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はてなキーワード: 流動性の罠とは

2024-03-05

anond:20181222203628

実際、問題は起きないな。確かにインフレ率はすごいことになる可能性がある(ならない可能性もある。下段のようなケースなど)が、それを賄うだけの所得を先に得られているので問題ではない。

なお、皆の貨幣フェチズムが強く流動性の罠というものが本当に存在するなら、そういう政策をやっても預金として貯め込まれるだけで消費も増えず、その場合は当然インフレも起きず、ただただ預金残高が増える以上の何事も起きない。でも、これで特に何か元より困るわけでもないので問題はない。

まあ、問題があるとしたらたとえば身体不自由な人は現在では他より厚めの保障をされているといった、公的サービスがこの政策とともになくなってしまうような場合だが、これも国債を発行して得た金で政府がやってくれるなら問題ない。別に、再分配の仕組みについては今回の主眼じゃないだろう?

2023-11-05

anond:20231024194539

減税して円安になるのは、減税でGDPが大きく増える(減税で流動性の罠を抜けるくらい経済が刺激され、金利が上がろうとし、それを抑えるために日銀流動性の罠ではない状態で緩和を進める)ようなケースだろうから円安デメリットなんて打ち消すくらい良い状態になってるはずだよ。たぶん実際にはそんなことは起きず、円安にもならない。

2022-12-11

anond:20221211191607

わかる、オレも山形氏を初めて知ったのはクルーグマン教授流動性の罠翻訳だったからな。

あれが日本の停滞を見事に説明していて、それにいち早く目を付けて翻訳した山形氏の有能さはそれだけでも十分証明できてると思うわ。

2021-11-17

anond:20211117185513

需要がいつまで続くかわからないし

解雇しづらい日本では将来人件費負担になるのは目に見えてる

流動性の罠ってやつ

2021-09-09

新しい一万円札大事機能が抜けていて駄目だと思う

あの万券、レイアウトずれとかそういうの以前に大事機能落としてるじゃんか。

万券で一番大事なのは「収蔵しておくとボロボロになっていく」事だろ。ボロっちくなった万券は通貨としての価値が目減りする。1年経つと9000円の価値しかない。

または数字部分が一桁ずつ消えていくというのでもよい。プリンCDみたいな印刷10年置いておくと1000円券になる。目減りするから直ぐに使ってしまうに限る。

銀行から借りると積み立てておくより安全だ。手元の金は持っておくより投資的な使い方して未来ピン札給付されるようにすれば目減りせず合理的

流動性の罠には堅牢性の罠だ。内部留保なんて全部溶けてしまえ。金持っていたくない投資家がジャンジャン預けてくれるから資金には困らねぇ。

2020-06-19

anond:20200619123651

デフレ解決できないのは、流動性の罠、という問題があるからインフレであれば金利を上げればコントルールできるんだよね、上げる分にはどこまでも上げられる、青天井なわけよ。しかデフレ場合は下限がある。0があるわけよ。これが流動性の罠言葉は難しいけど、言っていることは単純で、金利ゼロより下げられませんよ、ってこと。しかし実際にはマイナス金利というものがあるではないか、という話もあるけれど、マイナス金利というのは、中央銀行お金を預けている場合に発生するものなんだよね。つまりマイナス金利は、中央銀行お金を預けなければ発生しない。自前で保管しておけばいいわけだな。しかし、そうなると現金を保管しておくための、セキュリティ問題が発生するわけ。マイナス0.1パーセントとかだと、セキュリティを保つためのお金の方が高いので、中央銀行お金を預ける方がいいけど、1%かになると、自前でセキュリティを維持した方が安上がりなわけ。なので、マイナス金利というのも、実質的に下限が生じてしまう。これが流動性の罠だ。なので、デフレというのは、金利操作するだけではなんともいかいね、という話になっている。

他の問題については、省庁が出す資料というのはとても立派で未来は明るいように感じるものがいっぱいあるんだけど、何一つとして実現したことはない。実現したとしても、一般市民恩恵を感じることはない。行政というのは調査能力には秀でているけど、実践力に乏しいお坊ちゃんお嬢ちゃんしかいないのではないかと思っている。実現しなくてもおとがめなしだからね。明治時代であればエリート行政官が国をよくしてくれたんだけど、今の行政官にその力はない。もうこの国はダメかもしれないね

2019-11-11

お金が余ると財政健全化できない?そんなバカなことあるか!...あるんです

"資金循環 ゆがみ拡大 借金政府に偏在 日米欧企業カネ余り-チャートは語る"日本経済新聞2019年11月10日

"ピーターソン国際経済研究所のオリビエ・ブランシャール氏は金利が成長率より低い現状では財政赤字の許容度が高まると説いた。"

"上智大学中里准教授は「経済低迷を放置すればデフレに陥る。経済政策として財政健全化選択しにくい」"

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO5185015006112019MM8000?disablepcview


なぜお金があまると、貯蓄が過剰だと財政健全化できないんでしょう?

Ys = Yd, Y = C + I + G + NX という等式からスタートします。

前者は生産、分配(所得)、支出からみたGDP三面等価より総供給Ys=総需要Yd、後者はYが所得、Cが消費、Iが投資、Gが政府支出NXがX-M、経常収支プラスなら黒字です。これはマクロ経済学の基本なので、分からない人は教科書などで確認しておきましょう。

この等式の両辺からC, I を引きます

Y - C - I = G + NX

左辺はY、つまりその期間に生産された財・サービスから消費と投資(いずれも家計がする場合企業がする場合があります)を除いたものですから民間部門の貯蓄です。つまり民間部門の貯蓄は政府支出経常収支黒字の合計に等しいということです。

もちろん消費も投資政府支出も、異なる経済主体が独自判断ですることなので、当期に直ちに等しくなるとは限りません。事後的に等しくなる方向で経済が動くという意味です。Ys > Yd 、つまり供給過多で生産された物・サービスから売れ残りが生じても、長期間でみれば価格調整メカニズムが働いて、Ys = Yd となるのかも知れません(この考え方を"セイの法則"といいます。)。しかしながら短期間で観察すると価格調整メカニズムが働くといっても限度があります売れ残りが生じるとなると、企業は次年度はむしろ生産する数量を減らすでしょう。つまり、少なくとも短期間でみると需要供給規定しているのです(この考え方を"有効需要原理"といいます。これはケインズ発見とされています。)。

では民間貯蓄が過剰な場合経済を縮小しないで左辺と右辺を均衡させるにはどうしたらいいでしょう?

まずIを大きくする、つまり投資を増やす方法があります。全体としてのIは利子率rの関数とされているので(これを"投資関数"といいます。)、貨幣供給を増やして金利を下げることです。ただし利子率が10%もあればいいのですが、下げて下げてゼロゼロ近辺に達した場合は、これより下には下げられないか、下げられたとしても(注1)Iを増やす効果限定的です(この状態を「ゼロ金利制約」「流動性の罠」といいます。)(注2)。そもそも過剰貯蓄とは本来資金不足で、つまりお金を借りて商売をしていた企業資金余剰に転じたから生じた現象で(家計はもともと資金余剰です。)、企業資金余剰というのはお金の借り手がいないということですから、そういう現象が生じた時点で利子率はかなり低いのです。

次にNXを増やす方法があります。ただ、この方法他国との軋轢の原因になるうえ、貿易黒字通貨高を招き国際競争力の低下を来たすので、ドイツのように特殊な国際環境でもない限り増やすといっても限度があります(注3)。

残った方法はCを増やす、つまり減税か、Gを増やす、つまり政府支出の拡大です。いずれも財政状況は悪化します。中里准教授が「経済政策として財政健全化選択しにくい」というのはこのようなメカニズムを指していますいくらお金があっても誰かが使わないと所得は産まれないのです。

財政健全化というのはマクロ経済的にいうと貧しくなれというのと同義です。もちろん少子高齢化ならやむをえないとか、むしろ経済成長にとらわれない里山資本主義でいくのだ、というのもひとつ生き方選択だと思いますが、それならそれで正直にそういうべきで、財政健全化たらみんなが安心して豊かになってという説明はどうかと思います

(注1) 銀行間の借入れ金利に働きかけることにより銀行家計企業に貸す出す貸出金利を間接的に下げる「伝統的な金融政策」に対して、ゼロ近辺に達したインターバンクレートからターゲットを変えて、ターム・プレミアムリスクプレミアムによってそれより高く設定されている長期金利を下げることを狙うのが、いわゆる「非伝統的な金融政策」です。貸出金利の指標商品である長期国債を大量に購入する、MBSETFなどのリスク資産を購入してリスクプレミアムを下げる、インフレ目標と金政策の先行きを示して期待インフレ率を上げる、などの方法があります

(注2) 近時、低すぎる利子率は弊害を産む可能性があることが指摘されています。"金融政策はこれからマクロ経済の安定化ツールであり続けることができるのか サマーズとクルーグマンツイートより"、ラリーサマーズのいくつかのツイートを参照。https://anond.hatelabo.jp/20190824134241

(注3) ドイツ事情についてはマーティンウルフ日本化しないドイツ幸運フィナンシャル・タイムズ日本経済新聞2019年11月1日がよくまとまっていますhttps://www.nikkei.com/article/DGKKZO51634760R31C19A0TCR000/

過去増田です)

"れい新選組立憲民主党 どちらが正しいか (自民党とどちらが正しいか追記しました) "

https://anond.hatelabo.jp/20190622204530

"金融政策はこれからマクロ経済の安定化ツールであり続けることができるのか サマーズとクルーグマンツイートより"

https://anond.hatelabo.jp/20190824134241

"国土強靱化いつやるの?今でしょう!"

https://anond.hatelabo.jp/20191014111057

2019-10-14

国土強靱化いつやるの?今でしょう!

