2015年05月11日の日記

2015-05-11

http://anond.hatelabo.jp/20150511025710

いまどきアメリカンドリームとか寝言言ってる奴まだいんのかw

世間知らずにもほどがあるだろw

http://anond.hatelabo.jp/20150507012413

上記を書きなぐった増田である。4日経ってようやく落ち着いた。

思ったよりも読まれ、思った以上に言われ放題言われていた。

その方々に届くとは思えないが、目についたところだけ、間違いのないように補足を、そして意見や提案を頂いた方々に感謝を述べるべきだろうと思い、本記事を書いた。

フィクションだろ、釣りだろ、創作文乙、長くて読む気しない

フィクションだったらどんなに良かったことか。俺が素面感情のままに書き殴った本心である釣り行為は俺は好まないし、創作文を書けるほど文才はない。

なお、増田はこれまでに数回見たことがあるだけで、前記事が初投稿、本記事が2回目の投稿である

から十まで書いて間違いのないように伝えたい性分なので、長いのは勘弁して欲しい。

・不幸自慢乙、不幸の皮を被った自慢乙、仕事あんのかよ死ね

背景を書かなければ誤解されると思ったから、書いた。

就職先はメーカー系の電気設計であるプログラムも多少は読み書き出来る。これ以上は書かない。

価値観勉強をして褒められるという点しかなかったため、勉強はしていたし、成績だけを見れば大学3年までは優秀なほうにいた。

しかし、研究社会では、勉強ができれば褒められるという観点存在しない。あるのは、仕事ができるかできないか、の一点である。俺はできなかった。

勉強したことで就職でき、結果的に現時点では生活に困っていないことだけは勉強感謝している。

意識高いメンヘラ乙、高すぎるプライド目標を捨てろ、五月病

たぶん五月病ではないと思う。

高すぎるプライド目標を捨てろ、は全くそのとおりである。だができずに何年も経っている。後述する。

・お前は本当に死にたいのか死にたいならこんなところへ書いてないで死ぬだろ、生きることから逃げてるだけじゃねえの、死にたいじゃなくてモテたいだろ、ハワイゆっくり気晴らししたいだけだろ、構ってちゃん乙 など

本当に死にたいのか、と言われると、「褒められもせず認められもせずに惰性で生きている現状から逃げ出したい」というほうが正しいのかもしれない。

更に正確に言うなら、「自分性格のクソな部分を投げ出して心機一転楽しく生きたい」だろう。

死にたい」のは「今のまま生きたくない」からであり、生きられないなら死ぬしか無い、という思考である

問題は、

>俺の性格本質は、自己中心的完璧主義、そこそこの努力他人賞賛されたいと願っているゴミである自分の思い通りにならないと泣きわめく子供である

と書いたとおり、俺の性格本質がこうであるということである

高すぎるプライドなども含め、このクソな性格を変えようと10年近く悩み、負の面を出さないように腐心した。が、一向に改善せず、追い詰められると上記の問題点が出てきてしまい、台無しになる。何もしていない、ということはない。

このクソな性格を後何十年も抱えて生きて、どうして苦しみよりも楽しみのほうが大きいだろうと推定できるだろうか。

これを俺自身が受け止めきれないから、「生きたい」と思えないのだと思っている。

・さっさと死ね

投稿後、時間を置いて読みなおして、言われるだろうと覚悟はしていた。が、さっさと死ね、と言われるのを見ると堪えたし、書いた人のイライラ発散以外で言う意味ないし、ぶっちゃけ今後俺が本当に自殺に踏み切った時に、匿名だろうと自殺幇助とかと見なされるかもしれないんで、何かの拍子で捕まりたくないなら遊びでも気晴らしでもやめといたほうがいいと思った。

おせっかい乙。

グダグダ言ってないで行動しろ、受け身の人生やめれば 系、ボランティアしたら、創作したら など

そのとおりである。指摘してくれてありがとう

ただ、またやっても失敗するから無意味だと思ってしまう。

自発的に行動したことは何度かあるが、いずれも実のないものしか感じられなかったため、精力的になれない。

ボランティアをしても自尊心が満たされるとは思えないので自発的に行く気があまりない。

これまでに創作活動などをしたりもしてみたが、受け入れられたり褒められたことはない。それよりも何より、やっていて心から楽しいと思ったことがなかった。結果、三日坊主で終わっている。

