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はてなキーワード: 日暮とは

2022-07-07

anond:20220707001746

7月7日つっても0時から夜明けまでと

日暮から0時まで2回チャンスが有るなら

なんか希少性ガタ落ちじゃね

2022-06-06

anond:20220606183102

Twitterで騒いでる奴を見て

いくらなんでもそこまでその日暮らしの連中だらけじゃないだろ、と思ったが

やっぱり本当に貯金がないわけじゃなくて「回してもいいと感じる金額に達してない」ってだけだよな

2022-05-12

知恵袋での、中絶賛成派の態度がひどかった

ざっと見ていて目についたのだが。

中絶賛成の人が理屈だって説明しているのに対して、中絶賛成派の質問者の態度。

レ⚪プされても産むべきと?
いらない子供を産んで放置したり虐待して殺すのはかまわないってことですか?
ちょっと変な人っぽいですが、必要ない子供なんか産んでも育てられないですよ。
男尊女卑が好きなら発展途上国移住したら?治安悪い国は女性人権がなく中絶犯罪になる国もあるし、あなたが望む国家でしょ。
発展途上国なら異常者も偉くなれますよ。
ぐだぐだと言ってるけど内容は浅はかですね。あなた未婚で女性モテたことないでしょw
モテたことないからって逆恨みは止めてくださいねあなたに魅力がないのが悪いですから。女から見ても異常な男なんか関わりたくないです。頭も悪そうだし。
あとあんたは自分を賢いとでも思ってるんですかね?無駄に長い的はずれな文章バカしか見えないですよ。こんなにひねくれるなんて親に愛されてこなかったんですかね。家庭環境が悪かったことは容易に想像できます
あんネットでだけ強気モテない不細工男確定だね。あんたは子孫も残せず死ぬ運命なんだから惨めだわ。異性にモテない人間価値はないんだよ、劣等遺伝子が。
にしてはキレてますね。どこまで本当だかw本当ならあなたのもとに産まれてきた子供可哀想。頭の障害っぽいし子供にも遺伝したのでは?あなたの親も子育て失敗ですが、あなた子供産む前から子育て失敗確定ですね。笑えるわwww
女に選ばれない男が惨めだね。ってかその写真お前?不細工キモすぎるから変えたら?w考え方がネットによくいる底辺男と同じ。脳に障害がある劣等男は女が妬ましんだね。くだらないことで女にマウントとって羞恥心ないの?不細工。男って頭や経済力ないと認められないわ働かないと生きていけないわ社会的地位がないとクズ扱いだわで損な生き物だよねぇw女はそんなもんなくても楽に生きれるから得な生き物だわ。お前は男として価値がないからまともな遺伝子も残せないんだよ。
つーかお前マジでろくな女と付き合ったこともないんだろうなw顔もキモくて性格キモいから同じレベルの女しかまらんか、お前みたいな発達アスペっぽい変人をまともな女は本能で避けるからな。お前は男同士の争いに負けて良い女から好かれたことない、全てが劣った存在価値のない男だとよく分かるよ。
ネットではなんとで言えるよねバカかが。ってか2000万円くらいで金持ちと思ってるのがすでに貧乏w劣等女代表あんたの母親だわ。あんたを産んで後悔してるだろうね。のぺっとした不細工顔も母親から遺伝か?妄想あんただね。引きこもりアスペジジイがネットで女見下して自尊心満たして哀れで惨め。こんな時間ネットしてるあたりまともな仕事もしてないんだろうね。旦那大企業勤務で専業主婦の私と違い、男は働いてなんぼなのにお前本当に生きる価値ない人間だな。
他の女性に期待もなにも、女はあんたみないなまともな仕事もしてない頭おかしアスペなんか結婚相手に選ばんわ。顔も不細工だしね。自分が選ぶ側だと勘違いしてる目の小さな薄い顔の醜い男w学生時代から孤立してて就職もしてないのかな?あんたみないなおかしタイプは真っ先に社会からのけ者にされるよね。日本社会に馴染めず引きこもってんだろ。負け犬くん。
よく読んでなかったが不労所得とか言ってるあたり定職に就いてないの確定だねwしかもたった2000万円w会社勤めできないから最低限の保証もなく厚生年金も払えないんだろうな。独身時代1年くらい付き合ってた彼氏会社辞めてFXしだして数千万稼ぎだし羽振り良くなってよく高いプレゼントくれるようになったけど、さすがに正社員じゃない男と結婚は無理だから別れたわ。次もできたしね。不労所得なんかで長いこと食いつなげるわけなく数年で傾き収入ゼロ借金まみれになって蒸発したらしいけど。不安定なその日暮らしの男なんかに価値はない。
お前は老後企業年金厚生年金も貰えず野垂れ死に確定だな。私は旦那恩恵企業年金厚生年金確定済み。さら旦那は様々な保証つけてるから一生安泰は確定なんだわ。頭おかしすぎて組織に馴染めず正社員になれないし経営者になる実力もなく、リスクが高く不安定不労所得(笑)たよりの綱渡り人生なんて生きてて楽しいか?社会不適合者にはそれしか道がないか(笑)お前大学すら行ってなさそうだね。社会の仕組みがわかってなさすぎ頭が悪すぎ。不登校休みがちのイジメられ男だな。だから就職もできなかったんだろう。

