はてなキーワード: 竹馬の友とは
この増田にASDだけが発達障害だと思うなよ的トラバがちょいちょいあるのに具体例が上がってないからでしゃばってADHD(注意欠陥優勢)語りするね。
まず最大の違いとして、ADHDの発達障害当事者は黙示のルールをだいたいは察知できる。ADHDはとにかく情報が大好きで情報でパズルすることがもっと大好きなので、”明示のルールの上では違反だけど、情報を繋ぎ合わせて考えると違反してもしょうがないところがある“黙示ならいくらでも飲む。パチンコがどうして三店方式を採用してるのか分かるし、学校にスマホを持ってきている友達を見ても「お母さんが車で送り迎えしてるから」みたいな事情を把握できれば放っておく。そもそも不良だったとしても怒りを抱けないので放っておく。これはASDとの大きな違い。
ADHDは相手の感情をなんとなく察知したり、頭が良いほうなら定型発達みたいに話すこともできる。そのうえで他人との接触をどうでもいいと思っている関係上ほとんど反発しないので、感情面においては、いわゆる発達障害特有の焦燥は生じにくい。ここでは話が逸れるので扱わないが、基本的にADHDの”つらさ“は身体面に集中している。
ADHDは自分の意志や感情を抱くことがなにより苦手なので、それを逆手にとって穏やかに振る舞うことができる。ADHDは喋るのもとろいのであんまりとげとげしいことは言わない。ADHDはぼんやり生きているので発言はいつも的を外しているし、言いたいことの7割くらいはそれを口に出す前に他のことに興味が移動するから、”“言いにくいことをついスパッと言ってしまって気まずい空気になる”“みたいなイベントはADHDにはめったに起こらない。
とにかくADHDが最も苦手としているのは、周囲に馴染むことではなく、情報に付随する情動やライブ感みたいなものを持続させること。ADHDはマホちゃんのスカートを見て「似合ってない」「ダサい」みたいなことを思えない。ああ、知らない形のスカートだ。初めて見たな。それだけ。
定型発達やほかの発達傾向のみんなが生のまま摂取できる情報を、ADHDはそのまま手に入れることができない。ADHDが知覚したものはすべて脳みそを通って漂白され、俯瞰的な情報としてだけ記憶に残る。なのでADHDは自我が希薄で、強い感情を抱くのがあんまり得意ではなく、いつもヘラヘラして見える。
ゆえに”黙示のルールの察知“こそできるものの、ASD増田と同じように「浮いた見た目の奴は笑いものにして馬鹿にしていい」ルールには従えない。ADHDには人を嘲る方法が分からないし、それを娯楽とできないので従うメリットがない。なのでこの辺は表面上同じ感じになる。
これによって軋轢が生じにくいのは、ADHDがあまりにもぼんやりしているせいで、こういうときに意固地になるような真面目ちゃんではなく、打っても響かないうすのろとして認識されるからである。
大元の増田の一番の違和感はここだった。とげとげして気が使えなくて思ったことをズバズバ言っちゃうのは”発達“の悪癖ではなく、とげとげして気が使えなくて思ったことをズバズバ言っちゃう定型発達の未熟さである。ADHDは他者に干渉しないので、萎びた観葉植物くらいどうでもいい穏やかでのっそり動く謎の生き物でしかない。
まともな人生を送りたい場合は障壁になることもあるが、素の性格に関わらず偏屈者ではなくまぬけとして認識されやすいのはADHDの大きな強みでもあるので、とにかくここが気になった。
ADHDはマホちゃんにあのスカートが似合わないことにも、周りのみんなが「いっしょになって嗤え」と要請していることにも気づかないが、情報の追加には敏感なので他の子がまずしないような服装であることには気づく。
ADHDは頭の中でとりとめもない情報同士を接続させることに人生のほとんどを費やしているので、”誰も履いていないようなフリフリのスカート“はファッションアイテムではなく”はじめて見る物体“であり、他の情報と接続されるのを待っている新しい情報である。すてきな新しい情報。マホちゃんに似合うかどうかは分からないしどうでもいい。そんなことより既知の情報とスカートを繋げるべく「プリキュアがあんなスカートを履いていたな」とか「ああいう鳥がいた気がするな。なんて鳥だったかな?図書室で図鑑が見たいな」みたいなことを考えはじめ、ADHDの知覚範囲からマホちゃんはいなくなる。
なのでマホちゃんに声もかけないし、マホちゃんがお友達にべったりな性質の子でない限り、高校生になる頃にはマホちゃんとは疎遠になる。
ADHDは来るもの拒まず去るもの追わずなので環境によっては知り合いを多く得られるが、人間関係を維持できないので竹馬の友はいない。
