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2022-01-15

奈良自動車整備工場デジタルプラットフォーマーへと舵を切る─ファーストグループの挑戦


2022年1月14日(金)奥平 等(ITジャーナリスト/コンセプト・プランナー

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地方発中小企業からグローバルなデジタルプラットフォーマーへ──決して荒唐無稽な話ではない。すでにシリーズAによる資金調達を果たし、上場へ向けて確かな歩みを続ける企業がある。1960年奈良県天理市自動車整備工場として創業したファーストグループである現在天理市東京都渋谷区本社を置き、自らの事業を「グローバルカーライフテックサービス」と位置づけ、全国の自動車整備工場SaaSマーケティングサービス提供している。本稿では、地方自動車整備工場デジタルトランスフォーメーション(DX)に挑む同社のビジョンと打ち手に迫ってみたい。

オートアフターマーケット市場ポテンシャルを信じた

 自動車販売の「オートアフターマーケット」と聞くと、脇役的なイメージがあるかもしれない。だが実のところ、各種の市場調査データからファーストグループが算出した市場規模は下記のとおりで、自動車整備市場だけで実に5兆5000億円に達している(図1)。また、国内外300社以上が出展する国際展示会が開催されるなど、グローバルでも確固たる市場が築かれている。

図1:オートアフターマーケット市場規模(出典:ファーストグループ自動車年鑑2019、自販連、自軽協統計資料平成30年整備振興会整備白書を基に調査

 一方、矢野経済研究所2021年3月に発表した調査によると、2020年国内自動車アフターマーケット市場規模は19兆14億円。ここには「中古車(小売、輸出、買い取り、オークション)」「自動車賃貸リースレンタカーカーシェアリング)」「部品・用品(カー用品、補修部品リサイクル部品)」「整備(整備、整備機器)」「その他関連サービス自動車保険ロードサービス)」の5事業が含まれている。

 前年比1.8%減と2年連続で微減しているものの、2019年10月消費税増税2020年2月顕在化した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をもろに受けて新車販売台数が前年比11.5%減(日本自動車販売協会連合会の発表)と大幅に落ち込んだことと比較すると、マイナス幅は小さいと言える。

 ファーストグループ 代表取締役社長の藤堂高明氏(写真1)は、「実はオートアフターマーケット、とりわけ自動車整備市場リーマンショックギリシャショック、そして今回のコロナ禍においても大きな影響を受けなかった不況に強い産業なのです」として、その理由を次のように話す。

写真2:ファーストグループ 代表取締役社長の藤堂高明氏(出典:ファーストグループ

 「理由は大きく3つあります。最も大きいのが、道路運送車両法に定められた車検自動車継続検査)があること。自動車の所有者は半ば強制的に整備工場に足を運ぶこととなります。次に、定期点検オイル交換などに代表される定期接触必須ビジネスであること。そして、サービス供給側と利用側の情報格差が大きく、供給側主導のビジネスとなっていることです」

 こうして、オートアフターマーケット不況に強いビジネスではあるが、年々飛躍的な成長を遂げているかというと、残念ながらそうではない。その背景に、従業員が少ない小規模な工場地方分散しているというこの市場形態がある。ディーラー系を除いた小規模な自動車整備工場は全国に約5万7000も事業所があるが、メカニックエンジニア経営後継者の不足などに悩まされ、ここ数年は減少傾向に転じているという。

 また、ガソリンスタンド付加価値提供を目指したサービスステーションにシフトしていること、整備入庫を包含したビジネスモデルへの再編を狙うメーカーディーラーをはじめとする異業種の囲い込みなど、厳しい外的環境にもさらされている。

 それでも、藤堂氏はこの市場ポテンシャルに注目する。「全国に約5万7000事業所。この数って、実はコンビニエンスストアの出店数に匹敵します。さらに、ディーラー系を含めると9万事業所を超えるわけですからコンビニが出店のために費やしてきたコストや労力を考えれば、こんな魅力的な業界は他にないのではないでしょうか」(藤堂氏)

 「同時に、これは私の試算にすぎませんが、日本8000万台あると言われている自動車登録台数からの換算で、その資産価値総額は約200兆円に上ります。商圏を2~5kmに絞り、1事業所あたり1000人の顧客がいたとして、1台あたり100万円としても10億円規模の資産を預かるビジネスとなるわけです。自社の課題を克服して、ラストワンマイルの発想で、いわゆる自動車整備工場から脱却して、1人ひとりのカーライフを支えるビジネスパートナーとしての地位を担えれば、大きな飛躍があると確信しています」(同氏)