女さんと「議論」してたら直ぐにこう言うのが沸いてくるよね。

2022-05-10

随分バイトをやって

清掃の人とか

その日暮らしの人とか

関わってきて

バスに乗って

どっかぼろっちいビルを見ても

あの中に人がいて

毎日働いて

生活して

がんばって生きてるんだなって

他人の生きてることについての想像力

働くようになったのに

その中の人間とは

誰一人として

からのわかり合いができない

2022-05-08

つの間にかその日暮らしのくだらない人生になってた

2022-02-19

anond:20220219092523

文章の組み立てがまずいからやで。

元増田文章はいかのように解読されるんや

①私はフリーターには人権がないと思うよ。

②(なぜならばフリーターのような)努力もせずその日暮らしをする人に人権なんてあると思うなよ。

みんなが思う「人権がない人の特徴」を教えて

私はフリーターには人権がないと思うよ。努力もせずその日暮らしをする人に人権なんてあると思うなよ。

2022-01-31

anond:20220131170855

淡水へはらわた返す泳ぎ去れと

階段が無くて海鼠の日暮かな

白魚のまぼろしや傘ひらくとき

銀河系とある酒場ヒヤシンス

唐辛子そこまで向きにならずとも

橋閒石はいいぞ。

2021-12-17

anond:20211217105221

農業が広まったとき

その日暮らしの狩猟生活から数年先のことを考えて生きるのが正しい社会に転換したの

2021-11-29

最近読んだ(非)BLと、BL雑記

 少ないお小遣いで何買って読もうかなってしばらく考えた。来月の二日に『その花の名を知らず』(長野まゆみ)が発売されるというので、もう何も買わずに来月末まで待って、またお給料が出たら我慢して貯めた千円に新たなお小遣いの千円をプラスして買おうかなと思ったけど、やっぱり後回しにすることにした。なお、『その花の名を知らず』は『左近の桜』シリーズの第四弾である。二年くらい連載されていたらしいので、1冊で二巻ぶんあるはず。

 ついでだから最近読んだ訳ではないが『左近の桜』を紹介しておこう。

左近の桜』(長野まゆみ

あらすじ

 左近桜蔵(さこん さくら)は、武蔵野とある旅館女将の息子である。彼の家の生業は、実は男性専用の連れ込み宿だ。

 ある日の夕方、桜蔵は番頭の代わりに客を迎えに出て、間違えてこの世ならざる者を拾って来てしまった。その一件以来、桜蔵はしばしば謎の引寄せ体質により、亡霊を拾って来るようになる。そんな桜蔵のことを父の柾(まさき)はそれはお前が「女」だからだと言うのだが……。


