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2013-12-09

秘密保護法制定により分裂していたキリスト教派が合同団結

クリスチャン新聞が伝えた報道によると、特定秘密保護法の制定は、分裂していたキリスト教の教派を、結果的に団結させ共同行動の実績を作らせた。

日本ホーリネス教団と基督兄弟団は、いずれもプロテスタントキリスト教分派教会の団体であったが、双方は教義実践方法をめぐって対立し、戦前キリスト教弾圧戦争協力強制の対応をめぐって分裂していた。

しかし、ホーリネス系の両教団は、戦後戦争責任をめぐって検証と総括・反省が行われ、和解がすすめられていたところ、特定秘密保護法の制定が結果的に、両者の和解・団結を加速させ、共同行動をとらせる契機として働いた。

国家公務員の中には少ないながらもホーリネス信者がいるし、その家族の中にもホーリネス教会員存在する。彼ら・彼女らは、秘密を守ることによって多くの人の生命財産を奪うことを知っている場合秘密を守る行為自体がキリスト教義上の罪となるから秘密暴露するなどして奪われようとしている生命を守り、自らの信仰最後まで全うしようとするだろう。そして、ホーリネス系教団の人たちは、告発である信者を擁護するため、国家から弾圧に対し、これまで以上に抵抗するだろう。

その意味で、特定秘密保護法不正常な制定によって、国家秘密保全するという当初の目的は、かえって実現困難になったといえよう。

政府はおそらく、公務員思想の調査をこれまで以上に徹底して行うだろうが、だとすれば、そのことがかえって保護法に対する世論の反感を招き、思想差別に対する抵抗も大きくなり、公務員法令順守意識を低下させるという悪循環を生むことになる。政府秘密保護法対応は、確実に手詰まりに向かっている。

 

 日本ホーリネス教団教団委員会基督兄弟理事会11月26日、「特定秘密保護法」制定を危惧する共同声明安倍首相に出した。両教団は戦前日本基督教団第6部・第9部に属し、1942年治安維持法違反に問われて牧師が一斉検挙され、宗教団体法により教会が解散させられるなど、日本プロテスタント史上最大の弾圧を受けた。その経験から、「本法案が戦前治安維持法に劣らない危険性をはらんでいる」と重大な危惧を表明。戦前治安維持法同様、①「国益に反する」と見なされた思想信条が抑圧される危険、②言論・表現の自由が抑圧される情報統制危険を指摘した。

 治安維持法は25年、共産主義革命運動等の取締り目的に制定されたが、41年の全部改正で「国体の否定」という内心の思想を取り締まるものに拡大。この流れの中で、キリストが再臨し王として治めると強調したホーリネス系が同法違反に問われた。特定秘密保護法案は、防衛外交特定有害活動の防止、テロリズムの防止の4分野が対象とされるが、秘密定義や範囲があいまい政府恣意的に「特定秘密」に指定でき、第三者が検証する仕組みが欠如している。「これでは、時の権力が『国益に反する』と判断すれば、思いのままに拡大解釈することが可能であり、憲法思想良心信教の自由という基本的人権の根幹を脅かす」と危惧を示した。

 また、言論・表現の自由国策に沿った範囲に押し込められていた戦前の体制では、治安維持法不敬罪等が取材・報道出版等の言論活動や国民生活を萎縮させていた。

その結果、国民権力暴走に歯止めをかけるすべを失い、無謀な戦争遂行へ駆り立てられていった。処罰の対象や範囲が公開されず重罰が科せられる特定秘密保護法案も、

言動を自粛させてしまう恐れが強いと予想。「言論・表現の自由を無力化・無意味化させるこのような法制は、この国をもう一度、息の詰まるような情報統制国家に逆戻りさせることになりかねません」として、戦時中キリスト教会自己規制し、

偶像礼拝である神社参拝や「平和福音」を歪めて戦争遂行に加担した罪を悔い改めた立場から、二度と同じ罪を繰り返さない決意を表し、戦前情報統制に類似する危険性を持つ特定秘密保護法案に断固反対し、廃案とするよう強く求めた。

 基督兄弟団と日本ホーリネス教団の前身は、1933年に分裂。戦後50年を機に両教団が戦争責任を表明したことをきっかけに、共同で歴史検証に取り組むなど和解の実を結んできたが、共同声明を出すのは初めて。

(クリスチャン新聞 2013年12月8日)

http://jpnews.org/pc/modules/xfsection/article.php?articleid=2567

2013-12-06

特定秘密保護法案の読み解きと不安な点

特定秘密保護法案に賛成することにした

http://d.hatena.ne.jp/aliliput/20131205

という d:id:aliliput さんのブログを読んだ。トラックバックを見る限りでは、誰もまとまった記事として答えていないような気がする。

自分は法に関して詳しくないし、国会の議論もよく追えていないので、きっと(というか必ず)誤りもあるのだろうけど、自分の頭の整理という位置付けで、匿名ブログに書き込んでみたいと思う。誤っている部分について、誰かが指摘してくれれば幸いであるなあと思う。

1

修正案において「又は」が「若しくは」に改められているのですが、なにか意味があるのでしょうか?

