自分が死の想念から卒業しなくてはと思いました。

お酒をやめたり、書物に耽溺悪酔いしたり、キャバクラ通いや、いかがわしい界隈を帰り道に散歩することも、やめました。やめたというより、船橋駅シャポー口までくると、駆け出して一刻も早く、くーちゃんに会いたい。

から窓辺を見上げると、くーちゃんが内側から見ていることが多くなりました。僕よりも、どこかもっと遠くを見ている感じのする眼差しです。そのくーちゃんが、僕に気づくと「はっ」として目を合わせてくれる。

そんなときにふと、下僕が思い出すのは、カズオ・イシグロ日の名残り」のことです。そうして、階段を上がりながら追いかけてくるやわらかい視線に、何かに仕えることのできる喜び、生の充足と、その拠りどころを噛み締め、確かめます

「ふにゃふにゃ」

ドアを開けるとくーちゃんが足元に歩み寄り、爪を研いで、甘えてきます

下僕は「ただいま」といって、水を換え、ドライウエットの2皿のご飯を用意し、くーちゃんが食べるのを離れて見守ります

申し遅れました。僕は、これまで、くーちゃんに5つ、辛い思いをさせました。

どのひとつをとっても、万死に当たるでしょう。それなのに、くーちゃんは毎晩、僕の毛布に潜り込んできてくれます

かわいいさん」「すきすきー」「にゃーん」を、1日に100回、あるいはそれ以上、4年半のあいだ、続けてきました。くーちゃんは、ときに、僕にとっては神の化身と見紛う、何か特別雰囲気を身にまとった存在と感じられるほどになりました。

2018-09-19

ティファニー結婚指輪を買いました。

ティファニー結婚指輪を買いました。

自分は、20歳ごろまで、アメリカの高級レストランだと思っていましたがじつは宝飾屋さんだったんですね。

選んだ理由はいくつかありますが、パートナーの好みであったことと、一度物色しに訪問したときに、いろいろ指にはめさせてもらって印象がとてもよかったのが大きいです。

この一度目の訪問のあと、DMが届いて、この期間に買うとティファニーでの朝食に応募する権利があたえられるよ、と書かれていたのに釣られた次第。

接客レベルはとても高く、慣れない高級店で敷居も価格も高くて居心地の悪さもありつつも、おそろしいことに気持ちよく買い物できました。

カウンターガラスケース越しに選んだものをはめ比べさせてもらって、テーブルで詳細な話を聞いての購入です。

いろいろ試させてもらうなかで、カウンターに置かれたビロードのようなトレーのうえに指輪がどんどん並べられだして合計金額100万円くらいになって内心ひやひやしました。

価格は、ざっとみると石なしが10万くらいかシンプルデザインだとゴマ粒より小さい石ひとつが+3-5万みたいな世界デパートに入っているほかの宝飾屋さんと比べても、素材が同じであればだいたい値段は変わらないような気がしています結婚指輪だとだいたいプラチナが多いようです。

シルバーのほうが、硫黄化合物ヒ素化合物を検出できて便利では?と提案しましたが、磨くのがたいへんという理由却下されていますカズオ・イシグロの「日の名残り」でも銀器を磨くのがたいへんだったと書かれていましたね。ゴールドロードオブザリング感があってかっこいいですが、普段使うには目立ちすぎると思います

冷静に考えるとなかなか高いんですが、iPhone Xs価格をみたあとで金銭感覚が狂っていたのもあって購入してしまいました。

個人的には、メデルさんとか手作り感があったり、地元の小さな工房のようなものが好きなんですが、パートナーの好みがあったのと、どう探せばいいかからずこうなっています

また機会があればまちの宝飾屋さんなど巡ってみたいものです。

さて、デザインシンプルものしました。マットも魅力的でしたが、無難めのつるりとしたものです。

パートナーは、円周の半分に石を細かくはめたハーフエタニティというものにしています

もともと、円周上にダイヤモンドを嵌めこんだエタニティという指輪があるのですが、その半周だけというものです。

永遠の半分というちょっと矛盾するような言葉中二病感に惹かれていますハーフのは、半周ずらせば無地になるので使い分けができるというリバーシブル設定も加点です。

あと、途中、カジュアル服装旅行者風の中国人カップルが5分くらいの物色で指輪を買っていてこれがインバウンドパワーかと思い知りました。

コンビニおでんを買うくらいの気軽さで買っていて景気のよさを感じますバブル期は、日本人海外にいってこんなふうに買っていたんでしょうか。

指輪ハンドメイドでつくられているからか同じものでも微妙個性があって、気に入ったものひとつサイズを変えてもらう変更が追加料金なしでできました。名入れと合わせて納期は3週間です。

名入れについて、内側に0-9a-Z♡∞☆./-が使えて16文字まで機械彫り無料で刻めて、プラス1文字3000円という価格設定。

手掘りは3文字まで無料。手掘りのクラフト感はよいですが、指輪サイズだと違いがわからいかと思います

文字ことちゃんと熟慮できていなく、当日その場で無難文字を入れてもらいました。

ここらへんきちんと考えておくとよいかと思います

みなさまどういう文字をいれているんでしょうか。

いくつか没ネタを共有しておくのでみなさまのとっておきを教えていただけますと幸いです。

結婚届提出時間UNIXタイムで掘っておく。かっこいいと思いましたが、よくわからないと却下されています

自分の好きな言葉であるマトリックス由来のfree your mind(魂を解放しろ思い込みから自由になれ)も、結婚という(2人の)共同幻想的な契約無効化しうる言葉だと却下されました。