文才はない。絵心もない。あるとすれば音楽センスだろうが、創作はできない。

意識高い系だったことは間違いないので、ある程度のことは試し、失敗し、上手く行かなかったことがトラウマになっている。上手くいく保証がないと動けなくなってしまっている。これもダメ性格の一部分である

運動したら、肉食ったら など

一時的にでも気分転換すべきという指摘、感謝する。

一応、運動会社の人と月数回テニスをやったりしているし、食事は十分とれている。どちらかと言うと過食気味である

これらは一時的逃避行動として気分を上向けるにはいいが、それ以上の解決法を与えてくれなかった。せっかくの意見に対し申し訳ない。

北方メソッド

気力が出たら、行くだけ行ってみようと思う。

猥談中学から避けてきて、一人で二次元エロをこじらせてしまったため、全くの無知であるが。

・こんなテーマ語り尽くされている、隣の芝は青い、俺もそうだなんという俺 等、山月記を読め、三木清を読め 等

少なくとも、他の人はこういうことを言わない、言ってくれない。言ってくれても、自分が体験したことでないので、どうしても信じられない。これはそのまま他人を心底から信用していないのだ、ということになってしまうが。

ただ、これだけあるある的な感じで広まった事実はきちんと受け止めたい。

山月記は久しぶりに読んだ。なるほど、授業で習ったあの時とは受ける印象が全く違った。

三木清青空文庫にあるものはまだ読めていない。後ほど読む。

嫌われる勇気は読んだが、突然の改心で置いてけぼりになってよく分からなかった。

http://anond.hatelabo.jp/20141208003341 は読んだ。とても参考になるが、まだ自分は堂々と生きる自信はない。

いずれにせよ、例示していただき感謝する。

この記事を書く前に、レフ・トルストイの「懺悔」を読んだ。

文豪が140年も前におおよそ似たような思考ループに陥っていたことは初めて知った。

何故生きるか?に論理的に答えは出せないこと、信仰によって意義を与えられるのだ、そして神とは自分自身の生のことであり、それを信仰することが生きる意味なのだ、という風に読み取った。

まだ心底から理解には及ばないが、何故生きなければならないのか?に対しての一つの答えを得られたと思う。

そうすると、死ねないとすると、否応にでも自分のクソな性格をどう対処するか、になるのだろう。

もうこれだけ手を尽くしたのだから自身では変えられない、宗教クスリか、いつか出来るだろう科学による洗脳人格交換技術に頼るしか無いと思っていたが、諦めて受け止めるか、どうにかしないといけないのか。

とても辛い。

書きたかったことは概ね書き終わった。

反応してくれた方々、意見をくれた方々、ありがとう

webプログラム飽きた

人売りSIで働いていた頃は自宅でWebサービス作ったりして楽しんでたけど

転職して毎日やってると苦痛になってきた。まぁ頭が良くないので元々向いていないのかもしれないのですが。

ハッカソン?とか勉強会とか参加してる人ってホントに好きなんだな・・・

http://anond.hatelabo.jp/20150511020516

相手にも、結婚したいかどうか聞いてみれば?

結婚したいが踏み切れない

本人 今年31 正社員 年収550万(男)