別表のうち

場所修正前修正後
三 特定有害活動の防止に関する事項 ロ特定有害活動の防止に関し収集した外国政府又は国際機関から情報その他の重要情報特定有害活動の防止に関し収集した国民生命及び身体の保護に関する重要情報又は外国政府若しくは国際機関から情報
四 テロリズムの防止に関する事項 ロテロリズムの防止に関し収集した外国政府又は国際機関から情報その他の重要情報テロリズムの防止に関し収集した国民生命及び身体の保護に関する重要情報又は外国政府若しくは国際機関から情報

の太字で強調した部分だと思います

これは、法律独特の「又は」「若しくは」の使い分けルールによります

"or"を表現するとき、単独であれば「又は」を使い、「若しくは」は使いません。ただし、"or"が入れ子になった場合は、大きな入れ子を区切る"or"には「又は」を使い、小さな入れ子を区切る"or"には「若しくは」を使うことになっています

最初のものについて別の書き方をすると、

特定有害活動の防止に関し収集した「国民生命及び身体の保護に関する重要情報」又は「『外国政府若しくは国際機関から情報

という感じになると思います

(あれ、≪特定有害活動の防止に関し収集した国民生命及び身体の保護に関する「重要情報」又は「『外国政府若しくは国際機関から情報」≫かなあ…修正案で付け加えられた部分なんだから、前者の方が正しいはずだけど)

この「又は」「若しくは」の使い分けは、12条2項1号のテロリズム定義のところでかなり議論になっていて、以前 http://anond.hatelabo.jp/20131202003513 でわかりやすく解説してくれた方がいました。

しかしながら、上記のリンクにある内田樹氏がこれとは異なる読み方をしているように、大変分かりづらく誤解を生みやすい書き方ではあり、ツイッターでも、現役の弁護士と思われる方が「、」の位置がおかしいなどとの批判をしているのを見ました。ややこしいのは確かで、本当にそうすんなり理解してよいのか迷う部分があります。)

※ちなみに、大変失礼ながら、元記事で書かれている「…関する重要情報若しくは外国政府」は、「又は」の誤りでは

2

特定秘密の指定および保護期間の延長に関しては内閣が細かくチェックし、有識者意見も取り入れるべきとされています特定秘密の指定におい監査機関がない、との意見はありますが、本法においては内閣がその役割を果たすことになっています。なお、特定秘密自体は内閣以外の行政機関でも指定が可能です。

これについては、元々の案では、内閣承認必要なく、政府内での検討改善した部分のようです(ですが、個別の秘密について、保護期間延長そのものには有識者には諮られないのではないでしょうか。また、内閣は、一応、全ての特定秘密には自由には接触できないこととなっているようであり(6条1項「利用する必要があると認めたとき」に他の行政機関提供できるとあるため。4条5項、18条4項の書き方は、自由にはアクセスできないことが前提となっているように思える)、「細かくチェック」ということも少し違うのではないかと思います)。

4条

3 指定の有効期間は、通じて三十年を超えることができない。

4 前項の規定にかかわらず、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務を全うする観点に立っても、なお指定に係る情報を公にしないことが現に我が国及び国民安全を確保するためにやむを得ないものであることについて、その理由を示して、内閣承認を得た場合は、行政機関の長は、当該指定の有効期間を、通じて三十年を超えて延長することができる。ただし、次の各号に掲げる事項に関する情報を除き、指定の有効期間は、通じて六十年を超えることができない。

18条

1 内閣総理大臣は、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとする。

2 政府は、前項の基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、我が国の安全保障に関する情報保護行政機関等の保有する情報の公開、公文書等の管理等に関し優れた識見を有する者の意見を聴いた上で、その案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

基準を作るということは恣意的運用排除するもので、これが法定されたことは評価されるべきだと思います

しかし、批判としては、そもそも内閣行政の内部で取り仕切るところであって、行政行為行政承認したところで、十分な抑止力にならないんじゃないかというものがありうるのではないかと思います

また、識者の意見というのは、どのような識者を選定するかによってけっこう如何ようにも作り上げられるものではないかと思いますし、政府は識者の意見に拘束されるわけではないです。

3

特定秘密情報媒体には「特定秘密ですよ~」との表示がされるので、うっかり知ってしまう恐れはなさそうです。気をつけろ、特定秘密印だ!

