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2016-01-17

ハゲ&ブスカ「容姿の悪さは悲しいかい 信じる言葉はないかい」「顔に残る傷跡は 胸には隠せはしない」「いまから美人を これから美人を 殴りに行こうか」「YAH YAH YAH YAH YAH YAH YAH

2014-09-25

ASKA歌詞はなぜ素晴らしいのか?──母音想像力試論

 ASKAの詞の特徴の一つは、複雑な比喩を折り重ねていくことにある。そうした複雑な比喩の解読については、「On Your Mark」の楽曲分析で先日書いたところであるhttp://anond.hatelabo.jp/20140924014048)。

 しかしながら、私はCHAGE&ASKAの熱烈なファンであるけれども、「比喩」の観点から歌詞を見ればASKAよりも巧者は他にもいると思っている。例えば、スピッツ。「ロビンソン」の印象派絵画を思わせる複雑な比喩を見るとASKAに少々分が悪い。では人生の機敏という観点から見ればどうか? 私の考えでは、ASKA中島みゆきに遠く及ばない。しかしそれゆえにASKA歌詞は二流であるわけではない。

 ASKAの詞はJ-POP史上稀に見る「音楽性」を持っている、というのが私の意見だ。「言葉音楽性を持っている」とはどういうことか? 分かりやすい例として、まず"YAH YAH YAH"をとりあげて、それを説明したい。

YAH YAH YAH」はYAH YAH YAHでなければならなかった

 「YAH YAH YAH」のサビは、ご存じのように、ひたすらYAH YAH YAHが繰り返されるだけであるしかし「YAH YAH YAH」という発音には極めて綿密で、天才的な直観があると私は考えている。仮に、YAH YAH YAHの部分を「ウ」でも「エ」でもよいが、別の母音に置き換えたもの想像してみると、「YAH YAH YAH」という曲そのものが成立しなくなることが了解されるだろう。YAH YAH YAH発音秘密はそれだけにとどまらない。その前の歌詞に注目する必要がある。

から一緒に これから一緒に 殴りにいこうか

 この部分を読むと、「イ」の発音が異様に多いことに気がつく。「イ」は、歯を食いしばって発声される。怒りを耐え忍ぶかのような身振りを発音要求している。そして、サビに入る時に「ア」の開放的な音に切り替わる(殴りにいこう「か」)。サビの一個手前に、このような母音ドラマが隠されている。この「イ」と「ア」の動きをYAH YAH YAHというサビで何度も何度も再現するのである。なお、「今から一緒に」の前にある「勇気だ愛だと騒ぎ立てずに その気になればいい」では「イ」で終わっているので、まだ耐え忍ばなければならずYAH YAH YAHと叫ぶことができないように発声的にも規制されていることが分かる。こうして見てみると、一見単純に見えるYAH YAH YAH歌詞には天才的な音楽直観が働いていることが分かるだろう。

先人・井上陽水

 そうした作詞法はASKA専売特許ではない。そうした作詞法を意識的採用しているのは、ASKA尊敬している井上陽水である陽水は、「Tokyo」の冒頭部分「銀座へ鳩バスが走る」という歌詞秘密を次のように語っている。

タモリ で、それを作りたいってことに、なんで銀座が浮かんできたわけ? しょっちゅう行ってるから

陽水 いや、そういうことじゃなくてホラ…、東京でね、やっぱり一曲ね[作りたいと思ってたから]。で、「銀座へ~」っていうね、あのー、人によってね、いろいろ、発音でね、取り柄がある発音とあんま響かないのがある。「銀座へ~」っていうのが、この口にすごく合ってたの。「銀座へ~」、あ、響くなあ、って。

7:00-7:40頃 https://www.youtube.com/watch?v=szB9lhaX2XY

 井上陽水の曲を聞いてみると、たしか言葉の「音」に対する独特の"美意識"があることが分かる。これはこれで、余人には真似しがたい孤高の美をたたえている。「Tokyo」であれ「Make-up Shadow」であれ、言葉に対するきわめて繊細な美意識を私は感じる。

