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2023-11-06

「三体」が好きだった人にオススメしたいSF小説・後編

オラフ・ステープルドン

最後にして最初人類現代人類から数えて第18番目の人類進化描写する奇書で、巨大な脳みそだけの存在になったり、知性を退化させてトドアザラシみたいになってしまったりと、何億年にも及ぶ人類歴史が豊かな空想力で描かれる。プロットキャラクターは極めて希薄で、現代作家がこんな作品を書いて売れることは考えにくいのだけれど(ほぼ設定資料に近いかも)、個人的にはお気に入りと言うか性癖に近い魅力を感じる。

スターメイカーはそれをさらに発展させたもので、時間空間を越えて精神銀河を飛び回り、エキセントリックエイリアンの生態の設定を惜しげもなく披露しつつ、それが銀河歴史にどのような影響を与えたかを語る。そして、この宇宙創造した存在意図を探求する旅をする。光速限界があるため、その旅やエイリアン同士の交流テレパシーで行われるという設定はSFとしては苦しいが、宇宙創造目的たる究極の歓喜の瞬間を目指すヴィジョンは美しい。残念ながら、その瞬間までには人類はとっくに滅亡していることが示唆されるんだけどね。冷えて寿命を迎えつつある宇宙必死に命をつなごうとする生命描写は壮絶。

チャールズ・ストロス

「アッチェレランド指数関数的に発展するAI10年ごとに描いた小説で、タイトル通り加速のスピードがとんでもない。最初21世紀現実世界と地続きなんだけど、21世紀半ばには進歩しすぎたAI地球解体してダイソン球を作り始め、その過程地球のすべての化石だとか地質だとかをアーカイブ化しはじめる。人類暴走するAIを止められなくて太陽系辺境に追いやられていく。その途中でエイリアンともコンタクトを取る。

これはとある一族の三代にわたる因縁話でもある。最初世代では夫がAI特異点信奉主義者コピーレフト大賛成、妻がガチガチ保守主義著作権かに厳しく、しかSMプレイ女王様だ。2代目は妻が夫を無理やり犯すことで妊娠した子どもだという、ドロドロの設定。

酉島伝法

皆勤の徒」は遠い未来地球で、地球生命体に奴隷として使役されるコピー人間の苦悩を描いている。この短篇集は優れた言語感覚日本語漢字表記とルビの可能性を拡張した造語であふれており(というか酉島伝法作品はだいたいそう)、異文化に触れたときの驚きや、似ているけれども少し違う文化に対する戸惑いが感じられる。ただし、かなり読解に力を要するので、場合によってはネタバレ覚悟世界観を通常のSF用語説明した巻末の大森望解説を先に読んでもいいのかもしれない。

「宿借りの星」とある惑星地球人類との宇宙戦争に勝利した昆虫生命弥次喜多道中記で、舞台固有名詞こそ異質だがストーリーのものは非常に読みやすくなっている。まったく異質なものを作り出すことにかけてはこの作家は他の追随を許していない。そして、滅ぼしたはずの人類がどこかに生き残っているのでは? という疑惑から物語は不穏になっていく。

野尻抱介

こちらで述べた通り。太陽簒奪者」はいいぞ。

天文部だった主人公宇宙に出ていくという意味でもすごく夢がある。

スティーブン・バクスター

まずは前述したH・G・ウエルズの「タイム・マシン」の遺族公認続編タイムシップ面白い。前作で行方不明になってしまったヒロインを救うために、再び未来に旅立ったはずが、なぜか前回とは似ても似つかない未来にたどり着いてしまう。

時間旅行のたびに歴史改編がなされ、パラレルワールドが生成されてしまうとしたら、主人公はどうやってヒロインと再会するのか? いっそ歴史を改変してしまってもいいのか? さまざまなジレンマに悩まされる冒険小説だ。

また、この著者は時間無限大という作品も書いている。これは宇宙最強の種族ジーリーを扱ったジーリークロニクルの一編だ。作中世界では、人類クワックスというエイリアン支配を受けており、それに対抗する手段を知っているという「ウィグナーの友人」という、とある思考実験にちなんだ名前を持つ謎の団体が暗躍する。主人公父親との(正確にはその再現人格との)屈折した関係に悩んでいる。作中に出てくるタイムマシンは、少なくとも現代物理学とは矛盾しないらしい。ちょうど90年代の「ニュートン」で紹介されていた。

で、確かこの作品だったと思うんだけれど、人類クワックスもジーリーという宇宙最古・最強の種族テクノロジーおこぼれで生活してるんだけど、そのジーリーでさえ恐れている存在がいる……というのがこのシリーズの基本設定。

なお、同一世界観の短編集がプランクゼロ」「真空ダイヤグラムにまとめられていることを最近知った。それに、長編結構邦訳がある。未読だけど気になる。

林譲治

短編ウロボロス波動高校生時代に読んですごく好きだった。実際にかなりありそうな宇宙探査が描かれていたからだ。太陽系侵入してきた小型ブラックホール捕獲して天王星を周回する軌道に乗せるという設定と、作中の謎解きがすごく魅力的だった。

