はてなキーワード: 千鳥足とは
めずらしく皆静かな飲み会で、一人こっそりとはまってるワインを誰に邪魔されるでもなく楽しむことができた。
情熱的なチリもいいけど、南仏の奥ゆかしさもいい。会社にはそんなことをともに楽しめるような同僚もいなかった。
適当な理由をつけて一足先に店を出ると少しほてった頬を秋風が出迎えた。
そのあまりの気持ちよさに、家までの3駅分を歩いて帰ることにした。
飲むと音楽を聞きながら歩く癖があるのだ。
ビルの隙間を見上げると、うっすらとした雲のかかった満月と目があった。さっそくiPhoneのライブラリからドビュッシーのベルガマスク組曲を探して再生をタップした。
千鳥足とはいかないまでも、汗をかかない程度にのんびりと歩きつつちょうど楽曲が月光に差し掛かった頃、高らかなヒールの音を慌ただしく響かせながら水色のブラウスにタイトなスカート姿の女性が長い髪を振り乱しながら僕を追い抜いていった。
決して早いとはいえない時間帯。昨今の男女平等、女性の社会進出によって見ることのできるようになった風景の一つだ。そのことに僕は特に賛否を持っていない。
女性は狭い路地への曲がり角に差し掛かると、少し立ち止まりつつかばんを探りだした。そうして目当ての何かを見つけて歩き出すと同時に、女性のかばんから何かが落ちるのがわかった。
ハンカチだった。
僕からは10mほど先の出来事だ。女性はそのまま曲がり角に消えていった。
時間も時間なだけに、のんびりとした足取りですこし考えてみたが、お酒の力も手伝って僕はそれを拾うことにした。
追いつかなければそれでいいし、声をかけて振り返らなければそれでもいいのだ。
拾ってみるとそれはやわらかいタオル地で、嗅いでみたわけでもないのにそれがいい匂いであることが確信できた。
そうして曲がり角を曲がると、タイミングの悪いことにちょうど女性がマンションの入口に入ろうとしているところだった。
女性にしてみれば、住まいに入ろうとする時に見知らぬ男性から声をかけられるなんて事は恐怖に違いない。
しかも「ハンカチ落としましたよ」だなんて、今時どれだけできの悪いナンパか。
やってしまったと思いつつももう後戻りもできない。
女性を不安にさせまいとできるだけ明るい声を心がけながら、さらに現物を見せれば安心するだろうとハンカチを持った手を必死に伸ばして声をかけた。
どうでもいいことに、頭のなかで「落ちましたよ。」「落としましたよ。」「落ちてましたよ。」のどれが適切かを考えてしまったがために次の言葉が続かずに、かといってそのまま近づいていくことも恐怖を与えてしまいそうでと、ハンカチを持った手を伸ばしたまま無言でその場に立ち尽くしてしまったのだ。
完全に不審者だ。叫ばれてもしかたない。捨てて逃げるか。様々な考えが一瞬で頭をよぎる中、もっとも予想を反する反応が帰ってきた。
「あー!ありがとうございます!助かりました!」と、実に素直に喜んでいるような声が狭い路地に響いたのだ。
その声の明るさに、つまらぬことに悩んでいた自分は完全に萎縮してしまった。
恥ずかしさのあまり、相手に近づくどころか顔を上げる事すらできなくなってしまった。
それを察したのか近づいてきてくれる女性。かろうじて一瞬だけ見ることのできた顔は、屈託を感じさせない満面の笑顔だった。
ハンカチを受け取って僕の後頭部にお礼を言うと、女性はそのままマンションへと引き返していった。
その足音が少しだけ軽くなっていたような気がして、僕はすこしほっとしたような温かい気持ちになった。
後日談は期待しないで欲しい。
残念ながら、僕はその女性の顔すら満足に見ることができなかったのだ。
だけどそれから変化したことが一つだけある。
今まで僕の中で鏡のように静かな湖面に映る三日月を奏でたものと思っていた月光が、この日から満月に変わったということだ。
ついでに増田らしいオチも加えておくと、後日、この女性とそっくりな格好をした素人AVを見つけた。
ショップで作品名や女優名を記憶してXVIDEOで検索すれば十分派を貫くつもりだった僕だったが、画質と保存性のためならお金を払っても良いと思えるようになったきっかけでもある。
カーラジオからは冬の定番ソングが流れる。それは、街路樹のイルミネーションとほどよくマッチし、心を冬色に染める。
『I want to show you everything.....』
あぁこの歌は5年前のChristmasを思い出す。
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『いつも仕事が早いねー。一昨日頼んだばっかりなのにいつやったのこれ?』
『そんな無理しなくてもいいのにーつかそれ社内規程違反だからもうやっちゃダメだよ?』
『まーでも助かったわー。ありがとう^^』
課長の名前は由希子さん。うちの会社で女性の課長はわりと珍しくはない。
ちなみに、僕の直属の上司にあたる。一緒に得意先を回ることはあるが、その男勝りな性格のせいか、あまり浮いた話は聞かない。
でも、いつの間にか僕は好きになっていた。上司としてではなく、女性として。
『そろそろクリスマスねー。俺君は何か予定でもあるの?』
『予定と言えば、帰って風呂はいって寝るくらいですかねー。課長は?』
『わたしは、、、そうねぇ。今から作ろうかしら。ね!俺君!』
『え?どういう意味ですか?』
『だから、そういうこと!一人でいるのも何だから、食事でもしない?』
『僕でいいんですか?』
『嫌なら誘わないけど?』
『是非ご一緒させてください!』
24日の日、課長は取引先数件で商談とプレゼンがあるとのことで、朝から会社にはいなかった。
俺といえば年末の請求書の処理があるので、一日会社にいる予定だった。
『19時に上野でね(^_-)』
顔文字使うなんて今まで無かったのに。
僕も思い切って顔文字つかって返信した。
『わかりました!o(^-^)o』
ちょっと恥ずかしくなった。
19時、上野で待ち合わせたゆきこさんは、仕事着では無かった。普通に仕事帰りな自分が恥ずかしい。。。。
『き、着替えてきたんですか。』
『いやーこの服着る機会がなくってねー。変?』
『いや全く変じゃないけど…なんか仕事帰りって感じがしないっすね…』
『いやそんなこと無いんですけど、俺が普通に仕事帰りのままなんで…』
『気にしないで^^』
そんな談笑をしながら、歩き始めた。
街は当然クリスマス一色。
課長は、それはそれはとても綺麗で、いつもの男勝りな性格なんてみじんもみさせないくらい、というか、言葉に出来ないほど綺麗だった。
一緒に歩いてて、回りにはどううつってるのかな。そんなことを考えながらお店に到着。
『俺君はお酒飲める?』
『飲めますよ!』
『よかったよかった。ここは私の行き着けなんだ。結構洒落てて居心地いいんだよー』
正直大衆居酒屋しか知らない俺には抵抗があったが、今日はゆきこさんと一緒だ。何も恐れることはない。
『お。由希子ちゃん。あれ?彼氏さん?』
『なーんだwそうなのかー残念だなーw』
『俺君何飲む?』
メニューを見る。
やっべ分かんないお酒ばっかりだ。
どうしようと思ってるときに、たまたまカミカゼというお酒が目に入った。
『か、、、カミカゼを、、、』
『いきなり強いの行くねぇ。』
え。強いのこれ(^_^;)
『あ!本当だ!もう12時になるのね…』
『じゃあマスターまたね!』
『ありがとうございました。』
と、席を立とうとした瞬間、課長はふらっと俺に寄りかかってきた。
『そうなんですか?』
『普段はのまないよ。こんなにはね。』
そう言って、よろけながら店をあとにする。
駅までの帰り道。
『ごめんね酔っぱらっちゃって…』
『いや、平気ですよ!ちゃんと帰れます?』
『うん。ありがとう。』
ああああもう仕方がない。送っていこう。そう決意。
『家まで送ります。』
いつもと様子が変だ。
俺は口を塞ぐ、『しーっ!』のそぶりを課長にする。
課長の家は4駅先だ。
駅からそう遠くないのが幸いだ。
『ねぇ俺君。』
『はい?』
『俺君は私をどう見てるの?』
どきっとした。
どう答えればいいのか。
チャンスは今しかない!
