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2024-03-31

◎ 外壁が薄い市役所

= 台風で稲が倒れた田

σ 葉っぱがしおれてる広葉樹林

2022-06-12

静岡間伐間伐じゃない件

これ

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/news.yahoo.co.jp/articles/3a1987d18442c5c94ba14e29c6ea166fab1bc42b

報道も含めて適当批判が多いので素人解説する。

今回の作業目的

まず第一に多分多くの人がイメージする間伐目的とした事業じゃない。

先行するこの記事によると、これは静岡県の「森の力再生事業」によって実施されている。

https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1053943.html

事業はこのようなものだ。

http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-610/mirai/mirai-index.html

要綱から事業の内容を見てみると、

第5 事業内容には次のようにある。

(1) 人工林再生整備事業

第7(1)に定める対象森林のうち荒廃した森林について、針葉樹広葉樹との混交林へ誘導するための森林の整備であって、伊豆地域森林計画富士地域森林計画静岡地域森林計画及び天竜地域森林計画(以下「地域森林計画」という。)に定める「特に針広混交林化を推進すべき森林」の整備・保全の方向に即した整備並びに簡易な道及び構造物の設置等を実施する。

とある。((2)は竹藪の話。)

 「間伐」という言葉でよくイメージされる、質の悪い木を選んで切っていい木をよく生育させるとか、間引き的に切って林床を明るくするとかそういう話ではない。報道でも触れられたように「森林公共的な責任が果たせていない」植林地を広葉樹林混じりの山にすることで、山の機能回復させようという事業だ。

 間伐をしないと木の下が裸地化したりして山の水源涵養機能が落ちたり生息する生物が減ったりといいことがないのだが、補助があっても経済的に見合わず間伐できないところが今問題になっている。そういう山をもう植林を減らしてしまって広葉樹混じりの状態にすることで、山の機能を低コスト回復させようという考え方だ。静岡県も他県と同様に間伐補助がある(http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-630/zorin/hojo.html)が、その事業では間伐ができなかったのだろう。私の県でも、少々の補助をもらって間伐しても割に合わないという声は聞こえる。

 国の森林総合研究所が研究結果からまとめた「広葉樹林化ハンドブック」を出しているように、この方向性全国的ものだ。

http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/bl_pro_1/

 なので「間伐」じゃないという批判についてはそりゃ間伐事業じゃないよ、という話になる。しかし、報道の感じでは権利者の人は以前やった間伐事業イメージを今回の事業にも持っている。

 報道に写っている書類は「森の力再生事業実施に関する協定書」だと思われるが、その最初にはこのように書いてある。(R3年版様式)

http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-610/mirai/documents/jisshiyoukou_youshiki.pdf

第1条 静岡県 農林事務所長 (以下「甲」という。)、権利者 (以下「乙」という。)及び整備者 (団体名称及び代表者名)(以下「丙」という。) は、第3条に掲げる森林針葉樹及び広葉樹の混交林又は多様性のある広葉樹林等へ誘導することにより、土砂災害の防止、水源の涵養など森林が発揮すべき公益機能回復させるため、その事業の速やかな実施事業実施後の適正な管理三者が協力して確保することを目的に、次の条項により協定を締結する。

また、協定書の2枚目にはこのように書いてある。

2 前項の丙が実施する整備の内容は、次に掲げる整備であって、要綱等に定める整備計画書に基づくものとする。

(1) 環境伐(広葉樹自然発生目的に、対象森林のおおむね40%にあたる本数のスギヒノキの人工林を伐採するものをいう)

(2) 整理伐(適正な立木密度への誘導や樹種の転換を図るために、竹林広葉樹林等を伐採するものをいう)

(3) 倒木又は倒木の恐れのある立木の処理

(4) 伐採木竹等の林地外への流出を防止するための集積、破砕、搬出等の林内の整理

(5) 広葉樹の植栽

(6) 土砂の流出や土壌の侵食を防止するための簡易な木竹製構造物の設置

(7) 整備作業安全性効率性を確保するための簡易な作業路の設置

(8) その他、知事必要と認めるもの

混交林または広葉樹林に誘導するための事業ですよと最初にきっちり書いてあり、作業内容としても間伐ではなく40%伐採して広葉樹自然発生を目指すことが書いてあるわけだが、書いてあってもご理解いただくのは森林組合の役割だろう。