ADHDは人の話を最後までうんうんと聞き、口答えせず、ゆっくりと動き、細かいことを気にしないので、中高年や高齢者の相手をするのが得意である。なのでパートのおばさんから無視されることはあんまりない。
ただ、ADHDの動作は何もかもがとろくさく、仕事中にどうでもいい物事に気を取られるので怒られることは多いかもしれない。
ADHDは美術部には入ると思う。ADHDは自分以外の人間たちもみな、たくさんの情報を頭に流し込まれると幸せになると思い込んでいるので、自分の頭の中に入っている情報をいろんな形で出力して見せびらかすのが大好きである。というかそれ以外にまともなコミニュケーションが取れないので、ADHDにとっては、文章をしたためたり絵を描いたりすることは定型発達における世間話や歓談に相当する。
ADHDは先生のことを好きにならない。ADHDにとって全ての人間は情報の塊であり、有用な情報がたくさん詰まっている先生のことは心から慕うだろうが、それは人間への好意ではなく、使いやすい辞書とか見やすいwikiとかに対する信頼と同じ感情である。ADHDは強い感情を安定させることが苦手なので、恋愛感情が発生するまでテンションを上げ続けることができない。
ADHDは具体的でないアポを全て忘れるので、社交辞令で飲み会に誘われたことをそもそも覚えていない。ADHDは人間とのコミュニケーションを情報として知覚できないので、具体的なアポであってもたまに忘れる。
ADHDは交友関係を維持する努力ができないので、大人になったADHDのスマホにマホちゃんの連絡先が入っている可能性は限りなく低い。ADHDにとって他者との繋がりは最も価値の低い情報なので、スマホを新調するさい電話帳の引き継ぎを忘れるかめんどくさくて移さないに決まっている。もし奇跡的に連絡先が入っていても連絡する理由が分からないので、マホちゃんに電話する代わりにTwitterで久しぶりにたずねた地元のラーメン屋にかんするツイートをする。
ADHDに友達はいない。好きな人もいない。ADHDは悲しくない。ADHDの感情はいつでも「眠い」一択である。いろんな情報が絶えず頭に流れ込んでさえいれば幸せなので、ADHDは人間を欲しがらない。
まぁでもADHDはADHDなので職場で気にかけてくれるパートのおばちゃんは存在しているはずである。同世代の知人はいない。
ADHDはADHDの特性それ自体も情報だと思っているので、いろいろ調べたりする。そうしてこういう場をめざとく発見してはADHDの情報を見せびらかす。
たぶん多動が強い人はまたちょっと違うんだろうな。
おわり
優れた者同士の友情は虚飾がないため水のように淡い、ということわざ。
「君子の交わりは淡きこと水の如し」とも言う。
膠(にかわ)や漆(うるし)で固めたように強く結びついた友人のこと。
范式という人が、はるか遠く離れたところに住む張元伯とたまたま出会い、友誼を結んで二年後の再会を誓いあった。
その約束の日に、范式は鶏を殺し、黍を炊いてご馳走を作り、張元伯を待っていた。
周囲は「千里も離れているのに二年も前の約束のために来るものか」と言っていたが、はたして張元伯はやってきた。
この故事から、必ず約束を守るような信義で結ばれた友情のことをいう。
貧しいときに出来た友人のこと。
「貧賤の交わり忘るべからず」は、たとえ成功しても貧しいときの友人は大切にしなければならない、という意味。
「二人が心を合わせればその鋭さは金を断ち、その言葉は芳しい蘭の花のように周囲に影響を与える」という言葉から「金蘭の交わり」とも言う。
一緒に竹馬で遊んだ幼馴染、子供の頃から仲のいい関係ということ。
「竹馬の友」とも言う。
「縞」は「縞帯」で白絹の帯のこと、「紵」は「紵衣」で麻の着物のこと。
季札という人物が子産に縞を贈り、子産が返礼として紵を贈った、という故事から、親交の深いことを意味する。
琴の名手であった伯牙という人が、自分の音楽の最大の理解者であった友人が亡くなると、琴の弦を断ったという故事から、心の通い合った親友のことをいう。
先日10月7日の深夜、日本のツイッタートレンドに『#DFMWIN』のトレンドが入っていたのを覚えているだろうか。
DFMというのは日本のLoLのプロゲーミングチーム、DetonatioN FocusMeの事である。
そんな彼らDetonatioN FocusMeが今夜24時から世界大会本戦(Group Stage)の舞台で戦うので、余りにテンションが上がってしまったため、この増田を書くことにした。
まずLoL、League of Legendsというゲームをご存じだろうか。
このゲームはRiotGamesにより、2009年秋にリリースされ、今年で12年目となるゲームで、世界で最もプレイヤー数の多いPCゲームといわれている。
ジャンルとしてはMOBA(マルチオンラインバトルアリーナ)、最近話題のポケモンユナイトと同じジャンルだ。