でも酒の勢いにしか聞こえないぞこれは。
『あー。あの…上司としては素晴らしい、尊敬できる人です。友人としては…』
『友人としてゎぁ?』
不思議と甘い声に聞こえる。
男勝りな性格なんてまるでないような、それはもう猫撫で声。
そのさきを言おうとした瞬間、課長が手を繋いできた。
『あたしは、好きな人として見てる。仕事中も、プライベートも…』
『え…』
『…』
『こんな人が彼女じゃいや?』
『俺まだ続きをはなしてないです。』
『あ…ごめんね。』
『友人としては…みてないです!』
『え…』
課長の手を握り締める力が強くなった。
丁度コンビニの前に差し掛かったとき、聞こえてきたのは、winter song。
『This is my song for you....』
『今夜帰るの?』
『課長と一緒にいたいです。』
『課長って呼ぶのやめてよ。由希子って呼んでよ…せっかくカップルになったのに台無しじゃんかー。これは業務命令ね!二人きりの時は由希子って呼ぶこと!』
『え…業務なんすか…それもなんだかなあ…』
『あー、業務じゃないけど…でもだめ、ちゃんと由希子って呼ばないといじけるよ?』
『う…ごめんなさい。あの…由希子…さん?』
『それでよし。さあ帰って飲み直そうかー!』
『あたりまえででしょうに!飲む飲むー』
そうお互い笑いながら、二人は住宅街へ消えていった。
なんていうこんなクリスマスの一日を過ごしてみたい。
前日は空が白むのを見てから寝たにも関わらず、暑さゆえに8時過ぎ起床。
テントサイトにて、フジロック初回から参加し続ける猛者たちと杯を交わす。
潰れる一歩寸前まで日本酒を飲み、大声で歌いながらライブ会場へ。
・青葉市子
前野健太とソープランダーズを見逃し、フジロック2日目は森の中の青葉市子からスタート。
会場は、青葉市子に似つかわしく、森の中にぽつんとある一番小さなステージ。狭いながらも超満員。
心地良い演奏にうとうととしてしまい、椅子から転げ落ちそうになったため次のライブに移動。
青葉市子の弾き語りは2週間前に下北沢音楽祭で見たし、前日の深夜にもピラミッドガーデンにて見ていたので特に感想はなし。
なんか日本のバンドっぽくない印象。逆輸入アーティストだからまぁそりゃそうなんだけど。
日本のバンドは演奏が上手く、サウンドメイキングにより強烈な個性を出すのは苦手、
そして海外のバンドはサウンドメイキングにより表面的な個性を打ち出すのが上手く演奏は下手くそ
というイメージを勝手にもっているのだが、トクマルシューゴは後者に該当した。
演奏は下手くそというとさすがに言い過ぎだが、難しいギターのフレーズはCD音源のほうが綺麗に弾けてるし、バンドのアンサンブルもなんとなくだけどそこまで息がピッタリという雰囲気でもなかった。
前日にギターの達人たちを見たからハードルが上がってたのかな?
しかしおもちゃ箱を開けたようなサウンドはライブでも健在であり、楽しいライブであることは間違いなかった。
そういえばドラムの人が目測で身長190以上あって存在感半端無かった。
・SUZANNE VEGA
本当はオレンジコートでVERY BE CAREFULというクンビアバンドを見たかったが、豪雨により断念。
フィールド・オブ・ヘブンのTシャツ屋でなんと2時間近く雨宿りをして意地でSUZANNE VEGAを見る。
何度テントに帰りたいと思ったことか。まぁこの時テントは雨漏りしまくっていたわけだが。
しかし演奏は素晴らしかった。フジロック三日間を通してのベストソングは間違いなくSUZANNE VEGAのLUKAだろう。
LUKAのリリースからは既に26年が経過しており、声の変化が心配だったが、そんなのは杞憂に過ぎなかった。
バンド編成はなんとアコギを抱えたSUZANNE VEGAとエレキギターのおじさんのみ。
エレキギターのおじさんはルーパーを巧みに操り1人でドラムとベースとリズム&リードギターをこなしていた。
最初は「おいおい手抜きかよ」と思ったが、今思えば逆にそれが功を奏していたといえる。
このシンプルな構成により、LUKAに限らずSUZANNE VEGAの声が前景化して、より感動的に仕上がっていた。
リバーブが思いっきりかかったおじさんのギターソロも際立っていた。
豪雨によりずぶ濡れになった服を着替え、少し遅れてレッドマーキーへ。
ボーカルはスーツに黒い革手袋!真紅の帳に舞い降りた漆黒の歌い手!