"「もう堤防には頼れない」 国頼みの防災から転換を" 日本経済新聞 2019/10/14 0:38[有料会員限定

"堤防の増強が議論になるだろうが、公共工事安易な積み増しは慎むべきだ。台風の強大化や豪雨の頻発は地球温暖化との関連が疑われ、堤防をかさ上げしても水害を防げる保証はない。人口減少が続くなか、費用対効果の面でも疑問が多い。西日本豪雨を受け、中央防災会議有識者会議がまとめた報告は、行政主導の対策ハードソフト両面で限界があるとし、「自らの命は自ら守る意識を持つべきだ」と発想の転換を促した。"

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50958710T11C19A0MM8000/

自然災害まで自己責任となると、そもそも国家とはなんのためなのかと思いますが、その点はともかく公共事業の積み増しはそんなに悪いことでしょうか?

公共事業関係予算は「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権予算編成を行った平成22、2324年度の当初予算において大幅に減少しましたが、東日本大震災被害を受けた災害復旧対策を計上した平成23年度補正予算で大きく増えました。その後「第二の矢」として国土強靱化を含む積極的財政政策を掲げるアベノミクススタートにより平成25年度予算では災害復旧以外の公共事業費も増えました。しかしながらその後は税収が順調に伸びているのに基本的に6兆円にフィックスされたままです。現在予算規模は昭和53年、40年前と同じ規模です。私は、アベノミクスの「第二の矢」は口先だけだと思っています。令和元年からは3カ年緊急対策として上乗せ分がありますが、消費税増税を睨んだマクロ経済対策の一環でしょう。

おそらくネットでは台風19号の被害を受けて、民主党批判からめてスーパー堤防がどうの、八ッ場ダムがどうのという議論があるのだと思いますが(確認はしていません)、私は個々の対策については効果判断するだけの知識はないので、そこは専門家がきっちり議論してほしいと思います問題にしたいのは、こうも災害が続くと、人の命を守るために「国土強靱化」の加速が必要なのではないか財政再建を強調して公共事業予算昭和50年代と同じかそれ以下に留めておくことが、財源として国債発行によるべきでないという意見が、現在マクロ経済環境のもと相当なのかということです。

むろん、専門家議論に基づいたワイズ・スペンディングが前提ですが、必要対策を施さないまま大きな被害が生じれば、復旧のために予算が使われるのですから防災対策としての公共事業費と復興のための公共事業費は、「人が死ぬ前に出すか、人が死んでから出すか」の違いでしかありません。「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、公共事業費を当初予算で5兆円以下にまで削減した民主党政権が、東日本大震災復興のために3兆円近くの補正予算を組んだのがその実例です。

そして公共事業によりまず恩恵を受けるのは、地方に住む高卒以下の限られた学歴しかない労働者、次いで災害危険さらされている地方住民です。彼らは1997年からしつこく続くデフレ圧力のもと、もっとも大きな経済的な困難に見舞われた人たちです。

ところで、公債発行による財政支出の拡大は、そもそも何が悪いのでしょうか? 公債は、償還期限が来ても借り換えができれば問題ないので、個人借金と異なり、国が続いている限り、返済して残高をゼロにする必要はありません。

にもかかわらず公債発行が問題になる理由は、第1に民間投資を阻害してクラウディング・アウトを生じさせることです。そのメカニズムについてはマクロ経済学の教科書IS-LM分析をみていただきたいのですが、利子率がゼロ近辺かそれ以下に達し、LM曲線が水平に近い状況、「ゼロ金利制約」「流動性の罠」が発生しているときには、クラウディング・アウトは生じません。現在日本はその状態にあります

第2に大量の公債発行が続くと、財政支出に占める公債費の割合が上昇し、財政硬直化の原因になることです。しかしながら、2000年度の財政支出に占める公債費の割合24%であったのに対して、2019年度は23.6%です。公債費の割合は近時特に上昇しているわけではありません。近年、新規国債発行額、公債依存はいずれも低下しています。利払いは年間9兆円弱、これは昭和59年と同じ水準です。財政健全性はフローとの比率でみるべきですが、GDPにしめる利払いの割合は史上最低レベルにあります

第3に、負担を将来世代転嫁して、世代間の公正を阻害することです。よく言われる「子孫に借金を残すな」というフレーズは多分これを指していますしかしながら、国債外国人にもたれている場合は、償還の際に外国資産流出しますが、日本国内に留まる場合は、仮に償還の資金増税ファイナンスしても、税金を払うのも償還を受けるのも日本人です。利用可能資源の総額は変わりません。現在日本国債の90%は日本国内で保有されていますしかも半分は日銀です。さらに、防災・減災対策としての公共事業により、子孫は災害に強い社会資本享受することができます受益するのが子孫であれば借金を子孫に残しても不合理ではありません。

すべての政策決定には必然的リスクがあります。確かに政府債務の増大は破綻リスクを高めます問題は将来実現するかも知れない、実現しないかも知れないリスク考慮して、実現し、実現しつつあるリスク対処しないでよいのか、ということです。私は現在環境自然災害の多発、慢性的デフレ圧力需要不足、その結果としての地方疲弊・限られた学歴労働者の困難・超低~マイナス金利-で、国債発行による公共事業積極的な拡大は、是非とも必要だと考えています

国土強靱化いつやるの?今でしょう!」どうか政治家のみなさま、よろしくお願いします。

過去増田です

"れい新選組立憲民主党 どちらが正しいか (自民党とどちらが正しいか追記しました) "

https://anond.hatelabo.jp/20190622204530

"金融政策はこれからマクロ経済の安定化ツールであり続けることができるのか サマーズとクルーグマンツイートより"

https://anond.hatelabo.jp/20190824134241

追記

ご参考までに。

"公的債務に対するより寛容な態度を批判する人たちがまちがっている理由" オリヴィエブランシャール&アンヘル・ウビデ 2019年7月15日8:00 AM

https://www.piie.com/blogs/realtime-economic-issues-watch/why-critics-more-relaxed-attitude-public-debt-are-wrong

"世界経済金融政策ブラックホールリスクさらされている-政府は長期停滞を食い止めるためにもっと借金を"  ローレンス・サマーズ  2019年10月12日フィナンシャル・タイムズ

https://www.ft.com/content/0d585c88-ebfc-11e9-aefb-a946d2463e4b

2019-08-24

anond:20190824191302

流動性の罠のもとで騙し騙しやってきた非伝統的な金融政策限界問題資本家がどうのとかいう話ではない

金融政策はこれからマクロ経済の安定化ツールであり続けることができるのか サマーズとクルーグマンツイートより

https://twitter.com/LHSummers/status/1164490326549118976

"ここジャクソンホールにやってきて、経済学者重要問題に取り組んでいます中央銀行は、これから10年も、これまで私たちが考えてきたように、産業社会マクロ経済の安定化ツールであり続けることができるでしょうか?アンナ・スタンブリーと執筆中の論文で、私たちはそれは疑わしいと論証しています。"

"今や利下げの余地ほとんど残されていません。1970年代以来、アメリカ合衆国リセッションが発生するとFedは常に500ベーシスポイント以上の利下げを実行してきました。そして多くの場合、実質金利中立金利よりも400ベーシスポイント以上低かったのです。今や最大限可能な利下げ幅は200から300ベーシスポイント、実質金利中立金利より150から250ベーシス下でしかありません。"

"わずかこれだけしか利下げの余地がない、これがアメリカ合衆国現実です。だがこれでも先進国の中では最も金利が高いのです。ヨーロッパ日本においては状況はより深刻です。"

"これまで大規模な量的緩和としっかりしたフォワードガイダンスが試みられてきました。今、私たちポスト量的緩和フォワードガイダンス世界に生きています。ある政策説明をあれこれ言い換えてみたり、記者会見タイミングを変えてみたり、見通しに関するプレゼンテーション方法を変更してみたり、もはやそんなことでなんとかなるとは考えられません。"