5人チームで、すべてのキャラクターが毎試合レベル1からスタートし、経験値を稼ぎながら強くなって勝利を目指すゲームで、毎試合全員が同じ条件でスタートするから、課金じゃ強くなれない、実力差がもろに出るゲームだ。
ポケモンユナイトは1試合10分だが、LoLは相手の陣地最奥のネクサスと呼ばれる建造物を破壊するまで試合が終わらないので、劣勢の側が逆転を目指して粘り続ければ1時間以上続くこともある。
(最近は流石にそういう試合は少なくなるような調整がされているが)
そんなLoLというゲーム、その戦術性の高さから、海外では2011年から世界大会が行われてきた。
しかし、当初日本にはサーバーが無く、日本人プレーヤーのほとんどが北アメリカ、NAサーバーでプレイしていた。
そんなNAサーバーの日本人猛者たちによる大会、League of Legends Japan League、が開催されたのは2014年の事。
その設立当初のチーム数は4チーム、その1つがDetonation FocusMeだ。
(ちなみにLoL日本サーバーがオープンベータとして開放されたのは2016年、1年後の2017年に正式リリースとなった)
2015年のLJLからはRiotGamesの認証を受け、優勝チームが世界大会の予選ステージから参加できるようになり、その最初の世界大会に進出したのがDFMだった。
その大会はIWCI 2015といい、強豪リーグではない、ワイルドカード地域と呼ばれるリーグの代表同士の大会だ。MSIというメインの大会の予選ステージという位置づけだ。
強豪ではない地域とはいえ、サーバーもない、チームとしての戦略などのノウハウもない日本は、7チーム総当たりで1-5という成績に終わってしまう。
それからも毎年毎年、その予選ステージを日本代表は抜けられず、惜しい結果を残したこともあったがなかなか世界では予選ステージすらも勝ち切れない6年間だった。
そして今年の予選ステージ、Worlds 2021 Play-In 、今年も代表として選ばれたのはDFM、歴代最強チームとの呼び声高いメンバーはポジション順に次の通りだ。
長年ゲーム内の最高レーティングに居続ける日本人最強Topレーナー。Youtubeの動画で講座を上げる等、日本サーバーのレベルを上げることにも熱心で、ファンが多い。
彼はカメラに抜かれるといつもサムズアップをし、コメント欄が『b』であふれる。
Jungle: Steal (Mun Geon-yeong)
2017年からLJLでプレーしており、プレー歴の長い選手に適用されるルールにより、今年から日本人枠として認証されることとなった韓国人ジャングラー。実際Eviより日本語が上手い。
今年はチームを支えるようなプレーも自分が試合を動かすアグレッシブなプレーも見せてくれた。これは相手からすれば厄介だろう。
LJL最強Midと名高い彼は、ダメージを出し続けるメイジを使っても、一瞬で相手を落とすアサシンを使っても超一流。
若さゆえの経験の少なさもあり、初出場での世界大会では緊張もあったのか、プレーがいまいちだったが、今回は二度目の出場、さらに進化し続けているプレーヤー。
ADC: Yutapon (Yuta Sugiura)
NAサーバーでTop50人だけがチャレンジャーの称号をもらえたシーズン3(2013)、そのチャレンジャーの1人がYutaponだ。日本からだとPingが高く不利な中でこれを成し遂げた。
他のゲームをやらせても、CSGOではグロエリ、OWではTop500で日本人最高レート、VALORANTではレディアント到達、FPSのセンスもずば抜けている。
笑顔がかわいい韓国人選手。でもかわいい表情からは想像もできないプレーを数々繰り出してきた。
交戦を仕掛けるエンゲージャーとしての判断力はすさまじく、1人で相手全員の足を止めるようなプレーを決めることもある。
Sub Mid: Ceros (Kyohei Yoshida)
Yutaponの竹馬の友。独創的なキャラ選択を見せ、何度も世界を驚かせてきたプレーヤー。
今年はAriaの控えとして出番はないが、長年の経験や、ソロゲームとチームゲームの違い等をAriaに伝えるサブコーチのような役割を果たしているそうだ。
Coach: Kazu (Kazuta Suzuki) & Yang (Yang Gwang-pyo)
Kazuは元DFMのサポート。チームの事をよく知っていて、選手たちと上手く話をまとめながらキャラの選択ができたりする。ちなみにフランス生まれ。
Yangは話聞いてる感じはゲームに関する知識量が半端ない。ちなみにGaengのお兄さん。