ざっくりと解説

 舞台現代東京ながら、江戸情緒の僅かに残る世界観主人公の桜蔵が己の変わった体質により事件に巻き込まれ、毎度「アッー!」なことになる、短編連作集。また、桜蔵の出生の秘密を解くミステリー要素ありいの、桜蔵と父柾とのBL要素ありいの、読み応えがあるシリーズ作品だ。


増田感想

 個人的に気になるのは柾×桜蔵あるいは柾←桜蔵のほんのりBLがこれからどうなっていくかだなぁ。柾に対する桜蔵の思いはうっすら恋情もありつつ父への慕情とか憧れ。作中時間が経つごとに着々と老いていく柾と成長していく桜蔵。いずれ桜蔵が父を超えていく父子相剋物語になるのか、それとも桜蔵が成熟した「女」となって柾に抱かれるかなんかするのかっていう。

 柾と桜蔵の本当の父親がどういう関係だったのか、過去の話もいつか明かされるのか、たのしみ。

 



さて、結局『その花の名を知らず』を買うのを見送って買ったBL……というか、非BLはこれ↓


『日々、君』(小池定路

あらすじ

 脚本家の蓮野は仕事が忙しくなり、ただでさえ苦手な家事が回らなくなってしまった。そこで、前からちょっと気になっていた後輩の日暮を呼び出し、家事手伝いのバイトを頼むことにした。

 苦もなく家事をこなし、頼めば一緒にご飯も食べてくれる日暮に対し、蓮野は感謝以上のなんとも形容しがたい思いをつのらせていき、やがて日々を日暮のことばかり考えてしまうようになる。

増田感想

 前におすすめされてpixivで読めるぶんだけ読んだんだけど、一巻まとめて読んで、すごいなと思った。

 何がすごいって、四コマ形式コマ割で描かれていること。一ページ8コマの配分なんだけれども、ちゃん四コマごとに軽くオチのようなものがついているというか、そこで一区切りがついているということ。四コマをはみ出して半端なコマ数で一旦途切れるということがない。そして、8コマぶんで一回り大きな一区切りだし、数ページで「1話」として綺麗に完結している。そして1冊の漫画として綺麗に終わっている。(全2巻らしいんだけどね。)

 す、すごい……作者は四コマを描くために生まれた、四コマの神なのか? BLとしてどうこうという以前に漫画が上手すぎてこわい。絵も可愛いしなぁ……あぁ、すごい……。

BLなのに「非BL」とは。

 作者自ら本作を「BL」と明言しており、編集部BLとして売り出したようなのだが、本作は某BLレビューサイトには「非BL作品に分類されている。何故なのかというと、単にBLレーベル作品ではないからだと思う。だが、レビューを見てみると、本作が「非BL」に分類される理由レーベル問題以外にもあると思う読者もいるのがわかる。

男×男=BL ではない。

 実は商業BLにはけっこう厳しめのルールがあって、それを満たさなものBLとは見なさないようなのだ。私の知っている限りでは、以下のルールがあるっぽい。

 そんな感じなので、セックスどころかキスハグもしない『日々、君』はBLではないと言われてしまう訳だ。けれども、恋愛になりそうでならない感じでもだもだしつつ、着実に互いの距離感を縮めていく描写は、恋愛ものの基本かつ根幹って感じがするよなぁ。

 なお、上記で紹介した『左近の桜』もレーベル問題で非BLなんだけど、亡霊達×桜蔵という、桜蔵総受けBL状態でありながら本命のカプと見なされる柾×桜蔵はずっとノータッチ状態なのがまた非BLとされる一要素かもしれない。

 はぁ……、商業BL(とそのファン)って面倒臭いな。以下、BL雑記

BLというジャンル確立されたせいで行き場を無くす表現もある。

 商業BLにはルールがあるが、個人で書いているぶんにはそこまで厳格にこれはBLだがあれはBLではないとかやらなくていいはずだ。

 ところが、Web投稿サイト投稿するとなれば話が微妙になってくる。中にはBLガチ勢字書きや商業で食っていきたいセミプロBL書きとかも混ざっている。読み手にしても、漠然BLっていうのは男同士でヤってればいいんでしょと思ってるだけの人から商業BL同等の物を読みたい人もいる。

