はてなキーワード: ひらりとは
「理系に女子を増やしたいなら非モテユーモアは減ってほしい」 (anond:20230712191914) を読んだ。
を通じた男同士の連帯のこと。
いわゆる非モテユーモアは、異性愛者としてのアピールでありホモフォビアの表出と言える。
本人はその意識はなくとも、非モテの自虐をすることで、恋愛に興味がある異性愛者の男性としての同質性を求めているのだ。
ホモソーシャルに貢献していることを考えると、非モテユーモアをやめるべきだという意見は納得できる。
か、そうでなければ、
だから前者であれば''女''を押しつけて性的な目で見るし、後者であれば恋愛的なありなしで言う''なし''に分類して、一緒に非モテ自虐ネタとかを楽しむことを要求する。
ふつうの人がしているような、女性を1人の人間として向きあうことができない。
この元増田に対する反論コメ (anond:20230712222303) がわかりやすい。
「女としてのお前」に着目してほしいの?
女扱いされたいってこと?
この増田の頭の中には、
・「女としてのお前」=女扱いする
の2択しかないのだ。
異性としての配慮をしつつその人をその人として扱うという当たり前の選択肢がない。
この反論を書いた増田はたぶん今までホモソーシャル的な環境で育ってしまったのだろう。
やはり根本的な解決には男女比を強制的に近づける手法が必要なようだ。
昔読んだひらりささんという方のエッセイで、印象に残った言葉がある。
誰かの「私」を奪わないように、一人ひとりに向き合う意識を忘れずにいたい。
あります。泣きたい。
そんなayaseの2年ぶりのボカロ新曲『HERO』(初音ミクライブ「マジカルミライ2023」テーマ曲)の歌詞がこれ
確かにボカロ曲にしてはちょいクドめの歌詞かも(もっとも初音ミク16歳の誕生日という明確なテーマがあるからかもしれない)
姿を見せた凶悪なエネミー 行き場無くした心に湧いてくる
もう四六時中さいつでもkick off 囲まれてんだどうしたら良いの
逃げ場を無くした部屋の隅っこ エンドロールが迫る
H.E.R.O
H.E.R.O
そんな時目の前にひらりと舞い降りた 君は僕にとってのヒーロー
突然現れた光 堪え切れず零れてたSOSを
(HERO!)
キャッチしたみたいに
(HERO!)
駆け付けた途端 飛び出したパンチに目が覚めたそんな夜に
久しぶりに明日も生きたいと思えた
(HERO!)
救われたんだよ
(HERO!)
君の声に
さあこの先は 僕もその手を引くよ
サンキューここからは僕たちの番だ にわか雨じゃ全然足りないのさ
一面に広がってきた緑に水を撒けここは愛の惑星
救われてばかりじゃいられない 君も知らない場所見つけに行くよ
H.E.R.O
H.E.R.O
生きる意味をもう一度与えてくれた
(HERO!)
どんな時だって
(HERO!)
隣を見れば共に闘ってくれた君が居たからなんとかここまで来れたんだよ
この先は僕にも任せてよ 君が望む未来を教えてよ
どんな
(HERO!)
景色を見ようか
(HERO!)
夢を見ようか
さあ改めてどうぞよろしくね
リモートワークになってから、平日も子供たちをお風呂に入れることができるようになった。
お風呂に入る流れは決まっていて、息子と自分が先にお風呂に行きそれぞれ身体を洗ったら2人で湯船につかる→まだ赤ちゃんの娘を妻にお風呂までつれてきてもらい受け取る→娘の身体を洗って3人で湯船に浸かる、と言うのがいつもの流れだ。
今日も同じように娘を洗い終わり湯船に3人で使っていると、突然息子が「パパ、娘ちゃんうんちしてるっぽくない」と言い出した。
うんこちんこが大好きな年頃で、普段から口を開けばうんこちんこ言ってるので冗談だろと思いながら「はいはい、そいつは一大事だな」と返しながら下を見たらなんか黒い塊が沈んでた。
マシュマロぐらいの大きさのがポツンと湯船の底に転がってた。
とりあえず息子に「めっちゃうんこあるじゃん!もうここうんこの湯じゃん!」と返したら息子は大爆笑しながら湯船から足速に脱出してシャワーで身体を洗い流しながら妻に大声で「ママー!娘ちゃんがお風呂でうんこしたー!!!」と報告した。
妻が「うそー!やだー!」と言いながら駆けつけたので「とりあえず何かうんこをすくえるもの持ってきてくれる?」とお願いした。
妻がくるまでの間、息子が「パパと娘ちゃんうんこの湯に浸かってるー!きったなーい!」と煽ってくるので若干イラついたが「息子もうんこの湯にさっきまで入ってたでしょ」と言ったら切ない顔で黙った。
そんな不毛なやり取りをしていたら妻が戻って来て、トイレットペーパーを何重かに折り畳んだものを乗せた手を伸ばして来て「ここに乗せて!」と言った。
「え?すくうものは?」と聞いたら「うんこの湯に現在進行形で浸かってるんだから別にいいでしょ」と返された。
なるほどそうゆうものかと思い、とりあえず手を器状にしてうんこすくいにチャレンジすることにした。
うんこすくいにチャレンジしてすぐにその難しさに気付かされた。うんこは底に沈んでいるため、それを手のひらですくうには、まず何らかの水流を作り出しうんこを浮かさなければいけない。うんこを浮かすにはそれなりに強い水流が必要で、その強い水流で浮いたうんこは逃げる逃げる。ひらひらひらりと複雑な動きをするし、娘を抱っこしているので片手しか使えないのでより難しい。
何度かチャレンジしたがうんこすくいの難易度の高さに嫌気がさし、静かに、精密に、握り潰さないように、落とさないように、底に沈むうんこをつかみ、妻の手の上にあるトイレットペーパーの上に置いた。
その後、娘と自分の身体を改めて洗いながら妻にドア越しに「やっぱり素手でうんこを回収しろというのはひどいんじゃないか」と笑いながら抗議した。
妻は「たしかにそうだったごめん」と笑いながら言った。
そんな事件でした。
すくうものをお願いしたのに素手で回収しろって返しは酷いよなと思いつつ、うんこの湯に居たら全部同じだろってロジックもわからんでもないし、うんこすくうものってすぐに出てくるか?と思うと以外と難しい気もする。
今回のことに怒ってるとかじゃなく、当事者で冗談とは言え抗議したけどどっちの気持ちもわかるなーという感じで不思議な感情になっている。
お前たちはだめだねえ。なぜ人のことをうらやましがるんだい。僕だってつらいことはいくらもあるんだい。お前たちにもいいことはたくさんあるんだい。僕は自分のことを一向考えもしないで人のことばかりうらやんだり馬鹿ばかにしているやつらを一番いやなんだぜ。僕たちの方ではね、自分を外ほかのものとくらべることが一番はずかしいことになっているんだ。僕たちはみんな一人一人なんだよ。さっきも云ったような僕たちの一年に一ぺんか二へんの大演習の時にね、いくら早くばかり行ったって、うしろをふりむいたり並ならんで行くものの足なみを見たりするものがあると、もう誰たれも相手にしないんだぜ。やっぱりお前たちはだめだねえ。外の人とくらべることばかり考えているんじゃないか。僕はそこへ行くとさっき空で遭あった鷹がすきだねえ。あいつは天気の悪い日なんか、ずいぶん意地の悪いこともあるけれども空をまっすぐに馳けてゆくから、僕はすきなんだ。銀色の羽をひらりひらりとさせながら、空の青光の中や空の影かげの中を、まっすぐにまっすぐに、まるでどこまで行くかわからない不思議な矢のように馳けて行くんだ。だからあいつは意地悪で、あまりいい気持はしないけれども、さっきも、よう、あんまり空の青い石を突っつかないでくれっ、て挨拶したんだ。するとあいつが云ったねえ、ふん、青い石に穴があいたら、お前にも向う世界を見物させてやろうって云うんだ。云うことはずいぶん生意気だけれども僕は悪い気がしなかったねえ。」
一郎がそこで云いました。
「又三郎さん。おらはお前をうらやましがったんでないよ、お前をほめたんだ。おらはいつでも先生から習っているんだ。本当に男らしいものは、自分の仕事を立派に仕上げることをよろこぶ。決して自分が出来ないからって人をねたんだり、出来たからって出来ない人を見くびったりさない。お前もそう怒らなくてもいい。」
又三郎もよろこんで笑いました。それから一寸立ち上ってきりきりっとかかとで一ぺんまわりました。そこでマントがギラギラ光り、ガラスの沓がカチッ、カチッとぶっつかって鳴ったようでした。又三郎はそれから又座すわって云いました。
「そうだろう。だから僕は君たちもすきなんだよ。君たちばかりでない。子供はみんなすきなんだ。僕がいつでもあらんかぎり叫んで馳ける時、よろこんできゃっきゃっ云うのは子供ばかりだよ。一昨日おとといだってそうさ。ひるすぎから俄かに僕たちがやり出したんだ。そして僕はある峠とうげを通ったね。栗くりの木の青いいがを落したり、青葉までがりがりむしってやったね。その時峠の頂上を、雨の支度したくもしないで二人の兄弟が通るんだ、兄さんの方は丁度おまえくらいだったろうかね。」