ただ、なぜかそれ以降のストリンガー沈黙」「ファントマは哭く」が読めなかった。キャラクターの会話や背景となる政治の設定がかなり説明的で、ぎこちなく感じられたからだ。読むのに気合がいる本は、持っていてもあえて図書館で借りることで、期限を決めるという強硬策があるが、まだ試していない。

春暮康一

オーラリーメイカー」「法治の獣」。とにかく事前情報なしで読んでほしい。日本ファーストコンタクトもの第一線に立っている。とにかく奇抜なエイリアンが出てくるし、どうやら知的生命体の連合らしきもの確立されていく歴史の一部らしいのだが、この「オーラリーメイカー」という宇宙人の種族の作り上げたシステムは、素晴らしく絵になる。

H・P・ラブクラフト

おなじみクトゥルフ神話創始者の一人。前にも書いたけど、ラブクラフト作品知識欲に負けて禁断の知識に触れて発狂するか未知の存在拉致されるかするオチばっかりなんだけれど、人類宇宙の中では取るに足りない存在なんだという絶望感が僕は好き。

SFを紹介するのが趣旨なのでエイリアン地球外の神々や人類以前の種族)の歴史の壮大さを感じさせてくれるのをピックアップすると、南極探検発見した人類以前の知的種族を扱う狂気山脈にて」や、異種族図書館幽閉される時間からの影」だ。侵略ものとしては宇宙からの色」かな。ニコラス・ケイジがこれを原作した映画で主演を務めていたはず。

ダンセイニ風のファンタジー作品も好きだ。読みやすいとは言えないが、ラブクラフト全集を読んでほしい。というかアザトースの設定が好きすぎる。元ネタのマアナ・ユウド・スウシャイそのままだとしてもね。

ピーターワッツ

ブラインドサイトについてはこちらに書いたので、「6600万年革命について。巨大小惑星の中で暮らす人類と、それを管理するAI物語だ。彼らは銀河系にワームホールネットワークを作る旅路に出ているのだが、もはや地球文明が存続しているかどうかも定かではない。すでに正気を失いそうな時間が経過しているが、使命をひたすらこなしている。

管理AI人間の知能を越えないようにギリギリ調整を受けている。そのことから「チンプ」つまりチンパンジーあだ名がつけられている。とはいえ地球時間で6600万年が経過していると、「もしかしてシンギュラリティ迎えたんじゃない?」みたいな出来事があり、人間AIに対してレジスタンスというか隠蔽工作をする。バイタルを始め何から何まで知られている人類は、AIに対して何ができる?

少し条件がずれるので乗せなかった作品

アシモフの例えば銀河帝国の興亡」なんかはシリーズが進むと鋼鉄都市「はだかの太陽などのロボットシリーズクロスオーバーして行って、確かにアシモフが発表順に読んだほうがわかりやすくなるんだけど、さすがに全部読む前提で書くのはちょっとしんどかった。個人的にはアシモフ黒後家蜘蛛の会というおっさん萌え短編ミステリおすすめ英米文学地理に関する雑学が無いとわからないところもあるけど、口の悪い仲良しなおっさんの同士のじゃれあいを読んでなごんでください。

堀晃の「太陽系から3光日の距離発見された、銀河面を垂直に貫く直径1200キロ全長5380光年に及ぶレーザー光束」が出てくるバビロニアウェーブハードだなって思ったんだけど、どういう話か思い出せなかったので省いた。まずは太陽風交点」かな?

あと、SFじゃないんだけどマン・アフター・マンあたりも未読だったのでリストに入れなかった。人類グロテスク進化という意味では、上記条件は満たしていたと思う。フューチャー・イズ・ワイルドは読んだ。

ダン・シモンズのハイペリオン四部SF全部乗せだし、AIの反乱だとか人類進化した宇宙の蛮族だとか愛が宇宙を救うとかとにかく壮大なんだけど、とある場所増田では評判の悪い(?)夏への扉以上に男性主人公に都合のいい描写があるのが欠点。あと、それ以外の作品もっと男性に都合がよくなっていて、保守的な僕もちょっと「おや?」って感じた。でも、「三体」にどっぷりハマった人だったら好きになると思う。「三体」よりも前の90年代SFから時代背景を知ったうえで、加点法で楽しんでください。

あと、全然エイリアン宇宙SFじゃないんだけど、今注目しているのは空木春宵で、この人は東京創元社の年間傑作選やGenesisですごくいい作品を描いてる。どれもいいんだけど、たとえば地獄を縫い取る」アリスとの決別」「allo, toi, toi」に並ぶロリコンペドフィリアを扱った名作に並ぶ。

エイリアンSFも出てくるけど、世界の中心で愛を叫んだけもの」「ヒトラーの描いた薔薇ハーラン・エリスン人種差別を扱った作品も書いていて、これもいい。穏健派黒人男性テロリストに転身してしま作品はつらい。とかくエリスン絶望と怒りは若い人に読んでもらいたい。

Q. 選んだ作家日本人・欧米人男性に偏ってない?

自分が一番SFを読んでいた時期は、今と比べて女性作家が推されるずっと少なかったし、さら自分古典を好んで読んでいた。アジア作家が紹介される機会も少なく、そういう意味では感受性のみずみずしい今の若い読者がうらやましい。