 私個人感覚では、BLを書いて投稿サイト投稿し、多くの人に読まれたいと思ったら、商業BLルールに則った物を書くのが無難なのかなって感じる。人類の半分が女だからって登場人物の半数が女だったりとか、攻めが浮気しまくりとか、カプ離別バッドエンドとかは書かない方がいいんじゃないかと……。ただ無視されるだけならまだしも、「それはBLではないです」って苦情が来たらつらいし。

 じゃあ、そんなBLルールは窮屈だからってBLタグを外して「ヒューマンドラマ」だの「サスペンス」「学園ドラマetcタグだけ着けて投稿すれば、後から親切な読者に「BLタグを追加されるとか、「腐媚びキメェ」と苦情が来るかもしれない……。なまじっか面白い物を書いてしまった場合BLと明記しなければ人はそれを一般向けとして読む……ばかりか、何となく男性向け」に近いものと読んでしまい、後から「なんだよ女向けじゃねえかよ」とか「もっと男が喜ぶようなこと書けよ」って苦情も来るかもしれない。

 ……とかいう話を、最近とあるBL字書きコミュニティで話し合ったのだった。BLというジャンルがあるせいで、BLではない男×男の作品って行き場がなくない? と。

 で、どうする? って話で。対話相手は、そんなら仕方ないか腐女子から顰蹙買ってもいいかBLと言い張って書くよ、とのこと。一般向けと見られて、もっと人気を出すために男向けの表現……たとえば従順可愛い巨乳の女を書くくらいなら、生意気で男の言うことをきかない女の登場する「BL」を書きたい、と。なるほど。

 プロ世界なら、純文学とかエンタメ系という性別どっち向けとかないジャンルで書いていけるけど、Web素人小説書きはどっち着かずではやっていけないんだよね……という話。

 それとは別に、私が思うBL不自由で厄介だと思う点は、BLは男同士の関係恋愛帰結するということ。虐待も執念も「愛ゆえ」ということになってしまうので、へたに男→男の性犯罪から復讐譚みたいなものを書いてしまって、それをBLとしてWeb投稿しちゃったりすると、暴力描写が「癖」とみなされ一部の読者がたいそう喜ぶ……かもしれない。というのは、よろしくないよなぁと思う。たとえば殺意殺意なのだが、BLマジックがかかると恋情や愛情になってしまう。という歪さかげんにむずむずする時がある。

 だからってBLなんて無くなれと思ってる訳ではないのだが。

2021-11-08

現金給付目的貧困者救済じゃなくて経済浮揚なのかな

生活保護受給対象者子どもの有無に限らず現金給付するとして

なんかが壊れてしまっている貧困者をさっさと生活保護の網にかけたほうがいいんじゃなかろか

実体実数が把握出来てない

どん底貧困者に配ったところで

その日暮らしが延びるだけで

そのまとまったカネでどん底脱出してくれる望みは薄いのではないか

さっさと保護しろ保護されろってことではないのか

2021-10-31

太陽のしっぽ

初代PlayStationの初期に発売されたゲーム太陽のしっぽ。プレイヤーは原始人を操作して、自由気ままな生活を送り、狩で手に入れたマンモスの牙を積み上げていくとエンディング。当時は「何をやったらいいかからない」「ゲーム性がよく分からない」と謎ゲーム、軽いクソゲーム扱いされていた。

今思うと、あのゲームが示していたのは、人間自然状態に近い狩猟その日暮しから、何らかの構築的な意図を持つことで脱却する、創造性を手にすることで自然状態から離脱をする、その一歩なのではないか。遊びとは自然状態の中に独自法則性を敷くことで、勝敗目的を生み出し、終わりを作り出す。PlayStationという次世代の遊びに対して、自然から構築・創造への離脱の瞬間を解として用意したのではないか