実際、その後の調査でも説明不足が問題視されている。

https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1073631.html

権利者の人は間伐でないと主張しているので報道もその論調だ。荒らし放置するくらいならいっそ山での針葉樹生産を縮小しませんか、という重要な転換の話なので、丁寧な説明がとても重要だろう。

(なお、今回のような手法を帯状間伐と主張する事例もあるようで、その場合はこんなもの間伐じゃない、という議論になる。)

手法の適切性

さて、事業としてこの実施手法は適切だろうか。

 報道にあるように、県は15m幅の伐採提案している。帯状の伐採自体は全面の皆伐を避けつつ搬出を容易にするために、次にまた針葉樹植林する場合でも使われている手法だ。帯状伐採とか帯状皆伐とか言う。形状に注目しなければ小面積皆伐一種と言えるだろう。また、目的によって誘導伐、複層林化を目指す複層伐とか、言い方はいろいろある。私の行動範囲内でも50m幅で皆伐し50m幅に植林を残した縞々の斜面が見えるところがある(Googleマップ航空写真で見るとよく目立つ。)

森の力再生事業の要領にも、このように記載されている。

(ア)環境

広葉樹自然発生目的に行う、対象森林のおおむね 40%にあたる本数のスギ

ヒノキ伐採をいう。(略) 伐採手法は、全伐採本数の8割以上を列状又は群状に伐採するものとし、それらを補完するために単木的な伐採施工することができるものとする。 列状伐採場合の1列当たりの伐採幅(伐採区域の短方向の両端に位置する残 存立木列の樹幹間の最短距離)の基準は、おおむね5m以上かつ残存林分の平均

樹高のおおむね2倍未満を原則とする。(後略)

なお、樹高の2倍未満というのは帯状の伐採に関する資料でよく見られる。広すぎると全面的皆伐に近くなるが、狭すぎると日当たりが悪く次の木が育ちにくくなる。

 今回の件について、50m幅のところは事業基準を満たしていないと言える。しかし「ゴルフ場のような」帯状の伐採自体計画通りだ。

 今回の伐採手法に対する批判は、混交林化という目的に対して、列状間伐などによる強度間伐などと比較されるべきものだ。県の判断には動物被害が大きいことを挙げており伐採後をシカネットで囲っていたが、それらの対策やすさなども考慮に入れる必要があるだろう。

木を多く切ったこ自体に対する批判はあたらないと思う。広葉樹林化を目指すならどこかで切らなければならない。災害発生リスクとしては確かに帯状伐採でも表層水が増え災害リスクが多少なりとも上がることがわかっているが、じゃあいつ切るんだ、間伐もできない山を放置しておくのか、それとも個人財産を育てるための間伐さらなる補助をしていくのか、などの論点があろう。

(素人考えだが伐採部分より残った植林の幅の狭さが気にかかる。50m幅の問題といい、区画取りがちゃんとできていたのだろうか。)

さら技術的な論点

 今回の報道で多く見かけた批判はこのように的外れだが、もう1つ重要論点がある。それはこれで本当に広葉樹への更新ができるのかという技術的な疑問だ。(そもそも広葉樹林化で本来目的を達成するのかというさらに難しい論点もある。)

 ここまでは資料を読めばわかる話だが、この先は議論がある部分に分け入るので、2つのことをご了承いただきたい。まず私は林業に関して門前小僧どころか出入りの三河屋程度の知識しかない。もう1つは、このように強引にでも広葉樹林化を目指している背景には既存の補助で間伐できず、ただでさえ貧弱な下層植生が今度は鹿に食われて裸地化するような山がたくさんあって、とにかくなんとかしないといけない状況があるということだ。

