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2021-03-22

赤い部屋

異常な興奮を求めて集った、七人のしかつめらしい男が(私もその中の一人だった)態々わざわざ其為そのためにしつらえた「赤い部屋」の、緋色ひいろの天鵞絨びろうどで張った深い肘掛椅子に凭もたれ込んで、今晩の話手が何事か怪異物語を話し出すのを、今か今かと待構まちかまえていた。

 七人の真中には、これも緋色の天鵞絨で覆おおわれた一つの大きな円卓子まるテーブルの上に、古風な彫刻のある燭台しょくだいにさされた、三挺さんちょうの太い蝋燭ろうそくがユラユラと幽かすかに揺れながら燃えていた。

 部屋の四周には、窓や入口のドアさえ残さないで、天井から床まで、真紅まっかな重々しい垂絹たれぎぬが豊かな襞ひだを作って懸けられていた。ロマンチック蝋燭の光が、その静脈から流れ出したばかりの血の様にも、ドス黒い色をした垂絹の表に、我々七人の異様に大きな影法師かげぼうしを投げていた。そして、その影法師は、蝋燭の焔につれて、幾つかの巨大な昆虫でもあるかの様に、垂絹の襞の曲線の上を、伸びたり縮んだりしながら這い歩いていた。

 いつもながらその部屋は、私を、丁度とほうもなく大きな生物心臓の中に坐ってでもいる様な気持にした。私にはその心臓が、大きさに相応したのろさを以もって、ドキンドキンと脈うつ音さえ感じられる様に思えた。

 誰も物を云わなかった。私は蝋燭をすかして、向側に腰掛け人達の赤黒く見える影の多い顔を、何ということなしに見つめていた。それらの顔は、不思議にも、お能の面の様に無表情に微動さえしないかと思われた。

 やがて、今晩の話手と定められた新入会員のT氏は、腰掛けたままで、じっと蝋燭の火を見つめながら、次の様に話し始めた。私は、陰影の加減で骸骨の様に見える彼の顎が、物を云う度にガクガクと物淋しく合わさる様子を、奇怪なからくり仕掛けの生人形でも見る様な気持で眺めていた。

 私は、自分では確かに正気の積りでいますし、人も亦またその様に取扱って呉くれていますけれど、真実まったく正気なのかどうか分りません。狂人かも知れません。それ程でないとしても、何かの精神病者という様なものかも知れません。兎とに角かく、私という人間は、不思議な程この世の中がつまらないのです。生きているという事が、もうもう退屈で退屈で仕様がないのです。

 初めの間うちは、でも、人並みに色々の道楽に耽ふけった時代もありましたけれど、それが何一つ私の生れつきの退屈を慰なぐさめては呉れないで、却かえって、もうこれで世の中の面白いことというものはお仕舞なのか、なあんだつまらないという失望ばかりが残るのでした。で、段々、私は何かをやるのが臆劫おっくうになって来ました。例えば、これこれの遊びは面白い、きっとお前を有頂天にして呉れるだろうという様な話を聞かされますと、おお、そんなものがあったのか、では早速やって見ようと乗気になる代りに、まず頭の中でその面白さを色々と想像して見るのです。そして、さんざん想像を廻めぐらした結果は、いつも「なあに大したことはない」とみくびって了しまうのです。

 そんな風で、一時私は文字通り何もしないで、ただ飯を食ったり、起きたり、寝たりするばかりの日を暮していました。そして、頭の中丈だけで色々な空想を廻らしては、これもつまらない、あれも退屈だと、片端かたはしからけなしつけながら、死ぬよりも辛い、それでいて人目には此上このうえもなく安易生活を送っていました。

 これが、私がその日その日のパンに追われる様な境遇だったら、まだよかったのでしょう。仮令たとえ強いられた労働しろ兎に角何かすることがあれば幸福です。それとも又、私が飛切りの大金持ででもあったら、もっとよかったかも知れません。私はきっと、その大金の力で、歴史上の暴君達がやった様なすばらしい贅沢ぜいたくや、血腥ちなまぐさい遊戯や、その他様々の楽しみに耽ふけることが出来たでありましょうが、勿論それもかなわぬ願いだとしますと、私はもう、あのお伽噺とぎばなしにある物臭太郎の様に、一層死んで了った方がましな程、淋しくものういその日その日を、ただじっとして暮す他はないのでした。

