はてなキーワード: ハッピーワールドとは
Bang Dream! ガールズバンドパーティー面白いですよね。
プレイ心地の良い音ゲー、豊富なカバー曲、飽きのこない協力ライブ。
中でも私はストーリーを推したい。個性的な7つのバンドのメンバー1人1人に夢や悩みが有り、イベントを経る毎に成長していくからテキストを読むたびにキャラクターを好きになっていく。
ただでさえメインスト・バンドスト・イベストが上質なのに、音ゲープレイ後の掛け合いにもキャラの組み合わせによってパターンが有ったりしてバンドリはとにかくテキストが多い。
バンドストーリーで女と女の会話を読むために街中で女と女の会話を聞いてバンド経験値を上げたり、
メインストーリーで女と女の会話を読むためにライブで女と女の掛け合いを聞いたりもう何をするにも女と女の会話を浴びろ!!!っていうのがBang Dream! ガールズバンドパーティー(以下、ガルパ)っていうゲーム。
で、ストーリーの量・質が良いだけでなく更に幅が有る。キャラ同士の関係がバンド内で収まらずにバンド間で意外な関係性が有ったりする。
例えばRoseliaのGt.氷川 紗夜とPastel*PalettesのGt.氷川日菜は双子の姉妹だし、Pastel*PalettesのBa.白鷺 千聖とハロー!ハッピーワールドのGt.瀬田 薫は幼なじみということがメインストーリーで明かされる。
ガルパのイベントには大きく分けて箱イベと混合イベの2種類が有って、箱イベではバンド内の人間関係が、混合イベではバンド間の人間関係が掘り下げられる。
この混合イベで、前述した氷川姉妹の姉・紗夜が最初は天才肌な妹・日菜に嫉妬していたのが徐々に打ち解けていく様子が書かれたり、
みんなの王子様・瀬田薫が千聖に昔のあだ名で呼ばれて照れてしまうみたいなシーンが出てきたりしてたまらん。
私がハマる組み合わせってどのジャンルでもグループとグループの間を垣根を超えた越境なやつので、そこの掘り下げが深いガルパは理想的なジャンルだった。
そんな関係性天国とも言えるガルパの男版・アルゴナビスプロジェクトの存在を知った時、私確信したんです。これは派遣とるぞって。腐女子って関係性好きだから。
昨年春のアニメ版はちょっとご都合主義が強かったけど、まぁガルパもアニメ1期よりアプリのストーリーの方が面白いし。と、勝負はアプリが出てからだと思っていた。
そして今年1月。ついに迎えたアルゴナビスのアプリ版・アルゴナビス from BanG Drem! AA side(以下、ダブエス)のリリース。
リリース初日から各5バンドの箱イベと現在開催中のイベントをプレイして、評価する要素は揃ったかなと思ったからここに書き捨てる。
私が期待していたのはガルパの男版だから、ガルパの好きな要素と比較しながらの感想になります。
サービス開始から3ヶ月も経ってないからしょうがないけど、まだ曲数が少なくてイベント走ってるとしんどい。
プレイモードは3Dモデルのキャラたちが実際に演奏する3Dモードと、任意のカード絵を背景にスキル発動のたびに掛け合いとカットインが入る2Dモードの2種類がある。
サービス開始までは3Dモードばかりが紹介されてて、なんとしても掛け合いを実装してほしかった私としては不安だったけど、蓋をあけたら2Dモードで掛け合いをしてくれててホッとした。
良い。各バンドにそれぞれ別のバンドが楽曲提供してくれてるそうですね。主役バンドのArgonavisはUnison Square Gardenとか、ヴィジュアル系バンドのFantome Irisはシドとか。
提供楽曲以外の曲も良い。私はArgonavisのAA side、風神 RIZING!のランガンラン、εpsilonΦのPlay With Youとかが好き。
ガルパやプロセカをプレイした後だとどうしても見劣りしてしまう。
プレイしている時にノーツをタップさせられてる感というか…なんか爽快感が無いし、判定してもらえるか不安になる。
