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2023-05-22

ウィシュマさん事件への違和感私見

維新議員さんの件でまた騒がしくなっているウィシュマさんの事件ですが、こう、メディア等の問題設定に違和感があるわけです。

人が亡くなっているわけですし、直接的な原因としては入管不手際があるわけで、入管体制見直しは待ったなしだと思うんですが、本当にそこだけをクローズアップするのでいいんでしょうか。その点では、件の議員さんの問題意識は正しいと思います(まあ、追求するのはそこじゃねえだろ、というのはあるのですが)。

ということで、改めて入管調査報告書を読んだので私見を述べたいと思います

これはウィシュマさん、支援者入管問題が複合した悲劇

亡くなった方を悪く言うのは気が引けるんですが、ウィシュマさんはかなり「やって」ます

そして大事なところで嘘をつく癖があります

留学ビザ入国して、学校に行かなくなった(本来ならその時点で帰国しないといけない)

在留資格を延長する目的で、難民事由に該当しない内容で難民認定申請を行った

・その申請内容が虚偽だった

申請が不許可になったので逃げた(意図的オーバーステイした)

・偽造在留カードを所持、使用して不法就労していた

オーバーステイ事由に該当しない難民申請、偽造在留カード使用はそれぞれ単体でも在留却下されるやつです。ウィシュマさんがどこまで理解していたか不明ですが、在留資格を得られる可能性はほぼなかったと言えます

恋人のBさんとDVに関する疑惑

その他にも怪しい部分がたくさんあります。同情的に語られる恋人からDVですが、不正確な話が色々あります

まず、ウィシュマさん逮捕の時点でBさん(報告書記載ならいます)とは恋人関係ではありませんでした。Bさんの話によると、逮捕の8ヶ月ほど前には既に関係は解消しており、Bさんは別の女性交際していました。その後も同居は続けていたという話です。その上、逮捕の3ヶ月前にはウィシュマさんが仕事をやめたことで、Bさんが家賃生活費を全て出していたそうです。恋人でもない人の生活費を面倒見るというのは、一般的DV男とはだいぶん印象が違います

しかもBさんは暴力を振るったことがあるとは認めつつ、一方的ものではないと証言しています。ウィシュマさんから体当たりされている動画や、投げつけられたコップや破られたパスポートといった物の写真を残していました。刑務所からウィシュマさんに送った手紙にも、よくけんかをしたという内容が書かれています

もちろんそれだけでDVがなかったという確証は持てないんですが、Bさんは逮捕の2日前にウィシュマさんから復縁を迫られたとも証言していますDV加害者復縁を迫るなんてことあるのかな、という疑問もDV存在を疑わせるわけです。

また、Bさんはウィシュマさんと同じ日に、ウィシュマさんの密告によりオーバーステイ逮捕されていますDV加害者から逃げようとしている時に相手を刺激するようなことするかな、という点も大いに疑問です。

ちなみに、Bさんから脅迫的な手紙が届いたというエピソードは、ウィシュマさんの密告だと気付いたBさんが怒って書いたものです(Bさんは偽造在留カードを2枚、本人名義他人名義のものを持っており、警察他人の方の名義まで知っていたということなので、まあ分かりますよね)。つまり手紙による脅迫はウィシュマさんのオウンゴールに近いものです。密告すれば恨まれるに決まってるじゃないですか。

余談ですが、ウィシュマさんはBさんへの手紙には誰が警察通報たかからないと書きつつ、入管への仮放免申請の際は「彼氏は、私のせいで警察に捕まったと分かったようで」と書いています

この手紙脅迫をもってウィシュマさんは帰国できないと言っていますが、これも怪しいです。というのも、Bさんとの手紙のやり取りは10月に行われているのですが、支援者面談した12月の時点ではまだ帰国するつもりだったからです。その時点ではBさんが障害になるとは考えておらず、在留気持ちが傾いたためそれを利用したとしか考えられません。

家族とのよく分からない関係

家族についても不思議な点が多いです。ウィシュマさんは家族からの連絡は途絶えている、だから帰国したらお寺に行くと話していました。またBさんは逮捕の後、入管施設収容され、11月仮放免を受けています。この時ウィシュマさんの母親電話してウィシュマさんを助けてほしい、妹に自分電話番号を伝えてほしいと話したそうです。しかしウィシュマさんの家族から連絡はなかったそうです。