相手 今年30 派遣  年収300万ぐらい

今年の夏で付き合って9年になる彼女がいる。

これまでずっと遠距離でこの数年は年に10回程度しか会っていない。

自分海外出張族のため、あまり日本にいないことも原因にあると思う。

またお互い頻繁に連絡を取るタイプでないため連絡もほとんどしない。

相手から連絡が来ることはまずない。6年以上セックスレスキスを含めて)。

年齢が年齢なので結婚したい。

特に仕事で辛い時や体調を壊した時など支えてくれる人が欲しいと猛烈に思う。

友達も多くないため休日掃除して喫茶店に行き本を読む。ただそれだけ。

今週は相手に連絡を何度かとったが体調が悪いこともあり返信なし。

プロポーズをしたいが踏み切れない。

いまのゆるい友達のような関係結婚してうまくいくのか不安

別のいい人を探したほうがいいとも思うけれど、相手に申し訳なくて別れを切り出せない。

そんな風に迷ってるうちに今年も終わってしまいそう。

http://anond.hatelabo.jp/20150511014721

すっごく好きで、

ブログツイッター毎日チェックしてたし、コンサートも毎回義務のように思って遠征まで行ってたけど、

仕事が忙しくなって、コンサート行けなくなって、ブログツイッター自分が知らないことが書いてあって他のファンがそれで盛り上がってるの見てるうちに、

段々俺の方から離れていった。

http://anond.hatelabo.jp/20150511014620

冷たいと味ってわかんないから

アイスとかしてみ。くそ甘いよ

好きな芸能人がいる。

好きといっても彼女恋愛感情を抱いてるわけじゃない。付き合いたいと思うことも異性として性的な魅力を感じることも全くない。

ただ単に今自分が一番執着している人物って感じ。彼女の姿を観にいったり写真を眺めたり雑誌彼女の語る言葉を読んだりして、本当にこの人素敵だな最高だな好きだなってしみじみと思う時間楽しい

こういうところが好き、こういうところがたまらないってツイッターにぽろぽろ綴ってる時も同じくらい楽しい自分でも気持ち悪いと思うけど、彼女存在を尊く思う気持ちが高ぶりすぎて抑えられないっていうか、黙ってられない。それに彼女を好きという感情を人と共有したいという思いが強いし。

とにかく今の自分にとって彼女というコンテンツはとても面白くて、すごく刺激を与えてくれる存在。もう大好き。めっちゃ好き。本当に好き。

こんなに誰かに執着したことなんて無かった。

けど、自分ものすごく飽き性だからそのうち彼女にも飽きるんだろうなとは思ってる。こんなに魅力的な彼女に関心を失う日が来るなんて今は信じられないけど、きっと来るんだよな。

彼女はいつ、どうやって別れの瞬間を迎えるんだろうか。すごく整った顔でふわふわと喋る彼女を見るたびにそんなことばかり思うようになった。

彼女に関心を失う瞬間を思うとかなり切ないけど、正直なところちょっとその瞬間に興味がある。

今すぐに知る術は無いんだけどさ。推し変だの担降りだの言ってるアイドルファンの皆様、是非教えてください。

ミネラルウォーターは冷やさない方が美味いかもしれない

なんかいつもより甘い気がする

ゴールデンウィーク最後エロゲ史におけるクトゥルフ神話を語る

クトゥルフ神話に特化する形でエロゲの歴史をまとめたWebサイト存在するし、一般書籍で言えば『エロゲー文化研究概論』(宮本直毅, 2013)では一つのコラムとしてこれを取り扱っていたりする。

ただ、それらで話の主たる軸にクトゥルフ神話が用いられているか否か、という点での検討はされていても、クトゥルフ神話がそれぞれのエロゲにおいて一体どう扱われてきたのか、という点には触れられていなかったりする。

ゴールデンウィーク有意義に過ごすべく、エロゲ史においてクトゥルフ神話がどのように用いられてきたのかをちょっとまとめてみたので(そのためにちゃんと全部プレイしなおしました。実に有意義ゴールデンウィークだったと思う)、増田に垂れ流しておく。

1991年~93年

まずエロゲ史にクトゥルフ神話が登場する直前の状況から少し整理しよう。

1991年末、かの有名な「沙織事件」が発生する。ソフ倫設立される切掛として有名だけれど、同時にこれは内容に対する制約としても一時的に強い影響を及ぼした。

特に社長が逮捕されたフェアリーテールとしては一際慎重な態度にならざるを得ず、単純で直接的なエロというより、エロ以外の何らかの要素を前提とした上でエロ「も」取り入れる、というアプローチが取られることとなった。

そして『狂った果実』(フェアリーテール, 1992/5/1)が発売される。

エロより視覚的、精神的グロさを全面に押し出した傑作であり、エロゲにおける「ヤンデレ」(昨今のステレオタイプとは少し異なりサイコパス色が強いが)の開祖と言っていいものだろう。主人公精神的、社会的に追い詰め、最終的に狂気に陥れるそのシナリオ展開は多くのプレイヤーに衝撃を与え、同時にエロゲが「エロ以外の18禁的要素を主軸に据え、その過程にエロを取り込んだゲーム」としてもありうるのだ、ということを強烈に知らしめたものでもあった。