 帯状に伐採して跡地に再び木を植える場合は、幅に応じて明るさの問題はあるものの、皆伐跡地に植えるのと同じように考えることができる。これまでの林業のサイクルに近い。全面的皆伐してしまうよりは山としての機能もましだろう。広葉樹林化を目指す場合でも、適切な種類の木を植えるとその木が育ってくる。問題は何も栽植せず自然に任せる場合だ。今回の写真を見ても、これで事業完了後とすれば新たな栽植はせず鹿ネットで覆うことで終了のようだ。

 スギヒノキに覆われている期間が長くなるほど埋没していたタネの発芽は期待できなくなる。風で飛んだり鳥に運ばれたりするタネ供給源との距離問題もある。ササなどが地表を覆って高木が育たなくなってしまうこともある。また、これは栽植する場合も同じなのだが、まだ弱い木を鹿がかじってだめにしてしまうことはとてもよくある。先ほどの広葉樹林化ハンドブックでも、条件の見極めについて記述されているし、他の混交林化、広葉樹林化の資料でも、人工的な植栽前提、あるいは十分な量のタネ供給源となる木や稚樹の存在を前提にしたものが多い。

 しか静岡県による皆伐後の天然更新についての調査結果では、かなり楽観的だ。再造放棄地(植林を収穫して全て伐採した後に何も植えていないところ)を調査した結果、県内の多くの場所で天然更新が順調に進むと結論づけている。

https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-850/ar613.pdf

静岡県のR4年度の森林計画書では「天然力を活用した」混交林への誘導が整備保全方向性として挙げられている。難しそうなところは別途「植栽によらなければ適確な更新が困難な森林」として指定するようだ。

 天然更新のできるできないについて、素人が今回ざっと資料を読んだ限りでは可能な条件はかなり限られるように思えたが、しかしこの静岡調査に基づくと、鹿ネットだけで天然更新を目指すなんて無謀だとも言い切れない。歯切れの悪い終わり方で申し訳ないが、この文章目的は、説明不足の報道に対してより詳しく状況を説明することだ。正直今回導入された手法の良し悪しは現地を見た専門家でないとわからないだろうと思う。

 自分は6/8の記事でこの件を知ったが、県が獣害状況などから15m幅の伐採手法として提案し、それ自体は間違いではないような対応であることからこれは「間伐事業ではないのでは、と疑問を持った。一次産業に関しては誤解や考え方の違いによる非難が発生しがちなので、素人自分にも誤解とわかる部分は書いた。そして検索して分かったのだが、プロ解説しても考え方の違いが発生するだろうなとも感じた。混交林化の是非そのものにも様々な考え方の違いがある。

 また、感情面では、植林あくま経営主の持ち物なので、本来きちんと管理する責任は持ち主にあるんだという気持ちと、そんな不利益があるから山なんか絶対相続したくないんだという相反する気持ちも、田舎者なので持っている。

 これは公共機能があるもの個人が所有することの問題とも繋がっている。

 話が広がってしまったが、ともかく、「これは間伐ではない」という単純な話ではないのだ、ということを理解してほしい。

2019-03-10

anond:20190310083909

杉は成長が早いとされているから、戦後復興木材需要を読み間違えて広葉樹林を杉林に変えてしまたからな

これから杉林が原因となる土砂災害も増えることだろう

2019-01-09

anond:20190109135831

山は植生によって割と違う

端的な例を挙げれば杉林の匂い広葉樹林匂いは明らかに違う

まあ杉は本来精油が取れるくらい香り高いので、本当に極端な例だが

2018-10-10

バカマツタケの"完全人工栽培"は偉業なのか

先日、加古川肥料メーカー多木化学バカマツタケ(Tricholoma bakamatsutake)の完全人工栽培成功を発表した。それを森林ジャーナリスト田中淳夫氏がyahoo!ニュースで取り上げた記事は、多数のブクマを集め話題さらった。

http://archive.is/fdyLb 

ただ記事の内容には不正確な情報や、やや解説が不十分と感じる点があったので補足したいと思う。なお増田は単なるきのこ愛好家に過ぎず本稿は信憑性に乏しいが、ブクマカのきのこへの興味と深い理解一助となれば幸いだ。