一方、ウィシュマさんが亡くなった後すぐに来日していることからも、本当に家族関係が悪かったとは考えにくいです。ただ、留学ビザが1年3ヶ月だったことは知っていたと思うのですが、2年過ぎ、3年過ぎても帰って来ないウィシュマさんについて何も思わなかったのでしょうか?ウィシュマさんが日本滞在している間、連絡は取っていなかったのでしょうか?来日した後でウィシュマさんと知り合ったBさんは母親の連絡先を知っていたのに?何かトラブルがあったのでしょうか。よく分かりません。

病院に連れて行って」について

入所後の病院に連れて行って欲しいという要望についてもなかなか厳しいものがあり、ある時点までは仮放免のためのアピールだったと考えざるを得ない部分があります2月1日看護師面談の記録に、看守にはなぜ病院に連れて行ってもらえないのかと主張する一方で、看護師には病院行きたくないと語ったとあります2月1日は、嘔吐を繰り返していたため共同室から単独室に移動したタイミングです。つまり、その時点での「病院に行きたい」はただのアピールだった可能性があるということです。2月中旬には自力トイレに行けないほど歩けなくなっていので、おそらくそこまで至っていれば本当に病院に行きたいと思っていただろうと思われますアピールなのか本気なのか、看守が見誤ったのはオオカミ少年的な事情が感じられるのです。

というわけで、入所時にオーバーステイ在留カード等の諸々でそもそも印象が悪いところに、支援者との面談帰国意思が覆り、病院に連れていけとアピールと始めた、というのが実態だろうと思うわけです。これで本当に具合が悪くなったタイミングを見極めてきっちり対処しろというのはなかなか負担が大きいだろうなと思うんですよね。なので、今回の議論の中で見かけた、予断をもって当たることのないよう収容所の運営は別組織にした方が良いと言う意見は、ある程度的を得ていると思ったりします。

支援者問題

支援者支援者で、確実にやらかしています

帰国意志があるウィシュマさんに対して在留を促したこと

・ウィシュマさんに「(体調不良を)アピールした方がいい」と伝えていたこ

・これまで大量に仮放免身元保証人になっており、その20%以上で取り消しになっていること

ウィシュマさんにとって、この支援者出会たことは不幸だったとしか言えません。報告書を読んでも、なぜこの支援者がウィシュマさんに在留を勧めたのか、さっぱり分かりません。12月16日の面談記録に「日本生活したいなら支援するので仮放免申請等を行ってはどうか」と助言したと残っています出会っていなければ、ウィシュマさんは帰国できていた可能性があります入管帰国の準備を進めていたからです。

当時はコロナ対策のまっただ中で、スリランカへの航空便は全便停止していました。そこで臨時便に乗ってもらおうとしたのですが、費用問題が立ちはだかります運賃に加え、帰国した際は一定期間隔離されるためその宿泊費を自費で出す必要がありました。ウィシュマさんは手持ちのお金がなかったためさまざまな方法検討されたのですが、そのさなかに支援者出会い、帰国しないと言い出してしまったのです。

議員さんは、ウィシュマさんがハンガーストライキをして亡くなったのではないか支援者がそれをそそのかしたのではないかと言って炎上しました。私もハンストではないと思うのですが、支援者の影響はあるだろうという見解は同じです。

私はどちらかと言うと、報告書に出てきた身体障害身体症状症)のたぐいではないかと思っています。体の機能には異常がないのに、悪いところがあるという本人の思い込みで本当に具合が悪くなってしまうというものです。ウィシュマさんが体調不良を言い出したのは1月中旬で、支援者1月20日の面談記録に「入管体調不良者について何もしない。病院に行って体調不良を訴えないと仮放免されない。仮放免されたいのであれば、病院が嫌いでも病院に行った方がいい」「仮放免されたいので,絶対病院に行く」という内容の会話があります。これによって「病院に行かなければ」という思いが生まれ、行けない期間が長くなるにつれ焦りに変わり、強迫観念になってしまったのではないかな、と。こればっかりは想像の域を出ませんが。

入管の扱いが悪いから体調を崩したのだ、という考え方もありますが、個人的にはそちらには否定的です。8月に入所してから4ヶ月間は健康に過ごしている点と、体調を崩し始めた後の1月29日にウィシュマさんは看守、支援者のどちらにも「入管での生活は快適で、ストレスは感じていない」と話しているからです。もっとも、ウィシュマさんは病院が嫌いだったようなので、行きたくないから嘘をついた可能性も否定はできません。仮放免のために病院に行きたい、でも嫌いだから行きたくない、そういうアンビバレント精神状態ストレスになっていたのかもしれません。もし嘘だったのであれば、嘘をつく癖が悪い方向に働いたと言うべきでしょう。いずれにせよ、精神的な問題を抱えていたのであれば、支援者の助言は影響していたと思います