"私たちジャネット・イエレン意見にはたいていは賛成しています。でも彼女2016年ジャクソンホールで講演をしたとき金融政策にはまだツールキットが残っているという彼女の楽観主義はまちがっていると思っていました。10年債の利回りが150ベーシスに落ち込んでいる現在ならなおさらのこと。"

"金融経済ブラックホール、私はゼロ近辺で固まってしまった利子率、そこから抜け出す見込みもない状態をこう呼ぶのですが、10年債の実質利回りがゼロないしマイナスヨーロッパ日本マーケットでは、それはもはや将来にわたって確信となっていますアメリカ合衆国不況ひとつで彼らの仲間入りです。"

"先進国ではどこでも、失業率の急上昇のリスクインフレ率の急上昇のリスクよりもはるかに大きい。マーケット期待インフレ率が2%にはるかに足りないというのに、です。"

"金融当局は、金融政策を通じて、長期にわたり、望むだけのインフレを創り出すことができる、世界中の経済学部の学生は、それが公理だと教えられてきました。だがもはやその命題は大いに疑わしい。"

"多くの人は、その後におきた出来事で、アルヴィン・ハンセンの長期停滞論はまちがいであることが証明されたと信じています。でも事実は逆で、大恐慌から復活するのに第二次世界大戦必要だったという事実は、彼が正しかたことの証明なのです。膨大な軍事支出がなければ「流動性の罠」がもたらすデフレシナリオは、しつこく続いたことでしょう。"

"「ブラックホール問題」、「長期停滞」、「日本化」、なんと呼ぼうといいのですが、この一連の事象世界中央銀行を悩ませているのです。"

"私たちポストケインジアンがずっと強調していたこと、最近ではトーマスパリーが唱えていたことに賛成しなければならないようです。経済変動において、ある特定の要素の摩擦、不適合が果たす役割は、根本的な総需要不足に比べれば、あまり強調される問題ではない、ということです。"

"今度発表する論文で、私たちは、最近コンセンサスのように、現在の状況を、単に中立金利の下落、低いインフレ率、名目金利実効的な下限という観点から捉えることは、苦境を過小評価してしまうと主張しています。長期停滞はより深刻な問題なのです。"

"超低金利環境における限られた名目GDPの成長は中立金利が大幅に低下した証拠だと解釈されてきました。だがそれだけではありません。"

"総需要に対する金利の影響が急激に低下し、金利が低下するにつれて限界影響、すなわち低下した金利毎の総需要に対する影響が減少することも、同じぐらい確かなのだと思います、"

"ある局面では利子率の低下が総需要を減少させることさえあり得るのです。その原因は、例えば貯蓄行動の目標への影響であったり、金融機関の利ざや縮小からくる仲介機能の低下現象、いわゆるリバーサル・レート効果だったり、リアルオプション効果考慮して埋没的、不可逆的投資は止めておこうとなることだったり、低金利財政赤字に及ぼす勘定効果であったりします。"

"この点は、マクロ経済学のダイアグラムを使って示すことができますISカーブは急勾配になり、非線形になり、後ろに向けて曲がることすらあるのです。"

https://twitter.com/LHSummers/status/1164490361881931777/photo/1

"もしマクロ経済安定化の中心的な問題中立金利の低下にあるなら、その立場は、たぶん"オールド・ニュー・ケインジアン"と呼ぶべきなのでしょうが、利子率をじゅうぶんに下げることができるのであれば、金融政策によって完全雇用は達成可能です。"

"対照的に長期停滞の視点からは、この立場をニュー・オールド・ケインジアンと呼びましょう、仮に可能場合であっても、総需要に少々刺激を与えるのがせいぜいで、最悪の場合は、総需要を減らすことすらあるのです。"

"さらに利下げは将来の経済パフォーマンスを阻害することもあるのです。以下その理由を述べます。"

"第1に、金融システムの不安定化です。金融危機の原因はバブルと過剰なレバレッジにありましたが、それは2001年景気後退に対する需要下支えのための政策対応の結果として生み出されたのです。日本1980年代末のバブル1987年ブラックマンデー後の緊縮財政環境における低金利に原因がありました。"

"第2に、企業ゾンビ化リスクです。利払いの問題に直面していない企業は、テストを受ける必要がない学生のようなものです。彼らは勝手気ままにどうみても収益性がみこめない事業にもフラフラと乗り出してしまう。さらに低金利は寡占企業の強大化とダイナミズムの低下を生み出すでしょう。"

"第3に、銀行破綻リスクです。低金利銀行収益を圧迫し、顧客基盤のようなフランチャイズバリューを低下させ、自己資本規制レベルいかなるものであれ、銀行をショックに対して脆弱にするでしょう。"

"第4に、金融政策有効性のさらなる減少リスク現在の利下げが将来の需要の先食い、つまり企業が将来の投資を、消費者が持続的に必要な消費今するというレベルにまで至ると、現在の低金利は、将来の金融政策効果の減少を含意することになります。"

"マクロ経済学者が注目すべき重要問題は、適切な総需要管理することです。私たちは、中央銀行管理できるのだ、あるいは現在金融政策の各種ツールでそれができるだろう、と提案することは、危険だと思っています。"

"もっとも注目されるべきが財政政策であることはあきらかです。とりわけ低金利ゼロ以下の金利財政赤字の持続可能性を示している現在の状況下ではなおさらのこと。"

"しかしながら需要の水準は政治構造の影響も受けます。例えば、社会保障の給付を当期の租税保険料で賄うべきとするpay-as-you-go方式、定年の延長、社会保険の改善民間インフラ投資への援助、高貯蓄の富裕層から流動性が制約されている、要するにお金がない貧困層への再分配などです。"

"1970年代の高インフレ、高い利子率はマクロ経済学の政治思想政策制度革命をもたらしました。低インフレ、低い利子率とこの10年の長期停滞は現在も深刻な形で進行中であり、マクロ経済学の世界に同じぐらい大きな改革が求められています。"

"ジャクソンホールの「金融政策への挑戦」で、この点に焦点があてられることを願っています。まああんまり期待していませんが。"

https://twitter.com/paulkrugman/status/1164604703424090112

"ラリーサマーズのスレッドおもしろい。まあ僕はいくらか疑問点ももっているけどね。あのあらぬ方向に曲がったISカーブには納得していない。でも全体の方向性としてははっきり正しい。次の不況中央銀行に何かできる力が残っていると信じる理由ほとんどない。"

"中央銀行はそうは言わないけどね。でも彼らの立場も考えてやれよ。ドラギやパウエルが「うちらもうお手上げですわ」って言ってみ?マーケットパニックなっちゃうよ。何もできなくても自信があるふりしなきゃならないのさ。"

"さらに2点。僕には中央銀行はまだこれが一時的ポスト金融危機時代の姿で、将来「正常化」できるかのように語り、振る舞っているように見える。でもね、もうリーマンショックから11年だよ!"

"言い換えれば、これが21世紀ノーマルなんだよ。グレート・モデレーションマクロエコノミクス中央銀行景気循環コントロールし、財政政策緊急措置、そんな時代は戻ってこない。"

"ラリー1970年代インフレマクロ経済思想刷新につながったことにも触れ、僕らも同じことをしなきゃならないと言った。僕も、なぜ今までそれがおきていないのか、僕らは厳しく問い詰められなければならないと思う。"

"結局のところ、現時点まで超低金利と持続的な需要不足は、スタグフレーション時代よりも長く続いている。1970年代の7~8年の不調がすべてを変えたのに、2008年以来の11年でなんでこんなに変っていないの?"

"僕の考えでは、社会学と政治学のミックスに答えがある。しつこくつきまとう長期停滞の害悪は、保守的アジェンダを産み、経済学者古典派に回帰させた。だがまだ対照的方法が残っている。"

"ジャクソンホールラリーサマーズ以外にも持続的な財政刺激策を主張する人がいて、オリヴィエブランシャールを呼んで財政赤字を騒ぎ立てることが見当違いだって言わせればおもしろいと思う。レポート求む。"

(訳は適当です。マクロ経済学の知識がない人も分かるようにことばの意味を補っている箇所もあります。)

追記

参考文献を紹介しておきます

Robert J Gordon "Macroeconomics 12th Edition"

https://www.amazon.com/Macroeconomics-12th-Pearson-Economics-Hardcover/dp/0138014914

ロバート・J・ゴードンアメリカ経済 成長の終焉

https://www.amazon.co.jp/dp/B07KWMYP13/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

ローレンス・サマーズ、ベン・バーナンキポール・クルーグマンwithアルヴィン・ハンセン「景気の回復が感じられないのはなぜか-長期停滞論争」

https://www.amazon.co.jp/%E6%99%AF%E6%B0%97%E3%81%AE%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%8C%E6%84%9F%E3%81%98%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%8B%E3%83%BC%E9%95%B7%E6%9C%9F%E5%81%9C%E6%BB%9E%E8%AB%96%E4%BA%89-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/4790717313