Yutapon、Ceros、Kazuの3人は、日本が初めて世界に挑んだIWCI2015の時には選手としてプレーしており、彼らは6年間ずっと世界にこのDFMというチームで挑み続けている。
このメンバーで挑んだ、Play-Inの舞台、5チーム総当たりのグループリーグで、
・1位は即本戦通過、5位は敗退
・3位4位でプレーオフを行い、その勝者と別グループの2位が勝負し、勝った方が本戦通過
というルールだった。
北アメリカ3位のCloud9、3枠以上持っている四大地域の代表。チームとしての歴史も長い名門。MidのParkz選手の年棒は2.8億だとか。
香港台湾東南アジア地域2位のBeyond Gaming。交戦の多い激しいプレースタイルの地域。
トルコ代表のGalatasaray Esports。サッカーで有名なガラタサライ。トルコ代表は毎年存在感のある強豪地域。
CIS地域(ロシアとかその辺)代表Unicorns Of Love。ここも強豪。日本代表は毎年CIS代表に負け続けていた。
日本は2位でプレーオフに勝って本戦通過が目標となっていた。(別グループに別格の強豪が2チームいたため、そことプレーオフになる順位では厳しいため。)
初戦はUnicorns Of Love。例年の日本なら難敵だったが、Steal選手のタロンという若干珍しいキャラ選択が功を奏しての快勝。
2戦目はCloud9。相手のキャラ選択が上手く主導権を取れない展開に。じわじわと押しつぶされるような苦しい敗北。
3戦目はGalatasaray Esports。この試合は序盤でリードをつかむと、終盤までその勢いで押し切っての完勝!
4戦目はBeyond Gaming(BYG)。この試合に勝てば目標の2位以上が確定するという状況で、相手のDoggo選手がかなり強力で苦戦するシーンもあったが、DFMはEvi選手が大爆発!序盤に対面に有利を取りテレポートを消費させた後、自分はそのテレポートを味方の戦闘に駆けつけるために使用!人数差のあるシチュエーションを作ってキルを獲得!最終的にはEvi選手が10キル0デス6アシストというとんでもないスコアをたたき出しての勝利!
3勝1敗で2位以上を確定させ総当たりを終えた日本、残るCloud9(C9)とUnicorns Of Love(UOL)の試合を待つことに。
C9はここまで3-0、1位抜けのために勝利したいが、対するUOLは0-3。前の試合でBeyond Gamingを日本が破ったことで1-3になったので、UOLとしては4位争いのタイブレークのために勝利が必須。
チームとしての格は圧倒的にC9が上であり、いくら何でも苦しいか…と誰もが思っていたが、ここで底力を見せつけたのはUoL!
今大会で圧倒的にメタとなっているミスフォーチュンというキャラをC9がピックしたが、それに対してしばらくメタから外れていたセナというキャラをピックして、断食セナという戦法を決行。
この選択も功を奏し、圧倒的下馬評をひっくり返してUOLが勝利!
このゲームにはチームのロゴや感情を表現するイラストをキャラの上に表示できるエモートという機能があるのだが、試合終了の瞬間UOLのエースNomanz選手が表示したエモートはなんとDFMのロゴ。
「DFM、BYGに勝って俺たちにタイブレークへのチャンスを作ってくれてありがとう、これでお互いにタイブレークだ頑張ろうぜ」
そんな声が聞こえた気がしたのは私だけではないはずだ。
残念ながらUOLは4位タイブレークではBYGに敗れて敗退となってしまったが、彼らの作ってくれた本戦通過へのチャンス、C9とのリベンジマッチが訪れる。
DFMは最序盤にキルを取るものの、C9の選択した序盤中盤に強い構成に対して有利を取るには至らない、じわじわとC9がリードする展開に。
ただその中盤が終わるころ、集団戦で好プレーを決めたDFMが有利を獲得!ただC9も一筋縄ではいかない相手、全員の攻撃に追加ダメージを乗せるドラゴンバフを取り、それを活かしてDFMを苦しめる。
ゴールド的にはほぼ互角な状況から試合を決めたのは、それを取ったら勝ちとすら言われるバフがもらえる、通称『100万点ドラゴン』といわれる中立モンスター、エルダードラゴン前での戦いだった。
仕掛けてきたC9をうまくいなし、相手のダメージ源であるプレーヤーにStealが張り付き無力化、EviとGaengが前線を貼り作った戦闘スペースで、YutaponとAriaがダメージを出した。全員が全員の仕事をしてC9を打ち倒す!
そうして獲得した2分30秒のエルダードラゴンバフ、それを活かし相手陣の防衛施設を破壊し、バフが残り15秒のところで相手のネクサス前まで詰め寄る。勝利は目前だがバフは残り僅か、十分に有利なので、大事を取って下がる判断もありえたが、DFMの選択は試合を終わらせるエンゲージ!相手を3人倒してそのままネクサスを破壊!
