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2024-08-16

ペイネ勃ち

前回:https://anond.hatelabo.jp/20230328202632

前々回:https://anond.hatelabo.jp/20230208195420


宮崎県地震が発生した翌日、震源地に近い場所にさきの冬から越して住んでいる友人と、私の地元で会うことになっていた。

地震発生から時間彼女と連絡が取れずに肝を冷やしていたが、「全然なんともなかったよ。明日も行けそう」という気楽なLINEの返事がきて、翌日には彼女と会うことができた。

震度6弱の揺れに見舞われたはずの彼女は、LINEの印象と違わぬあっけらかんとした調子でこう言った。

地震の後さ、防災無線がずっときこえてるんだけど、『○○市です』っていう冒頭んとこしかききとれなくて。あとはずっと何言ってるかわかんなかったわ」

「そんな住民なら誰でも知ってるような部分しか聞き取れないのヤバくない?」

と答えつつ、私は彼女の無事に心から安堵していた。

地震発生時は車に乗っていたという彼女は、

「右折待ちで停止してて。信号変わったから曲がろうってハンドル切ったけど車がびくとも動かなくて。ほんと全然動かなくて、あ、これ溝に嵌ったのかなって焦ったんだけど、周り見たら道路標識とかすっごい揺れてて、それで地震ってわかったんよね。でも歩行者も、きゃーとかわーとかなってなくて、なんかぽかんとした感じだったし、そんなひどい揺れと思ってなくて。宮崎って普段ぜんぜん地震いから、みんな何がおこったかよくわかってなかったのかも」

という、かなり独特の地震体験披露してくれた。

そして今、のっぴきならぬ事情で住んでいる土地について

「海をこよなく愛する人以外はすめないね。海をこよなく愛する人はいいと思う」

と切って捨てた。彼女は海をこよなく愛するどころか泳げもしない。ただ私は「海をこよなく愛する人」という表現がとてもいいなと思っていた。そんな人、絶対友達になれそうにない。

話をしている場所コメダ珈琲だった。彼女の今すむ土地ほどではないが、私の地元田舎なので、夜遅くまであいているといえばコメダ珈琲という具合。

午後遅くに合流した私たちは、カフェ居酒屋はしごし、話したりないかコメダ珈琲に落ち着いていた。

彼女の話がひと段落したタイミングで私は手洗いに立ち、戻ってきたら、彼女彼女の正面の壁、つまり対面で座る私の席の背面に当たる壁を穴の空くほど見つめていた。

「あ、絵?」

と言って私も見上げる。そのリトグラフには、愛おし気な顔をして顔を寄せ合いソファに並んで座る男女の姿がイラストレーション的なタッチで描かれている。その男女の前には追いかけ合う、おそらく雌猫と雄猫。睦まじい恋人たち風景

それだけでは彼女がじっと見つめるには足りないはずだと、さらに注意深く眺めて、私はあることに気づいた。

「……おっぱい丸出しだね」

「そうなんよ。それで見てたわ」

描かれている男女は、ともにきっちりと洋服を着こんでいる。男性に至っては腹のあたりにカマーバンドのぞくタキシード姿にすら見え、その傍らには山高帽。女性も丈の短い長そでワンピースに網タイツというやや煽情的な姿ではあるが、しっかり服は着ている。ただ、胸部分を丸出しにし、傍らの男性に向かって寄せていた。

おっぱいの谷間にハートが挟んであるね」

「そうなんよ」

彼女はまだじっと絵を見ている。女性胸の谷間には、ふくよかなハートモチーフさしこまれ、そのハート男性の手がそっと触れている。それは男性差し出しているものなのか、それとも男性から差しまれたのか、彼女と私の間で意見がわかれた。いずれにせよ、いかにも愛の交歓と言った様子だが、おっぱいは丸出しである

