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2024-06-17

書いたな、俺の前で、外国地名日本語表記話題を!

anond:20180309230912

元増田よ。英語国名あくまで「英語読み」に過ぎないのであって、日本語読みが現地語に寄せてるものまで英語ジャッジしようとするのはどうよ。

ウクライナ → ウクレイ

ウクライナ語ではУкраїнаと綴って「ウクライーナ」と読むので日本語読みは現地語に忠実です。何でもかんでも英語読みを基準にすんのやめろ。っていうか英語ならユークレインだろ。

スイス → スウィツァーランド

スイスには4つの公用語があるけど、そのうちフランス語ではSuisseと呼ぶので日本語の「スイス」はむしろ現地語に近いぞ(4つの公用語のうち1つに基づく呼び方採用しているのは中立的ではないのでは? という異論はあってよい。ちなみにスイスでは4言語国名併記するけど、切手とかで4言語併記するスペースがないときにはラテン語の「ヘルウェティア」を使う。日本ヘルベチアって呼ぶべきなのかもだけど今更無理だよね……)。

ドイツジャーマニー

ドイツ語だとDeutschlandと綴って「ドイチュラント」と読むので、「日本語読みは英語読みよりマシ」とドイツ人にも好評だったぞ(n=1)。

モスクワモスコ

ロシア語のМоскваを綴りに忠実にカナ表記すると「モスクワ」になるんやで。まあ発音は「マスクヴァー」だけど(アクセントのない母音оはаのように読まれから)。

メキシコメヒコ

いや、メヒコスペイン語読みでメキシコ英語読みだから!?

ついでにブコメにも。

モスカウってなんだったんや…

ドイツ語のMoskauでは。

北京(ペキン)はそのうちに、Beijing呼びになるかも。

東アジア固有名詞については相互主義が取られている。韓国では日本語固有名詞日本語に即して発音するので我々も韓国固有名詞韓国語読みを取り入れているが、中国では日本語漢字中国語読みするので、日本でも中国漢字日本語で読んでいる。だから金大中は「キム・デジュン」だけど習近平は「しゅう・きんぺい」なのよ(中国語なら「シー・ジンピン」になる)。

フィンランド人少女自国スオミと言っていたし、ギリシア青年自国をエレニキーデモクライティアと言っていた

ギリシャ→エリニキ

フィンランドではフィンランド語とスウェーデン語の2つが同格の公用語で(『ムーミン』を書いたのはスウェーデン語フィンランド人作家)、フィンランド語での呼称Suomiスウェーデン語呼称Finland。なので「フィンランドは現地語ではスオミ」と「フィンランドは現地語でもフィンランド」は両方正しい。

ギリシャ正式国名はΕλληνική Δημοκρατίαで、これは「エリニキ・ジモクラティア」と読むけども、「エリニキ」は「ギリシャ」という意味ではなくて「ギリシャの」という形容詞なんだよね(後ろにある「ジモクラティア=共和国」を修飾して「ギリシャ人の共和国」という意味)。なので「エリニキ」を単独国名として使うことはできない。単独で使うときは「エラザ(Ελλάδα)」。

国名形容詞になってる例としては、他にもチェコがある。正式名称はČeská republika「チェスカー・レプブリカ」で「チェコ人の共和国」。要するに、もともとギリシャチェコという国があったわけではなくて、近代以降に民族主義が芽生えてギリシャ人やチェコ人が住んでるところを1つの国にしたという順序なのでこういう国名になっているのね。

外国から呼ばれるのはジョージアに改めたけど自分たちで呼ぶときはサカルトヴェロって何やねん

同じ反ロシア仲間のウクライナではフルジヤ(Грузія)、ポーランドではグルジヤ(Gruzja)、リトアニアラトヴィアでもグルジヤ(Gruzija)なのに、日本語でわざわざ変える必要あったの? ってなるよね。ウクライナがフルジヤって呼んでるんだから日本でもグルジアのままでよくね?

キリル文字のГはもともとガ行を表すんだけど、ウクライナ語とベラルーシ語ではハ行を表している。スラヴ語圏の真ん中に「gの音がhの音に変わったエリア」(チェコスロヴァキア・上ソルブ・ウクライナベラルーシ・ルシン)があって、そのエリアでは本来ガ行だった音がハ行で読まれるんだよね。たとえばスロヴァキアにある世界遺産スピシュ城Spišský hrad「スピシュスキー・フラト」って綴るけど、後ろのhradは語源的にはgrad、つまりベオグラードとかスターリングラードとかと同じ。だからロシア語の「グルジヤ」をウクライナ語やベラルーシ語では「フルジヤ」って読むんやね)

ミュニーク(ミュンヘン)、ワルソーワルシャワ)、アセンズ(アテネ)とか。

ミュンヒェンワルシャワ英語読みよりも日本語の方が原音に近い事例。「アテネ」は結構面白い事例で、まず古典ギリシャ語ではἈθῆναι「アテーナイ」。ギリシャ語は長い歴史を経て発音が変わって、Ηの文字古典語では「エー」を表す文字だけど近代語では「イ」に変わった。さらに、θの文字も、古典語だとタ行で表されることになってるけど、近代語では英語thに近い音というか、要するにサ行で表すのが相応しい音になっている(Θεσσαλονίκη「セサロニキ」がキリスト教関係文献では「テッサロニケー」と表記されてるのは古典語読みだからなんだよね)。で、現在ギリシャで使われてるジモティキの語形はΑθήνα「アシナ」……あれ? 「アテネ」の最後の「ネ」ってどっから来たん? 現代ギリシャ語ではαιと綴って「アイ」ではなく「エ」と読むので、古典語(あるいはカサレヴサの)Ἀθῆναιを古典語と近代語のちゃんぽんで読むと「アテネ」になるのかな? それとも西欧人の読みをそのまんま取り入れたん?