1994年

こうした中、フェアリーテールブランドを分ける形でフェアリーテールHARDCOVERを新設し、クトゥルフ神話要素を持つ世界最初エロゲであるネクロノミコン』(フェアリーテールHARDCOVER, 1994/6/24)がリリースされることになる。

物語は新聞記者である主人公が自分の先祖の秘密を探るべくインスマスへ向かい、そこで邪神復活の儀式に巻き込まれる、というもの。『インスマスの影』(H.P.Lovecraft, "The Shadow over Innsmouth", 1936)をそのまま使った内容となっている。

原作に足りない女っ気を確保するため、バーの店員や宿屋の女主人、娼館などが配されているけれど、モンスターホラーとしての側面が強く、狂気への言及は殆ど無い。

作品としては丁寧で、よくまとまっていて、つまらなくはない。ただし原作色が強いせいで原作既読者には先の展開がすべて分かってしまい、無難な内容という印象が拭いづらい。しか現実には当時のプレイヤーのほとんどは原作未読者であり、そういう点ではむしろクトゥルフ神話へ興味を持つ最初の一歩としてよく出来たアレンジだったのではないか、とも思う。

ともあれエロゲ史における最初の使われ方は、このようにモンスターホラーとしてであった。

1995年

ネクロノミコンから1年が経過し、95年に入ってから2つの作品が発売されることとなる。一つは『YES! HG』(姫屋ソフト, 1995/6/30)、そしてもう一つがかの有名な『黒の断章』(アボガドパワーズ, 1995/7/14)である

『YES! HG』はオムニバス形式となっており、その中の一編である『豪州怪奇紀行』がクトゥルフ神話要素を持つエロゲとなっている。

物語の内容は応募した覚えのないオーストラリア旅行の懸賞に当たり、彼女と一緒に参加したところ邪神の生贄にされかける、というもの

クトゥルフ神話の扱い方という点では、『ネクロノミコン』に輪をかけてモンスター色を強めたものであるディープワンやティンダロスの猟犬といった神話生物が登場するものの、一般人に化けられる、死ぬと水に溶ける、水をかけられると死ぬ、と原作設定とはかけ離れており、どちらかというとモンスター映画的な怪物を取り扱った物語であり、その怪物の名前クトゥルフから借用した、といった感もある。逆に言えば、クトゥルフ神話に関して一切知識がなくとも既存のモンスターホラーものとして理解ができる内容であり、『ネクロノミコン』では若干あったグロテスクさもない。そのためより取っ付き易い感があり、短編ながらよくまとまっていることからもっと一般ウケしていい作品と思うが……知名度は今回紹介する中ではおそらく最も低いと言えるだろう。

そして『YES! HG』に遅れること1ヶ月、自転車操業の零細新興メーカーから『黒の断章』が発売される。

あるマンションの一室で一家皆殺しの猟奇殺人事件が発生したことを端緒に、同マンションに入居していた探偵がこれを解決しようと首を突っ込み連続殺人事件に巻き込まれ、その謎を解く鍵を自分の失った記憶に見出していく、という内容である

前半は猟奇殺人事件を巡るミステリとして、そして後半に入るとラヴクラフト色が全面に現れたものとなる。下敷きにしているのは『死体蘇生ハーバートウェスト』(H.P.Lovecraft,"Herbert West-Reanimator", 1922)、そして『壁のなかの鼠』(H.P.Lovecraft,"The Rats in the Walls", 1924)である

クトゥルフ神話モノとして知らない奴はいないといえるほど有名な本作であるが、実のところモンスター要素はほとんど無い(そもそも『死体蘇生ハーバートウェスト』は邪神も神話生物も登場しない内容であるが)。しかし「黒人の神父」の熱弁の中でのさりげない「神々」という複数形、「呪い」への「ギアス」(C.A.Smith,"The Seven Geases",1934)というルビなど、作中の随所に仕込まれたこうした細かいネタは一切作中で説明されることはなく、それがわからなくて物語が理解できないようなことはないが、プレイヤーの知識へのくすぐりが実にうまい作品である

一方で、本作のシナリオの核はあくまで「家族愛である、という点への言及も必要だろう。原作へのオマージュを込めつつ独自要素を持ち込み、後日談めいた二次創作的なその内容は、単にその用語や設定を流用したものとは明らかに一線を画したクオリティを持っている(例えば不老不死にさせられた女性については、お腹にいる殺すことも生まれることもできない胎児を家族と呼びうるのか、といった辺りはSF的、倫理的に今なお考えさせられるものがある)。