 こんな風に申上げますと、皆さんはきっと「そうだろう、そうだろう、併し世の中の事柄に退屈し切っている点では我々だって決してお前にひけを取りはしないのだ。だからこんなクラブを作って何とかして異常な興奮を求めようとしているのではないか。お前もよくよく退屈なればこそ、今、我々の仲間へ入って来たのであろう。それはもう、お前の退屈していることは、今更ら聞かなくてもよく分っているのだ」とおっしゃるに相違ありません。ほんとうにそうです。私は何もくどくどと退屈の説明をする必要はないのでした。そして、あなた方が、そんな風に退屈がどんなものだかをよく知っていらっしゃると思えばこそ、私は今夜この席に列して、私の変てこな身の上話をお話しようと決心したのでした。

 私はこの階下のレストランへはしょっちゅう出入でいりしていまして、自然ここにいらっしゃる御主人とも御心安く、大分以前からこの「赤い部屋」の会のことを聞知っていたばかりでなく、一再いっさいならず入会することを勧められてさえいました。それにも拘かかわらず、そんな話には一も二もなく飛びつき相そうな退屈屋の私が、今日まで入会しなかったのは、私が、失礼な申分かも知れませんけれど、皆さんなどとは比べものにならぬ程退屈し切っていたからです。退屈し過ぎていたからです。

 犯罪探偵遊戯ですか、降霊術こうれいじゅつ其他そのたの心霊上の様々の実験ですか、Obscene Picture の活動写真や実演やその他のセンジュアル遊戯ですか、刑務所や、瘋癲病院や、解剖学教室などの参観ですか、まだそういうものに幾らかでも興味を持ち得うるあなた方は幸福です。私は、皆さんが死刑執行のすき見を企てていられると聞いた時でさえ、少しも驚きはしませんでした。といいますのは、私は御主からそのお話のあった頃には、もうそういうありふれた刺戟しげきには飽き飽きしていたばかりでなく、ある世にもすばらしい遊戯、といっては少し空恐しい気がしますけれど、私にとっては遊戯といってもよい一つの事柄発見して、その楽しみに夢中になっていたからです。

 その遊戯というのは、突然申上げますと、皆さんはびっくりなさるかも知れませんが……、人殺しなんです。ほんとうの殺人なんです。しかも、私はその遊戯発見してから今日までに百人に近い男や女や子供の命を、ただ退屈をまぎらす目的の為ばかりに、奪って来たのです。あなた方は、では、私が今その恐ろしい罪悪を悔悟かいごして、懺悔ざんげ話をしようとしているかと早合点なさるかも知れませんが、ところが、決してそうではないのです。私は少しも悔悟なぞしてはいません。犯した罪を恐れてもいません。それどころか、ああ何ということでしょう。私は近頃になってその人殺しという血腥い刺戟にすら、もう飽きあきして了ったのです。そして、今度は他人ではなくて自分自身を殺す様な事柄に、あの阿片アヘン喫煙に耽り始めたのです。流石さすがにこれ丈けは、そんな私にも命は惜しかったと見えまして、我慢我慢をして来たのですけれど、人殺しさえあきはてては、もう自殺でも目論もくろむ外には、刺戟の求め様がないではありませんか。私はやがて程なく、阿片の毒の為に命をとられて了うでしょう。そう思いますと、せめて筋路の通った話の出来る間に、私は誰れかに私のやって来た事を打開けて置き度いのです。それには、この「赤い部屋」の方々が一番ふさわしくはないでしょうか。

 そういう訳で、私は実は皆さんのお仲間入りがし度い為ではなくて、ただ私のこの変な身の上話を聞いて貰い度いばかりに、会員の一人に加えて頂いたのです。そして、幸いにも新入会の者は必ず最初の晩に、何か会の主旨に副そう様なお話をしなければならぬ定きめになっていましたのでこうして今晩その私の望みを果す機会をとらえることが出来た次第なのです。

 それは今からざっと三年計ばかり以前のことでした。その頃は今も申上げました様に、あらゆる刺戟に飽きはてて何の生甲斐もなく、丁度一匹の退屈という名前を持った動物ででもある様に、ノラリクラリと日を暮していたのですが、その年の春、といってもまだ寒い時分でしたから多分二月の終りか三月の始め頃だったのでしょう、ある夜、私は一つの妙な出来事にぶつかったのです。私が百人もの命をとる様になったのは、実にその晩の出来事動機を為なしたのでした。