「弟の方はまるで小さいんだ。その顔の赤い子よりもっと小さいんだ。その小さな子がね、まるでまっ青になってぶるぶるふるえているだろう。それは僕たちはいつでも人間の眼めから火花を出せるんだ。僕の前に行ったやつがいたずらして、その兄弟の眼を横の方からひどく圧おしつけて、とうとうパチパチ火花が発たったように思わせたんだ。そう見えるだけさ、本当は火花なんかないさ。それでもその小さな子は空が紫色むらさきいろがかった白光しろびかりをしてパリパリパリパリと燃えて行くように思ったんだ。そしてもう天地がいまひっくりかえって焼けて、自分も兄さんもお母さんもみんなちりぢりに死んでしまうと思ったんだい。かあいそうに。そして兄さんにまるで石のように堅かたくなって抱だきついていたね。ところがその大きな方の子はどうだい。小さな子を風のかげになるようにいたわってやりながら、自分はさも気持がいいというように、僕の方を向いて高く叫んだんだ。そこで僕も少ししゃくにさわったから、一つ大あばれにあばれたんだ。豆つぶぐらいある石ころをばらばら吹きあげて、たたきつけてやったんだ。小さな子はもう本当に大声で泣いたねえ。それでも大きな子はやっぱり笑うのをやめなかったよ。けれどとうとうあんまり弟が泣くもんだから、自分も怖こわくなったと見えて口がピクッと横の方へまがった、そこで僕は急に気の毒になって、丁度その時行く道がふさがったのを幸さいわいに、ぴたっとまるでしずかな湖のように静まってやった。それから兄弟と一緒に峠を下りながら横の方の草原から百合ゆりの匂においを二人の方へもって行ってやったりした。
どうしたんだろう、急に向うが空あいちまった。僕は向うへ行くんだ。さよなら。あしたも又来てごらん。又遭えるかも知れないから。」
風の又三郎のすきとおるマントはひるがえり、たちまちその姿は見えなくなりました。みんなはいろいろ今のことを話し合いながら丘を下り、わかれてめいめいの家に帰りました。
九月四日
「サイクルホールの話聞かせてやろうか。」
又三郎はみんなが丘の栗の木の下に着くやいなや、斯こう云っていきなり形をあらわしました。けれどもみんなは、サイクルホールなんて何だか知りませんでしたから、だまっていましたら、又三郎はもどかしそうに又言いました。
「サイクルホールの話、お前たちは聴ききたくないかい。聴きたくないなら早くはっきりそう云ったらいいじゃないか。僕行っちまうから。」
「聴きたい。」一郎はあわてて云いました。又三郎は少し機嫌きげんを悪くしながらぼつりぼつり話しはじめました。
「サイクルホールは面白い。人間だってやるだろう。見たことはないかい。秋のお祭なんかにはよくそんな看板を見るんだがなあ、自転車ですりばちの形になった格子こうしの中を馳けるんだよ。だんだん上にのぼって行って、とうとうそのすりばちのふちまで行った時、片手でハンドルを持ってハンケチなどを振ふるんだ。なかなかあれでひどいんだろう。ところが僕等がやるサイクルホールは、あんな小さなもんじゃない。尤もっとも小さい時もあるにはあるよ。お前たちのかまいたちっていうのは、サイクルホールの小さいのだよ。」
「ほ、おら、かまいたぢに足切られたぞ。」
嘉助が叫びました。
「何だって足を切られた? 本当かい。どれ足を出してごらん。」
又三郎はずいぶんいやな顔をしながら斯う言いました。嘉助はまっ赤になりながら足を出しました。又三郎はしばらくそれを見てから、
「ふうん。」
「一寸ちょっと脈をお見せ。」
と言うのでした。嘉助は右手を出しましたが、その時の又三郎のまじめくさった顔といったら、とうとう一郎は噴ふき出しました。けれども又三郎は知らん振りをして、だまって嘉助の脈を見てそれから云いました。
「なるほどね、お前ならことによったら足を切られるかも知れない。この子はね、大へんからだの皮が薄うすいんだよ。それに無暗むやみに心臓が強いんだ。腕うでを少し吸っても血が出るくらいなんだ。殊ことにその時足をすりむきでもしていたんだろう。かまいたちで切れるさ。」
「何なして切れる。」一郎はたずねました。
「それはね、すりむいたとこから、もう血がでるばかりにでもなっているだろう。それを空気が押おして押さえてあるんだ。ところがかまいたちのまん中では、わり合あい空気が押さないだろう。いきなりそんな足をかまいたちのまん中に入れると、すぐ血が出るさ。」
「切るのだないのか。」一郎がたずねました。
「切るのじゃないさ、血が出るだけさ。痛くなかったろう。」又三郎は嘉助に聴きました。
「痛くなかった。」嘉助はまだ顔を赤くしながら笑いました。
「ふん、そうだろう。痛いはずはないんだ。切れたんじゃないからね。そんな小さなサイクルホールなら僕たちたった一人でも出来る。くるくるまわって走れぁいいからね。そうすれば木の葉や何かマントにからまって、丁度うまい工合ぐあいかまいたちになるんだ。ところが大きなサイクルホールはとても一人じゃ出来あしない。小さいのなら十人ぐらい。大きなやつなら大人もはいって千人だってあるんだよ。やる時は大抵たいていふたいろあるよ。日がかんかんどこか一とこに照る時か、また僕たちが上と下と反対にかける時ぶっつかってしまうことがあるんだ。そんな時とまあふたいろにきまっているねえ。あんまり大きなやつは、僕よく知らないんだ。南の方の海から起って、だんだんこっちにやってくる時、一寸僕等がはいるだけなんだ。ふうと馳かけて行って十ぺんばかりまわったと思うと、もうずっと上の方へのぼって行って、みんなゆっくり歩きながら笑っているんだ。そんな大きなやつへうまくはいると、九州からこっちの方まで一ぺんに来ることも出来るんだ。けれどもまあ、大抵は途中とちゅうで高いとこへ行っちまうね。だから大きなのはあんまり面白かあないんだ。十人ぐらいでやる時は一番愉快ゆかいだよ。甲州ではじめた時なんかね。はじめ僕が八やつヶ岳たけの麓ふもとの野原でやすんでたろう。曇くもった日でねえ、すると向うの低い野原だけ不思議に一日、日が照ってね、ちらちらかげろうが上っていたんだ。それでも僕はまあやすんでいた。そして夕方になったんだ。するとあちこちから
『おいサイクルホールをやろうじゃないか。どうもやらなけぁ、いけない様だよ。』ってみんなの云うのが聞えたんだ。
『やろう』僕はたち上って叫さけんだねえ、
『いいかい、じゃ行くよ。』僕はその平地をめがけてピーッと飛んで行った。するといつでもそうなんだが、まっすぐに平地に行かさらないんだ。急げば急ぐほど右へまがるよ、尤もそれでサイクルホールになるんだよ。さあ、みんながつづいたらしいんだ。僕はもうまるで、汽車よりも早くなっていた。下に富士川の白い帯を見てかけて行った。けれども間もなく、僕はずっと高いところにのぼって、しずかに歩いていたねえ。サイクルホールはだんだん向うへ移って行って、だんだんみんなもはいって行って、ずいぶん大きな音をたてながら、東京の方へ行ったんだ。きっと東京でもいろいろ面白いことをやったねえ。それから海へ行ったろう。海へ行ってこんどは竜巻たつまきをやったにちがいないんだ。竜巻はねえ、ずいぶん凄すごいよ。海のには僕はいったことはないんだけれど、小さいのを沼でやったことがあるよ。丁度お前達の方のご維新いしん前ね、日詰ひづめの近くに源五沼という沼があったんだ。そのすぐ隣となりの草はらで、僕等は五人でサイクルホールをやった。ぐるぐるひどくまわっていたら、まるで木も折れるくらい烈はげしくなってしまった。丁度雨も降るばかりのところだった。一人の僕の友だちがね、沼を通る時、とうとう機はずみで水を掬すくっちゃったんだ。さあ僕等はもう黒雲の中に突き入ってまわって馳けたねえ、水が丁度漏斗じょうごの尻しりのようになって来るんだ。下から見たら本当にこわかったろう。
『ああ竜りゅうだ、竜だ。』みんなは叫んだよ。実際下から見たら、さっきの水はぎらぎら白く光って黒雲の中にはいって、竜のしっぽのように見えたかも知れない。その時友だちがまわるのをやめたもんだから、水はざあっと一ぺんに日詰の町に落ちかかったんだ。その時は僕はもうまわるのをやめて、少し下に降りて見ていたがね、さっきの水の中にいた鮒ふなやなまずが、ばらばらと往来や屋根に降っていたんだ。みんなは外へ出て恭恭うやうやしく僕等の方を拝んだり、降って来た魚を押し戴いただいていたよ。僕等は竜じゃないんだけれども拝まれるとやっぱりうれしいからね、友だち同志にこにこしながらゆっくりゆっくり北の方へ走って行ったんだ。まったくサイクルホールは面白いよ。
