はてなキーワード: 超能力者とは
俺はそう言いながら、彼に鋭い視線を向ける。
「……なにか不自然なことが? 僕は正解のタイムに一番近いのに」
「俺は『最も誤差のある人間が犯人』だと言っただけだ。その誤差が『正解タイム』だとは言ってないぞ」
「……え?」
「まだ気づかないのか。他の三人は正解タイムから30秒近くも離れている。なのに“お前だけ正解に近い”んだ」
「……ああっ!」
俺の罠にやっと気づいたらしいが、もはや手遅れだ。
勘付かれてもおかしくなかったし、見当外れの可能性も大いにあったが、目論見は上手くいった。
「オバチャン、もう一度聞くぞ。俺が注文する数分前、まだコッペパンの残りはあったんだよな。今もそう言い切れる自信があるかい?」
「うーん……でも、ここまで数え間違えるなんて、自分でも信じられないよ」
この事件のポイントは犯行推定時刻、アリバイをどう崩すかに尽きる。
オバチャンは「超能力を使えばアリバイなんぞ関係ない」として、アポートが使える従業員を犯人と推理したが、超能力の制約もあって難しいと結論付けられた。
実はこの推理、かなり核心に迫っていたんだ。
だけど、それは他の超能力者によってだ。
そしてその超能力は直接パンを盗める類ではなく、犯行推定時刻を誤魔化せるものだと俺は予想した。
だから時間当てゲームを提案し、その結果から手がかりを得ようとしたわけだ。
「超能力は、そんな大層なことはできない。恐らく限定的な暗示能力とかで、俺たちの体内時計をズラしたんだろう」
意識して数えてもここまでズレるのだから、そうじゃなかった場合は尚更だろう。
こうなると、オバチャンの言っていた犯行推定時刻はアテにならなくなり、必然的にアリバイも崩れる。
俺は、彼にそう言って詰め寄った。
他三人も、どう答えるのかと注目している。
超能力を使ったことは暴けたが、こいつが言い逃れできる余地はなくもない。
さて、どう取り繕ってくる?
「……証拠は?」
俺は溜め息を吐きつつ、従業員に目配せをした。
「ん?……ああ、そうか」
その視界内には彼の学生バッグもあった。
「……あっ、ちょ、ちょっとやめて!」
彼も何をするか分かったようだが、問答無用。
二つのバッグは一瞬だけ消え、すぐさま姿を現す。
「今、俺が持っているのはお前のバッグだ。さて、中に入っているのは教材だけか?」
みんなにも見えるよう、バッグを大きく開いてみせる。
「というか、最初から持ち物検査すれば解決していた気がするっす」
カジマの言う通りで、俺はもっと早くそのことに気づくべきだった。
数個のパンを短時間で食べきるのは難しいのだから、いくつかは隠し持っていると考えるべきなんだ。
仮に食べきったとしても、口の中を確認すれば痕跡が見つかるはず。
そんな簡単なことに気づかず、随分と迂遠な真似をしてしまった。
空腹で冷静ではないという自覚はあったが、俺の脳は思っていた以上に栄養が不足していたらしい。
「ちょ、ちょっと待って!? 自分も従業員ですよ。パンを盗める時間なんて無い!」
「でもアンタには、“アレ”があるだろう? ちょくちょく使ってるのを見たから知ってるんだよ」
オバチャン曰く、犯行推定時刻中は皆が目に見える場所にいたらしい。
犯人がこの中にいるにも関わらず、全員にアリバイがあるという状況。
大掛かりなトリックでも使えばアリバイは崩せるかもしれないが、パンを盗むためにそこまでやるとも思えない。
となると、もっと“手軽かつ特殊な方法”が使われたと考えるべきだろう。
そして、この従業員は『アポート』という、物体を瞬間移動させる力があった。
俺もこの従業員とは別件で関わったことがあるので、それが事実であることは知っている。
アポートをつかえば、アリバイを成立させつつパンを盗むことは可能かもしれない。
だが、この推理には一つ誤解がある。
俺は少し横槍を入れることにした。
「オバチャン、その従業員が犯人と決め付けるのは気が早いと思うよ」
「え、何でだい?」
「超能力は万能じゃないんだ……そうだろ?」
俺がそう言いながら目配せすると、従業員はバツが悪そうに説明を始めた。
「信じてもらえるかは分かりませんが……自分のアポートは『二つの非生物の位置を入れ替える』ことしかできないんです。そして、入れ替える対象は同じ大きさじゃなきゃダメだし、視界に両方収める必要もある」
そう、この従業員のアポートは、無条件に何でも移動させられるようにはなっていない。
アリバイを成立させつつ、パンを盗めるような超能力ではないんだ。
「もちろん、この従業員が全て本当のことを言っている保証はない。だけど、超能力にリミッターがあるのは確かなんだ」
「え、何それ?」
何となくそんな気はしたが、オバチャンは超能力のことは知っていても“リミッター”の概念は知らなかったようだ。
超能力は人によって性質こそ様々だが、いずれも何らかの制限がついている。
例えば弟のクラスメートにタオナケっていう超能力者がいて、そいつは裸眼で捉えた物質を破壊することができる。
ただし、そのためには数秒間、対象を睨み続ける必要があるんだ。
更には体調によって成功確率が変動し、普段はせいぜい5回に1回といったところ。