2019-07-31

貨幣視点にとらわれすぎてはいいか

https://www.newsweekjapan.jp/noguchi/2019/07/mmt2.php

への批判

顕名での場所だと面倒なのでここに。

筆者は貨幣供給を内生的、外生的とよんでいて、その対立だと述べている。ただ、内生的、外生的というのが、何を指しているのかいまいちわからなかった。

内生的操作ベースマネーでの操作、外生的というのを、金利操作を通じた信用乗数操作なのかなとは感じるが。

ベースマネー×信用乗数マネーサプライ−①

マネーサプライ×貨幣流通速度=国内総生産(=総需要=総供給)−②

の式がある。

信用乗数は、銀行融資を増やすこと(信用創造)による通貨増(銀行が預けられた金を元に、貸出をしても預けられた金は銀行にあり、預金者が自由に使える。よって、貸出分と、預けた分で金の量は増えてる)

貨幣流通速度は通貨取引に回される回転数。金の回転のこと。

中央銀行ベースマネー操作できる。ただし、日本全体での貨幣であるマネーサプライである

信用乗数本来金利の調整である。ただ、金利というのも金の需要資金調達)と供給(貯蓄)のバランスでは本来決められる。

現在金利が非常に低くても、融資、増資など資金調達が増えない状態にある。IS-LM分析(I:投資,S:貯蓄,L:流動性選好,S:貨幣供給)に見ると、金利が低いため、LM線が水平の部分にかかっていて、

わざわざ融資をしてまで設備投資をしないよねという状態

まり流動性の罠の状態に陥っている。

融資による信用創造が起きない。だから、外生的操作機能しなくなっている。リーマン・ショック後、世界各国は内生的操作であるベースマネー操作をした。そんなことをしたらハイパーインフレになってしまう!と言われた。実際には、マイルドインフレ自体も成せていないが、それ以前のデフレからは少し抜けた。

さて、この状況を見て、流動性の罠だから、外生的操作信用乗数操作)は限界で、内生的操作ベースマネー増加)が意味がある。という議論だ。

という論が強くなった。だから、それが内生的、外生的の議論であろう。内生的、外生的が、僕の想像した定義と合っていればだが。

なので、筆者のIS-LM分析は間違ってると思う。ゼロ金利に近いがLM曲線が横に寝ている状態にあるから利子率が上昇しないってこと。現在LM曲線流動性の罠の水平と見るべきだろう。

まあ、日本ではマイルドインフレを成せなかったのは消費税増税の悪影響もあったが。

さて、ここで、ベースマネー信用乗数貨幣流通速度の統計を見てみよう。(画像貼れないので各々検索ぅ!)

ベースマネー急上昇、信用乗数低下、貨幣流通速度低下。が起きている。

だが、もう一度①,②の式へ戻ってみよう。

インフレデフレは、あくまで総需要、総供給関係とすると、②式が重要。そして、貨幣流通速度は定数だと考えられていたが、実際は変数で、低下している。

貨幣流通速度側の対策もしないとならない。そして、政府支出自体貨幣流通速度の一要素なので、最終的な総需要、総供給に影響を及ぼせるということ。つまりマイルドインフレに導けるということだ。

からこそのマネタリスト批判ということもあるだろう。マネタリストは、数量貨幣説を持ち出すが数量貨幣説はまさに①.②の式であり、最後貨幣流通速度まで関わってこそ意味があるものからだ。

貨幣流通速度が低下している基では成り立たない。マネーサプライ貨幣流通速度を同時に対策しないとならないということだ。そこで、マネーサプライ偏重マネタリスト批判されているのだろう。数量貨幣説を根拠にしつつ、貨幣流通速度が定数だという誤った仮説をもって、数量貨幣説を無視しているから。

ただ、信用乗数金利が0以下にならないからもう限界だ。

なので、現在金利をそのまま維持するように誘導して、ベースマネー、及び、貨幣流通速度の対策両方をすることになる。それが、ベースマネーを発行させての財政出動だ。

マネーだけの対策では不足だというのが、マネタリスト批判

というのが、筆者への批判

ただし、僕もMMTも完全に賛同しているわけではない。新自由主義に比べればはるかに良いとは思っているが。

ひとつは、輸入、及び外貨借金の増大に対する影響。もうひとつは、IS-LMのL:流動性選好の問題だ。

資金過不足統計上(貯蓄投資バランスISバランス内部)の振る舞いから示す。

ISバランス上、政府資金不足=資金需要資金調達ISバランス投資と、他の主体資金余剰=資金供給ISバランス貯蓄は一致する。

(この式の理由マクロ経済学の入門の本、サイトならならどこにも書いてるからISバランス、貯蓄、投資あたりで検索ぅ)

MMTによる財政出動は、ISバランス上、国内預金を元に政府国債を発行するのと変わりがない。なので、政府資金不足側にかたよる。そうすると、他の主体である家計企業海外資金余剰側にかたよる

別の言い方をすれば、政府支出して、国内企業家計が儲かれば、いろんなことに金を使って、最終的には誰かの懐に落ち着くよね。ということ。

国内家計国内企業ならいいのだが、海外から物を買うとなると少し問題がある。というのは、日本家計企業あくま日本円で買ってるが、海外相手にはそれを外貨に変えて、支払ってるからだ。

また、輸入が輸出より大きい時は外貨借金調達している。財サービス利益収入などをひっくるめて、海外の収支全部の合計を経常収支という。差分赤字が出た時は自国通貨が流れ出ているか借金をしているかのどちらか。

まあ、なので、基軸通貨であるアメリカMMTによる財政政策に躊躇することはない。自国通貨海外に流れでても、発行すりゃいいだけだから痛くも痒くもない。

日本も、経常収支黒字である間は問題がない。

この外貨による借金(経常赤字)が積み重なると、やばい財政破綻となる。ギリシャアルゼンチンなどは経常赤字の積み重ねで、もうこれ以上借金ができないという時に輸入が急ブレーキがかかり、自国通貨が下落した。

なので、日本国民、日本企業あくまで、日本製品を選び続けるぐらい日本企業が強くないとならない。

もうひとつは。LM曲線流動性選好だ。

これは何かというと、銀行預金にして、銀行が貸し出すなり、あるいは、誰かの出資依頼に答えて出資するか、あるいは銀行にためておくかの問題だ。

金利が低下すると、融資出資しても焦げ付いて意味がない可能性があるので、誰かの資金需要に答えずに貯めこむままでいておく。

というしてん。ただ、僕はここに、フリーハンド法人税減税、累進所得税減税の影響も絡んでいる。

富裕層は必需品は買っているから、金を貯めこむ比率高まる企業そもそも消費の主体ではない。適切な設備投資案件がないと思えば貯めこんでしまう。

そういう特性があるのにバカバカこの貯めこむ主体を減税してきた。

から流動性選好で金利が低下したという影響に加えて、そもそも流動性選好で、LM曲線を寝かす働きが

フリーハンド法人税減税、累進所得税減税にあるのではないか?というのもある。

とすると、あくまで、法人税減税、累進所得税減税をやめて、元に戻す。ただし、具体的に何か設備投資に繋がる支出や消費であれば減税するという形にして、LM曲線流動性選好を操作してやる必要もあると思う。

先の、日本国民、日本企業日本製品を選び続けるぐらい強ければ財政破綻は起きないと述べた。だが、フリーハンド法人税減税は、設備投資低下につながっている。

経常収支黒字だが、貿易収支赤字を出すようになっている。液晶が敗れ、液晶の次の技術である有機EL液晶地場を作って有機ELにかけた海外会社のものになりました。

リチウムイオン蓄電池日本負け気味だし、この感じだと、リチウムイオン蓄電池地場をつくた会社全固体電池でも勝つのかもねと思ってる。

なので、デフレで緊縮なんてことをしないのはもちろんだが、企業設備投資誘導研究投資誘導も併用する必要はある。

2019-07-19

韓国政策金利を引き下げたわけだが

どうも俺にはすでに流動性の罠はまっているように見える。韓国はこれから相当しばらくデフレを味わうのではないか

2018-09-24

anond:20180924102944

①世の中には現に悪文が存在する

現実としてどうしても読みにくい文は存在し、それを一つずつ潰していくのは不可能なので、

世の中で生きるには「悪文読み解き能力」が必要になってしまう。

理想論ではなく現実問題として、このような読解力を鍛える必要があるという話が1点目。

②難しい概念を、情報を失わずシンプルな文にすることはできない

Wikipediaの「流動性の罠」より

景気後退に際して、金融緩和を行うと利子率が低下することで民間投資や消費が増加する。しかし、投資の利子率弾力性が低下すると金融緩和の効果が低下する。そのときに利子率を下げ続け、一定水準以下になると、流動性の罠が発生する。