冗長になってしまったので、概要だけ知りたい方や長文が苦手な方は、先に下部の【まとめ】を読まれることを推奨する。

以下該当記事の一部を引用するかたちで解説

バカマツタケマツタケの近縁種。名前名前だけに、マツタケより劣るように思いがちだが、実は姿もよく似ているうえに味と香りこちらの方が美味しくて強いと言われるキノコである

マツタケよりも香りが強いというのは一般に言われるが、マツタケよりも美味しいという話は聞いたことがない。野生下ではマツタケよりも相当に貧弱で、発生時期が早く暖かいこと、一般湿度の高い広葉樹林に生えることからマツタケよりも柔く品質劣化がはやい(一般的にきのこ寒冷地・痩せ地に生えるほど日持ちが良く高品質ものを得やすい)ことが関係すると思われる。近縁で姿がよく似ているというのは本当で、素人目には見分けがつかない。増田にも発生場所情報なしに個体だけで同定できる自信はない。

別名がサマツ早松であるように、マツタケより早く8~9月に発生することから名に「バカ」がついてしまった。

バカマツタケサマツと呼ぶ地域は確かにあるらしい。しかし必ずしもサマツバカマツタケではない。きのこ地方名は極めて多様で曖昧世界だ。その証拠に「サマツ」といっても梅雨時期に少量発生するマツタケを指すこともあれば、モミタケオオモミタケ等を指す地域もあるようだ。

マツタケの人工栽培がなかなか成功しない中、バカマツタケの方が環境適応やすいか栽培もしやすいのではないかと注目する研究者はいた。実は昨年には奈良県森林技術センターが、人工培養の菌を自然にある樹木に植え付けて発生させることに成功している。

『人工培養の菌を自然にある樹木に植え付けて』という表現は正確ではない。菌に感染した苗木を人工的に作り出し植樹することで自然下で発生させた、とするのが正しい。既に自然化で定着している樹木に植菌を施すのと、無菌状態の苗木に植菌するのとでは似て非なる技術だ。(ところで同様の研究マツタケでも行われており、無菌培養の松苗木の感染には成功しているものの、植樹後のマツタケ発生については再現性に乏しい。理由としては自然環境化においてマツタケ菌が他の害菌に負けてしまうこと、マツタケの発生にはまとまった菌糸量とそれを支える大きさの松が必要なことが挙げられる。例えば自然下でマツタケが生えるためには一般20年生程度の松が必要とされる。)補足になるが、奈良県森林技術センターバカマツタケ栽培研究農水省委託事業で、2015年より森林総合研究所(国立)との協働で進めている。要するに国策が3年の歳月を経て文字通り実を結んだかたちだ。今年の2月頃に、はてブでも話題にのぼった。しかし本件とは全く関係のない別個の案件であり、おそらく情報の共有などもされていなかっただろう。奈良県森林技術センターが松の苗木を利用するのに対し、多木化学は菌床を用いた完全人工栽培に取り組んだ。研究テーマアプローチも全く異なり、時期も多木化学のほうが先行している。

これがバカマツタケ栽培の第1号で、今年も継続発生させて実用化に一歩近づけた。ところが多木化学は(中略)木クズなどによる人工培地(菌床)で培養から生育までを室内環境で完結させたのだ。これは画期的なことで、キノコ栽培常識を覆す大発明かもしれない。

菌根菌(樹木との共生関係を結ぶ集団)とされるバカマツタケで『人工培地(菌床)で培養から生育までを室内環境で完結』、つまり”完全人工栽培"に成功したというのは実に画期的なことである。この成果は偉業と言っても差し支えないものであると思う。三重大学の菌学者白水先生も、

とその成果を讃えている。

しかし本文にある『キノコ栽培常識を覆す大発明』というのは誇張にあたる可能性が極めて高い。なぜなら「菌根菌の完全人工栽培成功」という点においては既に先行研究があり、実はとうに商品化もされているのだから。例えばホンシメジの人工栽培がこれにあたる。

とくにマツタケ類は、植物との共生必須と考えられてきた。これまでマツタケ菌糸の培養成功した例はいくつかある(私もその度取材に行って、いよいよマツタケ栽培成功か、と期待していたのだが……)が、子実体(傘のある姿のキノコ)を出すことに成功していなかった。だが多木化学は、とうとう菌糸から実体を出させるシグナルを見つけたのである。この研究成果は、これまでの定説を破るものであり、学術上も大きな成果だろう。