これはタオナケが超能力者としてポンコツだからではなく、身体的メカニズムとしてリミッターがかかっているからだ。
超能力はそのままだと強すぎるので、リミッターがないと人という器は耐えられないのである。
時を止めて自分だけ動くとか、人を生き返らせるといった規格外な超能力は存在し得ないのさ。
「……というわけでアポートには制約が多いので、誰にも気づかれないようパンを盗むのは常識的に考えて難しいかと」
「ええ~、ほんとにぃ~?」
「義務教育で覚える話ですよ」
「それ言われると、弱っちゃうなあ……」
「オバチャンの気のせいってことは? パンは本当に残っていなかったの?」
その後も、皆であーだこーだ言い合うが、話は平行線のまま進まない。
みんな疲弊するばかりであり、俺もこの状況にはかなり参っていた。
もちろん、俺は犯人じゃないことが確定しているから、このまま帰ってしまってもよかった。
帰りに適当な店でコッペパンを買ってもいいし、違うパンでも構わないとも思っている。
このまま何食わぬ顔で何かを食べても、表面上は腹を満たせるだろう。
だが、『食べようと思っていたものが食べられなかったという体験』が問題なんだ。
そんな心理的負荷を抱えたままレポートに取り組める図太さは俺にはない。
この事件を明らかにしない限り、俺の心にはポッカリと穴が空いたままになる。
……まあ、とどのつまりは意固地になってるだけなんだが。
超能力者は世界中のいたるところにいる。超能力者はあらゆる物事を透視できるが、聞こえた内容をそのまま喋れば名誉毀損になりかねない。雑談のフリをして重大な情報を示唆することもある。
そんななか、増田は埼玉県の川越市の超能力者に『平成くん、さようなら』の感想を語ってくださいと依頼したところ、重大な示唆を得ることに成功した。
──古市さんは続編を書くのでしょうか?
「構想はあるんじゃないかしら。」
「まず『私』の家が火事になるところから始まります。数日前からホームレスのような男に後をつけまわされていたのだけれど、『私』は、まあそんなこともあるかと思って放置していたの。そしたらそのホームレスが家に火を放ってきたの。」
──それは衝撃ですね。
「玄関が燃えて逃げられなくなった『私』は自分の人生を振り返ります。そして安楽死した平成君や猫のミライの顔を思い浮かべるの。こんな死に方をするなら安楽死しておけば良かったって、心底後悔するのよ。」
「私が透視したところ、古市さんは安楽死について『どうでも良い』と思っているようね。平成が終わるから安楽死したいって意味が分からないでしょう。それに、あの小説から人間が死を選ぶとはどういうことかっていう根源的な問いは感じなかったわ。あとで医療費とかの問題にからめて安楽死をもっともらしく語ってもダメ。私には分かっちゃうんだから。」
──古市さんが聞いたらキレそうですね。
「ま、面白い話を書きたかったんじゃないかしら。たしかに面白かったわよ。」
「『私』は間一髪のところで消防士に助けられます。それがまた無骨で良い男なのよ。平成くんとは違った良さがあるの。平成くんが死んじゃって寂しいこともあって、電話番号とかを交換したいと思うんだけれど、まあ、ムリよね。しばらく悶々とした日々を送ったあと、ふっきれて消防署のまわりを歩きまわってブログに書いちゃうの。ブログの記事中には散歩をしたって書いてあるんだけれど、写真には毎回消防署が写っているの。最後には出入りする消防士の顔写真が撮れるんだけれど、本人に気づかれて削除してくれってメールが来るのよ。」
──ストーカーですか。
「それで、削除はするんだけど『イケメンですね』って返信して、メールのやりとりが始まるの。消防士のほうも火事のときに救った女の子だとは知らずにメールのやりとりを続けるのよ。」
──どんな結末になるんでしょうか。
「古市さんに悪いからすべては書きません。ひとつだけ約束して欲しいのは、予言が外れても気にしないこと。超能力なんてアテにならないから。」
──ありがとうございました。
超能力者は世界中のいたるところにいる。超能力者はあらゆる物事を透視できるが、聞こえた内容をそのまま喋れば名誉毀損になりかねない。そういうわけで、自分が超能力者だと名乗りでない者も多い。
そんななか、増田は埼玉県の川越市で超能力者にインタビューすることに成功した。
なお、このインタビューの内容が事実かどうかについてはそっ閉じしていただけると幸いである。
https://www.asahi.com/articles/ASM1X55KMM1XONFB011.html
──1ヶ月の間に2度、洋菓子店に自動車が突っ込みました。これはヤクザの仕業なのでしょうか。
「ヤクザはいつもそういうことをやっているでしょう。普通なら、ただのボケ老人による事故だと思わせてやると思うわ。二度も突っ込んだのは、ヤクザに睨まれている店だということをアピールする意図があったんじゃないかしら。普通に考えれば、ヤクザにかなり恨まれていたということなんでしょう。私が透視したら『この店の店主もかなり心がけが悪かった』という神の声が聞こえたけれど、それ現実では口が裂けても言えないわ。」
──情報源は守りますのでご安心ください。ところで突っ込んだ二人の老人はやはり凶悪な人物なのでしょうか。
──は?
