はてなキーワード: ジェノベーゼとは
上手に生きるコツは美味しいカルボナーラの作り方とよく似ている。
30歳を過ぎるまでカルボナーラを作ったことのない僕が人生に躓いたのは仕方がないことだったのだと思う。
料理をしなかったわけではないし、パスタを作ったことがなかったわけでもない。
普通の人はペペロンチーノを作り、ボロネーゼを作り、カルボナーラを作る。
でも僕はカルボナーラを飛ばしてジェノベーゼやアマトリチャーナなど他のパスタを作り続けた。
なぜかカルボナーラは敬遠してしまった。それを説明することはむずかしい。あのクリーミーさに満ちた感じだったり、半卵なのか全卵なのかはっきりしない感じだったり、そもそもカルボナーラという名前だったり、いろいろな理由を挙げることはできる。
しかし、どれが理由なのかと言われると、はっきりとは明言できない。言うなればカルボナーラをカルボナーラ足らしめてるカルボナーラらしさがなんとなく僕にカルボナーラを敬遠させた。
僕は同い年の人たちと同じようにかわいい子に声をかけ、デートをして、セックスをした。でも、それだけだった。
恋することや愛することは一度もなかった。
それは小説や映画などで使われる、話をおもしろくするための修辞学的な表現だと思っていた僕は、それが現実に存在するものだと知ってひどく驚いたものだった。
僕は恋や愛をユニコーンやペガサスのようなものだと思っていた。
現実の動物をベースにしているから、似ている動物はいる。しかし、それはあくまで空想上の生き物であると。
「どういうこと?」
「カモノハシの標本を送られたイギリス人もその存在を信じなかった。鴨のくちばしとビーバーの体をツギハギしたものだと思い込んで。おかしな話よね。そこにカモノハシはいたのに」
彼女とはそれっきりだった。
彼は自らのことをニューハーフともトランスジェンダーとも言わなかった。ただのオカマだと言った。彼女と呼ばれるのも好まなかった。
女性ホルモンは摂取していたが不定期だった。真面目にクリニックに通ったかと思うと、突然行くのをやめた。そんなことを繰り返していたので、オカマは男性と女性の間を行ったり来たりしていた。
特に深い理由があったわけではない。ある時僕はオカマと寝た。酒で記憶をなくしたわけでも、ヤケになったわけでもなく、なんとなく僕はオカマと寝た。それがどこか自然な成り行きのように思えた。オカマは男性みたいで女性みたいで不思議な感じだった。
オカマとは付き合っていたわけではなく、友達のような関係だった。僕に彼女がいた時もあったし、オカマに彼氏がいた時もあった。でも、どちらからともなく連絡を取って、相手の家でご飯を作り、ワインを飲んで、セックスをした。僕とオカマはそんな関係だった。
いつものようにオカマの家に泊まった翌日、僕が起きるとオカマが料理を作っていた。
オカマはいつも楽しそうに料理を作った。料理を作るオカマを見るのが僕は好きだった。
オカマは話をしてくれた。オカマという生物の生態についての話だった。
オカマになるのは金がかかる。昼の仕事で稼ぐには厳しいし、そもそもオカマになればなるほど、昼の仕事は難しくなる。オカマが言う通り僕はオカマの警官や教師というものを見たことがなかった。だから多くのオカマは夜の仕事をする。
若いオカマはいい。若いオカマは綺麗だから自分も周りも満足する。でもオカマも年をとる。年をとったオカマは醜くなる。夜の仕事は難しくなり、周りから求められることも少なくなり、その醜さに何よりも自分自身が絶望する。昼の仕事の経験もなく、夜の仕事を続けられるわけでもなく、誰からも求められることのなくなった醜いオカマとなってオカマの生態は終焉を迎える。
「ねえ、バビルサって知ってる?」
「なにそれ?」
「インドネシアにいるイノシシの仲間。長いツノが生えててだんだん伸びて最後には自分の頭に刺さって死んじゃうんだって」
「へえ、変わってるね。でも急にどうしたの?」
「それってオカマに似てるなって思ってね」
そう言ってオカマは2人分のカルボナーラを持ってきた。僕はカルボナーラは好きじゃなかったけど、オカマのカルボナーラだけは好きだった。確かに美味しいカルボナーラだったけど特別美味しいってわけではなかった。でもなぜだか好きだった。まるでオカマのようだった。そういって僕らはカルボナーラを食べた。僕らの関係はオカマが自殺するまで続いた。
女の子と上手に遊べなくなった。
嘘というわけではないのだけど、思ってもいない言葉を言えなくなった。
例えば本当に綺麗な子以外には綺麗だと言えなくなった。そして本当に綺麗な子は、多くの場合、綺麗なこと以外には褒めるべきとこがなかった。そういったわけで僕は女の子と上手に遊べなくなった。僕は暇を持て余した。