 どこかで夜更しをした私は、もう一時頃でしたろうか。少し酔っぱらっていたと思います寒い夜なのにブラブラと俥くるまにも乗らないで家路を辿っていました。もう一つ横町を曲ると一町ばかりで私の家だという、その横町何気なくヒョイと曲りますと、出会であいがしらに一人の男が、何か狼狽している様子で慌ててこちらへやって来るのにバッタリぶつかりました。私も驚きましたが男は一層驚いたと見えて暫く黙って衝つっ立っていましたが、おぼろげな街燈の光で私の姿を認めるといきなり「この辺に医者はないか」と尋ねるではありませんか。よく訊きいて見ますと、その男自動車運転手で、今そこで一人の老人を(こんな夜中に一人でうろついていた所を見ると多分浮浪の徒だったのでしょう)轢倒ひきたおして大怪我をさせたというのです。なる程見れば、すぐ二三間向うに一台の自動車が停っていて、その側そばに人らしいものが倒れてウーウーと幽かすかにうめいています交番といっても大分遠方ですし、それに負傷者の苦しみがひどいので、運転手は何はさて置き先ず医者を探そうとしたのに相違ありません。

 私はその辺の地理は、自宅の近所のことですから医院所在などもよく弁わきまえていましたので早速こう教えてやりました。

「ここを左の方へ二町ばかり行くと左側に赤い軒燈の点ついた家がある。M医院というのだ。そこへ行って叩き起したらいいだろう」

 すると運転手はすぐ様助手に手伝わせて、負傷者をそのM医院の方へ運んで行きました。私は彼等の後ろ姿が闇の中に消えるまで、それを見送っていましたが、こんなことに係合っていてもつまらないと思いましたので、やがて家に帰って、――私は独り者なんです。――婆ばあやの敷しいて呉れた床とこへ這入はいって、酔っていたからでしょう、いつになくすぐに眠入ねいって了いました。

 実際何でもない事です。若もし私がその儘ままその事件を忘れて了いさえしたら、それっ限きりの話だったのです。ところが、翌日眼を醒さました時、私は前夜の一寸ちょっとした出来事をまだ覚えていました。そしてあの怪我人は助かったかしらなどと、要もないことまで考え始めたものです。すると、私はふと変なことに気がつきました。

「ヤ、俺は大変な間違いをして了ったぞ」

 私はびっくりしました。いくら酒に酔っていたとは云いえ、決して正気を失っていた訳ではないのに、私としたことが、何と思ってあの怪我人をM医院などへ担ぎ込ませたのでしょう。

「ここを左の方へ二町ばかり行くと左側に赤い軒燈の点いた家がある……」

 というその時の言葉もすっかり覚えています。なぜその代りに、

「ここを右の方へ一町ばかり行くとK病院という外科専門の医者がある」

 と云わなかったのでしょう。私の教えたMというのは評判の藪やぶ医者で、しか外科の方は出来るかどうかさえ疑わしかった程なのです。ところがMとは反対の方角でMよりはもっと近い所に、立派に設備の整ったKという外科病院があるではありませんか。無論私はそれをよく知っていた筈はずなのです。知っていたのに何故間違ったことを教えたか。その時の不思議心理状態は、今になってもまだよく分りませんが、恐らく胴忘どうわすれとでも云うのでしょうか。

 私は少し気懸りになって来たものですから、婆やにそれとなく近所の噂などを探らせて見ますと、どうやら怪我人はM医院の診察室で死んだ鹽梅あんばいなのです。どこの医者でもそんな怪我人なんか担ぎ込まれるのは厭いやがるものです。まして夜半の一時というのですから、無理もありませんがM医院はいくら戸を叩いても、何のかんのと云って却々なかなか開けて呉れなかったらしいのです。さんざん暇ひまどらせた挙句やっと怪我人を担ぎ込んだ時分には、もう余程手遅れになっていたに相違ありません。でも、その時若しM医院の主が「私は専門医でないから、近所のK病院の方へつれて行け」とでも、指図をしたなら、或あるいは怪我人は助っていたのかも知れませんが、何という無茶なことでしょう。彼は自からその難しい患者を処理しようとしたらしいのです。そしてしくじったのです、何んでも噂によりますとM氏はうろたえて了って、不当に長い間怪我人をいじくりまわしていたとかいうことです。