 完全に余談だが、全世界的に流行した「Let It Go」の歌詞にも言葉の音に対するこだわりを強く感じるので紹介しておく。

My power flurries through the air into the ground

My soul is spiraling in frozen fractals all around

And one thought crystallizes like an icy blast

I'm never going back, the past is in the past

この部分は、一番の大サビに向かう、心躍る箇所だ。

歌い始めの「My power flurries through」の部分は、口をすぼめる内気な発音が多い。しかし、「the air」の所でやや反抗的な「エ」の発音がやってきて、「into the ground」で一回大きく開放的になるが、すぐに締められる。「My soul is spiraling in frozen」までは基本的にはやはり内気な発音が多い。「fractals」のところで「the air」とは別のしかたで(歌い方で)反抗的な様子を見せるが、これも「all around」の個所で一回開放的になるが閉じられる。こうした発音ドラマ最後に、「the past is in the past」の個所がやってくる。このようにして、まこと開放的で、ドラマチックな「ア」の発音がここに訪れるのである

 このように、言葉の音に対する意識世界的に存在する。しかしながら、日本語は、世界の様々な言語と比べても「母音」の割合が非常に多いという特徴をもっている。日本ロックミュージシャンたちはこの母音に苦しめられてきたのだ、と言っても過言ではないだろう。そこで例えばサザンは子音に着目した。サザン日本語における子音の可能性を大きく拡張したミュージシャンとして評価することができる。しかし、ASKAあくまで「母音」の可能性にこだわったミュージシャンであると私は考えている。日本語本来の特徴が「母音」にあるのだとしたら、その「母音」を徹底的に活用したのがASKAである

話をASKAに戻すと……

 こうやって私が言葉の音に対して敏感になったのは、チャゲアス音楽を聴いてからだ。ASKAは、まず歌唱からして、母音を強調している。これは良くも悪くも「古さ」を感じる歌唱であろう。母音を強調する歌手として、例えば尾崎紀世彦布施明を挙げることができる。彼らの歌唱には「昔ながらの情念」を感じる人が、とくに若い人になればなるほど多いのではないだろうか。一方、母音を強調しない歌手小田和正歌唱にはそうした「古さ」を感じることはないのではないか。母音は、本能的な部分に訴えかける、ほとんど呪術的と言える原始的な力をもっている。しかし、それを真に受け止めるためには現代はいささかシャイなのだ、というのが私の持論だ。母音とは、一種の「ますらをぶり」であるASKAは「ますらをぶり」のシンガーである

 私の見立てでは、ASKA母音から歌詞構成する方法意識化したのは、だいたいシングル「WALK」以降である。「WALK」より前の曲には、母音に対する美意識を見出すことが難しかった。逆を言えば、WALK以降には母音に対する鋭敏な感覚ASKAの曲に感じる。国民シンガーCHAGE&ASKAが出来上がったのは「SAY YESであるが、「SAY YES」と同レベル作品を量産できるようになったのはだいたいシングル「WALK」の時期からだ。一つ一つ楽曲分析をして証明をすることもできなくはないが、それをするとなると、ちょっと本格的にやらなくてはいけない。そこで、ASKAの曲の中でも、母音の使用がもっとも素晴らしいと思う楽曲を一つ見てみることにしよう。「はじまりはいつも雨」だ。

全てが奇跡的な「はじまりはいつも雨」

 「はじまりはいつも雨」はASKAソロの曲だが、チャゲアスVer.も残されている。私の一番好きな音源であるhttps://www.youtube.com/watch?v=5mzj72QxrYo)。

 「はじまりはいつも雨」は、メロディー歌詞の二つが複雑なハーモニー形成しており、決して不協和音をつくっていない。母音の使用法も極めて洗練されている。しかしながら、冒頭から母音分析をはじめても感覚的に分かりづらいと思うので、もっとも分かりやすいところから見てみよう。それはサビの終わる所である

はじまりはいつも雨 星をよけて(一番)

失くした恋達の 足跡(あと)をつけて(二番)

はじまりはいつも雨 星をよけて ふたり 星をよけて(大サビ

 まず気がつくのは、これら全ての終わりが「エ」で終わっているということである。仮にこれを「エ」以外の音だと考えてみよう。すると、この曲自体がぶち壊しになることが分かると思う。「ア」だと少々なさけない感じがするし、「イ」はやや幻想的になるかもしれないが悲痛な雰囲気も漂いそぐわず、「ウ」はそこで完結してしまい、「オ」では重すぎる。ここは「エ」でなければならない。暗い街中に消えていく複雑な余韻は、ここでは「エ」によってしかつくることができない(なお、似たような曲として井上陽水「帰れない二人」があることを指摘しておく。また、ASKAは「はじまりはいつも雨」を作る時にその曲を意識していると私は考えている)。