いやー、モニターに足をかけて客席を指差すとかもう完全にV系です、ありがとうございました。
This song is called〜〜って演奏前にいう感じもなんか外国語ながら中二感を感じざるを得ないw
遅れて行ったからか、Wonderful Lifeが聞けなかった。
・KENDRICK LAMAR
ビョークはあんまりわからないし、死ぬほど混んでいたのでさらにわからないKENDRICK LAMARへ。
なんと10列目でラーメンが食べられるほど空いておりましたが、ライブ自体はとてもよかった。
まずDJセットではなくバンドセットで、B-BOYたちがバンドをやっている姿はなんともシュールだったw
そして、今風なアンビエント的R&Bみたいなのを生で初めて聞いたのだが、あの手のものは音圧が半端無いんだということを知った。
Frank OceanとかJames Blakeとかも生で聞いたら恐らく音の風が吹いてくるみたいな感じなんだろう。
KENDRICK LAMARはとにかくアンダーグラウンドのワルみたいな雰囲気で、なぜか雨もやんでいてステージには屋根があるにも関わらず300円のビニールレインコートを着ていたw
スヌープドッグがシャンプーハットをファッションとして着ていたりするが、これもそういうことなのだろうか…
フジロックベストアクト、エンターテイメント部門はJURASSIC 5に決まりでしょう。
途中でタイコクラブで知り合った人に遭遇したり、後ろの人に声をかけられたりとテンション上がりすぎて、いつの間にか持っていたジン300mlをライブ中に飲み干していた…
ライブはショウとして完成されており、DJの二人によるショルダーCDJ(!?)とショルダーサンプラーでのライブが挟まれるなど、90分間片時も飽きさせないライブだった。
そして脱退したと思っていたカット・ケミストが生で見られたのもなかなかに感動的。
前日のDJシャドウは深夜につき断念したが、カット・ケミストのターンテーブルさばきはしっかりと目に焼き付けた…と言いたいところだが、酩酊状態につきそこまで覚えていないw
DJももちろんすごかったが、前に立つ4MCもKICK THE CAN CREWのように、それぞれキャラ分けがしっかりとなされており、コミカルなボディランゲージと共に最高のフロウを聞かせてくれた。
全てがノンストップにミックスされたライブだったので曲単位でこれがよかった!とかはあまり感じなかったが、BreakのサビやI am sombodyのコールアンドレスポンスは酩酊状態だったにも関わらず鮮明に記憶している。
全体的にショウとしての完成度で言えば直前のKENDRICK LAMARを大きく上回っていたな、まぁ比較してもしょうがないが。
この後はJURASSIC 5で声をかけてきた人とそのお友達(みなさん私よりも10歳以上年上…)に二時間以上も絡み続けて、千鳥足でテントに向かいましたとさ。
三年ぶりに聞いた、大学時代の知人の肉声だった。
『ご無沙汰しています。Nです。突然なんですが、GWに研究室の同期で一度集まろうと企画しています。連絡下さい。』
急いで折り返し電話をかけると、知人
はメアドが繋がらなくて困ってたんだとぷんぷん怒りながらも連絡がとれたことを喜んでいた。
わざわざ連絡先を探してくれた労と再開を喜ぶ気持ち、そして切れてなかった縁に、じんわりと心があたたかくなるのを感じてた。
そして、昨晩がその日。大学の研究室で同期だった皆で会食をした。
焼き肉屋の暖簾をくぐるとすでに研究室のメンバー8人全員が揃ってた。
『久しぶり』『変わってないね』
時間ギリギリだったにも関わらずかかる声は明るくて、お座敷にさっと出来たスペースの気遣いが嬉しかった。
一番来ない人だと思ってたと絶句してた人もいたけど、後で話したら悪い気持ちは含まれてなくて純粋に驚いてたみたい。
くったくない会話で近況を語り合い、時折上がる歓声に、人見知りの私の心がどんどん溶かされていくのを感じてた。
木曜日の4限と5限、肩を並べて勉強してゼミ合宿に論文の輪読、あのときいつも傍らにいたのはこの人達だったんだ。
そのことを改めて思い出したら、泣きそうになっておしぼりで咄嗟に目もとを拭ったら隈取りみたいになって、姉御のA嬢に化粧室に連れていかれた。
前は立場が逆だったのにな。えづいた彼女を慌てて化粧室に連れていったら、あとあとおめでたって分かったんだっけ。
あの娘は元気?と聞くと携帯で幸せのスライドショーが始まった。
一本締めをKから、とドSのA君に振られたK君はN君の尽力に改めて感謝してた。
今日はホテルを借りてるんだというS君と途中まで一緒に帰った。
上京した時、N君の部屋に時々泊まるという彼から、今日研究室のメンバー全員が揃った理由を聞いてみた。
N君が水面下で、地方に行っちゃった他の人たちや音信不通になっていた人たち(主に私)と
連絡やスケジュール調整が出来るように色々頑張ってたんだと暴露話。
集まることが出来てN君様々だなという彼に大きくうなづいて、仲の良さとお泊まりの実態を少し聞き出してみたり。
同期のT嬢をお持ち帰りするかもしれないから今日はホテルを取ったというS君の気遣いに
また違った友情の形がそこにあるのを確認した。
一人の空白男が公園のベンチに座っていた。男は会社で大きなミスを犯し、馘首になることが確定だった。
「はぁ…」
出るのは溜息ばかり。ベンチの足元では、梅雨の晴れ間を愉しむかのように、小スズメたちが砂浴びに勤しんでいた。
ふと戯れに、食べ残しのカロリーメイトの欠片を小スズメたちの近くに投げてやると、一瞬驚いて後ろずさったあと、そろそろと近づき、ツンツンとついばみ出した。
「ああ、都会のスズメはこういう物も食べるんだ」
そう思いながら、その愛らしい姿に、男の心も多少は晴れるのだった。
その日の夜。
ここ数カ月誰も訪ねてきたことがない男のアパートに誰かが訪れた。コンコンと玄関のドアがノックされる。
不審に思いながらもドアを開けると、高校生位の少年が立っていた。
「あの、どちらさまですか?」
「あ、僕、スズメです。昼間のお礼にお伺いしました」
少年はそう告げる。スズメって誰だっけ?どこかの私立高校っぽい制服を着崩した、町で普通に見かけるような少年だが、どこかで見たことがあるような無いような感じ。でも、全く心当たりがない。
「えっと、誰だか心当たりが無いんだけど。他の部屋と間違って無い?」
男はやや困惑しながら答えた。
「だからさあ、今日、カロリーメイト呉れたじゃん。そのお礼に来たんだよ。だから、とりあえず中に入れてよ」
なんだか強引な申し出だけど、まあ、どうせ明日から会社に行く必要もないし、手持ち無沙汰で暇だし。そう考えると、男は不思議な少年を部屋へと招き入れた。
「だから、恩返しをするために人間の姿になったんだけど。人間の捨てた雑誌に載ってたタッキーという人みたいに変身しました」