特定秘密が記載された書類がすべて特定機密と表示されているとは限らないと思います行政機関管理する書類Aには特定秘密との記載があり、そのコピーBには何らかの理由で特定秘密との記載がない場合、Bには記載がないので、Bに掲載された情報特定秘密ではないとはならないと思います)。そもそも、特定機密との表示があったところで、入手する前に知る手段なんてないんじゃないかと。

4

結局30年が最大なのかそうでないのか解釈割れるところだと思いますが、なぜわざわざ第三項と第四項を分けているのか分からないです。法律おいてはこういう書き方は一般的なのでしょうか?その意図するところは何でしょうか。

上に掲げた4条の部分ですが、延長ができるのは原則30年、内閣承認があれば60年(例外あり)ということだと思います。はじめに原則をかいて、次の項で例外を定めるのは、一般的なんじゃないかなあ。ちなみに、http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi で「前項の規定にかかわらず」で、対象を「憲法法律政令勅令」として検索すると、431件がヒットします。意外に少ないか

5

どうやら法令違反でない通常の取材は正当業務行為として認められるようです。法令違反はどの道アウトですね。

22条の部分ですが

2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。

気になるのは、「専ら公益を図る目的を有し」なければ、法令違反又は不当な方法によるものでなくとも、「正当な業務による行為」(これも法律用語で、違法性阻却理由のひとつとされているものです http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E5%BD%93%E8%A1%8C%E7%82%BA )ではないし、そもそも「公益を図る目的を有し」ていて「法令違反」でなくとも、「著しく不当な方法」であればアウト、ということです。特に「著しく不当な方法」ってなんだろうと思います

法令違反であっても、たとえば、「関係者以外立入禁止」の公務員宿舎に押しかけて取材した場合もアウトなのか、そりゃ倫理的にどうなのというのはあっても、厳罰を科されるような話なのか、という問題もあります

この点はもうひとつブロガーとか研究者大学教授とかが含まれないという点も気になります

6

反対派の皆様のご意見

「そりゃー条文を好意的に解釈したら安全安心なんだろ?でもそうじゃない!政府なんか信用できるか、あいつらはどんな風に恣意的運用するかわかったものじゃない!!」

なんですよね?

もしそのような観点に立つならば、条文の精査は意味がなくなります

この「条文の精査は意味がなくなります」というのはよくわからないところでした。成立前の法案の精査というのは、テレビゲームテストプレイ(たとえが古い?)みたいなもので、予期しない操作をしても、ちゃんと予想通りの反応を返すかどうかをシミュレーションしながら行うものべきではないかと思います。つまり運用者がどんなに変な奴でも、そんなにおかしなことは起こらないようにすべきと思うのです。あからさまに法を誤読して行政が行われることがひとまずない点では、みんな政府を信用していると思います法律違反はいえない範囲で恣意的解釈をされることを、反対派の人たちは恐れているのだと思います

7

内閣だって行政機関なんだから行政機関同士チェックが甘くなるだろ!」というご意見がありますが、この「行政機関同士だからチェックが甘くなる」のは何故なのかがわからないです。

内閣(総理大臣)は選挙で選ばれていてコロコロ変ったりしますが、行政機関職員の大半は公務員として雇用された方々で選良ではありません。官公庁ひとつとっても、内閣と完全に利害が一致しているとは思えない事例が多々あります。なぜ行政機関同士だとチェックが甘くなるのでしょうか?

うまく説明できるかわからないけれど、内閣官公庁の利害は当然完全には一致しないけれど、いつも一致しないわけではないと思います行政機関同士というより、内閣行政機関トップです。また、内閣政治的な思惑で指定する特定秘密があった場合がどうなのかという問題があります政権交代があって、それが暴露されれば良いかもしれませんが、必ずそうなるとも限りません(まず、日本コロコロ内閣が変わったりしていません。自民党野党であった時期は、55年体制崩壊して以降すらも結構長いです。また、政権交代があったとして(たとえばA党からB党に政権交代がなされたとして)、政権交代には関係のない少数者Cにのみ有利な情報は開示されるだろうかというと、そうはならないのではないかという懸念が残ります