それから逆サイクルホールというのもあるよ。これは高いところから、さっきの逆にまわって下りてくることなんだ。この時ならば、そんなに急なことはない。冬は僕等は大抵シベリヤに行ってそれをやったり、そっちからこっちに走って来たりするんだ。僕たちがこれをやってる間はよく晴れるんだ。冬ならば咽喉のどを痛くするものがたくさん出来る。けれどもそれは僕等の知ったことじゃない。それから五月か六月には、南の方では、大抵支那しなの揚子江ようすこうの野原で大きなサイクルホールがあるんだよ。その時丁度北のタスカロラ海床かいしょうの上では、別に大きな逆サイクルホールがある。両方だんだんぶっつかるとそこが梅雨つゆになるんだ。日本が丁度それにあたるんだからね、仕方がないや。けれどもお前達のところは割合北から西へ外れてるから、梅雨らしいことはあんまりないだろう。あんまりサイクルホールの話をしたから何だか頭がぐるぐるしちゃった。もうさよなら。僕はどこへも行かないんだけれど少し睡ねむりたいんだ。さよなら。」
又三郎のマントがぎらっと光ったと思うと、もうその姿は消えて、みんなは、はじめてほうと息をつきました。それからいろいろいまのことを話しながら、丘を下って銘銘めいめいわかれておうちへ帰って行ったのです。
九月五日
「僕は上海シャンハイだって何べんも知ってるよ。」みんなが丘へのぼったとき又三郎がいきなりマントをぎらっとさせてそこらの草へ橙だいだいや青の光を落しながら出て来てそれから指をひろげてみんなの前に突つき出して云いました。
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗くりの木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴ふく岩穴もあったのです。
さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。黒い雪袴ゆきばかまをはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ふたりともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。というわけは、そのしんとした朝の教室のなかにどこから来たのか、まるで顔も知らないおかしな赤い髪の子供がひとり、いちばん前の机にちゃんとすわっていたのです。そしてその机といったらまったくこの泣いた子の自分の机だったのです。
もひとりの子ももう半分泣きかけていましたが、それでもむりやり目をりんと張って、そっちのほうをにらめていましたら、ちょうどそのとき、川上から、
「ちょうはあ かぐり ちょうはあ かぐり。」と高く叫ぶ声がして、それからまるで大きなからすのように、嘉助かすけがかばんをかかえてわらって運動場へかけて来ました。と思ったらすぐそのあとから佐太郎さたろうだの耕助こうすけだのどやどややってきました。
「なして泣いでら、うなかもたのが。」嘉助が泣かないこどもの肩をつかまえて言いました。するとその子もわあと泣いてしまいました。おかしいとおもってみんながあたりを見ると、教室の中にあの赤毛のおかしな子がすまして、しゃんとすわっているのが目につきました。
みんなはしんとなってしまいました。だんだんみんな女の子たちも集まって来ましたが、だれもなんとも言えませんでした。
赤毛の子どもはいっこうこわがるふうもなくやっぱりちゃんとすわって、じっと黒板を見ています。すると六年生の一郎いちろうが来ました。一郎はまるでおとなのようにゆっくり大またにやってきて、みんなを見て、
「何なにした。」とききました。
みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の変な子を指さしました。一郎はしばらくそっちを見ていましたが、やがて鞄かばんをしっかりかかえて、さっさと窓の下へ行きました。
みんなもすっかり元気になってついて行きました。
「だれだ、時間にならないに教室へはいってるのは。」一郎は窓へはいのぼって教室の中へ顔をつき出して言いました。
「お天気のいい時教室さはいってるづど先生にうんとしからえるぞ。」窓の下の耕助が言いました。
「しからえでもおら知らないよ。」嘉助が言いました。
「早ぐ出はって来こ、出はって来。」一郎が言いました。けれどもそのこどもはきょろきょろ室へやの中やみんなのほうを見るばかりで、やっぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛けにすわっていました。
ぜんたいその形からが実におかしいのでした。変てこなねずみいろのだぶだぶの上着を着て、白い半ずぼんをはいて、それに赤い革かわの半靴はんぐつをはいていたのです。
それに顔といったらまるで熟したりんごのよう、ことに目はまん丸でまっくろなのでした。いっこう言葉が通じないようなので一郎も全く困ってしまいました。
「学校さはいるのだな。」みんなはがやがやがやがや言いました。ところが五年生の嘉助がいきなり、
「ああそうだ。」と小さいこどもらは思いましたが、一郎はだまってくびをまげました。
変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけ、きちんと腰掛けています。
そのとき風がどうと吹いて来て教室のガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萱かやや栗くりの木はみんな変に青じろくなってゆれ、教室のなかのこどもはなんだかにやっとわらってすこしうごいたようでした。
すると嘉助がすぐ叫びました。
そうだっとみんなもおもったとき、にわかにうしろのほうで五郎が、
「わあ、痛いぢゃあ。」と叫びました。
みんなそっちへ振り向きますと、五郎が耕助に足のゆびをふまれて、まるでおこって耕助をなぐりつけていたのです。すると耕助もおこって、
「わあ、われ悪くてでひと撲はだいだなあ。」と言ってまた五郎をなぐろうとしました。
五郎はまるで顔じゅう涙だらけにして耕助に組み付こうとしました。そこで一郎が間へはいって嘉助が耕助を押えてしまいました。
「わあい、けんかするなったら、先生あちゃんと職員室に来てらぞ。」と一郎が言いながらまた教室のほうを見ましたら、一郎はにわかにまるでぽかんとしてしまいました。
たったいままで教室にいたあの変な子が影もかたちもないのです。みんなもまるでせっかく友だちになった子うまが遠くへやられたよう、せっかく捕とった山雀やまがらに逃げられたように思いました。
風がまたどうと吹いて来て窓ガラスをがたがた言わせ、うしろの山の萱かやをだんだん上流のほうへ青じろく波だてて行きました。
「わあ、うなだけんかしたんだがら又三郎いなぐなったな。」嘉助がおこって言いました。
みんなもほんとうにそう思いました。五郎はじつに申しわけないと思って、足の痛いのも忘れてしょんぼり肩をすぼめて立ったのです。
「二百十日で来たのだな。」
「靴くつはいでだたぞ。」
「服も着でだたぞ。」
「髪赤くておかしやづだったな。」
「ありゃありゃ、又三郎おれの机の上さ石かけ乗せでったぞ。」二年生の子が言いました。見るとその子の机の上にはきたない石かけが乗っていたのです。
「そうだ、ありゃ。あそごのガラスもぶっかしたぞ。」
「わあい。そだないであ。」と言っていたとき、これはまたなんというわけでしょう。先生が玄関から出て来たのです。先生はぴかぴか光る呼び子を右手にもって、もう集まれのしたくをしているのでしたが、そのすぐうしろから、さっきの赤い髪の子が、まるで権現ごんげんさまの尾おっぱ持ちのようにすまし込んで、白いシャッポをかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。
みんなはしいんとなってしまいました。やっと一郎が「先生お早うございます。」と言いましたのでみんなもついて、
「みなさん。お早う。どなたも元気ですね。では並んで。」先生は呼び子をビルルと吹きました。それはすぐ谷の向こうの山へひびいてまたビルルルと低く戻もどってきました。
すっかりやすみの前のとおりだとみんなが思いながら六年生は一人、五年生は七人、四年生は六人、一二年生は十二人、組ごとに一列に縦にならびました。
二年は八人、一年生は四人前へならえをしてならんだのです。
するとその間あのおかしな子は、何かおかしいのかおもしろいのか奥歯で横っちょに舌をかむようにして、じろじろみんなを見ながら先生のうしろに立っていたのです。すると先生は、高田たかださんこっちへおはいりなさいと言いながら五年生の列のところへ連れて行って、丈たけを嘉助とくらべてから嘉助とそのうしろのきよの間へ立たせました。