おっぱい丸出しの絵がコメダに飾ってあるね」

「そうなんよね……誰の絵かな。サインがあるけど読めないわ」

Googleレンズでわかるんじゃない?」

「ああそうか」

角度の問題か私の位置からはうまくいかなかったが、彼女の席からはうまくいった。

「うまく出てきた。レイモン・ペイネだって」」

まれてこの方寡聞体現しつづけてここまできた私は、その画家を知らなかった。彼女もまたそうだった。調べてみると、20世紀フランス最大のポップ・アーティスト、くらいの紹介がなされており、軽井沢には画家の絵を蒐集した美術館もあるらしい。大変著名な画家のようだ。コメダに飾られていた絵のタイトルは『ハートプレゼント』。一貫して男女間の愛を、恋人同士の姿を描き続けてきた画家と言うことらしかった。

イメージ検索うつると、わたし彼女共通感想を抱いた。

「女がおっぱい丸出しの絵、多くない?」

「そうだし、おっぱいの出し方個性的じゃない?」

女性衣服の胸の部分が観音開きになっており、その布を小鳥が両側からついばむことでおっぱいを御開帳的に露出させていたり、おっぱいの上に小鳥がとまっていたり、まるだしにしたおっぱいの先の乳首から開いた傘が出ているように見える絵もあった。なんなら両のおっぱい自体小鳥、という絵もあった。おっぱい露出バリエーションが豊かだし、どれも真顔だ。

私はこの画家のことが一発で好きになり、「ポストカードとか会社デスクに飾りたいな。いちばんおっぱい丸出しのやつ。それ見て元気出しながら嫌な電話とか乗り切りたい」と言った。すると彼女は「そんなのやめなよ。何がセクハラって言われるかわからない世の中だから増田ちゃんのことを貶めてやりたい人に、おっぱい丸出しの絵のせいで足元をすくわれるかもしれないよ。おっぱい丸出しの絵をデスクに飾って風紀を乱しているとかさ」という、令和という時代の空気感そのままのことを言ってよこし、私はなるほどそれもそうだなと思った。

「じゃあやめとくわ」

言いながら、私はこの絵、男性も好きだろうなと思った。男性とは5年前から恒常的にセックスをしている相手のことで、 https://anond.hatelabo.jp/20230208195420 この話に出てくる。

大学の頃は美術部にいたらしいので、もしかすると画家のことを知っているかもしれない。

友人は、「なんかそもそも、女ばっか恥ずかしいところ露出してるの微妙だよね。男もどっか出せばいいのに」と言った。

「出すところ限られすぎてて無理じゃない? わいせつすぎて絵の趣旨がブレない?」

と答えると

「いや、それ言ったらそもそもおっぱい丸出しにする趣旨からよくわかんないから」

彼女はきっぱり言った。私はそんな彼女のことをこよなく愛する人だ。


盆の帰省を終え、私は男性の家に行くと、レイモン・ペイネの話をした。概ね上に書いたようなことを告げると、彼はすぐ自分スマホイメージ検索をはじめ、美術をたしなんでいたことがあるとは思えないほど爆笑していた。

「ほんまにおっぱい丸出しやんか!!」

「そう、だから好きだろうと思って……」

「大好きや」

男性臆面もなくおっぱい丸出しに受けていると宣って、おっぱい丸出しの絵をスマホで見つけ出してはげらげら笑い、しまいには「メルカリに皿が出てる、600円くらいやし欲しいかも」などと言い始めた。

「でもグッズはどれもおっぱい丸出しではないよ」

「どうせならおっぱい丸出しのグッズがほしいよな」

ペイネ美術館にはオリジナルグッズがいっぱいあるっていってた。そこにおっぱい丸出しのグッズがあるなら行きたいね

などと我々は知性のかけらもないことをベッドに寝ころびながら言い交わし、おっぱい丸出しのためだけにに軽井沢に行くのはどうなのか、というような結論でその話は結ばれた。

そのうち話題は別のことに移ろった。

阪神大震災のあとタクシーに乗ったら、ドライバーが、道路こんにゃくみたいになりましたわと言っていた、ああ多分私の友達が右折できなかったのも、道路こんにゃくみたいだったからかもね、こんにゃくの上は右折できないわと、そんな具合に。やがて雰囲気セックスという感じにうつろい、彼は私のパジャマボタンの一番上に手をかけた。そして不意に「ペイネ小鳥やな」と言った。

