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2019-02-01
島耕作を読むと日本ってやばい国だったんだなってわかる
島耕作といえば国民的漫画といっていいほど知られてると思うが、今読むとこの漫画はかなりやばい。
会社の役員はみんな愛人もっているし管理職はセクハラしているし、仕事と性欲の解消が不可分になっている。
これがある種の世代のメンタリティになってると思う。仕事していればそれが免罪符になって女性を性的に搾取してもいいだろうと。
というか、職場における女性が従軍慰安婦的な扱いになっていて、仕事のストレスは女性社員(あるいは取引先とか周辺の女性)で発散、みたいな構図になっている。
島耕作は漫画だけど、でもこれってある種の現実を反映していると思うんだよね。仕事ができれば、女性をどうとでもしていいと思っている人って、いるでしょう?
今だって派遣社員や就活生に手を出したり、社内の女性を不倫相手にしたりといった話はいくらでもあるのね。で、昭和はもっとやばかったんだよね。
昭和の日本ってやばい国だったんだよね。仕事中にセクハラして愛人作って、それで経済大国で、ジャパン・アズ・ナンバーワンだぜ、ってとんでもないアナーキーな国だったんだよね。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』って映画があったけど、かつての日本って国全体があの映画みたいな状態だったわけだよね。
島耕作って今後はそういう風に読まれるようになると思うよ。経済成長していたころの日本がいかに無秩序だったか、って。極東のアジアに、とんでもない国があったんだよね
おっすオラネズミ!
絶対に行かないワニ!
会いに行きたくないワニ!
絶対に会いに行かないワニ!
物語になるような美しい平凡を生きていたワニ!
妾の子として生まれ、母を失い天涯孤独、死のうと思って軍隊に入ったけれど、馬を丁寧に手入れしてたら、気がついたら終戦してて、それで最近まで生きてたワニ!
イケメン、というか、旅の一座の女形が、夜中に夜這いに来るような、今で言うユニセックスな、そんなエキゾチックと言うかエロティックな人間だったらしいワニ!
なんか分かるワニ!
ばあちゃんは裕福な農家の末の娘かなんかで、どこで見知ったか知らないけど、そんなじいちゃんのエロさに射抜かれて、メンヘラになって、二人で駆け落ちして、自由恋愛の末に結婚したワニ!
じいちゃんは、そんなこんなでメンヘラばあちゃんと、ばあちゃんとの間にできた二人の子供と、家族になって、長い間生きてきたワニ!
つまりそれがもう終わるよって、
強烈に惹かれるワニ!
絶対に行かないワニ!
人間が死ぬという時、その人間に会いたくなる、その気持ちは分かるけど、じいちゃんに限っては、会いになんか行きたくないワニ!
そんなのポルノワニ!
もう少しで死ぬという人間を見に行きたいだなんて、そんな本能遡及的なイベントなんて、ポルノハブワニ!
じいちゃんはいつも遠い目をしていて、会話のテンポもゆっくり、というか、最初に頭に浮かんだこと、本当に言いたいことはそっと横において、それから、優しい言葉をじっくり選んで、ようやく返答する、そんな人間だったワニ!
そうやって、考えてるあいだ、視線は下の方に落ちていて、ワニはいつもその視線を追って、一緒に下の方を見ていたワニ!
でも下の方には何にもなかったワニ!
ワニがそうしていることを、じいちゃんは知っていたワニ!じいちゃんが知っていることを、ワニは知ってたワニ!じいちゃんが知っていることをワニが知っていることをじいちゃんも知ってたワニ!
だから、ワニと話すときのじいちゃんは、いつもより深く下の方を見て、いつもよりゆっくり時間を掛けて、でも、いつもより短い言葉で返答したワニ!
それが遺言ならありがたく頂戴するワニ!
お前には絶対に会いに行かないワニ!
新幹線に乗るまではしたけど、降りたワニ!
ママンには、なぜワニは最期のお見舞いに行かないかを滔々と説いた長文をメッセージしたけど、多分あれは世界一の駄文だったワニ!
ばあちゃんがキレようが、じいちゃんがもう少しで死ぬからじいちゃんを見物しに行くなんて、絶対にしないワニ!
ワニはじいちゃんが、死ぬからってよく喋ったり、死ぬからって何かを変えたりする動物ではないことを、絶対に知ってるワニ!
いままでそうやって生きてきたんだから!
まるで自分によく似た、哀れな動物が生まれてしまったかのように!
ワニは会いに行かなかったワニ!
癌細胞にむしゃむしゃされて、骨と皮だけになって、まるで原型を留めていないじいちゃんの写真を、姉ちゃんからラインでもらったワニ!
そして気がついたら死んでたワニ!
午前四時くらい、自力でトイレに這ってって、ズボンを下ろして、座って、力んだくらいのところで事切れたらしいワニ!
しっこより先にうんこが出るんだぞ
って言ってたの思い出したワニ!
葬式では、無言でぶらぶら、たまに棺の中を覗いたり、綺麗に整えられた死体を触ってみたり、ラムネのような冷ややかさに驚いたり、セレモニアルな悲しみにノッていけない、そんな感じを、じっくり味わっていたワニ!
じいちゃんの方の親戚が誰も来てないけど、本当だったワニね!