仮放免許可されなかった理由

ウィシュマさんの仮放免申請は2回提出され、1回目は不許可、2回目は亡くなったため判断なしという結果でした。2回目は許可方向性だったものの体調が著しく悪いため保留というステータスだったのでともかく、1回目が不許可だったのは半分支援者のせいです。

今回身元保証人になる予定だったS3さんという方は、2015年1月から2021年3月までの間に47件の仮放免保証人になっています。そのうち10件で、逃亡等の理由仮放免取り消し処分になっているのです。約21%にあたるので、同期間の全国の仮放免取り消し率(約6%)の3倍以上です。さら保証人になった後、仮放免された当人を近隣に住まわせないという暴挙に出ています名古屋入管の話なので多分愛知県にお住まいだと思いますが、なぜか対象者兵庫県に住んでいるケースもあったようです。身元を保証する気があるのか疑われたのも無理ありません。また今回のケースでは特に、ウィシュマさんが在留希望に転じたのは支援者の影響なので、支援者暮らしたらより帰国させるのが困難になるのではないかと考えていたようです。

要するに、「この人に預けると退去強制執行できなくなる可能性がそこそこ高い」と思われていたということです。仮放免あくま帰国までの間収容所の外で暮らせるという制度なので、帰国しないぞと頑張られては困るわけです。

結局、ウィシュマさんは支援者の助言により仮放免を求めて帰国をやめ、支援者の負の実績により仮放免を受けられなかったわけです。ウィシュマさんが入国管理制度についてどれだけ理解していたかは分かりませんが、仮放免在留許可勘違いして帰国を思いとどまってしまったのであれば、これほど不幸なことは無いと思います。ウィシュマさんは日本で働きたいと思っていたはずですが、仮放免就労不可なので生活費の全てを支援者に頼ることになり、思っていたような生活はできないんですよね。

あと、ヒアリングの途中で調査チームへの協力を拒否した点も印象悪いです。

入管問題

悪い条件が相当重なっていたこともあり、個人的には入管に対してかなり同情的なのですが、それでもこんな形でウィシュマさんが亡くなって良いはずがありません。私の思う問題点は1つだけです(そこから色々派生するんですが…)。

・歩けないほど衰弱してるなら病院に連れていけ。

そこそこ元気だった人が2週間ほどの間に歩くことすらできなくなったのを目の当たりにして、緊急性を感じないのは感覚麻痺しています。さすがにそこは擁護できません。いくら2月19日の段階で3月4日に精神科を受診することが決まっていたからと言って、その間に寝たきりになって関節を動かすリハビリを始めるに至ったら、精神科では不十分だと分かりそうなものです。

報告の体制が徹底されていない点は調査でも指摘されていましたが、看守の自己判断で報告義務のある内容が報告されないほど規則形骸化しているのであれば、事故を防げるはずがありません。そういう意味では、これは防げた可能性が十分にある事故です。若干繰り返しになりますが、健康管理に関しては独立チームを作って運用した方が良いのではないかと思います

まとめ

この事件をどうすれば防げたかということを考えた時、実際のところ事件は3年前から始まっており、入管最後最後なんですよね。入管だけを責めてどうにかなる問題ではないんです。簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。

入国する外国人の皆さんに、適法滞在してもらう(不法滞在者にアメを与えない)

支援者収容者にやみくもに手を差しさない(身元保証人には欠格条項を作るべきでは?)

入管ちゃんと被収容者の健康管理をする(というよりも、緊急時判断の訓練をする)

そのためにも入管対応を責めるのは良いとして、ウィシュマさんを無辜被害者として祭り上げてはいけないと思うのです。適法滞在している外国人の皆さんに対して失礼ですし、「日本不法滞在者にも優しい」なんてメッセージを出してはいけないんです。不法滞在者や施設収容者が増えれば、それに応じて動的に人員を増やせるわけではないのですから、当然事故は起きやすくなります

ウィシュマさんは不法滞在者であった。しかしその命が入管で失われるようなことがあってはいけないのだ。この事故を繰り返さないためには、そういう論調こそが重要なのではないでしょうか。

補足を書きました

5/25 ちょっと書き足しました。

https://anond.hatelabo.jp/20230525024400

2018-11-22

anond:20181122105658

ルールを守らずオーバーステイして捕まって国外退去されるのを回避するため「難民です!」とか言い出せば移民OKの国ってあるの?

http://usfl.com/2016/03/american_lifehack/sittoku/96418

東京入国管理局での問題

オーバーステイしている本人が出頭せず何らかの理由退去強制手続拒否して騒いでいるんじゃないの?