 さて、この曲における母音もっとも美しいと思うのはサビに入る前の「誰よりも 誰よりも」という箇所だ。J-POP広しといえども、このような「オ」の大胆な使い方をして、それが成功をおさめている例を私は他に知らない。この箇所は「ア」と「ウ」でも成り立たないことはない。しかし、「ア」だとあまりに開けっぴろげで楽観的すぎるし、「ウ」だと少しストーカーのようないやらしさを感じる。ここはやはり「オ」でなければならず、「オ」という少しくぐもった母音によっていささか内気な青年の、胸の奥底からやってくる高鳴る期待が的確に表現されていると私は考えている。言葉の「意味」ではなく「音」によってこんな複雑な操作をできるシンガーソングライターが今どこにいるだろうか? たいへん残念なことに私はASKA以外に知らない。

 他にも「はじまりはいつも雨」には美しい母音が色々ある。例えば「今夜君のこと誘うから 空を見てた」の「と」の遠慮がちな「オ」とその後にメロディーとともに上を見た時にある開放の「ア」であったり(綺麗な夜空を見て嘆息つくような場景が思い浮かびます)。こういうことは言いすぎると野暮になることかもしれない。とりあえずは「はじまりはいつも雨」を聞いていただきたい。それから、「Say Yes」や「no no darlin'」などのチャゲアス名曲から美しい母音たちを集めて、それぞれ言葉の音を解釈してみるのも一興だと思う。

2014-09-24

CHAGE&ASKAの"On Your Mark"について

CHAGE&ASKA名曲On Your Mark

[MV] On Your Mark / CHAGE and ASKA https://www.youtube.com/watch?v=3Obh9kg6o_U

 CHAGE&ASKA「PRIDE」J-POPきっての名曲です。それについては先日、ライヴ聞き比べの記事を書きました(http://anond.hatelabo.jp/20140923002713)。

 しかCHAGE&ASKAには「PRIDE」と肩を並べる、もう一つの壮大なバラード存在することを忘れてはいけません。それが「On Your Mark」です。この曲はCHAGE&ASKAの15周年記念シングル曲であると共に、アルバム「CODE NAME.2: SISTER MOON」のラストを飾る曲です。また、数億円を費やして宮崎駿にPVを作ってもらった曲でもあります。そのPV短編映画扱いで「耳をすませば」と並んで上映されたこともあるので、そちらでご存じの方も多いかもしれません。

 「On Your Mark」は間違いなくCHAGE&ASKA代表する名曲で、「SAY YES」や「YAH YAH YAH」が忘れ去られても、この曲が歴史に埋もれてしまうことはないでしょう。相方CHAGEは、数あるASKAの曲のうちでも「On Your Mark」をもっとも好きな曲だとどこかで言っていましたが、それも頷けますCHAGE&ASKA全盛期を告げる初めの曲が「WALK」「PRIDE」だとして、「SAY YES」「YAH YAH YAH」といった名曲を連発した全盛期を経たのちの「On Your Mark」は、それら名曲群をじゅうぶんに締めくくるに全く恥じることがない傑作だと言えるでしょう。

 前回は「PRIDE」ライヴ聞き比べというマニアックな作業を公開しましたが、今回は「On Your Mark」の楽曲分析というこれはこれでマニアックな作業を行ってみようと思います。というのも、比喩に富んだ歌詞に、転調を次から次へと重ねていくこの曲をどう解釈すればいいのか自分自身からなかったからです。以下、個人的思い入れ解釈しているメモ書きです。

冒頭の転調について

 静かなシンセピアノから曲は始まりますASKAは決して楽観的には聞こえない調子で「On your mark」(位置について)と歌います。すると、曲は変ホ長調から嬰ヘ長調に転調し、ベース八分の「ダンダンダンダン」というリズムが刻まれます。まさに、走り出したがごとくに。