利子率(名目金利)は0以下にならないため、この時点ではすでに通常の金利政策限界に達している。金利が著しく低いため、債券の代わりに貨幣保有することのコストゼロとなり、投機動機に基づく貨幣需要が貨幣供給に応じて無限に増大する。

これが簡単な文か難しい文かと言われると、おそらく難しい文だと思う。

しか用語意味を過不足なく説明する上では最大限に単純化された文章である

(元の情報量を損なわずに、この文章をこれより簡単に書くことはできない)

大学職場ではこういう学術的な説明を読んで理解する必要があるので、読解力だけは先に訓練しておく必要があるという話が2点目。

単純化が向かないジャンル文章もある

たとえば小説特に純文学)など、読みやすくあることが最大の評価項目におかれていない文章形式もある。

勿論小説も読みやすい方がいいのだが、それはあくまで2次3次の評価点でしかない。

文章の美しさ、重厚さ、共感性などを踏まえ、その上で読みやすさが重視される)

これに加えて詩や韻文、俳句などはさら文字数や頭韻・脚韻の縛りもある。

こういう文章を楽しめるようにするために、複雑な構造を読み解く読解力が必要だという話が3点目。

2016-11-16

物価水準の財政理論』 (FTPL, Fiscal Theory of Price Level)

物価水準の財政理論』というのはその名前ミスリードもので、基本的には「まともな経済なら、現在政府債務の実質価値は、将来にわたる実質の基礎的財政黒字インフレ税の合計を実質利子率で割り引いた現在価値に等しくなっている」という予算制約式でしかない。ここに、将来までの金利や基礎的財政黒字などはある固定値であるといった追加的な仮定を入れると、政府債務の実質価値一定となるため、政府債務の量と物価水準が比例的関係を持つようになるのでまさに『物価水準の財政理論』という感じになるが、別に将来の金利や基礎的財政黒字などは固定値となる理由はない。固定値どころか、政府債務の量と無関係に外生的に決まる(たとえば政府財政支出を減らしたり、税金を引き上げたりして、財政赤字対処しない)という保証すらない。実際にはこの制約式から言えるのは、ある政府債務の下、現在および将来想定される金利政策税制策、支出政策の組み合わせが決まれ物価水準が決まるということである。たとえば一定金利政策の下で、政府が基礎的財政赤字を早く削減しようとすれば、名目債務が増加しても制約式を満たす物価水準は下落となるケースも考えることが出来る。

ここで、流動性の罠の下では金利政策税制策、支出政策のうち金利政策流動性の罠が続く当面の期間においてゼロで固定値となるため重要度が下がり、残りの財政面の現在および将来のパス物価水準に主体的な影響力を持つ。ただし、流動性の罠にない場合には財政面はその決定的な影響力を失い金利政策との兼ね合いとなってしまう。そして現実的な増減の範囲では財政面より金利政策の方が物価水準に与える影響が大きい(小さな金利政策の変化の影響を打ち消すのにさえ大きな財政面の変化が必要になる)。その結果、流動性の罠にあるときには財政から物価水準を考えるのが正しくても、それを流動性の罠にないときにまでそのまま伸ばせない。

また、財政面が効果を持つの現在政策のみならず将来のパスも含めてであり、いま財政拡張的にしてもその分だけ将来に緊縮が行われると思われてしまうと物価水準への影響力も失われてしまう。流動性の罠にある間は財政拡張を続けることへのコミットに加え、流動性の罠から抜け出したあとには財政は通常時のルールへの復帰にとどめそれまでの拡張による債務の増加分を取り戻そうとはしないことへもコミットすることが重要になる。

2014-04-20

異次元緩和ベースマネーを50兆増やした≠世に出回る金が50兆増える

異次元緩和はあくまで流動性の罠が終わって貨幣乗数流通速度が平均レベルに戻った

ずっと将来におけるベースマネーを増やすという予想を与える政策

「今のベースマネーを増やす+将来までそのベースマネーを吸収しないと約束」することに

よってその予想の変化を起こそうとしている。今増えるのは、将来の金回りが悪いと思って

設備投資や人員拡大を忌避していたのが予想の変化により投資雇用を増やそうとして

借り入れをするようになった分だけである。この分は今増えているベースマネーのものではない。

ベースマネーも今それが全て世に出回ることが目的とされていない。異次元緩和で増やした

ベースマネーが平均レベルに戻った貨幣乗数を伴って世に出回るのはずっと将来であって今ではなく、

からこそ今出回っていないから意味のないと言えるようなものでもないのだ。

2012-04-10

http://anond.hatelabo.jp/20120410012557

そりゃ財政出動為替介入同時にやる方が効果高いだろうけど、「金融政策デフレ脱却は不可能」という人は日銀が数百兆規模で国債購入してもインフレは起きないと思ってるんだろうか

もしそうなら筋が通ってるけど、リフレを否定する人はたいてい早く財政再建すべきって人ばかりなんだよな

それに流動性の罠で完全無効ってのが本当だとしても日銀が早期利上げに動けば小規模な景気回復で終わってしまう点は忘れないでほしい

2010-02-21

リフレインフレ目標の違いについて

http://anond.hatelabo.jp/20100220230624

将来のインフレ目標に(したがってそれを達成する貨幣供給量に)コミットすることにより期待インフレ率を操作するメカニズムは、通常のインフレ目標政策流動性の罠からのインフレ目標による脱出も全く同じでしょう。

だから全然違う。

ブランチャードらが言及した4%ターゲットを含む一般的なインフレ目標の議論で問題になるのは、中央銀行に(短期的に)目指すべきターゲットレートを超えるインフレ率を設定するインセンティブが事後的に発生してしまうという点。いわゆる時間的不整合性の問題(この問題の解決法は多くの方法が散々議論されているので、適当テキストなり論文なりを自分で参照してもらいたい)。だから、2%のターゲットレートを4%に引き上げることによって、コミットメントの問題が追加的に発生することはない。前回の繰り返しになるが、もしも4%の達成を一般の人々が信じないのなら、中銀は喜び勇んで金利を下げるだけの話だ。

一方で、ゼロ金利制約下では、今実質金利を引き下げるには、将来時点で一定期間均衡インフレ率を上回るインフレ率を達成することにコミットせねばならない。しかし、仮にその宣言が信頼され、経済が安定成長軌道に復帰してきたとき、Forward lookingな中央銀行には過去約束を守るインセンティブがない。むしろ、この時点においては以前からコミットしてきたインフレ目標の遵守を迫られることになる(インフレ目標を置いている場合)。この場合、インフレ目標リフレ政策とを実行するインセンティブは両立し得なくなる。ここまで書けば両者の違いについて理解してもらえるだろうか。

公平を期して書くと、Eggertsson and Woodford (2003)でも、このコミットメントの困難性は認識されており、それを解決する方法、それが日本でなぜ実行されないかの類推までもが議論されている。興味深い議論なので、こういう話が好きなら読んでおくべきだろう。ここを読むと、Eggertsson and Woodford (2003)の議論が少し違って見えてくるのではないかと思う。この部分が日本語で議論されているのは寡聞にして見たことがないのが残念だが。

それから、上で散々書いたのでこれ以上嫌みったらしいことを書きたくはないが、一点だけ。

なんか根本的に理解してないんじゃない?

増田なんだからどんな放言をしても構わないと思うし、それを失礼だ!と憤るつもりもないが(自分もやっていることだし)、一つ質問させて欲しい。君がこれを書く前に、インフレ目標政策理論についてどれだけ勉強した?君が「自分根本を理解している」と明言できる自信は一体どこから来るんだろうか。前から気になっていたのだが、リフレを議論する人たちは(賛否に関わらず)、自分意見に反論されるとすぐに「経済学が分かっていない」とか「トンデモ」だとか言い出す傾向が見受けられるように思う。十分に勉強した人間が、確固たる確信を持ってその言葉を口にするなら構わない。ただ、外野から見ていると、そうでもない人間が軽々にそう言うことが目に付くように思う。それは、結局リフレに関わる議論それ自体の価値を貶めているように思うのだが。

2010-02-20

http://anond.hatelabo.jp/20100220102640

全然違うに決まってるじゃないか。ブランチャードが議論しているのは均衡インフレ率の話

え。金融政策が均衡インフレ率を操作できるって? おかしいな。なんか根本的に理解してないんじゃない?