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http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan87.html

法務省入国管理局では,出国命令制度広報活動や「在留特別許可に係るガイドライン」の改訂等を通じ,不法滞在で悩んでいる外国人の方が地方入国管理官署に出頭しやす環境を整備し,自発的な出頭を促すことを目指しています

○  在留期間を経過したまま日本生活している外国人帰国希望している方は,収容されることなく,簡易な方法手続ができる「出国命令制度」を利用して帰国することができます

 

・  退去強制手続により帰国した場合,最低5年間は日本入国することはできませんが,「出国命令制度」で帰国した場合,その期間は1年間となります

・  「出国命令制度」を利用できるのは,次のいずれにも該当する方です。

ア  速やかに日本から出国する意思を持って自ら入国管理官署に出頭したこと

イ  在留期間を経過したこと以外の退去強制事由に該当しないこと

ウ  入国後に窃盗等の所定の罪により懲役又は禁固に処せられていないこと

エ  過去退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと

オ  速やかに日本から出国することが確実に見込まれること

 

○  帰国希望している外国人の方で,「出国命令制度」の対象に当たらないものの,自ら入国管理官署に出頭した方については,仮放免許可により,収容することな手続を進めることが可能です。

 

○  引続き日本国内での生活希望される方は,まずは入国管理官署に出頭して,日本生活したい理由等を申し述べてください。

   

 

・  先般改訂した「在留特別許可に係るガイドライン」には,在留特別許可の許否判断を行うに当たっての積極要素として,日本人と婚姻が成立している場合などのほか,(1)自ら入国管理官署に出頭申告したこと,(2)日本の初等・中等教育機関に在学し相当期間日本生活している実子を監護及び養育していること,(3)日本での滞在期間が長期に及び定着性が認められること等を挙げていますので,このガイドラインをよくお読みください。

 例えば,(3)に該当し,かつ,他の法令違反等がない方が,出頭申告した場合には,在留特別許可方向で検討されやすくなることをガイドラインで紹介しています

・  また,摘発等により違反が発覚した場合は,原則収容されることとなりますが,出頭申告した場合には,仮放免許可により,収容することな手続を進めることが可能です。

・  別紙[PDF]のとおりの退去強制手続の中で,申出の内容を審査した結果,法務大臣から特別日本での在留を認められた場合には,不法滞在状態が解消され,正規在留者として引続き日本生活することができます

・  なお,在留特別許可は,積極要素と消極要素を総合的に考慮して許否を決定しますので,結果として許可されない場合には,退去強制令書が発付されることにご留意ください。

2017-10-18

anond:20171018121656

山口厚


最高裁裁判官としての信条や審理にあたる心構え、仕事の印象、難しさは。

当事者の主張に耳を傾け、証拠に基づいて、中立・公平で公正な判断をすることが必要だと考えています最高裁として判断すべき事件数の多さと事件の多様さに直面して、最高裁判事の使命の重大さを改めて痛感しています

国民裁判所に期待する役割は何だと考え、身近な司法とするために取り組んでいることは。

詰まるところ、中立・公平で公正な裁判を迅速に行うことが求められているのだと思います結論に至る過程をできるだけ分かりやすく示すことも大切だと考えております。また、裁判所としては、情報発信さらに進めていくことが望まれるように思います