 J-POP分析するときに調性を云々言うのは的外れと言われるかもしれないが、決してそんなことはないと思います変ホ長調ベートーヴェンが「交響曲第3番(英雄)」で用いた「荘厳の響き」の調性、そして嬰ヘ長調は♯が6つ付いて、複雑で混沌とした響きを持つ。例えば、マーラーが「交響曲第10番」のアダージョで用いたのは嬰ヘ長調であるチャゲアス変ホ長調の調性を探すと「PRIDE」や「Sons and Daughter~それよりも僕が伝えたいのは」を挙げることができますベートーヴェン英雄」と同じく、どちらも荘厳の印象を私たちに与える曲です。しかしながら重要なのは、「On Your Mark」はこの荘厳の調性からすぐに転調する(=外れる)ということです。すなわち、この曲は、はじめから英雄からの「除け者」であり、「PRIDE」のように素朴かつ豪胆に歌い上げることさえ禁じられたものの歌なのです。したがって、「On Your Mark」ははじめからかなりひねくれた性格をもつ曲なのです。この冒頭の転調を聞いて、たしか私たちはどこか言い知れぬ複雑さを覚えるのではないでしょうか。

 それでは、歌詞を見てみようと思います

歌詞について

そして僕らは いつもの笑顔と姿で

埃にまみれた服を払った

この手を離せば 音さえたてない

落ちてゆくコインは 二度と帰らない

君と僕 並んで

夜明けを追い抜いてみたい 自転車

 「いつもの笑顔と姿で/埃にまみれた服を払」うというのは、強がりの笑いです。いろいろケチをつけられるが、それを「いつもの笑顔と姿」で何気なく払うのです。そして、大切なものを失う時(落ちてゆくコイン)、それは音さえたてません。静かになくなっていきます。「私」はそれさえも「いつもの笑顔と姿」で見送っていきます

 次に出てくる「君」というのは、むろん共に走っている人でしょう。この「君」が男性なのか女性なのかは不明です。つまり友情歌なのか恋愛歌なのか分かりません。周りの友人に尋ねてみましたが、「君」は男性だという意見女性だという意見ではっきり分かれました。私は「けれど空は青」等につながる男性同士の友情歌だと認識しています。実際、宮崎駿もこの曲を使ってCHAGE&ASKAの二人を主人公としたPVをつくっていますし、CHAGE&ASKA自身のことを歌っていると考えるのがもっと自然解釈だと思います

 「夜明けを追い抜」くというのは面白いイメージだと思いますASKAは「晴天を誉めるから夕暮れを待て」で、今晴天のように売れている自分をみんなチヤホヤしてくれているけど、「夕暮れ」時に誉めてほしいと取れるような歌詞を作っています。また「太陽と埃の中で」という曲もあるように、ASKAにとって太陽とは特別ものです。朝の冷たい風を切り、太陽という「絶対」に向かって自分の力で進んでいくのです。灼熱の太陽でもなく、沈みゆ太陽でもなく、夜明けの冷たい太陽というところが面白いところです。この冷たさが、決して順調ではないレースOn your Mark=位置について)を予感させます

 ところで、完全な偶然だと思うのですが、PVと同時上演された「耳をすませば」に、まさに「夜明けを追い抜いていく自転車」の描写がありますね。気になるところです。

On Your Mark いつも走り出せば

流行風邪にやられた

On Your Mark 僕らがそれでも止めないのは

夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから

(夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため)

 このサビに入ると、また転調し、調性はイ長調になりますWikipediaによれば、「陽気で牧歌的であると同時に「輝かしくはあるが、非常に攻撃的」であり、「気晴らしよりは、嘆き悲しむような情念表現に向いている」という。調性の特徴にあまり拘るのはよくないかもしれませんが、この両義性は重要だと思います。それについては後述します。

 AメロBメロ比喩の激しさに比べるとサビは解説的になっていて分かりやすいと思います風邪にやられて駄目になりそうになるけど、「夜明けを追い抜く」ように、「僕ら=君と僕」は「夢(=太陽)」が頂上にある「斜面」を見上げて、いつか「夢(=太陽)」に行けそうな気がするのです。

そして僕らは 心の小さな空き地

互いに振り落とした 言葉夕立

答えを出さない それが答えのような

針の消えた時計の 文字を読むような

君と僕 全てを認めてしまうには

まだ若すぎる

 調性はまた嬰ヘ長調に戻る。

 この歌詞面白い所は「心」存在する位置です。通常、「心」というものは、個人のうちにあるものです。しかし、ここでは、「心」とは、「僕ら(=君と僕)」の二人が共有している「場」なのです。だから、二人はある程度「全てを認めている」といってもいいような深い関係にあることが分かります