2021-09-27

anond:20210927000144

その日暮らしやパチンコで使える額はたかが知れているでしょ

2021-08-02

21世紀にもなって人間一生安泰じゃないのはなんでだろう

食料も住居も余っているはずなのに

宵越しの銭を持たないその日暮らしなんてことはないだろうけど

さりとて一生分の金を持ってる人間ほとんどいない

いわばその月暮らしその年暮らし大口径自転車操業に過ぎない

みんなその程度の地に足のつかないふわついた存在に過ぎないのに

社会がまるで社会としてしっかり成立しているかのように存在感を放っているのは不思議

2021-07-12

メロス激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのであるメロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎを。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」「おどろいた。国王は乱心か。」「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」 聞いて、メロス激怒した。「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城はいって行った。たちまち彼は、巡邏じゅんらの警吏捕縛された。調べられて、メロスの懐中から短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白そうはくで、眉間みけんの皺しわは、刻み込まれたように深かった。「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。「おまえがか?」王は、憫笑びんしょうした。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁はんばくした。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。「わしだって平和を望んでいるのだが。」「なんの為の平和だ。自分地位を守る為か。」こんどはメロス嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」「だまれ、下賤げせんの者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚うぬぼれているがよい。私は、ちゃん死ぬ覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑った。「とんでもない嘘うそを言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」「そうです。帰って来るのです。」メロス必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑ほくそえんだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかい奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」「なに、何をおっしゃる。」「はは。いのち大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 メロスは口惜しく、地団駄じだんだ踏んだ。ものも言いたくなくなった。 竹馬の友セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニス面前で、佳よき友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。 メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊こんぱいの姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」 妹は頬をあからめた。「うれしいか。綺麗きれいな衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから結婚式明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、葡萄ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、手を拍うった。メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分からだで、自分のものでは無い。ままならぬ事であるメロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。今宵呆然歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう。私は疲れてしまたから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるのだ。私がいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」 花嫁は、夢見心地で首肯うなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」 花婿は揉もみ手して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈えしゃくして、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃であるメロスは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる。メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。 私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友を救う為に走るのだ。王の奸佞かんねい邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若いから名誉を守れ。さらば、ふるさと若いメロスは、つらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。メロスは額ひたいの汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気のんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫はんらんし、濁流滔々とうとうと下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵こっぱみじんに橋桁はしげたを跳ね飛ばしていた。彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟けいしゅうは残らず浪に浚さらわれて影なく、渡守りの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。メロス川岸うずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」 濁流は、メロス叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はメロス覚悟した。泳ぎ切るより他に無い。ああ、神々も照覧あれ! 濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍れんびんを垂れてくれた。押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。ありがたい。メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼりのぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊山賊が躍り出た。「待て。」「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」「その、いのちが欲しいのだ。」「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」 山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒こんぼうを振り挙げた。メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、「気の毒だが正義のためだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙すきに、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駈け降りたが、流石さすがに疲労し、折から午後の灼熱しゃくねつの太陽がまともに、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈めまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天いだてん、ここまで突破して来たメロスよ。真の勇者メロスよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代きたいの不信の人間、まさしく王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐ふてくされた根性が、心の隅に巣喰った。私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截たち割って、真紅心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺あざむいた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとうセリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉人種だ。セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉かな。――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。 ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さく囁ささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬すくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復かいふくと共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。 私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 私は、正義の士として死ぬ事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。私は生れた時から正直な男であった。正直な男のままにして死なせて下さい。 路行く人を押しのけ、跳はねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴けとばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」ああ、その男その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。「フィロストラトスでございます貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方かたをお助けになることは出来ません。」「いや、まだ陽は沈まぬ。」「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です。あの方は、あなたを信じて居りました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロス疾風の如く刑場に突入した。間に合った。「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉のどがつぶれて嗄しわがれた声が幽かすかに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若もし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯うなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑ほほえみ、「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」 メロスは腕に唸うなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。「ありがとう友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。 群衆の中からも、歔欷きょきの声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起った。「

anond:20210712125327

2021-06-09

無言電話

メールやLINEが普及してから日常生活のなかで無言電話を受ける機会は格段に減ったと思う。それでもあの、電話の向こうで、誰かが息を潜めてじっとしているあの感じ、じっさいにそうしているかどうかは分からないのに、それでもやっぱり誰かいると思うあの、背筋がぞわずわする感じは、いまだに思い出す。