ああなるほど、それでどこかで見覚えのある顔だと思ったのか。少年曰く、小娘達に大人気らしいですよとのことだけど、随分古い雑誌を参考にしたような気がしないでもない。もっとも、冴えないオッサンにとっては、男の子のアイドルなんで顔と名前が一致した試しが無いのだが。
「それでどうします?とりあえず全部脱いだほうがいいですか?それとも制服着てるのが萌えます?」
「はぁ?」
「だって、スズメに出来る事ってそれくらいじゃないですか。それとも、新しい就職を紹介するとか、次の競馬のレースの当たり馬券を予想するとか、そんな事出来ると思ってたんすか?」
少年は、なんだか少し怒った口調で答える。
「例えば鶴の恩返しだと、主人公の男のもとに美女が訪れるんだけど、なんで男の子なの?それに君、未成年でしょ?」
「なんでって言われても、僕、男ですから。そもそも、スズメが人間になっているという超常現象を前にして、そんな些細な事にこだわるのはナンセンスですよ」
まあ、確かにそうだが些細な事なのだろうか。かといって、これじゃ、お礼なのか嫌がらせなのか判然としない。
「せめて女装するとか」
にべもない。仕方が無いので、少し話題を変えてみる。
「ところで、スズメってカロリーメイトとかも食べるのな。てっきり、稲穂か米粒しか食べないと思ってたんだけど」
少年がアハハと笑いながら答える。
「そんなの食ってるのは田舎のスズメだけっすね。都会のスズメは何でも食べますよ。どっかの糞ガキが引っ剥がしたカサブタとか、酔っぱらいのオッサンが吐き出したゲロとか」
「ゲ、ゲロとか食べるんだ」
男が少し嫌な顔をしたのを見て、少年はムっとして答える。
「そ、そりゃ、最初は超抵抗があったけど、食べると意外と慣れるというか。人間もクサヤとか納豆とか食べるっしょ。それと一緒です。今日もここに来る前に少し食べました」
今日も食べたのか。そんなもの食べて貰いゲロしないのだろうかと、スズメのタフさに少し感心したりする。
「ところで、ゲロだとかカサブタだとか、そういうの食べた時もお礼するの?それとも特別な食べ物だけ?」
「あ、いいところに気づきましたね」
少年がニッコリと微笑む。
「食べ物を呉れた人がわかる場合だけっすね。糞ガキはカサブタを落としたあとにワーっと走って消えちゃうし、酔っぱらいはゲロを吐いたあとに千鳥足で居なくなちゃうし。たまにゲロの海で溺れてる奴が居ますが、そういう場合はお礼に伺います。でも、あなたのゲロを食べましたというと、大体玄関先で帰れって言われちゃいます」
男と少年は顔を見合わせて笑った。
「それで、俺のところにはお礼に来たんだ」
「そうですね。あのあとフラフラとこのアパートに帰っちゃいましたから。正直、客観的に見て冴えないオッサンであるところのあなたに抱かれるのは不本意ですが、礼を失してはスズメ一族の名折れですから。どうぞ遠慮無く」
少年が悲痛な表情で男の目を見る。
失礼なことをいう奴だが、紛れもない事実なので聞かなかったことにしておこう。それにゲロを食った口でキスされてもなあ。
「もういいよ」
「え?」
「気持ちだけでいいよ。何もしなくていい」
その言葉を聞いて、少年に明らかな安堵の表情が浮かぶ。男も少しはいいことをしたかな、という気分になった。
「自民党が1970年から始めた減反政策や、日本列島改造論以降の宅地開発による農地減少、それにコンバインの性能向上により落穂が少なくなったりと、スズメも結構大変なんっすよ。たからオジサンも頑張ってね」
少年はそういい残すと男のアパートをあとにした。妙に弁が立つけど、誰から入知恵されているのだろうか、そもそも本当にスズメだったのだろうか、男はそんなことを考えながら、ぬるくなった缶ビールを飲み干した。
少年がアパートから出てくると、佐々木希似の少女が一目散に駆け寄った。
「ねえ、大丈夫だった?何もされなかった?」
「大丈夫。ちょろいもんさ」
少年がニッと笑う。
「つーかさ、俺たちが居たんだから、女のお前がお礼にいっても良かったんだけどな。あのオッサン全然気づかないんでやんの。だから会社を馘首になるようなマヌケなんだよ」
二人で顔を見合わせてクスリと笑う。
「でも、最近はどっちでも喰える連中が増えてきて、このテクニックもだんだん使えなくなってきたけどな。おかげで俺たちスズメは減少の一途…」
そうつぶやくと、二羽は暗闇の中を自分たちのねぐらへと飛んでいった。
※元ヌタは、@上海です。(´ー`)y-~~。
http://anond.hatelabo.jp/20100424183731
10年以上前、私がまだ小さかったころの話です。
その日は夕方から雨が降るかもしれないということで、私は母に頼まれて、駅前まで傘を持って父を迎えに行きました。しばらく待っていると、駅の中から父が姿を現しました。すぐに声をかけようとしたのだけれど、その日父はなぜかいつもと違う方向に歩いていったので声をかけそびれ、そのまま後ろをついていく格好になりました。父は私が今まで行ったことのない、ピンクや黄色の派手な看板がたくさんある一角に足を進めました。そしてちらりと見えた父の横顔は、なぜかとても嬉しそうで、なんだか私まで意味もなく嬉しくなってしまったことを今でも思い出します。そうこうしているうちに、父はある場所で足を止めました。私はやっと追いつけたという安心感と、見知らぬ街に一人で繰り出した興奮がない交ぜの状態で、「お父さん!」と大声で呼びながら父の背中に体当たりしました。その瞬間、父は今まで見たことのないような顔をして30センチ以上飛び上がり、「ごめんなさいごめんなさいキャバクラ行くつもりなんて全然ありませんからごめんなさいごめんなさい」と早口でまくし立てて、まるで酔っ払いのような千鳥足でふらつきながら、なぜか見ていた店の隣の建物に入っていきました。私はわけもわからず父の後を追うと、建物の中から黒いベストをばっちり着こなしたおじさんが出てきて「ここは大人のお風呂屋さんだから、君みたいなちっちゃい女の子は来ちゃ駄目だよ」と優しく教えてくれました。そして帰り道がわからない私を駅前まで連れて歩いてくれました。
家に帰ると私は夕方あった出来事を事細かに母に説明しました。母は説明の途中から大根を切っていた包丁の手を止め、全く動かなくなったように見えました。そして「クソガ」「ブチコロス」などと断片的ではありますが、何かとても怖い独り言を言っていたようでした。私がすっかり話し終わると母は振り返って震える声でこう言いました。「うんこは食べちゃダメよ。身体に悪いからね」私はそのときなぜかとても怖くて泣きそうになりながら「わかりました食べません」と答えました。そしてそのことをつい昨日の出来事のように思い出すことが出来るのです。だから私は自信を持って言えます。うんこを食べると身体に悪いのです。
