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2022-11-11

北千住商店街を抜けた先にある荒川にはきっと大切なものが詰まっている。

デービッド・アトキンソンがいうには、1990年から2021年までに生産性年齢人口(16−64歳)が1299万人も減っているらしい。高齢者は2141万人も増えている。人口動態によって、社会保険料消費税も増えて、移転政府支出が増えている。そんなツイートをみて僕は「どうすんだよこの社会・・・」とつぶやいた。


どうすんだよこの社会


「おれはさ、どんなに社会がクソだったり、自分の身の置かれている環境がどうしようもなかったり、システムによってどんな不利益が被られようと、そういったことを理由に行動をせずに批判者側に回るっていうのが一番嫌いなんだ」

Kは黙って聞いている。きっとこのクソムカつくどうしようもない共感性皆無男をどうにかして言いくるめてやろうと思っているのだ。

「それでさ、どうするわけ?大事なのはその置かれた状況を出発点にどんな一歩目を進めるかじゃん」

あなたって本当に、なんてことを言ってくるんだろうね。むかつく」

「おれがそれを言って嫌われるかもしれない可能性は、そいつにいったときそいつ人生好転するかもしれない可能性とは関係がないからな」

人はみんな弱い。日本人とかじゃなく、人類全体で弱いのだ。30年間も生きてきて、ようやっと肌で理解してきた。

おそらく自分雇用者側に回ったからだろう。その人間の本性を前提にシステムは構築されなければならないのだ。

自分はそれをものすごく憎んでいる。いや、憎んでいた。正確に言えば、昔はそういった理不尽な抑圧がものすごく窮屈で、どうにかなりそうだった。

なぜだか知らないけど、自分は昔からずっとそうだ。そういう人間として生まれ育った。

でも今は違う。それは社会として必然的存在しているものだ。それを自分体感してしまった。


エリート女性システムに抑圧されるのは、女性全体の勤労意欲が低いからだ。きみがどんなに自分のことを才女だと思ったとしても、それを証明する方法が他になければ、面接の時に語り得るものなんて雇用者側は信用することなんかできやしない。どうせ好きな人ができて、その人と結婚したら、すぐに子供を作って辞めていくんだろうって。そう思われている。きみがどうかは重要じゃない。問題は、社会がずっとそのように回ってきたということなんだ」

「だけどそれは間違っている。社会女性の機会均等を実現すべきだし、資本体力のある会社だったらそれを実現できるはずでしょう?」


「なんで?会社が何十年と高い法人税を払いながら貯めてきた内部留保を、なぜ利益がでるかどうかもわからないもののために使わないといけないの?そしてなんでそのような貯金が当然の権利として自分提供されると思っていて、そうしない社会が間違っていると思っているの?」