1つはガルパはノーツが長方形なのに対してダブエスはダイヤ型なこと、
もう1つは盤面が心なしか狭いことが原因な気がするのですがどうでしょう。
盤面の狭さについてはちゃんと測ったわけじゃなくて印象で言ってるから、同じ狭さだったらごめんだけど。
あと、スライドノーツに曲がりの判定を入れていて、それがプレイしにくいような、慣れてきたら楽しいような。
譜面もまだ曲数少ないのも有ってプレイしてて楽しい譜面っていうのはそんなに無いけど、Fantome IrisのInto the Flameは楽しい。
良い。私がプレイしているソシャゲの幅が狭いというのもあるけど、男性バンドのカバーが中心なのが新鮮で良い。
ここが一番他の音ゲーと差別化できるところだと思うから、他のゲームには無いようなカバー曲たくさん実装して新規ユーザに繋げてほしいですね。
GLAYの誘惑とかブルハの情熱の薔薇をプレイ出来る音ゲーを他に知らないので楽しんでプレイしてる。
個人的には社畜キャラがいるFantome Irisに筋肉少女帯の労働者Mをカバーしてほしいですね。
私は曲のランダム選択目的で協力ライブをしてるから、今のダブエスで実装しても曲数が少なくてあんまランダム性なさそう。だから気長に待ちます。
あと、後述するイベントのFeverタイムが5分制限だから、もし協力ライブが実装されてもマッチング待ちの時間が惜しくてFevar中は単独ライブしそう。
内容は良い。全体的に量が少ないように感じる。ストーリーの種類別に見ていきたい。
ストーリーを構成するキャラクターだけど、これも良い。個人的には社畜として虐げられる姿が身につまされる黒川燈と、悪意の塊・宇治川紫夕が好き。
ダブエスの5バンドはそれぞれ出身地が違うってことで私が好きな越境の関係性はあるのか不安に思ってたけど、Fantome IrisのVo.フェリクスとεpsilonΦのVo.紫夕の間で過去に何か有りそうな会話をしてたりして期待できるんじゃないかと。
良い。北海道・名古屋・京都・長崎で活躍する5バンドが東京のフェスに呼ばれて、優勝目指して切磋琢磨する話。
まだ完結してなくて量を比較しようが無いので、質はガルパと同じくらい良い、という評価をしたい。
これもメインストーリーと同じく完結してないので量は比較せず、質はガルパと同じくらい良いという評価。
ガルパとダブエス、リアルバンドより非リアバンドのストーリーの方が個人的には面白いという謎の共通点が有る。
εpsilonΦの3章に痺れて思わずサブスク課金しちゃった。
各楽曲が作られた背景とかが語られて曲に愛着が持てるし、テキスト量も多いしで、間違いなくダブエスにしかない長所。手放しで良いと言える。
質は良い。良いんだけど、量が少ない。
ガルパが最低レア度★2でレベ1と最高レベの2種類ストーリーを用意しているのに対して、
ダブエスは最低レア度は★3からで更に種類も特訓後の1種類のみ。
ストーリーの数がそもそも少ない上に、中身の量もガルパは50前後のメッセージウィンドウを送るのに対し、ダブエスは15前後のみと1/3以下の量だった。
量・質共にそこそこという印象。
ガルパはマップを開くと施設という施設のアイコンにキャラクターの顔アイコンを表示してこれでもか!これでもか!と街中でのキャラクター同士の会話を読ませてこようとする。
それどころか、数年前からラウンジというライブハウスのラウンジで延々と会話を自動送りする機能まで追加した。
タップ送りなどしなくて良いから女と女の会話を見ろという強い意思を感じる。
一方でダブエスは後述するバンドクエストというのを実行中のバンドじゃないとまず会話を見れないし、
その会話が見れる条件もキャラの派遣先に他キャラがいるかどうかに左右される。ガルパに比べるとかなり渋い。
会話の量もガルパは3往復はしているのに対して、ダブエスは大体1.5往復で終わる。中身も薄くて、会話イベントよりミニキャラの上に出ている吹き出しの一言の方が面白いまである。