 私はそれを聞いて、何だかこう変な気持になって了いました。

 この場合可哀相な老人を殺したものは果して何人なんぴとでしょうか。自動車運転手とM医師ともに、夫々それぞれ責任のあることは云うまでもありません。そしてそこに法律上処罰があるとすれば、それは恐らく運転手の過失に対して行われるのでしょうが事実上最も重大な責任者はこの私だったのではありますいか。若しその際私がM医院でなくてK病院を教えてやったとすれば、少しのへまもなく怪我人は助かったのかも知れないのです。運転手は単に怪我をさせたばかりです。殺した訳ではないのです。M医師は医術上の技倆が劣っていた為にしくじったのですから、これもあながちとがめる所はありません。よし又彼に責を負うべき点があったとしても、その元はと云えば私が不適当なM医院を教えたのが悪いのです。つまり、その時の私の指図次第によって、老人を生かすことも殺すことも出来た訳なのです。それは怪我をさせたのは如何にも運転手でしょう。けれど殺したのはこの私だったのではありますいか

 これは私の指図が全く偶然の過失だったと考えた場合ですが、若しそれが過失ではなくて、その老人を殺してやろうという私の故意から出たものだったとしたら、一体どういうことになるのでしょう。いうまでもありません。私は事実上殺人罪を犯したものではありませんか。併しか法律は仮令運転手を罰することはあっても、事実上殺人である私というものに対しては、恐らく疑いをかけさえしないでしょう。なぜといって、私と死んだ老人とはまるきり関係のない事がよく分っているのですから。そして仮令疑いをかけられたとしても、私はただ外科医院のあることなど忘れていたと答えさえすればよいではありませんか。それは全然心の中の問題なのです。

 皆さん。皆さんは嘗かつてこういう殺人法について考えられたことがおありでしょうか。私はこの自動車事件で始めてそこへ気がついたのですが、考えて見ますと、この世の中は何という険難至極けんのんしごくな場所なのでしょう。いつ私の様な男が、何の理由もなく故意に間違った医者を教えたりして、そうでなければ取止めることが出来た命を、不当に失って了う様な目に合うか分ったものではないのです。

 これはその後私が実際やって見て成功したことなのですが、田舎のお婆さんが電車線路を横切ろうと、まさに線路に片足をかけた時に、無論そこには電車ばかりでなく自動車自転車や馬車や人力車などが織る様に行違っているのですから、そのお婆さんの頭は十分混乱しているに相違ありません。その片足をかけた刹那に、急行電車か何かが疾風しっぷうの様にやって来てお婆さんから二三間の所まで迫ったと仮定します。その際、お婆さんがそれに気附かないでそのまま線路を横切って了えば何のことはないのですが、誰かが大きな声で「お婆さん危いッ」と怒鳴りでもしようものなら、忽たちまち慌てて了って、そのままつき切ろうか、一度後へ引返そうかと、暫しばらくまごつくに相違ありません。そして、若しその電車が、余り間近い為に急停車も出来なかったとしますと、「お婆さん危いッ」というたった一言が、そのお婆さんに大怪我をさせ、悪くすれば命までも取って了わないとは限りません。先きも申上げました通り、私はある時この方法で一人の田舎者をまんまと殺して了ったことがありますよ。

(T氏はここで一寸言葉を切って、気味悪く笑った)

 この場合危いッ」と声をかけた私は明かに殺人者です。併し誰が私の殺意を疑いましょう。何の恨うらみもない見ず知らずの人間を、ただ殺人の興味の為ばかりに、殺そうとしている男があろうなどと想像する人がありましょうか。それに「危いッ」という注意の言葉は、どんな風に解釈して見たって、好意から出たものしか考えられないのです。表面上では、死者から感謝されこそすれ決して恨まれ理由がないのです。皆さん、何と安全至極な殺人法ではありませんか。

 世の中の人は、悪事は必ず法律に触れ相当の処罰を受けるものだと信じて、愚にも安心し切っています。誰にしたって法律人殺しを見逃そうなどとは想像もしないのです。ところがどうでしょう。今申上げました二つの実例から類推出来る様な少しも法律に触れる気遣いのない殺人法が考えて見ればいくらもあるではありませんか。私はこの事に気附いた時、世の中というものの恐ろしさに戦慄するよりも、そういう罪悪の余地を残して置いて呉れた造物主の余裕を此上もなく愉快に思いました。ほんとうに私はこの発見に狂喜しました。何とすばらしいではありませんか。この方法によりさえすれば、大正の聖代せいだいにこの私丈けは、謂わば斬捨て御免ごめんも同様なのです。