無言電話のあの気味悪さをわざわざ味わいたい人などまずいないだろうと思うが、母は無言電話を心待ちにしていた。毎年、いつ掛かってくるかわからない無言電話を受けられるようにするためだけに、家にいることが多かったと思う。

うちは姉と私の二人きょうだいで、姉は少し変わっていたと思う。今だったらいろいろな診断名がついたのかもしれないが、当時はそういうことを知っていた人が周りに誰もいなかった。家にいるときの姉はどこか天真爛漫なところがあって気前がよかったが、何か思い通りにならないことがあると癇癪を起こしたり、ふさぎ込んでしまうこともあった。大きな音が苦手で、近所で工事があって重機の音がしていると、両手で耳をふさいだままその場に倒れ込んでしまうことがあった。甘いものを切らせると具合が悪くなるので、いつもポケットに飴かクッキーの小袋を入れていた。

そういう姉が学校で周りの人とうまくやっていくのは難しかっただろうと思う。小学校低学年のとき遠足で市立公園に行った。二個上の姉の学年も行き先が同じだった。自由行動あいだは、友達同士のグループレジャーシートを敷いて固まって、お弁当を食べたり、おやつを交換したりした。トイレに行くとき、姉の学年の人たちがいる原っぱの横を通りかかった。いくつものグループができて、みんな騒いでいたけれど、姉だけは少し離れたところで草むらに入り込んで、バッタかなにかを追っていた。よくわからないけれど、見てはいけないものを見てしまったような気がして、その日は一日じゅう暗い気持ちだったことを憶えている。

勉強ができた姉は、県内でも有数の進学校とされている高校に行った。毎日自転車帰宅して部屋に戻ると、それ以降どこかに出かけた姉を見た記憶がない。高校で「普通」の人付き合いができているかどうか、母は気にしていたらしく、姉の友人関係についてそれとなく尋ねたことがある。そのたびに姉はひどくいきり立って、よくわからないことを叫んで、部屋に籠もった。父は何もいわなかった。

受験生になって県外の旧帝大を受けた姉は落ちた。模試での判定はよかったらしく、私立を併願しても行く余裕はうちになかったので、他にどこも受験していなかった。姉よりランクの低い高校に行っていて、卒業後は就職するのだろうと思っていた私は、姉の身になにが起こっているのか、想像することもできなかった。

自宅で浪人をしていた姉は翌年も落ちた。どういう話し合いが両親との間であったのか、私には分からない。父のつてで紹介された地元ケーブルテレビ会社で姉は働き始めたが、半年ぐらいで行くのをやめた。おそらく人間関係が原因なのだろうと思ったが、家では誰ものその事を言い出さなかった。その頃から母と姉との言い争いが絶えなくなった。ちょっとしたきっかけですぐに激しい言葉のやりとりになって、姉が勢いよくドアを閉めて部屋に閉じこもるのが常だった。

姉が引きこもるようになってから少したった頃、私は地元会社で働きはじめて、仕事を覚えることで頭がいっぱいだった。家に帰ると毎日疲れていた。姉とは話す機会がほとんどなかった。たまに、夜中の居間で出くわすことはあった。帰宅後、着替える気力もなくて、電気の消えた居間ソファーに沈み込んでTVぼんやり眺めていたら、冷蔵庫麦茶を取りに来た姉もしばらく後ろに立っていて、流れている番組について他愛ない話をした。いま思うと、そういう話をすることで、私たちはお互いに何かを確認していたのかもしれない。

それからはいなくなった。珍しく私は早く帰ってきて部屋にいたら、母と姉が言い争う声がして、ドアが勢いよく閉まる音がした。またやってるのかと思ってそのときは気にとめずに寝たら、翌日に姉はもういなかった。捜索願、探偵行方不明情報サイトへの登録、なにをやっても戻ってくる気配はなかった。ネット情報を見た人が、小倉ホームセンター駐車場で姉らしい人を見かけたといって連絡してきたこともある。ジャージ姿で男の人と車に乗って去っていったらしいが、本人なのかどうか、確認する方法はなかった。