「一般人がヤクザに『ボケ老人のフリをして車を突っ込ませるからお金ください』って言ったらどうなると思う?素でそんなことを言ったらゆすりのネタになって骨までしゃぶられるだろうけれど、そうなっていないところを見ると隠語やほのめかしを使ったんじゃないかしら。ヤクザとしても面白いからやらせてみようとは思ったけれど、何か試練も与えようと思ったのよ。」
──試練と言いますと。
「これが新聞沙汰になったら誰でもヤクザのたぐいが関わっていると思うでしょう。警察も最初の事故を起こしたババアのところにあらためて話を聞きにいってもおかしくないわよ。天下の晒し者になって口を割らないかどうかまでが試練ね。二度目に突っ込んだジジイ、二度目の事故とは知らなかったんじゃないかしら。」
──なるほど。
「これ以上喋ると本当に名誉毀損になりそうだからやめておきます。絶対に私が誰なのか口を割らないように。喋ったら殺すわよ。いいわね。」
──ありがとうございました。
「それよりもさ、『マホ使』観ようぜ。歌ばっか聴いてるより、こっちのほうが面白いじゃんか」
『魔法使いじゃありませんわよ!』かあ。
資金を持て余した貴族令嬢が、子供の頃の夢だった魔法使いになるのを夢見て、様々な“魔法使いっぽい”ことを大げさに実現する。
近年では超能力者の躍進や、魔法少女アンドロイドなどの影響もあり、マンネリどころか更に面白くなっているとさえ思う。
しかし、気がかりなこともある。
そうは言っても気にもするさ。
特に、中東の国に武力介入して鎮圧してしまったニュースは衝撃的だ。
その国の宗教にまで口出ししてブルカやニカブを廃止させた時は、いよいよここまで来たかといった感じだった。
噂では、魔法少女アンドロイドを作った大手ロボット企業と戦争をするという話もある。
この『マホ使』が種火になるんじゃないかと思うと、気が散って素直に観ることができない。
弟は言われたとおり掃除を済ませたのだから、個人的な感情はともかく見せてやるべきだろう。
「……ん?」
ふと、弟の掃除スペースに目を向ける。
よく見るまでもなく、まるで終わっていないのが分かった。
「おい、弟よ。まさか“アレ”で掃除をしたって言い張るつもりじゃなかろうな?」
「だって、年越したじゃん」
「……は?」
「“年末だから”やってた大掃除だろ。つまり年を越した時点で『年末の大掃除』じゃなくなる」
「言っておくが、『掃除を一生しない』という選択肢があるわけじゃないぞ」
「……」
俺がそう念を押すと、弟は無言で掃除を再開した。
俺もズボラなほうだが、こいつは筋金入りだな。
まあ弟の主張は理解できなくもない。
そもそもズボラな俺たちにとって、『年末の大掃除』というものは“理由”と“目的”が一致していない。
“年末だから”という理由がなくなってしまった時点で、“掃除をして部屋を綺麗にする”という目的も失われるのだ。
だが、とどのつまり「掃除をやりたくない」というのを誤魔化しているに過ぎない。
さて、そろそろか。
「じゃあ俺は出かけるが、帰ってくるまでには掃除終わらせとけよ」
年越しの大掃除をやっている弟を尻目に、俺は外出の準備を始める。
「え、今からどこ行くの?」
「元旦に仕事? 大企業ですらお休みモードのところもあるのに」
「あれは企業の“ポーズ”だって。元旦に働く必要がないのなら、元旦に休む必要もないだろ」
「ん?……」
「見せ掛けだけ良く見せて社会に媚を売るくらいなら、普通にモノ売ってたほうがマシってことだよ」
「それも、そうか……うーん、なんか言い包められてる気がする……」
「言い包められろ。それに抵抗するほどの理由や目的があるのなら話は別だが」
「……はいはい、兄貴が帰ってくるまでにはちゃんと掃除終わらせるよ」
この世の理由や目的なんてものは、俺たちが思っているよりも曖昧だ。
俺たちだってそうだ。
でも、それ自体は悪いことじゃない。