これまでに関わり、最も記憶に残っている裁判とその理由は。

就任直後に関与したGPS捜査に関する大法廷判決が、刑事手続き法に関する近年の最も重要判決の一つであるだけに強く印象に残っています

注:令状のない全地球測位システムGPS捜査違法とした大法廷判決173月

最高裁裁判官の任命手続きについての考え、出身母体出身別の割合妥当だと思うか。

任命権者が判断すべき事項ですので、回答は差し控えさせていただきたいと思います

憲法改正をどう考えるか。

憲法改正の是非などは国民判断し、決めるべきことで、憲法尊重擁護する義務を負う立場にある者としては、回答を差し控えさせていただきたいと思います

憲法9条戦後日本で果たした役割と、9条に自衛隊を明文で位置づける論議をどう考えるか。

前項と同様の理由により、回答は差し控えさせていただきたいと思います

国政選挙で「一票の格差」の問題が長く続いていることをどう考えるか。

私の考えは、当審に係属した具体的な事件について判断する中で示すべきものと考えております

注:16年参院選の「1票の格差」を合憲とする多数意見179月

東京電力福島第一原発事故を踏まえ、司法責任原発関連訴訟への司法姿勢をどう考えるか。

今後当審にも関係する事件が係属する可能性がありますので、回答は差し控えさせていただきたいと思います

裁判員制度で、公判前整理手続きの長期化や裁判員候補者の辞退率上昇が問題視される現状をどう考えるか。制度課題や見直すべき点は。

全体的に見れば、課題はあるものの、うまくいっているのではないかと考えておりますが、制度運用上、裁判員負担軽減に配慮することが必要だと思います

静岡県で1966年に起きた一家4人殺害事件など、再審無罪判決が続くなか、刑事裁判の現状への感想反省点、冤罪(えんざい)を生まない司法の実現への教訓は。

判断の誤りを避けるため、様々な観点から証拠評価をしっかりと行い、手続きを適正に運用することが重要だと思います

日本弁護士連合会が昨年の人権擁護大会死刑制度の「廃止宣言」を採択した。死刑制度の存廃や、再審請求死刑執行との関係をどう考えるか。

死刑の存廃などについては国民的な議論が大切だと思います一般論としての回答は差し控えさせていただきます

取り調べの録音・録画や司法取引制度の導入が刑事裁判にどんな影響を与えると考えるか。新制度導入にあたり、司法判断はどうあるべきか。

法改正に向けた法制審の審議には私も参加いたしました。改正法は現状を改善する方向に向けた重要な一歩だと考えております。今後、関係者がそれを適切に運用していくことが大切です。

法科大学院募集停止が相次ぎ、法曹志望者が減少するなか、法曹養成制度の現状をどう評価し、どうあるべきだと考えるか。

私は最高裁判事就任前には法曹養成教育の一端に携わっており、様々な課題があることを痛感しておりました。関係者の地道な努力が実を結ぶことを願うばかりです。

経済活動の国際化に伴い、国をまたぐ法的な争いを円滑に解決するために日本裁判所に求められることは何だと考えるか。

裁判を行うという点では変わりがないと思いますが、両当事者の主張・立証をしっかりと踏まえた適切な判断可能な限り迅速に行うことが大切だと思います

外国裁判手続き電子化が進むなか、国民が使い勝手のよい裁判所にするにはどうすべきだと考えるか。電子手続き導入への賛否アイデアはあるか。

課題は多いとは思いますが、利用者利便性向上の観点から手続き電子化の導入に向けた検討が行われてよいと思います

最近出来事で、最もうれしかたこと、腹立たしく感じたことは何か。

人生はうれしいこと、腹立たしいことの連続ですが、法科大学院教授時代の教え子から司法試験合格の報告が届いたことは最近うれしく感じたことの一つです。

趣味尊敬する人物、好きな言葉座右の銘と、それぞれを選んだ理由は。

趣味ウォーキング読書(乱読です)。いままでに大変多くの人と出会い、その出会いを大切にするようにして参りました。特定した「尊敬する人物」の名前を挙げるのは難しいように思います。好きな言葉座右の銘というほどのものはありませんが、研究者ときには、どのように小さなもの執筆する場合であっても、常に「全力投球」を心がけておりました。

最近読んで感動した本、面白かった本とその感想は。

多分野の書物を乱読するのが趣味ですので、特定の書名をあげることは難しいように思います小説でいえば、人の生き方を描いたものに感動したり、歴史的事件を題材にしたものをとくに面白いと感じたりしています


菅野博之


最高裁裁判官としての信条や審理にあたる心構え、仕事の印象、難しさは。

誠実と共感信条とし、意識的に多数の観点から見ることを心がけてきました。更に広い視野から見直しながら、バランスのとれた適正な判断ができるよう努めたいと考えます個別事件問題と法解釈問題、更には社会的影響や将来にわたる問題などが混在している事件に接するとき、頭を悩ませることが多いです。

国民裁判所に期待する役割は何だと考え、身近な司法とするために取り組んでいることは。

迅速さを含めた質の高い判断が期待されていると考えます。常に社会進歩・変革に即していくとともに、安定感のある判断が求められているのではないでしょうか。最高裁においても、分かりやす判決留意したいと考えます