後は、女性作家で今回のテーマである宇宙を扱った作品男性よりも少ない気がするのだが、よく考えてみればル・グインハイニッシュ・ユニバースがあるし、ティプトリー・ジニア「たった一つの冴えたやり方」で始まるシリーズがある。スペースオペラでは「叛逆航路のアン・レッキーもいることだし、単純に探し方が悪いのかもしれない。

最近短編ばっかりで腰を据えて長編を読んでないな。銀河系で忌み嫌われた人類の唯一の生き残りが活躍する「最終人類とか、面白そうなのがいっぱいあるので、そのうち読みたい。

というか、僕の選んだ作品の他にもっといい作品を知っている、勧めたいという方は、どんどんトラバブクマ追記していってほしい。

気が向いたらまたなんか書きたいな。まだおすすめしたいSFもあるし、池澤夏樹世界文学全集を9割読んだのでその感想も書きたいし、かなり疲れるから数ヶ月後にはなるだろうけど。

みんなでやろうぜ増田ビブリオバトル

前回

【翌朝追記あり】劉慈欣「三体」の好きなところと微妙なところについて

前編はこちら

追記

「三体」が好きだった人にオススメしたいSF小説・追補編

はみ出たのでこちらに。

2022-09-14

うれしいけどうれしくないオマージュ

「病める惑星より愛を込めて」という漫画があって、

酉島伝法小説皆勤の徒」のオマージュっぽいキャラクター用語設定が出てくる。

自分にとってはどっちも好きな作品であるし、

もふもふは百々似のオマージュなんだな、

もふもふの飼い主ヴュヌヴェヨヮは皆勤の徒の社長イメージだな、

ネーミングは「グョヴレウウンン」の音の感じを再現しようとしてるんだな、

とか思って読むのはそれなりに楽しいし、オマージュはうれしいんだけど、

ほんのちょっとだけ「自分小説皆勤の徒)を読んで想像した世界よりも簡略化されているように見えてなんだかいやだな」という気持ちがある。

気持ちとしては「『病める惑星より愛を込めて』は面白い/『皆勤の徒』のオマージュはうれしい」というポジティブ感情が9割で、「ちょっといやだな」が1割ぐらいなんだが、どうもこのいやさが無視できなくてとりあえず増田に書きにきた。

というかここまで書いて気づいたが、どうも自分は「病める惑星より愛を込めて」のヒューマンドラマ要素にあまり興味がないのかもしれない。

「心を病んで自殺することが当たり前になっている世界」に、架空宗教歴史社会設定、もふもふで(脳の電気信号強制的にいじられて)癒されながら生きる人たちの人間模様。

設定はすごく好きなんだ。ヒューマンドラマも魅力的に描かれていると思う。ただ、読んでもあんまり自分の心は動いていない。わざわざ増田に書きに来るぐらいの衝動はあるのにね。なんだろうね。理不尽だね。

2022-06-07

anond:20220607114239

三体はその通り。この文脈で酉島伝法(本持ってるのに西島だと思ってたw)だしてくるあたりから伝わるんやが、たまたま読んだ本を薦めるやつが嫌いやねん。

anond:20220606161919

個人的ベストは「星を継ぐもの」なんだけどもう出てるから

海外作家じゃないと認めん!とかでなければ酉島伝法さんの「宿借りの星」と「皆勤の徒」はいいよ。

どちらもページを開いた瞬間の異世界に放り出されて何も分からない感がすごいけど、しっかり面白いSF。どのようにして今に至ったかちゃんと話が出てくる。

あとは、ラノベの皮を被っているけどオキシタケヒコの「筺底のエルピス」も面白いハードSFでは無い気がするけども。

https://book.asahi.com/article/12205872

2022-02-14

怪獣のあとしまつが面白くないらしいから代わりが欲しい

怪獣のあとしまつの設定だけ漏れ聞いて、倒した直後の問題を取り上げたSFって時点で妄想が膨らみ面白そう!となっていた。のに詳細を知る前から駄作と聞いてしまって不完全燃焼になってしまった……

似たような作品でこの想いを消火したいのだけれど、何かないですかね?映画でも本でも、何かの後始末をするSFで。

酉島伝法さんの怪獣死体解体する短編は読んだことあるのでそれ以外でお願いします。

2021-12-13

豊崎由美唐沢俊一女性バージョン」だと思ってる。

以前「"酉"島伝法」という作家名前を「"西"島伝法」と、豊崎由美誤記していたのを見た記憶がある。その頃から「本当は余り読書していないのではないか?」と疑っている。

自分の年齢世代はホンモノ。それに比べて若い者は物を知らん」と、若年層を腐して自分を持ち上げるところも唐沢俊一に似ている。

2021-06-13

早川書房のkindle1,500点半額セールで俺が買う/買わない本の話

早川書房のkindle1,500点以上半額を受けて、Amazonリストから俺の興味のあるものリストアップしたから、みんな見るとよい。

全部購入したいところだけども(全部買っても、たぶん1万円強に収まりそう。お得)、当の俺が何しろ吝嗇なので、気になったものは、まず図書館検索 → 人気のため多量の順番待ち、もしくはそもそも在架なし、の場合にだけ、購入することにする。