近代ギリシャ語には2つの正書法がある。1つ目が、現在広く使われている「ジモティキ/民衆語(Δημοτική)」で、もう1つが「カサレヴサ/純正語(Καθαρεύουσα)」。近代ギリシャ語の標準語を作り出すときに、古典ギリシャ語を参考にして古文っぽさを残して作られたのがカサレヴサで、20世紀前半までは公用語として用いられていたんだけど、話し言葉からかけ離れすぎててわかりづらいわ! ということで、より言文一致当社比)したジモティキが作られて、現代ギリシャではこちらが「現代ギリシャ語」として流通している。まあ、明治時代日本語現代日本語の違いを想像してもらえれば)。

そもそもカタカナ表記できない発音があるのにそれを使って記載するのが間違っている。外国教育そもそも問題だろうけど日本語読みで役に立つ場面なんかほぼないよね。全部現地語で表記、現地読みすべきだと思うんだけどなぁ。

anond:20240617193936

「საქართველოは、Україна侵攻後のРоссияに対する経済制裁には参加していません」っていうニュースを流すことが日本人のためになるとはまったく思えない。多少厳密さを欠いたとしても、「グルジアは、ウクライナ侵攻後のロシアに対する経済制裁には参加していません」って書いたほうが日本人の外国理解資するんだから日本語媒体では基本的日本語文字を使って表記すべき(だいたい、英語圏の連中だってニュース日本固有名詞漢字仮名表記せずにラテン・アルファベットで書いてるんだから、当然、我々も日本語ニュースでは英語圏の固有名詞ラテン・アルファベットではなく日本文字で書いてよい。真に公平な世界というのはそういうものじゃないだろうか)。

追記

BBCラジオを聴いていると非英語圏の人名をわざわざ英語読みしていてそのまま現地語読みすればいいのに…と思うことがよくある。

これはしゃーないと思う。我々にはカナという便利な文字があるから、Richardをリチャードとリシャールとリヒャルトに訳し分けることができるけど、英語母語話者ラテ文字しか知らないんだから、そりゃ英語読みしかできないよ。我々だって、たとえば「『マイケル』と綴って『まいこー』と読んでクダサーイ」って言われても困るっしょ? 「いや、『マイケル』って書かれたら『まいける』としか読めんだろ」って思うっしょ? Michaelをミヒャエルと読めと言われた英語母語話者気持ちもそれと同じだと思う。だいたい、我々もDonald Trump「ダナー・トランプ」を「ドナルド・トランプ」と書いて恥じないわけで……

IKEAのことアイケアって呼んでるの英語くらいだったりするし、英語ってその辺のことあんまり考えてない言語だよね。

えー、我々だってMcDonald’sを「まくだーのーず」じゃなくて「まくどなるど」って発音してるんだから英語母語話者IKEAを「いけあ」じゃなくて「あいけあ」って発音しててもよくない? 悪いのは 「英語では『あいけあ』と読むんだから日本人の『いけあ』っていう発音は変!」みたいなデタラメ理屈を振りかざす英語かぶれの名誉白人どもであって、英語母語話者が身近なもの英語ふうに発音すること自体は何も悪くないよ。彼らが身につけた綴り規則からはそう読む方が自然なんだから

英語中心主義が悪いのであって英語自体が悪いわけじゃない、という精神でいきましょう。へぇヨーロッパの隅っこにある島々で話されてるローカル言語には変わった発音規則があるんだなぁ、面白いなぁ、程度の受け止め方をするのが一番適切な付き合い方だと思う。あのへん、デンマーク語とかアイルランド語みたいに発音綴り関係が複雑な言語が多いからね……

this is ダニューブ」って言われた時「英語ェ…」ってなったなぁ…

ドナウ川語源ラテン語のDanubius「ダヌビウス」だから英語Danube「ダニューブ」の方がドイツ語Donau「ドナウ」よりも語源に忠実だよ! あんまり英語馬鹿にするのはどうかと思うぞマジで

ちなみに、チェコ語・スロヴァキア語・ポーランド語・上ソルブ語ドナウはDunaj「ドゥナイ」っていうんだけど(ウクライナ語でもДунай「ドゥナイ」だね)、スロヴェニア語のDunaj「ドゥナイ」はウィーンって意味なの面白いよね(ドナウはDonava「ドナヴァ」)。

ほぼ現地語読みを尊重してるのに「ドナウ川」だけ語源で語るのはブレでは。現地語読み>>慣習読み≒英語読み≒語源くらいのウエイトでよいような。

まるで英語が変わった呼び方をしているかのように書かれていたから、いやいや英語読みは語源に沿った呼び方であって変な呼び方というわけではないのよ、と書いたのであって、英語読みが現地語よりも尊重に値するとは書いてないっす。ところでドナウ川国際河川なわけだけど、「現地語」ってどの言語のことだと思う?

ジョージア州はジョージ2世にちなんでつけられ両方現地言語読みだからOKと思えば、グルジアも由来の聖ゲオルギオスの現地読み風に読めば良いのでは。

いや、現地語の名称カルトヴェロは「カルトヴェリ人の国」という意味であって聖ゲオルギオス何も関係ないんよ……素直にサカルトベロと書くべきだよねぇ、やっぱし。

ニューカレドニアフランス領なのでヌーベルカレドニーと呼ぶべき

それを言ったらそもそもはカナク人の土地フランス植民地化したんだからカナク語でKanaky「カナキ」って呼ぶべきじゃない? 英語フランス語もどっちも侵略者言語でしょ。