繰り返しになるが、多木化学の成果が学術上も大きな意味を持つ可能性は高い。しかし、その成果がどのレベルかという点については当該記事では説明不十分なので、詳しく補足する必要がある。一般きのこ栽培はざっくり以下の工程をたどる。

a. 優良品種の選定・組織分離

b. 菌糸の培養

c. 原基形成

d. 原基の成長肥大

e. 子実体きのこ)の発生

ごく簡単に一連の流れを説明する。はじめに野生のきのこをたくさん採ってきて、それらの中から有望そうな株の組織(胞子ではない)を切り取って培養する。具体的には寒天培地というデンプンなどの栄養素を添加し固めたものを使う。きのこ組織を切り取り培地に置くだけで(コンタミを防ぐ必要はあるものの)、比較的容易にクローンである「菌糸体」を得ることができる。無事目的の菌糸体が得られたら、それらを培養して増やす必要がある。従来は木くずの他に、米ぬか、フスマなどを添加し水を加え固めたもの(=菌床)を用いる。菌糸体は、適切な温度、水分、光などある条件が重なると原基(きのこの基)を形成する。原基は一般に、低温、水分供給、切断などの刺激により成長をはじめ、十分な菌糸体の量と栄養供給を伴って肥大し、きのこの発生に至る。

ここで問題になるのは、b. 菌糸の培養、c. 原基形成、d. 原基の成長肥大という三つの工程それぞれに、全く違ったメカニズム存在することであるマツタケを例にとると、これまで少なくとも半世紀以上もの研究蓄積(野外での観察研究の記録を遡ると実に70年以上)がある中で、c,dについては再現性に乏しく、bについてもまともな成果はあがっていない。マツタケ栽培の難しさにして最大の課題は実はここ《b. 菌糸の培養》にある。とにかく菌糸の成長が遅い上に、どのようなメカニズムで菌糸が栄養素を取り入れ増殖するのかということがほとんど未解明なままなのである

理由は当該記事にあるとおり、マツタケ樹木共生関係を結ぶ「菌根菌」であることが大きい。マツタケ菌糸の生育には生きている樹木必要で、実験室での再現ほとんど不可能といっていい。それではなぜバカマツタケは完全人工栽培可能だったのか。

マツタケなどの樹木共生する菌根菌に対し、シイタケナメコなど、倒木や落ち葉などを分解し、栄養源とする菌類は「腐生菌」と呼ばれる。腐生菌の多くは菌床による栽培可能で、多くが一般に出回っているのは既知のとおりである。実は菌根菌は、腐生菌が進化過程樹木共生する力を獲得し、腐生的な能力を失った集団だと考えられている。ところが菌根菌の中には、完全に腐生的な能力を失っておらず、腐生と共生、いわば両刀使いが存在するのである。その代表ホンシメジであるホンシメジは「香り松茸、味しめじ」と言われるように、我が国における代表的な食用である。菌根菌とされるホンシメジ栽培は、マツタケ同様に長らく不可能と考えられてきた。しか系統により極めて強力な腐生的な能力を備えるもの発見された(研究により、これまで同種と考えられてきた本種が実は様々な系統もしくは別種に分けられることがわかってきた)。1999年タカラバイオなどにより菌床による完全人工栽培法が確立され、その後商品化もされており、少量ながら現在一般流通している。

多木化学バカマツタケ栽培は菌床を用いた完全栽培なので、上記ホンシメジ栽培成功と同様である。つまり、本件はバカマツタケの中から腐生的な能力を持つ系統を選定し、培養から実体を発生させるまで成功したということだ。リリースにあるとおり、今後は栽培の安定化と供給体制の構築が図られ、数年後にバカマツタケ食卓に並ぶことの実現性は極めて高い。それではマツタケ栽培への応用についてはどうか。