『息吹』

おそらく、今回の目玉の一つだろう。『あなたの人生の物語映画題名メッセージ』)』を書いたテッド・チャン作品集

試しに図書館検索したところ、予約待ちではあるものの待てないほどではない。ということでいきなりだけど購入×。

ちなみに、同氏の『あなたの人生の物語』はボルヘス幻想小説ロードムービーを掛け合わせたみたいな素敵な雰囲気作品が多くて良かった。おすすめ

ザリガニの鳴くところ』

今回の目玉その2。図書館検索すると…すごい、100件以上待ち。ということで買います

ミステリー普段あんまり読まないんだけど、話題となると触れたくなるのミーハーなんだろうな。

あと装丁が良い。カバーってほんと大事電子書籍勢力を拡大する時代でも。

Self-Reference ENGINE

円城塔作。これも図書館で見つかったので購入×。

余談だけど、文庫最近出た同じ作者の『文字渦』が面白かった。これもボルヘスっぽくて、あとは異様な世界をぎちぎち理屈と設定で詰めていくのが酉島伝法ちょっと入ってるかも。

文学少女対数少女

中国ラノベ。×。

同じタイトル、同じ内容で日本発だったら手に取らなかっただろうと思うのは、なんとなくラノベ基本的卒業したつもりでいるから。

そんな中で、中国ラノベってどんなもんや、って動機で気になったんだと自己分析する。こういうところに自分の変ないびつさを感じる。

イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』

購入×。

ちなみに早川戦争ものというと、『ブラックホーク・ダウン』の原作を思い出す。上下巻でサイズはあるけど、グズグズの市街戦疲弊する現地部隊と混乱する司令部、隊員たちが基地で過ごす日常描写が様々なコントラストを描いていて、それが果てしなく悪化して正義の上っ面さえまともに繕えなくなっていく様子が素晴らしい。激烈に面白いかおすすめ

アメリカンブッダ

購入◯。ケレン味◯。あと、何気に南方熊楠×SFって目新しい? めちゃ相性良いと思うんだけどな。

『なめらかな世界と、その敵』『楽園とは探偵の不在なり』『月の光』『地下鉄道』『紙の動物園』『少女庭国』

×。どれも少し予約待ちすれば借りられそう。

気になってた本の半額セールが来る頃には図書館貸し出し予約もピークを過ぎている、ってことなんだな。と変テコなさとりを得る。

『禅とオートバイ

購入◯。タイトルで惹かれ、説明書きを読んでも何がなんだかわからないところにさらに惹かれ…。なんとなく予想はしていたが、図書館にも在架なしということで、買うことにした。

なんだよ、買わねー作品ばっかりじゃねえか、ってなんとなく心苦しくなってきたので、今回セールになっている作品の中で、すで購入して良書だった本のPR

①『サルたちの狂宴』

twitterFacebookと後の世の巨大SNS企業を舌先三寸で渡り歩いたウェブデザイナードキュメンタリー当人技術力や創造性よりも機転とノリで生きてるタイプで、ほんとに虚飾&虚業って感じなんだけど、イヤミじゃなくそれも生きてく上で本質的重要スキルだと実感させるところがある。最近ノってる『トリリオンゲーム』にもちょっといかも。

②『オクトローグ』

新刊からもっとプッシュすればいいのに。酉島伝法SF作品集

初期の弐瓶勉漫画みたいな、ダークで無機的な荒廃と有機的などろどろぐちゃぐちゃがミックスされた至高の雰囲気。全編、Steamあたりで即でゲーム作品に展開できそうなくらい個々の完成度が高い。っていうか、このレベルでそれぞれを長編として起こさない酉島伝法には創作におけるコスパって概念がないのか? と思ってしまう。どうかしている(褒めてる)。

③『ジェイバード

ヴォネガットというとSF作家イメージが強いと思うが、それ以外の作品にも素晴らしい小説がある。『ジェイバード』はその一つ。

年齢を重ねることで区別されてくる人間類型の一つに、他人感情をむき出しにして触れ合うことができない者がいる。いわゆる「心が冷たい」人。

俺は、文学の使命の一つはこの「心が冷たい人」を救うことだと思ってる。『ジェイバード』はそういう本。漱石好きな人とか意外とハマると思う。

閑話休題

『目を擦る女』

購入◯。最近亡くなった小林泰三作品集。有名な『玩具修理者しか読んだことがなかったので。

毒々しくも可憐笹井一個の表紙が目を引く。装丁ってやっぱり大事だね(そういえば、この方も故人だ…)。

『死亡通知書 暗黒者』

×。中国ミステリだそうだ。俺の生活圏の問題か、SF比較するとあまり話題に入ってこなかった印象がある。

『息吹』といい、早川はこういうデザイン装丁好きだね(良いとは思う)。

『華竜の宮』

×。椎名誠の『水域』といい、小野不由美の某作品エンディングといい(ネタバレなので名前は伏せます)、文明は水没させてなんぼ、みたいなところが俺の中にある。

『色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記』

×。あんまり趣味はよくない、と知りつつ、孤絶した文明と足で暮らす人々の特異な体質というテーマが好き。

似たような切り口で面白かったのは、『眠れない一族――食人痕跡殺人タンパクの謎』。不眠症クールー病ニューギニアのある部族罹患する風土病)、同族食によって体内に蓄積されるプリオンテーマの本。