将来のインフレ目標に(したがってそれを達成する貨幣供給量に)コミットすることにより期待インフレ率を操作するメカニズムは、通常のインフレ目標政策流動性の罠からのインフレ目標による脱出も全く同じでしょう。

2010-02-18

http://anond.hatelabo.jp/20100217215359

確かにブランシャールは、以前に考えられていたほど流動性の罠からの脱出がやさしくないと言っているんでしょう。しかし、それは別に、より高いインフレ目標コミットするという政策が誤っていることが学術的に示されたというわけではないでしょう。リフレ政策が誤りだと分かったということが、この論文で初めて主張される内容ならば、当然にその根拠を示しているはずではないでしょうか。また、そうでなくて、既に他の研究で誤りが示されているのならば(他の主張の一つ一つに丁寧に参考文献を示しているのと同様に)その根拠となる文献も示すはずです。

余計な推測は最小限にして、明示的に書いてある内容、つまり「これは日銀が…と片付けられてしまった」(が、実際はそうではなかったと)いう文章からすれば、日本の(あるいはひょっとしたらhttp://krugman.blogs.nytimes.com/2009/11/13/its-the-stupidity-economy/クルーグマンが心配しているように米国の)政府中央銀行が十分な能力あるいは意思を欠いている可能性を、以前より深刻なものとしてとらえなければならないという事でしょう。

つまり「ブランシャールは経済政策としてのリフレを未だに支持しているが、政治的な実現可能性を以前より危ぶんでいる」というのが正しい解釈かと。

2010-02-17

リフレ村の司祭様かく戦えり

せっかく2時間もかけて前のエントリーを書いたのに、丸一日経っても誰も読んでくれないよ…と涙に暮れていたのですが、なんとお褒めの言葉付きで長文のリプライが!「もうこれは2chに自作自演宣伝書き込みをするしかない」、と悲壮な決意を固めかけていたのですが、ああ、神様、どうやら私は人の道を踏み外さずにすみそうです。

馬鹿なことを書くのはこれくらいにして本題に入りましょう。

http://anond.hatelabo.jp/20100217164344

「中銀が高めのレートでインフレターゲットを実行する」能力も意志もないのです。処方箋はあるのに肝心の中銀がそれを採用しようという意思がないのです。

こんな中銀ですから、平時においてインフレ率を高めに誘導しておく必要が、すなわち名目金利引き下げの余地を残しておく必要があるのです。

名目金利引き下げの余地を残しておいて流動性の罠に陥らないようにしておかないといけないのです。

まず、ブランチャード(フランス語読みではブランシャール)らがここで書いた文章の表題をもう一度確認してみましょう。”What we thought we knew”とあります。直訳すれば「我々が理解していると考えていたこと」でしょうか。

ここで過去形になっていることは非常に大きな意味を持ちます。これは「今はもうそうは考えていない」ことを意味しているからです。日本語的な発想では「過去にそう考えていたとして、今どう考えているかは分からないのでは?」と思いがちですが、今も引き続きそう考えているなら英語では現在完了形を使わなければなりません。

英語はこの辺りの時制のコントロールに対して非常に厳密です。ですから、1970年のJohn Smithの論文がこう主張している、という表現をするときには、J. Smith (1970) arguesと書くのが普通です。論文自体が書かれたのは40年前ですが、Smithの主張が今も有効であるならば、現在形になるのです。逆に Smith (1970) arguedと書いた場合、この著者はSmithの意見を既に時代遅れなものと見なしていることになります。

つまり、私の翻訳した部分はブランチャード自身が「既に時代遅れである」と判断したことについて書いてあるのです。翻訳では若干時制が不明確になってしまっていますが、『中央銀行が将来の高い名目マネーサプライ成長率とひいては将来の高いインフレーションコミット訳注約束)できるなら、中銀は期待インフレ率の上昇によって将来の予想実質金利を低下させ、それによって現在の景気を刺激することが出来る』という下りは、原文では

The formal argument was that, to the extent that central banks could commit to higher nominal money growth and thus higher inflation in the future, they could increase future inflation expectations and thus decrease future anticipated real rates and stimulate activity today.

となっています。過去形に注目してください。ブランチャードはこの議論を最早信じてはいないことがここからも分かります。過去形解釈について納得がいかない方はマークピーターセンの「日本人英語」辺りを読んでみると良いでしょう。

つまり、ブランチャードが批判的に取り上げているのは、「処方箋があるにもかかわらずそれを採用しようとしない中銀の存在」ではありません。処方箋に問題があるにもかかわらず、それを中銀の意思と能力の問題に矮小化してしまった経済学者の態度こそが批判されているのです。だからこそ、前回翻訳した最後の部分で『公平を期しておくと、Fed日本経験を無視したわけではなく、2000年の初めにデフレリスクを憂慮した論文を発表している』と添え書きされているわけです。経済学者にも良心的な態度を取った人がいたことは、公平のために言及しておく、と。もしも「リフレ処方箋」にコミットする能力と意思を中銀が欠いていることをブランチャードらが問題視しているなら、to be fairなどと書くはずもないことは文脈から明らかでしょう。

ですから、

将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力も意思も欠いた中銀だからこそ、4%のインフレ率が必要となるのです。

将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力も意思も欠いた中銀だからこそ、流動性の罠など恐るるに足るのです。

流動性の罠に陥らないようにするために、4%(具体的な数値は検討の余地があるでしょう)のインフレ目標が必要になるのです。

この解釈ブランチャードらの論文から引き出すことは出来ないと思います。この論文で議論されているのは徹頭徹尾経済学の問題であって、「能力と意思を欠いた」中央銀行に対して批判的な表現は、(上でも書いたとおり)少なくとも私の読んだ限りでは全く見当たりませんでした。中央銀行能力も意思もないから、それを前提に現実的な経済理論を再構築しよう、とも書いていません。今まで半ば普遍的に信じられていた、「2%前後で安定したインフレ率が望ましい」という経済学者コンセンサスそれ自体に疑義を唱えているのです。

加えて、中銀が無能ないしは怠惰であるという理由以外で能力/意思を欠いているのであれば、それは中銀の問題(だけ)ではなく処方箋の側に(も)問題があると考えるのはごく普通の理解であろうと思います。例えば、中銀にそもそもコミットメント能力が備わっていないならば、それを前提とした処方箋は無効であることは当然ですよね。

「いかにして流動性の罠に陥らないようにすればよいのか」を問題にしているブランチャードが、「いかにして流動性の罠から抜け出せばいいのか」という問題への処方箋であるリフレ政策を支持するはずも否定するはずもないのです。

前回翻訳した部分をもう一度参照してください。なぜブランチャードらは2%のインフレ率を望ましくないと判断したのでしょうか。ブランチャードらは過去にも「2%のインフレでは低すぎる、利下げ余地が小さすぎる」という懸念があったことを紹介しています。そして、その懸念は「ゼロ金利になっても、中銀が将来のインフレコミットすれば大丈夫だ。」という、Eggertsson and Woodford (2003)らの議論によって葬り去られました。そして、日本金融政策の失敗を受けても、一度葬り去られた懸念が見直されることはありませんでした。

そして、世界中ゼロ金利の罠にハマった後、ブランチャードらはようやく「2%のインフレでは低すぎる、利下げ余地が小さすぎる」という懸念を復活させます。それは、「いやいや利下げ余地が小さくても問題ない、打つ手は他にある」、というリフレ派の議論がもはや有効とは言えないと考えられたからこそなのです。繰り返し書きますが、「流動性の罠から抜け出す簡単な方法は存在しない」からこそ、利下げ余地が論点として再浮上し、高いインフレに伴う経済への負担を覚悟してでも流動性の罠に陥らないようにしようという結論に至る、という論理構成なのです。この論文はかなり読みやすい英語で書かれていますので、暇があれば通読なさると良いでしょう。

また、以上の説明から、最終段落で言及されている「ブランチャードらは流動性の罠から脱出するためのリフレ政策を支持していると読めないこともない」点は、誤読であると申し上げるより他ないことはご理解頂けるのではないかと思います。この辺りも、原文に当たられた方が文章の雰囲気と構成("stood more uneasily in the way"や"to be fair"など)をよりはっきりと掴めるでしょうから、原文を当たられることを繰り返しお勧めします。

最後に、ブランチャードが書いた部分を、少し分かり易く脚色してみます。

とあるところにあるリフレ村で司祭様が村人に説教をしています。

司祭 「全能なる我らが神はこの村の人々を温かく見守ってくださっておる。なんの心配もいらないよ、君たちは選ばれた民なのだから。100年前の大飢饉大恐慌)では人々は神への祈りを捧げなかった。だから多くの民が死に絶えたのだ。だが今は違う。私が正しい神への祈り方を教え授けている。神は我らの祈りを請け給うたのだ。」

 「司祭様。それでは何故私の父は病に苦しんでいるのでしょうか。既に10年以上、病床を離れることが出来ません。」

司祭 「…それは、あなたの父親の信心が足りないからだ。神を理解する能力に欠けるからだ。彼が心から神を信じているならば、彼の病が長引くことなどあり得なかった。家に帰って彼に伝えなさい。悔い改めよ、と。さすれば彼はたちどころに快復するであろう。」

これは新興宗教の必勝パターンでありまして、この父親が毎日祈りを捧げても(量的緩和)、喜捨の額を増やしても(国債買いオペ増額)、病から快復しないならば「信心が足りない!まだ不十分だ!」と言い続ければよいのです。楽な商売でございます。