みんなはふりかえってじっとそれを見ていました。
「前へならえ。」と号令をかけました。
みんなはもう一ぺん前へならえをしてすっかり列をつくりましたが、じつはあの変な子がどういうふうにしているのか見たくて、かわるがわるそっちをふりむいたり横目でにらんだりしたのでした。するとその子はちゃんと前へならえでもなんでも知ってるらしく平気で両腕を前へ出して、指さきを嘉助のせなかへやっと届くくらいにしていたものですから、嘉助はなんだかせなかがかゆく、くすぐったいというふうにもじもじしていました。
「直れ。」先生がまた号令をかけました。
「一年から順に前へおい。」そこで一年生はあるき出し、まもなく二年生もあるき出してみんなの前をぐるっと通って、右手の下駄箱げたばこのある入り口にはいって行きました。四年生があるき出すとさっきの子も嘉助のあとへついて大威張りであるいて行きました。前へ行った子もときどきふりかえって見、あとの者もじっと見ていたのです。
まもなくみんなははきものを下駄箱げたばこに入れて教室へはいって、ちょうど外へならんだときのように組ごとに一列に机にすわりました。さっきの子もすまし込んで嘉助のうしろにすわりました。ところがもう大さわぎです。
「わあ、おらの机さ石かけはいってるぞ。」
「わあ、おらの机代わってるぞ。」
「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れで来たぢゃあ。」
「わあがない。ひとの雑記帳とってって。」
そのとき先生がはいって来ましたのでみんなもさわぎながらとにかく立ちあがり、一郎がいちばんうしろで、
「礼。」と言いました。
みんなはおじぎをする間はちょっとしんとなりましたが、それからまたがやがやがやがや言いました。
「しずかに、みなさん。しずかにするのです。」先生が言いました。
「しっ、悦治えつじ、やがましったら、嘉助え、喜きっこう。わあい。」と一郎がいちばんうしろからあまりさわぐものを一人ずつしかりました。
みんなはしんとなりました。
先生が言いました。
「みなさん、長い夏のお休みはおもしろかったですね。みなさんは朝から水泳ぎもできたし、林の中で鷹たかにも負けないくらい高く叫んだり、またにいさんの草刈りについて上うえの野原へ行ったりしたでしょう。けれどももうきのうで休みは終わりました。これからは第二学期で秋です。むかしから秋はいちばんからだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんもきょうからまたいっしょにしっかり勉強しましょう。それからこのお休みの間にみなさんのお友だちが一人ふえました。それはそこにいる高田さんです。そのかたのおとうさんはこんど会社のご用で上の野原の入り口へおいでになっていられるのです。高田さんはいままでは北海道の学校におられたのですが、きょうからみなさんのお友だちになるのですから、みなさんは学校で勉強のときも、また栗拾くりひろいや魚さかなとりに行くときも、高田さんをさそうようにしなければなりません。わかりましたか。わかった人は手をあげてごらんなさい。」
すぐみんなは手をあげました。その高田とよばれた子も勢いよく手をあげましたので、ちょっと先生はわらいましたが、すぐ、
「わかりましたね、ではよし。」と言いましたので、みんなは火の消えたように一ぺんに手をおろしました。
ところが嘉助がすぐ、
「先生。」といってまた手をあげました。
「高田さん名はなんて言うべな。」
「わあ、うまい、そりゃ、やっぱり又三郎だな。」嘉助はまるで手をたたいて机の中で踊るようにしましたので、大きなほうの子どもらはどっと笑いましたが、下の子どもらは何かこわいというふうにしいんとして三郎のほうを見ていたのです。
先生はまた言いました。
「きょうはみなさんは通信簿と宿題をもってくるのでしたね。持って来た人は机の上へ出してください。私がいま集めに行きますから。」
みんなはばたばた鞄かばんをあけたりふろしきをといたりして、通信簿と宿題を机の上に出しました。そして先生が一年生のほうから順にそれを集めはじめました。そのときみんなはぎょっとしました。というわけはみんなのうしろのところにいつか一人の大人おとなが立っていたのです。その人は白いだぶだぶの麻服を着て黒いてかてかしたはんけちをネクタイの代わりに首に巻いて、手には白い扇をもって軽くじぶんの顔を扇あおぎながら少し笑ってみんなを見おろしていたのです。さあみんなはだんだんしいんとなって、まるで堅くなってしまいました。
ところが先生は別にその人を気にかけるふうもなく、順々に通信簿を集めて三郎の席まで行きますと、三郎は通信簿も宿題帳もないかわりに両手をにぎりこぶしにして二つ机の上にのせていたのです。先生はだまってそこを通りすぎ、みんなのを集めてしまうとそれを両手でそろえながらまた教壇に戻りました。
「では宿題帳はこの次の土曜日に直して渡しますから、きょう持って来なかった人は、あしたきっと忘れないで持って来てください。それは悦治さんと勇治ゆうじさんと良作りょうさくさんとですね。ではきょうはここまでです。あしたからちゃんといつものとおりのしたくをしておいでなさい。それから四年生と六年生の人は、先生といっしょに教室のお掃除そうじをしましょう。ではここまで。」
一郎が気をつけ、と言いみんなは一ぺんに立ちました。うしろの大人おとなも扇を下にさげて立ちました。
「礼。」先生もみんなも礼をしました。うしろの大人も軽く頭を下げました。それからずうっと下の組の子どもらは一目散に教室を飛び出しましたが、四年生の子どもらはまだもじもじしていました。
すると三郎はさっきのだぶだぶの白い服の人のところへ行きました。先生も教壇をおりてその人のところへ行きました。
「いやどうもご苦労さまでございます。」その大人はていねいに先生に礼をしました。
「じきみんなとお友だちになりますから。」先生も礼を返しながら言いました。
「何ぶんどうかよろしくおねがいいたします。それでは。」その人はまたていねいに礼をして目で三郎に合図すると、自分は玄関のほうへまわって外へ出て待っていますと、三郎はみんなの見ている中を目をりんとはってだまって昇降口から出て行って追いつき、二人は運動場を通って川下のほうへ歩いて行きました。
運動場を出るときその子はこっちをふりむいて、じっと学校やみんなのほうをにらむようにすると、またすたすた白服の大人おとなについて歩いて行きました。
「先生、あの人は高田さんのとうさんですか。」一郎が箒ほうきをもちながら先生にききました。
「そうです。」
「なんの用で来たべ。」
「上の野原の入り口にモリブデンという鉱石ができるので、それをだんだん掘るようにするためだそうです。」
「どこらあだりだべな。」
「私もまだよくわかりませんが、いつもみなさんが馬をつれて行くみちから、少し川下へ寄ったほうなようです。」
「モリブデン何にするべな。」
「それは鉄とまぜたり、薬をつくったりするのだそうです。」
「そだら又三郎も掘るべが。」嘉助が言いました。
「又三郎だ又三郎だ。」嘉助が顔をまっ赤かにしてがん張りました。
「嘉助、うなも残ってらば掃除そうじしてすけろ。」一郎が言いました。
風がまた吹いて来て窓ガラスはまたがたがた鳴り、ぞうきんを入れたバケツにも小さな黒い波をたてました。
次の日一郎はあのおかしな子供が、きょうからほんとうに学校へ来て本を読んだりするかどうか早く見たいような気がして、いつもより早く嘉助をさそいました。ところが嘉助のほうは一郎よりもっとそう考えていたと見えて、とうにごはんもたべ、ふろしきに包んだ本ももって家の前へ出て一郎を待っていたのでした。二人は途中もいろいろその子のことを話しながら学校へ来ました。すると運動場には小さな子供らがもう七八人集まっていて、棒かくしをしていましたが、その子はまだ来ていませんでした。またきのうのように教室の中にいるのかと思って中をのぞいて見ましたが、教室の中はしいんとしてだれもいず、黒板の上にはきのう掃除のときぞうきんでふいた跡がかわいてぼんやり白い縞しまになっていました。
「きのうのやつまだ来てないな。」一郎が言いました。
「うん。」嘉助も言ってそこらを見まわしました。
一郎はそこで鉄棒の下へ行って、じゃみ上がりというやり方で、無理やりに鉄棒の上にのぼり両腕をだんだん寄せて右の腕木に行くと、そこへ腰掛けてきのう三郎の行ったほうをじっと見おろして待っていました。谷川はそっちのほうへきらきら光ってながれて行き、その下の山の上のほうでは風も吹いているらしく、ときどき萱かやが白く波立っていました。