『透明性』

×。これも装丁で気になったパターン

ボーダーつの世界

購入◯。映画原作だそうで。図書館には在架なし。

ふと思い出したのが、別の作家の『全滅領域』。あまりダウナーなので続編の『監視機構』で挫折したが、知らない人で『ソラリス』みたいな内省的なSF好きな人はハマるかも。

世界誕生日

購入◯。そろそろル・グウィンに挑戦してみるか、ということで。

ただ、SFを露悪と飛び道具で評価するところが強くて思想性は最後1%出てくればいいや、という性格なので、どうかな。合わないかもな。本当に一冊も読んだことがないから見当がつかない。

ホーキングブラックホールを語る』

×。「そんなに黒くない」「毛がない」…なんのこっちゃ?(amazon説明ママ

興味はあるけど挫折する可能性高いよなあ…と思っていたら、見透かしたように「必ず読み通せる科学解説」とまで書かれていて笑ってしまった。

『100年予測

×。国際情勢にフォーカスし、トランプ大統領誕生予言したという本。

紛争でしたら八田まで』が個人的に来ているのもあって、俺の中でいま地政学が熱い。

『史上最大の発明アルゴリズム

×。

わかるようでよくわかんねー概念を三つ挙げろと言われたら、エントロピー不確定性原理の次にアルゴリズムを挙げる。ちゃん理解している人からすれば何を頭の悪いことを…という感じなんだろうけど。ここらでしっかり説明できるようにしておきたい。

ちなみに、よくわからんと言っておきながらアルゴリズム関連で面白かった本に、『マインドハッキング: あなた感情支配し行動を操るソーシャルメディア』と『ニュー・ダーク・エイジ』の2冊がある。前者は政治的煽動目的として展開されたSNS経由のターゲッティング思想誘導後者テクノロジーの発達が不本意に実現してしまった笑えないナンセンスグロテスクテーマだった。

結局、買わないでも借りればいいか、ってのがかなり多くなっちゃったな。最後に、今回のセール対象ではないけど早川から出ている本で「ちゃんと」買った良書を紹介して茶を濁しておきます

①『魔王: 奸智暴力サイバー犯罪帝国を築いた男』

まれ想像力合理性を持つ天才。強欲と自らでさえ使い捨ての駒のように扱うむなしさが同居する矛盾したパーソナリティ。「これをああしたらどうなるか」をプログラミングだけでなく現実世界に反映させてしまったエンジニアにして犯罪者ポールコールダー・ル・ルーを追ったノンフィクション

犯罪ものであると同時に、この世界構造の一端が見えるような錯覚を抱かせてくれる作品

②『闇の自己啓発

反出生主義、変態性愛身体改造犯罪など、アンダーグラウンドだったりインモラルテーマについて、決められた課題図書を通じて参加者たちが議論する体裁の本。内容それ自体面白いけど、紹介されてる本が豊富で、そこから派生して読書体験けっこう広がる。

読んでて、最初は「自意識過剰過ぎてわけわかんなくなっちゃった大学生みたいだなー」ってイライラすることもあったんだけど、段々、各人の痛切なところとか博覧強記ぶりが見えてきて後半は感心しきり。面白い。続編読みたい。

以上です。

2019-01-08

酉島伝法は叩かなくてよいの

それとも増田ともあろうものが未だその存在に気づいていないの

2017-05-19

園城寺(おんじょうじ)は、滋賀県大津市園城寺町にある、天台寺門宗総本山。山号を「長等山(ながらさん)」と称する。

開基(創立者)は大友与多王、本尊弥勒菩薩である日本三不動の一である黄不動で著名な寺院で、観音堂は西国三十三所観音霊場の第14番札所である。また、近江八景の1つである三井の晩鐘」でも知られる。

なお一般には「三井寺(みいでら)」として知られるため、本文では「三井寺」の呼称を用いる。

目次 [非表示]

1 歴史

2 伽藍

3 黄不動

4 文化財

4.1 三井寺秘仏

4.2 国宝

4.3 重要文化財

4.4 その他

5 御詠歌

6 前後札所

7 交通

8 周辺

9 脚注

10 参考文献

11 関連項目

12 外部リンク

歴史[編集]

三井寺7世紀大友氏 (古代)の氏寺として草創され、9世紀に唐から帰国した留学円珍天台寺門宗宗祖)によって再興された。三井寺平安時代以降、皇室貴族武家などの幅広い信仰を集めて栄えたが、10世紀から比叡山延暦寺との対立抗争が激化し、比叡山の宗徒によって三井寺が焼き討ちされることが史上度々あった。近世には豊臣秀吉によって寺領没収されて廃寺同然となったこともあるが、こうした歴史上の苦難を乗り越えてその都度再興されてきたことから三井寺は「不死鳥の寺」と称されている。