「そんなの綺麗事だよ」

「そうかなぁ。極めて現実的なことしか言ってないけど」






理想というのは脆いものだ。僕は理想論者だ。正真正銘の。正真正銘すぎて理想同化しているかもしれない。

それほどの理想論者がいうことが極めて現実に即したものになるなんて、だいぶ皮肉の利いた人生だと思う。

「でもね、なんであなたがそれを言ってくるのかをよくよく考えてみると、あなたになにか得になることがないっていうのがわかってくるのよ。そういう意味で、稀有存在よね

あなたって。どうしてそんなことをしているの?」


Kは自分LOVE輪廻を回したいんだと言った。僕は「自分もそれをやっているつもりなんだ」と言った。

「誰かにもらった恩を、別の誰かに与えたい」 それ自体は物凄い誇大な理想論かもしれない。








Kの彼氏は1年前に死んだ。自殺だった。

正確にいうと、元彼氏だ。別れた後に、いろんなことが重なったのだという。

彼氏理想論者だったそうだ。とてつもない理想論者だったのだろう。きっと、世の中に蔓延する悪意や、欲望を受け止めきれなかったんだと思う。

高尚な理想を掲げることは、現代ではとても難しい。







僕たちは北千住にいた。ずっと北千住にいた。Kと出会ったのも北千住だった。

ずっと仲が良かったわけではないが、期間だけで見ると長い付き合いとなる。僕がまだサラリーマンの時だった。

「まだ学生だった頃からすると、だいぶ、変わったね」

「それって、いい意味よね?」

「もちろん。ふわふわした足が、ちゃんと地についてる」










僕たちはよく荒川に行った。深夜の荒川は静かだった。

河川敷ほとりで缶チューハイを飲む。

「この広い空に包まれているせいで、きっと気が大きくなっちゃったのよ。こんなこと言うつもりなんてなかったのに」



Kはそう言って泣きながら笑っていた。




今日は月がすごく明るいから、だいぶ遠くまで見通せたのかもしれないね



僕は橙色のランプが等間隔で並ぶ夜の首都高が魅せるトラックの明かりをぼんやりと眺めているのが好きだった。

それは北千住に住む僕にとって、今日の星空と同じくらい、大切なものだった。

僕がKにプライベートのことを聞くと、Kは仕事に集中するんだって言った。

Kはなにか煮え切らぬ様子で僕に話を聞いて欲しそうだった。2件目に行けるような時間だったから、「もう少し話していく?」と聞いて、

それでいつものように荒川まで歩いていった。


前の彼氏の話を聞くと、Kは「うーんそれは言えない」と言った。

言えないんだったら話さなくていいし、きっといろんなことがあったんだと思う。


そうして1分くらいぼんやりしながら、Kは「まだ自分の中で整理がついていないのよ。この感じをどう処理したらいいのかわからなくて」と言った。



「なにやら元カレが死んじゃったような心残りだね」



「死んじゃったのよ」

Kは言った。










彼氏はとても誠実な人だった。不誠実なことは許せない。浮気や、不倫だとか、そういうものに自ら手を染めるようなことはしないんだって

相手に対してそんなことがあるかもしれないだなんて想像もしないほど実直な人だったのだと言う。

一社目に入った会社を辞めて転職した会社ちょっとブラックみたいなところでね、自分と別れたタイミングっていうのもあったのか、いろんなことが重なって、それでかな。

実家のお母さんから電話がかかってきたとき、私は会社にいたんだけど、気が動転していてね、私の様子を見兼ねて先輩がタクシーGOで呼んでくれて、それで帰ったの。

から私のお母さんも私がぐちゃぐちゃになっていたことを知ってるし、私その時子供ときのように泣きじゃくってた。葬式はもう済ましているって向こうのお母さんは言ってた。カレが亡くなってから3日後くらいに連絡がきたから。それで、東京にいるカレの友達に連絡をして欲しいって。ひどくない?それを私に頼むのよ。

でもね、私よくわからないの。何だろう、栃木実家に行くなんて、いまだにできてない。だって、なんかそれをしちゃったら、もう二度と戻ってこないような気がするでしょう?もし、私が会いに行かなかったら、まだカレは生きているのかもしれないって。確かに私は人の死に携わることが多かったけど、葬式が残された人たちのためにあるんだってこと、いまだったらすごくわかる。