ひたすら楽曲をプレイするスタイルのイベント。後述するバンドクエストはかなりだるいシステムなのでイベントと絡まなくて良かった。
音ゲーをプレイするとイベントポイントが貰え、イベントポイントを貯めると★2や★3のカードが報酬でもらえる。
また、ランキングで5万位以内に入ると★3カードが貰える。アクティブユーザは4万人以下らしいので、イベント期間中に音ゲーを1回でもプレイしたら確実に貰える。
ガルパもダブエスもイベントには対応タイプと対応メンバーという要素が有り、
ガルパの場合は対応タイプか対応メンバーのどちらかが一致したカードを編成するとポイントボーナスを貰える
ダブエスの場合は対応タイプが一致してるのが最低条件で、対応メンバーだと更にボーナスが増える。レア度が上がったり同じカードを複数枚手に入れて重ねたりするとボーナスが増える。
ガルパはボーナス対象のカードが幅広い代わりにボーナスの伸び率は一緒、
ダブエスはボーナス対象のカードが狭いけどレア度の高いメンバーがいるとボーナスがどんどん伸びていくという感じ。どちらが良いかは人によるという感じですね。
また、ダブエスオリジナル要素としてFeverゲージというのがある。これは楽曲をプレイする度に溜まっていくもので、100%溜まったら任意のタイミングでFeverを発動できる。発動後は5分間イベントポイントにボーナスがつく。
この5分というのが曲者で、大抵は音ゲー2回くらいの長さなんだけど短い曲だと3回遊べる。
また、ダブエスにはガルパと同じくブーストという体力的なものがあり、通常の音ゲーだと体力が尽きるとプレイできなくなるのがガルパ・ダブエスだとなんとブーストが尽きてもスコアが落ちるだけでプレイそのものはできる。どこで集金する気ですか?と問いたくなる太っ腹っぷり。
で、ブーストが尽きると獲得するイベントポイントの量は減るのに、なんとフィーバーゲージの溜まる量は変わらない。
つまり、ブーストが尽きている間にフィーバーゲージを溜めて、溜まったら回復アイテムでブーストを回復してフィーバーを発動し、短い曲を3回連続でプレイするというのがイベント中のプレイヤーの基本行動になる。
そんなプレイスタイルでイベストを開けていったので、箱イベ混合イベそれぞれの感想を以下に書く。
量。ガルパは7章構成でメッセージウィンドウは40前後、ダブエスは6章構成でメッセージウィンドウは30前後。メッセージウィンドウはストーリーにもよるから誤差だと思うけど、やっぱ1章短いのもあってダブエスの方がストーリーの量は少なく感じる。
5バンドの箱イベが終わって、報酬・告知バナー共にArgonavisのメンバーと風神RIZING!のメンバーが入り混じったものが始まったから、箱イベを1周して混合イベントが来たのかと思った。
箱イベと混合イベの両方をプレイしたら、評価したい要素は一通り揃ったから増田を書こうと、そう思っていた。
が、今も開催中のこのイベント、果たして混合イベントと呼んで良いものか迷っている。
https://twitter.com/AAside_INFO/status/1369166060021284864?s=20
このイベントの告知画像を見たら、左側の方にいるキャラがイベストに出てくるって思いますよね?私は思います。
出ないんですよ。
左側のキャラが風神RIZING!のキャラ、右側のキャラがArgonavisのキャラで、バンドを越えた人間関係が生まれるのかなーと期待してストーリーを読んでみたらですね、
なんと、Argonavisのキャラしかイベストに出てこないんですよ。
左側のキャラはガチャに入れられただけ。編成に組んだらイベントボーナスが増えるだけ。それ以外一切イベントとの関わりは無い。
イベントバナーに描かれたキャラはイベントストーリーでフィーチャーされるだろうという私の認識が間違っているのか?