三井寺」の由来となった井戸「閼伽井屋」(重文

三井寺起源については、次のように伝承されている。大津京を造営した天智天皇は、念持仏の弥勒菩薩像を本尊とする寺を建立しようとしていたが、生前にはその志を果たせなかった。天皇の子大友皇子弘文天皇)も壬申の乱のため、25歳の若さで没している。大友皇子の子である大友与多王は、父の菩提のため、天智天皇所持の弥勒像を本尊とする寺の建立を発願した。壬申の乱大友皇子敵対していた天武天皇は、朱鳥元年(686年)この寺の建立を許可し、「園城寺」の寺号を与えた。「園城」という寺号は、大友与多王が自分の「荘園城邑」(「田畑屋敷」)を投げ打って一寺を建立しようとする志に感じて名付けたものという。なお、「三井寺」の通称は、この寺に涌く霊泉が天智・天武・持統の3代の天皇の産湯として使われたことから御井」(みい)の寺と言われていたものが転じて三井寺となったという。現在三井寺には創建時に遡る遺物ほとんど残っていない。しかし、金堂付近からは、奈良時代前期に遡る古瓦が出土しており、大友氏と寺との関係史料から裏付けられることから、以上の草創伝承は単なる伝説ではなく、ある程度史実を反映したものと見ることができる。

三井寺では、他宗で「管長」「別当」などと呼ばれる、一山を代表する僧のことを「長吏」(ちょうり)と呼んでいる。貞観元年(859年)、三井寺初代長吏就任し、その後の三井寺の発展の基礎を築いたのが、智証大師円珍である円珍は、弘仁5年(814年)、讃岐国那珂郡香川県善通寺市)に生まれた。俗名は和気広雄、母方の姓は佐伯氏で、円珍の母は弘法大師空海の妹(もしくは姪)にあたる。幼時から学才を発揮し神童と呼ばれた広雄は、15歳で比叡山に登り、初代天台座主義真に入門。19歳の時に国家公認正規の僧となり、円珍改名した。その後、比叡山規定に従って「十二年籠山行」(12年間、比叡山から下りずにひたすら修行する)を終えた後、大峯山熊野三山を巡って厳しい修行をする。このことから三井寺修験道とも深い繋がりを持っている。仁寿3年(853年)には唐へ留学して6年間、各地で修行青龍寺の法全(はっせん)から密教の奥義を伝授された。天安2年(858年)、円珍は多くの経巻、図像、法具を携えて日本帰国した。翌貞観元年(859年)、大友氏の氏寺であった三井寺に「唐院」(とういん)を設置。寺を整備して修行道場とすると共に、唐から請来した経典や法具を唐院に収蔵した。貞観8年(866年)、太政官から円珍伝法の公験(くげん、証明書)が与えられた。顕教密教に加えて修験道を兼学する円珍伝法は、これによって政府公認を得たわけであり、天台寺門宗ではこの時をもって開宗と見なしている。貞観10年(868年)、円珍天台宗最高の地位である天台座主就任。以後、没するまでの24年間、その地位にあった。

円珍の没後、比叡山円珍の門流と、慈覚大師円仁の門流との2派に分かれ、両者は事あるごとに対立するようになった。円珍の没後1世紀まりを経た正暦4年(993年)には、円仁派の僧たちが比叡山内にあった円珍派の房舎を打ち壊す騒動があり、両派の対立は決定的となり、円珍派は比叡山下りて、三井寺に移った。比叡山延暦寺を「山門」と別称するのに対し三井寺を「寺門」と称することから、両者の対立抗争を「山門寺門の抗争」などと呼んでいる。比叡山宗徒による三井寺の焼き討ちは永保元年(1081年)を始め、中世末期までに大規模なものだけで10回、小規模なものまで含めると50回にも上るという。

三井寺は、平安時代には朝廷貴族尊崇を集め、中でも藤原道長白河上皇らが深く帰依したことが知られている。これら勢力から寄進等による荘園多数を支配下におき、信州善光寺荘園末寺として記録に著れる。中世以降は源氏など武家信仰も集めた。源氏は、源頼義三井寺に戦勝祈願をしたことから歴代尊崇が篤く、源頼政平家打倒の兵を挙げた時にはこれに協力し、平家を滅ぼした源頼朝も当寺に保護を加えている。頼朝意思を継いだ北条政子もこの方針継承し、建保元年(1214年)に延暦寺に焼き払われた園城寺大内惟義・佐々木広綱・宇都宮蓮生ら在京御家人に命じて直ちに再建させている。しかし、園城寺僧侶として育てられていた源頼家の子公暁叔父である源実朝暗殺するという事件を起こしたために、以後鎌倉幕府より一時冷遇を受ける。だが、北条時頼の信頼が厚かった隆弁が別当就任すると再興され、続く南北朝内乱でも北朝足利氏を支持したことから室町幕府保護を受けた。両幕府のこの厚遇は、強力な権門である延暦寺勢力牽制するために園城寺に対して一定支援をすることが必要であると考えられていたからだと言われている。