こうしてC9を倒した日本代表DFMは日本LoL界初のWorldsGroupStageに進むことになったのだ。
予選のPlay-In Stageに集まってくるのは選りすぐりの”上手い選手”だが、本戦Group Stageで待ち受けているのはLoLにすべてを懸けその座をつかみ取った”ヤバい選手”達といえるだろう。
Group Stageで日本と当たることになったのは次の3チーム、上位2チームがトーナメントラウンドに進出だ。
中国1位、Edward Gaming。圧倒的プレイ人口と市場規模を持つ中国の1位チーム。間違いなく優勝候補。
Scout、Viperの両キャリーが機能する展開の破壊力はえげつない。ちなみにTopレーナーのFlandreの名前の由来は東方。
NA1位、100 Thieves。NAで最も成功しているともいわれるプロゲーミングチームだ。JunglerのCloserのゲーム支配力はとてつもない。
それを支えているのは名コーチReapered。彼は元C9のコーチでもあり、彼がコーチをしていた時のC9にはDFMも苦しめられてきた。
韓国3位、T1。世界大会で3度の優勝を誇る、超名門チーム。その過去3度の優勝を率いてきたMidレーナーのFakerは同一チーム連続在籍年数の記録を持っている。
過去の栄光だけではない、今年はベテランFakerを支える若き10代組、Canna、Keria、Gumayusiが間違いなく成長している。 ちなみにCannaの名前の由来はメイドラゴン。
この3チーム相手に日本のDFMが2位以上を取るというのはかなり厳しいグループとなってしまってはいるが、彼らの健闘を祈って、この記事を〆たいと思う。
Play-Inでは感動をありがとう!GLHF!
【追記】 初戦終わりました。DFMはT1相手にボッコボコにされました。世界の壁を一つ超えたと思ったら、またとんでもない壁がそこにはあるんだなぁ…
この文章は実際に起きた出来事をもとに書いています。誰かを批判したり糾弾する意図はなく、事件の備忘録として秘匿で公開することをご了承ください。
また、特定を防ぐため一部事実と異なる記載もしていますが大元の筋は変えていないつもりです。
SNSで死んだはずのフォロワーが転生した。ちょうど一年前の7月の話だ。以降便宜上転生する前のそのフォロワーをAと仮称する。
Aとは今から三、四年くらい前にTRPGのセッションで知り合い、何度かオンラインで卓をし、作業通話などを行ったこともあった。声を聞いたり私生活を聞く限り、とても若いなという印象があった。
今から一年前の5月。その日は私と何人かのフォロワーがプレイヤーとしてAにTRPGシナリオの続きを回してもらう予定だった。ところが時間になってもGM(ゲームマスター、シナリオ進行者のこと)であるAは現れない。連絡しても反応がない。心配に思いつつシナリオ進行者であるAがいない以上卓を行うことなどできないので結局その日は解散となった。
Aのアカウントが沈黙して数日後、Aの親族を名乗る人物がAのアカウントを使いタイムラインに投稿した。なんでもAは腹痛で病院に運ばれたのだという。さらに数日後、A自身が自分の身体に癌が見つかった、初期の発見ではあったが命に関わるものだという旨のツイートをした。
この話を聞いた時、私よりはるかに若いAが重い病を患う事実は正直にショックだった。A本人からはしばらく卓ができない旨の謝罪があったがそれより元気になってほしいと思った。私自身、昔上司を癌で亡くした経験があり、癌の恐ろしさはある程度知っているつもりだった。癌というのは本当に、ぞっとするほどあっという間に命を奪う。
しかし、Aの体調によりAとの交流がストップし、AとはSNS上のタイムラインを見るだけのやりとりとなった中で小さな違和感が芽生え始めた。
AはA自身のSNSによれば抗癌剤による治療を受けているとのことだった。その中でAはかなり頻繁に他のフォロワーと通話を行っていたようなのだ。それも夜遅くまで。私には入院経験がないので病院のきちんとしたスケジュールは把握してないが、就寝時間が深夜に設定されている病院を私は知らない。それに抗癌剤治療はものすごくきついと聞く。それこそ毎日通話する余裕があったのだろうか、と。ただこの時は多少違和感があった程度でAを疑うまでは至らなかった。何よりフォロワーの病を疑うのは失礼だと思っていたから。
一ヶ月後、再びAの親族を名乗る人物がAのアカウントを使用し報告した。Aが亡くなった。
この報告を受けて私の中の違和感は確実に膨らんだ。癌は若い人ほど進行が早いと聞くが、いくら何でも早すぎる。それに腹痛で運ばれたにも関わらずAの親族が告げたAの死因は腹部や消化器系の癌ではなかった。Aの死を悲しむ気持ちと違和感だらけの事実に頭がごちゃごちゃになった頃、同じくAがGMを行った卓にPLとして行き、卓が中断していたフォロワーから連絡があった。「Aのことどう思う?」。
私はAの訃報は悲しいが、違和感があり正直信じられないと答えた。フォロワーも同意見だったようだったが、それ以上言及することはなく、私はAの訃報にお悔やみの言葉を送った。
数日後、SNS上で中断していた長期卓のGM募集をよく見るようになった。私がAの訃報で中断となったシナリオの卓もけっこうあった。私はこれらがAの一件によるものだと知り、その多さに愕然とした。Aは確かに時間のかかるシナリオやキャンペーンシナリオをよく回していたが、とある一人のフォロワーがAに対して6つの中断したシナリオを抱えていると聞いた時は慄いた。
私はAのSNSに連絡を取った。Aの訃報に対するお悔やみの言葉、その上でAに対する違和感、もしAが生きているなら返事をしてほしいこと、もしAが亡くなっておりAの親族がこれを見ているのならこれはAに対する言葉なので返事をしないでほしいことをAの個人チャットに送信した。