インドネシア地図だとカレドニアバルーになってたわ。日本も新カレドニアとしてもよかったね

anond:20240618111113

カレドニア、いいと思う。アルバニア語のKaledonia e Re「カレドニア・エ・レ」とかトルコ語のYeni Kaledonya「イェニ・カレドンヤ」ももろに「新カレドニア」だし。ただ、そうすると、カナダノヴァスコシア州は「新スコシア州」にするのかとか(ちなみにアルバニア語ではSkocia e Re「スコツィア・エ・レ」、トルコ語ではYeni İskoçya「イェニ・イスコチヤ」)、プリンスエドワードアイランド州は「エドワード王子島州」にするのかとか(アルバニアIshulli i Princit Eduard「イシュリ・イ・プリンツィト・エドゥアルド」、トルコ語Prens Edward Adası「プレンス・エドワルド・アダス」。なお中国語だと愛德華王子島省)、ニューファンドランド・ラブラドール州どうするんですかとか(トルコ語だとNewfoundland ve Labrador「ニューファンドランド・ヴェ・ラブラドール」って日和ってるけどアルバニア語はToka e Re dhe Labradori「トカ・エ・レ・ゼ・ラブラドリ」で「新しい土地ラブラドール」になってて強い。日本語化するなら「新疆ラブラドール州」とか「新開地ラブラドール州」は……駄目?)、色々と楽しいことになるので……

ニュージーランドは「ニュー」の部分が言語によって異なるので、日本語的には「新ジーランド」だよね

いいよねウェールズ語Seland Newydd「セランド・ネウィズ」とかエストニア語Uus-Meremaa「ウース=メレマー」とかソルブ語Nowoseelandska「ノウォセーランツカ」とかバスク語Zeelanda Berria「セーランダ・ベリア」とかハンガリー語Új-Zéland「ウーイ=ゼーランド」とかマダガスカル語Zelandy Vaovao「ゼレンディ・ヴァウヴァウ」とかラトヴィア語Jaunzēlande「ヤウンゼーランデ」とかとか……ところでニュージーランド本来マオリ人の土地英語侵略者言語なんだからマオリ語Aotearoa「アオテアロア」に統一で良くない?

欧州ではネザーランドのことをフレンチ読みでペイバと呼ぶ層が多い気がする。

anond:20240618134114

節子それフランス語読みちゃう、単に自分らの言葉で「低地の国」って呼んでるだけや(英語the Nederlandsっていうふうに定冠詞複数形になるのは、もともと「低地」っていう普通名詞からthe United Statesと同じやね)。イタリア語Paesi Bassi「パエシ・バッシ」もカタルーニャ語Països Baixos「パイズス・バシュス」もスペイン語Países Bajos「パイセス・バホス」も全然フランス語Pays-Bas「ペイ=バ」とは違うじゃん?

ちな、ウェールズ語だとYr Iseldiroedd「イール・イセルディロイズ」、ギリシャ語だとΚάτω Χώρες「カト・ホレス」、クロアチア語スロヴェニア語だとNizozemska「ニゾゼムスカ」、チェコ語だとNizozemsko「ニゾゼムスコ」な。どれも「低地の国」って意味

なお、沖縄語の「ウランダ」は「西洋」という意味だったりする。沖縄語をしゃべるオランダ人動画おもしろいから観て(「ウラン出身だけど、国の方のウランダね」って断ってるの草)>https://www.youtube.com/watch?v=SB1x8iqqSto

増田にしつもーん

クロアチアはフルヴァツカで呼んだほうがいいと思う?

コートジボワール象牙海岸表記をやめたような変更したほうがいいなと思う国名ある?例えば中央アフリカサントラフリケーヌにするみたいな

anond:20240618053529

クロアチア別にクロアチアでよくね? ただ世界史の教科書とかで「クロアティア」って書いてるのは無駄煩雑から高校生のためにもやめてあげた方がいいと思う。現地語がCroatiaならそこにこだわるのもわかるけど、それ現地語でもなんでもないじゃん、ってなるので。現地語を尊重してフルヴァツカと書くか、大人しく慣用に従ってクロアチアと書いておけばいいんじゃ。

変えたほうがいい国名はまさに「ジョージア」だわw 既に日本語で定着した複数固有名詞アメリカの州、コーヒー)とバッティングしてややこしいことこの上ないので、「グルジア」に戻すか、先方がどうしてもロシア語読みは嫌というなら現地語を尊重して「サカルトベロ」にすべき。

2024-05-17

anond:20240516205238

送り仮名活用のためにあるので変化しない語(名詞)は省略される傾向にあるけど、日本語では歴史的にそんなにしっかりした正書法を決めなかったのでふんわりした雰囲気運用されてる。

2022-09-25

anond:20220925083850

文法ではなくて正書法原稿用紙の使い方の範疇なので文法にないのは当たり前でしょ。

2021-07-04

かまし国語警察

見るからに肩肘張ってる文章書いてることが分かる人に対して皮肉混じりに誤用を突っ込むのはまだいい。

でもはなっから書き手自身の口でしゃべるとき言葉をそのまま文字に起こして書いてるような態度の人に対してまで誤用指摘するのは野暮臭い

ネットには都市部だけでなくいろんな集落からアクセスしてる人がいることを失念してるのだろうか。

日本語というもの共通語だけじゃなくてさまざまな方言も合わさって全体をなしているわけだから

共通語感覚から見て誤用と指摘したものが、ある地方では普通表現ということがありえる。

ちゃんとした根拠を挙げずに誤用と決めつけるのって視野が狭い人に映ると思う(この際国語辞書根拠にならない。国語辞書共通語ベース方言はあっても一部だけだから)。

たとえばこんなやりとりがあった。

297名無し象は鼻がウナギだ!2019/12/17(火) 11:13:08.990

愛知県に生まれ育った人にとっては「ら」抜き言葉も昔から正しい自然日本語一種

誤用誤用だと叫ばれて迷惑を被った。

299名無し象は鼻がウナギだ!2019/12/17(火) 16:03:30.810

297

そりゃ方言毎に文法が違うんだから

共通語文法に照らせば誤用」というのも

中部地方ではそもそも正しいし「ら抜き」とも呼ばないというのも

どっちも正しいんだよ 最初から話の筋が違う

活用形にさえ地方により違いがあるなら、てにをはのような助詞の使い方にすら差異はあるものなのかもしれない(助詞(特に格助詞)に対する誤用の指摘が多いという皮肉だよ)。