文禄4年(1595年)、三井寺豊臣秀吉の怒りに触れ、闕所(寺領没収事実上の廃寺)を命じられている。三井寺が何によって秀吉の怒りを買ったものかは諸説あって定かではない。この結果、三井寺本尊や宝物は他所へ移され、金堂をはじめとする堂宇も強制的に移築された。当時の三井寺金堂は比叡山に移され、延暦寺転法輪堂(釈迦堂)として現存している。慶長3年(1598年)、秀吉は自らの死の直前になって三井寺の再興を許可している。これは死期を悟った秀吉が、霊験あらたかな三井寺祟りを恐れたためとも言われている。秀吉の再興許可を受け、当時の三井寺長吏・道澄が中心となって寺の再興が進められた。現在三井寺の寺観は、ほぼこの頃に整えられたものである

明治維新後は天台宗寺門派を名乗っていたが、1946年以降は天台寺門宗総本山となっている。

2017-02-13

メディアミックスされた作品の楽しみ方

色んな媒体作品化された際、どういった順序で見るのが一番楽しめる(個人の感想です)のかを紹介。

 

アニメ漫画→あれば映画小説→あればドラマCD

 

何を根拠に並べているのかというと表現技法情報量について、だ。

原作小説場合であってもこの順番が恐らく一番楽しめる。

小説アニメだと原作との突き合わしによる矛盾とかが出てきてしまい、視聴の障害になりやすい(個人の感想です)。

これがアニメ小説だとアニメで語られなかったことやアニメとの相違点を素直に別作品として受け入れられる(個人の感想)。

よく原作組はアニメの出来にイチャモンや難癖を並べているのも、自分の中で膨らました小説イメージ再現されなかったかである

これがアニメ小説なら最初から別物であると割り切って門をくぐるので余計なぶつかり合いが無い。

からアニメ小説正義

 

その間に漫画があるのは、消化しやすいとか、アニメという絵が付いた媒体から音を無くして入り込む段階とかそんなところ。

ぶっちゃけ小説漫画順序はどっちでもいい。

 

映画位置重要で、予備知識がないと楽しめないものが多い。

本当は最後に持っていきたいところだが、映画現在公開されていくのが観に行く正義なのでやってほしい。

最低限アニメ観ておけば楽しめる構成にはなっているはず。

特に映画公開時期で話題が高騰しているので時間的制約からアニメ漫画くらいしか消化できないだろう。

ドラマCDは本編と関係ないサイドストリーが多いので一番予備知識いると思う。

なので最後に消化するのが一番よい。

 

 

というわけで2017年公開予定、弐瓶勉SFアクション漫画作品映画BLAME!」をよろしく!!!

http://blame.jp/

BLAME!小説ドラマCDがないか漫画だけで予習できるぞ!

ちなみに新装版も発売されているがぶっちゃけ古い方がオススメだ。違いはちょっとした書き直しや表紙の書き直しだが旧版の方が味あっていいです。要らん。

電子書籍でも買えるしアマゾンでもコミック買えるだろう。

あと次の情報も要注意↓ 

2月16日(木) ”ツトムの日”に、『BLAME!劇場アニメ化記念「シドニアの騎士」一挙放送が決定!

シドニアの騎士は有名だろうが、BLAME!はまさに人を選ぶ作品だ。

この面白さを理解できるやつと酒を飲んで喧嘩して絶交する。ドン弐瓶勉ワールド

追記:

冲方丁によるノベライズ小川一水九岡望飛浩隆・酉島伝法・野﨑まどによるアンソロジー、という超豪華メンツによる小説版が待ってるぞ。>BLAME!

こんなとこで宣伝してんじゃねーよ馬鹿野郎

http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2017-01-26-172157.html

これか!講談社早川書房!ああ!

2013-06-09

http://anond.hatelabo.jp/20130609122849

しわのある豆」の法則で、いったんチビと交わったらチビ遺伝子いつまでも受け継がれてしまうので

メンデルの遺伝法則を曲解するのはやめなさい

君、中学高校レベルの遺伝の知識もおぼつかないのに遺伝を語るのやめた方がいいよwwww

2012-04-11

曹洞宗貧乏檀家の悲運

これから書こうとしているのは、お寺に搾取される貧乏檀家お話だ。

秋田の片田舎に母の生家がある。元教員だった和尚さんのいるお寺は曹洞宗で、生家はそこの檀家だった。というかその周辺部落ほとんどの家が檀家だった。命日にはハガキで通知をしてくれるなど、聞いていると役所的役割果たしているように思った。つまり檀家と各檀家の仏様の命日がデータベース化されているのだった。

人望が厚く信心深かった叔母が婿を取って後を継いでいたが、数年前に病死した。信心深い人(あの世でより仏に近くに行ける人?)や長生きした人は、それなりの大そうな戒名を頂けるというのが慣わしだそうで、大そうな戒名を頂いたことを生家では誇りにしていた。

若くしてなくなった人やあまりお寺に縁のなかった人には位の低い戒名しか頂けない。55歳で亡くなった私の母もごく経済的な戒名で済んだ。

そしてココが問題なのだが、よい戒名にはそれに見合うお布施をお寺に納めるのが慣わしなんだそうだ。それも金額を聞いて驚いた。戒名料の相場で見るとまだお寺も気を遣ってくれたようだが、各宗派とも信じられないお値段だ。