内閣が60年を超えて持っていた情報へのアクセス逮捕されたとき、その情報が60年を超えて特定秘密として指定されていたことを証明できれば、その人は無罪になると思いますが、仮にそうであっても、政府が自ら60年を超えて特定秘密であることを証明したりするでしょうか…というのはちょっとあり得づらい話かな。でも、テストプレイはそういうことまで見越してやるべきではないかと思います

(本法違反を問う裁判では、その特定秘密がどのような内容なのか、裁判官にも弁護人にも知らされずに進められる場合があるとされているようです。検察官特定秘密といえば、それが本当に特定秘密かどうかを議論することもできず判決するということもありうるとか、たしか

2013-12-05

特定秘密保護法案別表三号ロ,四号ロの修正について

特定秘密保護法案に賛成することにした - 図書館学徒未満

これ、修正案において「又は」が「若しくは」に改められているのですが、なにか意味があるのでしょうか?

というわけで見てみましょう。id:aliliput氏が言及しているのは別表第三号ロ,同4号ロです。

原案

別表

 三 特定有害活動の防止に関する事項

  ロ 特定有害活動の防止に関し収集した外国政府又は国際機関から情報その他の重要情報

 四 テロリズムの防止に関する事項

  ロ テロリズムの防止に関し収集した外国政府又は国際機関から情報その他の重要情報

修正後

別表

 三 特定有害活動の防止に関する事項

  ロ 特定有害活動の防止に関し収集した国民生命及び身体の保護に関する重要情報又は外国政府若しくは国際機関から情報

 四 テロリズムの防止に関する事項

  ロ テロリズムの防止に関し収集した国民生命及び身体の保護に関する重要情報又は外国政府若しくは国際機関から情報

※注;id:aliliput氏の「修正案反映」は,書き加えられた「又は」まで「若しくは」に置き換えていますが,修正案の解釈として誤っています。正しくは上記の通り。

また,修正を反映した全文は朝日新聞サイトに掲載されています。→【特定秘密保護法4党修正案の全文:朝日新聞デジタル

解説

修正後の条文は次のような構造になっています(下記は三号ロの例ですが,「特定有害活動」を「テロリズム」に置き換えればそのまま四号ロの構造になります。)。

特定有害活動の防止に関し収集した

国民生命及び身体の保護に関する重要情報

又は

外国政府

若しくは

国際機関

から情報

法律の条文(というか公文書)では,ORが入れ子になっている場合には,最も大きなグループ分けに「又は」を使い,その他のグループ分けには「若しくは」を使います

修正案では,原案で「その他の重要情報」となっていた部分を特定するために「国民生命及び身体の保護に関する重要情報」と規定したことで,ORが入れ子になりました。

そのため,原案にあった「又は」は下の段に入ったことから若しくは」に表現が改められたのです。

2013-12-02

特定秘密保護法案12条2項1号における「テロリズム」の定義の読み方

結論

政治上その他の主義主張に基づき、

国家若しくは他人にこれを強要し、

又は

社会不安若しくは恐怖を与える

目的

人を殺傷し、

又は

重要な施設その他の物を破壊する

ための活動をいう。

まり

  1. 主義主張
  2. 目的
  3. 行為

という要件を以て定めており,

の4類型が,同条における「テロリズム」に該たります

理由

まずは条文。

特定秘密保護法4党修正案の全文:朝日新聞デジタル強調引用者)】

第五章 適性評価

行政機関の長による適性評価の実施

第十二条

1項 略

2項 適性評価は、適性評価の対象となる者(以下「評価対象者」という。)について、次に掲げる事項についての調査を行い、その結果に基づき実施するものとする。

一 特定有害活動(公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが特に大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう。別表第三号において同じ。)及びテロリズム政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。同表第四号において同じ。)との関係に関する事項(評価対象者の家族配偶者婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)

二〜七号 略

3,4項 略

問題となる部分は以下(強調引用者)。

政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。

条文の書き方として,同じレイヤーには「又は」は複数置かれません。「A or B or C」は「A,B,又はC」と書きます。したがって,少なくとも「強要」「殺傷」「破壊」が同列ではないことは文言上明らかです。

ただ,それを踏まえても,上記の「テロリズム」の定義は,「基づき」や「目的で」の範囲がぱっと見分かりにくいために複数の読み方があるようにも見えます

しかしながら,丁寧に読めば条文上に冒頭の構造が現れています

すなわち,ブロックが最も明確な社会不安若しくは恐怖を与える目的という部分は「○○に○○する目的」という書きぶりになっていて,これは直前の国家若しくは他人にこれを強要と同じ形式になっているから,両者の間(=最初)の「又は」は「強要し,又は与える目的で」と読める。