イベントキャラってなんだ?イベントってなんだ?何もかもがわからなくなっていく中、
私が一番バンドリシリーズに期待している「バンドを越えた人間関係」が混合イベで見れなかったという事実だけが頭のなかにくっきりと残り、萎えたのでサブスク解除しました。
イベントストーリーも混合な混合イベントが開催されるようになったらサブスク再開しようと思う。
音ゲー以外にバンドメンバーのミニキャラにタスクをさせるモードが有る。タスクによって時間がかかったりかからなかったりして、それを終えるとバンド経験値が入る。
バンド経験値が溜まるとバンドレベルが上がってバンドストーリーが読めるようになる。ソシャゲによくあるやつ。
これはダブエスオリジナル要素。登場キャラクターの来歴が年表形式でまとめられていて、ストーリーでまだ描写されてない過去とか生い立ちについても知れるようになっている。
個人的には事前情報無しでストーリーで初めて色々なことを知れた方が新鮮なんじゃないかなって思うけど、
最近の腐女子ってあまり描写が無いうちから「これだ!」って青田買いした組み合わせが本編進むにつれて全然絡まなくなって顔カプと言われるみたいな現象があるから、
骨組みだけでも関係がわかってるほうが安心して萌えられるのかな。
「俺の命令に従え!!すべてのユミルの民から生殖能力を奪えと言っているんだ!!今すぐやれ!!ユミル!!」
ジークは叫んだ。
「俺は王家の血を引く者だ!!」
ジークが最後に目にしたのは、涙する始祖ユミルと、それを支えるエレンだった。次の瞬間、すべてが暗転した。
いかなる原理によるものか。宇宙は真空の量子揺らぎからインフレーションにより生じたものだと言う。ある世界線の内部を往来するうち、量子的に絡みあう複数の世界線が混線した。そして、ジークは他の世界線へと転落した…
◇
店舗と住居を兼ねる北沢精肉店の二階で、はぐみの兄は目を覚ました。
はぐみの兄はボリボリと頭を掻き、寝惚け眼で放心した。朝日がその横顔を照らしている。大学の講義もなく、朝の身支度をする必要がなかった。
しばらくして、はぐみの兄は股間をまさぐり、やがて絶叫した。
「た、勃たなくなってるーッ!」
「《うるさいな…》」
マーレ語で言ったが、はぐみの兄には通じなかった。
(《ここは…ヒィズル国か?俺は始祖ユミルといたはずだが、どうしてここにいるんだ?あれからどうなったんだ?ユミルの民から生殖能力を奪うことはできたのか?》)
「うわーッ!裸にジーパンの髭のオッサンが、俺の部屋にーッ!」
地上から、商店街を走る自転車のチリンチリンというベルの音が聞こえていた。
◇
「あたしがもう一人!?どういうことだ!?しかもなんか胸がデケェし!」
「うるせー!胸のことは言うんじゃねー!」
「うわー、有咲が二人!これで次の定期試験は楽勝だね!」
「はァ…もう一人の私、声が大きくて苦手かも」
二人の香澄が声を出すと、二人の有咲はさっとそれぞれの香澄の背後に回った。異なる香澄とはいえ、対人恐怖症は拭えないらしい。
「これがもう一人の自分っスか。正直、信じたくないっス…」
一人のたえの泰然とした様子に、もう一人のたえは肩を落とした。
「いったい何が起きたんだろうね。うち、すこし怖いかも。あ、関西弁が出ちゃった!」
りみがわざとらしく怖がる。が、混乱の最中にあって誰も反応しなかった。
「うわー。ポピパはまた大変なことになってるね」
流星堂の門内を覗いたリサが大げさに言う。おどけた態度と裏腹に、表情に疲労が滲んでいた。
胸が大きいほうの有咲が尋ねる。もう一人の有咲はリサと面識がないため、対人恐怖症を発揮しオドオドとしていた。