ネクロノミコン』、『豪州怪奇紀行』とは異なり、本作はモンスターホラーとしてではなくクトゥルフ神話を扱った最初エロゲであると言え、また原作二次創作的側面を持たせた物語は(多少粗はあるものの)有名作の名に恥じない出来栄えである

1996年

一方で『黒の断章』においてもやはり、狂気の描写はほとんど無いに等しいものであった。

クトゥルフ神話における狂気とは、異端の知識を人間の脆弱な脳が処理しきれなくなり、破壊された状態であるクトゥルフTRPGにおけるSAN値の取り扱いもこれを示したものと言っていいだろう。

他方、92年の『狂った果実』を筆頭に狂気についてはエロゲにおいて断続的ながら取り扱われ続けていた。この時代で言えば『サークルメイト』(ボンびいボンボン!, 1994/5/13)、そしてエロゲ史上初のビジュアルノベルである『雫~しずく~』(Leaf, 1996/1/26)があげられるだろう(『for Eliseエリーゼのために~』(CRAFTWORK, 1996/12/6)もこの線では秀逸である)。

こうした作品において、狂気とはこれまであったものが破壊されるというより、境界線を踏み越えてしまった状態として扱われる。怪物の血を引いた「選ばれし者」ではない一般人である私たちも、一歩踏み出すことによって「向こう側」へと至りうるのだ、という見方でのこうした「狂気」を、ここでクトゥルフ神話における「狂気」へと接続した作品が登場することになる――『Esの方程式』(アボガドパワーズ, 1996/9/13)である

物語は蔭洲升という漁村で起きた陰惨な殺人事件の犯人が精神病院から退院したことを端緒として、その元担当医を勤めた探偵助手たる主人公が異常な自殺事件に巻き込まれていく、という物語である。『黒の断章』の続編ではあるが、前作とは独立した事件となっている。

前作同様、前半は東京での猟奇事件をめぐるミステリ、そして後半は蔭洲升が舞台となり、ラヴクラフト色が全面に押し出される。原作は『ネクロノミコン』と同じ『インスマスの影』である

これまでのクトゥルフ神話要素をもつエロゲにおいて、その猟奇殺人表現されたものや「向こう側」はグロテスクものであったし、これ以降もほとんどがそのように表現する。しかし、本作は死に至る状態/死体を「美しく」描く点で明確に異彩を放っている。

SAN値が下がる」のではなく「啓蒙が上がる」ことで見える世界が変わる(『Bloodborne』FROM SOFTWARE, 2015/3/26)ように、本作は私たちの「啓蒙を上げる」ことを目的とした作品めいた印象を受ける。もちろん四肢切断された「苦痛を伴わない」少女の視覚的な美しさであれば会田誠の『犬』があるし、特に『魍魎の匣』(京極夏彦, 1995/1/5)の影響が本作へ露骨にあることは否定しがたい。

しか踏切の赤信号アニメーション演出に始まる本作は、これをプレイすることで一歩「向こう側」へと足を踏み出しかねないことへの警告めいた不穏さを孕んだ見事なものであると私は思う。

のちの『沙耶の唄』(NitroPlus, 2003/12/26)も同様だが、美しい「向こう側」を描いた作品エロゲ史において稀なものである。ほとんど無意味登場人物など色々と欠点も多い作品ではあるが、加点法で見るなら間違いなく名作として語られる作品だろう。

1997年

さて、ここで少し時代におけるクトゥルフ神話の状況を整理しよう。

創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』は1974年12月13日発売、クトゥルフ神話モノのパロディとしての必読書と言っていいだろう『妖神グルメ』が1984年6月30日発売であるタイタス・クロウサーガはまだ日本語訳が出版されていないが、『アーカム計画』はすでに出ている。ということで、クトゥルフ神話に関する基礎教養としての文献はすでに大体揃っていたと言っていいだろう。

だが、それを調べるためのツールはどうだろうか。

1997年とはYahooが日本で検索エンジンサービスを開始した翌年であり、Googleはまだ会社すら存在しておらず、2chもWikiepdiaも影も形もない時代である(ちなみにWikipedia日本語版の「クトゥルフ神話」の記事最初に出来たのは2003年8月)。