バリューチェーンの創出に注力し、年商を30倍に

 ファーストグループが掲げるミッションは「カーライフ革命で人々に喜びと感動を」、企業ビジョンは「GLOBAL No.1 CAR LIFE TECH COMPANY─世界の人々から最も必要とされるカーライフカンパニーへ─」である

 この壮大なミッションビジョンに辿り着くまでに、ファーストグループは実際にどのような手法プロセスで自社の変革を進めてきたのであろうか。藤堂氏は、同社が決して特別存在ではなかったことを物語エピソードとして、「父から引き継いだ段階で毎年7000万円の赤字を垂れ流していた企業だった」と振り返る。その歴史と変遷をたどってみよう。

 2007年、先代社長他界きっかけにMBO(Management Buyout)により事業を取得、2代目を継承した藤堂氏は先頭に立ってマーケティング指向経営管理手法企業再生に着手、翌年には黒字転換を達成する。成長への第1ステップは、自らが培ったその再生モデル武器に、「同様の課題に直面している全国の自動車整備工場を元気にする」(同氏)ことにあった。

 それは、いわゆる買収・再生モデルの横展開だが、実際にはそこにも紆余曲折があり、2つの段階を踏まえて、進化と深化を図っていった。①資産負債のすべてを原則譲り受けるM&Aモデル、②事業のみ譲渡を受け、土地建物賃貸借して継続させる賃貸モデル。この2段階のプロセス実践した14年間で、ファーストグループ年商1.5億円を約30倍の50億円に拡大したという。

 具体的な打ち手はバリューチェーンの創出だ。ファーストグループが特化しようとするカーライフにまつわるマーケットは、①車検をはじめとするメンテナンス領域、②更新が見込まれ保険領域、③カーライフのサイクルを最適化する車両販売領域、④万が一の事故に備えた各種サービス領域に大別される(図2)。

図2:カーライフマーケットにおけるバリューチェーン(出典:ファーストグループ

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 しかしながら、これまでの自動車整備工場はその一端となるメンテナンス領域のみで、事業の維持に努めてきた。つまり顧客とのライフタイムバリューを最大化するチャンスを逃してきたのである。そこで、藤堂氏は、同社が買収・再生を手がけてきた自動車整備工場に対し、徹底的にバリューチェーンの創出に注力した。

 藤堂氏は、カーライフにまつわるサービスが多岐にわたることを、同氏のシミュレーションを示して力説する。「18歳で初めて免許を取得した若者が生涯にわたってクルマにかける費用は最低でも1600万円。高級車に乗られる方はその何倍ものコストを費やすことになるはずです」(同氏)

 藤堂氏によると、これまでの自動車整備工場車検や修理に依存した事業形態から抜け出すことができず、カーライフの起点とも言えるクルマ販売にはあまり積極的ではなく、むしろ苦手としていました。

 「ところが、その壁をクリアさえすれば、バリューチェーン簡単に創出できるのです。車両販売を手がけて成果を上げれば、自らのメンテナンス領域仕事も増えて安定します。さら販売時に必要となる保険やさまざまなサービス包含して提供する窓口にもなれば、さまざまな異業種の人たちとの接点が生まれエコシステム形成されます。つまりバリューチェーンによって、LTVの最大化と事業ポートフォリオ変革を同時に成し遂げられるというわけです」(藤堂氏)

 ファーストグループ自身が先陣を切って、このバリューチェーン創造エコシステム構築に取り組んだ。すると、瞬く間に車検の年間受注件数が急増し、奈良県内では断トツの年間1万件を超えるまでになったという。メーカーディーラーが何十年もかかって達成した件数を、ごく短期間で凌駕するまでになったのだ。年商は1.5億円から現在では実に30倍の50億円に達している。

2021-01-22

脚注

脚注

[1-1]『自工会 豊田会長が全面EV移行に懸念 小泉環境大臣「脱炭素への考えは同じ」(2020年12月18日)』(テレ東NEWS)

動画4:04〜からトヨタ社長発言より

[1-2]『火力発電効率の国際比較』(TEPCO)

[1-3]『【解説動画自動車エンジン効率競争!』( Xmoa_channel)