「アタシの弟ってことみたい。気づいたらいたんだ。どうにも、ポピパでも似たようなことが起きているみたいだね」
「でもリサさん、いくらガキとはいえ、知らない異性が家にいるのはキツくないですか?」
リサはすばやく片目で瞬きした。
「え?《年下の少年に性的な目で見られて気持ち悪いけど、それを口にして傷つけるほどでもないし、気付かないフリをしている》?リサさんすげー!一瞬のアイコンタクトでこれだけの情報を伝えてきた!」
有咲は感嘆した。一方、リサの弟はリサの本音を暴露されてショックを受けていた。
「でも、異常は人が増えたり現れたりしていることだけじゃないみたいよ」
「あッ、紗夜さん!助けてください!」
「待ってください、紗夜さん!助けるなら私を!」
日菜の両脇につぐみが一人ずつ抱えられていた。
「は、羽沢さんが二人…」
「アハハ。面白いよね。こっちのつぐちゃんはおっぱいがちょっと大きくてー、こっちのつぐちゃんはまっ平らなんだ」
「また人が増えた…それで白鷺先輩、他の異常ってなんですか」
「それはオメデタ…じゃないですよね。ピルを飲んだりとかしたんですか?」
「そうね。昨日までは普通に生理は来てたのよ。それで、この異常でしょう。気になってスタッフさんたちや知人に尋ねてみたら、やはり急に生理がとまった人がいたのよ。というより、生理という現象がなくなったというほうが自然ね。個人的にはありがたいけれど…」
「花音たちにも同じような異常が起きているみたいなの。ここに呼ぶわね」
◇
「見て見て。この人、はぐみのお姉ちゃんなんだ。はぐみ、ずっとお姉ちゃんがほしかったから嬉しい!」
紗夜は口元に手を当てた。
「つまり、今現在わかる異常はこのようになるでしょうか。第一に、異なる可能性の同一人物が同時に存在している。第二に、存在しないはずの兄弟姉妹が存在している。第三に、広い範囲で人々の生殖能力が停止している」
「第二の異常が重要だと思うな。もし第二の異常が第一の異常と同じ原因なら、第三の異常は独立した問題ってことになるもん。ただ、第二の異常が第一と第三、それぞれの異常と同じ原因のものが混ざってるってこともありえるけどねー」
日菜が紗夜の分析をすばやく補足した。
「でも本当、どうしたらいいだろうねー。もう一人の私に学校に行ってもらって、私たちはバンドの練習しよっか。あ、でもさーやはもう一人のさーやが夜学らしいから、どのみち二人とも学校に行かなきゃ!」
「うー。やっぱり、この私は苦手だ…」
暗いほうの香澄がため息をつく。
そのとき、怒声が聞こえた。
「待てー!モカ!」
一同が路上に出ると、上半身が裸でジーパンを履いた髭男が走ってきた。その後ろをモカが追っていて、時折ふり返りつつ、石を投げている。
大学生らしい青年と、Afterglowのメンバーが二人を追っていた。
「あッ、はぐみ」
「兄ちゃん!」
一同は髭男を見た。
モカが鬼気迫る表情で叫ぶ。
「よくわからないけど、あの男、友希那のお父さんと同じ雰囲気がする!自堕落で無責任無能力だけど、ときどき妙な行動力を発揮して周囲に大きな迷惑をかけるタイプだよ!」
友希那は表情に微妙なショックを浮かべた。
「はァはァ…ヒィズル国の言葉が通じて協力者を得ることができたのはいいが、そのために敵もできてしまったな。まあいい…どういうわけか、いまの俺は《始祖の巨人》の力を手にしているのだからな。舞台は変わったが、計画は続行する!このまま、この世界のすべての住民の生殖能力を剥奪する!」
「そんなこといいわけないでしょ!モカ、なんでそんな気持ち悪いオジさんに手助けするの!もうあたしの『ゼクシィ』貸さないよ!」
「そうだぞ、モカ!人間は守るべき家族をもって一人前だろうが!そして自分を産んで育ててくれた親と町、国に感謝だ!ソイヤぁ!」