現在のように玉石混交とはいえググれば腐るほど情報が出てくる時代とは程遠く、なるほど情報はあるところにはあるが、そこにたどり着くことは容易なことではなかった。

そうした状況下において『マジカディープ☆ワン』(Vanilla, 1997/4/18)が発売される。様々なクトゥルフ神話上の邪神や神話生物を美少女化した初のエロゲであり(クトゥルフ女体化については80年代に先例があるとの報告がある)、モンスターも狂気もホラーも完全にオミットし、その用語や設定に対するパロディ作となっている。

問題パロディである以上、クトゥルフ神話に関する広範な教養をプレイヤーが持っていることを前提しなければならない、という点である――正直、時代を考えると無謀としかいいようがない。文字通り10年早すぎた作品であるが、のちに『斬魔大聖デモンベイン』(NitroPlus, 2003/4/25)やラノベ這いよれ!ニャル子さん』が当たったことを考えれば、その先見性はもう少し評価されてしかるべきかもしれない。

一方で同年末、邪神の名前だけを借りた作品が発売される。ALICESOFTの『アリスの館4・5・6』に収録された『アトラク=ナクア』(ALICESOFT, 1997/12/18)である

シナリオライター自身が言う通り、本作の中身は一切原作とは関係がない。ゆえに本作をクトゥルフ神話要素を持つエロゲ史の上で語るべきではないが、名作として名高い本作がクトゥルフ神話における邪神の神の名前であることもよく知られたものであることからエロゲ史上にクトゥルフ神話に対する興味を惹起する効果はそれなりにあったのではないかと思っている。無関係とはいえよく出来た作品であり、返り血を浴びた黒髪美少女に対する審美眼を――「瞳」を多くのプレイヤーに植え付けた、という意味では、これもなかなかに罪深い作品と思う。

1998年

さて、3年前に発売された史上2番目のクトゥルフ神話を用いたエロゲを発売したメーカー「姫屋ソフト」について、ここで少しまとめよう。PC-98時代のエロゲに詳しい初老のオッサンでもなければまず知らないメーカーであるが、その有するブランド名「C's ware」といえばWindows95時代のエロゲに詳しい中年のオッサンなら反応することだろう。『DESIRE』そして『EVE burst error』とエロゲ史に残る名作を有し、たまにバグまみれで起動すらしない製品をリリースすることで有名な、そんな泣く子も黙る一大メーカーであった。

そのC's wareから、『アトラク=ナクア』の一カ月後に『DIVI-DEAD』(C's ware, 1998/1/23)がリリースされる。

物語は山奥の学園に転入することになった主人公が、学園内で麻薬のように蔓延する香、見え隠れする異常行為、学園創設者一族の陰惨な過去などに触れていくうち、自分がこの学園に転入させられた目的や持病の発作の原因などが明らかになっていく、というものである

この作品は、直接的にはクトゥルフ神話要素への言及が一切無い。シナリオファイルを無理やり抽出して全テキスト確認した私は自信を持って断言できる。本当に、ない。

しかしそこで描かれる物語の設定は、ラヴクラフト小説のファンならおそらく確実にニヤつけるものである。「古い穴の底から神を呼び出す」「この地の神と契約を交わし、その血を一族の中に入れた」、そして穴が開きすぎて周辺一帯の人間が狂死したこと。

こうした神と人との関係はまさしくクトゥルフ神話――もっと言えばラヴクラフト神話における典型的なそれである

また話の筋にはほとんど関係ないにもかかわらず、焼身自殺した建築家が書いた唯一の幻想小説「はての国」への執拗ですらある言及は、作中で関わった人間がほとんど惨たらしく死んでいるという状況も併せてラヴクラフト愛読者に魔術書めいた印象を与えている。

本作に人外は登場するが、クトゥルフ的なモンスターは登場しない。しか抑制的ながらも明白な狂気、グロテスク死体などはある意味で『ネクロノミコン』時代におけるクトゥルフ神話の扱い方に忠実と言っていいものであり、具体的に名前こそ触れないものの、その確かなオマージュを感じる内容は良作と呼ぶにふさわしいものであり、その意味では『アトラク=ナクア』の対と言っていいだろう(ちなみにのちの『果てしなく青い、この空の下で…。』(TOPCAT, 2000/06/30)も同様のアプローチを採った良作である)。