ついさきほどまで二人で見て爆笑していたおっぱい丸出し画家の名である。我々は本当に学習しない。私はもうどうしようもなくげらげら笑ってしまい、笑い上戸で釣られ笑いが多い男性ももちろん笑いだした。

まりセックス雰囲気はそこで雲散霧消した。我々がセックスレスになるなら、笑いすぎて雰囲気消失しがちなことが原因となるだろう、おそらくまれな原因なのではないか、などと真剣に言い交わしたあと、私は男性に「でもちょっとまだ勃ってるね」と言った。実際にそうだった。盆の帰省はながかったので、久々のセックスの機会だった。

男性は「ほんのり勃ってんな」と、自分勃起状態をそう表現した。

「ほんのり」と私は笑った。ペイネの絵にも、露骨過ぎないほんのりとした色気がある、そのような評をどこかで読んだなと思ったので、私は彼に「ペイネ勃ちだね」と言った。

すると、もはやセックス雰囲気雲散霧消を通り越して爆発四散という様相になった。男性はひとしきり笑った後、さんざん「なんやペイネ勃ちって!!」と私を叱り、わたしはもう開き直って「そのほんのりとした勃起状態にぴったりかなと思って」と答えた。

つかこ男性との間に肉体関係がなくなり、会わなくなるという日がないとは言えない。先のことは誰にもわからない。

しかし私はやっぱり直一の名前と同じで、この先男性と会わなくなり、彼の名前を忘れる日がきたとしても、レイモン・ペイネという画家の名を忘れることはないと思う。

久々すぎてむらむらがまさったので、なんとかセックスしました。

2024-02-05

anond:20240205195916

限定リトグラフとか言われて単なる印刷物を買わされた過去の人たちを嗤えませんね☺️

2024-01-29

anond:20240129171749

のび太おじさん「『モザイク取り器』持って行かないと剛田サンリトグラフを買わなきゃいけなくなるんだよ~😭」

2022-11-19

浮世絵技術欧州リトグラフ技術を取り入れたんだろうな

しかし当時の欧州科学医学発達時代であったし、幕府の輸出品もおおむね銅とか金属だった

鉱山に耐える植物を知りたかったのか、1780年代にはツンベルク(ウプサラ大学)、1830年代にはシーボルト(ヴュルツベルク大学)が日本植物誌を出した

ウプサラ大学と旧オランダ東インド提携して、幕府妨害に遭いながらも調査をしていたようである

明治時代欧米蒸気機関車兵器などを日本に輸出する義理なのか、浮世絵もよく売れたようである

2021-10-25

NFTアートを普及させたい人たちはもっとメリットをいい感じに言ってよ

https://note.com/ysi/n/n2a7992f12bfd

この記事を書いた人は『NFTのインフラ「Hokusai API」を提供する会社代表』ってことでおそらくNFTアートを普及させたい人だと思うんだけど、なんかこうメリットいまいち伝わってこず、逆に怪しさが出てきてしまって残念である

デジタルコンテンツは共有方法によっては劣化しにくいゆえにコピーやすいので、なかなかお金化することが難しい商品だと思う。

例えば絵師イラストコンテンツお金にしようと考えた時に、一番わかり易いのは印刷したような「物」に変えるか、イラスト受託して受託料を受け取るか、である

物に変えた場合販売数が増えれば儲けが増えるというメリットはある。

一方で在庫リスクや試作品などの先行投資が発生したり、売れやす金額を設定しなくてはいけないなどのデメリットもある。

受託イラストに関しては、基本的作業料がそのまま金額に直結するため、作業単価を高めに設定すると金額にそのまま跳ね返ってくるというデメリットがある。

NFTがこのジレンマ解決してくれる可能性は大いにあると思う。

例えば、長時間かけて描いたデジタルイラストを、アナログ限定リトグラフのように連番を打って販売する事がおそらく出来る。(デジタルリトグラフという言葉があるのだろうか)

よくガチャ廃人に向けて「それだけ課金するなら直接絵師に絵をお願いできるじゃないか」と言うジョークがあるが、人気絵師に直接絵を依頼するのはハードルコストも高い。

しかしこのデジタルリトグラフのようなコンテンツが普及すれば、人気絵師デジタルイラスト比較安価で手に入れることができる。 ※デジタルイラストを手に入れてどうするのと言う疑問は置いておいて