一年くらい経って、姉から電話があったと母が言った。夕方かかってきた電話を取ると、受話器の向こうで人が黙っている気配があったので、姉の名前を呼んでみたところ、ほどなくして切れたそうだ。それからさらに一週間ぐらいしてまた夕方にかかってきて、母がまた姉の名を呼ぶと、今度はかすかにすすり泣くような声が聞こえたという。

電話してきたのはほんとうに姉なのかどうか、そもそも電話はほんとうにかかってきているのかどうか。問いただすことは私にはできなかった。が、それ以来、母は家でじっとしていることが増えた。父と母は、姉の部屋をずっとそのままに、出て行った日のままにしていた。

私は私の地獄を生きるのに精一杯で、家のことを何とかしようとか、母を支えようとか、そういうことをちゃんと考えられなかったと思う。職場一族経営地元企業で、上司会長の甥だった。就職してわりと間もない頃から距離を詰めてきた。この田舎でほかに移れるところはなかったから、断れなかった。僕はパイプカットしてるから子供はできんのやということを口癖のように言っていた。絶えられなくなってその上司上司相談したら、いつの間にか私の方が悪いことになっていた。その間、東京会社転職活動し続けて、逃げるように上京したが、ある日突然、電車に乗れなくなった。適応障害だとかいわれて、部屋にこもって布団の上に転がっているだけで、生きているだけで苦しかった。手持ちの金はどんどんなくなっていった。

その間も実家から電話ときどきかかってきたが、ほんとうのことを言うことはできなかった。あるいは、母も何かを察していたのかもしれないが、直接言ってくることはなかった。姉からまた無言の電話があった、という話を聞いても、そうなのかと思って軽く受け流すことしかできなかった。電話を切った後、日暮れ時の実家居間で、じっと電話を待っていたであろう母の姿を思うこともあったが、その頃は、自分自身がその瞬間に生きていることすら重たすぎて、何かを深く考えることができなかった。

結局、休職間中給付が切れる前に、少し無理矢理気味にだけれど職場復帰して、私はぎりぎりでその時は生き残ったと思う。それ以来、地元のことを思い出すと吐いてしまうので、できるかぎり、頭の中から地元存在を消し去って生きてきた。もちろん実家にもほとんど帰った記憶はない。消し去った地元のうちには姉の存在も含まれていた。

実家はもうない。姉はどうしているのだろうと思うことはある。生きているのかどうかも分からない。いまも実家電話をかけようとしているのだろうか。もうつながらないと知ったとき、何かを思っただろうか。もちろん私にはなにもわからない。ただ、もう存在しない薄暗い居間で、電気もつけずに母が、おそらく電話をそれとなく待ちながら片づけなどしている姿を、いまでもそうあるものとして、ふっと思い出してしまうことがある。

2021-05-28

anond:20210528141008

「お母さんにダメって言われた!」って。。。あん子供じゃないんだからさ。

親の愚痴を延々と書き綴るのって大体女で、かつそこそこいい歳なのに押し並べて実家暮らし

同性愛とかそこまで関係なくて、親との距離が近すぎるのが問題なんだと思う。

今回の話題が偶然同性愛だったかショッキングに聞こえるだけで、転職とかでも同じようなこと起き得るわけよ。

物理的にも精神的にも親離れできてないのが、色んな方面ですげえ良くないと思うわ。

親は親で子に依存しててまったく子離れできてない、なおかつその自覚があまり無い。

なんだったら、「女の子だし近くにずっと居てくれた方が安心からいか」くらいに思ってる。

原則18歳、遅くとも22歳で半強制的にでも一人暮らしさせなきゃダメだと思うわ。マジで

実家暮らしなのは女性低賃金労働を強いられてるから!」って反論が来るだろうけど、

その日暮らしフリーター一人暮らししとる奴なんていくらでも居るわけでね。

今はシェアハウスとかもあるんだしさ。

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