 そこで私はこの種の人殺しによって、あの死に相な退屈をまぎらすことを思いつきました。絶対法律に触れない人殺し、どんなシャーロック・ホームズだって見破ることの出来ない人殺し、ああ何という申分のない眠け醒しでしょう。以来私は三年の間というもの、人を殺す楽しみに耽って、いつの間にかさしもの退屈をすっかり忘れはてていました。皆さん笑ってはいけません。私は戦国時代の豪傑の様に、あの百人斬りを、無論文字通り斬る訳ではありませんけれど、百人の命をとるまでは決して中途でこの殺人を止めないことを、私自身に誓ったのです。

 今から三月ばかり前です、私は丁度九十九人だけ済ませました。そして、あと一人になった時先にも申上げました通り私はその人殺しにも、もう飽きあきしてしまったのですが、それは兎も角、ではその九十九人をどんな風にして殺したか。勿論九十九人のどの人にも少しだって恨みがあった訳ではなく、ただ人知れぬ方法とその結果に興味を持ってやった仕事ですから、私は一度も同じやり方を繰返す様なことはしませんでした。一人殺したあとでは、今度はどんな新工夫でやっつけようかと、それを考えるのが又一つの楽しみだったのです。

 併し、この席で、私のやった九十九の異った殺人法を悉ことごとく御話する暇もありませんし、それに、今夜私がここへ参りましたのは、そんな個々の殺人方法告白する為ではなくて、そうした極悪非道の罪悪を犯してまで、退屈を免れ様とした、そして又、遂にはその罪悪にすら飽きはてて、今度はこの私自身を亡ぼそうとしている、世の常ならぬ私の心持をお話して皆さんの御判断を仰ぎたい為なのですから、その殺人方以については、ほんの二三の実例を申上げるに止めて置き度いと存じます

 この方法発見して間もなくのことでしたが、こんなこともありました。私の近所に一人の按摩あんまがいまして、それが不具などによくあるひどい強情者でした。他人が深切しんせつから色々注意などしてやりますと、却ってそれを逆にとって、目が見えないと思って人を馬鹿にするなそれ位のことはちゃんと俺にだって分っているわいという調子で、必ず相手言葉にさからたことをやるのです。どうして並み並みの強情さではないのです。

 ある日のことでした。私がある大通りを歩いていますと、向うからその強情者の按摩がやって来るのに出逢いました。彼は生意気にも、杖つえを肩に担いで鼻唄を歌いながらヒョッコリヒョッコリと歩いています。丁度その町には昨日から下水工事が始まっていて、往来の片側には深い穴が掘ってありましたが、彼は盲人のことで片側往来止めの立札など見えませんから、何の気もつかず、その穴のすぐ側を呑気そうに歩いているのです。

 それを見ますと、私はふと一つの妙案を思いつきました。そこで、

「やあN君」と按摩の名を呼びかけ、(よく療治を頼んでお互に知り合っていたのです)

「ソラ危いぞ、左へ寄った、左へ寄った」

 と怒鳴りました。それを態わざと少し冗談らしい調子でやったのです。というのは、こういえば、彼は日頃の性質から、きっとからかわれたのだと邪推して、左へはよらないで態と右へ寄るに相違ないと考えたからです。案あんの定じょう彼は、

「エヘヘヘ……。御冗談ばっかり」

 などと声色こわいろめいた口返答をしながら、矢庭やにわに反対の右の方へ二足三足寄ったものですから、忽ち下水工事の穴の中へ片足を踏み込んで、アッという間に一丈もあるその底へと落ち込んで了いました。私はさも驚いた風を装うて穴の縁へ駈けより、

「うまく行ったかしら」と覗いて見ましたが彼はうち所でも悪かったのか、穴の底にぐったりと横よこたわって、穴のまわりに突出ている鋭い石でついたのでしょう。一分刈りの頭に、赤黒い血がタラタラと流れているのです。それから、舌でも噛切ったと見えて、口や鼻からも同じ様に出血しています。顔色はもう蒼白で、唸り声を出す元気さえありません。

 こうして、この按摩は、でもそれから一週間ばかりは虫の息で生きていましたが、遂に絶命して了ったのです。私の計画は見事に成功しました。誰が私を疑いましょう。私はこの按摩を日頃贔屓ひいきにしてよく呼んでいた位で、決して殺人動機になる様な恨みがあった訳ではなく、それに、表面上は右に陥穽おとしあなのあるのを避けさせようとして、「左へよれ、左へよれ」と教えてやった訳なのですから、私の好意を認める人はあっても、その親切らしい言葉の裏に恐るべき殺意がこめられていたと想像する人があろう筈はないのです。