動画1:30〜より

[1-4]『自動車エンジン効率45%超えへ、各社の激しい競争動画解説バーチャル記者黒須もあ(β)』(日経クロステック編集部)

「熱効率向上争いにマツダ日産が参戦!」の項目より

[1-5]『乗用車エンジンの熱効率50%超を達成』(国立研究開発法人 科学技術振興機構)

[1-6]『送配電ロス率』(TEPCO

グラフによると、2019年の送電ロス率は4.3%である

[2-1]『マンションでも電気自動車に乗れる!「EVPHEV充電サポートサービス提供開始』(中央電力)

[2-2]『自工会 豊田会長が全面EV移行に懸念 小泉環境大臣「脱炭素への考えは同じ」(2020年12月18日)』(テレ東NEWS)

動画4:48〜からトヨタ社長発言より

[3-1]『乗用車ブランド通称名順位』(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)

[5-1]『シリーズ - EV(電気自動車)を巡る自動車業界の動向- EV自動車部品サプライヤーに与える影響」ぶぎん地域経済研究所調査事業部 次長主任研究員藤坂 浩司- 全体版 -』(藤坂 浩司)

[6-1]『リチウムを巡る各国の戦略が、電気自動車未来を左右する』(Amit Katwara著 Mitsuko Saeki訳)

五行目より

[6-1]『電気自動車販売が急増しても、このままではバッテリーの原料不足がやってくる』(Nicole Kobie著 Mitsuko Saeki訳)

コバルトの産地は1箇所に集中」の項目より

[7-1]『日本エネルギーの使われ方を調べよう』(東京ガス)

2018-04-19

セダン存在意義

今後のセダン存在意義について考えてみたいと思います

日本自動車販売協会連合会(以下、自販連)は、月別・年別の新車販売台数統計として発表しています。自販連は車種を項目としては販売台数は発表していないため、各ブランド車(トヨタクラウンカローラSUBARUレガシィ等)をセダンとし、2015~2017年販売台数を見てみました。トヨタクラウンカローラ販売台数が減少しており、プリウス等は2016年は上昇していますが、2017年は一転減少しています販売台数トップ50のブランドしか見れないのですが、新聞報道等を見ていても全体として減少している傾向にあるようです。

セダンは、今後の社会においても必要なのでしょうか。過去セダン型の車が新車販売台数ランキングで席巻していた時代もあると思います。それはおそらく、自動車用途が、家族の外出くらいにしか考えられておらず、家族形態核家族ほとんどだった時代でしょう。ただ現在は、サーフィンゴルフ等のスポーツを楽しんだり、遠出せずに近場のスーパーに行くため等、人々の自動車用途家族の在り方が多様になったことで、セダン型の自動車がその目的に適わなくなってきたのでしょう。

最近では、都心に住む若い人は車自体に興味を持たなくなりました。都心に住まなくても交通網が発達しているし、シェアリングカーといったサービスも増えています普通サラリーマンであれば週末にしか乗る必要がないので、レンタカーを借りた方が、自動車重量税といった税金を払う必要がないので、昔からその方が合理的だったかもしれません。それでも昔の人が車を求めたのは、それが一種ステータスであったからですよね。ただ、今の若い人は車に対して社会的なステータスは感じていません。カーセンサーといった中古車取引サービス成熟しており、車自体の値段も多様化しているので、車を持っているから「裕福だ」、「すごい」という発想には至らないですよね。

それでは、今後セダンはどのように生き延びていくべきでしょうか。私は、自動車メーカーセダン社会ステータスを表すシンボルブランディングすべきだと思っています。昔は、ポルシェフェラーリといったメーカーの車を持っている事自体ステータスでした。ただ、今度は車型だけでその所有者のステータスを表すようにしていかないといけないと思いますスポーツカーのように走りが好きでもない、4人も車に乗せる必要がない、でもコンパクトカーは嫌だという層にアプローチしていく必要があるのではないでしょうか。そうする事で、セダン寿命を延ばしてく事ができると思います

多くの公用車は未だにセダンが用いられています英国王室などを見ていても、彼らが乗っている車はセダンです。セダンが、社会的に上位のステータスを表すシンボルとしての基礎は出来上がっているので、あとはどのように強化するかが大事になります

今後の国産自動車メーカーがどのようにセダンポジショニングを取っていくか非常に楽しみです。

 
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