僕は煌々と輝く月を見上げてから、その隣にある星に向かって念じるように言った。

「行こう。絶対行こう」



だよね。いかないとだよね。



絶対に行きなよ」



「あとね、一つ、言えることがあるとしたら。俺の姉も、当時付き合っていた彼氏を亡くしたことがあるんだ。

からKに言えることは」



その経験は必ず乗り越えられる人にしか訪れない。




僕は「絶対に生きなよ」と言った。生きるしかないんだよ。どんなに絶望の淵に立たされたって、残された側は後を追うことができないんだ。

だって、それは、負けたことになるじゃん。相手に。ずるいよね。ムカつくよね。自分勝手だよね。



「私もね、最初に聞かされた時、なにかずるいってきもちが片隅にずっとあった。何だろうね、ずるいよね。卑怯よね。ムカつくよね」




「わかんないけどさ、Kちゃん応援してるから、どうにかしなよ」



「なにそれ笑雇ってくれるってこと?笑」



「それもありなのかな笑」



「800万円で、秘書!とかどう?」



たかいなあ笑」










僕たちが今経験していることは、必ず乗り越えられるものなんだと思う。

認識できるものしか経験できるものはない。僕は、Kにとって4人目の人間だった。

幸か不幸か、僕はKの背負っているものを一緒に背負うことになった。

「こんな話を聞かせてもらえるなんて、俺の人生って素晴らしいなぁ」と僕は言った。


僕はきっと他の人よりも背負うものが多く生まれてきた。

から、僕は自分にできることを増やさないといけないと思う。


商店街を抜けて駅に向かう前に僕はKの腕を引っ張って、力一杯抱きしめた。

そこに純粋気持ちしか込められていないことを理解したKがいることがわかった。


「本当、あなたって、稀有存在よね」


「泣かせることにかけてはベテランからね、よくも悪くも」



「悪い方がほとんどでしょうね」









理想現実があることを理解している。理想現実は明確に区別されるものでなく、現実の一部として理想存在していることを理解している。

僕は極めて現実的立場から理想のためにできる一歩目を進めている。その区別ができなくなってしまった先に死が存在していることを理解している。

僕は生きるために、現実理想を分けて考えるようになった人間だった。この社会の答えを生み出すために。





改札に上がる東口エスカレーターの前でKはじゃあねと言った。

僕は言った「頑張ってね」



「あのさ、きょーこちゃん。とにかく、頑張ってね」



僕は静かに笑った。



Kはエスカレーターを登っていった。


僕はそっと歩き出した。

2022-11-05

anond:20221105104728

産業構造企業設備研究投資と、政府の基礎応用研究投資なしには作られんぞ。

あと、法人税減税は、設備研究投資に紐づいた金は減税でも好景気産業強化につながるからいいけど、現預金内部留保で滞れば不景気産業劣化を招くな。

デフレでも緊縮財政を狙い、貯め込まれる金まで減税して企業設備研究投資破壊し、

緊縮財政志向と近視眼的な費用対効果で基礎応用研究投資破壊する新自由主義がゆえに衰退したんだよ。

そのくせにアホをおだてて無理強いして新しい産業を作れば良いとばかりに起業イノベーションだと大量に無為な川へ突き落とす人柱を増やすことばかりが盛んだ。

消費税増税と、貯め込まれる形の法人税減税でデフレを維持したがゆえに産業構造は変わらなかったの。

2022-10-31

anond:20221030010415

流行り物のジーフランチャイジー)やったり模倣業態やったりして、数年でやめて、手元に内部留保を残して清算できるケースは、そんなに多くないと思う。たとえば高級パン屋はだいたい2〜3年目で設備投資をリクープできてやっと利益が出始める。5年前に始めたとこは一応の利益を出せてるが、3年前に手を出したとこは何も残せないままブーム終焉を迎えてる。

増田が原資を減らさずに流行りの新業態を持ってきてスクラップ&ビルド事業を廻せてるなら、それはかなり商売勘がいいんだと思うよ。

2022-10-23

anond:20221023140832

まずは政治家官僚税金やらナントカ保証料とかオリンピック準備費とかから抜いた金額なり賄賂お金だったりなんかを放出しないとな。次に電●みたいな中抜き企業中抜き法律禁止(○次受という構造禁止)した上で、内部留保社会経済に戻そう。そうやって上級国民上級法人の皆様方から立派な行動を見せて頂いて、「我々が先陣切って身銭を削りますので、皆さんも同じ割合(放出額÷総資産)のご協力お願いします」と言ってくれたらいいのにな。まぁ実際に誠実に(総資産とか嘘吐かずに)やる日は来ないんだろうけどな。

2022-10-22

anond:20221022010636

閣議決定」と「内部留保はいいリトマス

って見に行ったらスター200超えてトップワンツーかよ...

さすがに数十程度だろうとなめてたわ...

2022-10-17

anond:20221017081744

一番悪いのは銀行

正社員首切りが多発すれば住宅ローンの焦げ付きが増えて大損する

中小企業が淘汰されれば貸付金が焦げ付いて大損する

昔はメインバンクが主導して資金調達の面倒を見ていたけど、2002年頃の公的資金注入のあたりからメインバンク制なんかなくなった

企業人件費が足りなくなっても面倒見てくれる保証がなくなったので、内部留保に走り、社員の首を切れないか給料も上げられない

2022-10-02

anond:20221002142137

実体経営が良くなっているわけではないので内部留保株主からつっつかれて配当増やしただけでしょ。

分配も投資もされてない、失われた20年って言われているわけで。

2022-09-23

投機豚会のルックス想像

株主がいない相互会社ソルベンシーマージン比率内部留保額がやたら高いところの幹部

統一支援者や隠れ弁護士組織法務系の官僚も参加(しばしば彼らによる横領事件が発覚する)

・バックはイギリスアメリカ人集団キリスト教

2022-09-22

企業内部留保を吐き出せ」って正しいよな?

内部留保設備金額も入ってるんですぅ〜〜

みたいな反論があるけど

預金残高の推移見てもここ10年で200兆円から300兆円に上がってるんだよ

2022-09-04

内部留保社員還元せよ

っていつもシーズンになったら特定団体の方がイチャモンつけてくるんだけど、内部留保なんてことばは経営上ないから、まともな議論はできないんだよね。

昔の人は特定思想の人は●すべし、くらいの姿勢だったんだけど、向こうもいい年だから、話し合ってわかってくれるといいんだけど、言葉定義が合わないから困ってるんだよね。