嘉助もやっぱりその柱の下でじっとそっちを見て待っていました。ところが二人はそんなに長く待つこともありませんでした。それは突然三郎がその下手のみちから灰いろの鞄かばんを右手にかかえて走るようにして出て来たのです。
「来たぞ。」と一郎が思わず下にいる嘉助へ叫ぼうとしていますと、早くも三郎はどてをぐるっとまわって、どんどん正門をはいって来ると、
「お早う。」とはっきり言いました。みんなはいっしょにそっちをふり向きましたが、一人も返事をしたものがありませんでした。
それは返事をしないのではなくて、みんなは先生にはいつでも「お早うございます。」というように習っていたのですが、お互いに「お早う。」なんて言ったことがなかったのに三郎にそう言われても、一郎や嘉助はあんまりにわかで、また勢いがいいのでとうとう臆おくしてしまって一郎も嘉助も口の中でお早うというかわりに、もにゃもにゃっと言ってしまったのでした。
ところが三郎のほうはべつだんそれを苦にするふうもなく、二三歩また前へ進むとじっと立って、そのまっ黒な目でぐるっと運動場じゅうを見まわしました。そしてしばらくだれか遊ぶ相手がないかさがしているようでした。けれどもみんなきょろきょろ三郎のほうはみていても、やはり忙しそうに棒かくしをしたり三郎のほうへ行くものがありませんでした。三郎はちょっと具合が悪いようにそこにつっ立っていましたが、また運動場をもう一度見まわしました。
それからぜんたいこの運動場は何間なんげんあるかというように、正門から玄関まで大またに歩数を数えながら歩きはじめました。一郎は急いで鉄棒をはねおりて嘉助とならんで、息をこらしてそれを見ていました。
そのうち三郎は向こうの玄関の前まで行ってしまうと、こっちへ向いてしばらく暗算をするように少し首をまげて立っていました。
みんなはやはりきろきろそっちを見ています。三郎は少し困ったように両手をうしろへ組むと向こう側の土手のほうへ職員室の前を通って歩きだしました。
その時風がざあっと吹いて来て土手の草はざわざわ波になり、運動場のまん中でさあっと塵ちりがあがり、それが玄関の前まで行くと、きりきりとまわって小さなつむじ風になって、黄いろな塵は瓶びんをさかさまにしたような形になって屋根より高くのぼりました。
すると嘉助が突然高く言いました。
「そうだ。やっぱりあいづ又三郎だぞ。あいづ何かするときっと風吹いてくるぞ。」
「うん。」一郎はどうだかわからないと思いながらもだまってそっちを見ていました。三郎はそんなことにはかまわず土手のほうへやはりすたすた歩いて行きます。
そのとき先生がいつものように呼び子をもって玄関を出て来たのです。
「お早う。」先生はちらっと運動場を見まわしてから、「ではならんで。」と言いながらビルルッと笛を吹きました。
みんなは集まってきてきのうのとおりきちんとならびました。三郎もきのう言われた所へちゃんと立っています。
先生はお日さまがまっ正面なのですこしまぶしそうにしながら号令をだんだんかけて、とうとうみんなは昇降口から教室へはいりました。そして礼がすむと先生は、
「ではみなさんきょうから勉強をはじめましょう。みなさんはちゃんとお道具をもってきましたね。では一年生(と二年生)の人はお習字のお手本と硯すずりと紙を出して、二年生と四年生の人は算術帳と雑記帳と鉛筆を出して、五年生と六年生の人は国語の本を出してください。」
さあするとあっちでもこっちでも大さわぎがはじまりました。中にも三郎のすぐ横の四年生の机の佐太郎が、いきなり手をのばして二年生のかよの鉛筆をひらりととってしまったのです。かよは佐太郎の妹でした。するとかよは、
「うわあ、兄あいな、木ペン取とてわかんないな。」と言いながら取り返そうとしますと佐太郎が、
「わあ、こいつおれのだなあ。」と言いながら鉛筆をふところの中へ入れて、あとはシナ人がおじぎするときのように両手を袖そでへ入れて、机へぴったり胸をくっつけました。するとかよは立って来て、
「兄あいな、兄なの木ペンはきのう小屋でなくしてしまったけなあ。よこせったら。」と言いながら一生けん命とり返そうとしましたが、どうしてももう佐太郎は机にくっついた大きな蟹かにの化石みたいになっているので、とうとうかよは立ったまま口を大きくまげて泣きだしそうになりました。
すると三郎は国語の本をちゃんと机にのせて困ったようにしてこれを見ていましたが、かよがとうとうぼろぼろ涙をこぼしたのを見ると、だまって右手に持っていた半分ばかりになった鉛筆を佐太郎の目の前の机に置きました。
すると佐太郎はにわかに元気になって、むっくり起き上がりました。そして、
「くれる?」と三郎にききました。三郎はちょっとまごついたようでしたが覚悟したように、「うん。」と言いました。すると佐太郎はいきなりわらい出してふところの鉛筆をかよの小さな赤い手に持たせました。
先生は向こうで一年生の子の硯すずりに水をついでやったりしていましたし、嘉助は三郎の前ですから知りませんでしたが、一郎はこれをいちばんうしろでちゃんと見ていました。そしてまるでなんと言ったらいいかわからない、変な気持ちがして歯をきりきり言わせました。
「では二年生のひとはお休みの前にならった引き算をもう一ぺん習ってみましょう。これを勘定してごらんなさい。」先生は黒板に25-12=の数式と書きました。二年生のこどもらはみんな一生
「ゆゆっ! ゆっくりいそぐよ!」
ここは駐車場。
東京のベッドタウンであるこの湯栗市ではよく見られる、比較的広い駐車場を持つ総合スーパーの駐車場である。
とうに秋は終わり、冬の寒気が辺りを覆っている。
その一角、乾いたアスファルトの上を小汚い饅頭がエッサエッサと動いていた。
冬はゆっくりにとって死の季節。
よほどの無能でない限り巣穴にこもって春の訪れを待つ。
そう、よほどの無能でない限りは……。
「ゆっ! こんなところにくそにんげんがいるよ! れいむがはしってるんだからどいてね!」
溜まっていた有給を一日だけ取ったが、既に半分以上を無為に過ごしていた。
せめて酒でも買い足しておこう。そんな軽い気持ちで家を出る。
と、視界の隅に動くものが。
「どいてねって……俺に言ってるのか?」
それなのに突っ込んでくる饅頭。
そう思い直して、饅頭を見下ろす。
薄汚れたボディ、ボサボサでカピカピの髪の毛、生ゴミよりもみすぼらしいリボン。
それでも血色は良い。スーパーの周辺を縄張りとしているのなら、冬でもそれなりに良いものを食べているのだろう。
ぽいんぽいんと、人間がゆっくり歩くほどのペースで跳ねてくる。
先程「どけ」と言っていたが、このままの進行方向ならそもそもぶつかることもない。
彼は、立ち止まったまま行き過ぎるのを待つことにした。
数秒が経過し、ようやく饅頭が通り過ぎようとした、その時だった。
「ゆゆっ! やっぱりくそにんげんにはゆずりあいっのせいしんさんがないんだね! れいむはゆっくりよけるよ! れいむやさしくってごめーんグエッッッ!!!」
急に方向転換した饅頭が、鬼威氏にぶつかってきた。
吹き飛ぶ饅頭。れいむの口から漏れた餡が、鬼威氏のスニーカーに付着する。
ハッと我に帰った鬼威氏をよそに、件のゆっくりは上を下への大騒ぎをしていた。
「い゛た゛い゛ィィィィ―――!! れいむのようきひっさんもしっとするうつくしいおかおがあああ!!! くそにんげんにけられたあああ!!!」
お気に入りのスニーカーが、汚物による生物化学攻撃を受けていた。
鬼威氏の血圧が上がり、血管が浮き出た。
「おいクソ饅頭、お前、なんてことを……」
そう言いつつ、深呼吸をする。
アンガーコントロール。文明国に生きる人間なら当たり前のスキルを試みる。
まず靴を拭いて、れいむが落ち着いたら一言二言文句を言おう。それでいい。相手はゆっくりだ。
「くそにんげんンンン!! あやまってね!!!!! ばいっしょうはあまあまさんやまもりでいいよ!! れいむやさしくってごめーんね!」
いくら下等ナマモノといっても、許されない限度というものがある。
いやしかし、鬼威氏の理性はなんとか持ちこたえた。
「ゆっ、なんのさわぎなのぜ? れいむ、どこいってたのぜ?」
「まりさ!!」
そこに突如として現れた第三者。
今まで気付かなかったが、鬼威氏が車を止めたすぐ隣にみすぼらしい段ボールが置かれていた。
クソ饅頭はこれで勝ったと思ったのか、さらに横柄な態度になった。
一方まりさは鬼威氏を見てとると、目を丸くして驚いた。
「ゆゆっ、にんげんさん!? ま、まりさなにもしてないのぜ! えっと、えっと、ゆっくりしていってね!」
くすんだ銅のバッジが帽子に付いている。元飼いゆっくりだろうか?