誤用警察共通語外日本語と認めない排外(全体)主義者と見られるおそれもある。

そうやってしゃべるような場合には多分注意されなかったものが、文章として提示されると書き言葉で書く人と区別せず注意されるようになるこの現象

出川哲朗セリフ文字起こしは、正書法仮名遣いから見てかなり無理があったとしてもせいぜいネタとして消費されるだけだけど、

書き手がもし同じ内容を口頭で伝えるとしたら用いるであろう「話し言葉(言い回し、訛り)」を文字に表した文章には警察の目が光る。

このことから話者(表現者)と文字起こしする人が一致した文章書き言葉評価軸で是非を問われるという法則らしいものは見えてくる(不思議基準だと思う)。

自分自身も肩の力抜いて喋るように書いてただけなんだけど一応トラバで指摘されたので「恐れ」→「おそれ」に訂正

2021-04-24

anond:20210424012028

2021-02-10

anond:20210209190902

方言基本的口語であって、文字化する際の正書法確立されておらず、話者自身ですらどのように書けばいいのか分かっていないから。

かな漢字変換ソフト対応していないのが大半であるから

2020-09-13

なぜアザレンカはアザレンカなのか

ロシア語表記揺れはなぜ起きるのか」(anond:20200904111105)の増田だよ! みんな前の増田ではたくさんのブクマありがとう

全米オープン大坂なおみ選手が優勝したね! おめでたいね! そして決勝戦相手はアザレンカ選手だったね! 名前ニュースで聞いて「ん?」と思って気になって調べてみたらやっぱりベラルーシの人だったね!

前回の増田を踏まえて、ベラルーシ語の事情についてちょっと語るね!

ウクライナによくある-енкоで終わる苗字

ウクライナでは苗字の語尾に-енкоってつく人がとても多いんだ! ちょっと前のオレンジ革命では、ティモシェンコとかユーシェンコとか、そういう名前をたくさん聞いたね!

この「~エンコ」で終わる苗字は、ウクライナだけじゃなくてロシアベラルーシにも分布してるよ! 函館空港に強行着陸したベレン中尉とか、ベラルーシ独裁者ルカシェンコ大統領とか、一度は聞いたことがある名前だと思うな! ちなみにこの形の苗字は男女で形が一緒だよ!

そして、アザレンカ選手苗字も、この-енкоで終わる苗字一種なんだ!

え? どういうこと? って思うかもしれないけど、Wikipediaでアザレンカ選手名前を調べてみるとよくわかるよ! ロシア語版でもウクライナ語版でも、彼女苗字は「アザレンコ(Азаренко)」って書かれてるんだ!

じゃあどうしてそれが「アザレンカ」になるのかな? そうだね、ロシア語の強勢に関するトリビアを思い出してみようね!

そのまま書いちゃうベラルーシ

ロシア語では強勢の置かれないоは「ア」みたいに発音される、っていうのは前の増田説明したよね! だからХорошоは「ハラショー」なんだね!

これは発音綴り乖離してるので、学習からするとちょっとめんどくさいかな! ロシアの子供も書き取りテストとかで間違えたりするらしいよ! 日本の子供も「ぼくわげんきです」とか「これおください」とか書いちゃったりするもんね!

ベラルーシ語はそれを綴りに反映しちゃうんだ!

から、強勢が置かれないоは、語源的にはоであってもаって書かれるよ! ロシア語の「頭」はголова(ガラヴァー)だけどベラルーシ語だとгалава(ガラヴァー)、「牛乳」はロシア語でмолоко(マラコー)だけどベラルーシ語だとмалако(マラコー)になるよ! ロシア語で「ベラルーシの」という形容詞女性単数生格形はбелорусскойだけど、ベラルーシ語だとбеларускайになるんだね!

ここまで読めば、昔「ベロルシア」って呼んでた国をどうして「ベラルーシ」って呼ぶのかもわかるんじゃないかな? そうだね、ロシア語Белоруссия(「白いロシア」の意)の強勢はуに置かれるから、оがаみたいに発音されるんだね! そしてベラルーシ語だとそれを忠実に綴りに反映するからБеларусь(「白いルーシ」の意)になるんだね!

からロシア語では「アザレンコ」と呼ばれる苗字は、ベラルーシ語では「アザランカ(Азаранка)」になるんだね!

あれ?

「アザレンカ」じゃなくて「アザランカ」?

そう、増田も調べてみてビックリしたけど、ベラルーシ語だと「アザランカ」なんだよね!

ベラルーシ語には現在一般的に使われている正書法タラシケヴィチ式正書法タラシケヴィツァ、Тарашкевіца)という2つの正書法があって、Wikipediaには現代標準ベラルーシ語版タラシケヴィチ式ベラルーシ語版の2つの版があるんだけど、どっちを見てみても綴りは「アザランカ」だったよ!

かに強勢は2番目のаに置かれるから、еが弱く読まれるのは言われてみればわかるよ!

からベラルーシ語だと、アザレンカ選手フルネームは「ヴィクトールィヤ・フョーダラウナ・アザーランカ(Вікторыя Фёдараўна Азаранка)」になるんだね!

ロシア語の「ヴィクトーリヤ・フョードロヴナ・アザーレンコ(Виктория Фёдоровна Азаренко)」と比べて、どこが弱く読まれてるか見てみると面白いね! ちなみにウクライナ語だと「ヴィクトリヤ・フェドリウナ・アザレンコ(Вікторія Федорівна Азаренко)」になるよ! 真ん中の部分は「フョードルの娘」って意味だね! 「アザランカ家のフョーダルの娘のヴィクトルィヤさん」だね!

でも、なぜか彼女英語では「ヴィクトリア・アザレンカ(Victoria Azarenka)」って名乗ってるんだよね! ロシア語でもベラルーシ語でもなくない!?