ただし、この戦法は多くの村人が病にかかってしまうと通用しなくなります。挙句の果てに村の外からは賢者様がやってきて、「いや、そのお祈りじゃ患者は救えないでしょ。治療法は確立されてないし、一度病気なっちゃうと後が大変だから、とりあえず患者が増えないように予防策を考えようか」とおっしゃっておられます。

さぁ司祭様の立場は一気に悪くなってまいりました。石もて追われる5秒前!しかしこのまま大人しく村を去る司祭様ではありません。一発逆転の隠し玉は当然用意してあるはず。疫病快癒の大祈祷でもって見事リフレの神のご威光を天下に知らしめ、村人達笑顔を取り戻して下さるに違いありません。

というわけで、外野増田矢野先生(及びリフレ村の司祭様方)の逆転の一撃を心よりお待ちしております。

ブランチャードはリフレを支持も否定もしていない件について

http://anond.hatelabo.jp/20100216112730

明快かつ痛快な解説。ただ一点だけ同意できない点があるのです。

池田先生なんかよりずっと英語が読めている我らが増田一同の代表氏曰く、

リフレ派の人たちが主張するとおり、「ゼロ金利制約に陥っても、中銀が高めのレートでインフレターゲットを実行すればデフレから脱却できる!」のであれば、なにも4%のインフレを許容してまでゼロ金利回避する必要などありません。処方箋はあるのですから、それを粛々と実行して安定成長へと復帰すればよろしい。」

おっしゃる通りです。ただし、「中銀が高めのレートでインフレターゲットを実行すれば」という点がなかなかに厄介な障害なのです。

ブランチャード他は以下のように指摘しております(素晴らしい訳を利用させていただきましょう)。

日銀が将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力ないしは意思に欠けるからであると片付けられてしまった」

「中銀が高めのレートでインフレターゲットを実行する」能力も意志もないのです。処方箋はあるのに肝心の中銀がそれを採用しようという意思がないのです。

こんな中銀ですから、平時においてインフレ率を高めに誘導しておく必要が、すなわち名目金利引き下げの余地を残しておく必要があるのです。

名目金利引き下げの余地を残しておいて流動性の罠に陥らないようにしておかないといけないのです。

というのも、この国の中銀は将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力も意思もございませんから、一旦流動性の罠に陥ってしまえば、長引くデフレ不況という辛い未来約束されているからです。

そういうわけで「リフレ政策があれば流動性の罠など恐るるに足らない、だから4%のインフレ率なんか必要ない!」と高らかに宣言することはできないのです。

将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力も意思も欠いた中銀だからこそ、4%のインフレ率が必要となるのです。

将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力も意思も欠いた中銀だからこそ、流動性の罠など恐るるに足るのです。

流動性の罠に陥らないようにするために、4%(具体的な数値は検討の余地があるでしょう)のインフレ目標が必要になるのです。

ただ、以上の話はいかにして流動性の罠に陥らないようにするかという話であります。

一旦流動性の罠に陥ってしまった経済がいかにして流動性の罠から脱却すればよいのか、という話とは次元の違う話です。

つまりは、ブランチャードらによるインフレ目標4%の提案は現在日本経済が抱える問題、いかにして流動性の罠から抜け出したらよいのかという問題とは分けて考えるべきなのです。

ブランチャードはリフレを支持もしていなければ否定もしていないのです。

ブランチャードは「いかにして流動性の罠に陥らないようにすればよいのか」を問題にしているのです。

リフレ政策というのは、「いかにして流動性の罠から抜け出せばいいのか」という問題に対する一つの処方箋であります。

「いかにして流動性の罠に陥らないようにすればよいのか」を問題にしているブランチャードが、「いかにして流動性の罠から抜け出せばいいのか」という問題への処方箋であるリフレ政策を支持するはずも否定するはずもないのです。

そもそも取り組んでいる問題が違うのです。

(ただし、ブランチャード他はリフレ政策の有効性もきちんと指摘しております。再度素晴らしい訳を利用させていただきますと、

なぜなら、中央銀行が将来の高い名目マネーサプライ成長率とひいては将来の高いインフレーションコミット訳注約束)できるなら、中銀は期待インフレ率の上昇によって将来の予想実質金利を低下させ、それによって現在の景気を刺激することが出来るからだ(脚注

この文章にはEggertsson and Woodford (2003)への参照がなされていますから、ブランチャードら自身の意見というよりは、こういう議論もあるよ、という紹介にすぎないのかもしれません。この点に留意しつつも、「中央銀行が将来の高い名目マネーサプライ成長率とひいては将来の高いインフレーションコミット訳注約束)できるなら」流動性の罠から脱出できる、という話でありますから、流動性の罠から脱出するためのリフレ政策を支持していると読めないこともないでしょう。)

2010-02-16

ブランチャードはリフレを支持していない件について

リフレ村の方では「ブランチャードがインフレ率を4%前後に誘導することに言及した」ことで色々と盛り上がっているようでありますな。

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20100214#p2

要するに、マクロ経済学大御所ブランチャードが「今まではインフレ率は2%前後に誘導するのが望ましいとされていたが、2%程度だとゼロ金利に陥りやすいので、もう少し高めの4%前後インフレ率を誘導した方がいいのかもしれない」という論文を発表したと。で、日頃から高めのインフレターゲットによる景気回復を主張なさっている皆様が盛り上がったという構図のようであります。

で、それに対して(直接言及があったわけではないものの)、我らが池田先生が果敢に反論。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51377205.html

あちこちで話題になっているIMF論文をざっと読んでみた。日経の記事には「平時から4%など高めの物価上昇率を容認し金利水準も引き上げることで、金融危機のような経済ショック時の利下げの余地を広げることが望ましい」と書いてあるが、この記者は明らかに原論文を読んでいない(か英語が読めない)。論文にはこう書いてある:

Should policymakers therefore aim for a higher target inflation rate in normal times, in order to increase the room for monetary policy to react to such shocks? To be concrete, are the net costs of inflation much higher at, say, 4 percent than at 2 percent, the current target range?

[...]

Perhaps more important is the risk that higher inflation rates may induce changes in the structure of the economy (such as the widespread use of wage indexation) that magnify inflation shocks and reduce the effectiveness of policy action.But the question remains whether these costs are outweighed by the potential benefits in terms of avoiding the zero interest rate bound.

と書いており、むしろ高いインフレ目標には否定的だ。


うわぁ。読めてない。全然読めてないよ池田先生。ここでブランチャードが書いているのは、

ということであって、「高いインフレ目標には否定的」なんてこの段落から読み取れるわけがありません。これでは突っ込まれてもしょうがない。池田先生にはエントリーをアップする前に深呼吸を3回することをお勧めしたいと思います。


さて、一方でリフレ村で給食当番をなさっているらしい矢野先生は、高らかに以下のエントリーをアップされました。

http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20100215/p1

主要国のインフレ目標「平時から4%に」 IMF提言

(以下略)

「まあ、当然の話だよね」とリフレ派なら誰もが思う訳ですが、(以下略)

リフレ政策論争を巡って、誰が正しくて誰が間違っていたのか?」が明らかになる日が近づいていると思います。


…いや、先生ブランチャードの論文リフレを全然サポートしてません。ちょっと考えれば分かる話です。なぜブランチャードは2%ではなく4%のインフレを検討課題としてあげているのでしょうか?ご自身も翻訳されているとおり、「ゼロ金利制約(それ以上利下げできない状態)にハマるリスク回避するため」です。リフレ派の人たちが主張するとおり、「ゼロ金利制約に陥っても、中銀が高めのレートでインフレターゲットを実行すればデフレから脱却できる!」のであれば、なにも4%のインフレを許容してまでゼロ金利回避する必要などありません。処方箋はあるのですから、それを粛々と実行して安定成長へと復帰すればよろしい。

ブランチャードらがここまで繰り返しゼロ金利制約の問題を強調するのは、その処方箋が当てにならないと判断したからです。この点を明確にするために、以下でブランチャード論文の一節を翻訳します。この論文

  1. What we thought we knew (以前はコンセンサスとして認められていたが、今回の危機で否定されたか、疑問符が付いたアイデアを列挙している)
  2. What we have learned from the crisis (文字通り、今回の危機の教訓)
  3. Implications for the design of policy (今後の経済政策へのインプリケーション)