 ああ、何という恐しくも楽しい遊戯だったのでしょう。巧妙なトリックを考え出した時の、恐らく芸術家のそれにも匹敵する、歓喜、そのトリックを実行する時のワクワクした緊張、そして、目的を果した時の云い知れぬ満足、それに又、私の犠牲になった男や女が、殺人者が目の前にいるとも知らず血みどろになって狂い廻る断末魔だんまつまの光景ありさま、最初の間、それらが、どんなにまあ私を有頂天にして呉れたことでしょう。

 ある時はこんな事もありました。それは夏のどんよりと曇った日のことでしたが、私はある郊外文化村とでもいうのでしょう。十軒余りの西洋館がまばらに立並んだ所を歩いていました。そして、丁度その中でも一番立派なコンクリート造りの西洋館の裏手を通りかかった時です。ふと妙なものが私の目に止りました。といいますのは、その時私の鼻先をかすめて勢よく飛んで行った一匹の雀が、その家の屋根から地面へ引張ってあった太い針金に一寸とまると、いきなりはね返された様に下へ落ちて来て、そのまま死んで了ったのです。

 変なこともあるものだと思ってよく見ますと、その針金というのは、西洋館の尖った Permalink | 記事への反応(0) | 22:33

2020-08-26

あるジャンルにハマった。

巷に蔓延る退行ネタ

ツイートが目に入った瞬間うわああああああああああ気持ち悪い!!!!!となった。こみ上げてくる生理的嫌悪感

右を見ても左を見てもバブちゃんバブちゃん赤子幼児育児育児育児

見ていてドン引きしてしまった。

勿論、作品の何処にも退行要素はない。

他にも普段喧嘩して血腥いCPの筈が家庭内ほのぼのパロにされたり幼児ぷにぷに輪郭お目々まん丸キャラ(最悪の場合涎すら垂れてる)と意味からないポジティブ思想の受にされたりおかまいなくやりたい放題である

そもそも、会話が全然成り立っていない。

二重でゲロを吐きそうになる。

それを、愛の一種として刷り込まれる事への嫌悪感

あーーーーきもいきもいきもい

そんなド天然要素、どこに?

男には生理出産もない。腐った女のスカポンタン思想を応用しないで欲しい。

育児あるあるを男に代弁させるのもやめてくれ。

経産婦は知能指数が下がりまくっているんだろうか?パステル調の絵柄も気に食わない。

2020-07-26

受をアホ化させるな

これは二次創作の話である

巷に蔓延る退行ネタ。右を見ても左を見てもバブちゃんバブちゃん赤子幼児育児育児育児

勿論、作品の何処にも退行要素はない。

百歩譲って退行ネタはまだ良い。普段喧嘩して血腥いCPの筈が家庭内ほのぼのパロにされている。

仲良くお手手繋いで。

マリアナ海溝より深い溝が二人の間にはあったのでは?容易には乗り越えられない心理的な壁が。

それを幼児ぷにぷに輪郭お目々まん丸キャラ(最悪の場合涎すら垂れてる)と意味からないポジティブ思想の受によって解決させている。

そもそも、会話が全然成り立っていない。

それを、愛の一種として刷り込まれる事への嫌悪感

良い加減、言わせて頂きたい。

公式を見ろやどこにそんなド天然要素がある?微塵も存在せんわ。大体、何処から出て来るんだそのお花畑な発想は。男には生理出産もない。あるのはちんこだよちんこ生産しなくて良い、消費すりゃ良いんだよ。女のスカポンタン思想を応用すんな。育児あるあるを男に代弁させるな。自分創作物でやれ。人生経験値が低いからそんな事するんですか?経産婦で知能指数下がりまくってそんな事するんですか?一切その絵柄癒やされねえから本当勝手に消えてくんねえかな。

2019-11-23

2019秋アニメ半分くらい経過時点での感想

感想多く書けたのだけ。他は見てても特別強い何かを想えなかった。

原作は基本未読。

ハイスコアガールだけは最終巻一個前まで読んだはずだけどほぼ忘れてる。でも現壇蜜の夫から糞袋電話がかかってくる漫画ハイスコアガールじゃないのは覚えてる。

神田川JET GIRLS

ヴィクトリアメイド金子と『閃乱カグラ高木が『ヴァルキリードライブ』以来のタッグ。そこへハナハルキャラデに雑破脚本は無敵じゃね?となるやつ……なんだけど思ってたほどではない。