どうして彼女がこう名乗ってるのかは、彼女本人に聞いてみないとわからいね! でも、実はベラルーシでは「正しい」ベラルーシ語を話す人はそんなに多くないんだ! 国内ではロシア語の方が通じたりするし、農村部ベラルーシ話者が喋っているのは「方言」であって「標準語」じゃないから、きちんと教育を受けた人じゃないと「正しい」ベラルーシ語を話すことができなかったりするよ!

アザレンカ選手も、英語自分名前を書くときに、Azarenkaという綴りが一番自分にしっくり来るから選んだのかもしれないね

ところで

最近英語でのベラルーシ政治に関する論文とかでは、政治家の名前ベラルーシ表記されることが多くなってきているね!

たとえば今話題独裁者ルカシェンコ大統領も、ベラルーシ語読みの「ルカシェンカ」って表記されることが多いね

日本ジャーナリストロシア語を通してニュース仕入れているんだろうからロシア語読みになっちゃうのは仕方ないところもあるんだけど、せっかくだからベラルーシ人名ベラルーシ語で書いてみない?

今年の大統領選挙でルカシェンカ大統領に立ち向かったスヴェトラーナゲオールギエヴナ・チハノーフスカヤ(Светлана Георгиевна Тихановская)氏も、ベラルーシ語だと「スヴャトラーナ・ヘオールヒエウナ・ツィハノーウスカヤ(Святлана Георгіеўна Ціханоўская)」になるし、その旦那さんは「シャルヘーイ・レアニーダヴィチ・ツィハノーウスキ(Сяргей Леанідавіч Ціханоўскі)」になるね! 新聞とかでは「スベトラーナチハノフスカヤ」「セルゲイチハノフスキー」っていうロシア語読みで書かれることが多いけど、「スビャトラーナ・ツィハノウスカヤ」「シャルヘイ・ツィハノウスキ」って書いてもいいと思うな!

ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナアレクサーンドロヴナ・アレクシエーヴィチ(Светлана Александровна Алексиевич)氏も、ベラルーシ語だと「スヴャトラーナ・アリャクサーンドラウナ・アレクシエーヴィチ(Святлана Аляксандраўна Алексіевіч)」氏になるね! よかった、苗字表記は変える必要がないね

追記

ちなみにサバレンカという選手もいますよ。二人とも打つときの声が独特でやかましいです。

わわわ、こんな人がいるんだね! 教えてくれてありがとう

ベラルーシ語だと「アルィーナ・シャルヘーエウナ・サバレーンカ(Арына Сяргееўна Сабаленка)」だけど、ロシア語だと「アリーナセルゲーエヴナ・ソボレーンコ(Арина Сергеевна Соболенко)」さんだね! 苗字にあるоが全部аになってて、いかにもベラルーシって感じだね! 英語ではAryna Sabalenkaと名乗っているみたいだけど、これはベラルーシ語の忠実なローマ字表記になってるね!

2020-09-05

anond:20200904111105

いっぱいブクマコメありがとう! 気になったコメントに返信するね!

ボルシチも正確に書くとボールシシだしなあ

щは日本語の慣用表記ロシア語発音がすごくかけ離れてる例だよね! 日本語だと「シチ」って書くことになってるからね! だからЩербаковも「シチェルバコフ」なんだね! 議会図書館式だとshchになるけど、これもだいぶ実際の発音と離れてる感がすごいよね!

ヴ音の表記揺れが「ヴ」と「ブ」の違いの事なら日本語問題で納得できるけど「ヴァ」と「ワ」じゃ音が全く違うやんけ。片方は英語読みベースでもう片方はロシア語発音ベースとかなんじゃないの?

ロシア語的には「ヴァ」と「ワ」はすごく近い音だよ! 口の形が似てるんだよね! むしろ「ヴァ」と「バ」は全然違うよ! Иванを「イワン」と読んだらワンチャン通じる可能性があるけど、「イバン」って読んでもぜんぜん通じないと思うよ! 試したこといからわかんないけど! 日本人名前の「わ」もロシア語だとваで表記されるよ!

日本語ロシア語表記って、「ロシア語から直接に翻訳されて、一般化した語」よりも、「英語ドイツ語経由で翻訳された語」の方が遥かに多いので、英語とかの時点で表記ゆれが多いのではないか

これは日本語史的に間違いかな! 幕末からロシア人とは接触があったし、明治時代になるとロシア語勉強する知識人が増えたから、ロシア語から直接輸入される機会はいっぱいあったんだよね! 二葉亭四迷ロシア留学してたのは有名だよね! 現在ロシア文学の慣用表記はそういう先人たちが作ってくれたものだよ!

"Бладимирは「ウラジーミル」なんだけど、「ウラジミール」って書く人"< 間違い続けたまま辞任した安倍晋三立場(笑) // 「綴り発音が離れすぎ」って、ロシア語正書法はきちんと整理されてる方だぞ?

調べてみたけど「ウラジーミル」って書いてある記事もあったよ! 安倍さん本人じゃなくて書いた記者が間違えてる可能性もあるし、ちゃんと本人の前で「ウラジーミル」って言ってたならいいんじゃないかな?

問題ファーストネーム呼び捨てにしてることだよ! ロシア人的にはめちゃくちゃ無作法なんだよね! ロシアでは、目上の人やそこまで親しくない人は「ウラジーミルウラジーミロヴィチ」と名+父称で呼ぶのが普通で、親しくなったなら「ヴァロージャ」みたいに愛称で呼ぶのが普通だよ! ファーストネーム呼び捨てにすることなんてめったにないよ! 英語で話してる中で「ミスタープーチン」と呼ぶのならまだしも、通訳越しに「ウラジーミル」って呼んでたとしたらスゴイ・シツレイだと思うよ! ロン・ヤス関係みたいに別荘に誘う仲なら「ヴァロージャ」でも許されると思うけど、そうじゃないなら素直に「ウラジーミルウラジーミロヴィチ」って呼んでおくべきだったと思うよ!