という3部構成になっており、問題の4%インフレは第3部の一項目です。以下で翻訳するのは第1部のB節、つまり「今や否定されつつある過去コンセンサス」について語った一節です。

http://www.imf.org/external/pubs/ft/spn/2010/spn1003.pdf

B. Low Inflation

インフレーションはただ安定しているだけでなく、非常に低く抑えられているべきだ(多くの中央銀行は2%前後ターゲットに選んでいる)」という広いコンセンサス(increasing consensus)があった。これはインフレによって流動性の罠へ陥ってしまうのではないかという議論へと繋がった。低い平均インフレは低い平均名目金利を招き、そして名目金利ゼロ以下には下げられないので、低インフレの下では不景気の際に利下げ(金融緩和)の余地が小さいと言うことになる。しかしながら、この低インフレ危険性は低いと見なされた。なぜなら、中央銀行が将来の高い名目マネーサプライ成長率とひいては将来の高いインフレーションコミット訳注約束)できるなら、中銀は期待インフレ率の上昇によって将来の予想実質金利を低下させ、それによって現在の景気を刺激することが出来るからだ脚注)。そして、それほど景気へのショックが大きくない世界では、2%のインフレがあればゼロ金利制約を回避するのには十分だと思われたのである。こうして、議論の焦点は、コミットメント重要性と中央銀行インフレ期待への影響力へと絞られたのである。

大恐慌時に発生した流動性の罠、それに伴うひどいデフレと低い名目金利は、もはや歴史上の出来事であると認識され、そのような政策の失敗は今や回避可能であると考えられた。1990年代日本経験、すなわちデフレゼロ金利および長く続く不景気は、この認識の前に不愉快に立ちふさがる問題だった。しかし、これは日銀が将来のマネーサプライ増と将来のインフレとにコミットする能力ないしは意思に欠けるからであると片付けられてしまった(公平を期しておくと、Fed日本経験を無視したわけではなく、2000年の初めにデフレリスクを憂慮した論文を発表している)。

脚注ではEggertsson and Woodford (2003)が参照されている)

ブランチャードらがなぜゼロ金利流動性の罠)に陥るリスクを重視するのか、このB節から明らかであると言えると思います。 特に太字で強調した部分を参照してください。どこかで見たことがある主張ではありませんか。少し分かり易く言い換えれば、リフレ政策が役に立ちそうにないから、「低インフレによって流動性の罠へ陥ってしまうのではないか」という懸念が復活しており、だからこそリフレ政策が必要になるような状況に陥らないように政策を運営すべきだと彼らは主張しているのです。4%のインフレ率というのはそのための政策案です(ただし、ブランチャードらもイマイチ自信がないのか、6つ挙げられた政策オプションのうち、この4%インフレの案だけは表題にクエスションマークが付いています)。

紅茶を片手に「まぁ、当然の話だよね」などと余裕をかましている場合ではありません。さぁ、今こそ高らかに「リフレ政策があれば流動性の罠など恐るるに足らない、だから4%のインフレ率なんか必要ない!」と宣言を!

外野増田池田先生矢野先生の熱い戦いを心から応援しております。

2009-11-10

http://anond.hatelabo.jp/20091110221313

現時点でいくら対策しようとも流動性の罠に陥って無意味

だから勝間とかは間違っている。

えー?流動性の罠に陥ってしまうからこそのインフレ目標じゃないのかな。

中央銀行インフレ目標を定め、この範囲内に収まるまであらゆる手段を行使する、という姿勢をはっきりと打ち出せば、インフレに誘導することは十分可能だと思うな。ていうか、日銀が今までそうしたリフレ的な政策を全くしてこなかったわけでもないし(量的緩和政策とか、円安維持のための非不胎化介入とか)、それらはある程度効果を発揮してきたんじゃないの。まあ、「引き締めに転じるのが早すぎる」って、いつもリフレ派から批判されてるけど。

金融日記中の人は、「そんなことより潜在成長率を上げろ」って言ってるみたいだけど、需要が冷え切った状態で潜在成長率を上げても、あんまり景気回復(というか国民生活の向上と言った方がいいのかな)に資するところってないのではないかしら。ヘタすりゃ却って需給ギャップが拡大するだけで終わりかねない。そもそも、潜在成長率を向上させるために政府が出来ることってそれほどないと思うんだよな・・・。どうしてって、将来の発展性が高い事業を見極めるなんて本職の人間にだって難しいのに、それを政府人間がやったって、親方日の丸で「有望事業」にカネ突っ込んで大失敗、なんてことになる可能性は少なくない(「民業圧迫を減らす」「無意味規制の緩和」辺りは効果があるかもしれないけど)。そういう将来の発展可能性のある産業政府に任せるよりかは、市場に任せる方がマシじゃないかね。

デフレインフレリフレ論争について。

みんなで議論しようよ。

俺は金融日記が正しいとおもうんだよね。

つまり経済成長なきインフレ政策は厳しい。

現時点でいくら対策しようとも流動性の罠に陥って無意味

だから勝間とかは間違っている。

みなさんはどーおもってるの?

2009-11-09

http://anond.hatelabo.jp/20091109174350

あとリフレ派なんてものはありませんよ。リフレ政策をバカにする人たちがつけたレッテルだと思っています。

私が言ってるのは、http://wiki.livedoor.jp/reflation/ にリンクしてるバナーです。リフレ派というのは、バカにする用語なんですか?いちご等で自称していたのでそうは思いませんでした。申し訳ない。

それでは本題。

Q1. デフレはよくないのではないか?

A1. デフレインフレもよくない。

まず最初からおかしい。マイルドインフレが一番望ましいというのは世界経済学者のほとんどが賛成する。たしか、そういう統計がどこかにあった。

 デフレインフレもよくない、これは、共通認識です。ただし、どちらかといえば低いインフレのほうがいいと考えている学者が多い。君の指摘は、揚げ足をとってるだけ。「Q1.1緩やかなインフレは悪いことですか? A1.ゼロインフレが好ましいので金融政策でゼロに近づけるべき」 という記述があって、「池田は主流の学者意見が違う」と言える。それでも、1+1=3のような間違えではなく、主流の学者と違う意見を持っているというだけだ。

 また、その場合にも、「たしか、そういう統計がどこかにあった。」いうような指摘は、学者を非難するのにはよろしくない。たとえば、「JEFFREY ROGERS HUMMEL (2007) Econ Journal Watch, 4, 46-59 にMost macroeconomists now favor a low but still positive rate of inflation. という表記がある。だから、池田意見は主要なマクロ経済学者の意見とは異なる」というように、ちゃんと文献をあげるべきだ。

 加えて次のECBHPを見てほしい(これは、Q2にも関係する)。普通中央銀行がかなりゼロインフレに近いインフレ値が好ましいと考えているのがわかる。

Reasons for aiming at below, but close to, 2%

Inflation rates of below, but close to, 2% are low enough for the economy to fully reap the benefits of price stability.

It also underlines the ECB’s commitment to

中略

# take into account the possibility of HICP inflation slightly overstating true inflation as a result of a small but positive bias in the measurement of price level changes using the HICP

http://www.ecb.europa.eu/mopo/strategy/pricestab/html/index.en.html

 以上のように、ヨーロッパ中央銀行は、HICP(Harmonised Index of Consumer Prices )で2%以下かつ2%に近いHICPを誘導目標としている。しかもHICPは、少量のポジティブバイアス(実際のインフレ値より少し多めにでる)性質がある。だから、ECB目標としているマイルドインフレは、かなりゼロインフレに近い。

Q2. 日銀はいくらでも紙幣印刷できるのだから、インフレにできるのでは?

A2. ゼロ金利状態では貨幣需要が飽和しているので、中央銀行マネタリーベースを増やしても銀行の貸し出しが増えず、市中に流通するマネーストックは増えない。

はい。これもおかしい。いわゆるバーナンキ背理法を理解していない。

 まず、バーナンキ背理法は、日本ネット社会に広がったスラングである。普通の「(経済)学部生が習うような」教科書に載ってるようなものではないし、(世界)標準の経済学者が使う用語ではない。バーナンキは、彼の師匠であるフリードマン敬愛をこめて、お金を刷ってヘリコプターで撒けばインフレになると言っただけである。それを日本人が変な名前を付けた。これは、無限お金を刷って(金融政策)撒けば(財政政策)、いつか・どこかで・なんらかの規模の物価上昇が高確率でおきるであろうとしか言えない。ヘリコプターマネーをすれば、適正な物価が保てるというものではない。

 それは、上記したECBHPにも見られる

provide an adequate margin to avoid the risks of deflation. Having such a safety margin against deflation is important because nominal interest rates cannot fall below zero. In a deflationary environment monetary policy may thus not be able to sufficiently stimulate aggregate demand by using its interest rate instrument. This makes it more difficult for monetary policy to fight deflation than to fight inflation.

 ヨーロッパ中央銀行ですら、「デフレ時には、金融政策で総需要の刺激ができなくなり、デフレに立ち向かえなくなる」と言っている。デフレ時に、金融政策(マネタリーベースを増や)しても、デフレ克服は難しいというのは、池田日銀だけじゃなく少なくてもヨーロッパ中央銀行意見でもある。

 また、「ゼロ金利状態では貨幣需要が飽和しているので、中央銀行マネタリーベースを増やしても銀行の貸し出しが増えず、市中に流通するマネーストックは増えない。」というのは、おそらく池田が嫌いなケインズ学派の流動性の罠という考え方であり、教科書に載っている。

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