1日目の夕方に時間が出来たので、その仕事のパートナー(同じ会社ではないので上司ではない)と、夕食でも、となる。
仕事で一緒にご飯を食べることはあるが、飲むのは相当久々であった。相手は飲んべえのおっさんなので「ご飯」と言っても飲み屋で数時間がデフォルト。自分は健康上の事情でアルコールは控えめのため、ほぼしらふ。
相手は酒に強いのでがばがばと飲む。いつもは寡黙な人なのだが、アルコールが入ると酔っぱらいモードでポツポツと話し、逆にいつもは気を遣って話しかける立場の自分が聞き役となる。
30も年齢差&仕事経験差があるので、会話は若干仕事上のカツを入れられたり、人生設計について(男できたか、とか。いつも「いーえ」という返事しかできないのだが)、久々に会う親戚のおじさんのごとくたずねられる云々。ありがたいアドバイスなのではあるが、明日も仕事なので時々「あー早く引き上げたいなー」という顔をすると、頭をポン(というかゴツンが正確)とやられることしばし。
そんなこんなでやっとお開きとなり、ホテルまでの帰り道。相手、千鳥足。「絵に描いたような千鳥足の人間、久々に見たなあ〜」とか思いながら適度な距離感で「だいじょーぶですかー」「んー」とか言い合いながら並行。
一緒に階数ボタンを押してさしあげ、6階についたのでさっさと「では失礼しま〜っす」と退散しようとすると、隣りからぐいーっと右肩を寄せられ、「おっとっとっと・・」とよろける間にエレベーターの扉が閉まってしまった。7階まで上がるエレベーター内で肩抱かれる格好。ひとりじゃ立てんのか、と振り返ると真上から頭をおさえられて、顔の距離が近づく。「オイオイ、なんだかこのままチューとかいっちゃいそうな勢いだぞ」と妙に客観的な一瞬ののち、幸運にも(?)口じゃなく頭に顔が埋まった感じで止まった。
7階の扉が開いた。そのまま二人、立っている。と、扉が自然に閉まりそうな気配なのでギューッと開ボタンを押し、左手で執事のごとく「どうぞ」と廊下を指して「付きましたよ。おつかれさまでした。」「ん」「明日もよろしくお願いします。それでは」と6階ボタンを押した。相手、千鳥足で出て行く。扉が閉まるまでの間、お辞儀をする私。のろのろ扉が閉まったその後、思わずくらりとして狭いエレベーターの後ろにゴンと頭を打ってしまった。
このご時世、捉えようによってはセクハラと言えなくもないのだが、犬猫飼いなので自分が犬にでも見えたかなーと思えなくもない感じで、かといって、父娘ぐらい年齢離れてる孫有りの仕事関係者にドキドキが発生するはずもなく、他人事のように振り返りながらもなんとなくモヤモヤ感が残った。
で、どうせ相手は記憶ないんだから、酔っぱらいってヒドいよなー。
ちなみに読んだのは小説や思想書。
【行状】人の普段のおこない。身持ち。品行。 「―を改める」 ※ぎょうじょう
【隠退】一切の社会的な仕事を辞め、静かに暮らすこと。退隠。 「郷里に―する」
【駐屯】軍隊がある地にとどまっていること。 「―部隊」「―地」「一個師団が―する」
【要綱】根本的な、重要な事柄。また、そのような重要事項をまとめ上げたもの。 「政策の―」
【眼目】(1)物事のたいせつな点。要点。主眼。 「教育の―は人間形成にある」 (2)目。まなこ。
【獄門】(1)牢獄の門。 (2)〔斬罪になった囚人の首を (1) にさらしたことから〕江戸時代の刑罰の一。斬首のうえ、その首を一定の場所または悪事をした場所にさらすこと。獄門台にのせ、そばに罪状を記した立て札を立てた。梟首(きようしゆ)。晒首(さらしくび)。「――に懸ける」
【当座】(3)(あることから)しばらくの間。一時(いつとき)。「結婚した―は生活も苦しかった」
【おさおさ】(1)(下に打ち消しの語を伴って)どんな面からみても十分に。全く。ほとんど。「準備―おこたりなし」「―おとらない」
【大儀】(1)手間のかかる面倒なこと。骨の折れること。また、そのさま。「―な仕事」(2)くたびれてだるいこと。何をするのもおっくうなさま。「体がだるく起きるのが―だ」
【芬々】においの強いさま。多くよい香りにいうが、悪臭にもいう。「香気―たり」「酒気を―と匂はせつつ/鉄仮面(涙香)」
【荒涼】風景などが荒れ果てて寂しいさま。また、精神がすさんでいるさま。荒寥。「―とした枯れ野原」「―たる寂寞感」「―たるその景色/或る女(武郎)」
【胴震い】寒さや恐怖・緊張・興奮などのために体が震えること。
【怖気】こわがる気持ち。恐怖心。おぞけ。「―がつく」
【嘶く】馬が声高く鳴く。 ※いななく・いなく
【人好き】多くの人に好かれること。人が好くこと。「―のする顔」
【掛け金】(1)戸・障子などが開かないようにかける金具。
【按排】(4)ほどよく物事を処理すること。ほどよく物を並べること。「九個が整然と同距離に―されて/草枕(漱石)」
【進捗】(1)物事が進みはかどること。「工事の―状況」※しんちょく
【皓々】(3)光るさま。明らかなさま。「―たる月/緑簑談(南翠)」
【銘記】しっかりと心にきざみこんで忘れないこと。「心に―すべき言葉」
【徴発】(1)強制的に物を取り立てること。特に、軍需物資を民間から集めること。「民家から食糧を―する」(2)強制的に人を呼び集めること。「堤防工事に人員を―する」
【口伝】(1)口で伝えること。くちづたえ。(2)奥義・秘伝などを口伝えに伝授すること。(3)奥義を書き留めた書。秘伝の書。
【前哨】敵陣近くに軍隊が陣を張る場合、敵状を偵察したり敵の奇襲を防ぐために前方に配置する部隊。
【矮人】背の低い人。 ※わいじん
【翻刻】(1)写本や刊本を、そのままの内容で、新たに木版または活版で刊行すること。翻印。(2)外国の刊本を、そのままの内容で新たに刊行すること。
【拙劣】へたであること。まずいこと。また、そのさま。「―な文章」
【縞瑪瑙】縞模様の特にはっきりした瑪瑙。
【稠密】多くの人家・人間などがある地域に密集している・こと(さま)。「人口が―な地域」「人家の―する日本橋区の中央(まんなか)へ/花間鶯(鉄腸)」 ※ちゅうみつ
【立役者】(1)芝居で一座の中心になる役者。立役(たてやく)。立者(たてもの)。(2)ある方面で中心となって活躍する者。中心人物。「優勝への―」
【いくたり】「いくにん(幾人)」に同じ。「―来たかわからない」「―かは成功した」
【成算】物事をやりとげることができるという見込み。成功する見込み。「―がある」「―が立たない」
【尖塔】細長く先がとがった形の屋根をもつ建物。ゴシック建築の教会などに多く見られる。
【拱廊】アーケード。建築用語。円柱などの柱によってささえられたアーチの連続,または片側がアーチをのせた柱列からなる廊。ローマ時代以降盛んに用いられ,中世にはバシリカ式教会堂の身廊と側廊を仕切る内部構成の重要な要素となる。