ロシア人って基本的礼儀正しいか公的な場で何度か会っただけの相手をそんな簡単愛称で呼んだりしないと思うんだよね! フレンドリーなことに定評のあるアメリカ人ならまだしも、礼節を重んじることで知られる日本人がいきなりファーストネームで呼んできたら「なんだこいつ」って思われても仕方ないと思うよ!

後半部分、まあ英語よりはマシなんだけどね! 他のもっと言文一致してる言語と比べちゃうと、やっぱり綴り発音違いすぎって思っちゃうよね!

大逆転裁判ニコミナは父称ボルシシェブナじゃないとおかしいよなってずっとモヤモヤしつつはや数年

日本産コンテンツロシア人名がガバガバなのはもう仕方ないと思って諦めてるよ! ただいくつか良くできているのもあるからそういうのは褒めていきたいよね! 具体的に言うと「イリーナ・ウラジーミロヴナ・プチナ」は完璧だね! ちゃんウラジーミロヴィチ・プーチン女性形にしてあって芸が細かいよね! 「リーリア・イリーニチナ・メジューエワ」は「リーリヤ」だったらパーフェクトだったかな! 「アレクサンドラウラジミーロヴナ・リトヴャク」は父称の強勢の位置が間違っているのが残念だね!

それなりに凝った名前にしてるのに「あと一歩」っていう残念事例が結構あるよね! 「ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ」とか「アレクサンドラ・イワーノヴナ・ポクルイーシキン」とかね! お前父称まで設定したんなら苗字ちゃんしろよォ! って思うよね! 逆に「ジーナ・ボイド」とかいロシア感が欠片もない名前持ってこられるといっそ清々しいよね! よくそれをロシアキャラ名前にしようと思ったよね!

こういう増田が書かれ、それにこれだけブコメがつくから、Хатенаはやめられない。

ポリワーノフ式だと正確にはХатэнаだよ! ポリワーノフ式っていうのは、日本語ロシア語キリル文字表記するための方式で、100年以上の歴史があるよ! ローマ字に直すときヘボン式みたいな感じだね!

キリル文字で書いとくれ。

Букума ситэкурэтэ аригато!!!

チアちゃんちゃん発音すると百合左側に固定されちゃうのか

それってЮрияна。

Дадияназанは×ダヂアナザン○ダディヤーナザン

ナズェゴマツノミャフキー・ズナークヲハブイタノディス!!!

2020-05-26

スペイン人が話す英語の良さ

たとえば、海外では強いハンバーガーチェーン、バーガーキング がある 

これをスペイン人がどう発音するかというと、「ブルゲルキング」だ!Burger Kingをそのまま読む感じなわけですね

(追記)geはたしかにヘに近い音になるけど、おれが聞いたところだとやっぱりゲだったように思う gueに脳内変換して読んでるのか、おれの耳が悪いのか…

ちなみにおれはスペインのブルゲルキングWhopperを頼もうとして、ウン・ワッパー・ポルファボールなんつっても一向に通じないので仕方なく番号で頼んだら得心顔で「Ah, ウーペル!」って言われてぶっ殺すぞと思ったことがある

とにかく発音が雑ですげー好感が持てるんだな

スパイダーマンエスピーデルマン(Espíderman)(スペイン語はspとかstとかを語頭で発音できず、自動的にEが足される)、スーパーマンスーペルマン

市井発音事情だけじゃなく、国策っていうか正書法レベル外来語が雑なのも親近感がもてる

たとえば野球はbéisbol 読みはそのままベイスボル

ナメとんのかって感じだけど、まあベースボールってカタカナで書いてるようなもんなんだろう

New Yorkはニュージョルクだしyourはジョル(yはジャ行に近い発音になる) もうめちゃくちゃや

最近英語ふつうにできる人が増えてるらしいけど、増えんで欲しいなあ

2020-03-30

イナズマ・イナヅマ

稲妻って書くんだからイナヅマだろ!と思うんだが、イナズマなんだよな

妻はツマなのによ なんなんだ

地面でジメンとか鼻血でハナジとかホンマにクソ 一貫性がねえんだよな

スペイン語とかフランス語の特例を無くそうとする姿勢を見習えよ スペイン語なんてすげえぞ 同じ綴りで読み方が違う特例が一つしかない(Mexicoxiだけヒと読む)

やっぱ日本にもアカデミアがいるんだよ 皇立語学院みたいなものを作って正書法改革をやるべき ただでさえクソな漢字があるのにひらがなにすら特例があるからな ウンコ言語と言って差し支えない

2018-03-06

anond:20180306151235

日本語には正書法を維持執行している主体がないのでお前が俺が思ったものが正統な書き方であり誰かが句読点は.,だと言えばそいつの中ではそうなる。西側諸国にも小数点としてカンマ(eg. 1 / 2 = 0,5)やアポストロフィ(1/2 = 0'5)を使うといった気の狂った国が平気で存在しているのだからいちいちどっちが間違いか気にしていたらキリがない。