年末だからという意味不明な理由で、部屋を綺麗にする気力が湧く。
年を越そうが俺たちは、俺たちの日常は大して変わらないのである。
超能力者は世界中のいたるところにいる。超能力者はあらゆる物事を透視できるが、必ずしも正確に聞き取れるわけではない。聞こえた内容をそのまま喋れば名誉毀損になりかねない。そういうわけで、自分が超能力者だと名乗りでない者も多い。
そんななか、増田は埼玉県の川越市で超能力者にインタビューすることに成功した。
なお、このインタビューの内容が事実かどうかについてはそっ閉じしていただけると幸いである。
「わたし、新聞と週刊誌しか見ていないわよ。それでもいいの?ネットでデマを流したって言われても知らないからね。」
「これまで、超能力でいろいろな事件の真相が聞けたけれど、そのまま書いたら名誉毀損になるかなって思っていたんだけれど、すこし前に『わたしが考えたサスペンスのストーリー』っていうことで小説のようなものを書こうと思ったのよ。何が良いかなって考えていたら、かわいい男の子が殺された寝屋川の事件をモデルにした架空の小説にしようと思ったの。ほら私ショタだから。寝屋川の事件を連想させるけど、登場人物とかは全然違う形にして。今になってみればそれ自体が神のお導きだったと思うわ。それがいつだったかは覚えていないけれど、裁判が始まる前よ」
「2人が殺されたあとの地元の雰囲気とかもテレパシーで聞こえたけれど、地元の防犯活動に関わっているひとがどんな気持ちになったとか、直接、聞きもせずに喋ったら袋叩きだわ。事件の状況について透視したら『星野くんは後ろから襲いかかられ、首にナイフを突きつけられて警察を呼べず、平田さんはパニックになってどうして良いか分からなかった』という光景が見えたのよ。」
「私が透視したのは、山田が裁判で当日の様子を証言する前だった。それだけは間違いないわ。裁判で山田が、平田さんから『無理やり車に乗せられたとかレイプされたとか言うよ』と言われたって証言したと知ったときはビビったわ。事実を確認できないのをいいことに言いたい放題言ってるんじゃないかって思ったわ。でもこれ、山田の弁護士が見たらキレるんじゃないかしら。本当に大丈夫なのね?」
──情報源は守るのでご安心ください。どうぞ、山田被告に対する思いを存分に語ってください。
「それならいいけど。山田は裁判を舐めてるってレベルじゃないわ。山田の心を透視したら『これを言ったら裁判員がビビる』という考えで裁判で言ってみたかったみたい。念押ししておくけれど、私、何が事実かは知らないからね。たしかに山田の証言で裁判員はビビった。でも、被告の有利にはならなかったんじゃないかしら。」
「裁判員がどういうお考えだったかは分からないけれど、裁判員が1人辞めました。私が透視したら『山田の証言で気分が悪くなった』ということのようね。裁判所は裁判員が辞めた理由の詳細を明らかにしていないし、裁判員も守秘義務があるから口が裂けても喋らないでしょう。いい、私がこれを言ったって漏らしたら殺すからね。」
──ありがとうございました。
おそらく趣旨とは違うし、そもそも漫画じゃないけど、これすごい自分は好きだから気になったら読んで
https://ncode.syosetu.com/n1435ev/
『ある日唐突にサイキックパワーに目覚めた主人公ッ! 主人公の力を狙う秘密組織が暗躍しない! 学年一の美少女が実は主人公と同じ超能力者だと発覚しない! 異世界への扉が開いて召喚されない! 主人公の生い立ちに秘密などない! サイキックパワーに目覚めた壮大な理由が明かされない! 普通ッ! 圧倒的日常ッ! 何事もないまま学生生活を終え就職! 過ぎ去る凡庸な社会人生活! 全人類を相手に戦争を起こして勝てるサイキックパワーがあるのに何事も無さ過ぎてキレる主人公! もういい! こうなったら俺が、俺自身が秘密結社になって暗躍してやるッ! ようこそ人工非日常へ!!! 』