これまでに関わり、最も記憶に残っている裁判とその理由は。

外国人の親と子ども退去強制処分事件フィリピン人の子どもたちの国籍事件台湾ハンセン病訴訟、様々な会社更生事件など、多数の事件が心に残っております子ども人権や自立性の確保が難しい事件、あるいは、多数の人々の利害の調整が難しい事件が一番記憶に残るように思います

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最高裁判事の任命に関しては、意見差し控えたいと思います

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憲法改正については、議論のもと、各国民が決めることであり、その解釈適用に当たっている裁判官発言すべきではないと考えます

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憲法9条については、国民一人一人が考えていく問題であり、裁判官一般的意見を述べるべきではないと考えます

国政選挙で「一票の格差」の問題が長く続いていることをどう考えるか。

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注:16年参院選の「1票の格差」を合憲とする多数意見179月

東京電力福島第一原発事故を踏まえ、司法責任原発関連訴訟への司法姿勢をどう考えるか。

具体的事件にかかわる点については、意見を控えさせていただきます。ただ、一般論として言えば、裁判所は、法令に照らして厳密に検討しているものと考えます

裁判員制度で、公判前整理手続きの長期化や裁判員候補者の辞退率上昇が問題視される現状をどう考えるか。制度課題や見直すべき点は。

裁判員制度については、全体としては順調に進んでいると思います。ただ、迅速さを含めた適正な刑事司法理想に向けて、一層の工夫や研究が欠かせないと考えます

静岡県で1966年に起きた一家4人殺害事件など、再審無罪判決が続くなか、刑事裁判の現状への感想反省点、冤罪(えんざい)を生まない司法の実現への教訓は。

誤判はあってはならないことです。それを防ぐには、各裁判官が、客観的証拠を重視するという裁判の基本を再確認しながら、多面的に考え抜くことが重要と思います

日本弁護士連合会が昨年の人権擁護大会死刑制度の「廃止宣言」を採択した。死刑制度の存廃や、再審請求死刑執行との関係をどう考えるか。

死刑制度の存廃などは、国民意見により決められるべき立法問題と考えます

取り調べの録音・録画や司法取引制度の導入が刑事裁判にどんな影響を与えると考えるか。新制度導入にあたり、司法判断はどうあるべきか。

刑事司法改革関連法の影響などについては、最高裁判事として意見を言う立場にはありませんが、今後各制度趣旨に沿った運用が積み重ねられていくものと考えております

法科大学院募集停止が相次ぎ、法曹志望者が減少するなか、法曹養成制度の現状をどう評価し、どうあるべきだと考えるか。

司法、ひいては法曹界は、専ら人によって支えられていますので、志の高い誠実な法曹候補者が増えていくことを願っております

経済活動の国際化に伴い、国をまたぐ法的な争いを円滑に解決するために日本裁判所に求められることは何だと考えるか。

国をまたぐ争いであっても、スピード費用・公正さに着目されるのは変わりません。また、裁判官が広い視野を持ち、必要場合には専門家の助力も得られるよう、工夫を継続することが重要と考えます

外国裁判手続き電子化が進むなか、国民が使い勝手のよい裁判所にするにはどうすべきだと考えるか。電子手続き導入への賛否アイデアはあるか。

司法手続きにおける国民負担をできる限り減らしていくことが重要です。電子手続き活用も、そのメリットデメリット双方を検討しながら、適する分野につき進展していくのではと期待しております

最近出来事で、最もうれしかたこと、腹立たしく感じたことは何か。

うれしかったのは、この数年、何人もの日本人科学者ノーベル賞を受賞したこと。夢をかきたてられました。

趣味尊敬する人物、好きな言葉座右の銘と、それぞれを選んだ理由は。

好きな言葉は、誠実と共感です。裁判特に民事裁判は、命令や説得ではなく、心を開いて話し合い、それぞれの立場や考えを共有することが重要と考えております

最近読んで感動した本、面白かった本とその感想は。

趣味は、読書特にSF経済関係です。SFでは、J・G・バラードスタニスワフ・レムレイ・ブラッドベリなどが好きです。SFは、思考感性の幅を広げてくれるものと思います。次いで、音楽鑑賞(シャンソンカンツォーネなど)。元々天文学者志望だったので、星を見て宇宙について思いをはせることも好きです。

 
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