はてなキーワード: アムリタとは
既存の野崎まど読者のアマゾンレビューなんかで星三つという評価が多いのはどんでん返し感が弱い、特にエピローグを素直に読んだ場合の「さらに上位の世界がありました」ってのが弱いってのがあるんだと思う。
エピローグの方はカタガキナオミの世界に狐面が登場した時点で大体読めるし、上位世界の存在を示唆する程度ならエンタメ寄りのメンインブラックの1,2ですらやってるわけであまりにも野崎まどらしくない。
更に言えばそのエピローグがどうにも浮いてる、素直に読むと蛇足なんだな。だがこれはおそらく蛇足であることそのものに意味がある。
このエピローグが蛇足にならないようにするならどうすれば良いだろうと思ったら、これナオミが主人公のお話だったらバチッとはまるのだよな。
ナオミが高校に入るところから直実に消されるまでのお話であればあのエピローグは美しいんだ。
そしてそのお話の材料はこの本の中に全てある。ダイブするまでのナオミの物語は直実の物語とほぼ同じなんだから
直実の高校生活の部分からナオミとのやり取りを削除して繋げ、アルタラプロジェクトに入り、ダイブに成功したところからまた本編の話を続ければナオミの物語になる。
この作品は未来の自分から力を与えられて瑠璃を救おうとする男が主人公なんじゃなくて。
高校に入り、瑠璃に惹かれ、瑠璃を失い、人生の全てを捧げプロジェクトに食い込み、自らを電気で焼き、片足の自由を失い、それでもダイブに成功し
世界一つを犠牲にして瑠璃を救い、拒絶され、もう一人の自分こそが瑠璃にふさわしいと、自分こそがエキストラであったと受け入れ
瑠璃を直美に託して瑠璃を守るために自分の消去を選んだ、10年を掛けて瑠璃を守るために自分の身をささげるという事をやり遂げた男の物語でもあるんだ。
もう一人の主人公はこの男なんだ。そしてエピローグはこの男に与えられる救済なんだ。
この直接的に描かれていない物語を読者の脳に構築するための一見蛇足に思えるエピローグなんだと思う。
少なくともこの作品がナオミにかなりの比重を置いたものだというところだけは自信がある。
「たとえ世界が壊れても、もう一度、君に会いたい」このキャッチコピーは発言者がナオミでも直実でも成立するし。
予告の最後に出てくる近づいていき交差し、そして離れていく飛行機雲はナオミと直実、又はナオミと瑠璃でしか意味を持たない、直実と瑠璃じゃない。
さて、ある作品をカットアップして再構成することで別の性質を持つ映画と言えば野崎まど読者には心当たりがあるはずだ。
[映]アムリタ。
まあ流石にSCP財団のミーム災害じみた効果は発揮しないけれども。