一方で絵師イラスト必要以上に高値を付けること無く、逆に売れやす金額必要以上に価値を低くすること無く、自分コンテンツ販売することが可能になるはずだ。

今歌われているNFTのメリットである投機対象という側面はメリットの一部に過ぎないのだが、その他のメリットがわかりにくいため、わかりやすい部分がクローズアップされてしまっているのだと思う。

NFTアートは新しく、おそらく様々な可能性を持っているフィールドだ。

頭が悪い自分には上記のようなわかりやす商品しか思いつかなかったが、発想次第では思いも寄らない商品が出てくるはずだ。

様々なを普及させたいという方々は自分たちが新しい畑を耕していると言うことを自覚して、様々な不安要素を潰し、長期的なメリット提示したほうがいいと思うんだ。

2020-11-16

おしゃれなリトグラフ

古くからの友人M子、最近になっておかし言動が目につくようになった。

マウントと言うのだろうか。

M子は家にすごくおしゃれなリトグラフを飾っている。

絵を部屋に飾るかどうかは個々人の自由だし、なんなら何も飾りたくない人だっているだろう。

ところがM子に言わせればリトグラフを飾らない人は「やらない理由を探しているだけ」らしい。

そうやって、部屋に絵を飾らない人を見下している。

他の人が「人には好き嫌いがあるよ」などと言っても、それはリトグラフを家に飾れない人の負け惜しみに変換されて聞こえるらしく何を言っても通じない。

「いい訳ばかりするような人は嫌い」とまで言う。

M子のSNS投稿、呆れた人はコメントしないが、「そーですよ!言い訳してやらないとか、子どもいるからとか、そんなのただの逃げ!」とかいう賛成派のコメントだけ付くのが見ていて気持ち悪い。

M子の事は別に嫌いじゃなかったけど、だんだん鼻につくようになってきた。

私もM子が嫌いになった。


さよなら、M子。

2020-05-28

咳がゴッホ

俺の名はチャックカウパー

好きな歌手は「シンディローパー米国美空ひばりと言われる人物である

好きな女優は全盛期の「アリシア·シルヴァストーン」今や見る影もなしと言われるのもむべなるかな。

好きなドラマは「ウォーキングデッド 」かの養老 孟司先生が「ウォーキングデッド」の面白さを理解きぬ人間は下等生物に等しいと評した名作。

好きな食べ物は「虎白のテイクアウト二段弁当見城徹が舌鼓を打つ1万6千円のお弁当だ。

好きな旅館強羅花壇もとい「あさば」小佐野賢治愛人としけ込み、許永中先生銀座ママと喧嘩したことで有名なルレ・エ・シャトー認定されている老舗旅館

好きな漫画は「サンクチュアリ」いわずもがな小泉進次郎が一番好きな漫画

好きな選手は「松山英樹日本最高峰アスリートイチローを超える日も近い。

好きな絵画は「ラッセン」いまや糞アートシャガールリトグラフ以下。

 

あなたの好きなものも教えてくれませんか?

 

漏れなく一言コメントさせて頂きます

長文失礼m(_ _)m

2017-09-05

[]興梠

興梠(こうろき、こうろぎ、こうろ、こうのき、こうまつ、こうりょ、こしき、よのき 、きょうろ、おきの、おこのき、おこりょなど)は日本人の姓である

漢字・読みともに希少かつ難しいが、宮崎県高千穂や五ヶ瀬、熊本県阿蘇では比較的多く見られる。

2016-09-09

[]