Aと私は竹馬の友と言う訳ではない。せいぜい数回遊んだ程度の、何かあれば簡単に縁など切れてしまう程度のフォロワーだ。それなのに今でも馬鹿な連絡を入れたと私は思う。Aにもまだ誠意があると少しでも思ってしまった。この時Aに連絡を入れたことは今日に至るまで誰にも話していない。
私が文章を送信してから三時間ほど後にAの親族から返信が来た。あなたの送った内容に憤りを感じている。私(Aの親族を指す)も嘘だと思いたい。もAに生きていて欲しかった。そんな感じの内容だった。
私が考えていた中で最悪のパターンだった。同時に私はAは生きていると確信した。
私はAに嘘でもいいから生きていてほしかった。だからA本人から連絡がくるのが最高のパターン。次にこのままDMが動かす読まれることなく終わる、もしくは返信なくブロックされるのが想定内のパターン。どんな親切な親族だろうと身内の死を疑う内容の文面にまともな返事を送らないだろうと考えていたからだ。そもそも本人以外返事をしないでほしいとわざわざ書いた。
Aは私という他人の前ですら、誠実なふりをすることすら辞めたらしい。親族という皮をかぶり本当に身内を喪った親族からすれば気分を害する内容の連絡にさほど時間を置かずに返ってきた妙に丁寧な文章、「あなたは誠実な人なのですね」という一文がただただ気味悪かった。私はこれ以上の言及は無意味だと適当に連絡を打ち切った。
それから一ヶ月後、とある匿名アカウントが現れる。警告アカウントと題されたそれにはAが別のアカウントを使い、別人としてシナリオを制作し卓の募集をしているというものだった。死んだフォロワーが転生した。ちょうど一年前の7月の話だ。
私は特に驚かなかったが心底がっかりはしたし憤りもした。新しいアカウントとやらに見に行くと確かに作成したシナリオはAと酷似している。というかほぼ同じだ。もうちょい上手にやれよと呆れざるを得ない。警告アカウントが広まり始めるとAの新アカウント(仮)はアカウントのみ残して消えた。
そこからさらに数ヶ月、とあるTRPGシナリオを目にした。それはAの新アカウント(仮)が作成していたシナリオそっくり、というかほぼ同じで、あっと思った頃には警告アカウントも再び動き出していた。転生、アゲイン。ここまで露骨に分かると笑ってしまう。笑い事ではないのだけれど。
ただ前回と違うのはその新アカウントはめちゃくちゃ人気を博しており、現在に至るまで消えていないということだ。Aが生きていた頃から感じていたことだが、Aには「信者」なるものがいるらしく、以前Aが問題ごとを起こしたときも指摘をした人がAの信者らしき匿名アカウントにものすごく叩かれたのだという。今回も新アカウントにコンタクトを取った末叩かれたり脅迫されたりした人を何人か見た。
地獄への道は善意で舗装されている、という言葉をまざまざと見た。新しいアカウントでのフォロワーは1000人を超え、再びいくつもの長編シナリオを回す予約を取り、さらにシナリオの販売まで始めたAは次はもう転生できないだろう。前回と異なり金銭が絡んでいるのだから。なのに転生したAはまた同じようにいくつもの卓を立て大量の長編キャンペーンシナリオを制作し、そのどれもが制作途中に関わらずすでにプレイヤーを募集している。
私は転生したAを見つけたときとてつもなく怒りの感情があった。他人とのコミュニケーションと信頼の上で成り立つゲームを途中で放り出され、癌という最悪の部類の嘘を吐かれ、批判覚悟で送った文章を足蹴にされた。その上すぐにバレるような形で転生し、なんの反省もなく同じことをくりかえしている。
だが転生を繰り返すAを今はただただ哀れだと思う。嘘をつき続けるというのはすごくしんどいことではないだろうか。それとも息をするように嘘が吐ける体質でもあるのだろうか。それはそれで嫌な人生だ。
私はAと関わりのありそうな全てのアカウントをブロックし、以降は目に入れないようにしている。警告アカウントも流れてきたものを目にするだけで特にリアクションしない。警告アカウントも警告アカウントでAの新アカウントの作品動画に直接警告文を送るなど、段々過激になっていることに少なからず嫌悪を抱いている。これらAに関する一件に触れたくないフォロワーもいる。私は真実かどうか分からない薄い正義より今でも一緒に遊んで元気に生きてくれるフォロワーの方が大事なのだ。
フォロワーがAの新アカウントをフォローしたりAの新アカウントが作ったシナリオで遊んだりすることも特に何も思わない。警告アカウントができた当初はフォロワーへの注意喚起として拡散したりもしたが、フォロワーが誰と何で遊ぶかはフォロワーが選ぶことだ。フォロワーに対する余計なお世話である。
ただ何も思わないっちゃ思わないのだが、新アカウントの動向を軽く見た限り恐らくその人は同じように大量の長編シナリオの予約をしてすっぽかす可能性が非常に高いので苦労するからやめとけとは思う。ちなみにそれなりに募集はかけたが一年が経った今も私達が放棄された卓の続きを行ってくれるGMは見つかっていない。
ここまで書いておいてなんだかAが死んだと嘘をつき、新アカウントで猛威を奮っているという確たる証拠はない。もしかしたらAは本当に亡くなっていてAによく似たシナリオを描く誰かなだけかもしれない。そうであってほしいとも思う。
Aの訃報を聞いた時、嘘でもいいから生きてくれと思った。Aの新アカウントを見つけたとき頼むから死んでいてくれと願った。今はもう嘘が本当か分からない夏の怪談話の一つを手に入れたような気分だ。
私はAの転生を見て様々な学びを得た。計画性なく卓を詰め込みすぎないこと、できないと思ったら素直に申告すること、心からの謝罪の大切さ、過ちを庇うだけが思いやりではないこと、人はそう簡単に変われないこと。