なんにせよ、多少は話が通じそうだ。目元にも怯え以外に、知性の光が見える。
「ゆっくりしていってね、まりさ。このゆっくりがぶつかってきたんだ。僕の靴が汚れたんだけど、何故か逆に謝罪を求められて困っているんだ」
まりさは鬼威氏が指差す先を見た。白玉の瞳に、番のれいむが映る。
いや、もう既に死は確定しているかもしれない。
そう思えるだけの知性を、まりさは保持していた。
だからこそ
「ごめんっなさいなのぜ! そのれいむはまりさのおくさんっなのぜ! まりさはたらくのぜ! おくつをべんっしょうするのぜ? だからいのちだけはゆるしてほしいのぜ!」
全力で頭を下げる。ゆっくりの生命など、人間の前では塵も同じ。
「なにあやまってるのおおおおお!! ばかなの? しぬの? このくそにんげんをせいっさいしてね!! いますぐでいいよ!!」
自分を守り、戦い、そしてこのゆっくりしていないクソ人間をぶち殺してくれる存在。
「別に生命までは取る気はないよ。ただ、れいむには謝ってほしかったんだけど、もういいよ。君が謝ったしね」
鬼威氏はまりさの俊敏性に驚きつつ、そう答えた。
「そういうわけにはいかないのぜ! いま、れいむにもあやまらせるのぜ! すこしだけまっていてほしいのぜ?」
「いいよ。じゃあ、ここで待っているから、話がついたら教えてくれ」
鬼威氏は今日、特段やることもない。
それに今真っ先にやることは靴をきれいにすることだ。
ドア裏のポケットからウェッティを取り出して、慎重に餡を除去し始めた。
一方、こちらは巣穴の中。
「なんでおそとにいったのぜ? えっとうできるたべものはあるのぜ! ふゆさんはさむいさむいであぶないのぜ? あとおちびはどこなのぜ?」
まりさが詰め寄る。
まずは時系列に沿って説明させ、頭を冷やさせようという戦略だ。
「れいむはくささんなんかたべたくないから、おちびちゃんとかりさんにいってあげたんだよ! かんしゃしてね!」
「おちびと? で、おちびはどこなのぜ?」
「そうだよ! おちびちゃんがうんうんもらして、あにゃるさんがくさいくさいだからまりさをよびにきたんだよ! おちびちゃんのあにゃるさんをきれいきれいしにいってあげてね! いますぐでいいよ!」
まりさにはそこまでの情はなかった。
「そんなのじぶんでやればよかったのぜ。まりさはさむいさむいのなか、でかけたくはないのぜ」
冷たく言い放つ。
「どぼじでそんなこというのおおお! れいむはこんっそめさんをたべたかったのになかったんだよ? ぼせいあふれてるんだよ?」
コンソメを見つけられなかったことは今なんの関係があるのだろう?
「わかったのぜ。まりさにさくせんさんがあるのぜ。れいむがあやまったら、そのすきにまりさがにんげんさんをせいっさいするのぜ?」
れいむの顔がパアッと輝く。
置き去りにされたまりちゃがぽつねんと立ち尽くしていた。
当然見つかるはずもなく、無為に時間を浪費した後、ここに置き去りにされたというわけだ。
「あにゃるさんくちゃいくちゃいなのじぇ……ぽんぽんさんぺこぺこなのじぇ……さむいのじぇ……くるしいのじぇ……? おとーしゃ、おかーしゃ、どこなのじぇ?」
寒さ、空腹、それから孤独と心細さがまりちゃの身体を蝕んでいた。
冬になってから外になんて出たことはない。それも一人でなんて。
寒空の下乾いた風が吹き抜け、甘やかされたまりちゃの身体を震え上がらせる。
そして寒風は悪魔をも運んできた。
それも小学3年生くらいの。
即殺ではなく、嬲ることの面白さを知る年頃。
500円玉を握りしめ、お使いに来たのだろう。
なんにせよ、ゆっくりにとって最悪の相手が目の前に立っていた。
「ゆ! ちびにんげん! ちょうどよかったのじぇ! まりちゃのどれいにしてやるのじぇ!」
決まった。完璧に。
まりちゃの威厳ある宣言に、人間の子供は震え上がり、威儀を正して土下座をしていることだろう。
その姿を想像するだけでしーしーがもれる。
まりちゃは想像と現実の一致を確かめるようにゆっくりと目を開く……。
「ゆじぇああああああ!? いたいのじぇええええ!!!?!?!?」
小学生は指先ほどの小石を拾い上げると、まりちゃの額に押し込んでいた。
いとも簡単に肌を切り裂き、餡へと至る。
が、
「おぼうしさん! かえしてええ!!」
ゆっくりにとって命よりも大切なお飾り。
それを小学生は持ち上げる。
そして、ビリビリと引きちぎる。
「おぼうしさん!? ゆっくりなおってね!? ぺーろぺーろ……? ぺーろ…ぺーろ……?」
ぼろぼろになったお飾りを治そうと舐めるが、そんなことでは当然治りはしない。
もう二度とゆっくり出来ない。
そう悟った時、まりちゃの餡子の底から、悲しみ、絶望、それから怒りがこみ上げる。
「ゆるさないのじぇ……ぜったいゆるさないのじぇ……! ないてもゆるさないのじぇ? ぶっころしてやるのじぇ……おそらっ!?」
まりちゃを掴む手が離れる。
「まりちゃはとりしゃん!」
その衝撃で、真っ二つになった眼球がポロリとまろび出た。
「どちらかというと、恨むべきなのはここに一人にした親じゃない?」
小学生とは思えないような慧眼。
「どぼじで……こんなことをするのじぇ? まりちゃだって……ゆっくりだって……いきてるのに!!」
ドン!!
そんな効果音を心のなかで響かせて、まりちゃの決め台詞が炸裂する。
これで、このクソ人間も改心しただろう。
まりちゃの目を潰した罪を背負い自らの目を潰して、まりちゃに献上するに違いない。
一生かけて罪を償うに違いない!