勘の良い方には察しがつくと思うが、前述のc〜eの工程については応用が効く可能性が高い。他のきのこ栽培でも成功しているように、十分な菌糸体と栄養を確保することさえできれば、原基形成〜子実体に至るまで管理可能なことを初めてマツタケ類においても示したことは大きい。ただし、最大の課題である《b. 菌糸の培養》については、ほとんど応用が効かない可能性が高い。なぜならマツタケにおいては既に膨大な先行研究があり、当然ホンシメジバカマツタケ同様に”両刀使い”が存在する可能性も、その系統選びも、菌糸培養を促進する成分や菌糸の栄養源についても、少なくともバカマツタケよりは遥かに詳しく調べられているかである。それをもってしてもまともな菌糸培養に至っていないのが現状なのだ

つまるところ、多木化学による本研究の主な成果は以下の二点にまとめられる。

繰り返すがこれらが偉大な成果であことに疑いの余地はない。一方でマツタケや他の菌根菌の人工栽培を実現するには、それぞれの種類において腐生菌的能力もつ系統の発掘と培養法の確立必須となる。その意味において本研究の応用範囲限定的となる。田中淳夫氏は今回の研究結果により、さも菌根菌の栄養吸収のメカニズムが明らかにされ、あらゆる菌根菌の人工栽培可能になるかのような書き方をしているが(あるいは本当にそう思っているのかもしれない)、残念ながらそうではないことはここまで読んでくださった聡明ブクマカ殿にはご理解いただけたかと思う。

菌床栽培なら、植物共生させないので培養期間が短く、室内の環境を調整することで季節を問わず生産できる。また室内栽培から虫の被害にあわず収穫時も混入の心配がない、収穫も簡単……などのメリットがある。

逆にデメリットを挙げるとすれば、野生のものとは全く異なる味わいと食感になることである。つまるところ、野生の品と菌床栽培のものとでは全く別物と考えるべきである養殖ブリと天然ブリの味わいが全く異なるように(それでも近年の養殖技術進化は素晴らしく、季節によっては天然物を凌駕するものさえある)、それぞれの美味しさと楽しみ方があると増田は考える。今回の成果によりバカマツタケ普通に食べられるようになったら嬉しいし、美味しければ普及すると思う。ただし、仮にマツタケの完全人工栽培確立されたところで、天然松茸価値のものは今後も揺るぎのないものである消費者がどう捉えるかはさておき)。

菌根菌のキノコの中には、マツタケ類だけでなく、トリュフポルチーニホンシメジタマゴタケなど高級キノコが多い。今回の成功が、これらの人工栽培技術もつながるかもしれない。

トリュフポルチーニは、日本におけるマツタケ同様にヨーロッパで盛んに研究がなされているが、今のところ菌床での栽培成功したという話は聞かない。ホンシメジは前述のとおり既に栽培法が確立されており既に商品化もされている。

これらの菌根菌の人工栽培可能にするには、ひとえに”両刀使い”の系統発見と、それらの培養方法確立である。ちなみに本家マツタケにも、実は”両刀使い”の存在示唆されており、引き続き研究が進められている。また、マツタケ類は世界中に似たような種が多数存在しており、マツタケ(Tricholoma matsutake)の中にも、例えば中国の山奥には広葉樹共生する系統があり、更にはそれらが日本ナラやカシと共生関係を結ぶことがわかっていたりもする。種の中にも多様性があり、それらをしらみつぶしに調べていけば、そのうち栽培可能ものに出くわさないとも限らない。その点はトリュフだろうがポルチーニだろうが同様である。ただし、その研究がどれほど途方もなく根気のいる仕事なのは間違いない(ちなみにトリュフポルチーニ国産種が知られており、積極的に狙うマニアが相当数いる)。ところで、遺伝子組み換え技術により、これらの菌根菌に腐生菌的能力を付加することも可能とする研究者もおり、そのうち遺伝子組み換えマツタケの完全人工栽培実験レベル成功する日も来るかもしれない。

まとめ

参考文献

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20181006-00099530/

http://fs.magicalir.net/tdnet/2018/4025/20181003413938.pdf

http://www.kinokkusu.co.jp/etc/09zatugaku/mame/mame04-3.html

https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/bulletin/424/documents/424-1.pdf

http://www.jsmrs.jp/journal/No31_2/No31_2_167.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjom/50/2/50_jjom.H20-07/_pdf/-char/ja