ひまりと巴が問詰する。
「ごめーん。でも、モカちゃんもう決めたから。あたしたちが最後の人類になるの。それで、これまでのすべての人類の屍の上に、あたしと蘭だけが生きのこるんだ。それって素敵じゃない?」
蘭は甲高い声をあげた。
「はァ!?意味わかんないよ!なに言ってんの、モカ!?っていうか、気持ち悪いよ…」
「蘭にはわからないだろうね。けど、あたし、もう蘭の背中を追いかけるのは疲れちゃったよ…」
微笑するモカの目は、涙に濡れて見えた。
「あたしたちはみんな、生まれてこなければ幸せだったんだよ。音楽はコンプレックスからはじまる。ここにいるみんなも、生まれてこなければ良かったって思ったことが絶対あるよね!?それが正解なんだよ!もう、そんな過ちをくり返しちゃいけない。全部ここで終わらせるんだ」
千聖が輪のなかに踏みだした。麻弥はハッとした。思索的で感受性の高い麻弥には、千聖がモカの言葉に共感したことがわかっていた。
千聖はポツリと言った。
「私の人生に、いいことはほとんどなかったわ」全員が千聖に注視する。「思いだすことのできる最初の記憶は、母に子役として振舞うことを無理強いされたときのものよ。私は母に褒めてもらいたくて、必死に努力したわ。けど、母が私を肯定してくれることはなかった…努力の過程だけが残って、私は自尊心ばかり高い、空っぽな人間になった。それが向上心という形で、攻撃的にあらわれてしまうこともあったわ。パスパレのみんなと知りあって、ようやくそんな自分を変えることができた。けど、たしかに生まれてこないほうが良かったと言われれば、それを否定することはできないわ」
彩が目に涙を浮かべる。
「けれど、たしかに言えるのは、自分の人生が悪かったという理由で、他人の生殖能力を奪うような自分は、生まれてきたことよりもなお悪いと言うことよ!」
千聖は啖呵を切った。
「千聖さん!」
Pastel*Palettesのメンバーが抱きつく。
「千聖さんの言うとおりです!モカさん、あなたは大和撫子の風上にもおけません!子孫繁栄、富国強兵。ブシドー!天誅です!」
「あんたたち、こっち!」
胸が小さいほうの有咲が声をかける。門内を示され、モカとジークはすばやく駆けこんだ。二人が入ると、有咲は鍵をかけた。
「何やってんだ、お前ーッ!」
胸が大きいほうの有咲が怒鳴る。しかし、有咲は鍵を握りしめて離さなかった。
「ごめんね。でも、私、どうしても生まれてきたほうが良かったと思えない…!」
有咲はその場に座りこんだ。膝に顔をうずめ、しばらくすると嗚咽が聞こえてきた。
「有咲…」
暗いほうの香澄が呟く。有咲の苦しみを知っている香澄は、その言葉を軽々に否定できなかった。
そのとき、いくつかの弦の音が聞こえた。
うるさいほうの香澄がランダムスターを手に、歌を口ずさんでいた。
有咲が顔をあげる。香澄の歌は次第に勢いを強めていった。『Returns』。はじめに合唱に加わったのは、もう一人の香澄だった。有咲、二人のたえと、次々と合唱に加わった。
「あったかもしれない未来のことー、なかったかもしれない過去のことォー!自分の姿を鏡に映し、キミは誰なのと、問いかけてみたァー!」
やがて、Poppin’Partyの全員が合唱した。有咲は涙を拭い、門の鍵を開けた。
「《チッ、使えないヤツだ…》」
「俺の《安楽死計画》はまだ生まれてこない子供を対象にしたものだ。いま生きているものを犠牲にすることは避けたかったが、仕方ない…始末させてもらう!」
ジークは自分の腕を噛み千切った。一瞬であたり一面が蒸気と熱気に包まれた。
◇