2018-01-05

anond:20180105123031

言葉永遠の不完全、だから生きている、進化する。

それを肌感覚で感じるには、古文漢文をやるしかないんだ。

古文漢文がなくなったら、30年くらいで極端な日本語右翼左翼がウザくなってくると思うんだよね。

別に100%読解できなくたっていい。現代文全然違うけど、何となく現代文と似ている、そう実感するだけで十分教育価値はある。

多分、コレ読んでいる人が無意識にやってるし、普通人間ならできると思っている当たり前のことの土台に古文漢文がある。

それがなくなる。

テラワロスwが公用語になったら嫌だろ?それは会社公共機関でそういうの使っている奴を叩いていればいいってもんじゃないんだ。


理系で起きたこういうことが、文系でも起きるようになるぞ

https://togetter.com/li/1107013  「現代科学の敗北リスト」が笑えるようで笑えないレベル みなさんも気をつけて


教育が無策だと保守主義が幅を利かせる

昨日と今日が同じなら正しいというのは安直だけどリスクが少ない。

日本語にはコレという型がありそこから絶対に逸脱してはならないという教条主義

近年でいうら抜き言葉否定派。

ら抜きことばは「可能」「敬意」を区別する合理的進化だと認められない人々。

これから先、

外国語学習者の増加による、主語明確化や時制輸入

AI生成文書

音声認識適応日本語

もっと極端な話をすれば顎の骨格の変化が及ぼす音への影響

そういった様々な要因で我々が使う口語まで変化して、それが合理的だと見なされて標準化するかもしれない。

そういうとき「これでいいんだ!」と日本人が受け入れる器の大きさ、それは古文漢文教育にかかっている。

奔放過ぎる言語左翼 ブームは非合理で予測不能

「みんなバラバラでいい、何なら日本語から正式文法正書法なんて概念廃止してしまえ。一人ひとりの言葉は違っても全て公文書的に認める」

なんて主張がまかり通り

とき権力者おかし日本語用法、口癖、なまり

もしくは、絶大な人気を獲得した芸能人のそれや、インターネットスラング

そういうものがなし崩しに認められてしまう。

社会が「過去から現代への日本語進化には、これこれこういう理由があって、この用法あくまで乱れた日本語の域を出ない」と線を引く力。

これも画一的古文漢文教育を行わなければ失われるだろう。

国会答弁では、「昔言ったアレにそういうニュアンスは含まれていない」が繰り返されている

これ以上文法が乱れたら、言った言わない・どういうつもりで言った論争が終わらなくなる。

しまいには(国際進出と縁がないのに)組織意思決定会議外国語を用いた会社が成長する、なんて未来もあり得るぞ。

日本語ポンコツ過ぎて。

2017-03-11

http://anond.hatelabo.jp/20170311134701

もともと「かわゆし」という古語があり、

そこからかわいい」あるいは「かわいそう」という言葉(もちろん和語)が生まれました。

可愛い」や「可哀相」という表記はいずれも当て字です。

よって、どう書くのが正しいのかという規範はありません。

常用漢字表などの現代正書法に従えば、「かわいい」「かわいそう」と仮名で書くのが正しい、

ということになります

よって、公用文学校教育新聞などでは「可愛い」「可哀相」という表記法は用いられません。

ただ、個人言語活動でにおいては、この場合どのような表記法を用いても非難はされません。

漢字意味にこだわって、「かわいい」を「可愛い」、「かわいそう」を「可哀相」と書き分けても

いいでしょう。

なお「可哀相」は「可哀想とも書きます。どちらも当て字ですから、好きな方を使えばいいでしょう。

2009-09-29

http://anond.hatelabo.jp/20090928151627

しかし、かうして歴史的仮名遣ひといふひとつ正書法が「ウヨク的よそほひ」の一道具に堕してしまふのは、じつに悲しいことだな。

歴史的仮名遣ひそのもの(あるいは現代において歴史的仮名遣ひを選択すること)がそのやうなマイナスの印象をまとってしまったことは、非常に残念なことだ。

その原因の一端を作った「国士様」には腹を切って明治大正文学者とか国語学者とかにわびてほしい気分である。

2008-11-10

日本語は既にかなり滅びてますがなにか?

梅田もっちーダンコーガイ自己啓発(笑)の両巨頭が紹介した本には無批判に絶賛がつくといういつもの流れ。はてな村民がいかに自分の頭で考えない人間かよくわかるね。ちょっと前には、英語嫌いの益川先生が歴史に名を残す研究をしたという話が流れたばっかりなのに、すぐ忘れてしまってるんだから。

餅は餅屋という言葉を知らないか

ま、そんなことはともかくとして、言語学新書レベルに読みかじった経験があれば、この両氏の書評著者のインタビューを読んだだけで、モチヲや弾のお勧めを期待してこの本を読めば期待はずれに終わることがよくわかる。誤解なきよう、私は「日本語が亡びるとき」が面白くない本だとは思わない。何しろ相手は小説家、本当のことであろうが嘘のことであろうが面白く書いて読み手に深い印象を与えるプロなのだから、それは期待してもよい。ただし、著者に言語学バックグラウンドがない時点で、論としての面白さを期待するのは諦めるべきだ。SFとして面白いものが科学理論としてよくできているわけではないのと同様、純文学作家言語論に学術的レベルを期待するのは酷というものだ。もともとそういうものなのだから、モチヲや弾のようにあの本を絶賛する人というのは、アジテーターとしての自分を売り込みたいだけか、アフィリエイトで稼ぎたいだけか、あるいはまともな議論とトンデモの区別が付かない程度の知的素養しかないか、そのどれかだろうと思ってしまうのは私だけか(そういえば一部のはてな界隈で人気な「温暖化懐疑論」の論者に気象学者が一人もいないのはどういうことなんだろうね?)。

高校世界史を復習しろ

そもそも、著者が言うような意味日本語が亡びるというのが先走りにすぎるのは英語歴史自体が証明している。英語がどうして、同じゲルマン語のドイツ語よりも、ロマンス語フランス語に見た目が似ているかと気になったことはないだろうか。あれはノルマン・コンクエストの帰結である。英語は文化的外圧に曝されるどころか外敵に征服され、日本語と同じかそれ以上に外来語に「汚染」された言語なのだ。しかしその伝統からシェイクスピアをはじめとする華麗な英文学伝統が花開いた。

日本語も、実際に「地域語」であり、現代と比べものにならない外圧に曝された時代があった。飛鳥奈良時代や、明治維新期などはそれぞれ強大な帝国の圧倒的な文化力・軍事力の前に日本は存亡の危機に瀕していた。しかしそれらの時代に外の文化を大きく導入したことで、逆に日本語の文化は大きく栄えた。