ちなみに女子高生二人チームのレースもので、個性的ライバル高校が次々出てくるというプロットは『つうかあ』がニーラーレース実在競技)で先行している。あっちは爆乳は無かったけど風呂ノルマ喧嘩ノルマがあった。なんだノルマって。

こっちは障害物ありタイマン競艇in河川ジェットレース非実在競技)で、座席の後ろに立ってる子が水鉄砲相手を撃つという……この水鉄砲係ことシューター競技上の重要度が分かりにくい。

というか発売予定のゲームが脱衣ゲーなんだろ?シュータープレイヤー能動的に相手キャラを脱衣させるためにいるわけだろ?操作できないアニメでは役割上浮くのは当然のことじゃねえか。つまりもっと撃って当てて脱がせろ!このままじゃミサちゃんは凛ちゃんのケツ見て興奮するだけの女になるぞ!

のっけからライバルとしてレディレディ級を出してきたのはすごい。でも汚いダンディヴァじゃないからヤらないだろうな。一応JKという設定だし。ジェットレース以外は普通現代から触手も無いだろうし。ホリプロ保護されているッッッ!(アイム保護されていないという意味ではない)

俺は脚本家が話の内容全てを決めているわけではないことはもちろん知っているが、それを踏まえた上で『マイユア』『中妹』『星架』『帰宅部』のキレッキレな雑破業を期待してしまう悪いアニオタの心をコントールできない……。

お前の挙げたタイトル何年前のやつだよ作風変わって当然だよ『BEATLESS』とか『ルパン三世』とかやってるだろ、というのは分かる。

分かるけどちょっとえっちアニメ雑破業で、そんなん期待するに決まってんだろ!

アサシンズプライド

キービジュとあらすじ斜め読みでは先生ロリコン野郎かよと思っていたが、実際は「暗殺者が標的の尊みにエモ死して推しを護るために教師になった」だった。

そこへ更に従妹があなたの妹でいたいからクソザコ無能お姉さまにわざと負けて勝たせてあげるねとズッ妹宣言。この子から完堕ちしてる……そういえば性格悪そうなCVあやねるもあっさり堕ちてたな。

ここまでくるとロリコン教師とかもうどうでもよくなってくる。なんなのお嬢様魔性の女なの母親もそうやって夫以外の男たらしこんだのマナはなくても淫売の才能は遺伝してたの?

しかしこれとお母好きがアニメ化するほどの主力って、ファンタジア文庫尖りすぎでは?冴えカノ終わったしデートアニメ控えてるとはいえ終了間近じゃん?大丈夫か?他レーベル後追いで歳の差甘々ラブコメしか相手アニオタ教師)にも手出したけど、追い付けるか?

でも俺は他にスレイヤーズ天地無用GXPと、あとタイトル思い出せないけど姫とセックスしたら自分死ぬ夢を見るファンタジー戦記と、どくさいスイッチ銃弾使ってたら片思い同級生サブヒロイン悪堕ちした四脚鷲尾メカのやつしか現行作品読んでないクソザコにわかナメクジなので、これ以上雑語りすると天狗様を召喚してしまう。ここまでにしよう。

もっと売れ線の流行ってるやつ読んでレーベル雰囲気把握し直さなきゃ……(ここに挙げたタイトルが売れず流行らずとは言っていない)。

ハイスコアガール

映画『冴えカノ』で「英梨々は絶対に倫也のヒロインになり得ない」という話を2時間見せつけられた。

帰宅し、これを見た。「日高絶対矢口ヒロインになり得ない」という話を1期OVA含め3ヶ月分見せつけられるアニメを。地獄か。

英梨々は小学校時代やらかしに加えて、神絵師になることで自らヒロインから崇拝対象クラスチェンジして本編開始前にヒロインレース降りて、その後も本編で散々フラグ破壊しまくったくせに、恵ルート確定直前な映画中盤までヒロイン気取りでいるんだから本当に頭英梨々。それはいいよ英梨々は存在が英梨々だし、作中での扱いもずっとそんなんだし、最後には自分意思で負け確定イベ発生させてえらいし、エピローグ小田和正歌わないから。