同様に「○○を○○する」でまとめると人を殺傷重要な施設その他の物を破壊する並置されていることが分かります

実際,森担当相はそのように答弁をしています

第185回国会 国家安全保障に関する特別委員会 第14号(平成25年11月15日(金曜日))

近藤(昭)委員

 (前略)さて、懸念があることがありますので、一つお聞きをしたいと思います。これは法案に関連することであります

 法案の第十二条の二項一号にありますテロリズム定義についてというところなんですが、法案では、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。同表第四号において同じ。」とあるわけであります

 この文章どおりに解釈をすれば、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は」となっており、「又は」で接続をされていて、かつではないわけでありますね。そうすると、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する行為テロリズムということに読めてしまうわけでありますが、その解釈はいかがでありましょうか。

○森国務大臣

 全く同じ質問をこの委員会でも以前受けまして、御答弁申し上げましたけれども、この条文の「目的で」というところの前と後が、かつでつながっております

 つまり、条文の書き方でいうと、まず、目的がこういうものである目的が二つ挙げてありまして、それが「又は」でつながっております。そのような目的を持った上で、今度、行為態様として、人を殺傷するか、または破壊活動というふうになっておりますので、目的が該当しただけでこの条文の構成要件を全て満たすわけではございませんで、このような目的を持ち、また、ここに書いてあるような行為態様殺傷、または重要な施設その他のもの破壊する行為をした場合が該当するということになります

近藤(昭)委員

 大臣ありがとうございます

 ただ、それならばなぜ、わかりやすいといいましょうか、今まさしく、そして殺傷したという、かつという言葉を使わないのかということを思うわけでありますいかがでありましょうか。

○森国務大臣

 これは刑法法規の定め方でございますが、まず目的が書いてあって、その後に行為態様が書いてございますので、例えばそれぞれの行為態様がかつで結ばれている場合には、かつと書くこともありますでしょうけれども、目的行為でございますので、これは別々の構成要件ということで、「目的で人を殺傷し、」といったときに、目的でまたは人を殺傷しとは読みませんので、ここはあえて、かつを入れないということでございます

近藤(昭)委員

 大臣がそのようにおっしゃって、それがこうした法律の書き方だと。しかし、随分とこれは法曹界の方からも懸念が出ているということであります。律の書き方だと。しかし、随分とこれは法曹界の方からも懸念が出ているということであります

内田樹氏の言説について

石破発言について (内田樹の研究室)

担当相は国会答弁でこの条文の解釈について、最初の「又は」は「かつ」という意味であり、「政治上」から殺傷し」までを一つ続きで読むという珍妙な答弁を行った。

しかし、この条文の日本語は、誰が読んでも、「強要」と「殺傷」と「破壊」という三つの行為が「テロリズム」に認定されているという以外に解釈のしようがない。

内田氏の言説は,森大臣の答弁内容について誤解し,かつ,条文解釈を誤ったものです。

まず,森大臣最初の「又は」は「かつ」という意味などとは言っていません。おそらくは森大臣この条文の「目的で」というところの前と後が、かつでつながっておりますという答弁を捉えたものだろうと思いますが,これは「又は」について説明したものではありません。

冒頭の結論を前提とすれば,12条2項1号は

  1. 主義主張
  2. 目的
  3. 行為

という3要件から成り立っており,目的行為のみでは「テロリズム」には該当しない。従って,「目的」を有し,かつ,「行為」を行った場合でなければ「テロリズムには該当しない。

あとは条文上の書き方の問題で,目的要件と行為要件の間には「かつ」を入れないのが通例です。(というか,別種の要件であればいちいち「かつ」は入れない。)

例:通貨偽造罪(刑法148条1項)

行使の目的で、通用する貨幣紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。

次に,つの行為が「テロリズム」に認定されているという以外に解釈のしようがないとする部分ですが,既に述べたように,行為類型は「人の殺傷」と「物の破壊」の2つです。

ちなみに,条文から動詞を抜き出すと,「強要し」と「殺傷し」と「破壊する」の他に「与える」という行為(by内田氏)存在します。この「与える」は「与える目的で」と書いてあり一見明白に目的規定なので,読み飛ばしちゃったのだろうと思います(私も最初内田氏と同様の誤読をしたし)。

 

実際のところ,条文構造上最も大きい区切りである目的」と「行為」の間に読点(「、」)が無いのは,現在立法慣習上は不思議ではないのですが,とても分かりにくい慣習だと思います

一昔前の法律には条文のタイトルも無かったように,立法技術も月進年歩の発展を見せているところですので,こういった「要件単位での区切りの明確化」を発展させて欲しいところです。

 
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