単なる「国力」だけで、言語が「地域語」に堕し、その結果衰退するなどというのが俗論にすぎないことがよくわかるだろう。

日本語の最大の敵は「日本語

そもそも、「日本語が亡びる」という問題意識自体、日本列島言語を「日本語」という名で無自覚にひとくくりにしてしまうことの問題が現れている。アイヌ語琉球語を考えてみるがよい。これらを「方言」と呼ぶのは無理があるだろう。しかしながら「日本語」の隆盛のもと、これらの言語文化は危機に瀕している。

いや、言い直す。そもそも何を「方言」とよび何を「国語」「標準語」と呼ぶかは政治的な産物でしかない。ポルトガル語オランダ語は、かつてはスペイン語ドイツ語の一方言でしかなかった。デンマークでは読み書きができる知識人ドイツ語フランス語を使っていて、アンデルセンキルケゴールが現れる前の「デンマーク語」は「汚い方言」でしかなかった。

その意味で、日本の文化を見直してみるとよい。「遠野物語」のような地域の民話を語れるのは一部の語り部に過ぎないのではないか?いや、かつて日本の「中央」を荷った「上方文化」でさえ、衰退が甚だしい。関西弁ラジオテレビの成立以降、急速に流入した「標準語」の影響によって激しく変質し、江戸時代後期から明治時代にかけて成立した上方落語でさえ、若者子供のかなり多くはまともに聴き取りができない。上方落語日本言語文化の貴重な財産であることは誰も否定しまいが、これを日本人は自ら衰退に追い込んでいるのである。人間国宝米朝師匠事実上現役を退いた今、その前途ははなはだ暗い。

あるいは地域的な変化でなく時間的な変化を見てみるとよい。能は勿論、狂言歌舞伎でさえまともに聴き取れない日本人がどれほどいるか。源氏物語はおろか、明治期の擬古文でさえ現代語訳なしで読めない日本人がどれほどいるか。いやそればかりか、旧字体・旧仮名遣いの文章ですらろくに読めない人間とて決して珍しくあるまい。

このようなことになったのも、一つには近代化の推進のため我々が明治期と戦後に「国語」の成立と普及を強引に推進したせいだというと言い過ぎだろうか。世界に誇る日本文学などと言うが、我々が現代「日本語」を通じて享受できる文化遺産など、たかだか百年分ぐらいしかないのである。

守るべき「日本語」って何?

というか、元々これはそういうものなのである。「国語」という概念は「近代国家」が政治的に成立させるものだ。「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」という本があるが、これによると実際、江戸時代では各地の方言通訳する商売が成立していたという。あるいはフランスでは近代化以前、知識人はもっぱらラテン語で読み書きをしており、フランス語は単なる「俗ラテン語」のなれの果てでしかなかった。日本ではもっとひどく、仮名文字さえ実は統一されていなかった。変体仮名というのを聞いたことがあるだろうか。うなぎ屋の看板などで今もその名残を見ることができる。これらがきちんとした正書法と文法を揃えたのは疑いもなく時の権力政治的な措置なのだ。

それを思えば、「今の」日本語がどういう形であれ変容するのは当然であり、むしろ「近代国家」という枠組みが溶解しかかっている(EUを見ればそれは明らかだろう)現在、無理に「国語」を防衛しようとする思想はまさに時代遅れナショナリズム保守反動でしかないとさえ言えるのだ。


からかい半分で書き始めた文章につい力がこもってしまったが、いずれにせよ、「守るべき国語」というのはかくのごとく、大いなる虚構だ。関西人である私がこのように完璧な「標準語」で読み書きができるように、北欧あたりではテレビを通じて完璧英語を多くの人が身につけている。だがそれがいったいなんであろうか。言語の遣い手としては、一つの言語しか使えないよりも複数の言語が使えた方が楽しいに決まっている。考えてみれば、何の問題もないのではないか。

仮にそうした時代になろうとも、日本語でしか書けないような優れた文学作品があるのならば、日本語が読める人は必ずや読むであろう。日本語でなくても書けるものは、日本語で読む必要はない。そうなって困るのはいったい誰なのだろうか。「普遍語」を寡占してグローバリズム伝道を行うことで糧を得ていた人、昔日の栄光に浸る老人、それぐらいしか私には思いつかないのだが。

追記(ブコメ宛)

b:id:Nean えっと、だいたいの論旨に異議はないんだけれど、水村は「国語」が「虚構」ということを知った上で書いてるってのがいつの間にか飛んでるんでない? 「国力」の論点も変ですぜぃ。

水村は「国語」の虚構性を半分ぐらいしか理解していなかったと私は思います。たとえばここで挙げたような方言の視点はほとんどなかったのではないでしょうか。水村は東京生まれということなのでおそらく気づかなかったのでしょう。私のような方言話者にしてみれば「母語が『現地語』でしかない状況」なんて「なにをいまさら」でしかない、というのがこの記事を書いた大きな動機の一つでもあります。

「国力」についてはその辺の地方人バイアスが入っているかもしれませんが、正直あまり自覚はできていません。

2007-01-09

字面つらつら

特定箇所に反応する

にょろにょろは実体参照で書いた方がいいにょろ。「江戸??明治」とか表示されちゃうかも。

http://anond.hatelabo.jp/20070107184444

それはそうとして、ネット上にもいるよね。「旧字旧かな」一派。

彼らを尊重すれば正字派と言った方がいいのかな?

個人的には正字って言い方はどうなのよ?って思うんだけど。

正書法が時代によって揺らぐなんてのはよくあることだろうから、そのうちのひとつをことさら正字って呼ぶのには違和感がある。

仮名遣 - Wikipedia

今日ブクマみてたらそういう一派に出会ったよ。

「敬語の指針」に關する意見

現代仮名遣いに慣れきった私にはどうにも読みづらい。

ひらがなゲートウェイhttp://www.hiragana-gateway.com/)みたいな感じの現代仮名遣いゲートウェイとかあったら便利なのになぁ。

だれかPlaggerで作って!

 
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