そんな期待を込めて、再び目を開ける。
「ねえ、まりちゃ? ゆっくりを自転車で引っ張ったら……どうなるかな?」
が、まだまりちゃには奥義——ぷっくー——がある。まだ勝つシナリオはある。
その希望がある限り、まりちゃは非ゆっくり症という救いを得ることは出来ない。
場面は再び戻って駐車場。
「ほられいむ……あやまるのぜ?」
れいむはまりさが後ろ手に聖剣えくすかりばーさんを持っていることを確認すると、頷いた。
このクソ人間の終わりは確定した。
「にんげんさん……にんげんさん……」
「なんだい、れいむ?」
鬼威氏はニコリと微笑みかける。
幸いなことに、スニーカーの人工革の部分に餡子が付着していたため、きれいに取ることが出来た。
もう許すも許さないもないのだが、まあ謝罪を受けたほうが収まりが良いだろう。
「しねえ! このくそにんげん!! まりさ! いまだよ!このくそにんげんをせいっさいしてね!!」
「……わかったのぜ」
「ゆんやああああああああ!! れいむのかもしかっさんのようなあんよさんがああああ!!!! い゛た゛い゛いいいいいいい!!!!」
「まりさ……どうしてそんなことを?」
「れいむは、もうにどとおうちからでないのぜ……。だからいのちさんだけはゆるしてあげてほしいのぜ……! まりさはどうなってもいいのぜ」
それを聞き、鬼威氏はまりさに微笑みかけた。
「わかったのぜ……」
迫りくる巨大な手。
が、感じたのは柔らかな感触だった。
「ああ、やっぱり! まりさ、お前汚れているだけで金バッジじゃないか!」
鬼威氏の手にはウェッティがあり、それでまりさのくすんだバッジを拭ったのだった。
「お前、迷いゆっくりじゃないか? このスーパーで張り紙見たぞ」
「えっ……?」
「だから、お前の家、湯ン矢町じゃないのか?」
「そうだよ……! でも、まりさは捨てゆっくりなのぜ。帰る家なんて」
「捨てられたわけじゃないみたいだぞ? お前の飼い主は、お前を探してる」
「そう……なのぜ……?」
鬼威氏の穏やかな目に嘘はなかった。
「家まで送って行ってやるよ。助手席に乗りな! 安全運転でGOだ!」
「わ、わかったのぜ!」
鬼威氏がドアを開ける。
「まりさ……! なにやってるの? れいむをおいていかないでね?」
「ごめん……なのぜ!」
「よっしゃ出発だ!」
だからこそ陽気に、鬼威氏はエンジンをかけると、オンボロの軽自動車をゆっくりと湯ン矢町へと向けた。
彼は酒を買い忘れた事に気付いていない。
このミスから野良ちぇんに出会うことになるのだが、それはまた別のお話。
今はただ、まりさの心だけを……。
夏の終わり。
「あついのぜ……まりさは……じぬのぜ?」
「ゆ! おみずさんあげるよ?」
まりさはひといきに飲み干すと、少しだけ息を整えた。
「ありがとうなのぜ……きみはだれなのぜ?」
「ゆん! のんだね? いまのはけっこんのちかいのおみずだよ!」
後光が指す。
捨てられたと思い込んでいたまりさは、それを受け入れた。
冬の審判の日は、まだ遠い。
「ゆ……ゆ……」
3日前より少しだけボロボロになった段ボールの中に、不気味な影が一つ。
なんとか這い戻ったれいむが力なく横たわる。
まりさは手加減をしていた。
それは致命傷にはならなかった。
が、二度と歩くことは出来ない。
「れいむはにんげんをせいっさいしてやったよ……! にんげんをあやまらせてやったよ……!」
うわ言が響く。
死のうにも、まりさが冬ごもりのために蓄えた食物は三匹分ある。
人間を吹き飛ばしたこと。人間に謝罪させたこと。人間からあまあまをぶんどったこと。人間を奴隷にしたこと。
少しでもゆっくりするために、書き換える。
VTuberファンに親か何か殺されたのか? どんな実害を被った?
たんに自分が流行り物を楽しめなくて逆恨みしてるだけじゃないのか?
少し前はソシャゲーマーや(アイマス系の)プロデューサーやラブライバーなどを独特な蔑称をつけて叩いてたりしなかったか?
流行り物に乗っている人の中でも特に面倒くさい思いを鬱積させた人がここに集まってきやすいだけであって、愛好者全体やコンテンツ自体は嫌うほどのものではないと思うぞ?
むしろフラットな心で接することができればきっと素晴らしいものばかりだ。素晴らしいから人が集まるんだ。その感性を共有できないことを不幸と感じてしまうのは仕方ないかもしれないが、まあ世代の壁などもあるんだろう。
ネット越しだとそういうものが不可視だから「自分も楽しめるはずのものだったかも」のような未練を抱いてしまいがちだよな。だがダメなもんは仕方ない。
そうなったときに楽しんでいる人たちの中で叩きやすい出る杭みたいなイレギュラーを見つけて来て「それ見たことか」と詰ってもどうしようもなくないか?
自分への慰めになるのか? 短期的にはそうでも長期的にはむしろ自分を追い込んでいく毒なんじゃないか?
逆に「ファンでなくて良かった」と思うのもちょっとこじらせててアレだが。いずれにせよ、何でも楽しめて輪に入った経験がある方が楽しいし捻くれずに済むのは事実だ。
だがそうはなれなかった。誰しもが全ては楽しめない。運悪く自分にマッチしなかったのが流行りものだった。それだけのことだ。他をあたって、流行りの話題が出てもひらりと躱していけばいい。
マッチしなかったコンテンツを悪意的に見てあげつらうことはいくらでもできる。だが楽しんでいる人々を口汚く罵ることで自分が得られるものは何もない。
むしろ自分が楽しんでいるコンテンツをそうやってネチネチと突かれたら……と思うと、先回りしてどのコンテンツでも自ら率先して石橋を叩くノリで重箱の隅を突付いて渡り歩くことになる。
おはようございます、ピアノです。まどろみの時間に旋律が聴こえる気がする朝は良いですよね。いつから始まり、終わりなどないような泰然とした流れを耳で追っていると、やがて全てを手放しても大丈夫な気持ちになります。
爪の短い指に弾かれると、ましてや軽快なアレグロが続いたりすると、私の上を飛び跳ねる刺激が嬉しく心地よく、まるでつつかれただけで笑いが止まらくなった幼子のように体がホカホカするのです。旅立ちに際し、爪を整えてくれてありがとうございます。私はまた、短い爪のお母さまと共にお遊戯しましょう。その音が時折あなたに届いたりなんかすると、いいですね。
私達は兄弟です。お母さまはあなただけでなく、ピアノも可愛がってくださっていました。喪失は悲しい。向き合うにはしっかりした心と、それを支える暖かな手が必要です。私はあなたの手になりましょう。声もなく涙がこぼれる夜、名前を呼ばれて起きたような気がする朝、愛用品を整理する昼、私の旋律と共にあってください。
思い出せるとき、思い出したい思い出だけで十分です。音楽は、時としてその楽曲単体の印象で語られますが、本来は人と共にあればこそです。練習していたフレーズ、つい癖で動く指先、ひらりと落ちている楽譜のコピー。欠片それぞれが連れてくる一瞬の思い出を大切に。
いずれ、連綿と続く生物の時の流れの中で、あなたとお母さんが共に過ごせたことを発見し、それだけで十分満たされる日も来るでしょう。穏やかな眠りが再び訪れるその時まで、私の音が呼び寄せる思い出が、あなたを暖められますように。
勝手に話をつくったぞ。
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曲がるとそこは細い路地だった。
進むか引き返すか判断に迷うタイプの路地。
地元でも人気の「映画」という活劇映像ならば「ここからさらにピンチになりますよ」というわかりやすい記号として使われる、陰鬱でくすんだ細い道。
少女の頬を冷や汗が伝う。
進むべきか、引き返すべきか――。
しかしこのときに限っては、もうそれ以上迷う必要はなかった。
路地とは対象的に澄みわたった空から何かが音もなく降ってきて、またたく間に行く手を塞いだからだ。
「何か」とはいったい何だと問われれば「レンガ」としか答えようがない。
地球生活が短い少女にもそのくらいはわかる。
ただありえない現象を前にして脳内の常識回路みたいなものが、それを「レンガ」と認識するのを拒んでいる。
もうひとつ。
認識が遅れた理由、正確には認識の必要すら感じなかった理由。
路地を完全に封鎖したその壁には、無機質かつ巨大なコモンキャラクターでこう書かれていた。
GAME OVER
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もうひとつ。
認識が遅れた理由、正確には認識の必要すら感じなかった理由。
もう大丈夫。自分は助かったのだ。
「ありがとう、お父さん」
この「女が好きなAV女優アンケート」http://zerokkuma.hatenablog.com/entry/2018/01/21/020623をうけて、わたしとわたしの好きなAV女優さんの話をします。
ひらりささんは自分の名を模したアカウントで誠実にやってるのに対してわたしは増田でごめんなさい。
佐倉絆さんのこと凄い好きだけど邪な目でしか佐倉絆を見てないから「コイツ、佐倉絆で抜いてるんだ」と思われながら生きるのは自意識的に死にそうなくらい辛い、というかまあ厳密に抜いてはないんですけど…抜くという概念?性欲処理の作業を「抜く」の一言で片付けられる男性諸君が羨ましいです。まーーーえっちな目で見てるんだけどね!