皮肉なことに不幸中の幸いなのはAが家族でも親友でも恋人でもない、ただ数回遊んだ程度の、何かあれば簡単に縁など切れてしまう程度のフォロワーであるということだ。もしも家族や友人がAのようだったらと考えるとぞっとする。家族や友人が善意で舗装された地獄への道を歩いているとき、多分私は何もできない。
せめて、私が大切だと思う人たちが嘘による転生などを行わないことを、嘘の繰り返しで誰かを傷つけないことを、ただただ願う。
メロスはとりあえず激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意しろ、と匿名のファンレターにそう書いてあった。メロスには政治がわからぬ。メロスは、どこかの村のおそらく牧人である。やることが無いので笛を吹き、ぼっちのひっきーなので羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に鈍感であった。
きょうの朝らへん、太陽が登る前?登った後?その変な微妙いラインの時間にメロスは出発し、野とか山とか違いわからないが、とにかく沢山何かを越えて、十里がそもそも距離を表す単位ということも知らなかったが、だから、どれくらいかなんて微塵もわからなかったものの、それだけ離れた此のシラクスの市にやって来た。とてもどうでもよかった。
メロスには多分父も、おそらく母も無い。ぼっちなので女房も無い。十六だったか、そもそも誕生日さえ覚えていない、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村の或る律儀なぼっちを、近々、花婿っていうものに迎える事になっているらしい。しらんけど。結婚式とやらが間近なのらしい。それは一体何だ。えっちなことなのか。心底どうでもいい。
メロスは、どうでもいいけれど、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やら、俺にとっての御馳走は日清カップヌードルだってのに、と文句を言いながら、世間一般に御馳走と形容される何かを十里が何センチなのか考えながらこの市にやって来たのだ。勝手に一里を20センチと決めて、20足す10の計算をするのをしようと思ったり面倒くさくなったりしながら、やって来たのだ。結論は出ていない。どうでもいいことだからだ。
先ず、その何かを買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。嘘だ。疲れたからそこらへんの道端で胡座かいて座っていた。メロスには竹馬の友があった。メロスは竹馬を「ちくば」と読むのを今知った。この文章が書かれるまではメロスにとって心底どうでもいい言葉だったからだ。そしてその友がセリヌンティウスである。こいつの名前も今知った。今知った友だからである。そういう設定らしい。適当に決めてくれ、面倒くさいから。そもそも、竹馬の友があるなら俺はぼっちではないのではないか?そうメロスは疑問に思った。そしてすぐにその疑問は解消された。適当に設定は決めてくれ、整合性は適当に取ってくれ。矛盾してたら都合の良い解釈をしてくれ。メロスは魔法の言葉を習得した。
セリヌンティウスは、今は此のシクラスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりらしいのだ。面倒くさい。人は一度あぐらかいて地べた座ったら二度とそこから動きたくはねぇ生き物なんだ。出直してこい。メロスはそう思ったが、どうやら話の整合性とやらを取るために動かなければいけないことを脳内に直接話しかけられ、とても気持ち悪い気分になった。心底気持ちが悪いのだが、どうやら俺は楽しみという感情を持ってセリヌンティウスと接しなければいけない立場らしいのだ。面倒くさい。死にてぇ。
歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当たり前だが、けれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、市全体が、やけに寂しい。そんなこと勿論メロスにはわからなかった。なぜならメロスの村は本当に寂しく貧しく乏しい村で、メロスもぼっちだったから、人の多い街の夜というものを知らなかった。知らないものはそもそも想像しようとさえ思わない。無知、最高。つまり、メロスが違和感を覚えることそれこそが違和感の塊であった。
面倒くさがりなメロスは、話をできるだけ短く終わらせるべく、とりま、そこの人を捕まえて高圧的な態度を取ろうとした。無理だった。極度のコミュ障だったから、ではなく、人としゃべるのが面倒くさかったのである。なぜ、人は自分の脳内で思い描いた感情たり思考たりをわざわざ話し言葉に変化して、喋るという無駄な行動を取らなければならないのだろうか。面倒くさい。メロスはセリヌンティウスのことなど既に忘れ、買い物もとっくに終わっているので、村へ帰ろうとした。
そのメロスの行く手を阻んだのは、他でもない、著者であった。
メロスの元へ若い衆が寄ってきて、自分の首元を掴んでメロスの前に引っ張ってきた。そして、メロスに首元を渡したのだった。こうして、はたから見ればメロスが若い衆を捕まえた形相になった。形だけである。形は重要である。
静寂があたりを包む。いや、もとから静かだったが、雰囲気を出すためのそれっぽい言葉だ。
無音がすこし続いた。若い衆のうちの一人が、小さな紙切れを取り出して、メロスの前に見せた。
「メロスさん、ここ、言ってください、台本通りにお願いしますね。」
「めんど。『ナニカアッタノカ』」
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