でも日高矢口小学校時代に確定させた大野ルート別離→再会イベントの途中で出てきたサブキャラに過ぎないのに、ダブルヒロインの片方であろうと必死になっているのが本当に辛い。作品の内外でヒロインかのように扱われるも、実際には大野ルート上の障害物Aでしかなく、ポジション的にはむしろモエミ先生に近いの。日高矢口に女として意識されようと頑張れば頑張るほどに、大野ルートという恋路が燃え上がってしま悲劇構造いくら迫ってもまったく意味がない。

便宜的にルートって言ったし、劇中でもエンドって言ってるけど、そもそもタイトルからして単数形。これは最初からハイスコアガール大野を追いかける矢口の話であって、それを後ろで見ていた日高氏は。

金髪の子かわいそう。

Fairy gone

公務員はつらいよにしては私情私怨リブンなところがあるし、バトルにしてはマーリアもフリーも弱過ぎるし(ウルフラン周りが強過ぎるのか?)、萌えを視聴目的にするにはあまりに血腥い

各話の筋が悪いわけではないんだが、全体の流れは……陰謀が裏で進んでます感を出してるけど、裏すぎて地味。

こう、全部が地味すぎるんだよ……まあこの絵この話で派手になられても困るんだが。

からない。俺は雰囲気フェアリーゴーンを好きになっている。良さが言語化できない。いったい何が好きで2クール目も見てるんだろうな。別にリムガル見てないしknow_nameのオサレミュージックに惹かれてるわけでもない。マジで理由が謎。

誰かフェアリーゴーンの何がいいか代わりに説明してくれ。

ヴィンランド・サガ

このアニメすごい。物語目的も着地点も見せないまま4ヶ月半放送し続けている。

ルフィンは「アシェラッドと正々堂々と決闘して勝利する」という方法限定した復讐目的に生きてるけど、ストーリー展開はそれを傍流のものとして扱っている。

主人公目的、というか存在自体がどうでもいいまま、アシェラッドとトルケルと、たまにメス顔王子で話が進んでいる。群像劇ではないはずなのに主人公が影薄い。そのくせ面白い。つまりこれトルフィンいらないのでは?

突然1話まるまる割いた村の略奪でさえ、メス顔王子が男の顔になるためでしかなく、トルフィンはこの話に登場しないし、(今の時点では)何の影響もない。

かといってトルフィンを完全にフェードアウトさせるでもない。アシェラッドがピンチになると、こいつを殺すのは俺なんだから指一本触れないでよねっ!とトルケルとの間に入って決闘を始めた。ようやく主人公らしく物語の中心に……と思ったら、これも王子覚醒までの時間稼ぎじゃねえか!

こういうの、原作を知っていると全部納得がいくんだろうが、原作ことなんかそういや10年以上前マガジン休載しまくってアフタかどっか行った漫画あったな……程度にしか知らん俺にはわけが分からん

これはいったい誰の、何の話なんだ。アシェラッドとトルケルが超面白いから楽しく見てるけど、トルフィンは何のためにいるんだよ。幼少期だってパパが主役じゃねえか。こいつ本当に主人公か?そもそも要るのか?アニメ化される範囲の話で必要な子なのか?

旗揚!けものみち

見ていない。

見ていないが神実況コラムとHARASHI…ケモナーマスク動画は見ている。

ケニー退団(正確にはその前の両国メイン3way、HARAイサミケニーのKO-D戦でケニーが一抜けした瞬間)からゆっくりDDT熱が冷めて、大家代表いつどこでKO-D戴冠(ただし直前のWWEパロディ)即陥落した辺りで自分から情報仕入れるのをやめ、飯伏退団で遂にDDT情報が完全に途絶えてたのに、こういうネタにはしっかり引っ掛かってしまうプオタのなりそこないの俺はゴミだよ。

これきっかけにまた追おうかなぁとは思うんだが、いきなりユニバース入会はハードル高い。というかメジャーからインディまで配信乱立しすぎで追いきれねえから協会かなんか作って配信だけでも統合しろ統合……ユニオン……えっ、BASARA独立イサミ社長!?

こんな浦島状態なので、しばらくはバトニューあたり読んで勉強します……ウラシマ……えっ、ヤスウラノ退団してたの!?

ガンダムビルドダイバーズRe:RISE
ゾイドワイルド ZERO

長くて表示されてなかったのでこっちに移した。

https://anond.hatelabo.jp/20191126125118

 
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