 そんな「心」にある「小さな空き地」。この空き地からは、「NとLの野球帽」で歌われたような、工業地帯にある寂しげな空き地を思い浮かべます。そうした空き地は、基本的には大人たちの目の届かないところにある子供たちのテリトリーであり、遊び場です。一番の歌詞にある「そして僕らは いつもの笑顔と姿で埃にまみれた服を払った」というところにも感じるものですが、どことな童心にかえっているような気がします。そんな秘密の遊び場で、二人は喧嘩をしてしまます(「互いに振り落した 言葉夕立」)。「夕立」という言葉から、たんに喧嘩をしていることだけではなく、「空き地」で喧嘩が終わった後に「夕立」に打たれながら無言で立ち尽くしている二人がいる、という場景を私は思い浮かべます

 その場景が次の「答えを出さない それが答えのような/ 針の消えた時計の 文字を読むような」という言葉につながっていきます。二人は夕立に打たれ髪がびしょ濡れになりながら、互いに見つめ合います。二人とも、本当はお互いのことを分かり合いたいと思っていますしかし、二人は何も言いません(「答えを出さない それが答えのような」)。時計の針が消えてしまい、永遠に続くような気まずい沈黙があります。「永遠の謎」がそこにはあります。相手が何を考えているのか分からず、また自分自身が何を求めているのかも分かりません。やはり、「全てを認めてしまうにはまだ若すぎ」たのかもしれないのです。

 以後、サビが多少の変化を伴ってリフレインされる。分かり合うことな不可能なのかもしれないけれども、それでもOn Your Mark(位置について)! 「走り出」すしか解決方法はないのです。

 曲のラストは、冒頭と同じようなピアノシンセの静かな曲調になります。ここでは調性はイ長調である最後に歌われるのは

そして僕らは

です。この「そして僕らは」というのはきわめて両義的です。というのは、そこにあるのは希望だけではなく、苦しみや失敗も内包されているからです。イ長調の調性が「牧歌的であると同時に「嘆き悲しむ情念であることが特徴であるように、僕らの行く道は「希望であるのか「失敗」であるのか、最後まで種明かしされることはありません。しかし、決して「僕ら」は走ることをやめません。ここに「On Your Mark」のもっている奥深さがあると私は思います。行く先がどうなるのかは決して分からないけれども、苦しみを背負って、夢を目指していつまでも走り続けるのです。

追記──宮崎駿PVについて

 コメントをもらってジブリPV版について思ったことがあるので付け足します。

 「On Your Mark」のPVは、ご存じのように原発事故放射能事故主題としています。その主題設定も手伝って、近年ふたたび注目されています宮崎駿は「タイトル歌詞をあえて曲解し悪意に満ちた映画に仕立て、いつか来る未来に生きる」ことをイメージしてPV製作したと言います。どう「曲解」したらこ歌詞から原発の話になるのか今まで分かりませんでしたが、その答えは「夜明け」という言葉にあることに気がつきました。「夜明け」というのは「太陽」の出現を意味します。ところで、「原発」という装置は、原子核分裂反応から巨大な力を得ています太陽原子の分裂ではなく融合によって光り輝いており、厳密には太陽原発の力は全く異なるものではありますが、しかしながら、原発は「地上の太陽」と形容されることも多く、文化的コンテクストにおいて原発太陽は密接に結びついています宮崎監督が「原発」をテーマにすべく「曲解」したのは、まさに「夜明け」という言葉に他ならなかったのではないでしょうか。「On Your Mark」の歌詞だけを見れば、正直なところ、反核運動よりも原発肯定親和性を持ちます(すなわち、吉本隆明立場に近いのではないか、と私は思います)。宮崎駿はそれを見越した上で、「原発事故が実際に起こった世界でもOn Your Markと言うことは出来るのか?」と問うたのではないでしょうか。映像を見れば分かる通り、宮崎監督は「できる」と考えたのでしょう。しかし、当時と今では世界が違います。今の私たちはまさに宮崎監督のつくった世界の中にいるのです。その世界において、私たちは「On Your Mark」を聞いてどう感じるのか、「On Your Mark」と言うことができるのかと、再び考える時にあるのではないでしょうか。

2014.9.24 18:45

2014-09-23

CHAGE&ASKAの"PRIDE"