横浜にある記念船日本丸横浜みなと博物館に行って参りましたわ。

みなとみらい駅エスカレーターが長くておそろしいおろそしいですわ。むきゅー。

みなと博物館の展示は、ほぼ黒船来航から始まったといえる横浜歴史を伝えています

まず黒船艦隊9隻の中にサラトガレキシントンがあって驚きましたわ。

レキシントンを沈めたのは東京湾のかたきを珊瑚海海戦で討つですわね。

まぁ、エセックス級になって復活しますけど。

後世と同名の船ではミシシッピも3隻の蒸気船の1隻として来ていました。

博物館ライブラリー横浜と船に関する本が集まっていて、名高いジェーン年鑑がないか探したのですけど、

横浜資料の「ちんちん電車の本に目を奪われてしまって、雑魚ナメクジに終わりましたわ。

そして、横浜に造られた大さん橋の展示には「大さん」という方が造った橋と勘違いしました。

音声解説によれば大桟橋のことでしたわ……そこは非常用漢字でも桟を使ってほしいですわ。

みなと博物館は船の復元模型が非常に多くて目を楽しませてくれました。

ですが、ガントリークレーンの動く模型は、吊り荷の下に人形が入る配置になっていて×ですわ。

ヒヤリハット報告書提出ですわ。

それと遠足のお子さまがたくさん見えられていたのでアクリルが脂地獄でした。

掃除の方の苦労が思いやられますわ。

特別展では2015年になくなった柳原先生絵画が展示されていて、

アンクル船長をみたら、あの人だとすぐに分かりました。

切り絵から油絵リトグラフ晩年まで新しい画材積極的に試している姿勢が素晴らしかったですわ。

博物館のとなりに係留されている日本丸入り口スロープをみて

バリアフリーかと思いきや、内部は急な階段に満ちていました。

車いすの方は甲板だけみるのでしょうか。

うっかり船にあがった鯖になりましたけど、さばかれはいしません、さばかれはいしませんですわ。

日本丸のあのマストに登って帆を広げたり畳んだりすると言われても、

悪い冗談しか思えませんでした。

しかも、船が動いていて傾いていて風や波をかぶっていて太陽がでていない場合でも

帆の操作をしているわけです。

日本丸をみて人間業の到達できる高さを知りました。

いまでも毎朝船内にある真鍮の部品が磨かれているそうで、記念船を維持するための

地元の方の営為にも頭が下がる思いでした。

2014-11-17

浮世絵をみて1ヶ月くらい興奮が冷めなかったが、ようやく冷静になったので書き綴る

僕はアートというもの理解できない。

音楽に感動したことはない。

ロックバンド音楽のチカラを叫んでも、

音楽のチカラでパレスチナ問題を解決してみろ」と言い返してしまう。

絵も理解できない。

絵の解説を読んで、作品の背景に感動させられるだけで、絵からなにか伝わったかというと、ふーんっていう感じだ。

そんな自分だが、唐突だが浮世絵について語らせてもらう。

あれは凄い。

本当に凄い。

なにか伝わってくるとかそういうのじゃない。視覚イメージからね、殴りかかってくる。

きっかけはというと、摺りたてをみたわけだ。

美術館特別展で展示販売をやってて、本当に偶然だ。

浮世絵というのは、基本水彩で、そもそも水彩の鮮やかさというのはブラウン管液晶では今ひとつ再現できないというのと、そもそも日焼けに弱い染料なので、当時の色と全然違うわけ。

で、とにかく凄いんだけど、一ヶ月くらいなにが凄いのか、自分でも整理できなかった。

ようやく整理できたので、とにかく語りたい。

まず立体感。既に物理空間的に2次元じゃない。

浮世絵で立体感?むしろ平面的な絵だと思うが・・・

と、思ってたよ。僕も。

すごいの。ニンテンドー3DS裸眼立体視浮世絵から開発したんじゃね?ってくらいに。

ていうかね、もう物理的に立体的なの。

いろんな工夫があるんだけど、わかりやすいところから説明すると、そもそも紙が凹凸で立体的なわけ。

たとえば、このトンボの羽、スジスジがボコボコ盛り上がってたりするの。画面じゃぜんぜんわかんないけど。

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/hokusai120-f/

これも画面じゃぜんぜんわかんないんだけど、指で首筋を撫でた跡がさ、紙の凹凸で表現しちゃってるわけ。

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/utamaro067/

もう艶かしくて艶かしくて。

構図での立体感

生でみないとわからないんだけど、ニンテンドー3DSのアレに近い印象がある。

平面的な絵がレイヤーされていて、レイヤー間に明確な前後関係があるような感じ。

露骨なので言うとこんなやつ

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/hiroshige160-f/

それから、こういうの

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hiroshige182/

子供の頃、校庭のフェンスの金網越しに風景をみてたら、とつぜん立体視になってビックリしたこととかってないかな?