利益社員じゃなくて株主のものから、どうしようもないのに、運動論だけなら答えはないからやめてほしいんだよね…。

2022-09-02

ご家庭の内部留保

投資に回しても内部留保となるのか注目です

うーむ増えると良いですねー

可処分所得というものじゃな

ダム必要に応じて開門すべきよね

開けゴマ花咲経済われ思う

景気とか知らねぇでもわかるぜ金ぇ

気持ちの良い風と流れを感じましょう

2022-08-08

anond:20220808105207

銀行が晴れの日に傘を貸して雨の日に返せをやったんだから会社不景気に備えて資産を増やすよね

まぁ、これやったか新銀行東京なんかを石原都政は作ったりしてたんだけどまぁなんというかという感じ

会計基準では内部留保なんてないんだけど、内部留保って言われてる物の総額が現金貯蓄だけじゃなくって土地建物、出荷前製品なんかの評価額含めた物だったりする。

最大って言ってる方も実際の数字見てない。

とりあえず、資産持ってる!おかしいだろ!って言ってるだけ

資産はその名の通り、次の何かの為の備えであり運転資金でもあることを忘れている

2022-08-04

統一協会野党

ここ最近の流れは、本当に野党ダメなところ丸出しって感じ

世間へのコメントを、「これから政界をどう変えていくか」ではなくて、「カルトと手を組んだ与党批判」にしてしまっている

本当に支部会議とか出てても嫌になるんだが

お前それで現行の議員が支持を失うとしても、代わりに来るのは「自民の中の別の議員」だぞ

なんでそこで、共産なり立憲なりが支持を貰えると考えてんだ?

意味が分からないんだよ


円安にしても

貧困化にしてもさ

ベガーと叩いても市民は靡かないんだよ

「我々はこうする、原資はこれ」と明確に打ち出して、それが支持されないとダメだろ

ちな、共産党がよく口にする「企業内部留保」については、共産主義の視点に立たないと理解できないんだ

企業生命である内部留保課税とか、国外に出ていけってな施策簡単に口に出来るのは

共産主義であれば資産は共有される」という視点がないと、妄言しかないんだよね

そもそも、それやったら二重課税じゃねぇの?とかも気にしてないしな



今回の件もキリスト教とか仏教であったらそこまで可燃性は高くないはずで

こう、温度差が激しいというか、きちんと世間と向き合えと言うか・・・

マスコミはてブ統一協会でにぎわってるが、世間的に燃えてるのかね?)

2022-08-01

いい加減わかってほしいんだが経営者としては「不況の時に一定限度の賃金カットあり」なら今すぐにでも賃金あげるつもりはあるんだよ

最低賃金をなんぼ上げても全然良いのよ

一旦景況良くて賃金を上げたのなら、その逆の不況ときに下げて良いならね。

給料下方硬直性問題なんだよ。

皆分かってることなのに、ここ知らんぷりするからいつまでたっても日本賃金上がらないんだよ。

頼むからわかってくれ。

こちだって下げたくて下げるわけじゃない。

というか普通に考えて下げたら従業員いなくなるのわかってるからよほどのことがないと下げないよ。

でも、売り上げが減ったときでも解雇もできない賃下げもできない経営者がすべてかぶれって言われたら

景気がいいときはその時のマイナスに耐えるためのバッファづくりせざるを得ないんだよ。

佐々木正彦が日本にはゾンビ企業が多いって言って馬鹿にしてくるけどこういう人ほんとムカつくわ。

なんで赤字なのに耐えてる企業があるのって言いたいんだろ。

そりゃ経営者がそのために備えてるからだよ。

雇用の仕組み上不況の時に赤字になるのはわかってるから

景気がいいときでも社員賃金上げずに、不況の時のためにへそくり作ってるからだよ。

中には社長報酬って形で経営者だけ多めにもらってるところあると思うけど

たいがいは不況の時でも首を切らずに給料を減らさずにっ従業員を守るために仕方ないんだよ。

内部留保内部留保っていう共産党の手先も多いけどさ、従業員の代わりに会社一時的貯金してるだけだよ。

なかなか不況が来なければその分貯金がたまりやすいだけで、コロナの時につぶれる会社が少なかったのは誰が頑張ったおかげだと思ってるんだ。



いい加減日本の皆さんには常に安定してもらうのがよいか調子いいときはたくさんもらって調子悪いときは減るほうがいいか。どっちかを選んでほしいんだよ。

どっちを選んでも税金面以外ではそんなにかわらないから。

こっちとしても調子いいときにたくさん払う方が税金面ではありがたいからぜひそっちに賛成してほしい。

2022-07-30

保守革新保守リベラル

革新法人税増税内部留保課税マルクス系の主張と、

防衛費GDP比2%反対や反撃能力反対の9条系の主張とから成る

リベラル個人自由多様性積極的肯定する価値観を持つ。

保守には反革新保守と反リベラル保守とがある。

 

     保守

  ②      ①

保守    +  リベラル

  ③      ④  

     革新

 

四象

多くの民主国家では主に①の政治勢力と②の政治勢力政権を争っているが、

日本では②の自民党日本維新の会か、④の立憲民主党(昔は日本社会党)・日本共産党かが主体となっていて、

①を占める政治勢力が広く根付いておらず政治が停滞するのが日本の不幸だと思う。

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