 チャゲアスといえば、ダブルミリオンを達成した「SAY YES」と「YAH YAH YAH」がやはり圧倒的に有名ですが、「PRIDE」はそのどちらと並べても決して劣ることのないどころか、全J-POP史上においても比類のない、赫奕たる地位を占める壮大なバラードです。そしてPRIDE幸運なことに録音に恵まれています1989年に発表されたその曲は、何度もライヴで歌われており、様々なバージョンを聞き比べることができるのです。ASKA年代によって声質や歌唱法がかなり異なっているので、それぞれ別のしかたで楽しめます。今回はややマニアックですが、PRIDEの様々なバージョンレビューしてみようと思います

①【CONCERT TOUR 1990-1991 SEE YA!】https://www.youtube.com/watch?v=-KfOdkNFrOk

評価=8

私の知るかぎり、最も早いPRIDELIVE音源です。

CD音源にかなり近いですね。他の音源に比べて特徴となっているところは、サビの「駆け抜けていく」(1:48-50)の歌唱ですね。とくに「く」の母音の処理です。「ウ」と「ア」の中間発声することで、単に「ウ」と発声するよりもパワフルに聞こえますASKA独特の母音の処理方法です。声も若さが満ち溢れていて爽快感を覚えます

②【 夢の番人 SPECIAL EVENT1993 GUYS 】https://www.youtube.com/watch?v=FnOnAXszb3k

評価=9

のものから二年後の音源です。

声のフットワークが軽くて、とくに高音となるサビのメロディーをなめらかにすべっていく様子はあたかサーカスの軽業師のようです。曲をより「自分のもの」にできている気がします。

ちょっとマニアックというかフェティッシュなことを言うと、「涙の跡」(3:33)という部分の「だ」の発声が他のものよりも情感豊かで、素晴らしいです。この録音はもっとエモーショナルものかもしれません。

③【CONCERT TOUR 史上最大の作戦 THE LONGEST TOUR 1993-1994】https://www.youtube.com/watch?v=FepyCkAE00U

評価=9

まり時間の間隔を置いていません。最高のパフォーマンスです。②ほどの情念はありませんが、全体の均整ということで言えば一番優れているものでしょう。

④【ASIAN TOUR IN TAIPEI】https://www.youtube.com/watch?v=iGmHpIn4R2s

評価=10

1995年台北でのLIVE音源です。

ややASKAの声が太くなっていますね。じつは私が一番好きな音源はこれです。

声質が太くなり重量感を覚えさせるけれどもパワフルに突き進むさまは、重戦車が高速移動をする様子さえ思い浮かべます

この録音では「駆け抜けてく」の「く」の音が、しっかりと「ウ」で発声されていますが、私はこちらのほうが好きです。かように苦悶の表情を浮かべた「ウ」はなかなか聞けません。

⑤【MTV UNPLUGGED LIVEhttps://www.youtube.com/watch?v=BsI973Gz0MQ

評価=7

イギリスMTVでのパフォーマンスです。1996年

アンプラグドさら欧米でのパフォーマンスということもあってか、アレンジがかなり変わっています

やや大人しめですね。テンポも少し早くなってあっさりとしています。お洒落な気分でPRIDEを聞きたいという時にはよいでしょう。

⑥【千年夜一ライブ福岡ドーム 僕らがホーム〜】https://www.youtube.com/watch?v=N84lgzkN9BA

評価=6

1999年から2000年にかけての年越しライヴです。

この頃からASKAの喉の調子に翳りが見えてきますポップス歌唱法にはご存じ「ミックス」というものがありますね。地声裏声を混ぜるってやつです。

艶のある地声成分で高音が出ないのか、裏声成分多めで叫ぶ手法オペラ歌唱に近い発声)が所々で見受けられます。後半になると多くなりますね。

⑦【CHAGE&ASKA LIVE IN KOREAhttps://www.youtube.com/watch?v=3X4W5lCMOGs

評価=6

コンサート途中に感極まって歌えなくなったことで有名な韓国ライブです(なおその映像はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=sFi5qExw_pM)。2000年

やはり前と同じで、高音が苦しそうですが、この曲ではその苦しげな姿すら一種のパフォーマンスに転化しうるものをもっており、胸を打つものがあると思います。②とはまた違ったおもむきで情感があります

⑧【COUNTDOWN LIVE 03 04 in SAPPORO DOME】https://www.youtube.com/watch?v=CIC71g9CvcE