「おいおい。人間が増えたり減ったりする怪奇現象が起きてるって言うから、取材に来てみりゃよォ…またこの姿になるとはな」
有咲は怖々と目を開いた。触手で全身が構成された巨人が有咲たち全員を蒸気と熱気から守っていた。
気付くと、ラフな服装の女性と、テレビカメラにハンチング帽の男性が傍らにいた。
「私は映像制作会社でADをしている市川と言います。こっちはカメラマンの田代です。えーと、あと、あの大きいのがディレクターの工藤です」
市川は苦々しそうな表情をした。
巨大化した工藤は、類人猿のように見える巨人をとり押さえていた。
「俺も業界にいて長いからよォ。てめェみたいなツラのヤツはよく知ってるぜ。おめェらみてェなヤツはよ、いろいろもっともらしい理屈を捏ねるけど、要は部屋に引きこもって一人で◯◯◯◯してるのがお似合いなんだよ!」
「う…」
「ハハハハ!わかっていないようだな。格闘戦で俺に勝とうが、なんの意味もないということが。俺は《始祖の巨人》の力を手にした。それは、この世界のすべての生物を操作できるということだ!はじめからお前らに勝目はないんだよ!もうお前らの体を直接、操作して全員、絶滅させてやる!」
その場の全員が硬直した。
「もし、いまの俺を倒せるとしたら、直接、因果律に介入できるヤツだけだ!ハハハハ!」
「呼んだか?」
空中に亀裂が走った。裂開したなかから、冴えない中年男性が出てきた。背中に制服姿の少女を乗せている。
「よッ、白石君。助けに来たで。おっと。いけない、田代君やったな」
「助太刀にきたでござる。ニンニン」
「りみ!」
「知っとるか?高圧鍋や圧力釜なんかは、威力の高い爆弾の材料になるんやで。つまり、炊飯器はええ爆弾の材料になるんや。ゆうても、炊飯器がなんなのかわからんやろうけどな」
「まさかうちの炊飯器をこんなことに使うとは思わんかったわ。まあええわ。みんなを助けられるんならな。御免」
「《や、やめろおおおお!》」
ジークはマーレ語で絶叫したが、その言葉を理解できるものはいなかった。
全身に火傷を負い、四肢の断裂したジークを中年男性は担ぎあげた。
「お前はアッチの世界に連れていくわ。案外、お前みたいなヤツにはアッチの世界のほうが居心地がええかもな」
ふたたび、りみと裂開のなかに飛びこむ。その間際に言った。「もろもろの因果律も俺が修復しとくから、まあ安心しといてな。じゃ、またな、白石君」
「江野さん…」
田代が呆然と呟く。しかし、その声を聞くものはもういなかった。
◇
「モカ…」
蘭は涙を流して放心するモカの肩を抱いた。しかし、モカがその声に応えることはなかった。
リサやはぐみは、つかの間の兄弟姉妹と別れを告げた。千聖は生理が復活して沈鬱な表情をしていた。
二人の有咲が対面する。胸の小さいほうの有咲が言った。
「いろいろ、迷惑をかけて悪かったな」
有咲たちは同時に笑った。
「いろいろあったけどさ、あたしはちがう可能性のあたしを見て、なんだかんだ、いまの自分が好きなんだってわかったよ。…ありがとな」
「お前はもう一人のあたしだ。すこしでも運命の歯車がズレてたら、あたしもお前みたいになっていたかもしんねー。いまのあたしのことも、すべて受けいれられるわけじゃねーし。だから、お前を助けられたなら良かったよ」
「お前も…サンキュ」
「うー。有咲がいなくなって寂しくなるよ」
「お前にはあたしがいるだろうが!」
この世界の有咲が叫ぶ。
「えッ、有咲…?」
「うるせー!いまのはなし!」
「有咲ー!」
香澄は有咲に抱きついた。そうしているうち、ちがう世界の住民たちはいなくなっていた。
「離せ!妊娠したらどうすんだ!」
「なに変なことを言ってるの、有咲ァ」
「あれ?本当だ。どうしてそう思ったんだ?」
(終)