トラバブコメに反応

見た目 味も 香りも 同等以上なら 偉業

あくまで野生産同士の比較なら、やや下位互換という感じではないでしょうかね。栽培バカマツタケは食べてないのでわかりませんが、うまくすればそこそこ美味しいものができる可能性はあるかなと。ただ、マツタケって単体で食ってそんなにうまいものじゃないと思うので、一般家庭での調理には手を焼く気がします。炊き込みご飯するにも炊飯器臭くなるしね。料亭とかでマツタケ代用品として普及する可能性はあるかもしれない。<

2018-07-16

地盤レイヤー

先日、土木技術は「技術の中の技術」と呼ばれると知って国土計画歴史とかネットサフしてて

国交省の「国土グランドデザインスライドの見ながらさほど関係ないことを思いついて、備忘録

地盤ってそもそも多重レイヤーで出来てて

そこに埋まってる絶滅生物は超えられなかったレイヤーで出来てる

んで地盤の上で仮初めの繁栄を築き、新たなレイヤーで濾されるというのが続く

どうして繁栄が築けるかというと時間世代交代が上手く釣り合ってたから。

それを保証せずに新レイヤーかけまくると真っ白更地化する

から、究極目的を据えて AかつBかつCかつ…(A∧B∧C…)ってレイヤーはやめて

AまたはBまたはCまたは…(A∨B∨C…)ってレイヤーにしよう

これがダイバーシティ云々多様性云々なんだろうと思ってる

ただし、更地の上にやっても動物園or植物園で、金食い虫&温室なだけ

あくま地盤の上にかけるレイヤーだし時間世代交代保証無視できない

植生(針葉樹林帯・広葉樹林帯・照葉樹林帯)境界線の多さや複雑さこそが多様性

国土計画ってそういう地盤の方をどうこうするもんだと思ってたなぁ

2014-03-19

花粉症について、杉や檜を切ればいいじゃないという人がいるが・・・

花粉症が嫌だから、杉や檜を切って、日本本来の植生に戻せばいいっていう人がいるんだけど、

まぁかくいう私も花粉症なんでね。

気持ちも分からんでもないけど、

そういうこと言っちゃう発想って、杉や檜しか植えなかった我々の先人の馬鹿どもと同じレベルの発想なんで、

ジョークでも気をつけてねという真面目な気持ち。

まぁ大学では環境問題が専門でやってたんで、こういう短絡的考え方を見過ごせないんですがね。

切る?

切ると更地になるけど、植生が回復するには最低でも50年くらいはかかるが、

その間以前の植生が担ってきた水源涵養機能はどうするか?

洪水が起き放題になるよ?あと、水不足も起こるだろうねぇ。

切った木はどうするの?

国内需要があるか?ない。

しろ売り出すと市場価格下がってコスト回収できない。

海外に売る?それも需要ある?あと輸送コスト

やす二酸化炭素温暖化だよ?

埋める?どこに?

あと、どのくらいの本数か概算できる?

みんな大好きフェルミ推定ですよ。

日本本来の植生に戻すコストは?

みんながイメージする広葉樹林って、実は人が管理してるからこそできている植生なのですが、

林業従事者やそういう植生のそばに住む人って過疎で少なくなってるよね。

まり管理するコストが払えない社会的状況にあるわけだけど、どうする?

っていうね。結論として、われわれは腐海とともに生きるしかないんですよ。

科学的な下地のない短絡的な感想はともすると害悪しかないことを学生時代に嫌というほど学んだので、

ついこういう話には突っかかっちゃうんですが、

すいません。結論から言うと生態学学んで出直してきてください。もしくは、花粉とともに生きよう。

まぁ細かいとこ間違ってるかもしれないけど、

言いたかったことは、そんなに単純じゃないよっていうこと。

もし、ちゃんと考えた方法があるなら議論したいですね。

土鬼僧会にはひとりの生態学者もいなかったのか (風の谷のナウシカより)

 
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