ただこの話にはミステリアスな少女もオシャレな小人も出てこない。劇的な体験だったり非日常的な冒険だったりそういったイベントも起こらない。仕事をして、洗濯をして、アイロンをかけて、料理を作って、ワインを飲んで、夜に眠る。そんな生活が何年も続いた。そして僕は何年も飽きることなくカルボナーラを作り続けた。
オカマのカルボナーラを思い出しながら作り、カルボナーラを食べながらオカマを思い出した。男のようなオカマを思い出し、女のようなオカマを思い出し、元気なときのオカマを思い出し、辛そうなオカマを思い出した。思い出すオカマによってカルボナーラの味は変わっていった。
でもしばらく経った頃からカルボナーラの味は変わらなくなった。そして僕の生活はすこし変わり始めた。相変わらず思ってもいない言葉は言えなかったが、以前より思う幅が増えた。どんな人にも美しさがあり、優しさがあるように思えた。もちろん、多くの場合は、という留保付きだったけれど。
僕は相変わらずカルボナーラを作り続けた。パスタを茹で、生ハムを炒め、ワインを加え、パスタを入れて、卵とチーズを混ぜて、黒胡椒をたっぷりとかける。ひとつひとつの行動が美味しいカルボナーラを形作るように、僕の生活のひとつひとつの行動が意味を持ち始めた。現実と人生が地続きになった。
もちろん、失敗することもある。茹で過ぎたり、ワインを入れすぎたり、火が強すぎたり。でもそういった失敗もどこか友達みたいに思えるようになった。そして僕はそんな具合に人生を生きるようになった。カルボナーラのように。相変わらず時々失敗はするけれど、どんなカルボナーラでも美味しいものだ。多くの場合は。
2023-01-14 部分改稿
供養。
美味しい店がほとんどない地元で、唯一まともな味の餃子屋に行こうとしたところ、満員で入れず、かといっていまから自分で料理をするような時間でもなかったので、以前から存在を知っていた駅ビル地下のそこそこ口コミもよい(そういったことを信じてはいけない)イタリア料理個人店に入店した。
外からは見えなかったが、扉を開けるとカウンター4席しか客席がない店で一抹の不安を覚える。少々お待ち下さいと、目の下が化粧かクマかで真っ黒なおばさん店員に言われて5分程無闇に待たされた時点で、即効帰って自分でリュウジのバズレシピ見て邪道で美味しいパスタでもつくってればよかった。
トラットリア(店名がトラットリアをもじった造語になっていたので正式にはわかりませんが)だったのでお腹も減っちゃったし適当に注文しても良いだろうと思い2人で冷前菜、温前菜、パスタ2皿を注文したところ、「パスタ、パスタってなっちゃいますけどいいですか?」と聞かれる。パスタが2皿でOKと答えると「うちはシェアして出してるのでパスタ、パスタってなっちゃいます」とのこと。シェアしなくていいと伝えるも「うちはシェアしかできないので」とのこと。ランチもやってんだからシェアしないくらいできるだろうとは思ったが、まあ店の方針もあるだろうし、パスタを2皿という尋常でない注文方法をしているのであろう我々がおかしいのかもしれないのでここは「パスタ、パスタってなっちゃう」ことにしたがっておくことにした。
あえて頼んでなかったのに「お飲み物は」との圧があったのでビールとウーロン茶を注文(いますぐ餃子屋に行きたい気持ちが止められていない)。もしかしたらその時点で我々がおかしな客だから嫌われていたのかもしれないが、自家製パンが異様に熱くカチカチで、私が家で作ったときにめん棒がなくて適当に伸ばしたので厚くなりすぎてしまったピザ生地と同じ味がした。温前菜のトリッパはオレガノを入れすぎて草と油の味がした。シェアされたパスタのボロネーゼは煮込みすぎて繊維だけになった牛肉、かけすぎたパルミジャーノが混ざり合ってカルビーポテトチップスボロネーゼ味があったらこんな味だろうなという味。もう一つの冷製ジェノベーゼはオリーブオイルと松の実をいれすぎ、冷製パスタなのに茹で時間通常どおりでやりましたか?というくらいのカチカチ麺のイタリア風油そばで、ラーメン屋みたいに終わった食器を自分でカウンターの上に上げる方式だったのでより一層ラーメン感が引き立っていた。今回唯一美味しかったのはレバーペーストの下に引いてあったルッコラです(レバーペーストは溶けたアイスクリームの食感)。しめて2人で8200円也。二度といかないです。
※口コミサイトに悪評書いてもいいけど、コロナで飲食店が大変な中、潰れてほしいとは思わないし何なら店主に刺されるかもしれないのでここに。
定義はやや色々あるのだが具なしか、具が卵だけのシンプルなパスタだ
自分はオリーブオイルと塩とレモン汁だけをパスタにかけて絡めて食べる
これが素朴だけど美味いんだ
パスタは好きだ
ナポリタンも好きだ
ジェノベーゼも好きだ
でも朝はなるべく楽にパッと食べたい
鍋にお湯沸かして、フライパンに具とソース用意して…とか朝はめんどくさくい
とても楽だ
麺が茹でたらボウルにパスタを移して、お好みでオリーブオイルと塩とレモン汁をかけて多少絡めて完成だ