1999年

そしていよいよ世紀末電波系エロゲといえば必ず名前の上がる有名作『終の空』(ケロQ, 1999/8/27)が発売される。

ある学校で一人の不良学生が屋上から転落死した三日後、いじめられていた女生徒が同じ場所から飛び降り自殺、同じくいじめられていた男子生徒の妄想が周囲の学生を巻き込み拡散し、一週間後に同じ場所から集団で飛び降り自殺に至る、という事件を何人かの視点で繰り返し読ませる物語である

正体不明の少女の口から出るナイアルラトホテプという単語、「テケリ・リ」という声など、確かにクトゥルフ神話要素における単語は使われている。

……が、本作はむしろ終末論を用いて『雫~しずく~』を正統に発展させた延長上の作品として語られるべきであり、本作をクトゥルフ神話を軸にしたものというにはちょっと無理があると考えている。

というのも、本作のシナリオにおける終盤は統合失調症の患者を模したそれとなっており、またその視界はシュルレアリスム的な絵で表現される。シュルレアリストの一部が統合失調症の患者の描く絵に魅せられたことも併せて考えれば、そこで語られる内容は言葉遊びめいた意味が通るようで通っていない単語の連結であり、その一部にクトゥルフ神話用語が用いられた、というように私は思っている。

本作はよく出来た作品であり、衒学趣味の上で意味が通りそうで通っていない文を普通に会話が成立しているかのような羅列には思わずニヤリとさせられ、その「向こう側」の表現としては明らかに過去エロゲとは一線を画したものである。が、クトゥルフ神話の扱い方という点で言うのであれば、『アトラク=ナクア』と同じくらい関係性は無い、というのが妥当なところだろう。

まとめ

正直、1994年から99年というわずか5年ですでに結構な文章量になってマジかよと。ただこうして見ると、クトゥルフ神話は結構多様な使われ方をしてきた、というのが見て取れるかと思う。モンスターホラーとしての印象が一般には強いのではないかと思うけれど、狂気の表現形態であったり、物語構造としてのそれであったりといろいろ工夫がされている。

2000年以降については余白もないのでこの記事でこれ以上深く言及する気はないけれど、『朝の来ない夜に抱かれて -ETERNAL NIGHT-』(DreamSoft, 2002/06/28)、『斬魔大聖デモンベイン』(NitroPlus, 2003/04/25)、『終末少女幻想アリスマチック』(キャラメルBOX, 2006/10/27)というのが従来に無いひとつ特徴的な筋と思う。いずれもクトゥルフ神話と熱血という組み合わせであり、好き嫌いはあろうがモンスター設定資料集としてのクトゥルフ神話がこれで普及していくように思う。ちなみにこのあたりはDreamSoftがフェアリーテールブランドキャラメルBOXが姫屋ソフトブランドであることを考えると、少し面白いものがある。

なお、この記事については間違った内容が記載されている可能性が十分にある。発売年度は一応いくつか調べた上でおそらく正しいと思われるものを記載したけれど、これももし誤りがあれば申し訳ない。

さて、最後にここまで読んだ奇特な人のために、ぜひプレイ頂きたい史上最高のクトゥルフ神話エロゲを紹介したいと思う。『人工失楽園』という(文章はここで途切れている)

http://anond.hatelabo.jp/20150511013742

そうか。不勉強だった。丁寧にありがと

あ、八角ね。検索ででた

酒飲んだほうが理性的思考を得られる

より正確にはクリアシャープ思考ね。

こういうふうに思うようになってきたんだけど、たぶんやばいよね?

アル中への軽やかな一歩だよね。

http://anond.hatelabo.jp/20150511013547

改変なんだけど、元記事が削除されたみたい

http://anond.hatelabo.jp/20150511011944

マジレスすっと、そういう人は「努力しても東大に入れない人間」は人間でないと定義してるんだよ。

人間」と「何かよくわからない人間サルの間みたいな生物」がいる世界、という認識

http://anond.hatelabo.jp/20150511011944

なんだ。やっぱり知能低くても東大行けるんだ。

http://anond.hatelabo.jp/20150511011944

本気で言ってるとすればそれは東大に入れてもその程度の知能なんだな、でおしまい

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