聖書の「Enter by the narrow gateからはじまる一文も好きですが、この冒頭だけを切り取ると、性的比喩にとれそうでだめでした。

なかなか難しいですね。

結局合計数十万円になったのですが、その場で決済を求められてびっくりしました。

平静をよそおって、震える手でクレジットカードを出しましたが、上限におさまってよかったです。

ともかくもできてくるのが楽しみです。なくさずに使い続けられるでしょうか。

2016-09-08

無題

一身上の都合でしばらく休職することに相なりました。

せっかく暇になるので、精神的に負荷のかからない範囲で色々と教養を深めていきたいと考えている所存なのですが、

なかなか自分の好きなジャンル作品ばかり読んでいると、選書にも限界があるなと最近感じています

そこで、はてなにおわします賢人諸兄に、おすすめの本などありましたら伺いたい所存です。

参考までに、最近私が読んでいいなと思った本はこんな感じです。

ジャンルは違えど匂いの似た本があれば教えていただければ幸いです。

小説

月と6ペンス サマセット・モーム

第三の嘘 アゴタ・クリストフ

日の名残り カズオ・イシグロ

春にして君を離れ アガサ・クリスティー

すばらしい新世界 オルダス・ハクスリー

動物農場 ジョージ・オーウェル

盤上の夜 宮内悠介

何もかも憂鬱な夜に 中村文則

センセイの鞄 川上弘美

深海ソラリス らきるち

エッセイ系】

夜を乗り越える 又吉直樹

第一阿房列車 内田百閒

乱読のセレンディピティ 外山滋比古

不道徳教育講座 三島由紀夫

御家騒動 百瀬明治

あんまりラノベを読んだことがないので、上記と雰囲気の似たラノベがあれば教えていただけるとよろこびます

2008-08-03

タイトル当て

http://anond.hatelabo.jp/20080803000009

著者のあいうえお順+外国人著者になってるな。

あと文庫限定で、同じ著者もあり、というところがヒントか。

とりあえず分かったところ。

29. 恩田陸ドミノasin:4043710011

42. 今野敏「隠蔽捜査asin:4101321531

80. 町田康町田康詩集asin:475843042X

95. カズオ・イシグロ日の名残りasin:4151200037

99. ハインライン夏への扉asin:4150103453

http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/kisen/index.html

No.著者書名ASIN情報
11.伊坂 幸太郎死神の精度」asin:4163239804
12.いしい しんじ「トリツカレ男」asin:4101069239
13.いしい しんじ「ぶらんこ乗り」asin:4101069212
14.石持浅海「扉は閉ざされたまま」asin:4396334060B!
15.
16.乾くるみ「イニシエーションラブ」asin:4167732017B!
17.宇江佐真理
18.
19.
20.
21.小川 洋子博士の愛した数式asin:4101215235
22.荻原 浩ハードボイルドエッグasin:4575508454
23.荻原 浩明日の記憶asin:4334743315
24.奥田 英朗イン・ザ・プールasin:416771101X
25.奥田 英朗「最悪」asin:4062735342
26.奥田 英朗空中ブランコasin:4167711028
27.
28.恩田陸夜のピクニックasin:4101234175
29.恩田陸ドミノasin:4043710011TB
30.海堂 尊チーム・バチスタの栄光asin:4796661611
31.垣根 涼介「君たちに明日はない」asin:4101329710
32.
33.加納朋子ななつのこasin:4488426018TB
34.川上 弘美「センセイの鞄」asin:4167631032
35.
36.
37.
38.北村 薫「空飛ぶ馬」asin:4488413013
39.北山 猛邦「「クロック城」殺人事件」asin:4062758636
40.
41.黒崎「しゃべくり探偵asin:4488418015
42.今野敏「隠蔽捜査asin:4101321531TB
43.坂木司  B!
44.酒見 賢一後宮小説asin:4101281114
45.桜庭 一樹少女には向かない職業asin:448847201X
46.佐々木「笑う警官asin:4758432864
47.
48.重松 清「流星ワゴンasin:406274998X
49.雫井 脩介犯人に告ぐasin:4575511552
50.司馬 遼太郎新選組血風録asin:4041290074
51.島田 荘司占星術殺人事件asin:4061833715
52.
53.小路 幸也東京バンドワゴンasin:4087462870
54.
55.
56.
57.
58.田辺 聖子ジョゼと虎と魚たちasin:4041314186
59.
60.豊島 ミホ檸檬のころasin:4344409221
61.中島 らも「今夜、すべてのバーで」asin:4061856278
62.
63.
64.
65.南條 範夫駿河城御前試合」asin:4198923213
66.畠中 恵しゃばけasin:410146121X
67.
68.
69.原尞
70.
71.樋口有介
72.
73.
74.藤沢周平
75.
76.星新一
77.堀江 敏幸「雪沼とその周辺」asin:4101294720
78.町田「告白」asin:4122049695
79.町田康町田康詩集asin:475843042XTB
80.
81.
82.
83.宮部 みゆき
84.村上 春樹ノルウェイの森asin:4062748681
85.村上 春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドasin:4101001340
86.
87.森 絵都「DIVE!!」asin:4043791038
88.森 絵都カラフルasin:4167741016
89.
90.森見 登美彦四畳半神話大系asin:404387801X
91.山崎 豊子沈まぬ太陽asin:4101104263
92.横山 秀夫クライマーズ・ハイasin:4167659034
93.横山秀夫震度0asin:4022644354B!
94.
95.カズオ・イシグロ日の名残りasin:4151200037TB
96.ダニエル キイスアルジャーノンに花束をasin:4151101012
97.
98.
99.ハインライン夏への扉asin:4150103453TB
100.

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