【重畳】(1)幾重にもかさなっている・こと(さま)。「―たる山脈」(2)この上もなく喜ばしいこと。きわめて満足なこと。感動詞的にも用いる。「―の至り」「御無事でお帰りなさるは何より―/色懺悔(紅葉)」※ちょうじょう
【はかばかしい】(1)物事が順調に進んでいる。望みどおりの方向にいっている。うまくいっている。また、はかどっている。「病状が―・くない」「―・い返事が聞けない」
【奇態】風変わりなこと。不思議なこと。また、そのさま。「予言したのがちやんと適中してゐるから―だ/うづまき(敏)」
【風雪】(1)風と雪。(2)風とともに降る雪。吹雪。(3)きびしい試練や苦難のたとえ。「―に耐える」
【以遠】ある地点よりさらに遠いこと。また、その場所。「東北本線は宇都宮―が不通」
【鷹揚】ゆったりと振る舞うこと。余裕があって目先の小事にこだわらないこと。また、そのさま。ようよう。「―な態度」「―にかまえる」
【物堅い】実直である。律義である。まじめ一方である。「―・く信用できる人」
【暗影】(1)暗いかげ。(2)不安・不吉なきざし。「前途に―を投げかける」
【暗影を投ずる】不安を投げかける。「国際情勢に―・ずる出来事」
【模糊】はっきりしないさま。ぼんやりとしているさま。「曖昧(あいまい)―」「四辺(あたり)は―として霧の中に隠れるが如く/あめりか物語(荷風)」
【戦慄く】(1)寒さ・恐怖・発熱などのために体が小刻みに震える。おののく。「恐怖に―・く」 ※わななく
【空恐ろしい】これから先のことを考えると、なんとなく不安で恐ろしい。「ゆく末が―・い」
【稀覯】〔「覯」は見るの意〕めったに見られないこと。「―の古書」
【稀覯本】めったにない珍しい本。古写本・古刊本・限定出版本などのため、数がきわめて少ない本。稀覯書。稀書。珍本。
【蔵書】書物を所蔵していること。また、その書物。蔵本。
【悪鬼】(1)たたりをする魔物。「―のごとき形相(ぎようそう)」
【染む】(3)打ち消しの語を伴って、自分の気持ちになじまない、気にいらない意を表す。「意に―・まぬ結婚」 ※そむ
【総身】からだじゅう。全身。満身。そうみ。
【悠久】はてしなく長く続いている・こと(さま)。「―な営み」
【繁茂】草木が生い茂ること。「夏草の―する野原」 ※はんも
【閲する】(1)よく調べる。検査する。「此編を綴るに至りて或一書を―・せしに/近世紀聞(延房)」(2)年月を経過する。「諸邦を遊歴して多年を―・し/花柳春話(純一郎)」 ※けみする
【霊廟】(1)先祖など、人の霊をまつってある建物。おたまや。みたまや。(2)卒塔婆(そとば)のこと。 ※れいびょう
【蕭然】がらんとしてもの寂しいさま。「沈々たる孤灯に対(むか)ひ―として窓下に縫衣す/世路日記(香水)」 ※しょうぜん
【冷徹】冷静で、物事の根本まで深く鋭く見通している・こと(さま)。「―な目」「―に事の推移を見通す」
【瞥見】ちらりと見ること。ざっと目を通すこと。一瞥。「―すると女が四人でテニスをして居た/趣味の遺伝(漱石)」
【新緑】初夏の頃の、木々の若葉のつややかなみどり。[季]夏。
【壮麗】大きく立派で美しい・こと(さま)。「―な会堂」
【興趣】楽しく愉快に感じること。おもしろみ。「―が尽きない」「―がわく」
【古雅】古風でみやびな・こと(さま)。「古代の人像は―にして奇(くし)く/慨世士伝(逍遥)」 ※こが
【着意】(1)気をつけること。気をとめること。注意すること。「然るにこれに―するもの、甚だ少なし/西国立志編(正直)」(2)思いつき。着想。
【刻限】(1)指定した時刻。定刻。「―に遅れる」(2)時刻。時間。「日の暮れる―」
【蒼枯】古びていて深みがあるさま。「太い幹は―として白い粉をふいている/わが愛する山々(久弥)」
【遠戚】血筋の遠い親戚。
【純朴】素直でかざりけのないこと。人情が厚く、世間慣れしていないさま。「―な気風」「―な人」
【購う】(1)買い求める。「最も価(あたい)低き入場券を―・ひたれば/ふらんす物語(荷風)」(2)ある物と引き換えに別の物を得る。「汗と涙で―・われた成功」
【贖う】罪の償いをする。「死をもって罪を―・う」
【和毛】やわらかな毛。うぶ毛。 ※にこげ
【意趣返し】仕返しをして恨みを晴らすこと。報復。意趣晴らし。
【譴責】(1)不正・過失・失敗などをとがめしかること。「怠業のかどで―する」※けんせき
【ひとかたならず】ひととおりでない。普通でない。たいへんである。「―ぬお世話になりました」「―ず驚いた」
【峻厳】(1)いかめしくきびしい・こと(さま)。「―な態度」「―に自己を難詰した彼も/彷徨(潤一郎)」
【難詰】欠点を挙げ、厳しく相手を非難すること。「失態を―する」 ※なんきつ
【懐郷】故郷をなつかしむこと。「―の念抑えがたし」
【往時】昔。以前。「城跡に―をしのぶ」
【顔容】顔かたち。容姿。容貌(ようぼう)。
【突兀】物が高く突き出ているさま。山や岩などの険しくそびえているさま。とつこつ。「英雄の鼻柱が―として聳えたら/吾輩は猫である(漱石)」 ※とっこつ
【刻苦】自らを苦しめ努力すること。「蛍雪(けいせつ)の窓に―して/慨世士伝(逍遥)」
【登攀】高い山などをよじ登ること。とはん。 ※とうはん
【闃然】ひっそりとして静かなさま。人気がなくさびしいさま。「―として空家の様に見えるのは/琴のそら音(漱石)」 ※げきぜん
【凛然】(1)寒さの厳しいさま。「―として寒冷(さむさ)膚へに徹り/竜動鬼談(勤)」(2)りりしく勇ましいさま。凛乎(りんこ)。「―たる態度」「精神爽(さわ)やかに意気―として/復活(魯庵)」
【凛乎】きりっとして勇ましいさま。りりしいさま。凛然(りんぜん)。「―たる態度」「彼方(かなた)を睨(にら)みし有様は、―として四下(あたり)を払ひ/慨世士伝(逍遥)」 ※りんこ
【篤実】情にあつく誠実であること。他への思いやりがあり、また、まじめであること。また、そのさま。「温厚―の好青年」「―な人柄」「―家(か)」
【惻隠】かわいそうに思うこと。あわれむこと。 「―の情」
【碩学】〔「碩」は大きい意〕学問が広く深いこと。また、その人。 ※せきがく
【詰屈/佶屈】文字・文章が堅苦しく難しい・こと(さま)。
【遺愛】死んだ人が、生前に愛用していたもの。「亡父―の万年筆」
【先考】死んだ父。亡父。
【先妣】死んだ母。
【粛然】(1)静まりかえっているさま。また、かしこまり静まるさま。 「恩師の前に―と控える」「此満堂―として鎮静し/経国美談(竜渓)」(2)礼儀正しく、おちついたさま。また、おごそかなさま。「彼等は…火の気のない室(へや)に―と坐つてゐた/門(漱石)」
【酔歩】酒に酔って歩くこと。また、その足どり。千鳥足。「阪東君が―蹣跚(まんさん)として這入(はい)つて来る/続風流懺法(虚子)」
【蹣跚】よろめき歩くさま。「―として定めなき足を引摺り/緑簑談(南翠)」 ※まんさん
