超能力者は世界中のいたるところにいる。超能力者はあらゆる物事を透視できるが、聞こえた内容をそのまま喋れば名誉毀損になりかねない。雑談のフリをして重大な情報を示唆することもある。
そんななか、増田は埼玉県の川越市の超能力者に『平成くん、さようなら』の感想を語ってくださいと依頼したところ、重大な示唆を得ることに成功した。
──古市さんは続編を書くのでしょうか?
「構想はあるんじゃないかしら。」
「まず『私』の家が火事になるところから始まります。数日前からホームレスのような男に後をつけまわされていたのだけれど、『私』は、まあそんなこともあるかと思って放置していたの。そしたらそのホームレスが家に火を放ってきたの。」
──それは衝撃ですね。
「玄関が燃えて逃げられなくなった『私』は自分の人生を振り返ります。そして安楽死した平成君や猫のミライの顔を思い浮かべるの。こんな死に方をするなら安楽死しておけば良かったって、心底後悔するのよ。」
「私が透視したところ、古市さんは安楽死について『どうでも良い』と思っているようね。平成が終わるから安楽死したいって意味が分からないでしょう。それに、あの小説から人間が死を選ぶとはどういうことかっていう根源的な問いは感じなかったわ。あとで医療費とかの問題にからめて安楽死をもっともらしく語ってもダメ。私には分かっちゃうんだから。」
──古市さんが聞いたらキレそうですね。
「ま、面白い話を書きたかったんじゃないかしら。たしかに面白かったわよ。」
「『私』は間一髪のところで消防士に助けられます。それがまた無骨で良い男なのよ。平成くんとは違った良さがあるの。平成くんが死んじゃって寂しいこともあって、電話番号とかを交換したいと思うんだけれど、まあ、ムリよね。しばらく悶々とした日々を送ったあと、ふっきれて消防署のまわりを歩きまわってブログに書いちゃうの。ブログの記事中には散歩をしたって書いてあるんだけれど、写真には毎回消防署が写っているの。最後には出入りする消防士の顔写真が撮れるんだけれど、本人に気づかれて削除してくれってメールが来るのよ。」
──ストーカーですか。
「それで、削除はするんだけど『イケメンですね』って返信して、メールのやりとりが始まるの。消防士のほうも火事のときに救った女の子だとは知らずにメールのやりとりを続けるのよ。」
──どんな結末になるんでしょうか。
「古市さんに悪いからすべては書きません。ひとつだけ約束して欲しいのは、予言が外れても気にしないこと。超能力なんてアテにならないから。」
──ありがとうございました。