評価=5

2003年から2004年にかけての年越しライヴです。⑥の3年後ですね。

この頃になると、90年代と声は明らかに違ってきます。目に見えて声が太くなってきます

喉の調子が治らず、どの歌唱法がいいのか模索している感じがします。

⑨【CHAGE and ASKA Concert tour 2007 DOUBLEhttps://www.youtube.com/watch?v=laGU2JOdj8o

評価=9

声はさらに太くなっていくのですが、そうした自分の声にあった歌唱法が見つけられたのがこのLIVEだと思います2007年

90年代ASKAを軽快なトランペットだとすると、これは炸裂するトロンボーンとでもいったところでしょうか。CHAGEの超高音はさら金属質なものとなって、硬質なハーモニーを聞くことができます

しかしこのLIVEで注目しなければいけないのはASKAよりもむしろCHAGEです。大サビCHAGEの超高音のハモリはこれまでのどの録音にもなかった凄みを与えてくれています

あと、またフェティッシュなことを言いますと、3:25あたりの「傷ついて知ること」の「と」の音は、大地の奥底からやってくるような雄渾な響きで痺れます

まとめ

やっぱり90年代は黄金期で、どれを聞いても圧倒的ですが、その中でも台北ライヴワーグナー「神々の黄昏」のような、崩壊しそうなまでに過剰な絢爛さがあって、私はそれを愛してやみません。

00年代になると喉の不調が目立ちますが、それでもDOUBLEライブは全盛期を取り戻すかのような圧倒的なパフォーマンスを見せてくれますしかしそれは90年代前半の軽業とは異なり、敬虔カトリック教徒の盤石堅固な信仰の凄みにも似たものを思わせます

2014-05-18

ASKA版『夢の中へ』 たる『共謀者』『ブラックマーケット』という名曲

みんな『SAY YES』だの『YAH YAH YAH』だの、大喜利ネタがいかにもありきたり。確かに『SAY YES』とか『僕はこの瞳で嘘をつく』は汎用性高いけど。

ということでファン歴5年(つまりほぼ新参だけど)の俺が、ASKAの曲の中で、薬物疑惑と絡めて聴くと味わい深い曲を紹介します。

それが『共謀者』と『ブラックマーケット』。

どちらも1997年ソロアルバムONE』に収録された曲。

共謀者

自分達を犯罪者になぞらえて、もう後戻りは出来ない、俺たちはひとつに結ばれちまってるぜ、このまま進もうぜーと歌い上げる。

今聞くともう、薬物中毒でありながらCHAGEandASKAにとってなくてはならない存在であるASKAが、CHAGE事務所人間に語りかけてるようにしか聞こえない。

もう出だしが良い。

びくびくするな 顔を変えるな

何もなかった そのままでいい

誰も思わない 聴かれもしない

すべてを認めるな

今まさにこんな感じなんじゃないんですかねえ。

これに続く、

手抜かりは掃いて捨てるほど

あるにはあったさ

それでもここまで潜り抜けてきたさ


というフレーズも実に香ばしい。バレかけたことあったのかも。

というかそのときに書いた曲という可能性すら(ry

サビの

Nothing will ever change.We are the ONE

とか、CHAGE事務所人間が今聞いたらどんな気分になるんだろうと思う。

とりあえず俺は本当にこれぐらい開き直ってほしいと思ってる。

一番目のサビはそうでもないんだけど、

二番目のサビがいい。

Nothing will ever change. We are the ONE

俺たちの鐘の音がどこかで鳴るはずだ

鐘の音意味深


Cracking open the cage. Close to the line

俺たちはひとつ名で結ばれちまってるよ

ケージ(直球)

開けるんですか。

いや、実際にはあけられないんだけど。クラックっていうか多分ただの保釈だけど。

そして、それに続くフレーズがこの曲で一番強烈だと思う。

だってまあ、CHAGEandASKAだもんね……J-WALKとかラッツと違うもんね……ふたり名前堂々と載せたんだもんね……。

そりゃCHAGEもいまさら抜けられねえわ。

ブラックマーケット

今日もたくさん売りましょ もっとたくさん売りましょ

Ah みんなこっちだよ 素敵なとこだよ

出だしド直球

不良品でも並べます あしたは場所を変えます

Ah みんなこっちだよ 他人同士さ

電波になって 秘密になって 汗の出所も消えてます

汗の出所と来た。

結局は尿でしたけどね。

これはBメロだけど、2番Bメロはこんな感じ。

楽しんだ人が勝ちです 怒った人が負けです

(略)