わたしと佐倉絆さんとの出会いは、「徳井義美のチャックおろさせて〜や」という番組内の企画「手コキカラオケ〜90点以上とったら100万円〜」である。
最初は佐倉絆目的ではなく、挑戦者側に「某アイドルグループの手●くんに憧れている青年が出ている」という呟きをTwitterで友人が呟いていたのがすべてのはじまりであった。
わたしも友人も別に手●くんのファンというわけじゃないけど、彼はめちゃくちゃ面白いですよね。人間として面白い。男としての性的魅力は全く感じないけどとかく面白くていい奴だと思う。たまに見ると元気が出る。なんでモテるのか(よく噂は聞きます)1mmもわかんないけど、定期的に「手●見てえ」ってなる、不思議。
でだ、その手●くんを目指してるってんだからそれなりに歌が上手いかチャラくてちょっとかっこいいかって思うじゃん、すっげえブサイクだった。ブスだけど格好付けて手●風の発言をして、手●を模した髪型をして、手●みたいな歌い方をするわけよ、手コキされながら。イきながら手●くんの決めポーズすんの。最高に面白いじゃん。しかも「恋を知らない君へ」(割としっとりした曲)ってチョイスがもう最高すぎて腹わたちぎれた。歌詞的に切ない曲なのでこの曲を歌いながらきったなく喘いでる姿はファンの人が見たら絶対怒るだろうけどわたしはあの映像より笑える映像をその前もそのあとも見たことがない。(手●と手コキってなんか似てるね)
そうして定期的に見るようになった手●カラオケ、手●以外の挑戦者も「おもしれーなw」って見てるうちに運命の出会いが訪れるわけです。「よく見たら手コキしてる方の女の人めちゃくちゃカワイイ……!」って。
篠田麻里子似で、女子アナみたいに清楚なのになんかすっげえエロい。
しみけんのお墨付きだもんそりゃ上手いわ
必殺技「絆のしずく」というくらいあって、唾液の量が半端ないんですよ、とろっとろ。ちゅーしたら絶対気持ちいいの。
きったねえ歌声なんか耳に入らないくらい佐倉絆の「いっちゃうぅ?」しか聞こえなくなった やばい。大体の挑戦者より背が低いきずぽんは挑戦者の肩に腕を乗せながら上目遣いでじぃっと見つめて来るんだけど、それがまた最高なんだ。手コキ部分は映らないからカラオケしてる挑戦者ときずぽんが着衣でうっとり見つめ合う図が映るんだけど、そこだけ見るとほんと月9みたいなんだよね……まあ手コキしてるんですけど。
細い指が、甘い声が男性器を握りながらわたしの脳みそを握って溶かした。性的対象は男性のみのはずだったのにえっちな気分になると「佐倉絆」、こときずぽんのことしか考えられなくなってしまったのだ。
気づいたらネカフェできずぽんの動画を夜通し見ていた。終電逃して夜中にネカフェに入ったはずなのにまた終電間際だった。笑えねえ。
手コキ物はもちろん、上原亜衣ちゃんとの百合モノがマジで最高。っていうか百合プレイって言ってんだからきずぽんと亜衣ちゃんがひたすらヤッてんのがこっちは見たいんですよ、「百合だーーー!」って飛びついたのに時々何が悲しくてきずぽんと亜衣ちゃんが2人してオッさんのちんぽ舐めてんの見なきゃいけないんだ、羨ましい、そこ代わってくれ。
(もちろん手コキが見たくてAVを見てる時は男性ありきだけど、百合が見たくてAV見てる時は男性器求めてないじゃん…?いちごパフェが食べたいのにトンカツを出される胸焼け感……)
あと、個人的にあの真っ白なきずぽんが水着の形に日焼けしたやつ、意味わかんないけど意味わかんないくらいドツボですね……
で、だんだん見進めるうちにわたしは、気づいてしまったのだ。「きずぽんの手コキを見たいんじゃなくて、きずぽんに手コキして欲しいんだ」って。あの細い指で、ねっとりとした視線で、意外とサバサバした声で、きずぽんに触られたい、きずぽんの手で陥落したい。私が男だったらAV男優にならなくとも件の「手コキカラオケ」に出演エントリーすれば、100000分の1くらいの確率でその施しを受けることが出来るかもしれない。けれど、わたしには生えてないのだ、男性器が。いくら願ってもわたしはソレを持ち合わせない。その時点で佐倉絆に手コキをしてもらえる確率は0.000000001からゼロになるのだ。こんなに悲しいことはない。
世の中の男性という生き物は実にずるい。実際にきずぽんと触れ合うことができなくたってAV男優に自らを投影することが出来る。その時点で5割くらいはきずぽんとセックスしてるようなモンじゃないか。
ずるいずるい、超ずるい。短小だろうが包茎だろうがついてる時点で全部男性器なんだから、憎くて羨ましくて仕方ない。
お前もどうせ包茎だろ?とか思うことで日常の不条理を自己消化してきたのに(男性諸君からしたら実に理不尽な話だろうが、直接そういった表現で他人を罵ったことはないので許して欲しい)きずぽんに出会ってからは「でもこんな男でも“付いてる”んだもんなあ……」と悲しくなってしまうのだ。
そう、VRである。
http://www.dmm.co.jp/digital/videoa/-/detail/=/cid=84kmvr00001/
これね、マジすごい。VRが見れるビデオ店のVR機器は他の人の汗や精子の臭いがすると聞いて迷いあぐねた結果、このためにAmazonでVR装置買ってよかった……なんと、きずぽんとわたしが結合してるんですよ、きずぽんもわたしも付いてないのに。どこからともなく現れた空想ち●こがわたしときずぽんを繋いでるという限りなくファンタジーなフィクション。
でも、今までわたしがきずぽんに手コキして貰うためには知らないおじさんとか到底自己投影なんか出来そうにないマッチョな黒人とかその他諸々エクストラとにかく「わたしではない何か」を通さなくちゃいけなかったのに、VRきずぽんはわたしの知らないおじさんではなくて、「限りなくわたしに近い男」を見てくれるわけです。もう8割くらいわたしときずぽんがヤッてるじゃん。
わたしのファンタジー男性器を這うきずぽんの指。ファンタジー男性器にかかるきずぽんの唾液、そしてファンタジー男性器がきずぽんの小さな口の中へ………
実際は誰も居ないけれど、確かにわたしの隣に温もりはあった。今まで体験したどんなセックスよりもきずぽんとの擬似セックスは夢心地で、とろけるように甘い時間だった。
でも、やっぱりきずぽんの手コキをよりリアルに体感するために本物の男性器が欲しくて欲しくてたまらないのである。
VRは所詮VR、VR機器は汗だくで湿っていてもきずぽんが抜いてくれて華々しく散ったハズの証拠が現実には存在しない。だからわたしは佐倉絆でえっちな気持ちになったとき専用のわたしの男性器を諦めない。
もし、天変地異が起こったり白い生物と魔法少女の契約を交わして男性器が生えてきたら、わたしは金髪に染めて手●くんのソロ曲「I’m coming」(すげえやばい)を歌ってきずぽんとにっこり見つめ合いながら手コキカラオケするのだ。絶対100万円獲ってやるわ。
abemaTVで15日から、ドラえもん映画の大長編一挙放送をやっていて
https://abema.tv/search/future?q=%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93
パラレル西遊記、竜の騎士、のび太の恐竜、魔界大冒険、宇宙開拓史、日本誕生と全部見てしまった
・ドラえもん一行、敵に吊るされすぎ
・進路は北北西を取りすぎ
・ドラミに助けられすぎ
そして「道具は普段からきちんと整理しておき、使い終わったらきちんと片づける」ことの重要性を
赤ん坊が無事「子供」になるまでの1~2年は、一人の大人が職も家事も投げ打つほど生活を犠牲にするということはもはや半ば常識だが、
さらに子供が大人になる思春期にも、ザーッと音がするくらい300歩くらい大人が譲って、本当に一人分の席を開けてやらなきゃいけないんだとしみじみ思う。
賢くて、小学生中学生を抑圧されたまま過ごしていられた子ほど、親はそのまま行けると勘違いしがちだが。
身軽に、ひらりと、避けて、またはゆずってあげなければいけない。
親のどちらとも違う第三の大人がそこにできあがりつつある。
第三の大人はいままでからするとカツアゲかとおもうくらいまた急にお金や時間を持っていく。
非常にタイミングのわかりづらい、面倒な、そしてお金のかかる時期がきたんだなとようやくおもえた。
もっと直線的で上り坂をゆっくり歩けばよいとかとおもったら、急に崖を登るようにむずかしいんだ。
家康はお子さん育てたことがなかったのかね、いや元服したらもう大人だったのだろう。
さておき、子供が大変手がかかる時期とその時必要な労働やお金の量が子によって違って予測できないのは、本当にこまったことだ。