数年後、癌で叔父が亡くなった。このとき問題が起きた。叔父は叔母と違ってごく普通信者だったし、何より生家にはもう現金がなかった。まだ社会に巣立っていない子供にも学費や仕送りが必要だった。

しかし、叔母と同じ位の戒名を頂かないと、あの世で叔父と叔母は会えないとお寺に言われたそうだ。そしてそれは檀家常識でもあり、同じ位の戒名を「買わないと」部落で親不幸者として扱われるようだ。

叔母亡き後を継いだ従姉もお婿さんをもらっていたのだが、お婿さんは遠慮して「お金がないから、そんな戒名は買えない」という一言が言えなかったそうだ。従姉にしてみれば、そう言って欲しかった、そうしないと家計が立ち行かなくなると思ったようだが、結果的にはお寺に押し切られてしまったそうだ。

だって、誰だってあの世で両親が会えないなんて言われたら、お金出すしかないと思う。信心深ければ深いほど…。

何故お金がないのに、これから子供たちにお金が必要なのに、そんな大金をお寺に納める必要があるのだろうか?

そして、私は従姉夫婦の窮地に上記の馬鹿げたことを知らされずに何度か現金を無心され、その度に若い子供達の将来を思って叔母としてできることをしたつもりになっていた。

実はもっと混みいった事情がある。土地をなかなか相続できていなかったために、それを担保にJAからお金を借りることができずにいた。その手続きのための(司法書士などに支払う)お金すらないほど困窮していたのだ。相続できてお金が借りれたら真っ先に返してくれるという約束で幾ばくかを送金した。直後にまだ相続手続きが終わらないうちに、娘の年払い保険の期限が来てしまい、病気の娘(◯◯ちゃんは精神系の病気)にとっては(解約するわけにいかない最後保険なので月曜締め切りのところを2日前の土曜日に何とか都合してくれと電話があった。◯◯ちゃんのためならと、これが最後自分に言い聞かせて殺伐とした気分で送金した。

ほどなく相続借金ができたようだが、連絡がない。◯◯ちゃんに聞いて初めて上記のような顛末を知ったのだった。

もう一つ納得行かないのが、よい戒名をもらうとそれなりのお葬式をしなければならず、それなりのお葬式にはそれなりの御霊前を持って行かねばならないという、これも慣わしなんだそうだ。そこいらは都会と違う。ご近所に数万円の御霊前を持って行くなんて聞いたこともない。

そして、いただいた御霊前の額はそのまま、その家のご不幸のときに返すのもしきたりなんだそうだ。それは理屈として通るが、困るのは3月の季節替わりにはご老人が亡くなる家が多いので、その分出費がかさむことになる。驚いたのは、この3月の近所のお葬式で15万円ほど消えたそうだ。

普通は頂いた御霊前をそのまま取っておけば済むだろうと思うが、それは葬式代を確保していた家の場合。昨年夏の叔父の葬式代は叔母に釣り合うよう100万円ほどかかったそうだ。御霊前はその他諸々の経費に消えてしまったというわけだ。無計画な従姉夫婦は、何の備えもしていなかった。なのに宗教の名の下に言われるがままに、お金を払ってしまった。

しかし、困窮したと駆け込んでもお寺が面倒を見てくれるなんてありえなさそうだし、明らかに何か矛盾している。

私がこの記事を記しておこうと思った訳は、この記事を読んだからだ。

Q&Aオウム真理教 ―曹洞宗の立場から― | 曹洞宗 曹洞禅ネット SOTOZEN-NET

この記事の趣旨とあまり関係ない部分だけれど、以下の箇所に疑問を持った。

 オウム真理教では、麻原教祖が行う「イニシエーション=秘儀」により「ステージ=段階」が上がり、「悟り」への道が促進される重要儀礼として位置づけられていました。

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 一方では、そのために多くの「布施」を強要し、それに答えないと高い「ステージ」には上がれないとされていたのです。これは、一つの集金システムとして機能していたもので、極めて詐欺性が強いといわれています

 以上のようにオウムで言うイニシエーションは、段階的であり、布施の高低により不平等であり、なによりも仏教の教えからかけ離れたものであり、とても認められるものではありません。

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 またこうした「加入儀礼」としては、曹洞宗では「入檀式」や「受戒会」、僧侶儀礼としては、「得度式」「立職」「伝法」などが広い意味で該当するでしょう。

 しかし、これらの儀礼オウムのそれと大きく異なるのは、檀信徒平等であり、また仏様との縁を結ぶ自発的なもので、強制を伴ったり、ましてや何度も行うような性格のものではありません。

真っ当な宗派である曹洞宗でもそれは明らかにウソだ。理想は上記引用かもしれないが、田舎では狭い世間の目に逆らえず、お寺の言うがままになっている貧乏人が現に存在する。

この矛盾を皆に知って欲しかった。

言い過ぎを覚悟して言えば、結局間接的に私が若い子供たちのために送ったお金もお寺に吸い上げられてしまったようなものだ。

しきたりを知らない核家族&都会で育った私の戯言かもしれないが、宗教というものに、信心というものの具現化の在り方に矛盾を感じぜずにはいられない。

 
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