寝起きで頭が半分寝てても苦労しないで用意できる
食べると適度な塩っけとレモンの酸味、オリーブオイルの香り、麺の小麦の味がツルッと入って来る
美味い
多分どんなパスタよりも麺の味が分かる
あ〜パスタ美味ぇ〜…と1日が始まる
物足りなければシーチキンや粗挽きコショウも追加して絡めれば良い
食べ終わった後の後始末も楽だ
ボウルとフォークと麺を茹でた鍋を洗うだけ
ぶっかけうどん美味いよな
パラパラとは行かなかったがうまかった。自分が食べる分には問題なし。
◆材料
しめじ2パック
ベーコン3パック
ピーマン2個
米(麦入り)1合
輪切り唐辛子
塩胡椒
◆作り方
炊き上がった米1合を全投入して強火で炒める
◆感想
今回、初めてしめじを切った。これまでは下の根っこのとこ切り落とすだけだった。この一手間でより料理っぽくなった。
同じくピーマンもいつもより細かめに切った。いつもは半輪切りくらい。この一手間が(略)
パスタ用のソースではチャーハンにはならないんだな、ということを学んだ。ベタベタしている。リゾットとかだったら違和感ないかも。作ったことないけど。よく知らないけど。
半分食べた。残りは明日の昼食べる。
夫とは食事の時間が合わず、食べ物の好みも合わず、自分が料理経験値ゼロのメシマズのため、ほぼ食事は別。けどいつか食べてもらえるレベルになりたい。
以上
【前回のあらすじ】
鬱病の私はやむを得ない事情で無理矢理汚部屋の片付けをしている。
台所エリア初日。今までよりも層が厚くなっており、見るからに手強い。
実際やってみると、明らかに不要なものと必要なものがはっきりわかれていて、時間はかかるが作業自体は難しくなかった。
割れたガラスや陶器がちょこちょこあって厚手のゴム手が非常に役立った。破片は取っ手の割れたマグカップに集めておく。
今回は洗面所のドア前まで(エリアの半分くらい)までで終了。実作業時間は1時間半ほどだった。
なぜかハサミが4本、あと汚部屋あるあるだと思うけど現金が160円出てきた。
出てきた160円でセブンイレブンのセサミスティックとスニッカーズ(小)を購入しおやつにした。
作業後なんか知らんが精神が荒れ、職場のこととか考えてしまい号泣しながら安定剤を多めにのんだ。翌日通院のため風呂に入っておきたかったができなかった。
成果:ゴミ袋2袋
5日目 通院のためお休み
朝からめちゃくちゃに体調が悪く、寝ていたかったけれど翌日は天気も怪しいし薬がないとしぬので死ぬ気で通院した。帰宅後、明日全てをサボると心に決め、半ばヤケで洗濯と風呂をやっつけた。
書き忘れていたが、うちの間取りは洗面所があるタイプの普通の1Kである。洗面所のドアの手前は4日目にきれいになったものの、向こう側は服やら何やらがギチギチに詰まって開かずの扉ならぬ閉まらずの扉になっていた。昨日完全サボりを決め込んでいたが、そこがどうしても気になり片付けとかは一切気にせず、とりあえずドアが閉まるように物を洗面所の方に押し込んだ。
あとは基本お布団。明日に備えおやつを買いに行き、ちょっと早めに寝た。
なんか朝から元気だったので、8時頃から作業開始。1時間程度ゴミを袋に詰め続けるお仕事。折れに折れたパスタが沢山出てきて本当に自分が嫌になる。
はっきりいらない紙系のゴミと、不燃系のゴミが多い。紙系を袋にぶち込みつつ、不燃系は背後に流していく。
私は食事は基本紙皿と割り箸なのだが、未開封含め割箸が500膳くらいあった。
当初床だけの予定だったが、戸棚の中の古い食品を処分して空いたスペースに割り箸を収めた。
この辺で集中力の低下を感じ、お布団に戻って昼まで寝た。
昼食は掃除してきたら出てきた青の洞窟のジェノベーゼにしたがチーズやナッツのコクが感じられず、あまり美味いとは言いがたい代物だった。というかあんま美味しくないから残してたんだろうな…
入居当初めちゃくちゃ元気だった私は台所と洗面台部分にフロアシートを貼っており、今までは剥がすか剥がさないか迷うレベルの汚れだったのが、この辺りからどす黒いカビ的な何かがついていて本当に過去の自分を褒めたくなった。
原因はシートタイプのパックの袋から出た水分である。声を大にして言いたいのは、水分が入っているか否かで掃除の難度は大きく変わるということである。迂闊にシートパックの袋の上にダンボールを載せてその上を歩き回ったりしないことだ。そんな人間私以外に存在しないと思うけど。
2時間ほどかけ、一通りゴミをまとめることに成功した。出てきた皿や不燃系のゴミたちは明日作業することにして、紅茶を入れセブンイレブンの冷凍大学いもをいただいた。
成果:ゴミ袋6袋
その後は電気毛布を入れてぬくぬくのお布団でさっきまで泥のように眠った。夜眠れるか不安を抱えたまま、今これを書いている次第である。ここまで読んでくださった方ありがとう、明日いいことありますように。
多分続きます。