口を汚すケーキのようなもんだよ


納得する人は少ないかもしれないけど、この曲、何か詞の調子が『パラダイス銀河』とかの頃に戻ってる。変な敬語で。

これを歌ってる光GENJIとかアリだと思いますどうでしょうか。

で、サビ。

みんなで行こう 仲良しこよしで行こう

ここは世界ブラックマーケット

裸足で行こう 行こう 行こう

何にそんなうきうきしてるんですかねえ。

この曲、詞がシニカルな分、メロディをポップにしたとASKAは語ってたんだけど、もう残念なぐらいマッチしてる。

そのピークがやはりこのサビ。


極めつけはCメロ

ブレーキなんてありませんから 好きにどんどんやりましょう

どんなもんでも揃いますから やりっ放しでやりましょう

刺激好きですジャパニーズ

ブレーキなかったんだね(悲嘆)


一部週刊誌では渡英したときに薬物を覚えたとされてたけど、この『ONE』こそはASKAソロアルバム唯一のロンドンレコーディング

本場でキメてはしゃいでたんですかね。

と。こんな感じで、将来きっと『夢の中へ』に並ぶことになる名ネタ曲だと思う。

でもってそれ抜きでも名曲から、みんな聴け。この機会に。


最後に言っておくと、

ASKAの詞はだいたい、クスリ決めながら書いたとか言われても仕方ないぶっ飛び方のものが多い(実際キメて書いてたの曲があるのか、それがどれなのかはもちろんわからん)。

コード進行も笑えるぐらい複雑だし。

薬物騒動を面白がってる初心者はどれ聴いてもげらげら笑えるはず。

まあそういう奴らを全員殺してやりたいけど今は我慢してやる。


他に味わい深い曲を聴きたいやつは、

『kicks』に入ってる薬物について直接言及してる『kicks street』を抑えるといい。

後は、最近の曲である『いろんな人が歌ってきたように』とか『birth』を聴けば良い。

2000年代後半以降のASKA輪廻転生だとかめぐりあわせだとか宗教じみた思想を取り入れた末に、「すべては愛なんだ、君も認めたっていいだろう」と繰り返す地獄に踏み込んでた。

『いろんな人がうたってきたように』がその極北。年食った後の曲にしては喉の調子トップクラスなのが憎らしい。

2014-05-17

それでも君はその瞳で嘘をつく? 傷ついた青春の日々。

ASKA覚醒剤所持の容疑で逮捕されました。

正直ショックですよ。

長渕ファンに、当時やーいやーい薬漬け!って馬鹿にしてたけど、正に20年越しのブーメラン

本人は否定しているが、

今までの経緯を見ると恐らくクロなのではないかと思ってます

当時違和感を感じていた、「夢の番人」という曲のこの一節。

子供も大人も羽根を痛めた鳥も 運び屋の白い粉袋の秘密で 輝いてるような 輝けないような

羽根を痛めた鳥・・・

当時「矢ガモ」というカモが話題になってました。

胴体に矢が垂直に突き刺さったカモが公園発見され、

当時、面白可笑しくワイドショーののネタになってたんです。

なので、僕らは「矢ガモネタ仕込んできたか!ウケルwww」なんて流してましたが

この鳥が「飛ぶ鳥→飛鳥ASKA本人を指していたとは思いもよらなかったわけで。

「白い粉袋の秘密」で輝かれても、ぜんぜん嬉しくないんだよね。

ああ、なんなんだろうね、この「俺の青春を返せ」的な何かは。

正直ショックである

僕の中学高校時代CHAGE&ASKAと共にあった。

一曲一曲に、当時の記憶が刻まれている。

今ではほとんど聴かなくなったものの、

たまーにCD引っ張り出して聴いてみると、甘酸っぱい当時の思い出が鮮やかに蘇る。

作品」と「本人」は別モノって、心を痛めたボクも 割り切れるような 割り切れないような。

SAY YESに始まりLOVE SONG恋人ワイン色、WALK、PRIDE太陽と埃の中で、YAH YAH YAH

思い出は書ききれない。

ひょっとして、全てが汚染されていたのですか?

もし本当なら、早く懺悔して、イチからやり直して欲しい。

僕らの甘酸っぱい青春の思い出のためにも

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