【憂愁】うれえもだえること。悲しみなげくこと。うれい。「―の色が濃い」「享楽し、―する人間らしき行為言動を/文学評論(漱石)」
【幽愁】深い物思い。深い憂い。「―を催す」「―の美に酔ふばかりであつた/ふらんす物語(荷風)」
【幽囚】捕らえられて牢などにとじこめられること。また、その人。囚人。「―の身となる」「ブリグハム、ヤングを―せり/八十日間世界一周(忠之助)」
【有終の美】物事を最後までやり通し、立派になしとげること。 「―を飾る」
【虚心坦懐】心になんのわだかまりもなく、平静な態度で事にのぞむ・こと(さま)。「―に話し合う」
【沈滞】(1)一つところにとどこおって動かないこと。(2)活気がなく、積極的な動きのみられないこと。「全体に―した雰囲気だ」
【私生児】法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいった語。民法旧規定では父の認知を得ていない者をいい、認知された子は庶子として家籍に入れられた。現在の民法では「嫡出でない子」という。私生児。
【手練手管】人を思うままに操りだます技巧。「―の限りを尽くす」
【籠絡】うまくまるめこんで自分の思う通りにあやつること。「主君を―するに至れば/日本開化小史(卯吉)」
【不倶戴天】〔「礼記(曲礼上)」から。ともに天をいただくことはできない意〕この世に共存できない、どうしても許せないと思うほど深く恨むこと。「―の敵」
【換骨奪胎】古人の詩文の発想・形式などを踏襲しながら、独自の作品を作り上げること。他人の作品の焼き直しの意にも用いる。
【機微】表面からは知りにくい微妙な心の動きや物事の趣。「人情の―に触れる」「人生の―」
【恵投】人から物を贈られることを敬っていう語。恵贈。恵与。 ※けいとう
【看取】見て、それと知ること。事情などを察知すること。「人に由りて其の―する処の事実なり/欺かざるの記(独歩)」
【看過】見過ごすこと。大目に見て見のがすこと。「決して―できない不正」
【指弾】つまはじきすること。転じて、人を非難・排斥すること。「―を受ける」「偽善者を―する」
【瑕疵】(1)きず。欠点。(2)法的に何らかの欠陥・欠点のあること。
【謙抑】へりくだって控え目にすること。
【宥和】相手の態度を大目にみて仲よくすること。
【面従腹背】うわべは従順にみせかけ、内心では従わないこと。 ※めんじゅうふくはい
【附和雷同】自分にしっかりした考えがなく、他人の意見にすぐ同調すること。
【威武】威光と武力。武力が強く、威勢のあること。武威。「―を示す」
【威光】自然に人を服従させるような、おかし難い威厳。「親の―をかさにきる」
【断案】最終的な考えを決めること。また、最終的な考え・案。「―を下す」
【存否】(1)存在しているかいないかということ。「詩人の生家の―を問い合わせる」(2)健在であるかないかということ。安否。「両親の―を問う」 ※そんぴ
【出立】(1)旅に出ること。旅立ち。「早朝―する」(2)物事を始めること。「此(この)根本義から―した代助は/それから(漱石)」 ※しゅったつ
【零落】おちぶれること。「―して今は見る影もない」 ※れいらく
【落魄れる】以前の身分や財産を失い、みじめなありさまになる。零落する。「―・れて今は見る影もない」
【布置】物を適当な位置におくこと。配置。
【鬼胎】(1)心中ひそかに抱くおそれ。「―を抱く」(2)〔医〕「胞状奇胎(ほうじようきたい)」に同じ。
【胞状奇胎】妊娠初期に胎盤を形成する絨毛膜の絨毛が病的に増殖し、葡萄(ぶどう)状の嚢胞(のうほう)になって子宮腔を満たすもの。大出血を伴って流産したり、癌が発生する確率が高い。俗に「ぶどう子」と呼ばれる。葡萄状鬼胎。
【阿る】気に入られようとする。へつらう。「大衆に―・る」「時流に―・る」 ※おもねる
【腑分け】解剖のこと。「手医師何某といへる者、千寿骨ヶ原にて―いたせるよしなり/蘭学事始」
【流謫】罪により、遠地へながされること。島流し。謫流。「―の身」 ※るたく りゅうたく りゅうてき
【貴種流離譚】〔折口信夫の命名〕説話の一類型。若い神や英雄が他郷をさまよいさまざまな試練を克服し、その結果、神や尊い存在となったとするもの。在原業平(ありわらのなりひら)の東下り伝説、かぐや姫伝説、また、源氏物語の須磨流謫(るたく)の条などがこれにあたる。
【局外】(1)当面の事柄に直接関係のない立場。「―に立つ」
【局外者】その物事に関係のない人。。
【蛭子】記紀神話で、伊弉諾命(いざなきのみこと)と伊弉冉命(いざなみのみこと)の子とされる。古事記では伊弉諾・伊弉冉が日本の国土を生み成す際、国土とは認定し得ぬ失敗児、日本書紀では統治者の資格を欠く不具児としてそれぞれ位置づけられる。中世以降、恵比須(えびす)として尊崇された。ひるのこ。
【ゲリマンダー】自党に有利になるように選挙区の区割りをすること。
【斜交い】ななめ。また、ななめにまじわること。「―にまじわる道路」 ※はすかい
【博覧強記】広く書物を読みよく覚えている・こと(さま)。「―で鳴る男」
【惑溺】まどいおぼれること。夢中になって、正常な判断ができなくなること。「古習に―する者は/文明論之概略(諭吉)」
【糜爛】(1)ただれること。「―した歓楽/悪魔(潤一郎)」 ※びらん
【歓楽】(1)喜び楽しむこと。喜びと楽しみ。快楽。
【瀰漫】(ある風潮などが)広がること。はびこること。蔓延(まんえん)。「退廃の気が―する」 ※びまん
【頑迷】頑固でものの道理がわからない・こと(さま)。「―な人」
【頑迷固陋】考え方に柔軟さがなく、適切な判断ができない・こと(さま)。
【疎隔】関係がうとくなること。遠ざけること。「妾を―せんと謀りしなり/妾の半生涯(英子)」
【独立独歩】独立して他から支配も影響も受けずに自分の思うとおりにやること。独立独行。
【宿痾】前々からかかっていて、治らない病気。持病。痼疾(こしつ)。宿病。
【八紘一宇】天下を一つの家のようにすること。第二次大戦中、大東亜共栄圏の建設を意味し、日本の海外侵略を正当化するスローガンとして用いられた。
【侏儒】(1)こびと。一寸法師。 (2)見識のない人をののしっていう語。
【深更】夜ふけ。真夜中。深夜。「激論は―に及んだ」
【黒暗々】まっくらなこと。「―日光も穿ち得ぬ森林の裡(うち)/日光山の奥(花袋)」
【波濤】大波。高い波。
【炯々】(目が)鋭く光るさま。「眼光―として人を射る」「―たるまなこ」
【盲滅法】何の見当もつけずにむやみに事を行う・こと(さま)。やみくも。 ※めくらめっぽう
【文質】〔「文」はあや・かざりの意〕文華と質朴。また、外見と実質。
【彬彬/斌斌】(1)文章の外形と実質とが共に備わっているさま。「文質?其宜を得る/明六雑誌 21」 (2)文物が盛んに興るさま。「大宝の令は制度儀文全く備り―として観る可し/新聞雑誌 40」 ※ひんぴん
