クリスチャン新聞が伝えた報道によると、特定秘密保護法の制定は、分裂していたキリスト教の教派を、結果的に団結させ共同行動の実績を作らせた。
日本ホーリネス教団と基督兄弟団は、いずれもプロテスタント系キリスト教の分派教会の団体であったが、双方は教義や実践方法をめぐって対立し、戦前のキリスト教弾圧・戦争協力強制の対応をめぐって分裂していた。
しかし、ホーリネス系の両教団は、戦後、戦争責任をめぐって検証と総括・反省が行われ、和解がすすめられていたところ、特定秘密保護法の制定が結果的に、両者の和解・団結を加速させ、共同行動をとらせる契機として働いた。
国家公務員の中には少ないながらもホーリネス系信者がいるし、その家族の中にもホーリネス教会員は存在する。彼ら・彼女らは、秘密を守ることによって多くの人の生命財産を奪うことを知っている場合、秘密を守る行為自体がキリスト教義上の罪となるから、秘密を暴露するなどして奪われようとしている生命を守り、自らの信仰を最後まで全うしようとするだろう。そして、ホーリネス系教団の人たちは、告発者である信者を擁護するため、国家からの弾圧に対し、これまで以上に抵抗するだろう。
その意味で、特定秘密保護法の不正常な制定によって、国家の秘密を保全するという当初の目的は、かえって実現困難になったといえよう。
政府はおそらく、公務員の思想の調査をこれまで以上に徹底して行うだろうが、だとすれば、そのことがかえって保護法に対する世論の反感を招き、思想差別に対する抵抗も大きくなり、公務員の法令順守意識を低下させるという悪循環を生むことになる。政府の秘密保護法の対応は、確実に手詰まりに向かっている。
日本ホーリネス教団教団委員会と基督兄弟団理事会は11月26日、「特定秘密保護法」制定を危惧する共同声明を安倍首相に出した。両教団は戦前、日本基督教団第6部・第9部に属し、1942年治安維持法違反に問われて牧師が一斉検挙され、宗教団体法により教会が解散させられるなど、日本プロテスタント史上最大の弾圧を受けた。その経験から、「本法案が戦前の治安維持法に劣らない危険性をはらんでいる」と重大な危惧を表明。戦前の治安維持法同様、①「国益に反する」と見なされた思想・信条が抑圧される危険、②言論・表現の自由が抑圧される情報統制の危険を指摘した。
治安維持法は25年、共産主義革命運動等の取締りを目的に制定されたが、41年の全部改正で「国体の否定」という内心の思想を取り締まるものに拡大。この流れの中で、キリストが再臨し王として治めると強調したホーリネス系が同法違反に問われた。特定秘密保護法案は、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止の4分野が対象とされるが、秘密の定義や範囲があいまいで政府が恣意的に「特定秘密」に指定でき、第三者が検証する仕組みが欠如している。「これでは、時の権力が『国益に反する』と判断すれば、思いのままに拡大解釈することが可能であり、憲法の思想・良心・信教の自由という基本的人権の根幹を脅かす」と危惧を示した。
また、言論・表現の自由が国策に沿った範囲に押し込められていた戦前の体制では、治安維持法や不敬罪等が取材・報道・出版等の言論活動や国民生活を萎縮させていた。
その結果、国民は権力の暴走に歯止めをかけるすべを失い、無謀な戦争遂行へ駆り立てられていった。処罰の対象や範囲が公開されず重罰が科せられる特定秘密保護法案も、
言動を自粛させてしまう恐れが強いと予想。「言論・表現の自由を無力化・無意味化させるこのような法制は、この国をもう一度、息の詰まるような情報統制国家に逆戻りさせることになりかねません」として、戦時中のキリスト教会が自己規制し、
偶像礼拝である神社参拝や「平和の福音」を歪めて戦争遂行に加担した罪を悔い改めた立場から、二度と同じ罪を繰り返さない決意を表し、戦前の情報統制に類似する危険性を持つ特定秘密保護法案に断固反対し、廃案とするよう強く求めた。
基督兄弟団と日本ホーリネス教団の前身は、1933年に分裂。戦後50年を機に両教団が戦争責任を表明したことをきっかけに、共同で歴史検証に取り組むなど和解の実を結んできたが、共同声明を出すのは初めて。
http://jpnews.org/pc/modules/xfsection/article.php?articleid=2567
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http://anond.hatelabo.jp/20131209120614