生物学上の父親が、お金を出してやるから大学に行きなさいってオファーしたのに、それを断って軍隊なんか入って、飛行機に乗れなかったから馬の手入れして、虚無に等しい玉音放送を聴き、気がついたらメンヘラの生命力に流されて、最近まで生きていたって、本当だったワニね!
わーお終わらないワニ!
全然終わらないワニ!
それでもう死ぬんですね
逃した!
自らの意思によって逃したワニ!
そんな目をするなよじいちゃん!
よく生きてたじゃないか!
・少年漫画における性描写・性表現については、大きく4種類に分類できると思う。
・「その方が売れるから」「その方が人気が出るから」という割と身もふたもない理由によって行われる性描写・性表現。名物編集者・マシリトこと鳥嶋和彦氏が担当した鳥山明や桂正和作品に見られるものが特に有名。現在では、いわゆる「ラブコメ枠(ToLOVEる枠)」作品に数多く見られる。正直に告白すると、当時の少年読者としては大変ありがたかったという実感がある。「女性のモノ化」として批判されがちなのはたぶんコレ。
・少年漫画の枠内で、成熟した大人向け要素を表すための性描写・性表現。源流はおそらくニューシネマ、ロマンポルノ。漫画作品においては、特にルパン三世の影響が大きいと思われる。しばしば暴力表現を伴うことがあるため、レーティングの観点で批判されがち(少年漫画ではないが、エヴァにおける加持さんのアレなど)。表現の自由として強く擁護されているのはたぶんコレ。
アナーキーさ、漫画表現の自由さの象徴としての性描写・性表現。しばしばモザイクをどこまで薄くできるか?」的なチキンレースの様相を呈する。(乳頭をタピオカで表現する」「開いた瞳孔を女性器にみたてる」)現代の狂歌。②と同じくレーティングの観点で批判され、表現の自由の観点で擁護される。
・未成熟な少年を表すキャラクター類型としての性描写・性表現。「ダイの大冒険」におけるポップに代表される未成熟であるがゆえに、長期連載に置いて爆発的に成長するキャラクターに与えられる記号としての性描写・性表現。精神的・肉体的に未成熟しばしば覗きなどの犯罪行為を行うため、現代において成立させるのがきわめて難しく、強い批判を受けている。しかしそのキャラクターとしてな爆発的成長はビルドゥングスロマンとしての少年漫画との相性が極めて良いため、しばしば作品内に採用され、また読者からも擁護される。
・④ポップ的性描写・性表現は、現代において時代おくれになっており、仮に成立させようとしても針の穴を通すような作業になる。「未成熟なキャラクターを表す記号としては避けたほうが無難だ」と言わざるを得ない状況になっている。これは「不倫」というテーマが、(親同士・イエ同士が決めた結婚が多くみられた頃は)「自由意志」「純愛」の象徴として成立していたが、現代において『「不倫」は単なる「不義」である』という見方が主流となってきたことで、時代おくれになったことと似ている。(もちろん、これは「不倫をテーマもして採用すべきではない」ということではない。現代においても意欲なある製作者によって「昼顔」のような成功例が作られている)
・①〜③については「少年漫画におけるレーティング」が特に問題となる。しかし、漫画というメディアの特性上、映画のレーティングのように細かな規制をし辛いため、どうしても批判側は「製作者側の自主規制」を求めがち。今後、電子書籍が主流となれば流れは変わるのかもしれない。というか、ジャンプ+アプリなどの動きを見る限り、出版社側はすでにそれ(レーティング)を見据えて行動しているように思われる。
・現在、少年ジャンプに連載中の漫画に上記の類型を当てはめてみる。「僕のヒーローアカデミア」における峰田、「鬼滅の刃」における善逸は、典型的な④ポップ的性描写・性表現。ゆらぎ荘は基本的には①マシリト的性描写・性表現で、たまに③永井豪的性描写・性表現。おれは①については別になくなっても困らない(大人なので)が、③については「ガンガンやってほしい」と思っています(永井豪・筒井康隆ファン)
・ワンピースにおける性表現は、かなり複雑。表面的には少年漫画的サービスとしての①マシリト的性描写・性表現。だがワンピースという漫画はニューシネマに強く影響を受けており②モンキーパンチ的性描写・性表現の要素も強く見られる。それ故、覗き行為を行うのはウソップではなうサンジであり、チャイルディッシュなキャラクターとしての記号は「ロボットや昆虫に対する好奇心」という形で描かれる。また、ワンピースの複雑さは「尾田栄一郎は徳弘正也の弟子」であることにも由来する。徳弘正也は鬼子であり、稀有なエロスとタナトスの作家である。尾田栄一郎はその弟子であり強く影響を受けているが、作品内ではエロスとタナトスを抑制しているため、非常に奇妙な形で表出している。
・PCに意識的な作家の作品は、作品の寿命を延ばす。時代性を感じさせる記述を極限まで廃した星新一の作品は100年先でも読まれるだけの強度を持つが、筒井康隆の作品のいくつかは鋭い批評性を帯びるが故に陳腐化する。PCを意識していない作品の寿命は短くなる。現在、少年漫画作品の寿命・リーチできる距離は飛躍的に伸びている。PCを意識しないことで作品の寿命が短くなるのは単純に「もったいない」。ノウハウを蓄積して対応すべき。そしてそれは(それこそが)しばしば挑戦的な表現になり得る。