【文質彬彬】外見と実質とがほどよく調和していること。「文質彬彬としてこそ君子というものである」
【赫赫】(1)はなばなしい功名をあげるさま。「―たる戦果」(2)光り輝くさま。「―たる南国の太陽」 ※かっかく
【墨守】〔墨子がよく城を守り通し、楚軍を退けたという故事から〕昔からのしきたりや自説を固く守ること。「旧習を―する」
【旧習】昔からの習慣。古くから残っているならわし。
【旧慣】古くからの習慣。昔からのならわし。旧例。
【唯唯諾諾】何事にもはいはいと従うさま。他人の言いなりになるさま。「―として命令に従う」
【係争/繋争】当事者間で争うこと。特に、訴訟を起こして法廷で争うこと。「―中の事件」
【擬制】〔法〕〔fiction〕相異なる事実を法的には同一のものとみなし、同一の法律的効果を与えること。失踪宣告を受けた者を死亡とみなし、電気を有体物とみなすなどの類。
【緒言】(1)論説の言い初めの言葉。(2)前書き。序文。 ※しょげん
【徴表】その事物のあり方を特徴的に示し、他の物と区別する性質。属性。メルクマール。
【骨絡み】(1)梅毒が全身に広がり、骨髄にまでいたってうずき痛むこと。また、その症状。ほねうずき。(2)悪い気風に完全にそまっていること。
【抹香臭い】抹香のにおいがする。転じて、いかにも仏教的な感じがする。ぼうずくさい。「―・いお説教」
【可及的】できるかぎり。なるべく。「―速やかに撤去せよ」
【通暁】(1)夜を通して朝に至ること。夜通し。(2)すみずみまで知ること。「その分野に―している」
【掉尾】〔尾をふる意〕物事・文章などの終わりになって勢いを奮うこと。また、終わりごろ。最後。「―を飾る」 ※ちょうび
【掉尾の勇を奮う】最後の勇気を出して奮闘する。
【囲繞】周りをとりかこんでいること。「山々に―された地」 ※いにょう・いじょう
【畏友】尊敬している友人。
【言下】相手が言い終わったすぐあと。言い終わるか終わらないうち。「―に断られた」 ※げんか・ごんか
【淫奔】(女性が)性的享楽におぼれやすい・こと(さま)。多情。 ※いんぽん
【知解/智解】知識によって悟ること。 ※ちかい・ちげ
【哀訴】相手の同情心に訴えること。なげき訴えること。哀願。「彼は地主に―して/土(節)」
【充溢】満ちあふれること。「気力が―する」 ※じゅういつ
【釈義】文章・語句などの意味を解きあかすこと。また、解きあかした内容。解釈。
【蹉跌】つまずくこと。失敗し行きづまること。挫折。「研究は―をきたした」「出立点から、程遠からぬ所で、―して仕舞つた/それから(漱石)」 ※さてつ
【逢着】出あうこと。でくわすこと。「難関に―する」「屡々此の問題に―した/彷徨(潤一郎)」 ※ほうちゃく
【衡平】(1)つりあうこと。平衡。(2)〔法〕 一般的規定である法を、その適用において具体的事例に適するように修正すること。
金曜の夜あたりは新年会が多そうですね。
年明け早々なので、去年の反省を活かして、他人に迷惑をかけないことを目標にします。
さて、私は孫請けのシステム開発を生業としていますので、忘年会には自社の部署や常駐先のプロジェクトチームなど、色々と営業して参りました。
最終営業日の仕事納めには、会社からビールが振舞われたりもしました。
自分がやってしまわないように・・・自戒の意味も込めて、迷惑に思う行為をまとめてみました。
お酒を言い訳にせず、社会人として恥ずかしくない・同僚に白い目で見られない行動を心がけたいと思います。
○民族大移動編
・都内の細い道で、水戸黄門のロケみたく横一列に歩道占拠。千鳥足で、うしろの通行人を完全にブロック。…迷惑ですね。
・電車に乗る間際にも終礼。金曜の夜なんて特に混んでますから…迷惑かけますよね。
・電車を降りるときも終礼。降りる人が終わった頃に、乗車する人に逆流…迷惑です。
・極め付けが自動改札を出たあたりで終礼。もう「どけよ!ボケ」級に迷惑です。
○コリオリのちから編
・吊革に掴って、電車の揺れに身を任せる叔父様。混雑した車内だと、掴るものが無い人も多いです。
転倒の危険もあるので、迷惑度:大です。
○問題外編
・電車の座席をベッド代わりにして爆睡している人。始発駅でもたまに見かけますが…。
・公共の場でゲロゲーロ。なかなか難易度高めですけど、トイレに行く余裕も無いんですかね。(迷惑度∞)
お酒が入っている本人は楽しいんですが…、シラフだと迷惑に感じることも多々有りますよね。
お客さまや同僚などに白い目で見られないように、新春くらいは自身を律していきましょう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070103-00000148-mailo-l42
日本有数の繁華街、新宿。年末にこの街を訪れた。夕暮れ時、サラリーマンや学生であふれていた。友人らと居酒屋に入ろうとしたが、どこも満員。4件目でようやく席が空いていたが「2時間制です」とくぎを刺された。
そういえば、長崎では師走に入っても客足は伸びず、どの店の店主も渋い顔だった。裏金問題で自粛気味だった県庁職員に「忘年会はやって下さい」と知事が異例のメールを送ることもあった。
都会への集中に歯止めが掛からない。人、金、そして教育も。人気が集中する都会の大学に進学するには、自宅から通学できる都会の若者が圧倒的に恵まれている。地方から都会の大学に子供を出すには家賃を含め、月10万円を超える生活費が必要になるからだ。
学力の前に親の財力が欠かせない。あるいは、親の犠牲と覚悟が必要になる。これも地方のハンディ、中央との格差なのだろう。
大みそかの長崎市浜町のアーケード街。深夜になっても明かりは消えず、時折、着飾った若者やカップルが行き交う。降りたシャッターの前に段ボール箱が並べてある。ホームレスの男性の寝床だ。
五十歳代の前半。中学を卒業して勤めた職場が数年前に閉鎖となり、以後、仕事はしていない。一度、この生活を始めると、抜け出すのは容易ではない。「住まいも携帯電話も持ってないんで雇ってくれる会社もない」
兄弟が多かった。「お年玉なんか、もらったことがなかった」と子供のころの正月を振り返る。
今の生活は、コンビニの期限切れの弁当を食糧に、昼は港のターミナルなどで寒さをしのぐ。夜は人けがなくなるアーケード街へ。「立ち去る前に使った場所をきれいにしておくことが礼儀だ」
酔った若者が千鳥足で通り掛かった。「あんなになるくらい飲んでみたいな」と男性は笑った。話すうちに午前0時を過ぎ、新年を迎えた。人通りも少なくなり、彼は“ベッド”に横になった。
過疎と集中。チャンスがある者と無い者。持てる者と持たざる者。年末、年始の華やかな時間にこそ「格差社会」を実感する。再チャレンジ政策も必要だが、一度もチャンスがない人たちがいることを忘れてはならない。