あれだよあの感じ。

格子をみて、その向こうをみて、それを繰り返すと、うわぁぁぁ!ってなる。

自分がそこにいるような感覚

それから、この構図をわざと切ってるところ。

さっきの梅の絵のほうは、左側に立て札がちょっとだけ入っているけどほとんどフレームアウトしてて、遊女の部屋の絵は襖ちらっと見えてる。

このフレームアウトが、絵じゃなくて、まるでどこかから自分が覗きこんでるような錯覚に陥らせるんだな。

この感覚漫画に親しんでる日本人特有のものなのかもしれない。

漫画だと、こういう演出は暗黙のうちに物陰から覗きこんでるというお約束だろ?

不思議なことに、日頃浮世絵に親しんでいないせいか、生でみるまでこういうお約束がつたわってこなかったんだが、随所に漫画的な表現が伝わってくる。

”力みなぎる感じ"やら、”物陰から覗いている感じ”

物理的には間違っていてもイメージとしては正しい

浮世絵に影はないっていわれるけど、あるのもあるし、ないのもある。

浮世絵で影を使うのは、影があるから影を描いているんじゃなくて、影の効果必要から影が描かれる。

たとえばこんな感じ

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/kuniyoshi004/

明るい月夜を表すために、現実ではありえないほどくっきりと影がかかれてる。

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/hiroshige308/

同じく月に照らされた人影。月は高く登っているのに、影はのびている。

アニメ表現に似てる。

エヴァンゲリオン飛行機から発進したエヴァが地上についた時に、砂埃が進行方向ではなくて、後方にのびていたシーンがある。

あれと一緒。

物理的には間違っていてもイメージとしては正しい。それが浮世絵表現

写実的に書くなら、写真のように陰影の表現で塊を描くのが正しいけど、あえて輪郭線を使う。

イメージの中では、人物と風景の間には境界があるから輪郭線があるのがイメージとしては正しい。

逆に、意識の外のものについては、明らかに見えるはずであっても輪郭を描かずにシルエットだけにする。

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hiroshige024/

ヤバイ構図

絵というのは自分が感じたことだけで語るべきな気がするので

「当時の人は」という視点は間違ってるのかもしれない。

でも、考えてみる。

当時は当然テレビなんかなかった。

自分目線以外の構図って、みたことがなかったはずなんだ。

たとえば構図上から街並みを俯瞰するような構図というのは、見たことがなかったはずなのだ

で、なんでこんな構図がおもいつくのさ。

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai029/

http://hiroshige100.blog91.fc2.com/blog-entry-47.html

ただ道が曲がりくねってるだけでこんなにもストーリー性がでてくるのかと。

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hiroshige027/

わずもがな、世界で一番躍動感のある波。

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai040/

浮世絵以前の絵って、西洋東洋もこんなに構図が豊かじゃなかった。

現代写真漫画映画の構図の元ネタが、だいたいがこの時代なんじゃないかっておもえるほど。

色彩感覚ヤバい

これについては、繰り返しになっちゃうけど、ほんと日本人派手好きすぎ。

画面のほとんどが赤と緑のグラデーションって、ヤバいでしょ。

http://item.rakuten.co.jp/adachi-hanga/hiroshige160/

山頂が快晴裾野雷雨ビビッド過ぎ!

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai049/

これ、もはやルノワールじゃね?

https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai_sakurafuji/

しかも安い!

よくリトグラフ20万とか50万とかするじゃん。

その点、浮世絵は超安い。

1万3000円とかで買える。

ただ、難点は、アクリル板越しでさえぜんぜん凄さが伝わらない。

生で、そのまま見ないと。

オススメは、額にいれないでそのまま壁に画鋲で刺すこったね。

紫外線ですぐ色褪せるけど。

もったいない

もう一回買えばいいのだ!

 
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