マリオは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
マリオには政治がわからぬ。マリオは、京の土管工である。茸を食べ、花を摘んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明マリオは京を出発し、野を越え山越え、二千百九十里はなれた此のサンフランシスコの市にやって来た。
マリオには父はあるが、母は無い。女房も無い。歳の同じ、内気な弟と二人暮しだ。この弟は、サラサランドの或る律気な一姫君を、近々、花嫁として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。マリオは、それゆえ、花婿の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。マリオには竹馬の友があった。キノピオである。今は此のサンフランシスコの市で、探検家をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちにマリオは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなマリオも、だんだん不安になって来た。
路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。マリオは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「なぜ嫌がらせをするのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの嫌がらせをしたのか。」
「はい、はじめはスーパーマリオブラザーズで。それから、スーパーマリオブラザーズ2で。それから、スーパーマリオブラザーズ3で。それから、スーパーマリオワールドで。それから、ヨッシーのロードハンティングで。それから、スーパーマリオヨッシーアイランドで。挙げればきりがありません。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。キノコ王国のピーチ姫と結婚したいだけだ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、嫌がらせされます。きょうは、六人嫌がらせされました。」
マリオは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏のヘイホーに捕縛された。調べられて、マリオの懐中からは花が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。マリオは、王の前に引き出された。
「この花で何をするつもりであったか。言え!」暴君クッパは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「おまえがか?」王は、憫笑した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」とマリオは、いきり立って反駁した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはマリオが嘲笑した。「罪の無い人に嫌がらせをして、何が平和だ。」
「だまれ、下賤の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、マリオは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の弟に、女房を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は京で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」マリオは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。弟が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にキノピオという探検家がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を煮るなり焼くなり好きにして下さい。たのむ、そうして下さい。」
それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に嫌がらせしてやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を大砲飛ばしの刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りに、きっと嫌がらせしてやるぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
竹馬の友、キノピオは、深夜、王城に召された。暴君クッパの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。マリオは、友に一切の事情を語った。キノピオは無言で首肯き、マリオをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。キノピオは、縄打たれた。マリオは、すぐに出発した。初秋、満天の星である。
彼らは走るべき。
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「おまえがか?」王は、憫笑した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」